説明

通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法及び対応する通信ネットワーク

本発明は概して、通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法及び対応する通信ネットワークに関するものであり、特に例えばフレックスレイのような二重ワイヤハーネスを用いている自動車内の高速通信ネットワークに適用できるようにするものである。この目的のために、各ケーブル端に対して、他の任意のケーブル端までのケーブル長を決定するステップと、長いケーブル長に、短いケーブル長よりも大きな重みがつくように各ケーブル長に重みを割り当てるステップと、全てのケーブル端に対し、ある特定のケーブル端から始まる全てのケーブル長に割り当てられた重みを合計し、この合計をこのケーブル端の重みとしてケーブル端それぞれに割り当てるステップと、ケーブルインピーダンスZに、比例定数と、全ケーブル端の重みの合計を前記特定のケーブル端の重みで割った値とを乗算することによりこの特定のケーブル端の終端抵抗値を決定するステップとに従って、終端抵抗をネットワークのケーブル端の少なくとも一部に割り当てるようにする通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法及びこれに対応する通信ネットワークに関するものであり、特に例えばフレックスレイ(FlexRay)のような二重ワイヤハーネスを用いる自動車内の高速通信ネットワークに適用できる。
【背景技術】
【0002】
これらのハーネスにおける二重ワイヤケーブルは、反射を防ぐために終端させる必要がある。ケーブルでの反射は、進行波がケーブルを伝播する際に遭遇するインピーダンスの不連続部分で生じる。ケーブル端で生じる反射を防止するためには、ケーブルに抵抗を配置することにより、ケーブルをその特性インピーダンスで終端する必要がある。低速分野(例えばCAN(コントローラエリアネットワーク)、125kビット/秒)では、多くの場合、ハーネスの2つのケーブル端のみがケーブルの特性インピーダンスに等しい抵抗値で終端され、他の全てのケーブル端は無限大の抵抗値で終端されている。しかし、この概念によると、これらのケーブル端でデータ信号の多重反射を引き起こす。高速分野(フレックスレイ、10Mビット/秒)では、これらの反射により、多くのネットワークトポロジーで通信を不可能にする。
【0003】
現在に至るまで、通信ネットワークの主ケーブルの両端を終端するためのいくつかの概念が用いられている。RS−485バスに対してよく用いられる終端手法は、各端で導線対に単一の抵抗を接続することであり、抵抗の値はケーブルの差動モードの特性インピーダンスに整合している。このようにバスを終端すると、この2つの主ケーブル端で反射は起きなくなり、信号忠実度は非常に高くなる。しかし、適切に終端されていない他のケーブル端では、かかる終端により終端抵抗で電力を損失する他の欠点がある。他の手法は、この並列終端を変更すること、例えばフェイルセーフバイアスを与えることである。
【0004】
電力損失を最小にするために、RC終端を用いることができる。この場合、上述の解決策における単一の抵抗の代わりに、キャパシタと直列にした抵抗を用いる。キャパシタは過渡期間中、短絡回路とみなされ、抵抗がケーブルを終端する。キャパシタが充電されると、このキャパシタはDCループ電流を阻止し、ドライバーの負荷を軽くする。しかし、低域通過効果により、RC終端の使用をデータ速度が低い分野に制限する。
【0005】
DSLシステム、特にVDSLシステムでは、極めて長い26ゲージのツイストペアケーブルのVDSL周波数帯域全域に亘る入力インピーダンスの平均値に等しい抵抗を推測的に最良のものとして使用するインピーダンス整合手法が終端のために用いられている。
【0006】
インピーダンス整合を改善するために、適応性のあるハイブリッド終端インピーダンスが使用されている。最も簡単な適応性のある終端インピーダンス整合手法は、可変抵抗装置を調整し、その抵抗値をある周波数でのケーブル入力インピーダンスの大きさに等しくすることである。或いはまた、ある特定の周波数帯域に亘るケーブル入力インピーダンスの平均を用いることもできる。終端インピーダンスを整合する他の手法は、近端エコーを最小限に抑えることである。
【0007】
要するに上述した終端手法は、従来、ハーネスの2つの主ケーブル端のみにしか適用されず、他のケーブル端は無限大の抵抗値で終端されるので、この他のケーブル端では反射が生じる悪影響を引き起こしてしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、上述した欠点を解決し、且つネットワークトポロジーにおける高速通信を改良するようにした、通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法及びこれに対応する通信ネットワークを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によればこの目的は、頭書に記載した構成を請求項1及び8の特徴事項と組み合わせることにより達成される。本発明の有利な例は、従属請求項に記載してある。
【0010】
本発明の観点によれば、
‐ 各ケーブル端に対して、他の任意のケーブル端までのケーブル長を決定するステップと、
‐ 長いケーブル長に、短いケーブル長よりも大きな重みがつくように各ケーブル長に重みを割り当てるステップと、
‐ 全てのケーブル端に対し、ある特定のケーブル端から始まる全てのケーブル長に割り当てられた重みを合計し、この合計をこのケーブル端の重みとしてケーブル端それぞれに割り当てるステップと、
‐ ケーブルインピーダンスZに、比例定数と、全ケーブル端の重みの合計を前記特定のケーブル端の重みで割った値とを乗算することによりこの特定のケーブル端の終端抵抗値を決定するステップと、
に従って終端抵抗をネットワークのケーブル端の少なくとも一部に割り当てるようにすることを特徴とする通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法を提供する。全てのケーブル端に対して共通の比例定数を用いるのが好ましい。この共通の比例定数は0.5に等しくするのが有利である。
【0011】
本発明の方法の好適例では、全ての終端抵抗を並列接続することにより得られる等価抵抗が、いかなる場合にも前記ケーブルインピーダンスZの半分に等しくなるようにする。
【0012】
更に、全てのケーブル端に対して共通の比例定数を用いるのが好ましい。この共通の比例定数は0.5に等しくするのが有利である。
【0013】
本発明の方法の他の好適例では、前記重みを連続する自然数とする。
【0014】
本発明の方法のさらに他の好適例では、前記ケーブル端の重みを、連続する自然数の共通の指数乗とする。この共通の指数を(1,4]の範囲内にするのが好ましい。
【0015】
本発明の他の観点は、反射が生じる悪影響を最小限に抑え、従って最先端の終端概念を可能とするようにより広い範囲のネットワークトポロジーで高速通信が可能となるように、ハーネス又はネットワークのトポロジーを考慮してワイヤハーネス又は通信ネットワークの各ケーブル端に対する終端抵抗を計算する方法を提供することにある。
【0016】
本発明の更に他の観点によれば、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法によって決定した値を有する終端抵抗によりネットワークの全てのケーブル端を終端する。
【0017】
本発明の上述した及びその他の目的、特徴並びに利点は、添付図面に示す本発明の好適な実施例のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1による代表的なネットワークトポロジーを用いて計算方法を説明する。
【0019】
計算方法の第1ステップでは、ネットワークにおける各ケーブル端から他の全てのケーブル端までのケーブル長を決定する。

iから jまで ケーブル長lij
1 2 3.5m
1 3 6.0m
1 4 8.0m
2 3 5.5m
2 4 7.5m
3 4 4.0m
【0020】
計算方法の第2ステップでは、ケーブル長lijを昇順に整理し、最小のケーブル長に重み1を、次に長いケーブル長に重み2を割り当て、以下同様に行う。

ケーブル長lij 重みwij
3.5m 1
4.0m 2
5.5m 3
6.0m 4
7.5m 5
8.0m 6
【0021】
第3のステップでは、同じケーブル端iで始まる全てのケーブル長の重みwijを合計し、その結果をケーブル端iの重みwi とする。

ケーブル端i 重みwi
1 11=1+4+6(3.5m、6.0m、8.0m)
2 9=1+3+5 (3.5m、5.5m、7.5m)
3 9=4+3+2 (6.0m、5.5m、4.0m)
4 13=6+5+2(8.0m、7.5m、4.0m)
【0022】
最終ステップである第4ステップでは、ケーブルインピーダンスZの半分に、全ケーブル端の重みの合計を個々のケーブルの重みwi で割った値を掛けることにより各ケーブル端の終端抵抗Riを算出する。

ノード 終端抵抗値
1 R1=(Z/2)×(11+9+9+13)/11
=(Z/2)×42/11
2 R2=(Z/2)×42/9
3 R3=(Z/2)×42/9
4 R4=(Z/2)×42/13
【0023】
この方法は、任意の数のケーブル端を有するネットワークトポロジーに適用することができる。
【0024】
全ての終端抵抗を並列接続することにより得られる等価抵抗の値は、いかなる場合でもZ/2に等しい。
【0025】
更なる変形例:
微調整するために、加算結果wi に指数を適用することにより第3ステップを例えば以下のように変更することができる。

ケーブル端 重みwi*
1 (1+4+6)1.2=17.8
2 (1+3+5)1.2=13.9
3 (4+3+2)1.2=13.9
4 (6+5+2)1.2=21.7
【0026】
指数を[1…4]の範囲にすることにより、実際に良好な結果が得られたことを確かめた。
【0027】
本発明の方法は、CANやフレックスレイのような通信ネットワークに適用できる。
【0028】
本発明は、特定の実施例につき説明したが、種々の変更が可能であることが当業者にとって明らかである。従って、上述した本発明の好適な実施例は、本発明を限定するものではない。特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、4つのケーブル端を有する代表的なワイヤハーネスを示す線図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ケーブル端
2 ケーブル端
3 ケーブル端
4 ケーブル端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
‐ 各ケーブル端に対して、他の任意のケーブル端までのケーブル長を決定するステップと、
‐ 長いケーブル長に、短いケーブル長よりも大きな重みがつくように各ケーブル長に重みを割り当てるステップと、
‐ 全てのケーブル端に対し、ある特定のケーブル端から始まる全てのケーブル長に割り当てられた重みを合計し、この合計をこのケーブル端の重みとしてケーブル端それぞれに割り当てるステップと、
‐ ケーブルインピーダンスZに、比例定数と、全ケーブル端の重みの合計を前記特定のケーブル端の重みで割った値とを乗算することによりこの特定のケーブル端の終端抵抗値を決定するステップと、
に従って終端抵抗をネットワークのケーブル端の少なくとも一部に割り当てるようにすることを特徴とする通信ネットワークのケーブル終端抵抗値決定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、全ての終端抵抗を並列接続することにより得られる等価抵抗値が、いかなる場合でも前記ケーブルインピーダンスZの半分に等しくすることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記重みを連続する自然数とすることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記ケーブル端の重みを、連続する自然数の共通の指数乗にすることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記共通の指数を(1,4]の範囲内にすることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、全てのケーブル端に対して共通の比例定数を用いることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記共通の比例定数を0.5に等しくすることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって決定した終端抵抗を有する通信ネットワーク。
【請求項9】
請求項8に記載の通信ネットワークにおいて、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法によって決定された値を有する終端抵抗によりこのネットワークの全てのケーブル端が終端されていることを特徴とする通信ネットワーク。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の通信ネットワークにおいて、このネットワークをコントローラエリアネットワーク(CAN)又はフレックスレイネットワークとして構成したことを特徴とする通信ネットワーク。

【図1】
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【公表番号】特表2009−505470(P2009−505470A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525679(P2008−525679)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【国際出願番号】PCT/IB2006/052610
【国際公開番号】WO2007/017789
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(507219491)エヌエックスピー ビー ヴィ (657)
【Fターム(参考)】