説明

通信制御システム

【課題】モータの回転状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することが可能な通信制御システムを提供すること。
【解決手段】通信制御システム1は、モータ2の回転状態を検出する回転角センサ3と、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定し、それに基づく通信制御を実施するスマートキーECU4とを備える。スマートキーECU4の通信方式選択部5は、電磁ノイズ特性を推定し、その電磁ノイズ特性に応じて、スマート通信の通信方法を選択する。スマートキーECU4の通信部6は、選択された通信方法に従って、電子キー7との間でスマート通信を実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信方法を選択する通信制御システムに関する。詳しくは、エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車、或いはモータを動力源とする電気自動車のように、モータ等のノイズ源となる各種機器の搭載された車両に好適な通信制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両において、ユーザが車両キーとして所持する携帯機(電子キー)と車両に搭載された通信装置との間でキー照合に関する双方向通信を行い、車両周辺の通信エリアに当該車両に適合する正規の携帯機が存在している場合に、各種の車両制御を許容する、いわゆる電子キーシステムが適用されたものが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
この種の電子キーシステムでは、車両側から呼び掛け信号が送信され、この呼び掛け信号の送信領域に携帯機が存在しているとき、前記呼び掛け信号に対する応答信号が携帯機から送信される。そして、その応答信号が車両側で解析され、車両側の基準IDコードに一致するIDコードが前記応答信号に含まれているとき、正規の携帯機の所持者による各種の車両制御、例えばドアロックの施解錠やエンジンの始動等が許容される。
【0004】
一般的に前記呼び掛け信号には、電波法において記号LFで表わされる周波数範囲の信号が用いられ、また、前記応答信号には、記号UHFで表わされる周波数範囲の信号が用いられる。このように無線通信によるキー照合が行われる場合、車両周辺に存在する電波がいわゆるノイズとなって呼び掛け信号や応答信号に干渉することが考えられ、そうすると、車両制御に影響を与える可能性がある。
【0005】
そこで、ノイズによる影響を解消するべく、通信周波数を変更することが可能なシステム、いわゆるマルチチャンネル機能を有するシステムも提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−029385号公報(段落[0002]〜段落[0007])
【特許文献2】特開2008−082152号公報(段落[0048])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで近年、環境保護の観点から、エンジンとモータを動力源とするハイブリッド車、或いはモータを動力源とする電気自動車といったエコカーが注目を浴びている。こうした車両には比較的大きなモータが搭載されるので、このモータの回転に伴う電気ノイズによる無線通信への影響を低減するための配慮がなされていると好適である。尚、上記モータ以外にも車両にはノイズ源となる各種機器が搭載されているので、そうしたものによるノイズの影響についても、これが低減されると、さらに好適である。
【0008】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、ノイズ源となる車両機器の動作状態、例えば、車両搭載のモータの回転状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することが可能な通信制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ノイズ源となる各種機器の搭載された車両に適用され、この車両が関わる無線通信の通信方法を選択する通信制御システムにおいて、前記ノイズ源となる車両機器の動作状態を検出する検出手段と、前記検出手段で検出された車両機器の動作状態に基づいて、当該動作状態に特有の電磁ノイズ特性を推定する推定手段と、前記推定手段で推定された電磁ノイズ特性に応じて通信方法を選択する選択手段とを備えることをその要旨としている。
【0010】
同構成によると、ノイズ源となる車両機器の動作状態が検出手段で検出され、当該動作状態に特有の電磁ノイズ特性が推定手段で推定され、その電磁ノイズ特性に応じて選択手段で通信方法が選択される。このため、ノイズ源となる車両機器の動作に伴うノイズによる影響を受け難い通信方法を選択するといったことができるようになる。従って、ノイズ源となる車両機器の動作状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、モータを動力源とする車両に適用され、この車両が関わる無線通信の通信方法を選択する通信制御システムにおいて、前記モータの回転状態を検出する検出手段と、前記検出手段で検出されたモータの回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定する推定手段と、前記推定手段で推定された電磁ノイズ特性に応じて通信方法を選択する選択手段とを備えることをその要旨としている。
【0012】
同構成によると、モータの回転状態が検出手段で検出され、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性が推定手段で推定され、その電磁ノイズ特性に応じて選択手段で通信方法が選択される。このため、モータの回転に伴うノイズによる影響を受け難い通信方法を選択するといったことができるようになる。従って、モータの回転状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の通信制御システムにおいて、前記検出手段は、前記モータの回転状態としてモータの回転速度を検出し、前記推定手段は、前記検出手段で検出されたモータの回転速度を用いた演算により、ノイズインパルスの時間的な発生間隔を推定し、前記選択手段は、ノイズインパルス間に通信が一括で又は分割されて実施される通信方法を選択することをその要旨としている。
【0014】
同構成によると、ノイズインパルス間というノイズによる影響を受ける可能性の低い期間に通信が実施される。このように通信のタイミングを制御することで、ノイズによる影響を解消することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の通信制御システムにおいて、モータの回転状態とノイズの周波数とを関連付けして記憶する記憶手段を備え、前記推定手段は、前記検出手段で検出されたモータの回転状態に関連付けされたノイズの周波数を前記記憶手段の記憶内容を参照して特定することで、モータの回転状態に応じたノイズの周波数を推定し、前記選択手段は、前記推定手段で推定されたノイズの周波数とは異なる周波数を用いた通信方法を選択することをその要旨としている。
【0016】
同構成によると、ノイズの周波数とは異なる周波数を用いた通信方法が選択される。このため、通信周波数を変更するいわゆるマルチチャンネルの機能に応用することで、ノイズによる影響を解消することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信制御システムにおいて、特定周波数帯の信号をノイズとして除去する電気的なフィルタを備えるとともに、そのフィルタの周波数特性が、ノイズ源となる車両機器の動作状態と関連付けされ、さらに、前記検出手段で検出された車両機器の動作状態に基づいて、当該動作状態に関連付けされているフィルタの周波数特性を選択するかたちで前記フィルタの周波数特性を切り換える切換手段を備えることをその要旨としている。
【0018】
同構成によると、ノイズ源となる車両機器の動作状態に応じて、フィルタの周波数特性が切り換えられ、これにより、当該動作状態において発生するノイズが上記フィルタで除去されるようになる。このようにフィルタの制御を通じて、ノイズによる影響を解消することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
本発明によれば、ノイズ源となる車両機器の動作状態、例えば、車両搭載のモータの回転状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る通信制御システムをハイブリッド車に適用される通信制御システムに具体化した一実施形態について、その通信制御システムの構成を示すブロック図。
【図2】ノイズインパルスの時間的な発生間隔が推定される様子を示すグラフ。
【図3】周波数特性可変フィルタを備える他の実施形態の通信制御システムについて、その構成を示すブロック図。
【図4】周波数特性可変フィルタとしてデジタルフィルタを備える他の実施形態の通信制御システムについて、その構成を示すブロック図。
【図5】周波数特性可変フィルタとしてアナログフィルタを備える他の実施形態の通信制御システムについて、その構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る通信制御システムをハイブリッド車に適用される通信制御システムに具体化した一実施形態について説明する。
図1に示すように、通信制御システム1は、エンジンとともに車両の動力源となるモータ2の回転状態を検出する回転角センサ3と、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定し、それに基づく通信制御を実施するスマートキーECU(Electronic Control Unit )4とを備える。
【0022】
スマートキーECU4の通信方式選択部5は、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定し、その電磁ノイズ特性に応じて、当該車両が関わる無線通信の一つであるスマート通信の通信方法を選択する。そして、スマートキーECU4の通信部6は、通信方式選択部5で選択された通信方法に従って、車両オーナ、すなわち正規ユーザが車両キーとして所持する電子キー7との間でスマート通信を実施する。
【0023】
尚、スマート通信では、通信部6から車両周辺に呼び掛け信号が送信され、この呼び掛け信号の送信領域に電子キー7が存在しているとき、前記呼び掛け信号に対する応答信号が電子キー7から送信される。そして、その応答信号が車両側で解析され、車両側の基準IDコードに一致するIDコードが前記応答信号に含まれているとき、正規の電子キー7の所持者による各種の車両制御が許容される。
【0024】
次に、スマート通信の通信方法を選択する場合の動作について説明する。
モータ2が回転すると、周期的にノイズインパルスが発生するが、このノイズインパルスの出力レベルは、主にモータ2の個体要素(使用材料や製造方法等)やモータ2の使用環境(温度、湿度、印加電圧等)等をパラメータとして変化する。しかし、ノイズインパルスの出力レベルが変化しようとも、ノイズインパルスがスマート通信に用いられる信号に干渉することで車両制御に影響を与える点に変わりはない。従って、本実施形態では、ノイズインパルスの出力レベルを低減する点に注力するのではなく、ノイズインパルスが前記信号に干渉しないようにする点に注力することとしている。
【0025】
即ち、ノイズインパルスの時間的な発生間隔は、モータ2の回転速度に大きく依存するので、本実施形態では、回転角センサ3でモータ2の回転速度を検出し、その検出されたモータ2の回転速度を用いた演算により、通信方式選択部5でノイズインパルスの時間的な発生間隔を推定することとしている(図2参照)。
【0026】
そして、隣り合う二つのノイズインパルスの発生間隔が呼び掛け信号の送信から応答信号の受信に至るまでの期間よりも長いとき、ノイズインパルス間にスマート通信が一括で実施される。ただし、スマート通信では、呼び掛け信号及び応答信号といった単に二つの信号が用いられるのではなく、車両側と電子キー7との間で交互に信号が複数の段階に分けて送信されるので、ノイズインパルス間にスマート通信を一括で実施することは事実上困難である。
【0027】
そこで、複数のノイズインパルス間に跨る形でスマート通信が分割されて実施される。例えば、車両側から呼び掛け信号の総称で送信されるLF信号よりも、電子キー7から応答信号の総称で送信されるUHF信号の方が、モータ2のノイズの影響を受け易いものと仮定すると、次の態様での通信方法を選択可能となる。
【0028】
即ち、通信部6と電子キー7との間でのスマート通信に関する通信シーケンスは両者で共有されるものであるので、車両側の特にスマートキーECU4は、通信部6で呼び掛け信号を送信してから応答信号を受信するまでの所要時間を把握している。従って、通信方式選択部5は、ノイズインパルス間に応答信号が送信されてくるタイミングで通信部6から呼び掛け信号が送信されるように、通信部6による通信のタイミングを制御する。その結果、ノイズの影響を受け難いものとして仮定した呼び掛け信号は別として、ノイズの影響を受け易いものとして仮定した応答信号がノイズインパルス間に送信され、これが通信部6で受信されたとき、スマートキーECU4での解析が好適に実施される。
【0029】
尚、電子キー7からの応答信号が複数の段階に分かれた信号によるものであるとき、各信号の電子キー7からの送信タイミングが個別に、上記に倣って通信方式選択部5で制御されるので、この場合も、スマートキーECU4での解析が好適に実施される。
【0030】
また、呼び掛け信号及び応答信号が共にノイズによる影響を受け易いものであると仮定したとき、次の態様での通信方法を選択可能となる。
即ち、この場合、通信方式選択部5は、ノイズインパルス間に呼び掛け信号が送信されるように、通信部6による通信のタイミングを制御するとともに、当該呼び掛け信号を受信してから所定の時間が経過したタイミングで応答信号を送信するよう電子キー7に対して指令する指令コードの付加された呼び掛け信号を通信部6を通じて送信する。勿論、上記所定の時間とは、前記指令コードの付加された呼び掛け信号を受信した電子キー7が、その指令コードに従うタイミングで応答信号を送信した場合に、その応答信号がノイズインパルス間に送信されることになる時間として規定される。従って、この場合も、スマートキーECU4での解析が好適に実施される。
【0031】
本実施形態において回転角センサ3は、モータ2の回転状態を検出する検出手段に相当する。そして、スマートキーECU4の特に通信方式選択部5は、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定する推定手段に相当する。また、通信方式選択部5は、前記推定手段で推定された電磁ノイズ特性に応じて通信方法を選択する選択手段に相当する。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)モータ2の回転状態が回転角センサ3で検出され、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性がスマートキーECU4の特に通信方式選択部5で推定され、その電磁ノイズ特性に応じて通信方式選択部5で通信方法が選択される。このため、モータ2の回転に伴うノイズによる影響を受け難い通信方法を選択するといったことができるようになる。従って、モータ2の回転状態に適した通信方法を選択することで、通信を好適に実施することができる。
【0033】
(2)ノイズインパルス間というノイズによる影響を受ける可能性の低い期間に通信が実施される。このように通信のタイミングを制御することで、ノイズによる影響を解消することができる。
【0034】
(3)スマート通信として、車両の駐車時に車外で繰り広げられる車外スマート通信と、車両の運転時も含めて車内で繰り広げられる車内スマート通信とが公知のものとして近年の車両に多く適用されている。モータ2(ハイブリッドモータ)のノイズによる影響を受け易いのは、モータ2の駆動時、すなわち車両の運転時であるので、この車両の運転時に車内に電子キー7が存在しているかどうかを検知するキー持ち出し警報に先立つ車内スマート通信を好適に実施することができる。
【0035】
尚、前記実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・モータ2の回転状態とノイズの周波数とを関連付けしてスマートキーECU4が備える不揮発性のメモリ(記憶手段)に記憶するようにしてもよい。この場合、通信方式選択部5は、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に関連付けされたノイズの周波数を前記メモリの記憶内容を参照して特定することで、モータ2の回転状態に応じたノイズの周波数を推定する。そして、通信方式選択部5は、このように推定したノイズの周波数とは異なる周波数を用いた通信方法を選択する。このように通信方式選択部5で推定される電磁ノイズ特性は、ノイズインパルスの時間的な発生間隔といった時間特性に限らず、例えば周波数特性であってもよい。同構成によると、ノイズの周波数とは異なる周波数を用いた通信方法が選択される。このため、通信周波数を変更するいわゆるマルチチャンネルの機能に応用することで、ノイズによる影響を解消することができる。
【0036】
・上記例に倣ってノイズの周波数を特定する構成において、特定周波数帯の信号をノイズとして除去する電気的なフィルタを形成することで、ノイズ耐力を向上してもよい。この場合、通信方式選択部5は、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に関連付けされたノイズの周波数を前記メモリの記憶内容を参照して特定することで、モータ2の回転状態に応じたノイズの周波数を推定する。そして、通信方式選択部5は、このように推定した周波数を含む特定周波数帯の信号をノイズとして除去するべく、上記フィルタの周波数特性を切り換える。尚、この場合、上記フィルタの周波数特性を切り換えることが、モータ2の回転状態に適した通信方法を選択することに相当する。同構成によると、モータ2の回転状態に応じて、フィルタの周波数特性が切り換えられ、これにより、当該回転状態において発生するノイズが上記フィルタで除去されるようになる。このようにフィルタの制御を通じて、ノイズによる影響を解消することができる。
【0037】
・上記例によるノイズの周波数に代えて又は加えて、フィルタの周波数特性をモータの回転状態と関連付けして上記メモリに記憶するようにしてもよい。以下、車内空調用のモータとして車両に搭載されるブロアモータが上記モータ2に代えてノイズ源となる場合を想定し、このブロアモータによるノイズを除去する周波数特性可変フィルタを形成する例について説明する。
【0038】
図3に示すように、通信制御システム11は、車内温度の設定に基づく目標の風量が得られるようブロアモータ12の回転を制御するエアコンECU13と、ブロアモータ12の制御情報にしたがって回転制御されるブロアモータ12の回転状態に応じた通信制御を実施するスマートキーECU14とを備える。尚、スマートキーECU14のCPU15及び不揮発性のメモリ16が、上記実施形態による通信方式選択部5と同様の役割を担うとともに、LF送信部17及びRF受信部18が、上記実施形態による通信部6と同様の役割を担う。上記RF受信部18は、上記実施形態と同様の電子キー7から送信される応答信号がブロアモータ12によるノイズの影響を受けないかたちで当該RF受信部18で受信できるよう、上記CPU15によって周波数特性が制御される周波数特性可変フィルタ19を備える。
【0039】
上記メモリ16には、ブロアモータ12の制御情報に関連付けされるように、その制御情報にしたがってブロアモータ12が回転制御された場合に当該ブロアモータ12から発生するノイズのパターン、及び、そのノイズを除去するために必要な周波数特性可変フィルタ19の周波数特性が記憶され、その一覧がデータベース化されている。そして、CPU15は、エアコンECU13でブロアモータ12が回転制御されるに際し、そのときの制御情報を取得すると、当該ブロアモータ12の制御情報に関連付けされた周波数特性可変フィルタ19の周波数特性をメモリ16の記憶内容を参照して選択し、その選択した周波数特性が得られるよう周波数特性可変フィルタ19を制御する。尚、上記CPU15は、周波数特性可変フィルタ19の周波数特性を切り換える切換手段に相当する。また、この場合、周波数特性可変フィルタ19の周波数特性を切り換えるといった概念の中に、ノイズ特性を推定すること及び通信方法を選択することの双方が含まれる。言い換えると、本例によるCPU15は、推定手段及び選択手段にも相当する。さらに言えば、エアコンECU13は検出手段に相当する。
【0040】
そして、同構成によると、ブロアモータ12の回転状態に応じて、周波数特性可変フィルタ19の周波数特性が切り換えられ、これにより、当該回転状態において発生するノイズが上記周波数特性可変フィルタ19で除去されるようになる。このように周波数特性可変フィルタ19の制御を通じて、ノイズによる影響を解消することができる。尚、本例によるブロアモータ12は、上記実施形態によるモータ2(ハイブリッドモータ)との比較において、電気容量が小さく、したがってこれによるノイズの影響は小さいとも考えられる。しかし、そのようなブロアモータ12が上記RF受信部18に近い位置に搭載される場合には、たとえ電気容量が小さくとも、それによるノイズがスマート通信に与える影響を無視することができない。そうすると本例は、ブロアモータ12とRF受信部18とが近接配置される場合に、ブロアモータ12によるノイズがRF受信部18による応答信号の受信に与える影響が低減されるといった点に技術的な意義を有する。
【0041】
・上記例による周波数特性可変フィルタ19として、デジタルフィルタが採用されてもよい。以下、その例について説明する。尚、デジタルフィルタには、ノイズとして除去できる特定周波数帯が一義的に決まる係数値としてフィルタ係数が設定され、すなわちこのフィルタ係数によってデジタルフィルタの周波数特性が決まる。そして、本例では、図4の左上に示すように、デジタルフィルタである周波数特性可変フィルタ19のフィルタ係数がブロアモータ12の制御情報に関連付けされるかたちでメモリ16に記憶されている。そして、CPU15は、エアコンECU13でブロアモータ12が回転制御されるに際し、そのときの制御情報を取得すると、当該ブロアモータ12の制御情報に関連付けされた周波数特性可変フィルタ19のフィルタ係数をメモリ16の記憶内容を参照して選択する。そして、CPU15は、その選択したフィルタ係数にしたがう周波数特性が得られるよう周波数特性可変フィルタ19を制御する。
【0042】
・デジタルフィルタに代えて、アナログフィルタが周波数特性可変フィルタ19として採用されてもよい。以下、その例について説明する。本例では、図5の右下に示すように、周波数特性可変フィルタ19として、複数のアナログフィルタを備えるとともに、CPU15によるスイッチの切換制御を通じて、いずれかのアナログフィルタが選択され、その結果、RF受信部18による応答信号の受信経路が切り換えられる。尚、このように受信経路が切り換えられることで、当該選択されたアナログフィルタの回路定数によって周波数特性可変フィルタ19の周波数特性が決まり、すなわちノイズとして除去できる特定周波数帯が一義的に決まる。そして、図示はしないが、メモリ16には、周波数特性可変フィルタ19を構成するいずれかのアナログフィルタの識別番号がブロアモータ12の制御情報に関連付けされるかたちでメモリ16に記憶されている。そして、この場合、CPU15は、エアコンECU13でブロアモータ12が回転制御されるに際し、そのときの制御情報を取得すると、当該ブロアモータ12の制御情報に関連付けされたアナログフィルタをメモリ16の記憶内容を参照して選択する。そして、CPU15は、その選択したアナログフィルタにしたがう周波数特性が得られるよう、この場合、スイッチの切換制御を通じてRF受信部18の受信経路を切り換えるといったかたちで周波数特性可変フィルタ19を制御する。
【0043】
・ノイズインパルスの時間的な発生間隔を推定することに代えて又は加えて、ノイズインパルスの時間的な幅を推定してもよく、また、ノイズインパルスの出力レベル(高さ)を推定してもよい。尚、ノイズインパルスの出力レベルが通信に影響を与えることが予想されるとき、応答信号の出力レベルを上げるよう呼び掛け信号で指示する構成を採用してもよい。この構成によると、ノイズインパルスの時間的な発生間隔が狭いことに起因して、ノイズインパルス間に通信を一括で又は分割して実施することが困難な場合でも、ノイズインパルスに勝る出力レベルの応答信号が設定されるので、スマートキーECU4での解析が好適に実施される。尚、ノイズレベルに応じて信号レベルを設定することとすれば、必要以上に高いレベルで信号が送信されることが回避され、車両側のバッテリや電子キー7の電池といった電源の消耗を抑制することができる。
【0044】
・モータ2の回転状態とノイズの周波数とを関連付けして記憶する上記構成に関連し、モータ2の回転状態と電磁ノイズ特性とが関連付けされたノイズマップをスマートキーECU4が備える不揮発性のメモリ(記憶手段)に記憶するようにしてもよい。この場合、通信方式選択部5は、回転角センサ3で検出されたモータ2の回転状態に関連付けされた電磁ノイズ特性を前記ノイズマップを参照して特定することで、モータ2の回転状態に応じた電磁ノイズ特性を推定する。このようにモータ2の回転状態に関連付けされる電磁ノイズ特性は、ノイズの周波数に限定されない。同構成によると、ノイズマップを用いることで、モータ2の回転状態に応じた電磁ノイズ特性を容易に推定することができる。
【0045】
・上記ノイズマップを記憶する構成において、通信方式選択部5で選択された通信方法による通信が実施されないタイミングで、同通信方式選択部5がモータ2の回転状態に応じた電磁ノイズ特性を学習し、前記ノイズマップを更新するようにしてもよい。この場合の通信方式選択部5は学習手段に相当する。例えば、モータ2の回転速度又は回転角毎のノイズの周波数特性を計測し、計測で得たデータをノイズマップに反映させればよい。同構成によると、通信方式選択部5によりノイズマップが更新されることで、モータ2の回転状態に応じた電磁ノイズ特性を正確に推定することができる。また、モータ2の経時的な変化にも対応できる。
【0046】
・上記例でも触れたが、モータ2の回転状態は、モータ2の回転速度に限らず、モータ2の回転角であってもよい。この場合、モータ2の回転位置に特有の電磁ノイズ特性が通信制御に反映される。
【0047】
・通信方式の一例として、消費電力の少ない順にAM(Amplitude Modulation)方式、FM(Frequency Modulation)方式、スペクトラム拡散方式が存在し、後ろの方式程、ノイズ耐力の高いことが知られている。この点を踏まえ、ノイズが通信に与える影響の少ないときにはAM方式を選択することで消費電流を低減し、ノイズが通信に大きな影響を与えることが予想されるときにはスペクトラム拡散方式を選択する等の選択手法を採用してもよい。
【0048】
・誤り訂正に関する通信プロトコルを有する場合には、ノイズレベルに応じて訂正用のビット数を増減する等の選択手法を採用してもよい。
・車両が関わる無線通信として、TPMSと称されるタイヤ空気圧監視システムでの通信に関して通信方法を選択するものに本発明が適用されてもよい。この場合、車両の運転時には、モータ2(ハイブリッドモータ)の駆動とTPMSでの通信が共に実施されるので、モータ2の回転に伴うノイズの影響を回避する形で前記通信を好適に実施することができる。
【0049】
・モータのみを動力源とする電気自動車に本発明が適用されてもよい。
・ハイブリッド車或いは電気自動車に限らず、エンジン、すなわち内燃機関のみを動力源とする車両に本発明が適用されてもよい。すなわち、ノイズ源となるモータは、ハイブリッドモータに限定されない。例えば、上記ブロアモータ以外にも、ウインドウガラスを開閉駆動するパワーウインドウモータ等がノイズ源の一つに数えられる。また、ノイズ源はモータに限定されず、ノイズを発生する可能性のある車両機器は全てノイズ源に含まれる。
【0050】
・単一のノイズ源に限定されず、複数のノイズ源によるノイズの影響を考慮するかたちで通信方法が選択されてもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
【0051】
(イ)請求項2〜4のいずれか一項に記載の通信制御システムにおいて、モータの回転状態と電磁ノイズ特性とが関連付けされたノイズマップを記憶する記憶手段を備え、前記推定手段は、前記検出手段で検出されたモータの回転状態に関連付けされた電磁ノイズ特性を前記ノイズマップを参照して特定することで、モータの回転状態に応じた電磁ノイズ特性を推定することを特徴とする通信制御システム。同構成によると、ノイズマップを用いることで、モータの回転状態に応じた電磁ノイズ特性を容易に推定することができる。
【0052】
(ロ)上記(イ)に記載の通信制御システムにおいて、前記選択手段で選択された通信方法による通信が実施されないタイミングで、モータの回転状態に応じた電磁ノイズ特性を学習し、前記ノイズマップを更新する学習手段を備えることを特徴とする通信制御システム。同構成によると、学習手段によりノイズマップが更新されることで、モータの回転状態に応じた電磁ノイズ特性を正確に推定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…通信制御システム、2…モータ(ノイズ源)、3…回転角センサ(検出手段)、4…スマートキーECU、5…通信方式選択部(推定手段、選択手段)、6…通信部、7…電子キー、11…通信制御システム、12…ブロアモータ(ノイズ源)、13…エアコンECU(検出手段)、14…スマートキーECU、15…CPU(推定手段、選択手段、切換手段)、16…メモリ、17…LF送信部、18…RF受信部、19…周波数特性可変フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ源となる各種機器の搭載された車両に適用され、この車両が関わる無線通信の通信方法を選択する通信制御システムにおいて、
前記ノイズ源となる車両機器の動作状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出された車両機器の動作状態に基づいて、当該動作状態に特有の電磁ノイズ特性を推定する推定手段と、
前記推定手段で推定された電磁ノイズ特性に応じて通信方法を選択する選択手段とを備える
ことを特徴とする通信制御システム。
【請求項2】
モータを動力源とする車両に適用され、この車両が関わる無線通信の通信方法を選択する通信制御システムにおいて、
前記モータの回転状態を検出する検出手段と、
前記検出手段で検出されたモータの回転状態に基づいて、当該回転状態に特有の電磁ノイズ特性を推定する推定手段と、
前記推定手段で推定された電磁ノイズ特性に応じて通信方法を選択する選択手段とを備える
ことを特徴とする通信制御システム。
【請求項3】
前記検出手段は、前記モータの回転状態としてモータの回転速度を検出し、
前記推定手段は、前記検出手段で検出されたモータの回転速度を用いた演算により、ノイズインパルスの時間的な発生間隔を推定し、
前記選択手段は、ノイズインパルス間に通信が一括で又は分割されて実施される通信方法を選択する
請求項2に記載の通信制御システム。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の通信制御システムにおいて、
モータの回転状態とノイズの周波数とを関連付けして記憶する記憶手段を備え、
前記推定手段は、前記検出手段で検出されたモータの回転状態に関連付けされたノイズの周波数を前記記憶手段の記憶内容を参照して特定することで、モータの回転状態に応じたノイズの周波数を推定し、
前記選択手段は、前記推定手段で推定されたノイズの周波数とは異なる周波数を用いた通信方法を選択する
ことを特徴とする通信制御システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信制御システムにおいて、
特定周波数帯の信号をノイズとして除去する電気的なフィルタを備えるとともに、そのフィルタの周波数特性が、ノイズ源となる車両機器の動作状態と関連付けされ、
さらに、前記検出手段で検出された車両機器の動作状態に基づいて、当該動作状態に関連付けされているフィルタの周波数特性を選択するかたちで前記フィルタの周波数特性を切り換える切換手段を備える
ことを特徴とする通信制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−62044(P2012−62044A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171161(P2011−171161)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】