説明

通信制御装置および通信制御方法

【課題】無人店舗の蓄積データをデータ管理センタに送信するときに、送信完了予定時刻までに送信が完了するように送信開始時刻を制御する。
【解決手段】通信制御装置10がDVR20に記憶された蓄積データを送信するために、時間制御部11が、過去1年間分の送信レートの実績値(実績レート)を記憶した送信データ管理DB13を参照して、当日の364日前(すなわち、当日の曜日と同じほぼ1年前の曜日の月日)の実績レートを読み出して、予め設定しておいた設定レートの合計と実績レートの合計とを比較する。実績レートの合計が設定レートの合計以上であれば、定刻から設定レートで送信を開始する。それに対して、実績レートの合計が設定レートの合計より小さければ、補正レートを新たに設定して、補正レートの合計が設定レートの合計以上となるように送信開始時刻を早める設定を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融機関の現金自動預け払い機(ATM;Automated Teller Machine)の取引データや監視画像データ等の蓄積データをデータ管理センタに送信するときに、送信完了予定時刻までに送信が完了するように送信開始時刻を制御する通信制御装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金融機関が開設している無人店舗には、ATMや監視カメラが設置され、また、ATMの取引データを蓄積する記憶装置や監視カメラの画像データを蓄積する記憶装置が設置されている。そして、それらの記憶装置に記憶された蓄積データを収集する金融機関のデータ管理センタと無人店舗との間は、ベストエフォート型ネットワークで接続されている。
このベストエフォート型ネットワークの利用にあたっては、店舗ごとに目安として使用予定の通信レートが予め決められている。したがって、ベストエフォート型ネットワークの回線利用効率を高めるために、前記した蓄積データを送信してもよい時間帯と使用予定の通信レートとが予め計画されている。
【0003】
なお、データを送信する際に、データ送信レートが予め決められた上限の通信レートを超えないようにするシェーピング制御方式が開示されている(特許文献1)。
この開示されているシェーピング制御方式では、パケットを転送する優先度を決め、その優先度に応じて転送する時間帯を調整することによって、データ送信レートが上限の通信レートを超えないようにすることが可能である。
【特許文献1】特開2001−223745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、データ管理センタと無人店舗との間の通信に、前記したシェーピング制御方式を適用したとしても、計画通りに、データ送信が送信完了予定時刻までに完了しないという問題がある。これは、ベストエフォート型ネットワークでは、瞬間的に輻輳が起きる等、ネットワーク側の使用可能な帯域が時間的に変動しているためである。
【0005】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、無人店舗の蓄積データをデータ管理センタに送信するときに、送信完了予定時刻までに送信が完了するように送信開始時刻を制御することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するため、本発明に係る通信制御装置は、ベストエフォート型ネットワークを経由してデータを送信するとき、連続する時間帯に前記データを送信する制御を行う通信制御装置であって、所定の時間帯ごとに、前記データの送信レートを計画された設定レートと、過去の実績値である実績レートと、を記憶する記憶部と、前記記憶部から前記実績レートを読み出し、前記設定レートの合計および前記実績レートの合計を算出して、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計以上の場合、前記実績レートによって定まる送信開始時刻に基づいて前記データの送信を開始し、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計より小さい場合、前記設定レートで定められる送信開始のタイミングよりさらに前の時間帯に前記データを送信する補正レートを設定し、新たに設定した前記補正レートによって定まる送信開始時刻に基づいて前記データの送信を開始する制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、無人店舗の蓄積データをデータ管理センタに送信するときに、送信完了予定時刻までに送信が完了するように送信開始時刻を制御することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明を実施するための最良の形態(以降、「実施形態」と称す)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
本発明の実施形態に係るデータ送信システムの構成について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るデータ送信システムの構成を示す図である。
データ送信システム1は、データ管理センタ100に設置されているデータ管理装置50と、無人店舗110に設置されている通信制御装置10とがネットワーク40を介して、通信可能に接続され、構成されている。無人店舗110には、ATM30と監視カメラ21と監視カメラ21の画像データを蓄積するDVR(Digital Video Recorder)20とが設置されている。そして、ATM30およびDVR20は、通信制御装置10と通信可能に接続され、それぞれが記憶している蓄積データを、通信制御装置10およびネットワーク40を介して、データ管理センタ100に送信する。
【0010】
ただし、通信制御装置10は、図示しないルータを介してネットワーク40と接続されていてもよい。また、通信制御装置10とDVR20とは、LAN(Local Area Network)によって接続されていて、通信制御装置10とDVR20との間に、図示しないL2SW(Layer 2 SWitch)が配置されていてもよい。また、ネットワーク40は、ベストエフォート型ネットワークである。
DVR20は、監視カメラ21が撮影した画像データ(以降、蓄積データともいう)を、ハードディスク等の記憶装置に蓄積する。
なお、図1に記載されている、監視カメラ21、DVR20、およびATM30の数は、1台に限られない。
【0011】
次に、通信制御装置の機能について、図2を用いて説明する。図2は、通信制御装置の機能を示す図である。
通信制御装置10は、時間制御部11、転送実行部12および送信データ管理DB13(記憶部)とを備えている。
なお、通信制御装置10は、演算処理を実行する図示しないCPU(Central Processing Unit )と、このCPUが演算処理に用いる主記憶装置である図示しないメインメモリとを備える。メインメモリは、RAM(Random Access Memory)等により実現される。そして、図示しないハードディスク等によって構成される記憶部に格納されたアプリケーションプログラムがRAMに展開され、CPUが、それを実行することにより各部(11,12)の機能を具現化する。
【0012】
時間制御部11は、送信開始時刻(送信開始のタイミング)を算出して、DVR20に対してデータ送信開始の指示を出力し、DVR20に蓄積されている画像データ(蓄積データ)を取得する。
転送実行部12は、時間制御部11によって取得された蓄積データを格納したパケットを、所定の送信レートでネットワーク40に出力する。
また、送信データ管理DB13は、送信開始時刻と送信レートとを算出するために必要なデータを記憶している。
【0013】
ここで、送信データ管理DB13に格納されているデータについて、図3を用いて説明する。図3は、送信データ管理DBの一例を示す図である。
図3に示すように、送信データ管理DB13は、時間帯ごとに、標準レート、蓄積データの設定レート、実績レート、および補正レートが関連付けられている。なお、図3に示されている各レートの数値は、1を最大値としている。また、図3は、ATMの営業時間の時間帯が8時〜20時およびその営業時間外の時間帯が21時〜翌日7時である場合を示している。
【0014】
標準レートは、無人店舗110(図1参照)とデータ管理センタ100(図1参照)との通信に対して、予め計画されている通信レートである。そして、ATMの営業時間の時間帯8時〜20時は、標準レートが0.5で、ATMの営業時間外の時間帯21時〜翌日7時は、標準レートが0.9であるものとする。
蓄積データの設定レート(以降、設定レートともいう)は、DVR20に蓄積されている画像データ(蓄積データ)を送信するために予め計画されている通信帯域である。蓄積データの送信は、ATMの営業時間外の時間帯に行われるものとする。図3では、蓄積データの設定レートは、ATMの営業時間の時間帯8時〜20時が0で、ATMの営業時間外の時間帯21時〜翌日7時が0.9である場合を示している。
【0015】
実績レートは、過去1年間分を記憶した実績値の中から所定の処理によって決定される。例えば、蓄積データを送信する当日と同じ1年前の月日に最も近い当日と同じ曜日の実績値を用いる。
具体例で説明すると、当日が2008年8月25日で月曜日である場合、1年前の2007年8月25日は土曜日となる。したがって、当日の月日に最も近い月曜日である2007年8月27日(月曜日)の実績値を用いる。つまり、364日(7の倍数の日)前の実績値を用いる。
なお、前記所定の処理は、前記した364日前の実績値を読み出すことに限られることはなく、7の倍数に相当する同じ曜日の実績値であっても、所定数の同じ曜日の実績値についての平均値であっても構わない。
そして、図3に示すように、実績レートは、ATMの営業時間の時間帯は0で、ATMの営業時間外の時間帯は実績値が使用される。
【0016】
補正レートは、実績レートの合計が設定レートの合計より小さいとき、データ送信を8時(送信完了予定時刻)までに終了できるように、通信レートを補正したものである。
ここで、実績レートをA、設定レートをBとすると、A<Bである場合、Aの値に時間帯当たりの標準レートを参照して導かれた補正値(図3では0.5)を1回足す。C(1)=A+0.5≦Bであれば、C(2)=C(1)+0.5、C(3)=C(2)+0.5、C(4)=C(3)+0.5、・・・というように時間帯当たりの標準レートを参照して導かれた補正値0.5をC(n)≧Bとなるまで繰り返し足す。
C(n)≧Bとなったところで、ATMの営業時間外の時間帯である21時からn時間遡った時刻を送信開始時刻とするように通信レートを補正する(補正値を通信レートに設定する)。
図3では、蓄積データの設定レートの合計が9.9であり、実績レートの合計が9.3である。したがって、実績レートの合計は蓄積データの設定レートの合計より0.6小さい。そこで、その0.6分の不足を補うために、上記算出方法により営業時間内である19時〜20時の時間帯に遡って、標準レートを参照して、時間帯当り0.5の通信レート(標準レートを参照して導かれた補正値)が設定される。
このようにして、送信開始時刻が2時間繰り上げられることになる。
また、A<Bである場合、n=(―(A―B))/0.5として算出したnが帯小数(整数と小数の和でできている数、例えば、1.23等)または純小数(整数部分を含まない小数、例えば、0.12等)であれば、その整数部分に1を足した値だけATMの営業時間外の時間帯である21時から遡ってその時間を送信開始時刻とするように通信レートを補正するようにしてもよい。
上記の場合、n=0.6/0.5=1.2となるので、1.2の整数部分である1に1を足して、21時から2時間遡った19時を送信開始時刻とするように通信レートを補正する。
さらに、A<Bである場合、n=(―(A―B))/0.5として算出したnを用いて、ATMの営業時間外の時間帯である21時からn時間遡った時刻を送信開始時刻とするように通信レートを補正するようにしてもよい。
上記の場合、n=0.6/0.5=1.2となるので、21時から1.2時間遡った19時48分を送信開始時刻とするように通信レートを補正する。
このような補正をすることにより、ATMの営業時間の時間帯には極力蓄積データを送信しないように制御することが出来る。
【0017】
次に、時間制御部11の処理の流れについて、図4を用いて説明する。図4は、時間制御部の処理の流れを示す図である。
まず、ステップS301において、時間制御部11は、送信データ管理DB13を参照して、当日の月日に基づいて取得した過去の実績値(実績レート)を用いて実績レートを決定し、実績値の合計を算出する。
次に、時間制御部11は、実績値(実績レート)の合計が標準値(蓄積データの設定レート)の合計より小さいか否かを判定する(ステップS302)。
【0018】
実績値の合計が標準値の合計より小さい場合(ステップS302でYes)、時間制御部11は、実績値の合計が標準値の合計より大きくなる補正値(補正レート)を算出し、その補正値に基づいて、送信開始時刻を算出し、補正値を通信レートに設定する(ステップS303)。
実績値の合計が標準値の合計以上である場合(ステップS302でNo)、時間制御部11は、送信開始時刻を定刻とし、実績値を通信レートとして設定する(ステップS304)。なお、定刻とは、図3に示す例に当てはめれば、21時である。
【0019】
そして、時間制御部11は、送信開始時刻になったか否かを判定する(ステップS305)。
送信開始時刻になっていない場合(ステップS305でNo)、時間制御部11は待機する。
送信開始時刻になった場合(ステップS305でYes)、時間制御部11は、DVR20にデータ送信開始指示を出力する(ステップS306)。
【0020】
そして、時間制御部11は、DVR20から蓄積データを受信する(ステップS307)。次に、時間制御部11は、蓄積データと通信レートとを転送実行部12へ送信する(ステップS308)。
【0021】
そして、転送実行部12は、ステップS308において時間制御部11から受信した蓄積データを格納したパケットを、前記通信レートに基づいて、データ管理センタ100(図1参照)へ出力する。また、転送実行部12は、所定の時間あたりに送信できた送信レートを月日と関連付けて実績値として、送信データ管理DB13に格納する。
【0022】
以上、本発明の実施形態では、過去の実績値に基づいて蓄積データの送信開始時刻を決定しているので、送信完了予定時刻までにデータ送信を完了させることが可能となる。
なお、図1に示す無人店舗110は、同様の装置を備えた場所であれば、無人に限られなくともよい。
また、本発明の実施形態は、金融機関の無人店舗における監視用の画像データの場合について説明したが、これに限られることはなく、画像データ以外にもテキスト、音声、プログラム等の蓄積データの送信にも用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係るデータ送信システムの構成を示す図である。
【図2】通信制御装置の機能を示す図である。
【図3】送信データ管理DBの一例を示す図である。
【図4】時間制御部の処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0024】
1 データ送信システム
10 通信制御装置
11 時間制御部
12 転送実行部
13 送信データ管理DB
20 DVR
21 監視カメラ
30 ATM
40 ネットワーク
50 データ管理装置
100 データ管理センタ
110 無人店舗


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベストエフォート型ネットワークを経由してデータを送信するとき、連続する時間帯に前記データを送信する制御を行う通信制御装置であって、
所定の時間帯ごとに、前記データの送信レートが計画された設定レートと、過去の実績値である実績レートとのいずれか一方または双方、を記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記実績レートを読み出し、前記設定レートの合計および前記実績レートの合計を算出して、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計以上の場合、前記実績レートによって定まる前記連続する時間帯の送信開始のタイミングに基づいて前記データの送信を開始し、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計より小さい場合、前記設定レートで定められる送信開始のタイミングよりさらに前の時間帯に前記データを送信する補正レートを設定し、新たに設定した前記補正レートによって定まる前記連続する時間帯の送信開始のタイミングに基づいて前記データの送信を開始する制御部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
ベストエフォート型ネットワークを経由してデータを送信するとき、連続する時間帯に前記データを送信する制御を行う通信制御装置であって、
所定の時間帯ごとに、前記データの送信レートが計画された設定レートと、過去の実績値である実績レートとのいずれか一方または双方、を記憶する記憶部と、
前記記憶部から前記実績レートを読み出し、前記設定レートの合計および前記実績レートの合計を算出して、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計以上の場合、前記実績レートに基づいて前記データを送信し、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計より小さい場合、前記設定レートで定められている送信開始のタイミングよりさらに前の時間帯に前記データを送信する補正レートを設定し、新たに設定した前記補正レートに基づいて前記データを送信する制御部と、
を備えることを特徴とする通信制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計より小さい場合、前記設定レートで定められている送信開始のタイミングよりさらに前の時間帯に前記データを送信する補正レートを設定して前記実績レートの合計にその設定した前記補正レートを加算して前記設定レートの合計を上回るまで繰り返し、新たに設定した前記補正レートに基づいて前記データを送信する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記実績レートは、前記データを送信する当日と同じ曜日の過去の実績値、または、所定数の同じ曜日の前記過去の実績値についての平均値である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項5】
ベストエフォート型ネットワークを経由してデータを送信するとき、連続する時間帯に前記データを送信する制御を行う通信制御装置において用いられる通信制御方法であって、
前記通信制御装置が、
所定の時間帯ごとに、前記データの送信レートを計画された設定レートと、過去の実績値である実績レートと、を記憶する記憶部と、制御部とを有し、
前記制御部が、
前記記憶部から前記実績レートを読み出し、前記設定レートの合計および前記実績レートの合計を算出して、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計以上の場合、前記実績レートによって定まる前記連続する時間帯の送信開始のタイミングに基づいて前記データの送信を開始し、前記実績レートの合計が前記設定レートの合計より小さい場合、前記設定レートで定められる送信開始のタイミングよりさらに前の時間帯に前記データを送信する補正レートを設定し、新たに設定した前記補正レートによって定まる前記連続する時間帯の送信開始のタイミングに基づいて前記データの送信を開始する制御ステップを実行する
ことを備えることを特徴とする通信制御方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−57134(P2010−57134A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222750(P2008−222750)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】