説明

通信機の電源電圧残量通知装置及び電源電圧残量通知方法

【課題】電源電圧残量の通知を高い精度で行うことができる通信機の電源電圧残量通知装置及び電源電圧残量通知方法を提供する。
【解決手段】電子キー2が車両1との間の通信(スマート通信、ワイヤレス通信)を終了した直後、電池36の残量(電池残量)とその判定基準電圧とを比較し、電池残量が判定基準電圧以上であれば、電池残量が充分であるとしてLED41を一定時間の間、点灯又は点滅させる。一方、これとは逆に電池残量が判定基準電圧未満であれば、LED41を点灯させずに、電池残量が不足気味であることをユーザに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機の電源電圧残量を監視してユーザに通知する通信機の電源電圧残量通知装置及び電源電圧残量通知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、キー固有のIDコードを無線発信する電子キーを車両キーとして使用する電子キーシステムが搭載されている。電子キーは、自身のIDコードを近距離無線通信によって車両に発信し、車両にID照合を実行させてキーの正否を確認するキーである。ところで、電子キーは電波発信の電源として電池を内蔵し、同電池によって動作する。このため、通信実行できないレベル(電波発信下限電圧)まで電池残量が減ると電子キーは通信動作を実行することができないので、この状況下においてユーザに電池交換を促すために、電子キーに電池交換通知用のLED等を搭載する技術(特許文献1等参照)が開示されている。
【0003】
ここで、この種の技術例として、例えば図9に示すように、電波発信下限電圧Voffに至る前の基準として監視基準電圧Vlmを設定しておき、電池電圧Vccが電子キーの電池電圧Vccがこの監視基準電圧Vlmを下回るか否かを確認することで、電池切れが近づいていることをユーザに先行通知する技術が想定される。この技術の場合は、電子キーが電波発信する直前に電池電圧Vccを確認し、電池電圧Vccが監視基準電圧Vlmを下回っている場合、電波発信は行うが電子キーのLED81を点灯させず、このLED81の消灯を以て電池交換をユーザに促す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−17280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電池には、劣化すると電池電圧Vccが急激に低下する電圧変動をとる場合があるので、図9に示す例のように、最初は電池電圧Vccが監視基準電圧Vlmを超えていたにも拘わらず、急激な電圧降下により通信途中で電波発信下限電圧Voffを下回って即ち電池切れになり、通信が成立しないことも想定される。こうなると、実際のところは通信が成立していないにも拘わらず、LED81が点灯することを以てユーザは通信が成立したと誤認識してしまう問題があった。なお、これは必ずしもこの種の電子キーのみの問題ではなく、電池を電源として動作する各種通信機に広く関係する問題である。
【0006】
本発明の目的は、電源電圧残量の通知を高い精度で行うことができる通信機の電源電圧残量通知装置及び電源電圧残量通知方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信機の電源を監視し、その電源電圧の残量に基づく通知を通知手段で実行可能な通信機の電源電圧残量通知装置において、前記通信機とその通信相手との通信が完了した直後、前記電源の現在値を表す現在値パラメータと、次通信の際に前記通信機が最低限必要とする電力を満足する基準値との大小を比較する判定手段と、前記現在値パラメータが前記基準値を下回ると前記判定手段が判定した際、前記電源が下限に近づいている旨を前記通知手段でユーザに通知する通知制御手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、通信機と通信相手との通信が完了した直後、通信機の電源の現在値パラメータとその基準値とを比較し、現在値パラメータが基準値以上の値をとっていれば、電源残量が未だ充分残っている旨を通知手段により通知し、一方、現在値パラメータが基準値を下回る値をとっていれば、電源残量が下限に近づいている旨を通知手段により通知する。よって、通信機と通信相手との通信が完了したことが確認されてから電源残量の通知が実行されるので、通信完了後という動作終了以降のタイミングで通信機の電源残量通知が可能となる。このため、通信機が通知以降の電力消費に大きく左右されずに済むので、電源残量通知を精度よく行うことが可能となる。
【0009】
また、もし仮に最初は電源残量が充分であったにも拘わらず、意図せぬ急激な電圧降下により途中で電源が下限に至って通信が途中で強制終了されてしまった場合でも、このときは通信途中に、電源が残量不足、又は電源切れに陥ったことが通知手段によりユーザに通知される。よって、このような状況のときでも、電源電圧状態が正しくユーザに通知されるので、電源電圧の残量通知を精度よく行うことが可能となる。また、これに併せて通信が不成立になったこともユーザに通知可能となるので、通信成立可否の通知も精度よく行うことが可能となる。
【0010】
本発明では、前記判定手段は、前記現在値パラメータとしての前記電源の残電圧と、前記基準値としての基準電圧との電圧大小を比較することにより、前記電源電圧の残量判定を行うことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、現在値パラメータを電源の残電圧とし、基準値を予め決められた基準電圧としたので、電源の残電圧と基準電圧という2つの電圧値の大小を単に比較するという簡単な処理によって、電源電圧の残量を確認することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記基準電圧は、前記現在値パラメータが前記基準値を初めて下回った際、この時点であっても前記通信機が数回通信するのに必要な電圧は確保されるように値が設定されていることを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、電源の残電圧が基準電圧を下回って、電池残量が不足気味であることが通知手段によって通知される状態となっても、数回の通信自体は成立させることが可能となる。よって、電池不足通知がなされた後も、数回はそのまま通信機を使用することが可能となるので、この点で利便性が高いと言える。
【0014】
本発明では、通信機の電源を監視し、その電源電圧の残量に基づく通知を通知手段で実行可能な通信機の電源電圧残量通知方法において、前記通信機がその通信相手と通信を完了した際、前記電源の現在値を表す現在値パラメータと、次通信の際に前記通信機が最低限必要とする電力を満足する基準値との大小を比較し、前記現在値パラメータが前記基準値を下回る際に、前記電源が下限に近づいている旨を前記通知手段でユーザに通知することを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電源電圧残量の通知を高い精度で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態における電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】キー操作フリーシステムの通信動作を示すタイムチャート。
【図3】ワイヤレス信号の信号内容を概念的に示すデータ図。
【図4】電池残量通知システムの概略構成を示すブロック図。
【図5】キー電源の使用経過に対する電圧変化を示す波形図。
【図6】第2実施形態における電池残量通知システムのブロック図。
【図7】別例におけるワイヤレス通信の一態様を示すタイムチャート。
【図8】他の別例におけるワイヤレス信号の信号内容を概念的に示すデータ図。
【図9】従来システムの動作態様を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を車両に具体化した通信機の電源電圧残量通知装置及び電源電圧残量通知方法の第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、車両1には、車両キーとして使用される電子キー2との間で無線通信によりキー照合を行って、このキー照合の成立を条件にドアロック施解錠やエンジン始動が許可又は実行される電子キーシステム3が設けられている。この電子キーシステム3は、車両1からIDコードの返信要求としてリクエスト信号Srqを電子キー2に発信させ、このリクエスト信号Srqに応答して電子キー2が返信してきたID信号Sidによって自動的にID照合を行うキー操作フリーシステムが含まれている。なお、車両1が通信相手に相当し、電子キー2が通信機に相当する。
【0019】
このキー操作フリーシステムには、ドアロックの施解錠操作の際にキー操作を必要としない機能としてスマートエントリーシステムがある。この場合、車両1には、電子キー2との間でキー照合(ID照合)を行う照合ECU(Electronic Control Unit)4と、車載モータやリレー等の動作を管理するメインボディECU5とが設けられ、これらECU4,5が車内の一ネットワークであるLIN(Local Interconnect Network)6を介して接続されている。照合ECU4には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波(約134KHz)を発信可能な車外発信機7と、車内に同様のLF電波を発信可能な車内発信機8と、UHF(Ultra High Frequency)帯の一種であるRF(Radio Frequency:約312MHz)の電波を受信可能な車両チューナ9とが接続されている。また、メインボディECU5には、ドアロックの施解錠を実行するときの駆動源としてドアロックモータ10が接続されている。
【0020】
また、電子キー2には、電子キー2の各種動作を統括制御する通信制御回路11が設けられている。通信制御回路11は、例えば1チップのIC(Integrated Circuit)からなり、電子キー2の動作を統括管理する通信制御部12を備えている。通信制御部12は、CPU(Central Processing Unit)13やメモリ14等の各種デバイスを持ち、電子キー2が持つ固有のキーコードとしてIDコードがメモリ14に登録されている。
【0021】
電子キー2には、LF電波を受信可能なキー受信アンテナ15と、RF電波を発信可能なキー発信アンテナ16とが設けられている。キー受信アンテナ15は、通信制御回路11のAFE(Analog Front End)17を介して通信制御部12(CPU13)に接続されている。AFE17は、キー受信アンテナ15に接続されるとともに、キー受信アンテナ15で受信した受信電波を増幅して復調したり、或いは復調後の受信電波を解読したりして、処理後の受信データを通信制御部12に出力する。キー発信アンテナ16は、キー発信回路18を介して通信制御回路11に接続されている。キー発信回路18は、通信制御部12からの信号をRF電波に変換したり、増幅したりする回路である。
【0022】
図2に示すように、照合ECU4は、車両駐車時、車外発信機7からLF帯のウェイク信号19を断続的に発信させて、車両周辺にウェイク信号19の車外通信エリアを形成する。これにより、狭域無線通信(以降、スマート通信と記す)の成立可否を監視し、車両周囲における電子キー2の有無を見る。電子キー2がこの車外通信エリアに入り込んでウェイク信号19を受信すると、スマート通信が確立し、AFE17はウェイク信号19の正否を見るウェイクパターン照合を実行する。AFE17は、ウェイクパターン照合が成立することを確認すると、CPU13をそれまでのスリープ状態から起動状態に切り換える。CPU13は、起動状態に切り換わると、アック信号20をRF電波によってキー発信アンテナ16から発信させる。
【0023】
照合ECU4は、アック信号20の受信によって車両周囲に電子キー2が存在することを認識すると、車両固有のIDとしてビークルID21を、車外発信機7からLF電波で発信させる。通信制御部12は、ビークルID21を受信すると、ビークルID21の正否を見るビークルID照合を行い、通信相手の車両1が正規のものか否かを確認する。このように、ビークルID照合を実施するのは、電子キー2の周囲に車両が複数存在して通信が混在する状況になっても、この中の正規車両のみとスマート通信を行うためである。通信制御部12は、ビークルID照合が成立したことを確認すると、アック信号22をRF電波によってキー発信アンテナ16から発信させる。
【0024】
照合ECU4は、ビークルID21を発信した後の所定時間内にアック信号22を受信すると、ビークルID照合が成立したことを認識する。照合ECU4は、ビークルID照合が成立したことを認識すると、チャレンジ23をLF電波により発信させる。チャレンジ23には、発信の度に毎回値が変わるチャレンジコード(乱数コード)と、電子キー2のキー番号とが含まれている。なお、キー番号は、何番目のマスターキーであるのか、又は何番目のサブキーであるのかを通知するものである。このように、キー番号の照合を実施するのは、もし仮に通信エリア内にマスターキー及びサブキーの両方が存在していても、これらが同時に通信を開始しないようにするためである。
【0025】
通信制御部12は、チャレンジ23を受信すると、まずはこのチャレンジ23の中のキー番号の正否を見る番号照合を実行し、自身がこのときのスマート通信の通信対象であるか否かを判断する。そして、この番号照合が成立すると、通信制御部12は、同じチャレンジ23内に含まれるチャレンジコードを、自身の暗号鍵によって演算することにより、レスポンスコードを生成する。通信制御部12は、レスポンスの生成作業が終了すると、自身に登録されたIDコードとこのレスポンスコードとを、レスポンス24としてキー発信アンテナ16からRF電波によって発信させる。通信制御部12は、レスポンス24の発信が終了すると、スマート通信の動作を終了する。
【0026】
照合ECU4は、チャレンジ23を電子キー2に発信する際、自身が持つ暗号鍵によってチャレンジコードを演算して、自らもレスポンスコードを作成する。そして、照合ECU4は、電子キー2からレスポンス24を受信すると、電子キー2のレスポンスコードと、自身が演算したレスポンスコードとを照らし合わせて、レスポンス照合を実行する。照合ECU4は、このレスポンス照合が成立することを確認すると、同じレスポンス24内に含まれるIDコードと、自身のメモリ25に登録されたIDコードと、を比較してIDコード照合を行う。そして、照合ECU4は、レスポンス照合及びIDコード照合の両方が成立することを確認すると、いわゆるスマート照合(車外照合)が成立したと認識し、メインボディECU5によるドアロック施解錠動作を許可又は実行する。
【0027】
また、図1に示すように、キー操作フリーシステムには、エンジン始動停止操作の際に実際の車両キー操作を必要とせずに単なるスイッチ操作のみでエンジン26の始動停止操作を行うことが可能な機能としてワンプッシュエンジンスタートシステムがある。この場合、車内には、同システムの操作スイッチとしてプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ27が設けられている。エンジンスイッチ27は、照合ECU4及びメインボディECU5に接続されている。エンジンスイッチ27の操作機能には、エンジン始動停止機能の他に、電源遷移機能も割り当てられている。
【0028】
メインボディECU5には、エンジン26の点火制御や燃料噴射制御を管理するエンジンECU28が、車内の一ネットワークであるCAN(Controller Area Network)29を介して接続されている。メインボディECU5には、車載アクセサリに繋がるACC(Accessory)リレー30と、走行系の各種電装品に繋がるIG(Ignition)リレー31と、エンジンスタータ(図示略)に繋がるスタータリレー32とが接続されている。
【0029】
照合ECU4は、例えばカーテシスイッチ(図示略)により運転者の車内への乗車を確認すると、今度は車内発信機8からウェイク信号19の発信を開始して、車内全域に車内通信エリアを形成する。照合ECU4は、電子キー2が車内通信エリアに入り込むと、この電子キー2との間でスマート通信(車内通信)を開始し、車外照合のときと同様の手順でID照合、いわゆるスマート照合(車内照合)を行う。そして、照合ECU4は、この車内照合が成立することを確認すると、エンジンスイッチ27のプッシュ操作による電源状態切換を許可する。
【0030】
また、電子キーシステム3には、電子キー2のボタン操作による遠隔操作によってドアロックを施解錠可能なワイヤレスキーシステムが含まれている。この場合、電子キー2には、例えば押しボタン式の施錠ボタン33及び解錠ボタン34が設けられている。例えば、施錠ボタン33が操作されると、電子キー2のIDコードと、車両1にドアロック施錠の動作開始を要求する機能コード(施錠要求コード)とを含んだワイヤレス信号Swlが、キー発信アンテナ16からRF電波により発信される。そして、このワイヤレス信号Swlを車両1が受信して無線通信(ワイヤレス通信)が確立し、ワイヤレス信号SwlのIDコードのID照合(ワイヤレス照合)が成立すると、続く施錠要求コードによってドアロックが施錠する。
【0031】
ワイヤレス信号Swlは、図3に示すように、データ括りの単位であるフレーム35が複数(本例は3つ)並んだデータ配列をとっている。これらフレーム35,35…は、全て同じデータ内容(データ列)をとり、これら複数フレーム35,35…のうちの1つでも読み取ることができれば、ワイヤレス信号Swlの受信が成立する。このように、ワイヤレス信号Swlの発信に際して複数のフレーム35,35…を発信するのは、車両チューナ9で周期的に実行されるポーリングでフレーム35を途中から受信しても、そのポーリングで次フレームを先頭から読み込ませることで、フレーム35を先頭から読み取り可能とするためである。
【0032】
各フレーム35,35…は、フレーム35の始まりを通知するフレームスタートビットと、電子キー2のIDコードと、施錠ボタン33や解錠ボタン34を操作する度にコードが変わるローリングコードと、操作ボタンが何であるのかを通知する機能コードとからなる。よって、フレーム35の先頭がフレームスタートビットによって認識され、続くIDコード及びローリングコードでワイヤレス信号Swlの照合が実行され、ワイヤレス信号Swlによる動作指示が機能コードによって指定される。ローリングコードは、IDコードとともにメモリ14に保持され、使用される度に値が1つずつカウントアップされる。
【0033】
図4に示すように、電子キーシステムには、電子キー2の電源である電池36の消耗状態を通知する電池残量通知システム37が設けられている。この電池残量通知システム37は、電子キー2による電波発信が完了した際、電池電圧Vccの残量(以下、電池残量Vx(図5参照)と記す)と、電子キー2が少なくとも1回の通信を行うのに最低限必要な電圧の基準となる判定基準電圧Vk(図5参照)と比較し、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回る場合、電池残量Vxが残り少ないことをユーザに通知するシステムである。なお、電池36が電源に相当し、電池電圧Vccが電源電圧に相当する。また、電池残量Vxが現在値パラメータ、電源の残電圧を構成し、判定基準電圧Vkが基準値、基準電圧を構成する。
【0034】
この場合、通信制御部12には、電子キー2が車両1と通信(スマート通信、ワイヤレス通信)を実行した際、その通信が最後まで完了されたか否かを確認する通信終了確認部38が設けられている。通信終了確認部38は、例えば通信データを全て送り切ることができたか否かを見ることにより通信完了判定を行い、例えばスマート通信の場合にはレスポンス24を、ワイヤレス通信の場合には多フレーム35,35…から構成される最後のフレーム35を、それぞれ送り切ることができたかによって通信終了を確認する。なお、通信終了確認部38が判定手段を構成する。
【0035】
通信制御部12には、電池残量Vxを監視する電池残量監視部39が設けられている。電池残量監視部39は、電子キー2が通信(スマート通信、ワイヤレス通信)の全発信データを完了したこと、即ち通信が完了したことを通信終了確認部38が確認すると、電池36の電圧をモニタリングする。そして、電池残量監視部39は、電池残量Vxと判定基準電圧Vkとを比較し、電池残量Vxが判定基準電圧Vk以上の値を維持していれば、通信制御部12のメモリ14にフラグをセットし、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回っていれば、同メモリ14にフラグをセットしない。なお、電池残量監視部39が判定手段を構成する。
【0036】
本例の判定基準電圧Vkは、次通信でスマート通信又はワイヤレス通信のどちらかを少なくとも数回最後まで実行するのに必要な電圧に相当する。例えば、スマート通信の場合には、ウェイク信号19の受信及びそのアック返信、ビークルID21の受信及びそのアック返信、チャレンジ23の受信及びそのレスポンス24の返信を、数回実行するのに最低限必要な電圧に相当する。また、ワイヤレス通信の場合には、多フレーム35,35…からなるワイヤレス信号Swlを、数回最後まで発信するのに必要な電圧に相当する。
【0037】
また、通信制御部12には、メモリ14のフラグ状態を基に、電池消耗状態の通知動作を実行する通知実行部40が設けられている。通知実行部40は、電子キー2が電波発信を行う際にメモリ14のフラグを確認しにいき、メモリ14にフラグが立っていれば、電池残量Vxが充分であると認識して、LED41を点灯又は点滅させ、逆にメモリ14にフラグが立っていなければ、電池残量Vxが不足気味であると認識してLED41の点灯又は点滅を行わず、電池残量Vxが不足気味であることをユーザに通知する。なお、通知実行部40が通知制御手段を構成し、LED41が通知手段を構成する。
【0038】
次に、本例の電池残量通知システム37の動作を図5に従って説明する。
電子キー2が車両1と各種通信(スマート通信、ワイヤレス通信)を行う場合、電子キー2は内蔵の電池36を電源として各種電波(アック信号20,22、レスポンス24、ワイヤレス信号Swl)を発信する。このとき、図5に示すように、電波発信が実行される度に電池36の電力が消費され、電池36の電池残量Vxが徐々に減っていく。
【0039】
電池残量監視部39は、1回の通信において必要な電波を全て送り終わり、電波発信が全て完了したことを認識すると、通信終了後の電池残量Vxを確認する。このとき、電池残量監視部39は、図5に示すように、電池残量Vxが判定基準電圧Vk以上の値を確保していることを確認すると、電池残量Vxが充分残っていることをユーザに通知すべくメモリ14にフラグをセットする。一方、電池残量監視部39は、電池残量Vxが判定基準電圧Vk未満であることを確認すると、電池残量Vxが不足気味であることをユーザに通知すべくフラグをメモリ14にセットしない。
【0040】
電子キー2が次通信を実行する際、通知実行部40はメモリ14のフラグ状態を確認する。通知実行部40は、メモリ14にフラグがセットされていることを確認すると、電池残量Vxが充分残っているとして、LED41を一定時間の間、点灯又は点滅させる。これにより、電子キー2に電池残量Vxが充分に残っていること、言い換えるならば、今回通信分の電池残量Vxは確実に残っていることがユーザに通知される。
【0041】
一方、通知実行部40は、フラグ確認の際、メモリ14にフラグがセットされていないことを確認すると、電池残量Vxが不足気味であるとして、LED41に点灯又は点滅の動作を実行させない。これにより、ユーザには電池残量Vxが不足気味であることが通知されるので、ユーザに電池交換を促すことが可能となる。よって、電子キー2の電池36が新しいものに交換されるので、通信の途中で電池切れを起こしてしまうような不安定な状態で電子キー2を継続使用させずに済む。
【0042】
ここで、電池36には、使用されていない期間中、電池残量Vxが徐々に回復していくという特性がある。よって、1つ前の通信で電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回っても、次通信の際にはこの回復電圧によって、電子キー2は例えば数回程度の通信動作が可能となっている。このため、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを一時的に下回っても、電子キー2による車両操作は可能である。
【0043】
また、例えば図5の一点鎖線に示すように、例えば最初は電池電圧Vccが判定基準電圧Vkを超えているにも拘わらず、例えば劣化等を要因として通信時の消費により急激に低下して電波発信下限電圧Voffを下回ってしまう場合もある。しかし、このときは次通信においてLED41が消灯状態をとるので、車両1に接近したり或いは電子キー2のボタンを操作したりしても、この場合はLED41が点灯しないことを以て、ユーザに電子キー2の電池残量Vxが少なくなったこと、若しくは切れたことが通知される。よって、本例はこの点から見ても電池残量Vxの通知精度がよいと言える。
【0044】
以上により、本例の場合は、通信が終わった直後に電池残量Vxを確認し、この電池残量Vxで次通信が可能かどうか先行して確認する。このため、通信成立結果を精度よくユーザに通知することが可能となる。また、電池36の電池残量は使用していない間において回復するという特性を活かし、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回った後、数回の通信は可能である。このため、直ぐに電子キー2が電池切れに陥る状況にならず、電池交換の猶予が与えられるので、ユーザの利便性も確保することが可能となる。
【0045】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2が通信を終了した直後、電池残量Vxと判定基準電圧Vkとを比較し、電池残量Vxが判定基準電圧Vk以上であれば、電池残量Vxが充分であるとしてLED41を一定時間の間、点灯又は点滅させ、逆に電池残量Vxが判定基準電圧Vk未満であれば、LED41を点灯させずに、電池残量Vxが不足気味であることをユーザに通知する。よって、通信が最後まで完了した後に電池残量Vxの確認及び通知が行われるので、通知の際に電池電圧Vccが大きく消費される状況にならずに済む。このため、電子キー2の通知が通知開始以降の電源消費に大きく左右されなくなるので、電池残量Vxの通知を精度よく行うことができる。
【0046】
(2)図5の一点鎖線に示す例のように、通信開始時は電池電圧Vccが判定基準電圧Vkを超えているにも拘わらず、劣化等を要因とした急激な電圧降下によって電池電圧Vccが通信途中で電波発信下限電圧Voffを下回って電池切れに陥った場合、次通信においてLED41は点灯動作をとらないので、電子キー2の電池36が電圧不足になったこと、又は電池切れになったことが分かる。よって、この点からも本例は電池残量Vxの通知精度が高い技術と言える。
【0047】
(3)電池残量Vxと判定基準電圧Vkとの2つの電圧値を比較して電池36の残量を判定するので、2電圧値を比較するという簡単な処理によって電池残量Vxを確認することができる。
【0048】
(4)電子キー2の電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回っても、数回の通信(スマート通信、ワイヤレス通信)は実行できるような値に判定基準電圧Vkを設定した。このため、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回っても、キー通信自体は何回か成立させることが可能となるので、電池残量Vxが残り僅かであることを通知すべくLED41が点灯しない状態をとっても、数回の通信自体は成立させることができる。
【0049】
(5)電子キー2側で電池残量Vxの通知を行うので、ユーザの手元位置という極力近い箇所で電源残量通知を実行することができる。
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図6に従って説明する。本例は、第1実施形態では電子キー2側で行っていた電池残量通知を、今度は車両1側で行う点が第1実施形態と異なっている。よって、本例は、第1実施形態と基本的に同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0050】
図6に示すように、電子キー2の通信制御部12には、電池残量Vxと判定基準電圧Vkとの比較結果を車両1に通知する通知伝達部45が設けられている。この通知伝達部45は、電子キー2が車両1と通信を行う際、このときにやり取りする通信データにフラグ情報Dfを付加して、電池残量Vxを車両1に通知する。フラグ情報Dfは、通信完了後の電池残量Vxと判定基準電圧Vkとの大小の比較結果である。フラグ情報Dfは、スマート通信の場合、レスポンス24の末尾に付加され、ワイヤレス通信の場合、複数並ぶフレーム35,35…の最後のフレーム35の末尾に付加される。
【0051】
また、車両1には、車両1における各種警告動作を管理する警告ECU46が設けられている。警告ECU46には、車両1のハザード47、ブザー48及びホーン49等が接続されている。警告ECU46には、電子キー2から受信したフラグ情報Dfを基に、電子キー2の電池残量Vxの通知を実行する通知実行部50が設けられている。通知実行部50は、フラグ情報Dfを基に電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回ることを認識すると、通常ならば動作させるハザード47やブザー48やホーン49等を駆動せず、電子キー2の電池交換をユーザに視覚的に促す。なお、ハザード47、ブザー48及びホーン49が通知手段を構成し、通知実行部50が通知制御手段を構成する。
【0052】
さて、本例の場合、通信時のデータにフラグ情報Dfが付加され、このフラグ情報Dfによって電池残量Vxが電子キー2から車両1に通知される。そして、電池残量Vxが少ない場合には、その旨を車両1のハザード47、ブザー48、ホーン49等で行うように、車両1側で通知を実行する。ところで、電子キー2は衣服のポケットやカバンの中に収納されたまま使用されることが多いので、電子キー2で通知動作を実行しても、これに気付かない場合も想定される。しかし、本例はこの種の通知を車両1側で行うので、電池残量Vxの通知を、より気付き易い態様で行うことが可能となる。
【0053】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(4)の効果に加え、以下に記載の効果を得ることができる。
(6)車両1側で電池残量Vxの通知を行うので、電子キー2を所持したユーザが車両1に乗り込む乗車過程において、ユーザが必ず目にする箇所(視界エリア)で電池残量Vxの通知を実行することができる。
【0054】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1実施形態において、ワイヤレス通信のようにフレーム35を複数発信する場合には、図7に示すように、1フレームを送信できた時点で通信が完了したと判定させてもよい。
【0055】
・第2実施形態において、ワイヤレス通信のようにフレーム35を複数発信する場合、例えば図8に示すように、フレーム35,35…ごとに、電池残量Vxの情報としてフラグ52を乗せ、電池36の消耗状況をより細かく車両1に通知してもよい。また、このフラグ52は、単に電池残量Vxが判定基準電圧Vkに対する大小の情報に限らず、実際の電圧値の値としてもよい。
【0056】
・第1及び第2実施形態において、電池残量Vxの残量判定結果は、電池残量Vxが充分残っていればLED41を点灯又は点滅させ、電池残量Vxが不足気味であればLED41を点灯させない組み合わせに限らない。例えば、この組み合わせを逆とし、電池残量Vxが充分のときにはLED41を消灯させ、電池残量Vxが不足気味のときにLED41を点灯又は点滅させるものでもよい。
【0057】
・第1及び第2実施形態において、電池残量Vxの判定は、電池36の現電圧値と、判定基準電圧Vkとの2電圧を比較する方式に限定されない。例えば、電池電圧Vccは下限に近づくに連れて電圧変化の傾きが大きくなる特性を利用し、電池電圧Vccの電圧変化の傾きとその基準傾きとを比較することにより、電池電圧Vccの残量を確認するものもでもよい。
【0058】
・第1及び第2実施形態において、電子キー2の電源は、一次電池に限らず、例えば二次電池でもよいし、或いはコンデンサ等からなるものでもよい。
・第1及び第2実施形態において、通知手段は、LED41、ハザード47、ブザー48、ホーン49等に限定されない。例えば、例えば電子キー2にディスプレイが搭載されていれば、同ディスプレイに文字表示されるものでもよい。要は、電池残量通知を実行できるものであれば、どのような機器や装置を使用してもよい。
【0059】
・第1及び第2実施形態において、判定基準電圧Vkは、必ずしも電子キー2が全データを送るのに必要な電圧値に設定されることに限定されない。要は、電子キー2と車両1とが通信を行った際に、車両1が電子キー2の通知を理解できるデータを送り届けることができる最低限必要な電圧であればよい。
【0060】
・第1及び第2実施形態において、判定基準電圧Vkは、例えば10回程度の通信が可能となるように、高めの値として設定されてもよい。
・第1及び第2実施形態において、電池36は、使用されない期間において電圧が若干量回復する特性を持つものに限らず、この特性がないものでもよい。
【0061】
・第1及び第2実施形態において、電池残量Vxが判定基準電圧Vkを下回るか否かの判定は、未満及び以下の両方を含むものとする。
・第1及び第2実施形態において、スマート通信は、ウェイク信号19→ビークルID21→チャレンジ23を車両1が順に電子キー2に発信する通信形式をとることに限らず、例えばこれらを一括して電子キー2に送るものでもよい。
【0062】
・第1及び第2実施形態において、スマート通信は、車両1→電子キー2の往路通信と、電子キー2→車両1の復路通信とで、それぞれ周波数が異なることに限らず、これら両通信で同じ周波数としてもよい。
【0063】
・第1及び第2実施形態において、電子キーシステム3は、キー操作フリーシステムやワイヤレスキーシステムに限定されない。例えば、電子キー2にトランスポンダ等のIDチップを組み込み、このIDチップによってID照合を行うイモビライザーシステムでもよい。
【0064】
・第1及び第2実施形態において、ワイヤレスキーシステムは、ワイヤレスドアロックシステムに限らず、例えばパワースライドドアシステムを採用してもよい。
・第2実施形態において、車両1への通知は、スマート通信やワイヤレス通信を利用して行われることに限定されず、これら通信に対して独立して行われるものでもよい。
【0065】
・第1及び第2実施形態において、電池残量通知システム37は、車両1のみに搭載されることに限らず、無線により通信を行う機器、装置、システムであれば、どのような種のものでもよい。
【0066】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記通知手段は、前記通信機に設けられ、前記電源が下限に近づいている旨を当該通信機側で行う。この構成によれば、電源電圧の残量通知を通信機側で行うので、ユーザの手元位置という極力近い箇所で残量通知を実行することが可能となる。
【0067】
(ロ)請求項1〜3のいずれかにおいて、前記判定手段は、前記現在値パラメータが前記基準値を下回ると前記判定手段が判定した際、その旨の通知を無線によって前記通信機の通信相手に伝達する伝達手段を備え、前記通知制御手段は、前記通信相手に設けられ、前記現在値パラメータが前記基準値を下回る通知を前記通信機(前記伝達手段)から受信すると、同じく前記通信相手に設けられた前記通知手段で、前記電源電圧の残量が下限に近づいていることを通知する。この構成によれば、電源電圧の残量通知を通信相手側で行うので、操作過程で必ずユーザが目にすると思われる通信相手でこの種の通知を実行することが可能となる。
【0068】
(ハ)請求項1〜3、前記技術的思想(イ),(ロ)のいずれかにおいて、前記基準電圧は、次通信おいて前記通信機がその通信相手に電波を発信する際に、当該電波を最後まで送るのに必要な電圧値に相当する。この構成によれば、次通信でも電波を最後まで発信し切ることが可能となる。
【0069】
(ニ)請求項1〜3、前記技術的思想(イ)〜(ハ)のいずれかにおいて、前記基準電圧は、次通信において前記通信機が前記通信相手と通信する際に、当該通信相手を制御し得る最低限の通信単位(1フレーム)を送るのに必要な電圧値に相当する。この構成によれば、通信機が通信相手を制御するのに最低限必要となる情報を通信相手に送ることが可能となるので、次通信をより確実に成立に至らせることが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1…通信相手としての車両、2…通信機としての電子キー、36…電源としての電池、38…判定手段を構成する通信終了確認部、39…判定手段を構成する電池残量監視部、40,50…通知制御手段としての通知実行部、41…通知手段を構成するLED、47…通知手段を構成するハザード、48…通知手段を構成するブザー、49…通知手段を構成するホーン、Vcc…電源電圧としての電池電圧、Vx…現在値パラメータ、電源の残電圧を構成する電池残量、Vk…基準値、基準電圧を構成する判定基準電圧。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信機の電源を監視し、その電源電圧の残量に基づく通知を通知手段で実行可能な通信機の電源電圧残量通知装置において、
前記通信機とその通信相手との通信が完了した直後、前記電源の現在値を表す現在値パラメータと、次通信の際に前記通信機が最低限必要とする電力を満足する基準値との大小を比較する判定手段と、
前記現在値パラメータが前記基準値を下回ると前記判定手段が判定した際、前記電源が下限に近づいている旨を前記通知手段でユーザに通知する通知制御手段と
を備えたことを特徴とする通信機の電源電圧残量通知装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記現在値パラメータとしての前記電源の残電圧と、前記基準値としての基準電圧との電圧大小を比較することにより、前記電源電圧の残量判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信機の電源電圧残量通知装置。
【請求項3】
前記基準電圧は、前記現在値パラメータが前記基準値を初めて下回った際、この時点であっても前記通信機が数回通信するのに必要な電圧は確保されるように値が設定されていることを特徴とする請求項2に記載の電源電圧残量通知装置。
【請求項4】
通信機の電源を監視し、その電源電圧の残量に基づく通知を通知手段で実行可能な通信機の電源電圧残量通知方法において、
前記通信機がその通信相手と通信を完了した際、前記電源の現在値を表す現在値パラメータと、次通信の際に前記通信機が最低限必要とする電力を満足する基準値との大小を比較し、前記現在値パラメータが前記基準値を下回る際に、前記電源が下限に近づいている旨を前記通知手段でユーザに通知することを特徴とする通信機の電源電圧残量通知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−50203(P2011−50203A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−198100(P2009−198100)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】