説明

通信装置、および通信安定化方法

【課題】通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることが可能な通信装置、および通信安定化方法を提供する。
【解決手段】外部装置から送信される所定周波数の搬送波を受信するアンテナを有し、所定周波数の搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な情報処理装置を複数保持し、保持された複数の情報処理装置を搬送する搬送部と、所定周波数の搬送波を送信し、搬送部により保持された複数の情報処理装置のうち、通信対象の一の情報処理装置と通信を行う、複数のリーダ/ライタと、リーダ/ライタが送信する搬送波のうち、リーダ/ライタと一の情報処理装置との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断する、リーダ/ライタごとに設けられたシールド部と、情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止する伝搬防止部とを備える通信装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、および通信安定化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式IC(Integrated Circuit)カードや、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、非接触式ICチップを搭載した携帯電話など、リーダ/ライタ(または、リーダ/ライタ機能を有する情報処理装置)と非接触式に通信可能な情報処理装置が普及している。
【0003】
リーダ/ライタと、ICカードなどの情報処理装置とは、例えば13.56MHzなど特定の周波数の磁界(搬送波)を通信に使用している。具体的には、リーダ/ライタが搬送波信号をのせた搬送波を送信し、搬送波をアンテナで受信した情報処理装置が負荷変調によって受信した搬送波信号に対する応答信号を返信することにより、リーダ/ライタと情報処理装置とは通信を行う。
【0004】
また、上記のようなリーダ/ライタと非接触式に通信可能な情報処理装置は、耐タンパ性を有するICチップを備えることにより、例えば、電子マネーなどデータの改竄が問題となるデータの送受信や更新を安全に行うことができる。したがって、上記のようなリーダ/ライタと非接触式に通信可能なICチップを搭載した情報処理装置を利用した様々なサービスの提供が社会的に広がっている。そして、サービスの提供の広がりに伴い、ICカードや携帯電話などのICチップを搭載した情報処理装置の普及がさらに進んでいる。
【0005】
このような中、リーダ/ライタと非接触通信が可能な情報処理装置の検査における通信干渉の抑制を図る技術が開発されている。リーダ/ライタの周りをシールドすることによって、リーダ/ライタ間の通信干渉を抑制する技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。また、検査対象の情報処理装置と隣接する情報処理装置との間の通信干渉を抑制する技術としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−272437号公報
【特許文献2】特開2005−284331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ICカードなどのリーダ/ライタと非接触通信が可能な情報処理装置が製造される場合、製造工程では、例えば、情報処理装置が備えるICチップに対してリーダ/ライタによるデータの書込み、読出しを行う通信検査処理が行われる。ここで、上記ICチップは、情報処理装置がリーダ/ライタとの非接触式の通信(以下、「非接触通信」という。)を実現するための、非接触通信機能を有する集積回路である。また、製造された各情報処理装置に対しては、例えば、ICチップが備える内部メモリへの通信を暗号化するための暗号鍵の設定や、メモリ領域の初期化(特定のデータフォーマット)などの発行処理がリーダ/ライタとの非接触通信により行われる(発行工程)。
【0008】
ここで、上記通信検査処理や発行処理は、例えば、複数の情報処理装置を搬送する搬送部と、複数のリーダ/ライタとを備え、情報処理装置それぞれと非接触通信を行う通信装置を用いて行われる。上記通信装置を用いることによって、例えば、情報処理装置の製造ライン上で上記通信検査処理や発行処理を行うことが可能となる。
【0009】
近年、ICカードなどの情報処理装置の高機能化がますます進んでおり、情報処理装置には、リーダ/ライタ(または、リーダ/ライタ機能を有する情報処理装置)との通信におけるより高い信頼性が求められている。そのため、上記通信装置には、より受信感度が高いリーダ/ライタを備える必要性が生じている。さらに、例えば、上記通信装置の小型化や情報処理装置の大量生産化に伴い、上記通信装置が備える複数のリーダ/ライタ間の距離は、より短くなる傾向にある。
【0010】
リーダ/ライタと情報処理装置とは、例えば、13.56MHzなど所定の周波数の磁界(以下、「搬送波」という。)を用いて非接触式に通信を行う。より具体的には、リーダ/ライタが搬送波信号をのせた搬送波を送信し、搬送波をアンテナで受信した情報処理装置が負荷変調によって受信した搬送波信号に対する応答信号を返信することにより、リーダ/ライタと情報処理装置とは通信を行う。ここで、リーダ/ライタの受信感度(例えば、アンテナ端に生じる電圧の変化の検出感度)が向上すればするほど、リーダ/ライタは、ノイズの影響をより受けやすくなる。よって、リーダ/ライタを複数備えた通信装置では、リーダ/ライタと通信対象の情報処理装置との間の通信にノイズとなる電磁波(より厳密には磁界。以下、単に「ノイズ」とよぶ場合がある。)が混入しないように対策を講じる必要がある。通信対象の情報処理装置との間の通信においてノイズが混入した場合には、例えば、通信検査処理の検査結果に誤検出が生じたり、発行処理の結果に誤検出が生じるなど、望ましくない事象が生じる可能性があるからである。また、通信対象の情報処理装置との間の通信におけるノイズの混入は、通信干渉と捉えることができる。
【0011】
ここで、リーダ/ライタの周りをシールドすることによってリーダ/ライタ間の通信干渉を抑制する従来の技術(以下、「従来の技術1」という。)は、リーダ/ライタを電磁波を遮断するシールド箱で覆う。よって、従来の技術1を用いることによって、一のリーダ/ライタが送信した搬送波が、他のリーダ/ライタと情報処理装置との間の通信に直接影響を与えること(当該搬送波がノイズとなること)を抑制することができる。
【0012】
ここで、リーダ/ライタと情報処理装置との間の通信に影響を与えうるノイズは、一のリーダ/ライタが送信した搬送波そのものに限られない。例えば、情報処理装置間で伝搬される電磁波が、リーダ/ライタと情報処理装置との間の通信に影響を与えうるノイズとなる可能性がある。しかしながら、従来の技術1では、例えば、上記情報処理装置間で伝搬される電磁波の影響について、何らの考慮もなされていない。したがって、従来の技術1を用いた通信装置では、リーダ/ライタと情報処理装置との間にノイズが混入する恐れがある。
【0013】
また、検査対象の情報処理装置と隣接する情報処理装置との間の通信干渉を抑制する従来の技術(以下、「従来の技術2」という。)は、検査対象の情報処理装置の偏波面と隣接する情報処理装置の偏波面とが90度異なる方向を向くように情報処理装置を搬送する。また、従来の技術2は、シールド部材の使用を意図的に除外し、シールド部材を使用せずに通信干渉の抑制を図る技術である。
【0014】
しかしながら、従来の技術2を用いる場合には、一のリーダ/ライタが送信した搬送波が、他のリーダ/ライタと情報処理装置との間の通信に直接的にノイズとして混入する可能性が高い。また、従来の技術2は、検査対象の情報処理装置と物理的に隣接する情報処理装置との間の通信干渉のみの抑制を図っているに過ぎない。つまり、従来の技術2を用いたとしても、例えば、リーダ/ライタと通信を行う通信対象の情報処理装置に、当該情報処理装置の2つ隣に位置する情報処理装置から電磁波が伝搬された場合には、当該電磁波は通信に影響を与えうるノイズとなる可能性がある。したがって、従来の技術2を用いた通信装置では、リーダ/ライタと情報処理装置との間にノイズが混入する恐れがある。
【0015】
以上のように、従来の技術1および従来の技術2(以下、総称して「従来の技術」という。)を用いたとしても、リーダ/ライタと情報処理装置との間にノイズが混入する恐れがある。したがって、従来の技術を用いた通信装置(以下、「従来の通信装置」とよぶ場合がある。)では、ノイズによる通信干渉を十分に抑制することができず、リーダ/ライタと情報処理装置との間における通信の安定化は望むべくもない。
【0016】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることが可能な、新規かつ改良された通信装置、および通信安定化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、外部装置から送信される所定周波数の搬送波を受信するアンテナを有し、上記所定周波数の搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な情報処理装置を複数保持し、保持された複数の上記情報処理装置を搬送する搬送部と、上記所定周波数の搬送波を送信し、上記搬送部により保持された複数の情報処理装置のうち、通信対象の一の情報処理装置と通信を行う、複数のリーダ/ライタと、上記リーダ/ライタが送信する搬送波のうち、上記リーダ/ライタと上記一の情報処理装置との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断する、上記リーダ/ライタごとに設けられたシールド部と、上記情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止する伝搬防止部とを備える通信装置が提供される。
【0018】
かかる構成により、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【0019】
また、上記伝搬防止部は、上記リーダ/ライタの通信対象ではない他の情報処理装置に近設され、上記他の情報処理装置の少なくとも1面の一部または全部を覆うシールド部材を備えてもよい。
【0020】
また、上記シールド部材は、上記他の情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断する金属体であってもよい。
【0021】
また、上記シールド部材は、上記情報処理装置が上記搬送部に保持される面側に設けられてもよい。
【0022】
また、上記シールド部材は、上記情報処理装置が上記搬送部に保持される面と垂直であり、かつ上記搬送部における上記情報処理装置の搬送方向と垂直な面に設けられてもよい。
【0023】
また、上記シールド部材は、上記情報処理装置が上記搬送部に保持される面と垂直であり、かつ上記搬送部における上記情報処理装置の搬送方向に沿って設けられてもよい。
【0024】
また、上記シールド部材は、上記情報処理装置が上記搬送部に保持される面と反対の面側に設けられてもよい。
【0025】
また、上記伝搬防止部は、上記リーダ/ライタの通信対象ではない他の情報処理装置のうち、少なくとも1つの情報処理装置が有する上記アンテナを通過する磁束を0とさせてもよい。
【0026】
また、上記伝搬防止部は、少なくとも1つの上記他の情報処理装置が保持される高さを変えてもよい。
【0027】
また、上記伝搬防止部は、上記一の情報処理装置と上記他の情報処理装置との間隔、および/または、1または2以上の上記他の情報処理装置間の間隔を変えてもよい。
【0028】
また、上記搬送部が搬送する上記情報処理装置は、ICカードであってもよい。
【0029】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、外部装置から送信される所定周波数の搬送波を受信するアンテナを有し、上記所定周波数の搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な情報処理装置を複数保持し、保持された複数の情報処理装置を搬送するステップと、上記搬送するステップにおける上記情報処理装置の搬送路上に設けられた複数のリーダ/ライタそれぞれが、上記所定周波数の搬送波を送信し、上記複数の情報処理装置のうち通信対象の一の情報処理装置と通信を行うステップと、上記リーダ/ライタが送信する搬送波のうち、上記リーダ/ライタと上記一の情報処理装置との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断するステップと、上記情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止するステップと;
を有する通信安定化方法が提供される。
【0030】
かかる方法を用いることにより、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の技術に係る通信装置の一例を示す説明図である。
【図2】従来の技術に係る通信装置における問題を説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す説明図である。
【図4】本発明の実施形態に係る通信装置が備えるリーダ/ライタの構成と、情報処理装置の構成との一例を示す説明図である。
【図5A】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部の他の設置例を説明するための説明図である。
【図5B】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部の他の設置例を説明するための説明図である。
【図5C】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部の他の設置例を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための第1の説明図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための第1の説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための第1の説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための第2の説明図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための第2の説明図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す説明図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための説明図である。
【図13】本発明の第3の実施形態に係る通信装置の構成の一例を示す説明図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る通信装置における伝搬防止部を備えることによる効果を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0034】
また、以下では、下記に示す順序で説明を行う。
1.本発明の実施形態に係るアプローチ
2.本発明の第1の実施形態に係る通信装置
3.本発明の第2の実施形態に係る通信装置
4.本発明の第3の実施形態に係る通信装置
【0035】
(本発明の実施形態に係るアプローチ)
本発明の実施形態に係る通信装置の構成について説明する前に、本発明の実施形態に係る通信安定化アプローチについて説明する。
【0036】
[従来の技術の問題]
まず、従来の技術の問題について説明する。図1は、従来の技術に係る通信装置10の一例を示す説明図である。
【0037】
通信装置10は、搬送部12と、リーダ/ライタ14A、14B、…(以下、総称して「リーダ/ライタ14」とよぶ場合がある。)と、シールド部16A、16B、…(以下、総称して「シールド部16」とよぶ場合がある。)とを備える。また、通信装置10において、各構成要素は、支持部材により保持される。
【0038】
搬送部12は、リーダ/ライタ14の通信対象となる複数の情報処理装置を保持し、情報処理装置ごとに各リーダ/ライタ14と通信を行わせるために、所定の搬送方向に情報処理装置を搬送する。図1では、搬送部12がコンベアで構成され、複数の情報処理装置90A、90B、…(以下、総称して「情報処理装置90」とよぶ場合がある。)を搬送する例を示している。
【0039】
ここで、搬送部12により搬送される情報処理装置90とは、搬送波を受信するアンテナを有し、搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な装置である。情報処理装置90としては、例えば、ICカードやICチップを搭載した携帯電話などが挙げられる。
【0040】
リーダ/ライタ14は、搬送波信号をのせた13.56MHzなどの所定の周波数の搬送波を送信し、情報処理装置90から負荷変調により送信される搬送波信号に応じた応答信号を受信する。より具体的には、リーダ/ライタ14は、例えば、アンテナ端の電圧の変化を検出し、検出結果を情報処理装置90からの応答信号の送信と捉える。
【0041】
ここで、リーダ/ライタ14と情報処理装置90との通信にノイズが混入した場合、リーダ/ライタ14は、当該ノイズによるアンテナ端の電圧の変化と応答信号による変化とを区別することができないことが起こりうる。上記の場合には、上記通信検査処理における誤検出(例えば、正常であるにも関わらず異常であると検出されること)や、上記発行処理における処理結果の誤判定(例えば、正常に処理が完了したにも関わらず完了していないと判定されること)が発生する可能性がある。
【0042】
シールド部16は、リーダ/ライタ14ごとに設けられ、リーダ/ライタ14が送信する搬送波のうち、リーダ/ライタ14と通信対象の情報処理装置90との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断する。例えば、図1では、シールド部16Aがリーダ/ライタ14Aに対応し、シールド部16Bがリーダ/ライタ14Bに対応する。
【0043】
ここで、シールド部16としては、例えば、軟磁性材料から構成された電磁波吸収シートが張られた金属体や合成樹脂材料が挙げられる。軟磁性体は、自然共鳴により電磁波を熱エネルギーに変えることができるので、搬送波を遮断するシールド部材として機能する。
【0044】
シールド部16をリーダ/ライタ14ごとに備えることによって、通信装置10は、例えば、リーダ/ライタ14Aが送信した搬送波が、リーダ/ライタ14Bにおける直接的なノイズとなることを防止することができる。また、通信装置10は、例えば、リーダ/ライタ14Bが送信した搬送波が、リーダ/ライタ14Aにおける直接的なノイズとなることを防止することができる。
【0045】
従来の通信装置10は、例えば図1に示す構成を有する。よって、通信装置10は、リーダ/ライタ14間における通信干渉を抑制することができるので、通信の安定化をある程度は図ることができる。
【0046】
しかしながら、通信装置10におけるリーダ/ライタ14と情報処理装置90との通信におけるノイズは、一のリーダ/ライタ14が送信した搬送波に限られない。
【0047】
図2は、従来の技術に係る通信装置10における問題を説明するための説明図である。ここで、図2は、図1と同様の構成を有する従来の通信装置10を示している。
【0048】
図2に示すように、リーダ/ライタ14と情報処理装置90との通信に干渉しうるノイズとしては、例えば、情報処理装置90間を電磁誘導により連鎖的に伝搬する電磁波が挙げられる。
【0049】
情報処理装置90は、例えば、リーダ/ライタ14との通信のためのアンテナとして所定のインダクタンスを有するループアンテナ(以下、単に「アンテナ」とよぶ場合がある。)を備える。例えば、リーダ/ライタ14Aの通信対象である情報処理装置90Bのアンテナが搬送波を受信した場合、当該アンテナには電磁誘導により電流が流れ、その結果、情報処理装置90Bのアンテナからは磁界が発生する。ここで、例えば、情報処理装置90Bに隣接する情報処理装置90Cのアンテナに情報処理装置90Bのアンテナから発生された磁界による磁束が通過した場合には、情報処理装置90Cのアンテナもまた電磁誘導により磁界を発生させることとなる。
【0050】
上記情報処理装置90B−情報処理装置90C間における伝搬は、その他の情報処理装置90間においても同様に生じうる。よって、例えば、リーダ/ライタ14Aが送信した搬送波に起因して情報処理装置90間を連鎖的に伝搬した電磁波が情報処理装置90Fまで伝搬された場合には、当該伝搬された電磁波は、リーダ/ライタ14Bにおけるノイズとなる可能性がある。
【0051】
したがって、従来の通信装置10は、ノイズによる通信干渉を十分に抑制することができないので、リーダ/ライタ14と情報処理装置90との間における通信の安定化は望めない。
【0052】
[本発明の実施形態に係るアプローチ]
次に、本発明の実施形態に係る通信安定化アプローチについて説明する。上記のように、リーダ/ライタと情報処理装置との通信に干渉しうるノイズとしては、例えば、他のリーダ/ライタが送信した搬送波や、情報処理装置間を電磁誘導により連鎖的に伝搬する電磁波が挙げられる。ここで、従来の通信装置10では、情報処理装置間を電磁誘導により連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制することができないために、通信の安定化を十分に図ることができない。
【0053】
そこで、本発明の実施形態に係る通信装置(以下、総称して「通信装置100」とよぶ場合がある。)では、情報処理装置間を電磁誘導により連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズをさらに抑制することによって、通信の安定化を図る。
【0054】
より具体的には、通信装置100は、従来の通信装置10と同様に各リーダ/ライタに対応するシールド部を備え、リーダ/ライタ間の通信干渉を抑制する。
【0055】
また、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制するためには、例えば、当該ノイズの伝搬を遮断すればよい。そこで、通信装置100は、情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止する伝搬防止部を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズの抑制を図る。より具体的には、通信装置100は、例えば、以下の(1)、(2)のアプローチによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズの抑制を図る。
【0056】
(1)第1のアプローチ
通信装置100は、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波の伝搬を遮断するために、シールド部材を備える。ここで、通信装置100は、例えば、通信装置100が備えるリーダ/ライタの通信対象ではない情報処理装置に近設し、情報処理装置の少なくとも1面の一部または全部を覆うようにシールド部材を配置する。
【0057】
本発明の実施形態に係るシールド部材としては、例えば、情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断する金属体が挙げられるが、上記に限られない。ここで、シールド部材として機能する上記金属体としては、例えば、アルミニウム(Al)や銅(Cu)などの導電性が高い金属(あるいは、合金)が挙げられる。また、通信装置100は、例えば、板状の金属体(以下、「シールド板」という。)をシールド部材として備えるが、シールド部材の形状は、板状に限られない。
【0058】
なお、本発明の実施形態に係るシールド部材は、金属体に限られない。例えば、本発明の実施形態に係るシールド部材は、情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断することが可能な任意の物質で構成することができ、また、軟磁性材料から構成された電磁波吸収シートが張られた金属体や合成樹脂材料とすることもできる。
【0059】
通信装置100は、シールド部材を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波の伝搬を遮断することができるので、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制することが可能となる。つまり、第1のアプローチでは、シールド部材が、伝搬防止部としての役目を果たすこととなる。
【0060】
(2)第2のアプローチ
上記では、第1のアプローチとして、通信装置100がシールド部材を備え、当該シールド部材により情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断することによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波の伝搬を遮断することを示した。しかしながら、本発明の実施形態に係る通信装置100における情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波の伝搬の遮断方法は、上記に限られない。
【0061】
通信装置100は、第2のアプローチとして、搬送する情報処理装置の配置を部分的に変更し、情報処理装置が有するアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制する。
【0062】
より具体的には、通信装置100は、例えば、下記の(2−1)、(2−2)のように、搬送する情報処理装置の配置を変更することによって、情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断する。
【0063】
(2−1)高さの変更
通信装置100は、搬送する情報処理装置のうち、通信装置100が備えるリーダ/ライタの通信対象ではない少なくとも1つの情報処理装置が保持される高さを変える。通信装置100が、リーダ/ライタの通信対象ではない少なくとも1つの情報処理装置が保持される高さを変えることによって、当該情報処理装置が有するアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることができる。
【0064】
よって、通信装置100は、(2−1)のアプローチによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制することができる。ここで、(2−1)のアプローチでは、例えば、情報処理装置を搬送する搬送路において少なくとも1つの情報処理装置が保持される高さを変える機構が、伝搬防止部としての役目を果たすこととなる。
【0065】
(2−2)情報処理装置間の間隔の変更
通信装置100は、通信装置100が備えるリーダ/ライタの通信対象である情報処理装置と通信対象ではない情報処理装置との間隔、および/または、1または2以上の通信対象ではない情報処理装置間の間隔を変える。通信装置100が、情報処理装置間の間隔を変えることによって、一方の情報処理装置が有するアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることができる。
【0066】
よって、通信装置100は、(2−2)のアプローチによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波によるノイズを抑制することができる。ここで、(2−2)のアプローチでは、例えば、情報処理装置を搬送する搬送路において情報処理装置間の間隔を空けさせる機構が、伝搬防止部としての役目を果たすこととなる。上記機構としては、例えば、情報処理装置を搬送する搬送路から情報処理装置を迂回させる迂回路、および情報処理装置を迂回路に通すための吸引機構などが挙げられるが、上記に限られない。
【0067】
通信装置100は、例えば、上記(1)、(2)のアプローチによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波の伝搬を遮断する。よって、通信装置100は、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができる
【0068】
したがって、本発明の実施形態に係る通信装置100は、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【0069】
次に、本発明の実施形態に係る通信安定化アプローチを実現可能な、本発明の実施形態に係る通信装置100の構成について説明する。以下では、上記(1)のアプローチ(第1のアプローチ)を実現する通信装置を「通信装置100」として説明する。また、以下では、上記(2)のアプローチ(第2のアプローチ)を実現する通信装置のうち、上記(2−1)のアプローチを実現する通信装置を「通信装置200」、上記(2−2)のアプローチを実現する通信装置を「通信装置300」として説明する。
【0070】
(第1の実施形態に係る通信装置)
図3は、本発明の第1の実施形態に係る通信装置100の構成の一例を示す説明図である。
【0071】
通信装置100は、搬送部102と、リーダ/ライタ104A、104B、…(以下、総称して「リーダ/ライタ104」とよぶ場合がある。)と、シールド部106A、106B、…(以下、総称して「シールド部106」とよぶ場合がある。)と、伝搬防止部108A、108B、…(以下、総称して「伝搬防止部108」とよぶ場合がある。)とを備える。また、通信装置100において各構成要素は、例えば支持部材(一部は図示せず)により保持される。また、通信装置100は、例えば、ホストコンピュータ600(図3では図示せず)などの外部装置と有線/無線で通信することもできる。
【0072】
搬送部102は、リーダ/ライタ104の通信対象となる複数の情報処理装置を保持し、情報処理装置ごとに各リーダ/ライタ104と通信を行わせるために、所定の搬送方向に情報処理装置を搬送する。図3では、搬送部102がコンベアで構成され、複数の情報処理装置500A、500B、…(以下、総称して「情報処理装置500」とよぶ場合がある。)を搬送する例を示しているが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る搬送部102は、複数の情報処理装置が保持されたシートを巻き取る機構であってもよい。また、本発明の実施形態に係る搬送部102は、情報処理装置ごとに各リーダ/ライタ104と通信を行わせるために、所定の搬送方向(一方向とは限らない。)に情報処理装置を搬送する任意の機構で構成することができる。
【0073】
ここで、搬送部102により搬送される情報処理装置500とは、搬送波を受信するアンテナを有し、搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な装置である。情報処理装置500としては、例えば、ICカードや、RFIDタグ、ICチップを搭載した携帯電話などの様々な機器が挙げられるが、上記に限られない。以下では、情報処理装置500が、ICカードである場合を主に例に挙げて説明する。
【0074】
また、搬送部102は、情報処理装置500を搬送方向に沿って一列に保持し、情報処理装置500を搬送するが、上記に限られない。例えば、搬送部102は、情報処理装置500を、マトリクス状に保持して搬送することもできる。以下では、搬送部102がコンベアで構成され、搬送方向に沿って一列に保持した情報処理装置500を搬送する場合を例に挙げて説明する。
【0075】
リーダ/ライタ104は、搬送波信号をのせた13.56MHzなどの所定の周波数の搬送波を送信し、情報処理装置500から負荷変調により送信される搬送波信号に応じた応答信号を受信する。なお、図3では、通信装置100が複数のリーダ/ライタ104A、104B、…を備える構成を示しているが、各リーダ/ライタ104は、同一の内容の通信を情報処理装置500と行ってもよいし、互いに異なる通信を情報処理装置500と行うこともできる。
【0076】
[リーダ/ライタ104と情報処理装置500との構成]
ここで、本発明の実施形態に係る通信装置100が備えるリーダ/ライタ104の構成の一例と、情報処理装置500の構成の一例について説明する。
【0077】
図4は、本発明の実施形態に係る通信装置100が備えるリーダ/ライタ104の構成と、情報処理装置500の構成との一例を示す説明図である。ここで、図4は、情報処理装置500がICカードである場合における構成の一例を示している。
【0078】
〔リーダ/ライタ104の構成例〕
リーダ/ライタ104は、搬送波信号生成部150と、通信アンテナ152と、復調部154と、制御部156とを備える。
【0079】
また、リーダ/ライタ104は、例えば、ROM(Read Only Memory;図示せず)や、RAM(Random Access Memory;図示せず)、レジスタ(register;図示せず)、通信を暗号化するための暗号化回路(図示せず)、記憶部(図示せず)、ホストコンピュータ120や他の回路などと接続するためのインタフェース(図示せず)などを備えてもよい。
【0080】
ROM(図示せず)は、制御部156が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶する。RAM(図示せず)は、制御部156により実行されるプログラムなどを一次記憶する。レジスタ(図示せず)は、制御部156における演算結果や実行状態を保持する。記憶部(図示せず)は、リーダ/ライタ104において用いられるアプリケーション、データなどを記憶する。ここで、記憶部(図示せず)としては、例えば、ハードディスク(Hard Disk)などの磁気記録媒体や、フラッシュメモリ(flash memory)などの不揮発性メモリ(nonvolatile memory)が挙げられるが、上記に限られない。また、インタフェース(図示せず)としては、例えば、UART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)や、ネットワーク端子などが挙げられるが、上記に限られない。
【0081】
リーダ/ライタ104は、例えば、ホストコンピュータ600と接続され、ホストコンピュータ600からの送信命令に応じて搬送波信号を送信することができる。また、リーダ/ライタ104は、制御部156における処理の結果を、ホストコンピュータ600へ送信することができる。上記の場合、リーダ/ライタ104が、上記通信検査処理における検査結果の判定処理や、上記発行処理における処理結果の判定処理を行ってもよいし、また、上記各判定処理をホストコンピュータ600が行うこともできる。
【0082】
搬送波信号生成部150は、制御部156からの搬送波信号生成命令を受け、搬送波信号生成命令に応じた搬送波信号を生成する。
【0083】
ここで、図4では、搬送波信号生成部150として交流電源が示されているが、本発明の実施形態に係る搬送波信号生成部150は、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る搬送波信号生成部150は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調する変調回路(図示せず)と、変調回路の出力を増幅する増幅回路(図示せず)とをさらに備える構成とすることができる。なお、搬送波信号生成部150が生成する搬送波信号には、例えば、情報処理装置500に対する各種処理命令や処理するデータを含めることができるが、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る搬送波信号は、情報処理装置500に対して電力供給を行う搬送波を通信アンテナ152に発生させるための信号であってもよい。
【0084】
通信アンテナ152は、例えば、所定のインダクタンスをもつコイル(インダクタ)を備え、搬送波信号生成部150が生成した搬送波信号に応じた搬送波を送信する。また、通信アンテナ152は、情報処理装置500からの応答信号を受信することもできる。つまり、通信アンテナ152を構成するコイルは、リーダ/ライタ104におけるアンテナとしての役目を果たすことができる。ここで、図4では、通信アンテナ152がコイルで構成されている例を示しているが、本発明の実施形態に係る通信アンテナ152は、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る通信アンテナ152は、さらにキャパシタを備えることにより共振回路を構成することもできる。
【0085】
復調部154は、例えば、通信アンテナ152のアンテナ端における電圧の振幅変化を包絡線検波し、検波した信号を2値化することによって、情報処理装置500からの応答信号を復調する。なお、復調部154における応答信号の復調手段は、上記に限られず、例えば、通信アンテナ152のアンテナ端における電圧の位相変化を用いて応答信号を復調することもできる。
【0086】
制御部156は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)や各種処理回路で構成され、復調部154が復調したデータに基づいて様々な処理を行う。ここで、制御部156が行う処理としては、例えば、復調部154が復調したデータの処理や、ホストコンピュータ120への復調部154が復調したデータの送信、または、復調部154が復調したデータに基づく搬送波信号生成命令の生成などが挙げられるが、上記に限られない。
【0087】
リーダ/ライタ104は、例えば、上記のような構成によって、搬送波を送信し、情報処理装置500から送信される応答信号を復調して処理することができる。
【0088】
〔情報処理装置500の構成例〕
情報処理装置500は、搬送波を受信可能な通信アンテナ502と、受信された搬送波に基づいて搬送波信号を復調して処理し、負荷変調により応答信号を送信させるICチップ504とを備える。
【0089】
通信アンテナ502は、例えば、所定のインダクタンスをもつコイル(インダクタ)L1と、所定の静電容量をもつキャパシタC1とからなる共振回路で構成され、搬送波の受信に応じて電磁誘導により誘起電圧を生じさせる。そして、通信アンテナ502は、所定の共振周波数で誘起電圧を共振させた受信電圧を出力する。ここで、通信アンテナ502における共振周波数は、例えば、13.56MHzなど搬送波の周波数に合わせて設定される。通信アンテナ502は、上記構成により、搬送波を受信し、また、ICチップ504が備える負荷変調部516において行われる負荷変調によって応答信号の送信を行う。
【0090】
また、通信アンテナ502を構成するコイルは、リーダ/ライタ104から送信された搬送波に限られず、磁束が通過した場合には、磁束の通過による電磁誘導により磁界を発生させる。
【0091】
〔ICチップ504の構成〕
ICチップ504は、キャリア検出部506と、検波部508と、レギュレータ510と、復調部512と、データ処理部514と、負荷変調部516とを備える。なお、図4では示していないが、ICチップ504は、例えば、過電圧や過電流がデータ処理部514に印加されることを防止するための保護回路(図示せず)をさらに備えることができる。ここで、保護回路(図示せず)としては、例えば、ダイオード等で構成されたクランプ回路が挙げられるが、上記に限られない。
【0092】
また、ICチップ504は、ROM518、RAM520、記録媒体522などを備える。また、データ処理部514と、ROM518、RAM520、記録媒体522とは、例えば、データの伝送路としてのバス524によって接続される。
【0093】
ROM518は、データ処理部514が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データを記憶する。RAM520は、データ処理部514により実行されるプログラム、演算結果、実行状態などを一次記憶する。記録媒体522は、データ処理部514が処理するデータなどを記憶する。ここで、記録媒体522としては、例えば、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)などの不揮発性メモリが挙げられるが、上記に限られない。
【0094】
キャリア検出部506は、通信アンテナ502から伝達される受信電圧に基づいて、例えば、矩形の検出信号を生成し、当該検出信号をデータ処理部514へ伝達する。また、データ処理部514は、伝達される上記検出信号を、例えば、データ処理のための処理クロックとして用いる。ここで、上記検出信号は、通信アンテナ502から伝達される受信電圧に基づくものであるので、リーダ/ライタ104から送信される搬送波の周波数と同期することとなる。したがって、情報処理装置500は、キャリア検出部506を備えることによって、リーダ/ライタ104との間の処理を、リーダ/ライタ104と同期して行うことができる。
【0095】
検波部508は、通信アンテナ502から出力される受信電圧を整流する。ここで、検波部508は、ダイオードD1と、キャパシタC2で構成することができるが、上記に限られない。
【0096】
レギュレータ510は、受信電圧を平滑、定電圧化し、データ処理部514へ駆動電圧を出力する。ここで、レギュレータ510は、受信電圧の直流成分を駆動電圧として用いることができる。
【0097】
復調部512は、受信電圧に基づいて搬送波信号を復調し、搬送波に含まれる搬送波信号に対応するデータ(例えば、ハイレベルとローレベルとの2値化されたデータ信号)を出力する。ここで、復調部512は、受信電圧の交流成分をデータとして出力することができる。
【0098】
データ処理部514は、レギュレータ510から出力される駆動電圧を電源として駆動し、復調部512において復調されたデータの処理を行う。ここで、データ処理部514は、例えばMPUで構成することができるが、上記に限られない。
【0099】
また、データ処理部514は、処理結果に応じて、リーダ/ライタ104への応答に係る負荷変調を制御する制御信号を選択的に生成する。そして、データ処理部514は、制御信号を負荷変調部516へと選択的に出力する。
【0100】
負荷変調部516は、例えば、負荷ZとスイッチSW1とを備え、データ処理部514から伝達される制御信号に応じて負荷Zを選択的に接続する(有効化する)ことによって負荷変調を行う。ここで、負荷Zは、例えば、所定の抵抗値を有する抵抗で構成されるが、上記に限られない。また、スイッチSW1は、例えば、pチャネル型のMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)や、nチャネル型のMOSFETで構成されるが、上記に限られない。
【0101】
負荷変調部516において負荷変調が行われることによって、リーダ/ライタ104からみた情報処理装置500のインピーダンスが変化することとなる。
【0102】
ICチップ504は、上記のような構成によって、通信アンテナ502が受信した搬送波信号を処理し、負荷変調によって通信アンテナ502から応答信号を送信させることができる。なお、図4では、情報処理装置500が、ICチップ504を備える構成を示しているが、上記に限られず、ICチップ504の構成をICチップとして実現しない構成とすることもできる。
【0103】
情報処理装置500は、例えば、上記のような構成によって、リーダ/ライタ104から送信された搬送波を送信し、負荷変調によって通信アンテナ502から応答信号を送信することができる。
【0104】
通信装置100を構成するリーダ/ライタ104と、情報処理装置500とが、それぞれ例えば図4に示す構成を有することによって、リーダ/ライタ104と情報処理装置500との通信を実現することができる。なお、通信装置100を構成するリーダ/ライタ104の構成と、情報処理装置500の構成とが、それぞれ図4に示す構成に限られないことは、言うまでもない。
【0105】
再度図3を参照して、通信装置100の構成について説明する。リーダ/ライタ104は、上述したように、例えば、通信アンテナ152のアンテナ端における電圧の振幅変化を包絡線検波することによって、情報処理装置500から送信された応答信号を復調する。ここで、リーダ/ライタ104と情報処理装置500との通信にノイズが混入した場合、リーダ/ライタ104は、当該ノイズによるアンテナ端の電圧の変化と応答信号による変化とを区別することができないことが起こりうる。上記の場合には、上記通信検査処理における誤検出や、上記発行処理における処理結果の誤判定が発生する可能性がある。
【0106】
そこで、通信装置100では、シールド部106と、伝搬防止部108とを備えることによって、本発明の実施形態に係る通信安定化アプローチを実現し、通信干渉を抑制して通信の安定化を図る。
【0107】
シールド部106は、リーダ/ライタ104ごとに設けられ、リーダ/ライタ104が送信する搬送波のうち、リーダ/ライタ104と通信対象の情報処理装置500との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断する。例えば、図3では、シールド部106Aがリーダ/ライタ104A、シールド部106Bがリーダ/ライタ104B、そしてシールド部106Cがリーダ/ライタ104Cにそれぞれ対応する。
【0108】
ここで、シールド部106としては、例えば、軟磁性材料から構成された電磁波吸収シートが張られた金属体や合成樹脂材料が挙げられるが、上記に限られない。ここで、軟磁性材料としては、例えば、パーメンジュール(permendur)や、センダスト(Sendust)、ケイ素鋼(silicon steel)、Fe系やCo系のアモルファス(Amorphous)磁性合金が挙げられる。
【0109】
シールド部106をリーダ/ライタ104ごとに備えることによって、通信装置100は、例えば、リーダ/ライタ104Aが送信した搬送波が、リーダ/ライタ104Bにおける直接的なノイズとなることを防止することができる。また、通信装置100は、例えば、リーダ/ライタ104Bが送信した搬送波が、リーダ/ライタ104Aにおける直接的なノイズとなることを防止することができる。また、同様に、リーダ/ライタ104Cが送信した搬送波が、リーダ/ライタ104Aおよび/またはリーダ/ライタ104Bにおける直接的なノイズとなることを防止することができる。
【0110】
伝搬防止部108は、シールド部材により情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止する。また、伝搬防止部108を構成するシールド部材は、リーダ/ライタ104の通信対象ではない情報処理装置500に近設され、当該情報処理装置500の少なくとも1面の一部または全部を覆うように設置される。
【0111】
ここで、図3は、伝搬防止部108が、情報処理装置500Cの一部〜情報処理装置500Eまでを覆うシールド部材(伝搬防止部108A)と、情報処理装置500Bを覆うシールド部材(伝搬防止部108B)とで構成された例を示している。
【0112】
また、図3では、伝搬防止部108を構成するシールド部材が、例えばリーダ/ライタ104の通信対象ではない情報処理装置500が搬送部102に保持される面側(すなわち、図3における情報処理装置500の下面側)に設けられる例を示しているが、上記に限られない。
【0113】
[伝搬防止部108の他の設置例]
ここで、本発明の第1の実施形態に係る通信装置100における伝搬防止部108の他の設置例について説明する。図5A〜図5Cそれぞれは、本発明の第1の実施形態に係る通信装置100における伝搬防止部108の他の設置例を説明するための説明図である。以下では、通信装置100が、伝搬防止部108としてシールド板を備える場合を例に挙げて、伝搬防止部108の他の設置例について説明する。
【0114】
〔A〕第1の例(図5A)
図5Aを参照すると、シールド板110A、110B、…は、情報処理装置500が搬送部102に保持される面と垂直であり、かつ搬送部102における情報処理装置500の搬送方向と垂直な面に設けられる。
【0115】
ここで、シールド板110A、110B、…の高さは、例えば、通信装置100が備えるリーダ/ライタ104のうちの最も出力電界強度が大きなものを基準として決定することができるが、上記に限られない。例えば、シールド板110A、110B、…の高さは、リーダ/ライタ104の通信対象ではない情報処理装置500が有するアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることが可能な任意の方法で決定することができる。
【0116】
〔B〕第2の例(図5B)
図5Bを参照すると、シールド板112A、112B、…は、情報処理装置500が搬送部102に保持される面と垂直であり、かつ搬送部102における情報処理装置500の搬送方向に沿って設けられる。
【0117】
ここで、シールド板112A、112B、…の高さは、上記〔A〕と同様に、例えば、通信装置100が備えるリーダ/ライタ104のうちの最も出力電界強度が大きなものを基準として決定することができるが、上記に限られない。
【0118】
〔C〕第3の例(図5C)
通信装置100は、図5Cに示すように、図5Aに示すシールド板110A、110B、…と、図5Bに示すシールド板112A、112B、…との双方を備えることもできる。
【0119】
〔D〕その他の例
なお、通信装置100における伝搬防止部108の他の設置例は、図5A〜図5Cの例に限られない。例えば、通信装置100は、情報処理装置500が搬送部102に保持される面と反対の面側(すなわち、図3における情報処理装置500の上面側)にシールド板を設けることもできる。また、通信装置100は、例えば、上述した通信装置100における伝搬防止部108の設置例を任意に組み合わせた伝搬防止部108を備えることができる。
【0120】
通信装置100は、例えば、図3、図5A〜図5Cに示すようにシールド部材が設置された伝搬防止部108を備える。
【0121】
[伝搬防止部108を備えることによる効果]
ここで、第1の実施形態に係る通信装置100における伝搬防止部108を備えることによる効果について、伝搬防止部108を備えない図1に示す従来の通信装置10と比較しつつ説明する。
【0122】
〔a〕第1の結果
図6〜図8それぞれは、本発明の第1の実施形態に係る通信装置100における伝搬防止部108を備えることによる効果を説明するための第1の説明図である。以下では、通信装置100が、図3に示す伝搬防止部108を備える場合(シールド板を情報処理装置500の下面側に備える場合)を例に挙げて説明する。また、以下では、伝搬防止部108を備える前の構成(従来の通信装置10に対応する構成)と、伝搬防止部108を備えた構成(通信装置100に対応する構成)それぞれに対して、同一の測定ポイントにおける電磁波のレベルを測定することによって、効果を示す。また、以下では、測定ポイントにおける電磁波を0レベル(最小)〜5レベル(最大)で表すことが可能なRF(Radio Frequency)テスターを用いた測定結果に基づいて効果を説明する。
【0123】
図6は、RFテスターにより測定を行う測定ポイントを示している。ここで、図6では、図3に示す通信装置100における測定ポイントP1〜P17を示してるが、伝搬防止部108を備える前の構成(従来の通信装置10に対応する構成)も同様の測定ポイントP1〜P17において測定を行う。また、RFテスターにより測定は、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波のレベルを測定するために、情報処理装置500の上面から所定の高さの位置に対して行う。
【0124】
図7、図8は、それぞれ図6に示す測定ポイントP1〜P17をRFテスターにより測定した結果を示している。
【0125】
図7、図8に示すように、伝搬防止部108を備える通信装置100は、伝搬防止部108を備えない構成(従来の通信装置10に対応する構成)よりも、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波を抑制できていることが分かる。
【0126】
〔b〕第2の結果
図9、図10それぞれは、本発明の第1の実施形態に係る通信装置100における伝搬防止部108を備えることによる効果を説明するための第2の説明図である。ここで、図9は、伝搬防止部108を備える前の構成(従来の通信装置10に対応する構成)の通信装置において、1490個の情報処理装置500に対して通信検査処理を行った場合における検査結果を示している。また、図10は、伝搬防止部108を備える通信装置100において、図9と同一の1490個の情報処理装置500に対して通信検査処理を行った場合における検査結果を示している。
【0127】
図9と図10とを参照すると、伝搬防止部108を備える前の構成の通信装置では誤検出が発生しているのに対して、伝搬防止部108を備える通信装置100では誤検出が発生していないことが分かる。ここで、図9、図10に示す誤検出とは、通信装置を用いた通信検査ではNG(不良品)と判断された情報処理装置500が、別途の個別検査の結果OK(良品)であった場合をいう。
【0128】
ここで、伝搬防止部108を備える前の構成の通信装置と、伝搬防止部108を備える通信装置100との構成上の差異は、伝搬防止部108を備えるか否かである。よって、図9、図10より、通信装置100は、伝搬防止部108を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができることが分かる。
【0129】
上記〔a〕、〔b〕に示したように、通信装置100は、伝搬防止部108を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができる。
【0130】
以上のように、第1の実施形態に係る通信装置100は、各リーダ/ライタ104に対応するシールド部106と、伝搬防止部108とを備える。ここで、シールド部106は、リーダ/ライタ104間の通信干渉を抑制する。また、伝搬防止部108は、シールド部材によって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制する。したがって、通信装置100は、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【0131】
また、通信装置100が、例えば図3の構成を有することによって、情報処理装置500の搬送、リーダ/ライタ104と情報処理装置500との通信、そして、通信干渉の抑制による通信安定化方法を実現することができる。
【0132】
(第2の実施形態に係る通信装置)
次に、上記(2)のアプローチ(第2のアプローチ)を実現する通信装置のうち、上記(2−1)のアプローチを実現することが可能な、本発明の第2の実施形態に係る通信装置200について説明する。図11は、本発明の第2の実施形態に係る通信装置200の構成の一例を示す説明図である。
【0133】
通信装置200は、搬送部102と、リーダ/ライタ104A、104B、…と、シールド部106A、106B、…と、伝搬防止部202とを備える。また、通信装置200において各構成要素は、例えば支持部材(一部は図示せず)により保持される。また、通信装置200は、図3に示す通信装置100と同様に、例えば、ホストコンピュータ600(図11では図示せず)などの外部装置と有線/無線で通信することもできる。
【0134】
搬送部102、リーダ/ライタ104、およびシールド部106は、それぞれ第1の実施形態に係る搬送部102、リーダ/ライタ104、およびシールド部106と同様の構成、機能を有する。
【0135】
伝搬防止部202は、搬送部102に保持される情報処理装置500のうち、リーダ/ライタ104の通信対象ではない情報処理装置500のうちの少なくとも1つの情報処理装置500が保持される高さを変える。図11では、伝搬防止部202が、搬送部102の搬送路から距離d1上方の位置へ情報処理装置500Dを移動させた例を示している。
【0136】
ここで、図11に示す距離d1(伝搬防止部202が作り出す情報処理装置500の高低差)は、例えば、リーダ/ライタ104の出力電界強度や、リーダ/ライタ104間の距離d2などによって決定することができる。例えば、リーダ/ライタ104の出力電界強度が300[μV/m]以下であり、リーダ/ライタ104間の距離d2が250.0[mm]の場合、伝搬防止部202は、距離d1が10.0[mm]以上となるように情報処理装置500を配置する。なお、図11に示す距離d1は、例えば、磁界強度を測定し、情報処理装置500のアンテナを通過する磁束が0(ゼロ)となる位置を特定することによって、任意の条件においても決定することができる。
【0137】
また、伝搬防止部202としては、例えば、情報処理装置500を搬送する搬送路において少なくとも1つの情報処理装置が保持される高さを変える機構が挙げられる。上記機構としては、例えば、情報処理装置500を昇降させる昇降機構が挙げられるが、上記に限られない。
【0138】
通信装置200は、例えば、上記のように、搬送部102により搬送される情報処理装置500に対して高低差を作り出す伝搬防止部202を備える。
【0139】
[伝搬防止部202を備えることによる効果]
ここで、第2の実施形態に係る通信装置200における伝搬防止部202を備えることによる効果について説明する。
【0140】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る通信装置200における伝搬防止部202を備えることによる効果を説明するための説明図である。ここで、図12は、通信装置200において、500個の情報処理装置500に対して通信検査処理を行った場合における検査結果を示している。また、図12は、図11に示す通信装置200において、情報処理装置500のアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせる位置に情報処理装置500が配置されるように距離d1が設定された場合の検査結果を示している。
【0141】
図12を参照すると、伝搬防止部202を備える通信装置200では誤検出が発生していないことが分かる。ここで、図12に示す誤検出とは、図9および図10と同様に、通信装置を用いた通信検査ではNG(不良品)と判断された情報処理装置500が、別途の個別検査の結果OK(良品)であった場合をいう。
【0142】
また、図9に示したように、従来の通信装置10に対応する構成(すなわち、伝搬防止部202を備えない構成)では、誤検出が発生する。ここで、図9に示す結果は、図12に示す検査対象の情報処理装置500と同一の情報処理装置500に対する結果ではないが、従来の通信装置10に対応する構成において誤検出が発生することは、想像に難くない。よって、図9および図12より、通信装置200は、伝搬防止部202を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができることが分かる。
【0143】
したがって、通信装置200は、伝搬防止部202を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができる。
【0144】
以上のように、第2の実施形態に係る通信装置200は、各リーダ/ライタ104に対応するシールド部106と、伝搬防止部202とを備える。ここで、シールド部106は、リーダ/ライタ104間の通信干渉を抑制する。また、伝搬防止部202は、リーダ/ライタ104の通信対象ではない少なくとも1つの情報処理装置500のアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制する。したがって、通信装置200は、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【0145】
また、通信装置200が、例えば図11の構成を有することによって、情報処理装置500の搬送、リーダ/ライタ104と情報処理装置500との通信、そして、通信干渉の抑制による通信安定化方法を実現することができる。
【0146】
(第3の実施形態に係る通信装置)
次に、上記(2)のアプローチ(第2のアプローチ)を実現する通信装置のうち、上記(2−2)のアプローチを実現することが可能な、本発明の第3の実施形態に係る通信装置300について説明する。図13は、本発明の第3の実施形態に係る通信装置300の構成の一例を示す説明図である。
【0147】
通信装置300は、搬送部102と、リーダ/ライタ104A、104B、…と、シールド部106A、106B、…と、伝搬防止部302とを備える。また、通信装置300において各構成要素は、例えば支持部材(一部は図示せず)により保持される。また、通信装置300は、図3に示す通信装置100と同様に、例えば、ホストコンピュータ600(図13では図示せず)などの外部装置と有線/無線で通信することもできる。
【0148】
搬送部102、リーダ/ライタ104、およびシールド部106は、それぞれ第1の実施形態に係る搬送部102、リーダ/ライタ104、およびシールド部106と同様の構成、機能を有する。
【0149】
伝搬防止部302は、リーダ/ライタ104の通信対象である情報処理装置500と通信対象ではない情報処理装置500との間隔、および/または、1または2以上の通信対象ではない情報処理装置500間の間隔を変える。図13では、伝搬防止部302が、搬送部102の搬送路において、リーダ/ライタ104の通信対象ではない情報処理装置500間の間隔を距離d3分空けさせた例を示している。
【0150】
ここで、図13に示す距離d3(伝搬防止部302が作り出す情報処理装置500間の間隔)は、例えば、リーダ/ライタ104の出力電界強度や、リーダ/ライタ104間の距離d4などによって決定することができる。例えば、リーダ/ライタ104の出力電界強度が300[μV/m]以下であり、リーダ/ライタ104間の距離d2が250.0[mm]の場合、伝搬防止部302は、距離d3が54.0[mm]以上となるように情報処理装置500間の間隔を設定する。なお、図13に示す距離d3は、例えば、磁界強度を測定し、伝搬防止部302が作り出す間隔を構成する一方の情報処理装置500のアンテナを通過する磁束が0(ゼロ)となる位置を特定することによって、任意の条件においても決定することができる。
【0151】
また、伝搬防止部302としては、例えば、情報処理装置を搬送する搬送路において情報処理装置間の間隔を空けさせる機構が挙げられる。上記機構としては、例えば、情報処理装置500を搬送する搬送路から情報処理装置500を迂回させる迂回路、および情報処理装置500を迂回路に通すための吸引機構などが挙げられるが、上記に限られない。ここで、図13では、情報処理装置500Cと情報処理装置500Dとの間に搬送される情報処理装置500Dが、迂回路(図示せず)を通っている状態を示している。
【0152】
通信装置300は、例えば、上記のように、搬送部102により搬送される情報処理装置500において、情報処理装置500間に所定の間隔を作り出す伝搬防止部302を備える。なお、図13では、伝搬防止部302が情報処理装置500間における所定の間隔を1つ作り出す例を示しているが、上記に限られない。例えば、本発明の第3の実施形態に係る伝搬防止部302は、上記情報処理装置500間における所定の間隔を2つ以上作り出すこともできる。
【0153】
[伝搬防止部302を備えることによる効果]
ここで、第3の実施形態に係る通信装置300における伝搬防止部302を備えることによる効果について説明する。
【0154】
図14は、本発明の第3の実施形態に係る通信装置300における伝搬防止部302を備えることによる効果を説明するための説明図である。ここで、図14は、通信装置300において、500個の情報処理装置500に対して通信検査処理を行った場合における検査結果を示している。また、図14は、図13に示す通信装置300において、情報処理装置500のアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせるような間隔が情報処理装置500間に設定されるように、距離d3が設定された場合の検査結果を示している。
【0155】
図14を参照すると、伝搬防止部302を備える通信装置300では誤検出が発生していないことが分かる。ここで、図14に示す誤検出とは、図9および図10と同様に、通信装置を用いた通信検査ではNG(不良品)と判断された情報処理装置500が、別途の個別検査の結果OK(良品)であった場合をいう。
【0156】
また、図9に示したように、従来の通信装置10に対応する構成(すなわち、伝搬防止部302を備えない構成)では、誤検出が発生する。ここで、図9に示す結果は、図14に示す検査対象の情報処理装置500と同一の情報処理装置500に対する結果ではないが、従来の通信装置10に対応する構成において誤検出が発生することは、想像に難くない。よって、図9および図14より、通信装置300は、伝搬防止部302を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができることが分かる。
【0157】
したがって、通信装置300は、伝搬防止部302を備えることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができる。
【0158】
以上のように、第3の実施形態に係る通信装置300は、各リーダ/ライタ104に対応するシールド部106と、伝搬防止部302とを備える。ここで、シールド部106は、リーダ/ライタ104間の通信干渉を抑制する。また、伝搬防止部302は、リーダ/ライタ104の通信対象ではない少なくとも1つの情報処理装置500のアンテナを通過する磁束を0(ゼロ)とさせることによって、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制する。したがって、通信装置300は、通信干渉を抑制し、通信の安定化を図ることができる。
【0159】
また、通信装置300が、例えば図13の構成を有することによって、情報処理装置500の搬送、リーダ/ライタ104と情報処理装置500との通信、そして、通信干渉の抑制による通信安定化方法を実現することができる。
【0160】
上記では、本発明の実施形態として、通信装置100、200、300を挙げて説明したが、本発明の実施形態は、かかる形態に限られない。本発明の実施形態は、例えば、ICカードやICチップを搭載した携帯電話などの所定周波数の搬送波を用いて非接触通信が可能な情報処理装置に対して通信検査を行う検査装置や、情報処理装置に対して発行処理を行う発行装置に適用することができる。また、本発明の実施形態は、例えば、複数の情報処理装置を搬送して各情報処理装置と非接触通信を行うことが可能な様々な機器に適用することができる。
【0161】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0162】
例えば、上記では、第1のアプローチに係る伝搬防止部を備える通信装置100と、第2のアプローチに係る伝搬防止部を備える通信装置200、300とについてそれぞれ説明したが、本発明の実施形態に係る通信装置が備える伝搬防止部は、上記に限られない。例えば、本発明の実施形態に係る通信装置は、図3に示す伝搬防止部108と図11に示す伝搬防止部202との双方を備えるなど、第1のアプローチに係る伝搬防止部と第2のアプローチに係る伝搬防止部との双方を備えることもできる。上記の構成であっても、本発明の実施形態に係る通信装置は、情報処理装置間を連鎖的に伝搬する電磁波による通信干渉を抑制することができるので、通信の安定化を図ることができる。
【0163】
上述した構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、当然に、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0164】
10、100、200、300 通信装置
12、102 搬送部
14A、14B、104A、104B、104C リーダ/ライタ
16A、16B、106A、106B、106C シールド部
108A、108B、202、302 伝搬防止部
90A、90B、90C、90D、90E、90F、90G、90H、500、500A、500B、500C、500D、500E、500F、500G、500H 情報処理装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から送信される所定周波数の搬送波を受信するアンテナを有し、前記所定周波数の搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な情報処理装置を複数保持し、保持された複数の前記情報処理装置を搬送する搬送部と;
前記所定周波数の搬送波を送信し、前記搬送部により保持された複数の情報処理装置のうち、通信対象の一の情報処理装置と通信を行う、複数のリーダ/ライタと;
前記リーダ/ライタが送信する搬送波のうち、前記リーダ/ライタと前記一の情報処理装置との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断する、前記リーダ/ライタごとに設けられたシールド部と;
前記情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止する伝搬防止部と;
を備える、通信装置。
【請求項2】
前記伝搬防止部は、前記リーダ/ライタの通信対象ではない他の情報処理装置に近設され、前記他の情報処理装置の少なくとも1面の一部または全部を覆うシールド部材を備える、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記シールド部材は、前記他の情報処理装置が有するアンテナへの磁束を遮断する金属体である、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記シールド部材は、前記情報処理装置が前記搬送部に保持される面側に設けられる、請求項2、または請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記シールド部材は、前記情報処理装置が前記搬送部に保持される面と垂直であり、かつ前記搬送部における前記情報処理装置の搬送方向と垂直な面に設けられる、請求項2、または請求項3に記載の通信装置。
【請求項6】
前記シールド部材は、前記情報処理装置が前記搬送部に保持される面と垂直であり、かつ前記搬送部における前記情報処理装置の搬送方向に沿って設けられる、請求項2、または請求項3に記載の通信装置。
【請求項7】
前記シールド部材は、前記情報処理装置が前記搬送部に保持される面と反対の面側に設けられる、請求項2、または請求項3に記載の通信装置。
【請求項8】
前記伝搬防止部は、前記リーダ/ライタの通信対象ではない他の情報処理装置のうち、少なくとも1つの情報処理装置が有する前記アンテナを通過する磁束を0とさせる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記伝搬防止部は、少なくとも1つの前記他の情報処理装置が保持される高さを変える、請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記伝搬防止部は、前記一の情報処理装置と前記他の情報処理装置との間隔、および/または、1または2以上の前記他の情報処理装置間の間隔を変える、請求項8に記載の通信装置。
【請求項11】
前記搬送部が搬送する前記情報処理装置は、ICカードである、請求項1に記載の通信装置。
【請求項12】
外部装置から送信される所定周波数の搬送波を受信するアンテナを有し、前記所定周波数の搬送波により形成される通信路によって外部装置と非接触式に通信することが可能な情報処理装置を複数保持し、保持された複数の情報処理装置を搬送するステップと;
前記搬送するステップにおける前記情報処理装置の搬送路上に設けられた複数のリーダ/ライタそれぞれが、前記所定周波数の搬送波を送信し、前記複数の情報処理装置のうち通信対象の一の情報処理装置と通信を行うステップと;
前記リーダ/ライタが送信する搬送波のうち、前記リーダ/ライタと前記一の情報処理装置との間における通信路を形成する搬送波以外の搬送波を遮断するステップと;
前記情報処理装置間における電磁波の伝搬を防止するステップと;
を有する、通信安定化方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−198373(P2010−198373A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−43038(P2009−43038)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】