説明

通信装置、及びアンテナ特性の制御方法

【課題】アンテナ結合によるヌル状態を回避することが可能な通信装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ(102)からの磁界信号に対して、アンテナ(102)の負荷変調を用いて非接触通信する通信装置(100)が提供される。当該通信装置(100)は、アンテナ(102)のアンテナ端電圧を検知する電圧検知部(104)と、電圧検知部(104)により検知されたアンテナ端電圧に応じてアンテナ(102)の特性を変化させる特性制御部(108)とを備える。そして、特性制御部(108)は、アンテナ端電圧が所定の第1閾値に達した場合にアンテナ(102)の特性を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、及びアンテナ特性の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触式IC(Integrated Circuit)カードや非接触式ICチップを搭載した携帯電話や携帯情報端末、或いは、非接触ICカードとの間で非接触通信するためのリーダ/ライタ機能を搭載した通信装置や情報処理装置等が普及してきている。以下、これらの装置又は機器を非接触通信装置と呼ぶことがある。リーダ/ライタと非接触ICカードとは、互いに特定周波数(例えば、13.56MHz)の搬送波を利用して近接通信を行うことができる。例えば、リーダ/ライタにより所定の処理を非接触ICカードに実行させるためのコマンドが送信されると、非接触ICカードは、受信したコマンドに応じた処理を実行し、その実行結果を応答信号として返送する。
【0003】
このとき、非接触ICカードは、送信データに応じてアンテナの負荷を変化させることで搬送波に変調を施す負荷変調と呼ばれる変調技術を利用して信号を送信することができる。しかしながら、こうした負荷変調を利用した非接触通信は、リーダ/ライタと非接触ICカードとの間の距離(以下、非接触通信距離)に関して通信不可領域(所謂、ヌル;NULL)が発生する。そのため、この通信不可領域の発生を防止する技術の開発が求められている。
【0004】
これに関し、例えば、下記の特許文献1には、非接触ICカードに記録された情報を読み出す情報処理装置に関する技術が記載されている。この技術は、非接触ICカードに対してコマンドを送信した後、そのコマンドに対して非接触ICカードが応答した情報に応じて送信手段の出力インピーダンスを変更する点に1つの特徴を有する。また、下記の特許文献1には、非接触ICカードの応答が受信できない場合に送信手段の出力インピーダンスを変更する技術も記載されている。尚、この技術は、非接触通信距離に応じたヌルの発生回避を目的としている。
【0005】
他の例として、下記の特許文献2には、リーダ/ライタとの間で近距離通信する通信装置に関する技術が記載されている。この技術は、通信装置とリーダ/ライタとの間の距離を推定し、その推定値に応じて同調周波数をシフトさせる点に1つの特徴を有する。また、この技術は、受信レベルを検知して通信装置とリーダ/ライタとの間の距離を推定している。さらに、この技術は、信号の周波数を同調させるためにコンデンサを利用しており、このコンデンサに並列接続された他のコンデンサの接続をスイッチで切り替えることで同調周波数を選択的に切り替える構成に1つの特徴を有する。尚、この技術は、非接触通信距離に応じて発生するヌルの発生回避を目的としている。
【0006】
他の例として、下記の特許文献3には、搬送波を介して通信端末と近距離通信するリーダ/ライタに関する技術が記載されている。この技術は、通信端末から搬送波と変調信号との合成波を受信し、その合成波に含まれる変調成分の検出結果に応じて搬送波を弱めるように制御する点に1つの特徴を有する。また、下記の特許文献3には、搬送波を打ち消す信号を出力する補助アンテナを設ける構成についても記載されている。尚、この技術は、非接触通信距離に応じたヌルの発生回避を目的としている。
【0007】
他の例として、下記の特許文献4には、下記の特許文献2と同様に、リーダ/ライタとの間で近距離通信する通信装置に関する技術が記載されている。この技術は、通信装置とリーダ/ライタとの間の距離を推定し、その推定値に応じて同調周波数をシフトさせる点に1つの特徴を有する。特に、この技術は、通信装置とリーダ/ライタとの間の距離を推定する際に、信号の周波数を同調させる手段に接続された抵抗のインピーダンスを検出し、そのインピーダンスの変化に応じて距離を推定する点に特徴を有する。尚、この技術は、非接触通信距離に応じたヌルの発生回避を目的としている。
【0008】
【特許文献1】特開2004−240716号公報
【特許文献2】特開2006−238398号公報
【特許文献3】特開2007− 74153号公報
【特許文献4】特開2006−279813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記の各文献には、ヌルが発生する通信距離を切り替えることでヌルの発生を防止する技術が開示されているものの、その切り替えタイミングについては明確に記載されていない。また、上記の各技術は、ヌルが発生する非接触通信距離を切り替えることにより信号強度が大きく低下する可能性について考慮されていない。そのため、こうした技術を単独で、或いは、単純に組み合わせて適用したとしても、ヌルが発生する非接触通信距離を切り替えることで通信可能な距離自体が極端に短くなってしまい、そのために通信不能状態になる可能性を否定できない。
【0010】
こうした通信不能状態は、非接触通信距離が所定値近傍に達した際に、カード側の負荷を切り替えて返信しても、所定周波数においてリーダ/ライタから見た非接触ICカードの負荷が変化しなくなることに起因して発生する場合がある。また、アンテナの結合によって、非接触ICカードからの返信に利用される副搬送波のバランスが悪くなることにより波形に歪みが生じて検波できなくなることに起因する場合もある。さらに、電力伝送が不十分になることに起因する場合もある。
【0011】
上記の各文献の中には、アンテナ間の結合によりリーダ/ライタのアンテナ端におけるインピーダンス変化が無くなることで生じるヌルについて言及されているものもある。しかしながら、送受信波形の歪みや、電力伝送の不足に起因するヌルの発生についてはいずれの文献でも言及されていない。しかも、上記の各文献に挙げられている方法は、共振周波数(f0)をシフトさせるものであり、波形歪みや出力磁界強度不足に起因するヌルに対しては逆効果となる可能性がある。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アンテナ間の距離に依存せずに疎結合状態を維持し、アンテナ特性(同調周波数及びQ値)を極力変化させないように、所定の閾値に基づいてアンテナ特性を切り替えるタイミングを制御することによってヌルの発生を回避することが可能な、新規かつ改良された通信装置、及びアンテナ特性の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、リーダ/ライタからの磁界信号に対して、非接触ICカードの負荷変調を用いて非接触通信する通信装置が提供される。当該通信装置は、前記リーダ/ライタ又は非接触ICカードのアンテナ端電圧を検知する電圧検知部と、前記電圧検知部により検知されたアンテナ端電圧に応じて前記リーダ/ライタ又は非接触ICカードのアンテナの特性を変化させる特性制御部とを備える。そして、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が所定の第1閾値に達した場合に前記アンテナの特性を変化させる。
【0014】
上記の通信装置は、リーダ/ライタからの磁界信号に対して、非接触ICカードの負荷変調を用いて非接触通信するものである。この通信装置は、電圧検知部により、前記リーダ/ライタ又は非接触ICカードのアンテナ端電圧を検知する。また、この通信装置は、特性制御部により、前記電圧検知部により検知されたアンテナ端電圧に応じて前記リーダ/ライタ又は非接触ICカードのアンテナの特性を変化させる。さらに、この通信装置は、前記特性制御部により、前記アンテナ端電圧が所定の第1閾値に達した場合に前記アンテナの特性を変化させる。
【0015】
また、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際に前記アンテナの特性を変化させた後で、前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達した場合に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元するように構成されていてもよい。
【0016】
また、前記所定の第2閾値は、前記特性制御部により前記アンテナの特性が変化した直後の前記アンテナ端電圧よりも前記所定の第1閾値から遠い値に設定されていてもよい。
【0017】
また、前記所定の第1閾値は、前記特性制御部が前記アンテナの特性を変化前の状態に復元した直後の前記アンテナ端電圧よりも、前記所定の第2閾値から遠い値に設定されていてもよい。
【0018】
また、前記所定の第1閾値は、例えば、前記アンテナ端電圧が当該所定の第1閾値に近づくにつれ、前記アンテナの負荷変調に応じて変化する磁場吸収値の所定周波数における変化量|Δ|が小さくなる範囲内で、当該変化量|Δ|が|Δ|>0である前記アンテナ端電圧の値に設定されていてもよい。
【0019】
また、前記通信装置は、前記アンテナに対して抵抗を付加するためのスイッチをさらに備えていてもよい。そして、前記特性制御部は、前記スイッチのオン/オフを切り替えることにより前記アンテナの特性を変化させるように構成されていてもよい。
【0020】
また、前記通信装置は、前記アンテナに対して複数の抵抗を並列に付加するための互いに独立した複数のスイッチをさらに備えていてもよい。そして、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際、前記アンテナの特性を変化させた直後に前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達しないように、前記複数のスイッチの一部又は全部をオンに切り替えることによって前記アンテナの特性を変化させるように構成されていてもよい。
【0021】
また、前記通信装置は、前記アンテナに対して複数の抵抗を並列に付加するための互いに独立した複数のスイッチをさらに備えていてもよい。そして、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際、前記アンテナの特性を変化させた直後に前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達した場合、前記複数のスイッチの一部又は全部をオフに切り替えることによって前記アンテナの特性を変化させるように構成されていてもよい。
【0022】
また、前記特性制御部は、任意のタイミングで、前記アンテナの特性を変化させるか否かを判断し、変化させる場合には、データの送受信が行われていないタイミングで前記アンテナの特性を変化させるように構成されていてもよい。
【0023】
また、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値を上回った際に前記アンテナの特性を変化させ、或いは、前記アンテナ端電圧が前記所定の第2閾値を下回った際に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元するように構成されていてもよい。この場合、前記通信装置は、非接触ICカードであってもよい。
【0024】
また、前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値を下回った際に前記アンテナの特性を変化させ、或いは、前記アンテナ端電圧が前記所定の第2閾値を上回った際に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元するように構成されていてもよい。この場合、前記通信装置は、リーダ/ライタであってもよい。
【0025】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、前記リーダ/ライタからの磁界信号に対し、非接触ICカードの負荷変調を利用して通信する際に、前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナ端電圧が検知される電圧検知ステップと、前記電圧検知ステップにおいて検知されたアンテナ端電圧が所定の閾値に達した場合に前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナの特性が変化するように制御される特性制御ステップとを含む、アンテナ特性の制御方法が提供される。
【0026】
上記の構成により、非接触通信距離が所定値近傍に達した際に発生する通信不可領域を回避することが可能になる。それと共に、アンテナ特性の切り替えに応じて変化するアンテナ端電圧に応じて所定の閾値を設け、この閾値に応じてアンテナ特性の切り替えタイミングを制御することで、アンテナ特性の切り替えによる極端な通信可能距離の低下を防止することができる。その結果、通信可能距離をある一定以上の値に保ちつつ、通信不可領域の発生を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、アンテナ間の距離に依存せずに疎結合状態を維持し、アンテナ特性(同調周波数およびQ値)を極力変化させないことで、所定の閾値に基づいてアンテナ特性を切り替えるタイミングを制御することによってヌルの発生を回避することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0029】
<本発明の一実施形態>
本発明の一実施形態について説明する。本実施形態は、非接触通信する通信装置に関し、特に、アンテナ端電圧を検知し、その検知結果に応じてアンテナ特性を変化させることで通信不可領域の発生を回避する技術に関する。当該技術は、所定の閾値に基づいてアンテナ特性が制御される点に1つの特徴を有する。
【0030】
[通信装置100の機能構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る通信装置100の機能構成について説明する。図1は、本実施形態に係る通信装置100の機能構成を示す説明図である。
【0031】
図1に示すように、通信装置100は、主に、アンテナ102と、電圧検知部104と、抵抗付加部106と、特性制御部108と、記憶部110と、通信部112とにより構成されている。例えば、この通信装置100は、通信部12とアンテナ14とを備える他の通信装置10との間で非接触通信することが可能である。
【0032】
上記の他、図1の通信装置100には、保護素子を記載した。この保護素子は、アンテナ端から入力される電圧が高い場合に装置内部の回路を保護するものである。保護素子としては、例えば、バリスタ、ツェナーダイオードやサージ用保護回路が用いられる。但し、本実施形態に係る通信装置100は、後述する特性制御部108の構成により、この保護素子を設けなくてもよい。この場合、保護素子を設けない分だけ回路構成が簡略化されると共に、回路面積、及び製造コストが低減される。
【0033】
以下では、通信装置100のアンテナ102と他の通信装置10のアンテナ14との間の距離dを非接触通信距離と呼ぶことにする。尚、通信装置100は、例えば、非接触ICカードにより構成されうる。一方、他の通信装置10は、例えば、非接触ICカードとの間で通信することが可能なリーダ/ライタにより構成されうる。
【0034】
(電圧検知部104)
電圧検知部104は、アンテナ102のアンテナ端電圧を検知する手段である。電圧検知部104は、通信装置100がアンテナ102を介して搬送波又は変調波を受信した際に、そのアンテナ102のアンテナ端電圧を検知する。電圧検知部104により検知されたアンテナ端電圧は、特性制御部108に入力される。
【0035】
(抵抗付加部106)
抵抗付加部106は、アンテナ102の負荷を変化させる手段である。抵抗付加部106は、例えば、特性制御部108から入力された制御信号に応じて、アンテナ102に対して抵抗を付加し、或いは、付加した抵抗を削除して、アンテナ102の負荷を切り替える。つまり、抵抗付加部106は、アンテナ102の特性を変更するための変更手段である。また、抵抗付加部106は、通信部112から取得した返信信号に応じてアンテナの負荷を切り替えることで、アンテナ102から発生する磁場を変調する。この変調された磁場により返信信号が送信される。尚、ここで言う返信信号とは、他の通信装置10から送信された送信信号に応じて返信される信号のことを意味する。
【0036】
但し、抵抗付加部106は、負荷変調により返信信号を送信するための負荷の切り替えと、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減とを行う。返信信号を送信する場合、抵抗付加部106は、所定の抵抗値を有する負荷をON/OFFし、アンテナ102の端部に接続された容量によるインピーダンスを切り替えて返信信号を送信する。一方、アンテナ102の特性を変更するための負荷の増減を行う場合、抵抗付加部106は、上記の容量に対して並列に接続された負荷の大きさを増減させることで、当該容量によるインピーダンスの周波数特性を変化させる。
【0037】
(特性制御部108、記憶部110)
特性制御部108は、電圧検知部104により検知されたアンテナ102のアンテナ端電圧に応じてアンテナ102の特性を制御する制御手段である。特に、特性制御部108は、記憶部110に記録された一又は複数の閾値に基づいてアンテナ102の特性を制御する。このとき、特性制御部108は、抵抗付加部106によりアンテナ102の抵抗値を増減させることでアンテナ102の特性を制御する。尚、記憶部110には、一又は複数の閾値(例えば、第1閾値th1、第2閾値th2)が予め記録されている。これらの閾値については後述する。
【0038】
(通信部112)
通信部112は、返信信号を生成し、当該返信信号に応じて抵抗付加部106を制御することで信号を送信する手段である。例えば、通信部112は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を繰り返し切り替えることで、アンテナ102から発生する磁場の強度を周期的に変化させることができる。そのため、通信部112は、アンテナ102の負荷を切り替えて搬送波にASK(Amplitude Shift Keying)方式の信号変調を施すことができる。
【0039】
(通信不可領域の発生要因について)
ここで、図2Aを参照しながら、通信不可領域の発生要因について簡単に説明する。図2Aは、通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。また、以下の説明の中で、適宜、図2B〜図2Fを参照する。これらの図は、非接触通信距離dとヌルの発生原因との関係を説明するための説明図である。尚、以下の説明において、説明の便宜上、通信装置100を非接触ICカード、他の通信装置10をリーダ/ライタと仮定して説明する。もちろん、本実施形態に係る技術はこれに限定されず、互いに非接触通信する装置において好適に適用される。
【0040】
上記の通り、互いに非接触通信する一対の通信装置(例えば、リーダ/ライタ、及び非接触ICカード)は、各々が有するアンテナ間の結合(電磁結合)を利用して通信する。例えば、非接触ICカードのアンテナに対して並列に付加された負荷のオン/オフを切り替えることにより、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性及び同特性に関するQ値を変化させて信号を返信する負荷変調方式が用いられる。負荷のオン/オフは、アンテナに対して並列に抵抗の付加又は削除をすることで実現される。
【0041】
ところが、非接触通信距離dが短くなると、両装置のアンテナが密に結合するため、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性が大きく変化する。この変化に起因して通信不可領域が発生してしまうのである。このような状態の一例を模式的に表現したのが図2Aである。尚、上記のQ値とは、インピーダンスの周波数特性が有するピークの鋭さを表す値である。
【0042】
図2Aには、非接触ICカードのアンテナ102に付加される負荷がONの状態を表すG2と、その負荷がOFFの状態を表すG1及びG3とが模式的に示されている。これらG1〜G3は、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性である。図2Aに示すように、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性のQ値は、非接触ICカードの負荷がONになることで大きくなる(G2)。逆に、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性のQ値は、非接触ICカードの負荷がOFFになることで小さくなる(G1)。
【0043】
図2Aから明らかなように、負荷ONのG2と、負荷OFFのG1とを比較すると、ある周波数(例えば、13.56MHz)において、インピーダンス値に差Δが検出される。そこで、非接触ICカードとリーダ/ライタとは、このインピーダンス値の差Δを利用することで、上記の負荷変調方式による非接触通信を実現しているのである。ところが、非接触通信距離dが十分に短くなると、上記の通り、インピーダンスの周波数特性の形状が歪に変化したり、周波数軸方向にシフトしたりする。例えば、非接触通信距離dが短くなるに連れて、インピーダンスの周波数特性の中心周波数が大きくなるように周波数軸方向にシフトすることがある。こうした変化に起因してヌルが発生してしまうのである。
【0044】
上記のように、アンテナ14とアンテナ102とが疎結合の場合(非接触通信距離dが比較的大きい場合)、負荷OFFの状態でG1のような形状になる。この場合、負荷ONの状態のG2と負荷OFF状態のG1との間で所定周波数(例えば、13.56MHz)におけるインピーダンスの差Δが|Δ|>0となり、ASK方式で変調された信号をリーダ/ライタが受信することができる。
【0045】
ところが、非接触通信距離dが所定距離d0の近傍に接近すると、負荷ON状態のG2と負荷OFF状態のG3との間で所定周波数におけるインピーダンスの差Δがほぼ0になる。そのため、アンテナ102の負荷を切り替えても、リーダ/ライタで検出されるインピーダンスに変化が現れず、非接触ICカードは、ASK方式で信号を変調して返信することができなくなる。
【0046】
その結果、所定の非接触通信距離d0の近傍で通信不可領域が発生してしまうのである。また、この通信負荷領域が発生する原因としては、上記の他にも、いくつかの要因が考えられる。そこで、図2B〜図2Fを参照しながら、上記の要因も含めて、ヌルの発生原因について説明する。
【0047】
まず、図2Bを参照する。図2Bは、非接触ICカード及びリーダ/ライタのアンテナ同士が疎結合状態にある場合のリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性を模式的に示したものである。上記の通り、非接触ICカードの負荷がON(A)/OFF(B)されることで、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性のQ値が増加/減少する。そのため、所定周波数(以下、13.56MHzとする。)におけるインピーダンス値の変化を検出することで、非接触ICカードからの返信信号を復調することができる。
【0048】
次に、図2Cを参照する。図2Cは、非接触ICカード及びリーダ/ライタのアンテナ同士が密結合状態にある場合のリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性を模式的に示したものである。上記の通り、アンテナ同士が密に結合すると、インピーダンスの周波数特性の形状に歪みが生じると共に、その中心周波数が高周波数側にシフトする。図2Cに示すように、インピーダンスの周波数特性がダブルピークの形状になる場合もある。
【0049】
この場合、図2Cに示すように、返信信号の検出に用いる13.56MHzの周波数において、負荷ON(A)のインピーダンス値と、負荷OFF(B)のインピーダンス値とがほぼ同じ値になってしまい、返信信号を復調することができなくなってしまう。これが、図2Aを参照しながら説明したヌルの発生原因の1つである。
【0050】
次に、図2D、及び図2Eを参照する。図2Dは、非接触ICカード及びリーダ/ライタのアンテナ同士が密結合状態にある場合のリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性を模式的に示したものである。図2Eは、リーダ/ライタ側で検出されるASK波形を模式的に示した説明図である。図2Dには、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性の他に、副搬送波が記載されている。この副搬送波とは、非接触ICカードから信号を返信する際に利用するものである。例えば、13.56MHzを中心として±212kHzの位置に対称に設定される。
【0051】
図2Dの場合、13.56MHzにおいて、負荷ON(A)のインピーダンスの周波数特性と、負荷OFF(B)のインピーダンスの周波数特性との間のインピーダンス値に有限の差Δが存在するため、一見、返送信号の復調が可能であるように思われる。しかしながら、13.56MHzの両側に対称に設定された副搬送波帯において、両周波数特性の形状が著しく非対称になっており、両副搬送波のバランスが損なわれている。このように、副搬送波のバランスが損なわれた場合のASK波形を示したのが図2E(Y)である。
【0052】
図2Eには、理想的なASK波形(X)と、歪んだASK波形(Y)とが記載されている。理想的なASK波形(X)は、図2Bに示したインピーダンスの周波数特性のように、2つの副搬送波帯でのインピーダンスの周波数特性が対称な場合に検出されるASK波形である。一方、歪んだASK波形(Y)は、図2Dに示すように、2つの副搬送波帯でインピーダンスの周波数特性が著しく非対称な場合に検出されるASK波形である。リーダ/ライタは、歪んだASK波形(Y)から返信信号を復調することができないため、通信不可な状態となってしまうのである。これが、ヌルを発生させる1つの要因になっている。
【0053】
次に、図2Fを参照する。非接触ICカード及びリーダ/ライタのアンテナ同士が密結合状態にある場合のリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性を模式的に示したものである。図2Fは、アンテナ同士の結合が著しく強い場合である。このように、結合が著しく強くなると、両アンテナ間の相互インダクタンス成分が大きくなり、非接触ICカードに伝送される電力量が大きく低減されてしまう。そのため、電力伝送が不十分になり、通信不可な状態になってしまうのである。これが、ヌルを発生させる1つの要因となっている。また、結合が著しく強い場合は、図2Cと同様に負荷ON・OFFによるインピーダンス値の変化が無くなることもヌルの要因となる可能性がある。
【0054】
非接触ICカードのアンテナと、リーダ/ライタのアンテナとの間の磁気的な結合により通信不可領域が発生する問題に対しては、例えば、非接触ICカードのアンテナ102の共振周波数(f0)を搬送波周波数から遠い位置に設定する等の対策が講じられてきた。しかしながら、図2D〜図2Fで説明したヌルの発生要因に対しては、共振周波数をシフトさせる対策では解決が難しく、逆に、その特性を悪化させてしまう場合もある。そこで、本実施形態では、上記のいずれの問題に対しても有効な解決策を提案する。
【0055】
本実施形態は、予め設定された一又は複数の閾値に基づいてアンテナ102の特性を好適に制御する技術に関する。以下、この技術について詳細に説明する。
【0056】
(閾値の設定方法について)
図3〜図6を参照しながら、本実施形態に係る閾値の設定方法について説明する。図3〜図6は、本実施形態に係る閾値の設定方法を示す説明図である。尚、ここでは、説明の都合上、2つの閾値(第1閾値、第2閾値)を設定する方法について述べるが、本実施形態は、これに限定されるものではない。
【0057】
(図3:非接触ICカード側での負荷制御方法について)
まず、図3を参照しながら、非接触ICカード側での負荷制御方法について説明する。図3は、非接触ICカード(通信装置100)におけるアンテナ端電圧の変化と閾値の設定例とを示した説明図である。
【0058】
図3(a1)に示すように、非接触通信距離dが小さくなるにつれてアンテナ端電圧Vaは増加する。通信装置100は、電圧検知部104によりアンテナ端電圧Vaを検知している。アンテナ端電圧Vaが第1閾値(符号U)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を増加させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Sdだけ低下する。
【0059】
もし、負荷を増加させなければ、図3(a2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが増加し続けてしまう。しかし、負荷の増加によりアンテナ端電圧Vaが第1閾値以下に抑制されるため、過電圧状態にはならず、上記の保護素子が不要になるのである。
【0060】
既に述べた通り、アンテナ端に接続された容量によるインピーダンスは、この容量に対して並列に接続された負荷が増減することで変化する。つまり、対向するリーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性(図2A等を参照)は、非接触ICカード側の容量に対して並列に接続された負荷の増減により変化する。例えば、この負荷が大きい場合、非接触ICカードの容量によるインピーダンスへの影響が小さくなり、非接触ICカード側の共振系がインピーダンスへ与える影響が小さくなる。そのため、負荷が増加されると、リーダ/ライタ側から見たインピーダンスの周波数特性の、アンテナ間結合によるピークのシフト量及びQ値の変化量が抑えられる。その結果、図2C、図2D、図2Fに示したようなインピーダンスの周波数特性の状態を回避することが可能になるのである。
【0061】
尚、所定幅Sdは、アンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定される値である。従って、理論計算、或いは、実験等により予め推定することも可能である。特性制御部108によるアンテナ102の負荷増加は、非接触通信距離dを大きくするのと実質的に同一の効果を奏する。ここで言う負荷増加は、上記の負荷変調でON/OFFされる負荷に対して並列接続された負荷の増加を意味している点に注意されたい。
【0062】
特性制御部108によりアンテナ102の負荷が増加された後、非接触通信距離dを大きくすると、図3(b1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは減少する。アンテナ端電圧Vaが第2閾値(符号L)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を低減させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Suだけ増加する。もし、負荷を低減させなければ、図3(b2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが減少し続けてしまう。しかし、負荷の低減によりアンテナ端電圧Vaが第2閾値以上に維持される。その結果、電力伝送の不足が発生せずに済む。
【0063】
尚、所定幅Suは、上記の所定幅Sdと同様にアンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定されるため、理論計算、或いは、実験等により予め推定することが可能である。特性制御部108によるアンテナ102の負荷低減は、非接触通信距離dを小さくするのと実質的に同一の効果を奏する。ここで言う負荷低減は、上記の負荷変調でON/OFFされる負荷に対して並列接続された負荷の低減を意味している点に注意されたい。
【0064】
さらに、特性制御部108によりアンテナ102の負荷が低減された後で非接触通信距離dを小さくすると、図3(c1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは増加する。このように、受信側の通信装置100は、非接触通信距離dに応じて変化するアンテナ端電圧Vaを検知し、そのアンテナ端電圧Vaが所定の閾値に到達した段階でアンテナ102の負荷を変化させることにより、通信不可領域の発生を回避することができる。
【0065】
但し、第1閾値を通信不可領域におけるアンテナ端電圧よりも小さな値に設定している点が重要である。この設定により、通信不可領域の発生が回避されるのである。一方、第2閾値は、所定の最大通信可能距離を確保することが可能なアンテナ端電圧よりも大きな値に設定されている。このように第2閾値を設定しておくことで、最大通信可能距離を維持することが可能になる。つまり、上記の第1及び第2閾値を設定することで、最大通信可能距離を維持しながら、通信不可領域の発生を回避することができるようになる。
【0066】
(図4:リーダ/ライタ側での負荷制御方法について)
次に、図4を参照しながら、リーダ/ライタ側での負荷制御方法について説明する。図4は、リーダ/ライタ側におけるアンテナ端電圧の変化と閾値の設定例とを示した説明図である。但し、リーダ/ライタが通信装置100の機能構成を有するものとする。
【0067】
図3を参照しながら説明した負荷制御方法は、非接触ICカード側で負荷を制御することにより、そのアンテナ端電圧Vaが第1閾値と第2閾値との間に収まるように制御する方法であった。この方法は、リーダ/ライタ側で負荷を制御する方法にも応用できる。図4は、この応用に関し、リーダ/ライタ側で負荷を制御する方法について説明するための説明図である。従って、図4に示すアンテナ端電圧Vaは、リーダ/ライタ側から見たアンテナ端電圧である点に注意されたい。また、負荷の増減がインピーダンスの周波数特性に与える影響については既に述べた通りであり、リーダ/ライタ側で負荷制御する場合であっても同様にインピーダンスの周波数特性の形状を変化させてヌルの発生を防止することができる。
【0068】
図4(a1)に示すように、非接触通信距離dが小さくなるにつれてリーダ/ライタ側のアンテナ端電圧Vaは減少する。リーダ/ライタ(通信装置100)は、電圧検知部104によりアンテナ端電圧Vaを検知している。アンテナ端電圧Vaが第1閾値(符号U)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を増加させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Sdだけ低下する。所定幅Sdは、アンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定される値である。従って、理論計算、或いは、実験等により予め推定することも可能である。もし、負荷を増加させなければ、図4(a2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが減少し続けてしまう。しかし、負荷の増加によりアンテナ端電圧Vaが第1閾値と第2閾値との間に到達することが無くなる。
【0069】
特性制御部108によりアンテナ102の負荷が増加された後、非接触通信距離dを大きくすると、図4(b1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは増加する。アンテナ端電圧Vaが第2閾値(符号L)に到達すると、特性制御部108は、抵抗付加部106を介してアンテナ102の負荷を低減させる。すると、アンテナ端電圧Vaは所定幅Suだけ増加する。所定幅Suは、上記の所定幅Sdと同様にアンテナ102を含めた周辺回路等のインピーダンスにより決定されるため、理論計算、或いは、実験等により予め推定することが可能である。もし、負荷を減少させなければ、図4(b2)に示すように、アンテナ端電圧Vaが増加し続けてしまう。しかし、負荷の減少によりアンテナ端電圧Vaが第1閾値と第2閾値との間に到達することが無くなる。
【0070】
さらに、特性制御部108によりアンテナ102の負荷が低減された後で非接触通信距離dを小さくすると、図4(c1)に示すようにアンテナ端電圧Vaは減少する。このように、通信装置100は、非接触通信距離dに応じて変化するアンテナ端電圧Vaを検知し、そのアンテナ端電圧Vaが所定の閾値に到達した段階でアンテナ102の負荷を変化させる。このとき、アンテナ端電圧Vaが第1閾値と第2閾値との間に位置しないように制御している点が重要であり、この制御により、通信不可領域の発生が防止されている。
【0071】
但し、負荷がONの時の最大通信可能距離を確保することが可能なアンテナ端電圧よりも小さな値に第2閾値が設定される。この設定により、負荷がOFFの時の最大通信可能距離を維持することが可能になる。つまり、最大通信可能距離を維持しながら、通信不可領域の発生を回避することができるのである。
【0072】
(図5:第2閾値の設定方法について)
次に、図5を参照しながら、第2閾値の設定方法について説明する。図5(A)は、非接触ICカード側(図3に対応)における第2閾値の設定方法を示す説明図である。一方、図5(B)は、リーダ/ライタ側(図4に対応)における第2閾値の設定方法を示す説明図である。
【0073】
上記の通り、特性制御部108は、アンテナ端電圧Vaが第1閾値に達するとアンテナ102の負荷を変化させてアンテナ特性を切り替える。その結果、アンテナ端電圧Vaは、アンテナ特性が切り替えられた直後に変化する。
【0074】
例えば、図5(A)の場合、負荷が増加され、非接触ICカードのアンテナ端電圧Vaは所定幅(Sd1又はSd2)だけ減少する。この所定幅がSd2の場合、アンテナ端電圧Vaは、アンテナ特性の切り替え直後に第2閾値を下回ってしまう。図3に示したように、第2閾値に達した直後にアンテナ特性(負荷の減少)が切り替えられるような設定にされている場合、第1閾値到達後に負荷が増加されてアンテナ特性が切り替えられた直後、再び負荷が減少されて元の状態に戻されてしまうことになる。そのため、所定幅は、Sd1のように、負荷が増加した後も第2閾値以上の値に維持されるように設定される。逆に、増減される負荷の大きさに応じて第2閾値が設定されてもよい。このように、所定幅をSd1のような第2閾値以上の値に維持できれば、最大通信可能距離を維持できる。
【0075】
同様に、図5(B)の場合、負荷が増加され、リーダ/ライタのアンテナ端電圧Vaは所定幅(Sd1又はSd2)だけ減少する。この所定幅がSd2の場合、アンテナ端電圧Vaは、アンテナ特性の切り替え直後に第2閾値を上回ってしまう。図4に示したように、アンテナ端電圧Vaが第1閾値と第2閾値との間になると、その直後にアンテナ特性が元の状態に切り替えられるような設定にされている場合、第1閾値到達後に負荷が増加されてアンテナ特性が切り替えられた直後、再び負荷が減少されて元の状態に戻されてしまうことになる。そのため、所定幅は、Sd1のように、負荷が増加した後も第2閾値より小さい値に維持されるように設定される。逆に、増減される負荷の大きさに応じて第2閾値が設定されてもよい。このように、所定幅をSd1のような第2閾値より小さい値に維持できれば、最大通信可能距離を維持できる。
【0076】
(図6:第1閾値の設定方法について)
次に、図6を参照しながら、第1閾値の設定方法について説明する。図6(A)は、非接触ICカード側(図3に対応)における第2閾値の設定方法を示す説明図である。一方、図6(B)は、リーダ/ライタ側(図4に対応)における第2閾値の設定方法を示す説明図である。
【0077】
上記の通り、特性制御部108は、アンテナ端電圧Vaが第2閾値に達するとアンテナ102の負荷を変化させてアンテナ特性を切り替える。その結果、アンテナ端電圧は、アンテナ特性が切り替えられた直後に変化する。
【0078】
例えば、図6(A)の場合、負荷が減少され、非接触ICカードのアンテナ端電圧Vaは所定幅(Su1又はSu2)だけ増加する。この所定幅がSd2の場合、アンテナ端電圧Vaは、アンテナ特性の切り替え直後に第1閾値を上回ってしまい、通信不可領域が発生してしまう。一方、この所定幅をSd1のように第1閾値以下の値に維持できれば、通信不可領域の発生を回避することができる。そのため、通信不可領域が発生するアンテナ端電圧Vaよりも小さい値に第1閾値が設定される。
【0079】
同様に、図6(B)の場合、負荷が減少され、リーダ/ライタのアンテナ端電圧Vaは所定幅(Su1又はSu2)だけ増加する。この所定幅がSd2の場合、アンテナ端電圧Vaは、アンテナ特性の切り替え直後に第1閾値を下回っているため、通信不可領域が発生してしまう。一方、この所定幅をSd1のように第1閾値以上の値に維持できれば、通信不可領域の発生を回避することができる。そのため、通信不可領域が発生するアンテナ端電圧Vaよりも大きい値に第1閾値が設定される。
【0080】
(図5、図6:負荷制御方法について)
図5及び図6を参照しながら説明したように、例えば、通信不可領域の発生を回避するように第1閾値が設定され、最大通信可能距離が所定値以上となるように第2閾値が設定される。これらの閾値は、例えば、非接触ICカード、及びリーダ/ライタの回路構成等により決定される。そのため、第1及び第2閾値を図3又は図4に示すような好適な値に設定することにより、最大通信可能距離を所定値以上に維持しつつ、通信不可領域の発生を回避することが可能になる。
【0081】
しかしながら、非接触ICカード、及びリーダ/ライタの回路構成や両装置の組み合わせ等に依っては、アンテナ特性を変化させた直後のアンテナ端電圧Vaが、図5又は図6に示した所定幅Sd2、Su2のような遷移をする可能性がある。この場合、特性制御部108は、アンテナ特性を変化前の状態に復元することで対処することができる。但し、アンテナ特性を復元したことで再び閾値を越えた状態になり、再度アンテナ特性を変化させる処理が繰り返され、振動状態(又は発振状態)になる可能性がある。この可能性に対し、特性制御部108は、例えば、所定回数を越えて振動した場合にアンテナ特性を変化前の状態に復元し、その状態に固定するリセット機能を有していてもよい。
【0082】
[抵抗付加部106、特性制御部108等の具体的構成例]
次に、図7〜図10を参照しながら、通信装置100が備える抵抗付加部106、及び特性制御部108等の具体的な回路構成の例について説明する。
【0083】
(図7:送信側の回路構成例)
図7は、受信側の通信装置100が備える抵抗付加部106、及び特性制御部108等の具体的な回路構成例を示す説明図である。当該回路構成は、アンテナ端電圧のフィードバックを利用した通信装置100における負荷制御回路の一例である。そこで、以下では、この回路構成を負荷制御回路と呼ぶことにする。
【0084】
図7に示すように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、負荷変調ブロック170と、特性制御ブロック180と、整流回路162と、コンパレータ164とを含む。
【0085】
(負荷変調ブロック170)
負荷変調ブロック170は、抵抗付加部106の一機能に対応し、通信部112による信号入力に応じて負荷変調を施すことで信号を送信する手段である。負荷変調ブロック170は、例えば、スイッチ154と、抵抗156とにより構成される。尚、スイッチ154と抵抗156とは直列に接続されている。スイッチ154は、通信部112による信号入力に応じてオン/オフが切り替えられ、アンテナ102の負荷を抵抗156の分だけ変調することができる。そのため、スイッチ154の切り替えに応じたアンテナ特性の変化を利用してASK方式の信号変調が実現される。
【0086】
(特性制御ブロック180、コンパレータ164)
特性制御ブロック180は、抵抗付加部106の一機能に対応し、コンパレータ164による入力信号に応じてアンテナ特性を切り替える手段である。特性制御ブロック180は、例えば、スイッチ158と、抵抗160とにより構成される。尚、抵抗160に代えてコンデンサを用いてもよい。また、スイッチ158と抵抗160とは直列に接続されている。さらに、特性制御ブロック180は、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されている。
【0087】
コンパレータ164は、特性制御部108の一例である。まず、コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧と第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第1閾値に達した場合(図3の符号U)、スイッチ158をオンに切り替える。スイッチ158がオンになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が付加された分だけ増加してアンテナ特性が変化する(図3の符号Sd)。さらに、コンパレータ164は、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第2閾値に達した場合(図3の符号L)、スイッチ158をオフに切り替える。スイッチ158がオフになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が離隔された分だけ減少してアンテナ特性が変化する(図3の符号Su)。
【0088】
(図8:変形例)
ここで、図8を参照しながら、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例として、多段並列抵抗型の負荷制御回路について説明する。図8は、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例を示す説明図である。尚、図7の構成と実質的に同一の構成要素については重複説明を避けるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0089】
図8に示すように、本変形例に係る負荷制御回路は、例えば、負荷変調ブロック170と、特性制御ブロック280と、整流回路162と、コンパレータ264とを含む。上記の負荷制御回路との相違点は、主に、特性制御ブロック280、及びコンパレータ264の構成の違いにある。
【0090】
(特性制御ブロック280、コンパレータ264)
特性制御ブロック280は、複数のスイッチ258(SW1〜SWn)と、複数の抵抗260とにより構成されている。また、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続されている。そして、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続されている。そのため、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能である。
【0091】
例えば、図5(A)又は図6(A)に示したように、一の閾値に達してアンテナ特性が切り替えられた直後に他の閾値を越えるような場合、オンに切り替えられた複数のスイッチ258の一部だけをオフに切り替えることで再び一の閾値を越えてしまう問題を回避することができる。或いは、一の閾値に達した際に、他の閾値を越えないように、他の閾値に達する直前までオンにするスイッチ258の数を徐々に増加させてもよい。
【0092】
また、コンパレータ264は、整流回路162から入力されるアンテナ端電圧を2以上の複数の閾値(第1閾値〜第n閾値)と比較し、アンテナ特性の切り替え後のアンテナ端電圧が所定の閾値間に位置するように、オンに切り替えるスイッチ258の数を決定してもよい。尚、複数のスイッチ258は、所定の順序で切り替えられてもよいし、任意の順序で切り替えられてもよい。例えば、複数の抵抗260の抵抗値が互いに異なるような場合に、スイッチ258を切り替える組み合わせを適切に制御することで、より効率良くアンテナの負荷を切り替えることができる。
【0093】
上記のように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、スイッチ158、258と、抵抗160、260と、コンパレータ164、264とを組み合わせることで実現される。そして、アンテナ102の負荷制御は、主に、コンパレータ164、264から入力された信号に応じてスイッチ158、258が切り替わることで実現される。このとき、コンパレータ164、264は、図3、図5(A)、及び図6(A)を参照しながら説明した制御方法に基づいてスイッチ158、258を制御する。
【0094】
(具体例1:図7に係る具体例)
例えば、受信側の通信装置100が非接触ICカードであり、送信側がリーダ/ライタである場合について考える。この場合、非接触ICカードのアンテナ端電圧が第1閾値を越えると、スイッチ158がオフからオンに切り替えられて抵抗160が有効になる。その結果、非接触ICカードとリーダ/ライタとが至近距離に位置しても、両者のアンテナが密結合して通信不可状態が発生するのを回避することができる。さらに、アンテナ端電圧が第2閾値を下回った場合、非接触ICカードは、スイッチ158をオフに切り替えることで抵抗160を無効にする。その結果、アンテナの負荷が増大したことにより発生する通信状態の劣化により、最大通信可能距離が所定値よりも低下することを防止することができる。
【0095】
(具体例2:図8に係る具体例)
上記の具体例2と同様に、受信側の通信装置100が非接触ICカードであり、送信側がリーダ/ライタである場合について考える。この場合、複数組のスイッチ258及び抵抗260が多段に並列接続されている。そのため、非接触ICカードは、アンテナ端電圧をモニターし、そのアンテナ端電圧に応じた抵抗値になるようにスイッチ258を切り替える。例えば、非接触ICカードがリーダ/ライタに近接して磁場が強くなるにつれて多くのスイッチをオンに切り替えてもよい。こうすると、オンになったスイッチ258の数だけアンテナ102に掛かる抵抗値が小さくなるので負荷を大きくすることができる。
【0096】
次に、送信側の回路構成例について説明する。
【0097】
(図9:送信側の回路構成例)
図9は、送信側の通信装置100が備える抵抗付加部106、及び特性制御部108等の具体的な回路構成例を示す説明図である。当該回路構成は、アンテナ端電圧のフィードバックを利用した通信装置100における負荷制御回路の一例である。
【0098】
図9に示すように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、特性制御ブロック180と、整流回路162と、コンパレータ164とを含む。
【0099】
(特性制御ブロック180、コンパレータ164)
特性制御ブロック180は、抵抗付加部106の一機能に対応し、コンパレータ164による入力信号に応じてアンテナ特性を切り替える手段である。特性制御ブロック180は、例えば、スイッチ158と、抵抗160とにより構成される。尚、抵抗160に代えてコンデンサを用いてもよい。また、スイッチ158と抵抗160とは直列に接続されている。さらに、特性制御ブロック180は、負荷変調ブロック170に対して並列に接続されている。
【0100】
コンパレータ164は、特性制御部108の一例である。まず、コンパレータ164は、整流回路162により直流に変換されたアンテナ端電圧と第1閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第1閾値に達した場合(図4の符号U)、スイッチ158をオフに切り替える。スイッチ158がオフになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が除去された分だけ増加してアンテナ特性が変化する(図4の符号Sd)。さらに、コンパレータ164は、整流回路162により入力されたアンテナ端電圧と第2閾値とを比較し、そのアンテナ端電圧が第2閾値に達した場合(図4の符号L)、スイッチ158をオンに切り替える。スイッチ158がオンになると、アンテナ102の負荷は、抵抗160が付加された分だけ減少してアンテナ特性が変化する(図4の符号Su)。
【0101】
(図10:変形例)
ここで、図10を参照しながら、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例として、多段並列抵抗型の負荷制御回路について説明する。図10は、本実施形態に係る負荷制御回路の変形例を示す説明図である。尚、図9の構成と実質的に同一の構成要素については重複説明を避けるため、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0102】
図10に示すように、本変形例に係る負荷制御回路は、例えば、特性制御ブロック280と、整流回路162と、コンパレータ264とを含む。上記の負荷制御回路との相違点は、主に、特性制御ブロック280、及びコンパレータ264の構成の違いにある。
【0103】
(特性制御ブロック280、コンパレータ264)
特性制御ブロック280は、複数のスイッチ258(SW1〜SWn)と、複数の抵抗260とにより構成されている。また、一のスイッチ258には、一の抵抗260が直列に接続されている。そして、スイッチ258と抵抗260との組は、互いに並列に接続されている。そのため、オンにするスイッチ258の個数を変えることで、アンテナ102に付加される負荷量を調整することが可能である。
【0104】
例えば、図5(B)又は図6(B)に示したように、一の閾値に達してアンテナ特性が切り替えられた直後に他の閾値を越えるような場合、オフに切り替えられた複数のスイッチ258の一部だけをオンに切り替えることで、再び一の閾値を越えてしまう問題を回避することができる。或いは、一の閾値に達した際に、他の閾値を越えないように、他の閾値に達する直前まで徐々にスイッチ258をオンに切り替えてもよい。
【0105】
また、コンパレータ264は、整流回路162から入力されるアンテナ端電圧を2以上の複数の閾値(第1閾値〜第n閾値)と比較し、アンテナ特性の切り替え後のアンテナ端電圧が所定の閾値間に位置するように、オンに切り替えるスイッチ258の数を決定してもよい。尚、複数のスイッチ258は、所定の順序で切り替えられてもよいし、任意の順序で切り替えられてもよい。例えば、複数の抵抗260の抵抗値が互いに異なるような場合に、スイッチ258を切り替える組み合わせを適切に制御することで、より効率良くアンテナの負荷を切り替えることができる。
【0106】
上記のように、本実施形態に係る負荷制御回路は、例えば、スイッチ158、258と、抵抗160、260と、コンパレータ164、264とを組み合わせることで実現される。そして、アンテナ102の負荷制御は、主に、コンパレータ164、264から入力された信号に応じてスイッチ158、258が切り替わることで実現される。このとき、コンパレータ164、264は、図4、図5(B)、及び図6(B)を参照しながら説明した制御方法に基づいてスイッチ158、258を制御する。
【0107】
(具体例3:図9に係る具体例)
例えば、受信側の通信装置100が非接触ICカードであり、送信側がリーダ/ライタである場合について考える。この場合、リーダ/ライタのアンテナ端電圧が第1閾値を下回ると、スイッチ158がオフからオンに切り替えられて抵抗160が有効になる。その結果、出力磁場の強度が減少し、非接触ICカードとリーダ/ライタとが至近距離に位置しても、両者のアンテナが密結合して通信不可状態が発生するのを回避することができる。さらに、アンテナ端電圧が第2閾値を越えた場合、リーダ/ライタは、スイッチ158をオフに切り替えることで抵抗160を無効にする。すると、出力磁場の強度が増大し、最大通信可能距離が所定値以上に維持される。
【0108】
(具体例4:図10に係る具体例)
上記の具体例3と同様に、受信側の通信装置100が非接触ICカードであり、送信側がリーダ/ライタである場合について考える。この場合、複数組のスイッチ258及び抵抗260が多段に並列接続されている。そのため、リーダ/ライタは、アンテナ端電圧をモニターし、そのアンテナ端電圧に応じた抵抗値になるようにスイッチ258を切り替える。例えば、非接触ICカードがリーダ/ライタに近接してリーダ/ライタのアンテナ端電圧が減少するにつれて多くのスイッチをオンに切り替えてもよい。こうすることで、オンになったスイッチ258の数だけ出力磁場を小さくすることができる。
【0109】
以上、本実施形態に係る通信装置100の機能構成、回路構成例、及び閾値の設定方法について説明した。上記の構成を適用すると、リーダ/ライタや非接触ICカード等の非接触通信する通信装置間において、互いのアンテナが密結合する通信不可領域に入ることをアンテナ端電圧により検知し、その検知結果に応じて通信不可領域の発生を回避することができる。さらに、そのアンテナ端電圧が予め設定した閾値を超える(上回る、または下回る)ことをトリガーとしてアンテナ間の結合による特性変化を低減することが可能になり、最大通信可能距離を所定値以上に維持したまま、通信不能領域の発生を回避することができる。
【0110】
[非接触通信装置の装置構成例]
ここで、図11を参照しながら、上記の装置が有する機能を実現することが可能な非接触通信装置の装置構成例について簡単に説明する。図11は、非接触通信装置の装置構成例を示す説明図である。尚、上記の装置が有する機能は、この非接触通信装置が有する構成要素の一部のみを利用して実現してもよい。また、重複する符号が付された構成要素は、一体のハードウェア資源により構成されていてもよい。
【0111】
図4に示すように、この非接触通信装置は、主に、ICカード機能提供ブロックと、リーダ/ライタ機能提供ブロックと、コントローラ922とにより構成される。
【0112】
(ICカード機能提供ブロック)
ICカード機能提供ブロックは、例えば、アンテナ902と、フロントエンド回路904と、変調器906と、コマンド再生器908と、クロック再生器910と、制御回路912と、暗号化回路914と、メモリ916と、有線インターフェース回路918とにより構成される。
【0113】
アンテナ902は、ループ・アンテナにより構成され、リーダ/ライタが有するループ・アンテナと磁気的に結合してコマンドや電力を受け取る。フロントエンド回路904は、リーダ/ライタから送出された搬送波を整流して直流電源を再生する。また、フロントエンド回路904は、取得した13.56MHzの搬送波を分周してコマンド再生器908、及びクロック再生器910に入力する。コマンド再生器908は、入力された搬送波からコマンドを再生して制御回路912に入力する。クロック再生器910は、入力された搬送波からロジック回路を駆動するためのクロックを再生して制御回路912に入力する。また、フロントエンド回路904は、再生した電源を制御回路912(CPU)に供給する。
【0114】
全ての回路に電源が供給されると、制御回路912は、再生されたコマンドに応じて各回路を駆動する。尚、制御回路912から出力されたデータは、暗号化回路914により暗号化されてメモリ916に格納される。尚、メモリ916は、例えば、磁気的、光学的、又は光磁気的に情報を記録する記憶装置であってもよいし、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等に利用される半導体記憶装置であってもよい。
【0115】
一方、メモリ916内に格納された暗号化データを送信する場合、フロントエンド回路904は、変調器906により変調された暗号化データに基づいてアンテナ902の給電点にある負荷インピーダンスを変化させ、その変化によりアンテナ902によって誘起される磁界を変化させる。この磁界変化により、磁気的に結合したリーダ/ライタのアンテナを流れる電流変化が誘起されて暗号化データが伝送される。
【0116】
また、制御回路912は、有線インターフェース回路918を介してコントローラ922により制御されてもよい。また、ICカード機能提供ブロックは、インターフェースI/F(未図示)を介して、後述のリーダ/ライタ機能提供ブロックとの間で情報を送受信し、相互に又は一方から他方を制御することが可能であってもよい。
【0117】
(リーダ/ライタ機能提供ブロック)
リーダ/ライタ機能提供ブロックは、例えば、アンテナ902と、フィルタ932と、受信アンプ934と、周波数変換器936と、識別器938と、ロジック回路940と、制御回路912と、メモリ916と、有線インターフェース回路942と、変調器946と、局部発振器950と、送信アンプ948とにより構成される。
【0118】
リーダ/ライタ機能提供ブロックは、非接触ICカード等との磁気的な結合を利用してコマンドや電力を供給する。このリーダ/ライタ機能提供ブロックは、制御部912(CPU)の制御により、非接触ICカード等に電力を供給して活性化させてから、所定の伝送プロトコルに従って通信を開始する。このとき、リーダ/ライタ機能提供ブロックは、通信接続の確立、アンチコリジョン処理、及び認証処理等を行う。
【0119】
リーダ/ライタ機能提供ブロックは、局部発振器950を利用して搬送波を生成する。情報を送信する場合、まず、制御回路912は、メモリ916からデータを読み出してロジック回路940に伝送する。そして、変調器946は、ロジック回路940から出力された信号に基づいて局部発振器950により生成された搬送波を変調する。さらに、送信アンプ948は、変調器946から出力された変調波を増幅し、アンテナ902を介して送信する。
【0120】
一方、情報を受信する場合、まず、アンテナ902を介して受信された変調波は、フィルタ932を通した上で受信アンプ934に入力される。そして、受信アンプ934により増幅された信号は、周波数変換器936により周波数変換されてロジック回路940に入力される。さらに、ロジック回路940から出力された信号は、制御回路912によりメモリ916に記録される。或いは、当該信号は、有線インターフェース回路942を介して外部のコントローラ922に伝送される。
【0121】
以上、非接触通信装置の装置構成例について説明した。当該非接触通信装置は、例えば、携帯電話、携帯情報端末、各種の通信機器、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、或いは、ゲーム機や情報家電等であってもよい。また、上記の非接触通信装置が有する機能又は構成要素の一部又は全部を内蔵した各種の機器についても、上記実施形態の技術的範囲に含まれる。もちろん、上記の各構成要素が有する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムや当該プログラムが記録された記録媒体についても上記実施形態の技術的範囲に含まれることは言うまでもない。
【0122】
[アンテナ特性の判断/変更タイミングについて]
ここで、図12を参照しながら、本実施形態に係るアンテナ特性の判断/変更タイミングについて説明する。図12は、本実施形態に係るアンテナ特性の判断/変更タイミングを示す説明図である。図12には、リーダ/ライタ側での送受信タイミングと、この送受信タイミングに対応する非接触ICカード側での送受信タイミングとが模式的に示されている。図12の横軸は、例えば、右方向に向かって経過時間を示している。
【0123】
この場合、上記の特性制御部108は、送受信タイミングと、アンテナ特性の変更タイミングとが重ならないように制御する。また、特性制御部108は、任意のタイミングでアンテナ特性を変更すべきか否かを判断する。つまり、特性制御部108は、送受信が行われていない期間(ΔTn(n=1,2,3,4,…))に、変更が必要な場合にアンテナ特性を変更するのである。但し、アンテナ特性の判断期間と、アンテナ特性の変更期間とが同一である必要は無い。このように構成することで、送受信中の信号が破壊されずに済む。
【0124】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0125】
例えば、上記の負荷制御回路について、アンテナの負荷をスイッチにより可変する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、スイッチに代えて、アンテナの負荷を連続的に変化させる可変型の抵抗回路を利用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信装置の機能構成を示す説明図である。
【図2A】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図2B】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図2C】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図2D】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図2E】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図2F】通信不可領域の発生要因を説明するための説明図である。
【図3】アンテナ端電圧に応じた特性切り替え方法を示す説明図である。
【図4】アンテナ端電圧に応じた特性切り替え方法を示す説明図である。
【図5】アンテナ端電圧に応じた特性切り替え方法を示す説明図である。
【図6】アンテナ端電圧に応じた特性切り替え方法を示す説明図である。
【図7】本実施形態に係る通信装置の回路構成例を示す説明図である。
【図8】本実施形態に係る通信装置の回路構成例を示す説明図である。
【図9】本実施形態に係る通信装置の回路構成例を示す説明図である。
【図10】本実施形態に係る通信装置の回路構成例を示す説明図である。
【図11】非接触通信装置の装置構成の一例を示す説明図である。
【図12】本実施形態に係るアンテナ特性の判断/変更タイミングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0127】
100 通信装置
102 アンテナ
104 電圧検知部
106 抵抗付加部
108 特性制御部
110 記憶部
112 通信部
154、158、258 スイッチ
156、160、260 抵抗
162 整流回路
164、264 コンパレータ
170 負荷変調ブロック
180、280 特性制御ブロック
902 アンテナ
904 フロントエンド回路
906、944 変調器
908 コマンド再生器
910 クロック再生器
912 制御回路(CPU)
914 暗号化回路
916 メモリ
918、942 有線I/F回路
922 コントローラ
932 フィルタ
934 受信アンプ
936 周波数変換器
938 識別器
940 ロジック回路
948 送信アンプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダ/ライタからの磁界信号に対し、非接触ICカードの負荷変調を用いて非接触通信する場合に、前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナ端電圧を検知する電圧検知部と、
前記電圧検知部により検知されたアンテナ端電圧に応じて前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナの特性を変化させる特性制御部と、
を備え、
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が所定の第1閾値に達した場合に前記アンテナの特性を変化させる、通信装置。
【請求項2】
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際に前記アンテナの特性を変化させた後で前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達した場合に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元する、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記所定の第2閾値は、前記特性制御部により前記アンテナの特性が変化した直後の前記アンテナ端電圧よりも、前記所定の第1閾値から遠い値に設定されている、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記所定の第1閾値は、前記特性制御部が前記アンテナの特性を変化前の状態に復元した直後の前記アンテナ端電圧よりも、前記所定の第2閾値から遠い値に設定されている、請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記アンテナに対して抵抗を付加するためのスイッチをさらに備え、
前記特性制御部は、前記スイッチのオン/オフを切り替えることにより前記アンテナの特性を変化させる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項6】
前記アンテナに対して複数の抵抗を並列に付加するための互いに独立した複数のスイッチをさらに備え、
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際、前記アンテナの特性を変化させた直後に前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達しないように、前記複数のスイッチの一部又は全部のオン/オフを切り替えることにより前記アンテナの特性を変化させる、請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記アンテナに対して複数の抵抗を並列に付加するための互いに独立した複数のスイッチをさらに備え、
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値に達した際、前記アンテナの特性を変化させた直後に前記アンテナ端電圧が所定の第2閾値に達した場合、前記複数のスイッチの一部又は全部のオフ/オフを切り替えることにより前記アンテナの特性を変化させる、請求項2に記載の通信装置。
【請求項8】
前記特性制御部は、任意のタイミングで、前記アンテナの特性を変化させるか否かを判断し、変化させる場合には、データの送受信が行われていないタイミングで前記アンテナの特性を変化させる、請求項1に記載の通信装置。
【請求項9】
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値を上回った際に前記アンテナの特性を変化させ、或いは、前記アンテナ端電圧が前記所定の第2閾値を下回った際に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項10】
前記特性制御部は、前記アンテナ端電圧が前記所定の第1閾値を下回った際に前記アンテナの特性を変化させ、或いは、前記アンテナ端電圧が前記所定の第2閾値を上回った際に前記アンテナの特性を変化前の状態に復元する、請求項2に記載の通信装置。
【請求項11】
前記リーダ/ライタからの磁界信号に対し、非接触ICカードの負荷変調を利用して通信する際に、前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナ端電圧が検知される電圧検知ステップと、
前記電圧検知ステップにおいて検知されたアンテナ端電圧が所定の閾値に達した場合に前記リーダ/ライタ又は前記非接触ICカードのアンテナの特性が変化するように制御される特性制御ステップと、
を含む、アンテナ特性の制御方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−272697(P2009−272697A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119047(P2008−119047)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(504134520)フェリカネットワークス株式会社 (129)
【Fターム(参考)】