説明

通信装置および通信制御方法

【課題】ダイレクトコンバージョン方式を採用する通信システムにおいて、システムトータルのスループットの向上を考慮した無線リソースの割り当てを実行できる通信装置及び通信制御方法を提供することである。
【解決手段】本発明に係る通信装置は、ダイレクトコンバージョン方式により無線信号を送信する通信装置であって、局部発振器115が生成するキャリアを変調した送信信号を送信する通信部110と、キャリアリークレベルを検出する検出部120と、通信相手のSINRおよびRSSIを取得する制御部140とを備え、制御部140は、SINR、RSSIおよびキャリアリークレベルに基づいてSINRの劣化因を判定し、SINRの劣化因に応じて通信相手に無線リソースを割り当てることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
世界標準の無線通信方式として、LTE(Long Term Evolution)システムが3GPP(3rd Generation Partnership Project)で標準化されている。LTEシステムは、通信方式として、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)やOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)を採用する。
【0003】
OFDMやOFDMAが採用されたシステム(以下「OFDM/OFDMAシステム」といる)においては、基地局は、リソースブロック(RB:Resource Block)を最小単位として無線端末に無線リソースを割り当てる。1リソースブロックは、例えば、180kHzの周波数帯域幅で0.5msの時間長をもち、12本のサブキャリアを含む。
【0004】
従来、基地局は無線リソースの通信品質に応じて各無線端末に無線リソースを割り当てる。例えば、通信品質の悪い無線リソースは、受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)が大きい無線端末に割り当て、通信品質の良い無線リソースは、RSSIが小さい無線端末に割り当てる(特許文献1参照)。通信品質の指標としては、例えば、SINR(Signal and Interference to Noise Ratio)が用いられる。
【0005】
上述のように、通信品質の悪い無線リソースはSINRに余裕のあるRSSIが大きい無線端末に割り当て、通信品質の良い無線リソースはSINRに余裕のないRSSIが小さい無線端末に割り当てることにより、多数の無線端末が所望のSINRを満足することができ、システムトータルのスループットを向上させることができる。以後、このような無線リソースの割り当て方法を、以後、「従来の無線リソース割り当て」と称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−178035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、OFDM/OFDMAシステムにおける送信方式、受信方式として、ダイレクトコンバージョン方式の採用が着目されている。ダイレクトコンバージョン方式は、IF(Intermediate Frequency)信号を介さずに、RF(Radio Frequency)信号とベースバンド信号との変換を直接行う方式である。ダイレクトコンバージョン方式は、IF信号を介してRF信号とベースバンド信号との変換を行うスーパーヘテロダイン方式に比べて回路構成を単純化できるため、コストや実装面積の観点においてスーパーへテロダイン方式よりも優れている。
【0008】
ダイレクトコンバージョン方式においては、通信装置は局部発振器(LO:Local Oscillator)が生成するキャリア(搬送波)をベースバンド信号で直接変調して送信信号を生成する。この際、リークなどによりキャリアが漏れ出して送信信号に重畳されてしまう。この送信信号に漏れ出したキャリア(以下「キャリアリーク」という)は、送信信号にとっては干渉波となり送信信号のSINRを劣化させる。
【0009】
無線リソースのSINRが悪い主要因が、基地局の送信信号におけるキャリアリークである場合は、当該無線リソースをRSSIが大きい無線端末に割り当ててもSINRは改善できない。なぜなら、当該無線リソースは、基地局から送信された時点において、すでにキャリアリークに起因してSINRが悪いため、受信信号の強度を大きくしても、その分だけキャリアリークの強度も大きくなってしまい、受信信号とキャリアリークの比率は変わらないからである。
【0010】
よって、無線リソースのSINRが悪い主要因がキャリアリークである場合は、当該無線リソースをRSSIが大きい無線端末に割り当てるとシステムトータルのスループットの観点からみて効率が悪い。本来、変調多値数の大きい変調方式で無線通信可能な無線端末を変調多値数の小さい変調方式で無線通信させることになるからである。
【0011】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、ダイレクトコンバージョン方式を採用する通信システムにおいて、SINR劣化の主要因がキャリアリークである無線リソースが存在する場合に、システムトータルのスループットの向上を考慮した無線リソースの割り当てを実行できる通信装置及び通信制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成する第1の観点に係る通信装置の発明は、
複数の通信相手と無線通信を行い、ダイレクトコンバージョン方式により無線信号を送信する通信装置であって、
局部発振器を有し、当該局部発振器が生成するキャリアを変調して送信信号を生成し、当該送信信号を送信する通信部と、
前記送信信号のキャリアリークレベルを検出する検出部と、
前記通信部を介して前記通信相手のSINRおよびRSSIを取得する制御部とを備え、
前記制御部は、前記SINR、前記RSSIおよび前記キャリアリークレベルに基づいて前記SINRの劣化因を判定し、
前記制御部は、前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定した場合、前記RSSIが小さい通信相手または変調多値数の小さい変調方式で通信している通信相手に前記キャリアの周波数近傍の無線リソースを割り当てることを特徴とする。
【0013】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る通信装置であって、前記制御部は、前記SINRが第1閾値より小さく、前記RSSIが第2閾値以上であり、かつ、前記キャリアリークレベルが第3閾値より大きい場合に、前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定することを特徴とする。
【0014】
第3の観点に係る発明は、第1または第2の観点に係る通信装置であって、さらに、前記局部発振器の位相雑音特性を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記キャリアリークレベルおよび前記位相雑音特性から、前記キャリアリークレベルおよび前記位相雑音特性に基づく雑音特性を算出し、算出した当該雑音特性に基づいて前記通信相手に無線リソースを割り当てることを特徴とする。
【0015】
上述したように本発明の解決手段を装置として説明してきたが、本発明はこれらに実質的に相当する方法、プログラム、プログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものであり、本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0016】
例えば、本発明を方法として実現させた第4の観点に係る通信制御方法の発明は、
複数の通信相手と無線通信を行い、ダイレクトコンバージョン方式により無線信号を送信する通信装置の通信制御方法であって、当該通信装置が、
キャリアを変調して生成した送信信号を送信するステップと、
前記送信信号のキャリアリークレベルを検出するステップと、
前記通信相手のSINRおよびRSSIを取得するステップと、
前記SINR、前記RSSIおよび前記キャリアリークレベルに基づいて前記SINRの劣化因を判定するステップと、
前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定した場合、前記RSSIが小さい通信相手または変調多値数の小さい変調方式で通信している通信相手に前記キャリアの周波数近傍の無線リソースを割り当てるステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダイレクトコンバージョン方式を採用する通信システムにおいて、SINR劣化の主要因がキャリアリークである無線リソースが存在する場合に、システムトータルのスループットの向上を考慮した無線リソースの割り当てを実行できる通信装置及び通信制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る基地局が記憶する位相雑音特性の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る基地局の無線リソース割り当て処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の通信装置を基地局に適用した場合の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの概略図である。無線通信システム1は、基地局10と複数の無線端末20(20aおよび20b)とから構成されている。基地局10は、通信相手である複数の無線端末20と無線通信を行う。
【0021】
図1に示す例においては、無線端末20aの方が無線端末20bよりも基地局10の近くに位置する。この場合、通常は、無線端末20aのRSSIの方が無線端末20bのRSSIよりも大きい。ただし、無線端末20のRSSIは距離だけに単純に依存するのではなく伝搬路の状況等にも依存するため、無線端末20aのRSSIの方が無線端末20bのRSSIよりも小さいこともあり得る。
【0022】
図2は、本発明の一実施形態に係る基地局の概略構成を示す機能ブロック図である。基地局10は、通信部110、検出部120、記憶部130および制御部140を備える。
【0023】
通信部110は、アンテナを介して無線端末20からRF信号を受信する。また、通信部110は、アンテナを介して無線端末20へRF信号を送信する。
【0024】
通信部110は、局部発振器115を備える。局部発振器115は、RF周波数であるキャリアを生成する。
【0025】
通信部110は、局部発振器115が生成するキャリアをベースバンド信号で直接変調し、変調した送信信号を無線端末20に送信する。
【0026】
検出部120は、通信部110が送信するRF信号からキャリアリークを検出する。キャリアリークとは、キャリアが送信信号にそのまま漏れ出てきたものであり、キャリアリークは送信信号のSINRを劣化させる。
【0027】
記憶部130は、局部発振器115が生成するキャリアの位相雑音特性を記憶する。図3に、記憶部130が記憶する局部発振器115の位相雑音特性の例を示す。実線が位相雑音特性を示す。図3に示す例においては局部発振器115が生成するキャリア周波数はRB5内にあり、ピークとなっている部分の周波数がキャリア周波数である。図3に示すように、位相雑音はキャリア周波数の近傍ほど大きく、キャリア周波数から遠ざかるにつれて小さくなっていく。リソースブロック毎に斜線で示した長方形は、位相雑音をリソースブロック内で積分したものであり、リソースブロック毎の位相雑音に起因する雑音電力を示す。
【0028】
制御部140は、基地局10の各機能ブロックをはじめ基地局10の全体を制御および管理する。制御部140は、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理ごとに特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることができる。
【0029】
制御部140は、通信部110が無線端末20から受信したRF信号から、無線端末20のRSSIやSINRなどを取得する。
【0030】
制御部140は、検出部120からキャリアリークレベルを取得する。また、制御部140は、当該キャリアリークレベルと記憶部130から取得する局部発振器115の位相雑音特性とから、キャリアリークおよび位相雑音に基づく雑音特性を算出する。キャリアリークおよび位相雑音に基づく雑音特性は、キャリアリークレベルが大きいほど全周波数帯域にわたって劣化する。
【0031】
制御部140は、検出部120から取得したキャリアリークレベルおよび通信部110を介して無線端末20から取得したRSSIに基づいて、SINRの劣化因がキャリアリークによるものか否かを判定する。
【0032】
制御部140は、SINRが劣化している場合において、RSSIが所定の閾値Trよりも大きく、かつ検出部120から取得したキャリアリークレベルが所定の閾値Tcより大きい場合は、SINRの劣化因がキャリアリークによるものであると判定する。
【0033】
制御部140は、SINRの劣化因の判定結果に基づいて無線端末20に無線リソースを割り当てる。制御部140は、キャリアリークがSINRの劣化因である場合は、キャリア周波数近傍の無線リソースは、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)のような変調多値数が小さい変調方式で通信を行っている無線端末20に割り当てる。変調多値数が小さい変調方式は、要求するSINRのレベルが小さいからである。制御部140は、キャリアリークがSINRの劣化因でない場合は、従来の無線リソース割り当てを実施する。
【0034】
図4のフローチャートを参照しながら、基地局10の無線リソース割り当て処理を説明する。
【0035】
制御部140は、通信部110が受信したRF信号から、無線端末20のSINRおよびRSSIを取得する(ステップS101)。制御部140は、SINRを所定の閾値Tsと比較する(ステップS102)。
【0036】
ステップS102においてSINRが所定の閾値Ts以上であると判定した場合、制御部140は、現状の無線リソースの割り当てを継続する(ステップS103)。ステップS102においてSINRが所定の閾値Tsより小さいと判定した場合、制御部140は、RSSIを所定の閾値Trと比較する(ステップS104)。
【0037】
ステップS104においてRSSIが所定の閾値Trより小さいと判定した場合、制御部140は、SINRの劣化はキャリアリークに起因するものではないと判断し、従来の無線リソース割り当てを実施する(ステップS105)。ステップS104においてRSSIが所定の閾値Tr以上であると判定した場合、制御部140は、検出部120が通信部110の出力から検出したキャリアリークレベルを取得する(ステップS106)。
【0038】
制御部140は、キャリアリークレベルを所定の閾値Tcと比較する(ステップS107)。ステップS107においてキャリアリークレベルが所定の閾値Tc以下の場合、制御部140は、SINRの劣化はキャリアリークに起因するものではないと判断し、従来の無線リソース割り当てを実施する(ステップS105)。ステップS107においてキャリアリークレベルが所定の閾値Tcより大きいと判定した場合、制御部140は、SINRの劣化因はキャリアリークによるものと判定する(ステップS108)。
【0039】
制御部140は、検出部120から取得したキャリアリークレベル、および、記憶部130から取得した各無線リソースの位相雑音特性に基づいて、キャリアリークおよび位相雑音に基づく雑音特性を算出する(ステップS109)。
【0040】
制御部140は、各無線端末20のRSSI、および、各無線端末20が無線通信している変調方式の変調多値数を確認し、キャリアリークおよび位相雑音に基づく雑音が大きい無線リソースを、RSSIが小さい無線端末20または変調多値数の小さい変調方式で通信している無線端末20に割り当てる(ステップS110)。
【0041】
このように、本実施形態によれば、ダイレクトコンバージョン方式を採用する通信システムにおいて、SINR劣化の主要因がキャリアリークである無線リソースが存在する場合に、システムトータルのスループットの向上を考慮した無線リソースの割り当てを実行できる通信装置及び通信制御方法を提供することができる。
【0042】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各手段、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0043】
また、上述の実施形態においては、OFDM/OFDMAシステムを例に挙げて説明したが、本発明はOFDM/OFDMAシステムに限られるものではなく、一定の時間毎に複数の無線端末への無線リソースの割り当てを実施するような無線通信システムであれば適用可能である。さらに、本発明は、基地局だけでなく無線端末にも適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
10 基地局
110 通信部
115 局部発振器
120 検出部
130 記憶部
140 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信相手と無線通信を行い、ダイレクトコンバージョン方式により無線信号を送信する通信装置であって、
局部発振器を有し、当該局部発振器が生成するキャリアを変調して送信信号を生成し、当該送信信号を送信する通信部と、
前記送信信号のキャリアリークレベルを検出する検出部と、
前記通信部を介して前記通信相手のSINRおよびRSSIを取得する制御部とを備え、
前記制御部は、前記SINR、前記RSSIおよび前記キャリアリークレベルに基づいて前記SINRの劣化因を判定し、
前記制御部は、前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定した場合、前記RSSIが小さい通信相手または変調多値数の小さい変調方式で通信している通信相手に前記キャリアの周波数近傍の無線リソースを割り当てることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置であって、前記制御部は、前記SINRが第1閾値より小さく、前記RSSIが第2閾値以上であり、かつ、前記キャリアリークレベルが第3閾値より大きい場合に、前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定することを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通信装置であって、さらに、前記局部発振器の位相雑音特性を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記キャリアリークレベルおよび前記位相雑音特性から、前記キャリアリークレベルおよび前記位相雑音特性に基づく雑音特性を算出し、算出した当該雑音特性に基づいて前記通信相手に無線リソースを割り当てることを特徴とする通信装置。
【請求項4】
複数の通信相手と無線通信を行い、ダイレクトコンバージョン方式により無線信号を送信する通信装置の通信制御方法であって、当該通信装置が、
キャリアを変調して生成した送信信号を送信するステップと、
前記送信信号のキャリアリークレベルを検出するステップと、
前記通信相手のSINRおよびRSSIを取得するステップと、
前記SINR、前記RSSIおよび前記キャリアリークレベルに基づいて前記SINRの劣化因を判定するステップと、
前記SINRの劣化因がキャリアリークによるものと判定した場合、前記RSSIが小さい通信相手または変調多値数の小さい変調方式で通信している通信相手に前記キャリアの周波数近傍の無線リソースを割り当てるステップとを含むことを特徴とする通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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