説明

通信装置および通信方法

【課題】通信インターフェイスの待機状態時に、ネットワーク応答を有効にしつつ、より一層の消費電力の削減を行う。
【解決手段】CPUは、高速の第1のリンク速度の場合に、LPI状態を検出する第1の期間より短い第2の期間トラフィックの無い旨の通知をPHY部から受け取ると、PHY部をリセットしてリンク速度を第1のリンク速度より低速の第2のリンク速度に設定する。CPUは、PHY部の第2のリンク速度でのリンクアップを確認すると、MAC部に第2のリンク速度を設定する。その後、MAC部は、第1の期間トラフィックの無い旨をPHY部から受け取ると、その旨をCPUと電源切替部とに通知し、MAC部において待機状態時に動作が不要な部分に対するクロックを停止する。CPUは、待機状態時に動作が不要な部分に対するクロックを停止する。電源切替部は、電源供給元を商用電源からエネルギデバイスに切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、待機状態時の消費電力を抑制する機能を持つ通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ装置や、印刷機能、スキャナ機能、複写機能およびFAX機能など複数の機能を1台の筐体で実行可能とした複合機といったOA(Office Automation)機器において、所定時間以上使用しない場合に、機器内の一部の機能のみを有効とし、機能が無効とされた部位への電源の供給を停止することで消費電力を削減する省電力化が行われていた。以下、このようにして、機器を所定時間以上使用しない場合に消費電力の削減を行っている状態を待機状態と呼ぶ。
【0003】
待機状態での電源供給方法としては、従来から行われている商用電源から供給する方法の他に、太陽電池などの発電を行うエネルギデバイスを用いる方法が考えられる。エネルギデバイスを用いて待機状態の電源供給を行うことで、より効果的に消費電力を削減することが可能である。待機状態において、商用電源からの電源供給に限らず、エネルギデバイスから電源供給を行う場合であっても、消費電力は可能な限り削減することが望ましい。
【0004】
待機状態において有効としておく機能と、待機状態での消費電力とはトレードオフの関係にあるといえる。例えば、上述の複合機やプリンタ装置は、ネットワーク通信機能が搭載されている場合が多い。このような機器において、待機状態時にネットワーク通信機能を無効としてしまうと、当該機器がネットワーク上から消えてしまうことになる。
【0005】
機器がネットワーク上から消えてしまうと、この機器に向けてネットワークを介してパケットが転送されても、パケットは当該機器に受信されず、当該機器は、自動的に通常状態に復帰できない。この場合、ユーザは、例えば当該機器を手動にて通常状態に復帰させる必要がある。したがって、待機状態時にネットワーク通信機能を有効としネットワーク応答可能な状態としておくことは、極めて有用であると考えられる。
【0006】
ところで、近年では、ネットワークにおける転送技術が発達し、ネットワークの規格においても、例えばイーサネット(登録商標)では、従来の転送速度が100Mbpsの100BASE−xから、転送速度が1Gbpsの1000BASE−x、さらには、転送速度が10Gbpsの10GBASE−xと、より高速な転送速度をサポートする規格が普及しつつある。なお、「100BASE−x」などにおける「−x」の記述は、通信路の形態を示し、「x」は、例えば「T」、「TX」、「FX」である。
【0007】
このように、ネットワークの転送速度の高速化に伴い、対応する通信インターフェイスの消費電力も増加の傾向にある。この消費電力の増加に対応し、ネットワーク上のトラフィックを監視し、通信インターフェイスの機能をトラフィックに応じて制御することで、通信インターフェイスの消費電力を削減することが求められている。
【0008】
このような、通信インターフェイスの機能をトラフィックに応じて制御可能とする通信規格の一つとして、IEEE(Institute Electrical and Electronics Engineers)802.3azが制定されている。この規格IEEE802.3azは、EEE(Energy Efficient Ethernet(登録商標))とも呼ばれ、ネットワークのトラフィックを監視し、一定期間内にトラフィックが無い状態が発生した場合に、最下層の物理層(PHY層)と、PHY層の上位のデータリンク層(MAC(Medeia Access Control)層)に対して省電力制御を適用することが規定されている。
【0009】
IEEE802.3azによれば、例えば、ネットワークのトラフィックに応じて、一定期間内に通信が無い場合に、例えばMAC層のチップに対するクロックを停止するなどしてMAC層の機能を無効とすることで、消費電力の削減を図っている。また、一定期間に通信がない場合であっても、PHY層の機能を有効とすることで、待機状態におけるパケットの受信を可能としている。なお、通信の有無に応じてMAC層の機能の有効/無効を制御する手法をLPI(Low Power Idle)と呼ぶ。また、以下では、通信が、MAC層の機能を無効とするための閾値である一定期間内に無い状態を、LPI状態と呼ぶ。
【0010】
このIEEE802.3azに関連し、特許文献1には、IEEE802.3azが適用されたイーサネット(登録商標)によるネットワークにおいて発生する、障害発生を運用管理者側が把握できないサイレント障害を、遠隔に位置するネットワーク運用管理システムから確実且つ迅速に特定することを可能とする技術が開示されている。
【0011】
また、特許文献2には、IEEE802.3azが適用されたイーサネット(登録商標)において、ユーザ装置でスリープモードを実行することで、ユーザ装置の送信機と受信機が、所定の時間(スリープ時間)の間パワーを切ることができるようにして、消費電力の削減を可能とする技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上述したIEEE802.3azの制定以前では、待機状態におけるネットワーク応答を考慮したシステムであっても、ネットワークのトラフィックが無い場合に消費電力を抑制する施策がなされていなかった。すなわち、従来から、待機状態にネットワーク応答が可能なシステムでは、ネットワークを介して転送されるパケットをフィルタリングして、必要なタイミングで待機状態から通常状態に復帰する制御は行われていた。しかしながら、トラフィックの監視結果に応じて消費電力を削減するような制御は、IEEE802.3az制定以前では行われていなかった。
【0013】
また、上述したIEEE802.3azを適用した場合であっても、通信インターフェイスの消費電力は、リンク速度が大きくなるに連れ増大する。例えば、リンク速度が1000BASEクラス(1Gbps)の場合、リンク速度が100BASEクラス(100Mbps)の場合に対して、消費電力が50mW〜100mW程度増加する。そのため、通信インターフェイスを1000BASEクラスのリンク速度で用いる場合、待機状態時の電源供給に太陽電池のようなエネルギデバイスを使用することは、困難であると考えられる。
【0014】
この問題を解決するために、待機状態時にリンク速度を1000BASE−xクラスから100BASE−xクラスに下げることも考えられる。しかしながら、IEEE802.3az規格に従った場合、LPI状態に移行した後にはリンク速度を変更できないという問題点があった。この問題は、上述した特許文献1および特許文献2においても共通である。
【0015】
このように、1000BASE−xなど高速なリンク速度に対応する通信インターフェイスにおいて、待機状態時に、ネットワーク応答を有効にしつつ、より一層の消費電力の削減を可能とすることが求められていた。
【0016】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、通信インターフェイスの待機状態において、ネットワーク応答を有効にしつつ、より一層の消費電力の削減を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、通常状態と、通常状態に対して消費電力を抑制する待機状態とを有し、待機状態ではリンク速度の変更が許可されない通信装置であって、ネットワークに接続する接続手段と、ネットワークの接続手段におけるトラフィックを検出する検出手段と、通常状態時に検出手段によりトラフィックが予め定められた第1の期間検出されない場合に、通常状態から待機状態への移行処理を実行する制御手段とを備え、制御手段は、接続手段により第1のリンク速度でネットワークに接続され、検出手段によりトラフィックが第1の期間より短い第2の期間検出されない場合に、リンク速度を第1のリンク速度よりも遅い第2のリンク速度に変更することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、通常状態と、通常状態に対して消費電力を抑制する待機状態とを有し、待機状態ではリンク速度の変更が許可されない通信方法であって、接続手段が、ネットワークに接続する接続ステップと、検出手段が、ネットワークの接続手段におけるトラフィックを検出する検出ステップと、制御ステップが、通常状態時に検出ステップによりトラフィックが予め定められた第1の期間検出されない場合に、通常状態から待機状態への移行処理を実行する制御ステップとを備え、制御ステップは、接続ステップにより第1のリンク速度でネットワークに接続され、検出ステップによりトラフィックが第1の期間より短い第2の期間検出されない場合に、リンク速度を第1のリンク速度よりも遅い第2のリンク速度に変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、通信インターフェイスの待機状態において、ネットワーク応答を有効にしつつ、より一層の消費電力の削減が可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、IEEE802.3azに適用可能な通信インターフェイスの一例の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、IEEE802.3azに対応した、MAC部におけるLPI状態/非LPI状態通知に伴う状態遷移の例を示す状態遷移図である。
【図3】図3は、IEEE802.3azに対応した、非LPI状態においてLPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図4】図4は、IEEE802.3azに対応した、LPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【図5】図5は、IEEE802.3azに対応した、非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図6】図6は、IEEE802.3azに対応した、非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【図7】図7は、本発明の実施形態に適用可能な通信インターフェイスの一例の構成を示すブロック図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態による、MAC部における状態通知に伴う状態遷移の例を示す状態遷移図である。
【図9】図9は、本発明の実施形態による、低速のリンク速度の場合にLPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図10】図10は、本発明の実施形態による、低速のリンク速度の場合にLPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【図11】図11は、本発明の実施形態による、低速のリンク速度の場合に非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図12】図12は、本発明の実施形態による、低速のリンク速度の場合に非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【図13】図13は、本発明の実施形態による、高速のリンク速度の場合にLPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図14】図14は、本発明の実施形態による、高速のリンク速度の場合にLPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【図15】図15は、第1の期間および第2の期間の関係を説明するための略線図である。
【図16】図16は、本発明の実施形態による、高速のリンク速度の場合に非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のシーケンス図である。
【図17】図17は、本発明の実施形態による、高速のリンク速度の場合に非LPI状態を検出した際の処理を示す一例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る通信装置の一実施形態を詳細に説明する。先ず、理解を容易とするために、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.3azに準じた通信制御について、概略的に説明する。このIEEE802.3azは、EEE(Energy Efficient Ethernet(登録商標))とも呼ばれ、ネットワークにおける転送速度の高速化に伴う消費電力の増加を抑制することを目的としている。
【0022】
IEEE802.3azにおける省電力化を行う方法の一つに、トラフィックを監視し、その機器に対して一定期間内にトラフィックが無い場合に通信が行われていないと判定し、待機状態に移行するLPI(Low Power Idle)がある。待機状態では、MAC(Medeia Access Control)層の機能を無効とすることで、消費電力を削減する。待機状態時にもPHY層(物理層)の機能が有効とされ、ネットワーク応答が可能とされている。以下、予め定められた一定期間、対象機器に対するトラフィックが無い状態を、当該対象機器のLPI状態と呼ぶ。
【0023】
図1は、IEEE802.3azに適用可能な通信インターフェイス1の一例の構成を示す。図1の例では、通信インターフェイス1は、PHY部12および通信処理部13を含む。通信インターフェイス1は、例えばパーソナルコンピュータ、プリンタ装置、複合機といった情報機器に組み込まれて用いられる。例えばイーサネット(登録商標)であるネットワーク10と、通信インターフェイス1のPHY部12とがネットワークハブ11を介して接続される。ネットワークハブ11は、ネットワーク10を介して転送されるネットワーク情報のルーティングを行う。
【0024】
なお、イーサネット(登録商標)においては、データは、所定長のパケットに詰め込まれ、パケットの先頭に同期情報やアドレス情報を含むヘッダが付加されて、ネットワーク10上を転送される。
【0025】
通信インターフェイス1において、PHY部12は、ネットワーク通信の物理層に係る処理を行うもので、ネットワーク10を介してなされる通信における電気的な接続を制御する。例えば、PHY部12は、ネットワーク通信におけるリンク速度、伝送符号、信号波形などを定める。より具体的には、ネットワーク側すなわちネットワーク10およびネットワークハブ11におけるデータは、接続ケーブルに依存して光信号や電気信号として転送される。一方、通信インターフェイス1を含む機器側では、データは、論理信号として扱われる。PHY部12は、この光信号や電気信号と、論理信号との間の変換処理を行う。
【0026】
PHY部12は、レジスタ100および監視部101を有する。レジスタ100は、PHY部12に対する設定値が格納される。PHY部12の動作は、このレジスタ100に書き込まれる値により制御される。例えば、ネットワーク通信の際のリンク速度の設定値がレジスタ100に格納される。PHY部12は、このレジスタ100に格納される設定値を読み込んで、リンク速度の設定を行う。
【0027】
監視部101は、この通信インターフェイス1におけるトラフィックを検出し、トラフィックの監視を行う。例えば、監視部101は、ネットワーク10からネットワークハブ11を介してPHY部12に転送された受信データ信号を監視してトラフィックを検出する。それと共に、監視部101は、後述するMAC部103から出力され、PHY部12によりネットワークハブ11を介してネットワーク10に対して送信される送信データ信号を監視してトラフィックを検出する。
【0028】
なお、PHY部12とネットワークハブ11との間では、リンクを確立する際や、確立されたリンクを維持するために、アイドル信号やリンクパルスなどの信号を送受信している。これらのリンク確立およびリンク維持に用いる信号は、トラフィックとして検出される実データとは区別して扱われる。PHY部12においてトラフィックが無いと判定されている場合にも、これらの信号が発生している場合がある。
【0029】
監視部101は、トラフィックの監視結果に基づき、LPI状態および非LPI状態を検出する。LPI状態が検出された場合、通信インターフェイス1側において消費電力削減のための処理が実行される。監視部101は、LPI状態が検出されると、受信データ信号と、データ有効信号と、データエラー信号とを用いて、LPI状態を後述するMAC部103に通知する。
【0030】
このように、受信データ信号と、データ有効信号と、データエラー信号との組み合わせにより、LPI状態および非LPI状態を表現することができる。この受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値の、LPI状態および非LPI状態を示す組み合わせは、IEEE802.3azに規定されている。
【0031】
また、監視部101は、LPI状態を検出すると、PHY部12内の各機能のうち、待機状態時に不要な機能の動作を抑制する処理を行う。例えば、待機状態時に不要な機能の回路部分に対するクロックの供給を停止する。これにより、PHY部12における消費電力が削減される。
【0032】
さらに、監視部101は、LPI状態時にトラフィックが発生し非LPI状態が検出された場合、上述のLPI状態の場合とは逆の処理を行う。すなわち、監視部101は、LPI状態時にPHY部12において停止された機能を再開させる。また、監視部101は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の所定の組み合わせを用いて、通信処理部13に対して非LPI状態を通知する。
【0033】
通信インターフェイス1において、通信処理部13は、データ処理部102、MAC部103およびサブCPU(Central Processing Unit)104を有する。通信処理部13は、例えば、データ処理部102、MAC部103およびサブCPU104を含むASIC(Application Specific Integrated Circuit)として構成することができる。なお、サブCPU104は、通信処理部13の外部のCPUの機能を用いてもよい。
【0034】
通信処理部13において、データ処理部102は、監視部101から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、これらの信号の組み合わせがLPI状態および非LPI状態の何れかを通知するものであるか否かを判定する。若し、LPI状態および非LPI状態の何れかを通知するものであると判定した場合は、さらに、その信号の組み合わせがLPI状態および非LPI状態の何れの状態を示すかを判定し、判定結果をMAC部103に通知する。
【0035】
MAC部103は、サブCPU104からの指示や、データ処理部102との通信内容などに従い、イーサネット(登録商標)におけるアクセス制御を行う。例えば、MAC部103は、PHY部12のレジスタ100に対して値を設定し、PHY部12に対して、リンク速度の設定や初期設定(リセット)などを指示する。MAC部103に対するサブCPU104の指示は、例えば、サブCPU104がMAC部103内のレジスタ(図示しない)に値を書き込むことで行う。
【0036】
また、MAC部103は、データ処理部102からのLPI状態および非LPI状態の何れかの通知に従い、通信処理部13内の待機状態における動作不要部分に対するクロックのON/OFFを制御して、通信処理部13の動作を抑制し、消費電力の削減を行う。より具体的には、MAC部103は、データ処理部102からLPI状態の通知を受けた場合には、MAC部103における待機状態時に不要として予め定められた部分に対するクロックを停止させる。一方、データ処理部102から非LPI状態の通知を受けた場合には、LPI状態時に停止した部分に対するクロックを再開させる。
【0037】
電源ユニット(PSU:Power Supply Unit)14は、商用電源から、通信処理部13およびPHY部12を含む情報機器全体に供給する電源を生成する。例えば、電源ユニット14で生成された電源が、電源ラインを介して通信処理部13やPHY部12に供給される。
【0038】
図2は、IEEE802.3azに対応した、MAC部103におけるLPI状態/非LPI状態通知に伴う状態遷移の例を示す状態遷移図である。MAC部103は、第1状態(RX Active State)200および第2状態(RX LPI State)201の2状態を有する。第1状態200は、通常の状態であって、MAC部103の各部に対して規定のクロックが供給され、MAC部103の機能が全て有効とされている状態である。
【0039】
一方、第2状態201は、LPI状態における待機状態であって、MAC部103の機能が抑制され消費電力の削減が図られる。MAC部103の機能の抑制は、MAC部103において待機状態時に不要として予め定められた部分に対する、規定のクロックを停止することでなされる。また、この第2状態201では、リンク速度の変更が禁止される。
【0040】
MAC部103は、第1状態200においてPHY部12からLPI状態通知を受け取ると、状態を第2状態201に遷移させ、MAC部103における、待機状態時に不要な部分へのクロックを停止させる。また、MAC部103は、第2状態201においてPHY部12から非LPI状態通知を受け取ると、状態を第1状態200に遷移させ、第2状態201において停止されていたクロックを再開させる。さらに、MAC部103は、第2状態201においてPHY部12からリンク失敗通知(Link Failure)を受け取ると、状態を第1状態200に遷移させ、第2状態201において停止されていたクロックを再開させる。
【0041】
図3のシーケンス図および図4のフローチャートを用いて、IEEE802.3azに対応した、非LPI状態においてLPI状態を検出した際の処理について、より詳細に説明する。PHY部12は、ネットワーク10から当該通信インターフェイス1に向けたトラフィックを監視する。図4のステップS100で、PHY部12は、予め定められた一定期間、当該トラフィックが無いと判定すると(図3のSEQ10)、LPI状態を検出する。PHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値をLPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部102に渡し、LPI状態をデータ処理部102に通知する(SEQ11)。
【0042】
次のステップS101で、データ処理部102は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、LPI状態であることを認識する。ステップS102で、データ処理部102は、LPI状態を認識すると、その旨をMAC部103に通知する(SEQ12)。MAC部103は、SEQ12でのデータ処理部102からの通知によりLPI状態を認識し、MAC部103において待機状態では不要として予め定められた部分に対するクロックを停止する。
【0043】
図5のシーケンス図および図6のフローチャートを用いて、IEEE802.3azに対応した、LPI状態において非LPI状態を検出した際の処理について、より詳細に説明する。処理に先立って、PHY部12は、ネットワーク10から当該通信インターフェイス1に向けたトラフィックを監視する。図6のステップS110で、PHY部12は、LPI状態において、当該トラフィックが発生したと判定すると(図5のSEQ15)、非LPI状態を検出する。PHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値を非LPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部102に渡し、LPI状態をデータ処理部102に通知する(SEQ16)。
【0044】
次のステップS111で、データ処理部102は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、非LPI状態であることを認識する。データ処理部102は、非LPI状態を認識すると、その旨をMAC部103に通知する(SEQ17)。ステップS112で、MAC部103は、SEQ17でのデータ処理部102からの通知により非LPI状態を認識し、LPI状態検出の際に停止されたクロックを再開する。
【0045】
(本発明の実施形態)
次に、本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、一定期間内にトラフィックが無くLPI状態が検出される前に、リンク速度をより低速のリンク速度に変更し、リンク速度の変更後にLPI状態が検出された際に待機状態に移行させ、電源やクロックを停止する。リンク速度の変更をLPI状態が検出される前に行い、変更されたリンク速度で待機状態に移行するため、より効果的に消費電力を削減することができる。
【0046】
図7は、本実施形態に適用可能な通信インターフェイス2の一例の構成を示す。なお、図7において、上述した図1と共通する部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0047】
図7に示される構成において、ネットワーク側(ネットワーク10およびネットワークハブ11)、ならびに、PHY部12の構成は、上述した図1の構成と共通である。一方、機器側において、通信処理部13’に含まれるデータ処理部110、MAC部111およびサブCPU112は、図1に示したデータ処理部102、MAC部103およびサブCPU104に対して機能が変更されている(詳細は後述する)。また、本実施形態では、機器側が電源切替部121を有し、電源の供給元を、非LPI状態およびLPI状態で、電源ユニット14(商用電源)とエネルギデバイス120とで切り替えることができるようになっている。
【0048】
なお、エネルギデバイス120は、商用電源を用いずに電源を供給可能とされたデバイスであって、例えば太陽電池である。電源切替部121は、機器の動作が通常状態に移行した場合には、電源ユニット14を電源供給元として選択するように電源ラインを切り替える。一方、機器がLPI状態に移行した場合には、エネルギデバイス120を電源供給元として選択するように電源ラインを切り替える。
【0049】
図8は、本実施形態による、LPI状態/非LPI状態通知に伴うMAC部111の状態遷移の例を示す状態遷移図である。図8に示されるように、本実施形態では、上述した図2の状態遷移図に対し、第3状態(Pre LPI State)202が追加される。第1状態200において、後述するプレLPI状態がPHY部12で検出されてサブCPU112に通知されると、MAC部111の状態が第3状態202に遷移される。第3状態202では、MAC部111は、サブCPU112からの指示に応じてリンク速度を第1のリンク速度から、第1のリンク速度よりも低速な第2のリンク速度に変更する処理を行う。リンク速度の第2のリンク速度への変更が終了したら、MAC部111の状態が第3状態202から第1状態200に遷移される。
【0050】
プレLPI状態は、上述した、LPI状態を検出するための、IEEE802.3azに規定される一定期間(以下、第1の期間と呼ぶ)より短い第2の期間、トラフィックが無いと判定された状態をいう。第2の期間は、少なくとも、第1の期間と、リンク速度を第1のリンク速度から第2のリンク速度に変更するために要する時間との差よりも短い時間とする。
【0051】
なお、第1状態200および第2状態201の間の状態遷移は、図2を用いて説明した遷移と同一なので、ここでの説明を省略する。
【0052】
(実施形態における動作)
次に、本実施形態による動作について説明する。本実施形態では、非LPI状態におけるリンク速度が第1のリンク速度の場合と、第1のリンク速度よりも低速な第2のリンク速度の場合とで動作が異なる。上述したプレLPI状態は、第1のリンク速度での非LPI状態において検出される。
【0053】
第1のリンク速度は、例えば1Gbpsであり、第2のリンク速度は、例えば100Mbpsである。第1および第2のリンク速度は、1Gbpsおよび100Mbpsに限られない。第1および第2のリンク速度は、例えば、通信インターフェイス2における消費電力の差と、エネルギデバイス120の電源供給能力とに応じて決めることが考えられる。
【0054】
(リンク速度低速、非LPI状態からLPI状態に遷移)
図9のシーケンス図および図10のフローチャートを用いて、リンク速度が低速な第2のリンク速度の場合に、非LPI状態においてLPI状態を検出した際の処理について、より詳細に説明する。
【0055】
図10のステップS120で、PHY部12は、予め定められた第1の期間、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けたトラフィックが無いと判定すると(図9のSEQ20)、LPI状態を検出する。PHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値をLPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部110に渡し、LPI状態をデータ処理部110に通知する(SEQ21)。
【0056】
次のステップS121で、データ処理部110は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、LPI状態であることを認識する。データ処理部110は、LPI状態を認識すると、その旨をMAC部111に通知する(SEQ22)。ステップS122で、MAC部111は、SEQ22でのデータ処理部110からの通知によりLPI状態を認識し、予め決められた、待機状態において不要な部分に対するクロックを停止する。それと共に、MAC部111は、サブCPU112に対してLPI状態を通知する(SEQ23)と共に、電源切替部121に対してLPI状態を通知する(SEQ24)。
【0057】
ステップS122の処理の終了後、処理はステップS123およびステップS124にそれぞれ移行する。これらステップS123およびステップS124は、並列的に実行されてもよいし、順次、実行されてもよい。
【0058】
ステップS123で、電源切替部121は、MAC部111からの通知によりLPI状態を認識し、電源の供給元としてエネルギデバイス120を選択し、電源ラインを電源ユニット14からエネルギデバイス120に切り替える。
【0059】
ステップS124で、サブCPU112は、MAC部111からの通知によりLPI状態を認識し、サブCPU112において、待機状態では動作が不要として予め決められた部分に対するクロックを停止する。これにより、サブCPU112の動作が抑制され、消費電力の削減が図られる。
【0060】
(リンク速度低速、LPI状態から非LPI状態に遷移)
図11のシーケンス図および図12のフローチャートを用いて、リンク速度が低速な第2のリンク速度の場合に、LPI状態において非LPI状態を検出した際の処理について、より詳細に説明する。
【0061】
図12のステップS130で、PHY部12は、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けたトラフィックが発生したと判定すると(図11のSEQ30)、非LPI状態を検出する。PHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値を非LPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部110に渡し、非LPI状態をデータ処理部110に通知する(SEQ31)。
【0062】
次のステップS131で、データ処理部110は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、非LPI状態であることを認識する。データ処理部110は、非LPI状態を認識すると、その旨をMAC部111に通知する(SEQ32)。ステップS132で、MAC部111は、SEQ32でのデータ処理部110からの通知により非LPI状態を認識し、LPI状態検出の際に停止されたクロックを再開する。それと共に、MAC部111は、サブCPU112に対する非LPI状態の通知を行う(SEQ33)と共に、電源切替部121に対する非LPI状態の通知を行う(SEQ34)。
【0063】
ステップS132の処理の終了後、処理はステップS133およびステップS134にそれぞれ移行する。これらステップS133およびステップS134は、並列的に実行されてもよいし、順次、実行されてもよい。
【0064】
ステップS133で、電源切替部121は、MAC部111からの通知により非LPI状態を認識し、電源の供給元として電源ユニット14を選択し、電源ラインをエネルギデバイス120から電源ユニット14に切り替える。ステップS134で、サブCPU112は、MAC部111からの通知により非LPI状態を認識し、LPI状態検出の際に停止された部分に対するクロックを再開する。
【0065】
(リンク速度高速、非LPI状態からLPI状態に遷移)
図13のシーケンス図および図14のフローチャートを用いて、リンク速度が高速な第1のリンク速度の場合に、非LPI状態においてLPI状態が検出された際の処理について、より詳細に説明する。
【0066】
図14のステップS140で、データ処理部110は、PHY部12から、上述した第2の期間、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けたトラフィックが無いことが通知されると(図13のSEQ40)、プレLPI状態を検出する。データ処理部110は、プレLPI状態を検出すると、その旨をサブCPU112に通知する(SEQ41)。MAC部111の状態は、第1状態200から第3状態202に遷移する。
【0067】
ステップS141で、サブCPU112は、プレLPI状態を示す通知を受け取ると、PHY部12に対して、初期設定を行うと共に、リンク速度を第2のリンク速度に設定する。より具体的には、サブCPU112は、先ずMAC部111のレジスタに対して、PHY部12の初期設定(リセット処理)を行うことを示す値と、リンク速度を第2のリンク速度に設定することを示す値とを書き込む(SEQ42)。MAC部111は、レジスタからこの値を読み出し、読み出した値に従いPHY部12のレジスタ100に対して、初期設定を行うことを示す値と、リンク速度を第2のリンク速度に変更することを示す値とを書き込む(SEQ43)。PHY部12は、レジスタ100に書き込まれた値に従い初期設定(リセット処理)を行う。そして、ネットワークハブ11に対してネゴシエーションを行い、第2のリンク速度でのリンクアップを実行する。
【0068】
次のステップS142で、サブCPU112は、第2のリンク速度でのリンクアップが完了したか否かを判定する。より具体的には、サブCPU112は、上述のSEQ42にてMAC部111に対してPHY部12の初期設定およびリンク速度変更の指示を出した後、予め定められた時間を待機する。そして、当該時間の経過後に、MAC部111のレジスタアクセスを介して、PHY部12のレジスタ100に対して第2のリンク速度でのリンクアップが完了しているか否かを確認する旨を指示する値を書き込む(SEQ44、SEQ45)。
【0069】
PHY部12は、レジスタ100からこの値を読み出し、第2のリンク速度でのリンクアップが完了しているか否かを確認する。若し、第2のリンク速度でのリンクアップが完了していることが確認された場合、読み出した値に従いリンクアップが完了した旨を、MAC部111を介してサブCPU112に通知する(SEQ46、SEQ47)。そして、処理がステップS143に移行される。
【0070】
一方、サブCPU112は、ステップS142において第2のリンク速度でのリンクアップが完了していないと判定した場合、再びステップS142の処理を実行する。例えば、PHY部12は、リンクアップ処理が所定時間内に完了しない場合、タイムアップしたとして、サブCPU112に対するエラー通知などの処理を行う(図示しない)。例えばネットワークハブ11の故障などにより、リンクアップが不可能となる場合が起こり得る。
【0071】
サブCPU112は、SEQ46、SEQ47でリンクアップの完了がMAC部111から通知されると、ステップS143で、MAC部111に対するレジスタアクセスにより、MAC部111の初期設定を行い、さらに、MAC部111に対して第2のリンク速度への変更を設定する(SEQ48)。また、PHY部12では、リンクアップの完了後、トラフィックの監視が再開される。
【0072】
次のステップS144で、PHY部12は、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けたトラフィックの無い状態が、予め定められた第1の期間継続していると判定した場合(SEQ50)、LPI状態を検出する。この場合、第1の期間は、上述のSEQ40でトラフィックが無いと検出された第2の期間の起点からの時間となる。
【0073】
図15を用いて、第1の期間および第2の期間の関係について説明する。トラフィック50が時間t0で途切れたものとする。この時間t0からトラフィックが無い時間を計測し、予め定められた時間t1までトラフィックが無い状態が継続してる場合に、上述のSEQ40およびSEQ41のシーケンスが実行され、プレLPI状態が検出される。この時間t0から時間t1までの期間が、第2の期間とされる。
【0074】
この時間t1からさらにトラフィックが無い状態の時間が計測される。そして、トラフィックが途切れた時間t0からLPI状態として規定された時間t(LPI)が経過した時点で、なお、トラフィックが無い状態が継続している場合に、LPI状態として検出する。すなわち、この時間t0から時間t(LPI)までの期間が、第1の期間とされる。
【0075】
時間t1では、PHY部12がリセットされ、PHY部12の初期設定が行われる。上述したSEQ40〜SEQ48までの処理は、この時間t1から時間t(LPI)までの期間51の間に完了する必要がある。したがって、第2の期間の終了を示す時間t1は、SEQ40〜SEQ48までの処理を実行するために要する時間を見込んでおき、この時間と、時間t(LPI)とを考慮して設定される。また、時間t1から時間t(LPI)までの時間は、できるだけ短く設定すると、リンクを切断することによる待ち時間の延長を防ぐことができる。
【0076】
説明は図13および図14に戻り、図14のステップS144において、図13のSEQ50でLPI状態を検出したPHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値をLPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部110に渡し、LPI状態をデータ処理部110に通知する(SEQ51)。
【0077】
次のステップS145で、データ処理部110は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、LPI状態であることを認識する。データ処理部110は、LPI状態を認識すると、その旨をMAC部111に通知する(SEQ52)。ステップS146で、MAC部111は、SEQ52でのデータ処理部110からの通知によりLPI状態を認識し、MAC部111において、待機状態では不要であるとして予め定められた部分に対するクロックを停止する。それと共に、MAC部111は、サブCPU112に対しても、LPI状態を通知する(SEQ53)と共に、電源切替部121に対してLPI状態を通知する(SEQ54)。
【0078】
ステップS146の処理の終了後、処理はステップS147およびステップS148にそれぞれ移行する。これらステップS147およびステップS148は、並列的に実行されてもよいし、順次、実行されてもよい。
【0079】
ステップS147で、電源切替部121は、MAC部111からの通知によりLPI状態を認識し、電源の供給元としてエネルギデバイス120を選択し、電源ラインを電源ユニット14からエネルギデバイス120に切り替える。
【0080】
ステップS148で、サブCPU112は、MAC部111からの通知によりLPI状態を認識し、サブCPU112において、待機状態では動作が不要として予め定められた部分に対するクロックを停止する。これにより、サブCPU112の動作が抑制され、消費電力の削減が図られる。
【0081】
なお、上述では、トラフィックが第1の期間内に無く、LPI状態が検出されてからクロックの停止や電源供給の停止を行うように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、LPI状態の検出を待たずに、図13のSEQ48でMAC部111の初期設定およびリンク速度の設定が完了した時点で、PHY部12、MAC部111およびサブCPU112などの、予め定められた不要部分に対するクロックを停止することも可能である。これにより、消費電力をより削減することが可能となる。
【0082】
(リンク速度高速、LPI状態から非LPI状態に遷移)
図16のシーケンス図および図17のフローチャートを用いて、LPI状態において非LPI状態が検出された際の処理について、詳細に説明する。なお、以下では、LPI状態では、リンク速度が低速の第2のリンク速度とされており、非LPI状態が検出された際には、リンク速度が高速の第1のリンク速度に変更されているものとする。
【0083】
図17のステップS150で、PHY部12は、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けたトラフィックが発生したと判定すると(図16のSEQ60)、非LPI状態を検出する。PHY部12は、受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号の値を非LPI状態を示す組み合わせとして、これらの信号をデータ処理部110に渡し、非LPI状態をデータ処理部110に通知する(SEQ61)。
【0084】
なお、この段階では、当該ネットワークハブ11からPHY部12に対するデータ転送が、一時的に停止させられている。すなわち、PHY部12とネットワークハブ11とは、継続的にハンドシェイクを行っている。これにより、PHY部、ならびに、その後段以降のデータ処理部110およびMAC部111などにおいて通信準備が完了していない場合、ネットワークハブ11からPHY部12へのデータの転送を許可しないようにできる。通信準備が完了していない状態としては、PHY部12やMAC部111のレジスタの設定や、PHY部12におけるリンクアップ処理を行っている最中などの状態が考えられる。
【0085】
次のステップS151で、データ処理部110は、PHY部12から受け取った受信データ信号、データ有効信号およびデータエラー信号をデコードし、非LPI状態であることを認識する。データ処理部110は、非LPI状態を認識すると、その旨をMAC部111に通知する(SEQ62)。ステップS152で、MAC部111は、SEQ62でのデータ処理部110からの通知により非LPI状態を認識し、LPI状態検出の際に停止されたクロックを再開する。それと共に、MAC部111は、サブCPU112に対して非LPI状態を通知する(SEQ63)と共に、電源切替部121に対して非LPI状態を通知する(SEQ64)。
【0086】
ステップS152の処理の終了後、処理はステップS153およびステップS154にそれぞれ移行する。これらステップS153およびステップS154は、並列的に実行されてもよいし、順次、実行されてもよい。
【0087】
ステップS153で、電源切替部121は、MAC部111からの通知により非LPI状態を認識し、電源の供給元として電源ユニット14を選択し、電源ラインをエネルギデバイス120から電源ユニット14に切り替える。ステップS154で、サブCPU112は、MAC部111からの通知により非LPI状態を認識し、LPI状態検出の際に停止されたクロックを再開する。
【0088】
ステップS153およびステップS154の処理が終了すると、処理はステップS155に移行される。ステップS155以降の処理により、リンク速度を第2のリンク速度から、高速の第1のリンク速度に変更する処理が実行される。すなわち、ステップS155で、サブCPU112は、レジスタアクセスにより、PHY部12に対する初期設定およびリンク速度の第1のリンク速度への設定を行う。
【0089】
より具体的には、サブCPU112は、先ずMAC部111のレジスタに対して、PHY部12の初期設定(リセット処理)を行うことを示す値と、リンク速度を第1のリンク速度に設定することを示す値とを書き込む(SEQ65)。MAC部111は、レジスタからこの値を読み出し、読み出した値に従いPHY部12のレジスタ100に対して、初期設定を行うことを示す値と、リンク速度を第1のリンク速度に変更することを示す値とを書き込む(SEQ66)。PHY部12は、レジスタ100に書き込まれた値に従い初期設定(リセット処理)を行い、ネットワークハブ11に対してネゴシエーションを行い、第1のリンク速度でのリンクアップを実行する。
【0090】
次のステップS156で、サブCPU112は、第1のリンク速度でのリンクアップが完了したか否かを判定する。より具体的には、サブCPU112は、上述のSEQ65にてMAC部111に対してPHY部12の初期設定およびリンク速度変更の指示を出した後、予め定められた時間を待機する。そして、当該時間の経過後に、MAC部111のレジスタアクセスを介して、PHY部12のレジスタ100に対して第1のリンク速度でのリンクアップが完了しているか否かを確認する旨を指示する値を書き込む(SEQ67、SEQ68)。
【0091】
PHY部12は、レジスタ100からこの値を読み出し、第1のリンク速度でのリンクアップが完了しているか否かを確認する。若し、第1のリンク速度でのリンクアップが完了していることが確認された場合、読み出した値に従いリンクアップが完了した旨を、MAC部111を介してサブCPU112に通知する(SEQ69、SEQ70)。そして、処理がステップS157に移行される。
【0092】
一方、サブCPU112は、ステップS156において第2のリンク速度でのリンクアップが完了していないと判定した場合、再びステップS156の処理を実行する。例えば、PHY部12は、リンクアップ処理が所定時間内に完了しない場合、タイムアップしたとして、サブCPU112に対するエラー通知などの処理を行う(図示しない)。
【0093】
サブCPU112は、SEQ69、SEQ70でリンクアップの完了がMAC部111から通知されると、ステップS157で、MAC部111に対するレジスタアクセスにより、MAC部111の初期設定を行うと共に、MAC部111に対して第1のリンク速度への変更を設定する(SEQ71)。また、PHY部12では、リンクアップの完了後、トラフィックの監視が再開される。
【0094】
MAC部111の初期設定およびリンク速度の変更が完了すると、PHY部12は、ネットワークハブ11からのデータの受信が可能な状態となる。MAC部111は、初期設定およびリンク速度の変更が完了したら、ステップS158で、PHY部12のレジスタ100に対してデータ受信可能を示す値を書き込み、PHY部12に対してデータの受信が可能になった旨を通知する。
【0095】
PHY部12は、MAC部111から受け取った受信可能通知に応じて、ステップS159で、ネットワークハブ11に対してデータの受信が可能になった旨を通知する。そして、次のステップS160で、ネットワークハブ11は、PHY部12から受け取った受信可能通知に応じて、ネットワーク10から当該通信インターフェイス2に向けて送信されたデータの転送を開始する。
【0096】
なお、上述では、LPI状態時に、MAC部111やサブCPU112において、待機状態では動作が不要として予め定められた部分に対するクロックを停止するように説明したが、これはこの例に限定されない。例えば、当該部分に対する電源の供給を停止してもよいし、クロックと電源の供給とを共に停止してもよい。また、クロックは、停止するのに限らず、例えばクロックの周波数を非LPI状態に比べて低くするようにしてもよい。
【0097】
以上説明したように、本実施形態によれば、一定期間内にトラフィックが無い場合にLPI状態を検出し、当該LPI状態ではリンク速度の変更が許可されない場合において、LPI状態を検出する前にプレLPI状態を検出し、このプレLPI状態が検出された状態で、リンク速度の変更を行う。そして、リンク速度が変更された後に、LPI状態を検出するようにしている。
【0098】
そのため、通信インターフェイス2が、例えば1Gbpsといった、消費電力の大きなリンク速度に設定されている状態において、一定期間内にトラフィックが無い場合に、プレLPI状態にて、例えば100Mbpsといった、消費電力がより小さいリンク速度に変更し、その後にLPI状態を検出することができる。そのため、LPI状態においてより効果的に消費電力を削減することが可能になる。
【符号の説明】
【0099】
1,2 通信インターフェイス
10 ネットワーク
11 ネットワークハブ
12 PHY部
13,13’ 通信処理部
14 電源ユニット
100 レジスタ
101 監視部
102,110 データ処理部
103,111 MAC部
104,112 サブCPU
120 エネルギデバイス
121 電源切替部
200 第1状態
201 第2状態
202 第3状態
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】
【特許文献1】特開2010−268024号公報
【特許文献2】特開2010−213259号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常状態と、該通常状態に対して消費電力を抑制する待機状態とを有し、該待機状態ではリンク速度の変更が許可されない通信装置であって、
ネットワークに接続する接続手段と、
前記ネットワークの前記接続手段におけるトラフィックを検出する検出手段と、
前記通常状態時に前記検出手段により前記トラフィックが予め定められた第1の期間検出されない場合に、該通常状態から前記待機状態への移行処理を実行する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、
前記接続手段により第1のリンク速度で前記ネットワークに接続され、前記検出手段により前記トラフィックが前記第1の期間より短い第2の期間検出されない場合に、リンク速度を該第1のリンク速度よりも遅い第2のリンク速度に変更する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記第2の期間は、
前記第1の期間と、前記制御手段が前記リンク速度の前記第1のリンク速度から前記第2のリンク速度への変更を完了するために要する期間との差分よりも短い期間である
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記制御手段は、
前記通常状態から前記待機状態への移行時に、電源の供給元を商用電源からエネルギデバイスに切り替えるように制御する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御手段は、
前記第2の期間でリンク速度の該第1のリンク速度よりも遅い第2のリンク速度への変更が完了した後、前記第1の期間が終了する前に、前記待機状態では動作が不要として予め定められた機能に対する動作抑制処理を行う
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、
前記ネットワークに対するアクセスを制御するアクセス制御手段と、
前記接続手段および前記アクセス制御手段に対してリンク速度の設定を行う設定手段とを含み、
前記予め定められた機能として、少なくとも前記アクセス制御手段と前記設定手段とに対して前記動作抑制処理を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、
前記ネットワークに対するアクセスを制御するアクセス制御手段と、
前記接続手段および前記アクセス制御手段に対してリンク速度の設定を行う設定手段とを含み、
前記通常状態から前記待機状態に移行する際に、少なくとも前記アクセス制御手段および前記設定手段に対する動作抑制処理を行う
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記制御手段は、
前記待機状態中に前記検出手段で前記トラフィックが検出された場合に、該待機状態から前記通常状態への移行処理を実行し、該通常状態への移行後に、前記リンク速度を前記第2のリンク速度から前記第1のリンク速度に変更する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
通常状態と、該通常状態に対して消費電力を抑制する待機状態とを有し、該待機状態ではリンク速度の変更が許可されない通信方法であって、
接続手段が、ネットワークに接続する接続ステップと、
検出手段が、前記ネットワークの前記接続手段におけるトラフィックを検出する検出ステップと、
制御手段が、前記通常状態時に前記検出ステップにより前記トラフィックが予め定められた第1の期間検出されない場合に、該通常状態から前記待機状態への移行処理を実行する制御ステップと
を備え、
前記制御ステップは、
前記接続ステップにより第1のリンク速度で前記ネットワークに接続され、前記検出ステップにより前記トラフィックが前記第1の期間より短い第2の期間検出されない場合に、リンク速度を該第1のリンク速度よりも遅い第2のリンク速度に変更する
ことを特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−253511(P2012−253511A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123573(P2011−123573)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】