説明

通信装置および通信装置の動作方法

【課題】異なる通信方式で通信可能な通信装置において、当該通信装置のコストを低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】通信装置10は、第1通信方式で通信可能な第1通信手段と、第1通信方式の通信を実現するハードウェアのうち、少なくとも一部のハードウェアを共用のハードウェアとして用いて、第1通信方式とは異なる第2通信方式で通信可能な第2通信手段と、第1通信手段および第2通信手段のうち、どちらの通信手段を用いるかを管理するスケジュール管理部140段と、当該スケジュール管理部140からの指令に応じて、共用のハードウェアに対して、第1通信方式による通信または第2通信方式による通信を実行可能にするための設定を行うシーケンス制御部124とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、装置間或いは機器間の通信を異なる通信方式で行う通信システムが存在する。
【0003】
例えば、特許文献1には、有線通信および無線通信を用いて、通信装置が有する情報を他の通信装置へと伝送する通信システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、異なる通信方式で通信可能な通信装置は、各通信方式での通信を実現するために、通信方式ごとに個別の構成を有している。
【0006】
しかし、このような通信装置では、通信方式ごとに個別の構成が設けられることになるため、通信装置のコストが高くなる。
【0007】
そこで、本発明は、異なる通信方式で通信可能な通信装置において、当該通信装置のコストを低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、第1通信方式で通信可能な第1通信手段と、前記第1通信方式の通信を実現するハードウェアのうち、少なくとも一部のハードウェアを共用のハードウェアとして用いて、前記第1通信方式とは異なる第2通信方式で通信可能な第2通信手段と、前記第1通信手段および前記第2通信手段のうち、どちらの通信手段を用いるかを選択する選択手段と、前記選択手段からの指令に応じて、前記共用のハードウェアに対して、前記第1通信方式による通信または前記第2通信方式による通信を実行可能にするための設定を行う設定制御手段とを備える。
【0009】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記選択手段は、通信プロトコルに従った所定タイミングで前記第1通信手段を選択し、前記選択手段は、前記所定タイミング以外のタイミングで前記第2通信手段を選択する。
【0010】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記第1通信方式による通信は、前記通信プロトコルに従って前記所定タイミングで行われる同期通信である。
【0011】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記通信プロトコルは、スマートグリッドにおける通信の規約を規定するプロトコルに含まれる。
【0012】
また、本発明に係る通信装置の動作方法は、第1通信方式で通信可能な第1通信手段、および前記第1通信方式の通信を実現するハードウェアのうち、少なくとも一部のハードウェアを共用のハードウェアとして用いて、前記第1通信方式とは異なる第2通信方式で通信可能な第2通信手段を有する通信装置の動作方法であって、a)前記第1通信手段および前記第2通信手段のうち、どちらの通信手段を用いるかを選択する工程と、b)前記a)工程における選択に応じて、前記共用のハードウェアに対して、前記第1通信方式による通信または前記第2通信方式による通信を実行可能にするための設定を行う工程とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なる通信方式で通信可能な通信装置において、当該通信装置のコストを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】通信システムの構成を示す図である。
【図2】通信装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】時系列で示した通信装置の通信状態を示す図である。
【図4】950MHz通信の実行期間において、無線LAN通信を行う他の通信装置から送信信号が出力された場合の通信装置の通信動作を示す図である。
【図5】時系列で示した通信装置の通信状態を示す図である。
【図6】時系列で示した通信装置の通信状態を示す図である。
【図7】時系列で示した通信装置の通信状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
<実施形態>
[1.構成概要]
図1は、実施形態に係る通信システム1の構成を示す図である。
【0017】
図1に示されるように、通信システム1は、通信装置10と、インターネット等の通信ネットワークNTに接続された中継装置7と、施設8としての家庭80内に存在する各家庭用電気器具(家電)5と、屋内外に設置された各センサー6とを有している。
【0018】
通信装置10は、中継装置7、家電5、およびセンサー6と、それぞれ異なる通信方式で通信可能な機能を有している。具体的には、通信装置10は、電力線30を通信媒体とした電力線通信(PLC:power line communication)によって、家電5と通信可能に構成されている。また、通信装置10は、IEEE802.11の規格に基づく無線通信(「無線LAN通信」とも称する)によって中継装置7と通信可能に構成されるとともに、IEEE802.15.4gの規格に基づく無線通信でセンサー6と通信可能に構成されている。なお、無線LAN通信では、例えば、2.5GHzの周波数を中心周波数とする周波数帯域の無線信号を用いて通信が行われ、IEEE802.15.4gの規格に基づく無線通信では、950MHzの周波数を中心周波数とする周波数帯域の無線信号を用いて通信が行われる。
【0019】
本明細書中では、無線LAN通信を「第1通信方式の通信」とも称し、IEEE802.15.4gの規格に基づく無線通信(950MHz通信)を「第2通信方式の通信」とも称する。また、電力線通信(PLC)を「第3通信方式の通信」とも称する。
【0020】
センサー6には、温度センサー、湿度センサー、ガスの使用量を計量するガスメータ等が含まれる。通信装置10は、950MHzの周波数帯域を利用した無線通信によって、センサー6から環境情報を取得することができる。
【0021】
家電5には、テレビ、冷蔵庫、エアコン等が含まれる。通信装置10は、電力線通信によって各家電5に制御情報を送信し、当該各家電5を制御する機能をも有している。当該制御情報は、通信装置10によって環境情報に基づいて設定された情報であってもよい。
【0022】
なお、図1では、電柱上の中継装置7と通信を行うことによって通信ネットワークNTに接続される態様が例示されているが、例えば、家庭内のルータを中継装置とし、当該ルータと通信装置10とが通信を行うことによって通信ネットワークNTに接続される態様であってもよい。
【0023】
このように、通信装置10は、複数の異なる通信方式で、様々な電子機器と施設内通信(屋内通信)または施設外通信(屋外通信)を実現する。
【0024】
なお、通信装置10は、家庭80で消費される電力を計量する電力量計(電力メータ)としての機能を有していてもよく、また、本実施形態では、通信装置10が次世代電力網としてのスマートグリッドにおける通信網の構成要素として用いられる場合を例示する。
【0025】
[2.通信装置10の機能ブロック]
次に、通信システム1を構成する通信装置10の機能について説明する。図2は、通信装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示されるように、通信装置10は、アンテナ素子AN1,AN2に接続された通信部110と、通信処理部120と、全体制御部130と、スケジュール管理部140と、PLCモデム150と、外部機器(例えば外部記憶装置)と接続するための外部I/F160とを備えている。
【0027】
通信部110は、アンテナ素子AN1,AN2それぞれとの協働により、外部の通信装置(外部通信装置)との間で無線通信を行う。具体的には、通信部110は、外部の通信装置から送信されたデータをアンテナ素子AN1,AN2を介して受信し、受信データを通信処理部120に出力する。また、通信部110は、通信処理部120から入力される送信データを含む信号(送信信号)をアンテナ素子AN1,AN2を介して外部の通信装置に無線送信する。
【0028】
また、通信部110は、後述の通信処理部120との協働により、種々の外部通信装置と2つの異なる通信方式で無線通信可能な通信手段として構成されている。より詳細には、通信部110は、アンテナ素子AN1に接続されたバンドパスフィルタ111A、および当該バンドパスフィルタ111Aに接続された送受信切替部SW1、並びにアンテナ素子AN2に接続されたバンドパスフィルタ111B、および当該バンドパスフィルタ111Bに接続された送受信切替部SW2を有している。
【0029】
例えば、第1通信方式の通信(無線LAN通信)を行う場合は、通信部110は、アンテナ素子AN1、バンドパスフィルタ111Aおよび送受信切替部SW1を用いて無線信号の送受信を行う。また、第1通信方式とは異なる第2通信方式の通信(950MHz通信)を行う場合は、通信部110は、アンテナ素子AN2、バンドパスフィルタ111Bおよび送受信切替部SW2を用いて無線信号の送受信を行う。
【0030】
ここで、通信部110における、第1通信方式で無線通信を行う際の処理について受信処理と送信処理とに場合を分けて説明する。
【0031】
受信処理では、バンドパスフィルタ111Aは、アンテナ素子AN1で受信された信号の中から、当該第1通信方式において処理対象となる受信信号を取り出して出力する。バンドパスフィルタ111Aから出力された受信信号は、送受信切替部SW1を介して低ノイズアンプ(LNA:Low Noise Amplifier)112に入力される。
【0032】
低ノイズアンプ112は、入力された受信信号を増幅して出力する。低ノイズアンプ112から出力された受信信号は、ミキサ113へ入力される。
【0033】
ミキサ113は、発振回路114から出力される所定周波数の基準信号と受信信号とを乗算し、受信信号の周波数帯域をより低い周波数帯域(ここでは、基底帯域)に変換する。ミキサ113から出力された基底帯域(ベースバンド)の受信信号は、セレクタ115を介してA/D変換回路116に入力される。
【0034】
A/D変換回路116は、入力されたアナログ形式の受信信号をデジタル形式の受信信号に変換して通信処理部120に出力する。
【0035】
また、送信処理では、通信処理部120から入力された送信信号がD/A変換回路117においてデジタル形式の送信信号からアナログ形式の送信信号へと変換される。D/A変換回路117から出力されたアナログ形式の送信信号は、ミキサ118に入力される。
【0036】
ミキサ118は、発振回路114から出力される基準信号と送信信号とを乗算し、送信信号の周波数帯域をより高い周波数帯域(ここでは、搬送帯域)に変換する。ミキサ118から出力された搬送帯域の送信信号は、パワーアンプ(PA)119に入力される。
【0037】
パワーアンプ119は、入力された送信信号を増幅して出力する。パワーアンプ119から出力された送信信号は、送受信切替部SW1を介してバンドパスフィルタ111Aに入力される。
【0038】
バンドパスフィルタ111Aは、入力された送信信号に対して所定のフィルタリング処理を施すことによって、当該送信信号から不要な信号を除去する。バンドパスフィルタ111Aから出力された送信信号は、アンテナ素子AN1を介して無線信号として出力される。
【0039】
このように、第1通信方式で無線通信を行う場合は、アンテナ素子AN1、バンドパスフィルタ111Aおよび送受信切替部SW1を用いて無線信号の送受信が行われる。
【0040】
一方、第1通信方式とは異なる第2通信方式で無線通信を行う場合は、アンテナ素子AN2、バンドパスフィルタ111Bおよび送受信切替部SW2を用いて無線信号の送受信が行われる。
【0041】
なお、送受信切替部SW2は、低ノイズアンプ112に接続され、受信信号は、低ノイズアンプ112、ミキサ113、セレクタ115、およびA/D変換回路116を経て、通信処理部120に出力される。また、送受信切替部SW2は、パワーアンプ119に接続され、通信処理部120から通信部110に入力された送信信号は、D/A変換回路117、ミキサ118、およびパワーアンプ119を経て、送受信切替部SW2に入力されることになる。
【0042】
すなわち、通信部110では、バンドパスフィルタおよび送受信切替部が、第1通信方式および第2通信方式に応じて1系統ずつ設けられているが、通信部110における他の処理については、通信部110内の共通のハードウェアリソースを用いて行われる。
【0043】
また、通信部110は、後述のPLCモデム150を用いて第3通信方式の通信(電力線通信)を行う場合においても、通信部110内のハードウェアリソースの一部(詳細には、A/D変換回路116およびD/A変換回路117)を提供する。このため、通信部110は、通信処理部120およびPLCモデム150との協働により、第3通信方式で通信可能な通信手段として機能するとも表現される。
【0044】
次に、通信処理部120について説明する。通信処理部120は、例えば、DSP(Digital Signal Processor)で構成されている。DSPは、当該DSPに付設された記憶部(不図示)に格納されたプログラムを読み出して、当該プログラムを実行することにより、各種機能部を実現する。
【0045】
具体的には、通信処理部120では、ベースバンド処理部121と、MAC(Media Access Control;メディアアクセス制御層)122と、通信制御部123と、シーケンス制御部124とが機能的に実現される。
【0046】
ベースバンド処理部121では、ベースバンド処理が行われる。より詳細には、ベースバンド処理部121は、ベースバンドの受信信号を解析に適した信号に変換する処理、および全体制御部130から入力される送信データを無線伝送に適した信号に変換する処理を行う。
【0047】
MAC122は、データ通信の階層構造におけるMAC層に対応するアクセス制御処理を行う。例えば、MAC122は、通信部110から入力されるベースバンドの受信信号から付加情報を除去し、除去後の受信信号をベースバンド処理部121に出力する。また、MAC122は、ベースバンド処理部121から入力される送信信号に所定情報を付加し、情報付加後の送信信号を通信部110に出力する。
【0048】
通信制御部123は、通信部110による通信動作を制御する。具体的には、通信制御部123は、送受信切替部SW1,SW2、発振回路114、およびセレクタ115を制御し、通信方式に応じた通信動作の制御を行う。
【0049】
シーケンス制御部124は、後述のスケジュール管理部140からの指令に応じた通信方式で、通信処理部120を動作させる。具体的には、シーケンス制御部124は、スケジュール管理部140からの指令に応じた通信方式の通信を実行可能なように、当該通信方式に応じたベースバンド処理部121、MAC122および通信制御部123を機能的に実現させる。すなわち、上述のベースバンド処理部121、MAC122、および通信制御部123は、シーケンス制御部124によって選択されたプログラムを実行することによって実現されることになる。
【0050】
例えば、スケジュール管理部140から第1通信方式で通信を行う旨の指令を受けた場合は、シーケンス制御部124は、第1通信方式の通信を実現するためのプログラムを記憶部から読み出す。そして、シーケンス制御部124は、DSPにおいて当該プログラムを実行させることによって、第1通信方式の通信を実行可能なように、通信処理部120を動作させる。
【0051】
これにより、通信処理部120では、第1通信方式に応じたベースバンド処理部121、MAC122および通信制御部123が機能的に実現されることになる。すなわち、第1通信方式に応じて実現されるベースバンド処理部121およびMAC122は、第1通信方式に応じたベースバンド処理、およびMAC処理をそれぞれ実行する。また、第1通信方式に応じて実現される通信制御部123は、送信処理および受信処理に応じて送受信切替部SW1を切り替えるとともに、第1通信方式に応じた周波数を有する基準信号を生成するように発振回路114を制御する。また、通信制御部123は、ミキサ113からの受信信号をA/D変換回路116に出力するようにセレクタ115を制御する。
【0052】
このように、シーケンス制御部124は、スケジュール管理部140からの指令に応じて、当該指令に応じた通信方式で通信可能なように通信装置10を自動的に設定する設定制御手段として機能する。
【0053】
全体制御部130は、マイクロコンピュータとして構成され、主にCPU、RAMおよびROM(いずれも不図示)等を備える。全体制御部130は、ROMに格納されたプログラムを読み出し、当該プログラムをCPUで実行することによって、通信プロトコル処理部131を機能的に実現する。
【0054】
通信プロトコル処理部131は、通信プロトコルに従った通信動作を通信装置に実行させるため、通信プロトコルに応じた処理を行う。例えば、通信プロトコル処理部131は、通信プロトコルに応じたスケジュール管理を行うように、スケジュール管理部140を設定する。通信プロトコル処理部131によるスケジュール管理部140の設定は、通信装置10が起動された際に行われる。
【0055】
スケジュール管理部140は、通信装置10において実行される通信動作のスケジュール管理を行う。具体的には、スケジュール管理部140は、通信プロトコル処理部131によって初期設定された後、通信プロトコルに従ったスケジュール管理を行い、通信処理部120のシーケンス制御部124に対して通信の動作指令を出力する。
【0056】
より詳細には、当該通信プロトコルには、予め定められた所定のタイミングで他の通信装置と同期して通信(同期通信)を行う規約が含まれている。スケジュール管理部140は、当該規約に基づいて、所定のタイミングにおいて、同期通信を行う旨の動作指令をシーケンス制御部124に対して出力する。
【0057】
本実施形態では、第2通信方式の通信および第3通信方式の通信が他の通信装置と同期して行われるものとして例示する。すなわち、第2通信方式の通信を実行するタイミングになると、スケジュール管理部140は、第2通信方式の通信を行う旨の動作指令をシーケンス制御部124に対して出力し、通信装置10は、第2通信方式の通信動作を実行することになる。また、第3通信方式の通信を実行するタイミングになると、スケジュール管理部140は、第3通信方式の通信を行う旨の動作指令をシーケンス制御部124に対して出力し、通信装置10は、第3通信方式の通信動作を実行することになる。
【0058】
なお、同期通信は、送信側と受信側とで同期をとりながらデータ伝送を行なう通信であり、所定のタイミングで行われる同期通信には、例えば、一定周期ごとに行われる通信が含まれる。また、このような同期通信を行う規約を含む通信プロトコルは、スマートグリッドにおける通信の規約を規定するプロトコルに含まれる。
【0059】
また、スケジュール管理部140は、同期通信を行うタイミング以外のタイミングで、非同期通信を行うようにスケジュール管理を行う。本実施形態では、第1通信方式の通信が非同期通信であるものとして例示する。
【0060】
このように、スケジュール管理部140は、複数の通信方式のうち、いずれの通信方式を用いて通信を行うかを自動で択一的に選択する選択手段としての機能を有している。
【0061】
PLCモデム150は、アナログアンプ等を含むPLCアナログフロントエンド151と、電力線30への結合回路152とで構成されている。PLCモデム150は、D/A変換回路117を介して入力される通信処理部120からの送信信号に基づいてPLC信号を生成し、当該PLC信号を電力線30に重畳させる機能を有している。また、PLCモデム150は、受信したPLC信号を復調して、受信信号を取得し、当該受信信号を通信部110に出力する機能を有している。このようにPLCモデム150は、電力線30を通信媒体とした電力線通信を実現する。
【0062】
[3.通信装置10の通信動作]
次に、通信装置10の通信動作について説明する。図3は、時系列で示した通信装置10の通信状態を示す図である。図3では、電力線通信の通信タイミングTPと、950MHz通信の通信タイミングTQと、無線LAN通信の通信タイミングTLと、これら電力線通信、950MHz通信および無線LAN通信の各通信タイミングを合わせて表示した通信装置10の通信タイミングTAとが示されている。
【0063】
図3に示されるように、通信装置10では、電力線通信が所定周期のタイミングTM1で実行されるとともに、950MHz通信が電力線通信のタイミングとは異なる所定周期のタイミングTM2で実行される。
【0064】
電力線通信および950MHz通信の各実行タイミングTM1,TM2は、スケジュール管理部140において管理され、各実行タイミングTM1,TM2が到来する度に、スケジュール管理部140は、各実行タイミングTM1,TM2に応じた通信の動作指令をシーケンス制御部124に対して出力する。
【0065】
シーケンス制御部124は、動作指令を受けると、当該動作指令に応じた通信方式で、通信処理部120を動作させる。これにより、通信装置10は、各実行タイミングTM1,TM2で所望の通信が実行可能なように設定されることになる。
【0066】
このように、通信装置10では、電力線通信と950MHz通信とが同期通信として、互いに異なるタイミングで所定周期ごとに実行される。
【0067】
また、通信装置10では、同期通信の実行タイミングTM1,TM2以外の任意のタイミングTM3で、無線LAN通信が実行される。
【0068】
具体的には、スケジュール管理部140は、同期通信の実行タイミングTM1,TM2が終了すると、非同期通信(無線LAN通信)を実行するための設定変更指令をシーケンス制御部124に対して出力する。シーケンス制御部124は、設定変更指令を受けると、無線LAN通信を実行可能なように通信処理部120を動作させる。より詳細には、シーケンス制御部124は、無線LAN通信を実現するためのプログラムを記憶部から読み出し、当該プログラムを実行することによって無線LAN通信を実現可能なように、通信処理部120を動作させる。これにより、通信装置10は、無線LAN通信が実行可能なように設定されることになる。例えば、図3では、両矢印で示される期間PDが無線LAN通信を実行可能なように設定された期間となる。
【0069】
無線LAN通信が実行可能なように設定された通信装置10は、無線LAN通信を行う他の通信装置からの送信信号を受信可能な状態となり、当該送信信号を受信したタイミングTM3で無線LAN通信を実行する。
【0070】
このように、通信装置10は、同期通信が実行されない期間(同期通信の不実行期間)において、非同期通信を実行可能なように設定される。なお、同期通信の不実行期間は、非同期通信の実行可能期間とも称される。
【0071】
また、同期通信が実行される期間(同期通信の実行期間)において、無線LAN通信を行う他の通信装置から送信信号が出力された場合は、通信装置10は、当該送信信号を受信して非同期通信を実行することができない。しかし、無線LAN通信を行う他の通信装置が、送信データを相手装置に伝送できないときに、当該送信データを再送する機能を有していた場合は、通信装置10は、同期通信の不実行期間において非同期通信を実行し、再送された送信データを取得することができる。
【0072】
例えば、図4には、同期通信である950MHz通信の実行期間KTにおいて、無線LAN通信を行う他の通信装置から送信信号が出力された場合の通信装置10の通信動作が示されている。この場合、同期通信の実行期間KTが終了した後の同期通信の不実行期間PD10におけるタイミングTM30で、他の通信装置によって送信データの再送が行われ、通信装置10と他の通信装置との非同期通信(無線LAN通信)が実行されている。
【0073】
以上のように、通信装置10では、同期通信を実現するハードウェア(詳細には、通信部110および通信処理部120)と非同期通信を実現するハードウェア(通信部110および通信処理部120)とは、少なくとも一部のハードウェアを共有して構成される。そして、同期通信を行う際には、共有のハードウェアに対して、同期通信を実行可能にするための設定を行い、非同期通信を行う際には、当該共有のハードウェアに対して、非同期通信を実行可能にするための設定を行う。このように、通信装置10は、共有するハードウェアを異なる時間において用いて、換言すれば共有のハードウェアを共用のハードウェアとして時分割で用いて、同期通信および非同期通信を行う。
【0074】
このような通信装置10によれば、同期通信および非同期通信を行うための構成の全てを個別に設ける必要がなく、通信装置10のコストを低減することが可能になる。また、ハードウェアの共用により、通信装置10の大きさをより小さくすることも可能になるとともに、オーバヘッドを低減させることも可能になる。
【0075】
なお、非同期通信を行う相手側の通信装置(「相手通信装置」とも称する)が送信データの再送機能を有する場合に、通信装置10で実行される非同期通信は、以下のようなケース(1)〜(3)において特に実現可能となる。なお、図5〜7は、時系列で示した通信装置10の通信状態を示す図であり、図5はケース(1)の通信状態、図6はケース(2)の通信状態、図7はケース(3)の通信状態を示している。
【0076】
(1)通信装置10における同期通信の不実行期間が、相手通信装置において送信データの再送に要する時間よりも長い場合。
【0077】
具体的には、例えば図5に示されるように、通信装置10における同期通信の不実行期間PD50が、相手通信装置において送信データを最初に送信してから再送するまでの時間、すなわち相手通信装置において送信データの再送に要する時間RP1よりも長い場合、通信装置10は、再送される送信データを取得する可能性が高く、非同期通信は特に実現可能といえる。
【0078】
(2)相手通信装置による送信データの再送タイミングがランダムで、送信データの再送が通信装置10における同期通信の非実行期間に行われる可能性が高い場合。
【0079】
具体的には、例えば図6に示されるように、相手通信装置による送信データの再送がタイミングTM50或いはタイミングTM60等のランダムなタイミングで行われるのであれば、通信装置10における同期通信の非実行期間PD50に送信データが再送される可能性が高く、非同期通信は特に実現可能といえる。
【0080】
(3)相手通信装置において送信データを最初に送信してから再送するまでの間隔が、通信装置10における同期通信の周期と異なる場合。
【0081】
具体的には、例えば、図7に示されるように、相手通信装置において送信データを最初に送信してから再送するまでの間隔RP2が、通信装置10における同期通信の周期CYと異なる場合は、通信装置10における同期通信の不実行期間において相手通信装置による送信データの再送が行われることが保証されており、非同期通信は特に実現可能といえる。
【0082】
<変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は、上記に説明した内容に限定されるものではない。
【0083】
例えば、上記実施形態では、通信処理部120をDSPを用いて構成する態様を例示していたが、これに限定されない。具体的には、通信処理部120において実現される各機能部の一部または全部をハードウェアによって実現してもよい。具体的には、例えば、各通信方式における共通部分を所定のハードウェアによって構成し、当該ハードウェアに対するパラメータ設定、経路の切替、および動作手順等をプログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)を用いて制御してもよい。これによれば、通信処理部の機能に特化したハードウェア構成とすることができるので、DSPを用いる場合に比べて、オーバヘッドを低減させることができる。
【0084】
また、上記実施形態では、スケジュール管理部140が通信処理部120および全体制御部130とは独立した要素として構成されていたが、これに限定されず、スケジュール管理部が全体制御部130において機能的に実現される態様であってもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、同期通信の不実行期間全てにおいて、非同期通信を実行可能なように通信装置10を設定していたがこれに限定されず、同期通信の不実行期間の一部の期間において非同期通信を実行可能となるように通信装置10を設定してもよい。
【0086】
また、上記実施形態では、2つの異なる通信方式の通信(具体的には、電力線通信と950MHz通信)が同期通信として実行されていたが、これに限定されない。具体的には、1つの通信方式の通信(例えば電力線通信)のみが同期通信として実行されていてもよく、3つ以上の異なる通信方式の通信が同期通信として実行されていてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 通信システム
5 家電
6 センサー
7 中継装置
8 施設
10 通信装置
30 電力線
80 家庭
110 通信部
120 通信処理部
130 全体制御部
140 スケジュール管理部
150 PLCモデム
NT 通信ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1通信方式で通信可能な第1通信手段と、
前記第1通信方式の通信を実現するハードウェアのうち、少なくとも一部のハードウェアを共用のハードウェアとして用いて、前記第1通信方式とは異なる第2通信方式で通信可能な第2通信手段と、
前記第1通信手段および前記第2通信手段のうち、どちらの通信手段を用いるかを選択する選択手段と、
前記選択手段からの指令に応じて、前記共用のハードウェアに対して、前記第1通信方式による通信または前記第2通信方式による通信を実行可能にするための設定を行う設定制御手段と、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記選択手段は、通信プロトコルに従った所定タイミングで前記第1通信手段を選択し、
前記選択手段は、前記所定タイミング以外のタイミングで前記第2通信手段を選択する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記第1通信方式による通信は、前記通信プロトコルに従って前記所定タイミングで行われる同期通信である請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記通信プロトコルは、スマートグリッドにおける通信の規約を規定するプロトコルに含まれる請求項2または請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
第1通信方式で通信可能な第1通信手段、および前記第1通信方式の通信を実現するハードウェアのうち、少なくとも一部のハードウェアを共用のハードウェアとして用いて、前記第1通信方式とは異なる第2通信方式で通信可能な第2通信手段を有する通信装置の動作方法であって、
a)前記第1通信手段および前記第2通信手段のうち、どちらの通信手段を用いるかを選択する工程と、
b)前記a)工程における選択に応じて、前記共用のハードウェアに対して、前記第1通信方式による通信または前記第2通信方式による通信を実行可能にするための設定を行う工程と、
を備える通信装置の動作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−23596(P2012−23596A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160442(P2010−160442)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(591128453)株式会社メガチップス (322)
【Fターム(参考)】