説明

通信装置及びその制御方法、並びにプログラム

【課題】IP網を経由するファックス通信で、アナログ回線を経由するファックス通信のように、データの送信前に通信をキャンセル可能な猶予期間を提供できる通信装置及びその制御方法、並びにプログラムする。
【解決手段】MFP10は、IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行う通信装置であって、ファックス通信の宛先へデータを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間が記録された記録手段を備え、宛先にデータを送信可能になってから、記録手段により記録された遅延時間だけ前記データの送信を遅延させ、遅延の後に、データを送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置及びその制御方法、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ファックス装置やファックス機能を備えた複合機等の通信装置においては、アナログ回線(公衆電話網)に接続してデータを送信するファックスが普及しており、一般的に広く使用されている。
【0003】
アナログ回線に接続してファックスを送信する場合、まず、宛先に電話をかけるダイヤルアップから送信処理が始まる。宛先に電話がつながると、次にモデムにより通信速度や通信方法を決定するモデムネゴシエーションが行わる。モデムネゴシエーションが完了すると、ようやくファックスで送信する画像データが送信開始となる。
【0004】
一方、近年のファックス装置やファックス機能を備えた複合機等のデータ通信装置は、IP網を利用したファックスデータ通信機能を備えたものがある。一般的に、IP網を利用したファックス(例えばIP−FAX)はアナログ回線FAXと比較して、ファックス通信操作から回線接続完了までが非常に短時間で完了する。
【0005】
アナログ回線に接続してファックスを送信する場合、ユーザがファックス通信操作を開始してから、上述したアナログ電話回線でのダイヤルアップとモデムネゴシエーション完了までは、多くの場合10秒以上の時間がかかっていた。
【0006】
このように、接続完了してデータ送信開始できるまでに時間的猶予があるため、ファックス通信開始操作をしてから宛先間違いや原稿間違いにすぐに気づいた場合、送信キャンセル操作を行えばキャンセルが間に合う場合が多かった。
【0007】
一方、IP−FAXの場合では、電話回線におけるダイヤルアップやモデムネゴシエーションに相当する接続処理が、高速なIP網でパケットをやり取りすることによって行われる。このため、アナログ回線での接続に比べIP−FAXの方が非常に短時間で接続完了できる。
【0008】
上述したファックスに関連して、従来のアナログ回線FAXにおいて誤送信を防止する技術として、例えば、音声ガイダンスによる宛先名音声出力が終了するまでは発信を行わない技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
この技術によれば、宛先名音声ガイダンスが終了するまで発信処理を待たせることで、ユーザにキャンセルする時間的猶予と判断猶予を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−22183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら特許文献1に開示された技術では、音声ガイダンスを必要としないユーザの場合や音声ガイダンスの無いファックス装置において、高速に接続が完了するIP−FAXにおけるキャンセル猶予については考慮されていなかった。
【0012】
そのため、IP−FAXで一旦送信操作が行われると、送信操作直後に原稿や宛先の誤送信に気付いたとしても、すでにデータ送信が開始されていてキャンセルが間に合わないという課題がある。よって、キャンセル操作をしたとしても、既に宛先に原稿データが送信されてしまっている場合がある。
【0013】
本発明の目的は、IP網を経由するファックス通信で、アナログ回線を経由するファックス通信のように、データの送信前に通信をキャンセル可能な猶予期間を提供できる通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の通信装置は、IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行う通信装置であって、ファックス通信の宛先へ前記データを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間が記録された記録手段と、前記宛先に前記データを送信可能になってから、前記記録手段により記録された遅延時間だけ前記データの送信を遅延させる遅延手段と、前記遅延手段による遅延の後に、前記データを送信する送信手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、IP網を経由するファックス通信で、アナログ回線を経由するファックス通信のように、データの送信前に通信をキャンセル可能な猶予期間を提供できる通信装置及びその制御方法、並びにプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係るMFPを含む通信システムの概略構成を示す図である。
【図2】図1におけるMFPの概略構成を示す図である。
【図3】図1におけるMFPのソフトウェア構成を示す図である。
【図4】図2おけるROMに記憶される遅延設定記憶テーブルを示す図である。
【図5】図4の遅延設定記憶テーブルを設定するための遅延設定画面の一例を示す図である。
【図6】図2おけるROMに記憶されるアドレス帳の一例を示す図である。
【図7】図2におけるCPUにより実行されるファックス送信処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】図7におけるステップS404のデータ送信遅延処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】図2におけるCPUにより実行される接続時間計測処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本実施の形態では、本発明の実施の形態に係る通信装置として、画像形成装置(以下、「MFP」という)を例に説明する。なお、MFPとは、マルチファンクションペリフェラルを示している。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態に係るMFPを含む通信システム1の概略構成を示す図である。
【0019】
図1に示される通信システム1おいて、MFP10がIP網11に接続されている。IP網11上には、MFP13やMFP14がMFP10と同様に接続されており、IP−FAXの送受信をお互いに行うことが可能となっている。
【0020】
また、MFP10はアナログファックスデバイスも備えており、公衆電話網(PSTN)12に接続されている。公衆電話網12上には、ファックス15やファックス16が同様に接続されており、アナログ回線を介したファックスの送受信をお互いに行うことが可能となっている。このように、本実施の形態に係るMFP10は、IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行うとともに、アナログ回線を経由するファックス通信も可能となっている。
【0021】
図2は、図1におけるMFP10の概略構成を示す図である。
【0022】
図2において、MFP10は、ROM102に記憶されたソフトウェアを実行するCPU101を備え、CPU101はシステムバス115に接続される各デバイスを総括的に制御する。上記ROM102は記憶手段に対応し、さらに書き換え可能なフラッシュメモリなどのROMである。
【0023】
RAM103は、CPU101のメインメモリ、ワークエリア等として機能する。NIC(ネットワークインタフェースカード)104は、NIC104に接続されたIP網上の他のネットワーク機器と所定の通信プロトコルに従って通信する処理を実行する。これにより、例えば、IP網11上のMFP10からMFP13へファックスデータを送信することができる。
【0024】
PANELC105は外部入力コントローラであり、MFP10に備えられた各種ボタンまたはタッチパネルであるPANEL106等からの指示入力を制御する。DISPC(ディスプレイコントローラ)107は、例えば液晶ディスプレイなどで構成される表示モジュールであるDISPLAY108での表示を制御する。
【0025】
DISKC109はハードディスクコントローラであり、MFP10に接続されたHDD(ハードディスクドライブ)110に対して読み書きの制御を行う。HDD110には、NIC104で受信したデータや後述するSCANNER114で読み取った画像データが記憶される。
【0026】
FAXMODEM111は、アナログ回線用のファックスモデムであり、アナログ信号とデジタル信号の変調・復調処理を行う装置である。FAXMODEM111の先にはNCU112が接続されている。NCU112は網制御装置であり、アナログ電話回線上の交換機に対し、回線接続・切断の処理を行う装置である。
【0027】
PRINTER113は、例えば電子写真方式あるいはインクジェット方式などで実現される紙への印字部である。
【0028】
SCANNER114は、紙原稿上の画像を読み込むための画像読み取り部である。多くの場合、SCANNER114にはオプションとしてオートドキュメントフィーダ(不図示)が装着されており、複数枚の原稿を自動的に読み込むことができる。
【0029】
図3は、図1におけるMFP10のソフトウェア構成を示す図である。
【0030】
図3においては、MFP10に搭載されているソフトウェアのうち、ファックス機能に関する部分のみを説明するが、MFP10には、以下に説明するソフトウェア以外の各種ソフトウェアも備えられている。
【0031】
図3に示すソフトウェア300は、MFP10のROM102に格納されており、MFP10が起動したことに応じてRAM103に読み出され、CPU101により実行される。
【0032】
MFP10のオペレーティングシステム(OS)301上には、図2に示した各種コントローラを制御するデバイスドライバ302、通信制御に必要なプロトコルスタック303、及びアプリケーション306が備えられている。
【0033】
CPU101によって実行されるオペレーティングシステム301は、マルチタスクOSであり、複数のタスクを切り替えて実行する制御を行い、複数の処理を並列に処理することが可能である。
【0034】
例えば、複数の宛先に送信する同報同時送信のような、IP−FAXでのデータ送信を行いつつ、アナログ回線FAXにもデータ送信を行うといった並列処理を複数のタスクを細かく切り替えて動作させることができる。
【0035】
デバイスドライバ302には、NIC104、PANELC105、DISPC107、DISKC109、FAXMODEM111、PRINTER113、及びSCANNER114などを制御する各種ドライバが存在する。
【0036】
デバイスドライバ302は、例えば、NIC104を制御するドライバであれば、NIC104に対して各種指示を送信し、NIC104にパケットの送受信などの各種動作を実行させる。
【0037】
プロトコルスタック303は、TCP/IPなどの通信プロトコルを処理するものである。具体的に、プロトコルスタック303は、上位アプリケーションから渡されたデータをパケット化し、デバイスドライバ302に渡したり、逆にデバイスドライバ302で受信したパケットを受け取り上位アプリケーションにデータを渡したりする処理を行う。
【0038】
また、プロトコルスタック303にはIP−FAXに必要なプロトコルであるSIP304やT.38(305)といったプロトコル処理部も備えられている。
【0039】
上記SIP304は、IP−FAXなどのセッション確立、終了などの操作を行うためのプロトコルである。また、T.38(305)はアナログファックスのモデム信号をIPパケットとしてやりとりするプロトコルである。各プロトコルは標準規格であるので、詳細な説明は省略する。
【0040】
アプリケーション306には、JOB制御307や、IP−FAX制御308、G3―FAX制御309などの制御アプリケ―ションが備えられている。
【0041】
まず、JOB制御部317について説明する。JOB制御部317は、例えばPANEL106によりファックス通信などの操作が行われた場合、JOB制御部317にて指示された作業を受け付けて処理を行うJOB処理ソフトウェアを備えている。以下の説明では、上記作業を「JOB」ということとする。
【0042】
JOB制御部317で受け付けられたJOBは、そのJOBの種類に該当する制御アプリケーションの処理ソフトウェアがCPU101により実行される。
【0043】
例えば、IP−FAXでのファックス送信JOBの場合、IP−FAX制御308の処理ソフトウェアがSIP304やT.38(305)のプロトコルを制御して、セッション確立やデータ送信の指示を行う。
【0044】
プロトコルスタック303を経由して生成されたパケットを、デバイスドライバ302によりNIC104で送受信させて外部機器とIP−FAX通信を行う。
【0045】
アナログファックス回線への送信JOBの場合、G3−FAX制御309がFAXMODEM111を制御するデバイスドライバ302に対して指示を行い、アナログ回線FAXの通信処理を実現する。
【0046】
図4は、図2おけるROM102に記憶される遅延設定記憶テーブルを示す図である。
【0047】
図4における遅延設定記憶テーブル600は、後述する遅延を行うか否かといった情報や遅延を行う場合の条件などの設定情報を記憶しておくものである。
【0048】
遅延設定記憶テーブル600に記憶された設定情報について説明する。
【0049】
設定情報は、遅延有/無601、固定/自動602、固定遅延時間603、アナログ回線FAX接続時間計測値604、登録済み宛先時遅延605、同報同時送信時最遅接続完了トリガ606から構成される。
【0050】
遅延有/無601は、遅延を行うか否かを示すものであり、遅延有か遅延無のいずれかが設定される。
【0051】
固定/自動602には、遅延時間を固定にするか自動にする否かが設定される。固定遅延時間603には、固定設定の場合に遅延させる固定遅延時間が設定される。例えば、固定遅延時間が15秒のときには、固定遅延時間603には15秒という値が設定される。
【0052】
アナログ回線FAX接続時間計測値604には、自動設定だった場合に遅延させる遅延時間として、アナログ回線FAXの接続に要した時間を計測した計測値が設定される。計測方法については、後に説明する。
【0053】
このアナログ回線FAX接続時間計測値604、及び上記固定遅延時間603は、ファックス通信の宛先へ前記データを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間に対応する。なお、遅延時間の目安としてはアナログ回線を用いたファックスと同様にキャンセル可能となるような時間が望ましい。
【0054】
登録済み宛先時遅延605は、後述するアドレス帳に登録された宛先に対して遅延を行うか否かを示し、遅延有か遅延無のいずれかが設定される。同報同時送信時最遅接続完了トリガ606は、同報同時送信時に最も接続完了が遅い回線の接続完了に合わせてデータ送信を遅延させるか否かを示し、有か無のいずれかが設定される。
【0055】
以上説明した遅延設定記憶テーブル600は、DISPLAY108に表示された遅延設定画面で、PANEL106により設定値をユーザが入力することにより、ROM102に設定値が上書きされる。
【0056】
図5は、図4の遅延設定記憶テーブル600を設定するための遅延設定画面の一例を示す図である。
【0057】
図5において、遅延設定画面700には、まず「IP−FAX接続後、データ送信の開始を遅延させる」のチェックボックス701が表示されており、チェックボックス701を有効/無効にすることで、その設定値が遅延有/無601が設定される。
【0058】
また、遅延設定画面700には、<遅延時間指定>702の設定項目が表示されており、ラジオボタンにより、固定か自動かを設定することができ、その設定値が固定/自動602に設定される。
【0059】
さらに、遅延時間指定702には、固定選択欄の右側には固定時間を入力する領域があり、この入力エリアに入力された数値が固定遅延時間603に設定される。
【0060】
そして、設定項目703は、同報同時配信時は、最も接続が遅い回線の接続完了まで待たせるか否かを設定するための項目である。ここでチェックボックスを有効/無効にすることで、その設定値が同報同時送信時最遅接続完了トリガ606に設定される。
【0061】
設定項目704は、登録済み宛先への送信時に、ラジオボタンにより、遅延させるか遅延させないかを設定することができ、その設定値が登録済み宛先時遅延605に設定される。なお、登録済み宛先とは、後述するアドレス帳に登録済みの宛先である。
【0062】
DISPLAY108に表示された遅延設定画面700で、ユーザがPANEL106により入力設定した後、設定ボタン705を押下することで設定値がROM102に上書きされる。また、キャンセルボタン706を押下した場合、設定値は上書きされず、遅延設定画面700の表示を終了する。
【0063】
図6は、図2おけるROM102に記憶されるアドレス帳の一例を示す図である。
【0064】
図6におけるアドレス帳900は、送信先の情報が登録されたデータベースである。
【0065】
このアドレス帳900は、ID901、宛先名902、宛先電話番号903、宛先IPアドレス904、及び同報グループID905を含む。
【0066】
ID901は、アドレス帳に登録された各宛先情報を識別するユニークなIDである。宛先名902は宛先の名称を文字列で登録したものである。宛先電話番号903は、宛先の電話番号を登録したものである。
【0067】
宛先IPアドレス904は、電話番号を使わず直接IPアドレスで画像データを送信する場合に用いる宛先のIPアドレスを登録したものである。同報グループID905は、同報同時送信での同報グループを識別するためのIDである。同じ同報グループIDの宛先の各々に同じ画像データを送信するために用いる。
【0068】
図7は、図2におけるCPU101により実行されるファックス送信処理の手順を示すフローチャートである。
【0069】
図7におけるファックス送信処理は、CPU101で動作するソフトウェア300で制御される。
【0070】
まず、ユーザにより、PANEL106でファックス通信操作が行われた場合、JOB制御部317にて指示を受け付けてSCANNER114を制御する。
【0071】
そして、ファックス通信する原稿を送信画像データとしてSCANNER114で読み取り(ステップS401)、HDD110に読みとった画像データを記録する。
【0072】
次いで、宛先番号に対してファックス発信を開始する(ステップS402)。IP−FAXの場合は、SIPの呼制御を開始する処理が発信処理に該当する。つまり、IP−FAX制御308の処理ソフトウェアが動作してSIP304のプロトコルを制御し、宛先との接続を確立するプロトコル処理を行う。
【0073】
次いで、宛先との接続に成功したか否か判別する(ステップS403)。ステップS403の判別の結果、宛先との接続に成功しなかったときは(ステップS403でNO)、リダイヤルするために、ステップS402に戻る。
【0074】
一方、ステップS403の判別の結果、宛先との接続に成功したときは(ステップS403でYES)、遅延が必要な場合には遅延処理を行うためのデータ送信遅延処理を行う(ステップS404)。このデータ送信遅延処理については後述する。
【0075】
次いで、HDD110に記録していた画像データをファックスデータとして送信する(ステップS405)。このステップS405は、データを送信する送信手段に対応する。
【0076】
データ送信時は、JOB制御部317にてHDD110から送信画像データを読み取ってIP−FAX制御308の処理ソフトウェアに渡す。IP−FAX制御308は、T.38(305)のプロトコルで渡された画像データをパケット化しデバイスドライバ302にパケットデータを渡す。デバイスドライバ302はプロトコルスタック303を経由して渡されたパケットデータを、NIC104を制御してIP網に送信する。
【0077】
そして、ファックスデータ送信完了後、ファックス接続を切断し(ステップS406)、本処理を終了する。
【0078】
切断も接続と同様、SIPの呼制御を終了する処理が該当する。つまり、IP−FAX制御308の処理ソフトウェアが動作してSIP304のプロトコルを制御し、宛先との接続状態を切断するプロトコル処理を行う。
【0079】
上記図7の処理において、ステップS401〜ステップS404が終了するまでの間は、データの送信をキャンセル可能となっている。例えば、PANEL106においてユーザがキャンセルを示す指示を入力すると、割り込みが入り、ファックス送信処理は終了するようになっている。もちろん、ステップS404以降もデータの送信をキャンセル可能とするようにしてもよい。
【0080】
図8は、図7におけるステップS404のデータ送信遅延処理の手順を示すフローチャートである。
【0081】
図8において、データ送信遅延処理部404は、上述した遅延設定記憶テーブル600に記憶された遅延設定情報をRAM103に読み込む(ステップS501)。
【0082】
次いで、RAM103上に読み込んだ遅延設定記憶テーブル600における遅延有/無601を参照し、遅延設定が有りか否か判別する(ステップS502)。
【0083】
ステップS502の判別の結果、遅延設定が無のとき(ステップS502でNO)、遅延処理を行わず、本処理を終了する。
【0084】
一方、ステップS502の判別の結果、遅延設定が有のとき(ステップS502でYES)、上述したアドレス帳900をRAM103に読み込む(ステップS503)。次いで、宛先がアドレス帳900に登録済みか否か判別する(ステップS504)。具体的には、アドレス帳900の宛先電話番号903と現在発信している宛先の電話番号とを比較し、一致するものがあるかを確認する処理を行う。
【0085】
ステップS504の判別の結果、宛先がアドレス帳900に登録済みのとき(ステップS504でYES)、登録済み宛先時遅延605の設定値を参照し、登録済みの宛先に対して遅延する設定か否か判別する(ステップS505)。
【0086】
ステップS505の判別の結果、設定が遅延無、すなわち遅延する設定ではないときは(ステップS505でNO)、遅延処理を行わず、本処理を終了する。このように、予め定められた宛先(登録済みの宛先)に対し、遅延を行うか否かが選択可能となっている。
【0087】
一方、ステップS505の判別の結果、遅延する設定のとき(ステップS505でYES)、遅延時間を固定する設定か否か判別する(ステップS506)。これは、遅延設定記憶テーブル600における固定/自動602を参照することで判別できる。また、ステップS504の判別の結果、宛先がアドレス帳900に登録済みではないときも(ステップS504でNO)、上記ステップS506に進む。
【0088】
ステップS506の判別の結果、遅延時間を固定する設定のときは(ステップS506でYES)、固定遅延時間603に示される時間だけウェイトし(ステップS507)、本処理を終了する。
【0089】
一方、ステップS506の判別の結果、遅延時間を固定しない設定のときは(ステップS506でNO)、宛先への送信が同報同時配信による送信か否か判別する(ステップS508)。
【0090】
同報同時送信でファックス通信を行った場合には、図3のJOB制御307が同報同時配信JOBとしてJOBを受け付けて、同一グループIDの各宛先毎にファックス通信JOBを開始する。従って、JOB制御307のアプリケーションタスクに問い合わせを行うことにより、同報同時配信中か否かを判別できる。
【0091】
ステップS508の判別の結果、送信が同報同時配信による送信ではないとき(ステップS508でNO)、遅延設定記憶テーブル600におけるアナログ回線FAX接続時間計測値604に示される時間だけウェイトし(ステップS509)、本処理を終了する。
【0092】
一方、ステップS508の判別の結果、送信が同報同時配信による送信のとき(ステップS508でYES)、同報同時送信時最遅接続完了トリガ606が有か否か判別する(ステップS510)。
【0093】
ステップS510の判別の結果、同報同時送信時最遅接続完了トリガ606が有ではないとき(ステップS510でNO)、上記ステップS509に進む。
【0094】
一方、ステップS510の判別の結果、同報同時送信時最遅接続完了トリガ606が有のとき(ステップS510でYES)、アナログ回線ファックス接続処理中か否か判別する(ステップS511)。同報同時送信中は、それぞれの宛先別の接続処理を行うIP−FAX制御308やG3−FAX制御309のアプリケーションがオペレーティングシステム301上でタスクとして切り替えられながら動作する。そして、各々の通信の接続状態がIP−FAX制御308やG3−FAX制御309のタスクからJOB制御307のタスクに通知される。よって、アナログ回線FAXが現在接続処理中か否かを、JOB制御307のタスクに問い合わせを行うことによって判別する。
【0095】
ステップS511の判別の結果、アナログ回線ファックス接続処理中ではないとき(ステップS511でNO)、上記ステップS509に進む。
【0096】
一方、ステップS511の判別の結果、アナログ回線ファックス接続処理中のとき(ステップS511でYES)、アナログ回線ファックスが接続するまでウェイトし(ステップS512)、本処理を終了する。アナログ回線ファックスが接続したか否かは、同図に示されるように接続完了通知により認識できる。このように、アナログ回線を経由したファックス通信で、宛先への発呼から、モデムネゴシエーションが完了するまでに要した時間のうちで最も長い時間を遅延時間として用いるようになっている。
【0097】
上記ステップS507、509は、宛先にデータを送信可能になってから、ROM102により記録された遅延時間だけデータの送信を遅延させる遅延手段に対応する。
【0098】
図8の処理により、遅延設定記憶テーブル600に設定された遅延設定情報に従い、ファックスデータの送信開始を遅延させることにより、従来のアナログ回線と同等の時間的猶予を実現できる。その結果として、ユーザにアナログ回線使用時と同等の使い勝手でキャンセルする時間的猶予と判断猶予を与えることができる。
【0099】
また、図8に示されるように、遅延時間として、計測された時間(アナログ回線FAX接続時間計測値604)、及び予め設定された遅延時間(固定時間)のいずれか一方を用いることが可能である。
【0100】
図7、図8の処理によれば、宛先にデータを送信可能になってから、ROM102により記録された遅延時間だけデータの送信を遅延させ(ステップS507,509)、遅延の後に、データを送信する(ステップS405)。その結果、IP網を経由するファックス通信で、アナログ回線を経由するファックス通信のように、データの送信前に通信をキャンセル可能な猶予期間を提供できる。
【0101】
図9は、図2におけるCPU101により実行される接続時間計測処理の手順を示すフローチャートである。
【0102】
この処理は、遅延設定記憶テーブル600におけるアナログ回線FAX接続時間計測値を求めるための処理であり、宛先への発呼から、モデムネゴシエーションが完了するまでに要する時間を計測する計測手段に対応する。また、図8に示される接続完了通知のタイミングを示す処理でもある。
【0103】
アナログ回線FAXの通信制御は、G3−FAX制御309のアプリケーションソフトによって実行される。従って、この処理はG3−FAX制御309によって実行される。
【0104】
図9において、アナログ回線ファックスの発呼処理の開始直前に接続時間の計測を開始する(ステップS801)。具体的には発呼直前の時刻をMFP10に搭載された時計クロックデバイスから取得し、それをTaとしてRAM103に記憶しておく。
【0105】
次いで、アナログ回線ファックス発呼処理を行う(ステップS802)。ここでは宛先電話番号にダイヤルアップを行う。
【0106】
そして、呼接続が成功したか否か判別する(ステップS803)。ステップS803の判別の結果、呼接続が成功しなかったときは(ステップS803でNO)、リダイヤルするために、ステップS802に戻る。
【0107】
一方、ステップS803の判別の結果、呼接続が成功したときは(ステップS803でYES)、次にモデムネゴシエーションを開始する(ステップS804)。モデムネゴシエーションでは通信速度や通信方式のネゴシエーションを行う。
【0108】
モデムネゴシエーションが完了すると(ステップS805)、ファックスデータ送信の準備が完了するため、このタイミングで計測を終了する(ステップS806)。具体的にはモデムネゴシエーションが完了した時点で上記時計クロックデバイスから時刻を取得し、それをTbとしてRAM103に記憶する。
【0109】
接続終了時刻であるTbから接続開始時刻であるTaを引けば、その計算結果がアナログ回線FAX接続時間となる。この計算結果をTwとして遅延設定記憶テーブル600のアナログ回線FAX接続時間計測値604に記憶する。
【0110】
次いで、宛先への送信が同報同時配信による送信か否か判別する(ステップS808)。ステップS808の判別の結果、送信が同報同時配信による送信ではないとき(ステップS808でNO)、本処理を終了する。
【0111】
一方、ステップS808の判別の結果、送信が同報同時配信による送信のとき(ステップS808でNO)、接続完了通知をJOB制御307のタスクに行い(ステップS809)、本処理を終了する。
【0112】
このようにして、アナログ回線接続時には、その接続時間の計測と記憶、および、同報同時配信中の接続完了の通知を実現する。
【0113】
(他の実施の形態)
本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムコードを読み出して実行する処理である。この場合、そのプログラム、及び該プログラムを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【符号の説明】
【0114】
10,13,14 MFP
11 IP網
12 公衆電話網
15,16 ファックス
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 NIC
110 HDD
112 NCU
300 アプリケーション
307 JOB制御
308 IP−FAX制御
309 G3−FAX制御
600 遅延設定記憶テーブル
900 アドレス帳

【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行う通信装置であって、
ファックス通信の宛先へ前記データを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間が記録された記録手段と、
前記宛先に前記データを送信可能になってから、前記記録手段により記録された遅延時間だけ前記データの送信を遅延させる遅延手段と、
前記遅延手段による遅延の後に、前記データを送信する送信手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記通信装置は、アナログ回線を経由するファックス通信も可能であり、
前記アナログ回線を用いたファックス通信において、前記宛先への発呼から、モデムネゴシエーションが完了するまでに要する時間を計測する計測手段を備え、
前記遅延時間として、前記計測手段により計測された時間を用いることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記IP網を経由するファックス通信、及び前記アナログ回線を経由するファックス通信を用いた同報同時送信の場合には、前記アナログ回線を経由したファックス通信で、前記宛先への発呼から、モデムネゴシエーションが完了するまでに要した時間のうちで最も長い時間を前記遅延時間として用いることを特徴とする請求項2記載の通信装置。
【請求項4】
前記遅延時間として、前記計測された時間、及び予め設定された遅延時間のいずれか一方を用いることを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
予め定められた宛先に対し、前記遅延手段による遅延を行うか否かが選択可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行うともに、ファックス通信の宛先へ前記データを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間が記録された記録手段を備えた通信装置の制御方法であって、
前記宛先に前記データを送信可能になってから、前記記録手段により記録された遅延時間だけ前記データの送信を遅延させる遅延ステップと、
前記遅延ステップによる遅延の後に、前記データを送信する送信ステップと
を備えたことを特徴とする制御方法。
【請求項7】
IP網を経由するファックス通信によりデータの送信を行うともに、ファックス通信の宛先へ前記データを送信する前に、当該データの送信をキャンセル可能とするための遅延時間が記録された記録手段を備えた通信装置の制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記制御方法は、
前記宛先に前記データを送信可能になってから、前記記録手段により記録された遅延時間だけ前記データの送信を遅延させる遅延ステップと、
前記遅延ステップによる遅延の後に、前記データを送信する送信ステップと
を備えたことを特徴とするプログラム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−115620(P2013−115620A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260229(P2011−260229)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】