説明

通信装置用の通信規則適用方法および装置並びに通信装置

【課題】コンテンツ転送要求の送出からコンテンツを含む応答が返されるまでの時間を短縮するための通信装置における通信規則適用技術を提供する。
【解決手段】クライアントからのコンテンツ転送要求を少なくとも一つの通信装置が宛先のコンテンツサーバに中継する過程で、コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツをクライアントへ転送する処理に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得して、少なくとも一つの通信装置に保持させ、コンテンツを含む応答が少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、複数の通信規則候補の中から、各通信装置において転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択し、各通信装置において選択した通信規則に基づいて、転送対象のコンテンツについて転送の可否を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのパソコンなどのクライアントがWEBサーバなどからコンテンツをダウンロードする際にコンテンツの転送を行う通信装置において、コンテンツを転送する際の通信規則適用方法および装置並びに通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザのパソコンなどのクライアントからのリクエストは、通常、一つ以上の通信装置(例えばルータ)を介してWEBサーバなどのサーバ装置に渡され、このリクエストに対するレスポンスとして、サーバ装置から要求されたコンテンツがクライアントを宛先として転送される。
【0003】
クライアントからのリクエストをサーバ装置に転送し、また、サーバ装置からのレスポンスをクライアントに転送する通信経路上の各通信装置では、個々のリクエストに対応するセッションに、通信処理のための処理リソース(例えば、CPUのスレッドリソース)を割り当てて処理を行っている。
【0004】
HTTP−GETリクエストなどのコンテンツ転送要求に対して、コンテンツサーバからコンテンツを含む応答が返される際に、通信装置は、通信規則に基づいて、このコンテンツが要求元のクライアントへの転送が許可されているか否かを判定する。
【0005】
この判定を行うために、通信装置は、転送対象のコンテンツから抽出したメタ情報と要求元のクライアントの識別情報とに基づいて通信規則サーバに問い合わせを行い、最新の通信規則を取得している。このような従来の通信装置では、コンテンツの転送は、通信規則サーバとの間のやり取りが完了するまで保留される。
【0006】
一方、コンテンツ転送要求がコンテンツサーバに転送される段階で、要求元のクライアントと要求先のコンテンツサーバとの組み合わせに対応する通信規則を通信規則サーバに問い合わせ、取得した通信規則に基づいてリクエストの転送の可否を判定する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−228550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
コンテンツサーバからコンテンツが返される際に、このコンテンツの転送を行う通信装置が通信規則サーバに最新の通信規則を問い合わせて適用する方法では、メタ情報を用いて、コンテンツごとにきめ細かく転送の可否を判定することができる。その反面、通信規則の問い合わせを待ち合わせてコンテンツの転送処理は保留されるので、コンテンツ転送要求への応答として、コンテンツがクライアントに返されるまでの時間が長くなってしまう。
【0008】
一方、特許文献1の技術では、コンテンツの内容にかかわらず、クライアントとコンテンツサーバとの組み合わせによって一律にコンテンツ転送要求の転送の可否が判定されてしまう。また、通信規則サーバに通信規則を問い合わせている間はコンテンツ転送要求の転送が保留されるので、コンテンツ転送要求の転送に要する時間が長くなり、コンテンツ転送要求の送出からコンテンツを含む応答が返されるまでの時間を短縮することはできない。
【0009】
また、予め通信規則サーバから通信規則を取得して通信装置内に保持しておくことも考えられるが、保持された通信規則が最新であることを保証することができない。
【0010】
本発明は、コンテンツ転送要求の送出からコンテンツを含む応答が返されるまでの時間を短縮することを可能とするための通信装置用の通信規則適用方法および装置並びにこの方法により通信規則を適用する通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的は、以下に開示する通信規則適用方法および装置並びにこの方法により通信規則を適用する通信装置によって達成することができる。
【0012】
第1の観点の通信規則適用方法は、クライアントからのコンテンツ転送要求を少なくとも一つの通信装置が宛先のコンテンツサーバに中継する過程で、コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツをクライアントへ転送する処理に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得して、少なくとも一つの通信装置に保持させ、コンテンツを含む応答が少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、複数の通信規則候補の中から、各通信装置において転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択し、各通信装置において選択した通信規則に基づいて、転送対象のコンテンツについて転送の可否を判定する。
【0013】
このように構成された通信規則適用方法では、コンテンツ転送要求が少なくとも一つの通信装置を介してコンテンツサーバに転送される過程で、例えば、要求元のクライアントとコンテンツサーバとの間のコンテンツ転送にかかわる複数の通信規則候補が通信規則サーバから取得されて各通信装置に保持させられる。つまり、コンテンツサーバからコンテンツがクライアントに転送されるときには、このコンテンツのクライアントへの転送について規定した通信規則を含む通信規則候補が各通信装置に保持させて準備しておくことができる。したがって、コンテンツの転送の際には、例えば、コンテンツから抽出したメタ情報に基づいて、既に保持されている通信規則候補の中からコンテンツに対応する通信規則を選択し、この通信規則に従って転送の可否を判定することができる。これにより、コンテンツの転送過程で通信規則サーバから通信規則を取得する手順を不要とすることができる。
【0014】
第2の観点の通信規則適用装置は、クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継する少なくとも一つの通信装置に、コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツのクライアントへの転送に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得して配信する配信手段と、コンテンツを含む応答が少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、複数の通信規則候補の中から、各通信装置において転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段とを備える。
【0015】
このように構成された通信規則適用装置では、コンテンツ転送要求が少なくとも一つの通信装置を介してコンテンツサーバに転送される過程で、配信手段により、上述したような複数の通信規則候補を各通信装置に配信することにより、コンテンツの転送に先立って、各通信装置にこれらの通信規則候補を準備しておくことができる。そして、各通信装置によってコンテンツが転送される際には、これらの通信規則候補の中から選択手段によってコンテンツに対応する通信規則が選択され、判定手段による判定処理に供されるので、コンテンツの転送過程で通信規則サーバから通信規則を取得する手順を不要とすることができる。
【0016】
第3の観点の通信装置は、クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継し、コンテンツ転送要求に対してコンテンツサーバから返されるコンテンツを含んだ応答をクライアントに中継する中継手段と、コンテンツ転送要求が中継手段によって中継される過程で、コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツのクライアントへの転送に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得する取得手段と、コンテンツを含む応答が少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、複数の通信規則候補の中から、転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段とを備える。
【0017】
このように構成された通信装置では、コンテンツ転送要求が中継手段によって転送される過程で、取得手段により、上述したような複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得することにより、コンテンツの転送に先立って、これらの通信規則候補を準備しておくことができる。そして、中継手段によってコンテンツが転送される際には、これらの通信規則候補の中から選択手段によってコンテンツに対応する通信規則が選択され、判定手段による判定処理に供されるので、コンテンツの転送過程で通信規則サーバから通信規則を取得する手順を不要とすることができる。
【0018】
第4の観点の通信装置は、クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継し、コンテンツ転送要求に対してコンテンツサーバから返されるコンテンツを含んだ応答をクライアントに中継する中継手段と、中継手段によって中継されるコンテンツ転送要求に自装置以外の識別情報が含まれている場合に、通信規則サーバに対して、識別情報収集手段によって収集された識別情報で示される少なくとも一つの通信装置それぞれに複数の通信規則候補の配信を依頼する依頼手段と、中継手段によって中継されるコンテンツ転送要求に自装置以外の識別情報が含まれていない場合に、自装置を特定する識別情報をコンテンツ転送要求に付加する付加手段と、通信規則サーバから配信される複数の通信規則候補を保持する保持手段と、コンテンツを含む応答が少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、複数の通信規則候補の中から、転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段とを備える。
【0019】
このように構成された通信装置では、中継手段によって中継されるコンテンツ転送要求に自装置以外の識別情報が含まれていない場合には、付加手段により、自装置の識別情報がコンテンツ転送要求に付加され、一方、自装置以外の識別情報がコンテンツ転送要求に含まれている場合には、依頼手段により、通信規則サーバに対して、識別情報で示される通信装置それぞれへの上述した通信規則候補の配信が依頼される。この依頼に応じて、通信規則サーバから各通信装置に配信された複数の通信規則候補は、保持手段に保持され、中継手段によってコンテンツが転送される際には、これらの通信規則候補の中から選択手段によってコンテンツに対応する通信規則が選択され、判定手段による判定処理に供される。したがって、コンテンツの転送過程で通信規則サーバから通信規則を取得する手順を不要とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
上述した各観点の通信規則適用方法および装置並びにこの方法により通信規則を適用する通信装置によれば、コンテンツ転送要求の転送と並行して、通信規則サーバから通信規則候補を取得しておき、コンテンツを転送する際に、これらの通信規則候補の中から転送されるコンテンツの内容に対応するものを選択することにより、コンテンツの転送過程で通信規則サーバから通信規則を取得する手順を不要とすることができる。
【0021】
これにより、コンテンツ転送要求の転送過程やコンテンツの転送過程で、通信規則サーバへの問い合わせのために、コンテンツ転送要求やコンテンツの転送処理を待ち合わせる必要がなくなるので、コンテンツ転送要求の送出からコンテンツを含む応答が返されるまでの時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
図1に、通信装置の一実施形態を示す。
【0024】
図1に示す通信装置(例えば、ルータ)210aにおいて、IPフォワーディング機能部211に到来したIPパケットのうち、HTTPプロトコルに従ってコンテンツの授受を行うためのIPパケットは、IPフィルタ機能部212を介してHTTPプロキシ機能部213に渡される。例えば、クライアント201から送出されたHTTP−GETリクエストは、IPフォワーディング機能部211によって宛先となるコンテンツサーバ202側の通信装置210bに中継される前に、IPフィルタ機能部212を介してHTTPプロキシ機能部213の処理に供される。
【0025】
このHTTPプロキシ機能部213では、IPフィルタ機能部212から渡されるIPパケットに基づいて、コンテンツの転送などをHTTPプロトコルに従って行うための処理が行われる。
【0026】
IPフィルタ機能部212から渡されるコンテンツ転送要求(HTTP−GETリクエスト)は、このHTTPプロキシ機能部213により、HTTPプロトコルに従ってIPフォワーディング機能部211を介して次の通信装置210bに転送される。このとき、HTTPプロキシ機能部213は、コンテンツ転送要求に示された要求元を特定する情報(例えば、送信元IPアドレス)を通信規則管理機能部215に渡して、後述する通信規則の取得処理に供する。
【0027】
一方、コンテンツサーバ202から返されるコンテンツを含む応答を転送する際に、HTTPプロキシ機能部213は、受け取ったコンテンツをサーチエンジン機能部214を介して通信規則管理機能部215に渡し、この通信規則管理機能部215による通信規則適用結果に応じて、コンテンツを転送するためのIPパケットをIPフォワーディング機能部211を介して転送する処理あるいは廃棄する処理を実行する。
【0028】
図1に示したサーチエンジン機能部214は、HTTPプロキシ機能部213から渡されたコンテンツの内容を参照し、コンテンツの種別(例えば、テキストか画像かなど)や著者、作成日時などを示すメタ情報を抽出し、通信規則管理機能部215および通信ログ管理機能部216の処理に供する。
【0029】
図1に示した通信規則管理機能部215において、通信規則候補取得部221は、HTTP−GETリクエストなどのコンテンツ転送要求がHTTPプロキシ機能部213を介して中継される際に、通信規則サーバ203に対して、HTTPプロキシ機能部213から渡された送信元のIPアドレスで示されるクライアントに適用される複数の通信規則を問い合わせる(図2参照)。
【0030】
通信規則サーバ203には、図3(a)に示すように、コンテンツの転送先となる各クライアントに対応して、様々なメタ情報で示されるコンテンツに関する通信規則が蓄積されている。図3(a)に示した例では、クライアント201に割り当てられたIPアドレス(C1)に対応して、コンテンツ種別が「カルテ」と「超音波診断結果」であるコンテンツについては転送を許可し、「X線画像」であるコンテンツは転送禁止とする旨の通信規則が格納されている。
【0031】
したがって、上述した通信規則候補取得部221は、送信元のクライアント201のIPアドレス(C1)を指定した問い合わせを通信規則サーバ203に対して行うことにより、上述したような様々なメタ情報について、それぞれ転送許可あるいは転送禁止を示す最新の通信規則を、後にコンテンツサーバ202から転送されるコンテンツに対して適用する通信規則の候補として取得することができる。
【0032】
図2に示したように、通信装置210a(図2において、通信装置Raとして示す)による通信規則サーバ203に対する通信規則問い合わせは、HTTP−GETリクエストの中継と並行して、あるいは、HTTP−GETリクエストが通信装置210bに中継された後に、IPフォワーディング機能部211を介して行われる。そして、この通信規則問い合わせに応じて、通信規則サーバ203から返された通信規則候補は、同様に、IPフォワーディング機能部211を介して通信規則候補取得部221に渡され、その後、図1に示した通信規則保持部222に保持される。
【0033】
また、通信装置210aと同様に構成された通信装置210b(図2において、通信装置Rbとして示す)は、通信装置210aから中継されたHTTP−GETリクエストをコンテンツサーバ202(図2において、コンテンツサーバS1として示す)に中継する処理と並行して、同様の通信規則問い合わせを通信規則サーバ203に対して行い、通信規則候補を取得する。
【0034】
このように、HTTP−GETリクエストを中継する際に、送信元のIPアドレスに対応する通信規則候補を通信規則サーバ203に対して問い合わせることにより、コンテンツサーバ202からコンテンツを含む応答が返されるのに先立って、通信装置210a,210b内に転送対象のコンテンツに適用される可能性のある最新の通信規則候補を保持しておくことができる。
【0035】
その後、コンテンツサーバ202からコンテンツを含む応答が返されたときに、通信規則選択部223により、このコンテンツの内容を示す情報としてサーチエンジン機能部214によって抽出されたメタ情報に基づいて、通信規則候補保持部222に保持された通信規則候補の中から適切な通信規則が選択され、転送判定部224の処理に供される。
【0036】
このように、各通信装置210a,210bに備えられる通信規則管理機能部215によって通信規則サーバ203からそれぞれ通信規則候補を取得し、コンテンツを含む応答を転送する際に、コンテンツから抽出したメタ情報に基づいて、適切な通信規則を選択して適用するように通信規則適用装置を構成することができる。
【0037】
このように構成された通信規則適用装置では、コンテンツを含む応答の転送の際には通信規則サーバ203にアクセスする必要がなく、既に通信規則保持部222に保持された通信規則候補からメタ情報に対応する通信規則を選択し、この通信規則に基づいて、転送判定部224により、転送の可否を判定すればよい。したがって、通信規則を問い合わせを待ち合わせてコンテンツの転送を保留することなく、コンテンツを含む応答を迅速に転送することができる。
【0038】
これにより、コンテンツ転送要求の送出からコンテンツを含む応答が返されるまでの時間を短縮することが可能となる。
【0039】
また、上述した転送判定部224による判定結果は、HTTPプロキシ機能部213に通知されるとともに通信ログ管理機能部216にも通知される。この通信ログ管理機能部216には、コンテンツの要求元のクライアントを示す情報やコンテンツのメタ情報も通知されており、この通信ログ管理機能部216により、これらの情報を含むログ情報が生成されて、IPフォワーディング機能部211を介してログサーバ204に蓄積される。
【0040】
なお、図1、図2に示した例に限らず、クライアント201から送出されたHTTP−GETリクエストが、3つ以上の通信装置210を介してコンテンツサーバ202に到達する場合や単一の通信装置210によって中継される場合にも、上述したような通信規則適用装置を実現することができる。
【0041】
また、HTTPプロキシ機能部213に備えられているIPパケットを編集する機能を利用して、一つの通信装置210において抽出されたメタ情報を他の通信装置210と共有することも可能である。
【0042】
例えば、図4に示すように、パケット判別部231によってコンテンツを含む応答と判別されたIPパケットのHTTPヘッダに含まれているメタ情報を検出するメタ情報検出部234と、IPパケットのHTTPヘッダにサーチエンジン機能部214から受け取ったメタ情報を付加するメタ情報付加部235とを備えて、コンテンツを含む応答にメタ情報を含めて転送することができる。
【0043】
図5に、コンテンツ転送動作を表す流れ図を示す。また、図7に、コンテンツ転送動作を説明するシーケンス図を示す。
【0044】
図7に示すように、コンテンツサーバ202からコンテンツを含む応答が返されると、通信装置Rbに備えられたHTTPプロキシ機能部213のパケット判別部231を介してIPパケットがメタ情報検出部234に渡され(図5のステップ301)、このIPパケットのHTTPヘッダが参照される(ステップ302)。この場合に、IPパケットのHTTPヘッダにはメタ情報は含まれていないので(ステップ303の否定判定)、コンテンツはサーチエンジン機能部214に渡され、メタ情報の抽出処理が行われる(ステップ304)。このとき、サーチエンジン機能部214によって抽出されたメタ情報は、例えば、個々のコンテンツを識別するためのURIに対応して、メタ情報テーブル217に保持される(ステップ305)。
【0045】
次いで、通信規則管理機能部215により、上述したようにして保持された通信規則候補からこのメタ情報に対応する通信規則が選択され(ステップ306)、選択された通信規則に基づいて、上述したコンテンツの転送の可否が判定される(ステップ307)。
【0046】
コンテンツの転送が許可された場合に(ステップ307の肯定判定)、コンテンツの転送にかかわるIPパケットは、HTTPプロキシ機能部213の転送・廃棄部336を介してメタ情報付加部235に渡され、サーチエンジン機能部214によって抽出されたメタ情報をHTTPヘッダに付加する処理が行われる(ステップ308)。
【0047】
このようにして、HTTPヘッダにメタ情報を付加した後にコンテンツをIPフォワーディング機能部211による転送処理に供することにより(ステップ309)、コンテンツを最初に受け取った通信装置Rbにおいて抽出されたメタ情報を、コンテンツとともに通信装置Raに渡すことができる(図7参照)。なお、ステップ306において、コンテンツの転送を禁止する旨の通信規則が選択された場合は、ステップ307の否定判定からステップ310に進み、転送・廃棄部336により、パケットの廃棄処理が行われる。
【0048】
上述したようにして、メタ情報が付加されたコンテンツを受け取った通信装置(例えば、図7の通信装置Ra)では、図6のステップ303の肯定判定からステップ311に進み、図4に示したメタ情報検出部234によってHTTPヘッダからメタ情報が抽出され、この抽出されたメタ情報がメタ情報テーブル217に保持されて、以降の通信規則適用処理に供される(ステップ306〜ステップ310)。
【0049】
このように、最初にコンテンツの転送を行った通信装置によって転送対象のコンテンツから抽出したメタ情報をコンテンツに付加して次の通信装置に中継することにより、以降にコンテンツを中継する通信装置では、コンテンツからメタ情報を抽出する処理を省略し、HTTPヘッダに付加されたメタ情報を利用することができる。
【0050】
これにより、コンテンツサーバ202から返されるコンテンツの転送に要する時間を一層短縮することができる。
【0051】
更に、上述したようにして、コンテンツを順次に転送していく過程で、コンテンツの転送にかかわった各通信装置で共有されたメタ情報を、以降の通信規則候補の取得処理に利用することもできる。
【0052】
図6に、リクエスト転送動作を表す流れ図を示す。また、図8に、リクエスト転送動作を説明するシーケンス図を示す。
【0053】
例えば、図8に示すように、HTTP−GETリクエストが受け付けられ、IPフォワーディング機能部211によって転送される過程で(ステップ321,323)、図4に示したHTTPプロキシ機能部213のリクエスト転送制御部232により、転送対象のコンテンツを示すURIを抽出し(ステップ322)、要求元のクライアント201を示す送信元IPアドレスとともに通信規則管理機能部215に渡して、通信規則候補の取得に利用することができる。
【0054】
このとき、通信規則管理機能部215では、メタ情報テーブル217を参照し(図6のステップ324、図8参照)、受け取ったURIに対応するメタ情報が保持されていた場合に(ステップ325の肯定判定)、上述した送信元IPアドレスとともに、検索したメタ情報を指定して通信規則サーバ203に対する問い合わせを行うことにより(図8参照)、メタ情報で絞り込んだ通信規則候補を取得することができる(ステップ328、図8参照)。
【0055】
一方、メタ情報テーブル217にURIに対応するメタ情報が保持されていなかった場合には(ステップ325の否定判定)、通信規則管理機能部215により、送信元IPアドレスに対応する通信規則候補が取得される。
【0056】
いずれの場合にも、取得された通信規則候補は、通信規則管理機能部215内に保持され(ステップ327)、コンテンツ転送時の通信規則適用処理に供される。
(実施形態2)
次に、コンテンツ転送要求を中継する通信装置のいずれかが代表して、通信規則サーバ203に問い合わせを行って、各通信装置に通信規則候補を配信させる方法について説明する。
【0057】
図9に、通信装置の別実施形態を示す。
【0058】
図9に示したHTTPプロキシ機能部213は、リクエスト転送制御部232内に、コンテンツ転送要求(HTTP−GETリクエストなど)に付加された通信装置のIPアドレスを検出するアドレス検出部237と、コンテンツ転送要求を転送する際に自装置のIPアドレスをリクエストの転送にかかわった通信装置の履歴として付加するアドレス付加部238とを備えている。
【0059】
また、図9に示した通信規則管理機能部215は、上述したアドレス検出部237から自装置以外のIPアドレスを検出した旨が通知されたときに、通信規則サーバ203に対して通信規則候補の問い合わせを行う。
【0060】
図10に、リクエスト転送動作を表す流れ図を示す。また、図11に、通信規則候補配信動作を説明するシーケンス図を示す。
【0061】
例えば、図11に示すように、通信装置RaがクライアントC1から受け取ったHTTP−GETリクエストには、このリクエストの転送にかかわった通信装置を示すIPアドレスは含まれていない。このように、図6に示したステップ321と同様にして受け付けられたHTTP−GETリクエストのHTTPヘッダに自装置以外の通信装置を示すIPアドレスが含まれていない場合に(図10のステップ331の否定判定)、アドレス検出部237による検出結果に基づいて、アドレス付加部238により、自装置のIPアドレスをHTTPヘッダに付加する処理が行われる(ステップ332、図11参照)。次いで、図11に示すように、通信装置RaのIPアドレスがHTTPヘッダに含まれたHTTP−GETリクエストが次の通信装置(通信装置Rb)に転送される(ステップ333)。
【0062】
通信装置RaのIPアドレスが含まれたHTTP−GETリクエストが通信装置Rbに到達すると、通信装置Rbに備えられたアドレス検出部237により、上述した通信装置RaのIPアドレスが検出される(ステップ331の肯定判定)。
【0063】
この場合に、アドレス付加部238は、HTTP−GETリクエストをそのままIPフォワーディング機能部211に渡してコンテンツサーバ202に転送させる(ステップ334)。また、このとき、通信規則管理機能部215は、アドレス検出部237から検出された通信装置のIPアドレス(例えば、通信装置RaのIPアドレスRa)を受け取り、このIPアドレスと自装置のIPアドレスとを配信先として、通信規則サーバ203に対する問い合わせを行い、上述した配信先への通信規則候補の配信を依頼する(ステップ335)。
【0064】
このようにして通信装置Rbによって行われた配信依頼に応じて、通信規則サーバ203により、通信装置Raと通信装置Rbとの双方に通信規則候補が配信され、各通信装置の通信規則管理機能部215内に通信規則候補が保持される(図11参照)。
【0065】
図11に示したように、クライアントC1からのHTTP−GETリクエストが、2台の通信装置Ra,RbによってコンテンツサーバS1に中継される構成では、上述したように、HTTPヘッダに付加された別の通信装置のIPアドレスを検出した通信装置が、通信規則サーバ203への問い合わせを行うようにすることで、コンテンツ転送要求を中継する通信装置のいずれかが代表して通信規則サーバ203への問い合わせを行う構成を実現することができる。
【0066】
このようにして、一つの通信装置が代表して通信規則サーバ203への問い合わせを行うことにより、問い合わせを実行しないほうの通信装置の処理負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】通信装置の一実施形態を示す図である。
【図2】通信規則適用動作を説明するシーケンス図である。
【図3】通信規則およびメタ情報の例を示す図である。
【図4】コンテンツ転送制御部の詳細構成を示す図である。
【図5】コンテンツ転送動作を表す流れ図である。
【図6】リクエスト転送動作を表す流れ図である。
【図7】コンテンツ転送動作を説明するシーケンス図である。
【図8】リクエスト転送動作を説明するシーケンス図である。
【図9】通信装置の別実施形態を示す図である。
【図10】リクエスト転送動作を表す流れ図である。
【図11】通信規則候補配信動作を説明するシーケンス図である。
【符号の説明】
【0068】
201 クライアント
202 コンテンツサーバ
203 通信規則サーバ
204 ログサーバ
210 通信装置
211 IPフォワーディング機能部
212 IPフィルタ機能部
213 HTTPプロキシ機能部
214 サーチエンジン機能部
215 通信規則管理機能部
216 通信ログ管理機能部
217 メタ情報テーブル
221 通信規則候補取得部
222 通信規則候補保持部
223 通信規則選択部
224 転送判定部
231 パケット判別部
232 リクエスト転送制御部
233 コンテンツ転送制御部
234 メタ情報検出部
235 メタ情報付加部
236 転送・廃棄部
237 アドレス検出部
238 アドレス付加部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアントからのコンテンツ転送要求を少なくとも一つの通信装置が宛先のコンテンツサーバに中継する過程で、
前記コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツを前記クライアントへ転送する処理に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得して、前記少なくとも一つの通信装置に保持させ、
前記コンテンツを含む応答が前記少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、前記複数の通信規則候補の中から、前記各通信装置において前記転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択し、
前記各通信装置において選択した通信規則に基づいて、前記転送対象のコンテンツについて転送の可否を判定する
ことを特徴とする通信装置用の通信規則適用方法。
【請求項2】
クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継する少なくとも一つの通信装置に、前記コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツの前記クライアントへの転送に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得して配信する配信手段と、
前記コンテンツを含む応答が前記少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、前記複数の通信規則候補の中から、前記各通信装置において前記転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、
前記各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段と
を備えたことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信規則適用装置において、
前記配信手段は、前記各通信装置に備えられ、前記通信規則サーバから前記複数の通信規則候補を収集する候補収集手段を備えた
ことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項4】
請求項2に記載の通信規則適用装置において、
前記配信手段は、
前記少なくとも一つの通信装置それぞれを特定する識別情報を収集する識別情報収集手段と、
前記通信規則サーバに対して、前記識別情報収集手段によって収集された識別情報で示される前記少なくとも一つの通信装置それぞれに前記複数の通信規則候補の配信を依頼する依頼手段と備えた
ことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項5】
請求項4に記載の通信規則適用装置において、
前記識別情報収集手段は、前記各通信装置に備えられ、転送される前記コンテンツ転送要求に自装置の識別情報を付加する付加手段を備えた
ことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項6】
請求項5に記載の通信規則適用装置において、
前記依頼手段は、前記各通信装置に備えられ、転送対象の前記コンテンツ転送要求に付加された自装置以外の識別情報を検出したときに、前記通信規則サーバに対する配信依頼を実行させる依頼制御手段を備えた
ことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項7】
請求項2に記載の通信規則適用装置において、
前記コンテンツ転送要求に応じて前記コンテンツサーバから返される応答に含まれるコンテンツから抽出されたメタ情報を収集するメタ情報収集手段を備え、
前記配信手段は、
転送対象の前記コンテンツ転送要求で指定されたコンテンツに対応するメタ情報を前記メタ情報収集手段から検索する検索手段と、
検索されたメタ情報と要求元のクライアントを特定する情報とに基づいて前記通信規則候補を絞り込み、絞り込んだ前記通信規則候補を配信処理に供する絞込み手段とを備えた
ことを特徴とする通信規則適用装置。
【請求項8】
クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継し、前記コンテンツ転送要求に対してコンテンツサーバから返されるコンテンツを含んだ応答を前記クライアントに中継する中継手段と、
前記コンテンツ転送要求が前記中継手段によって中継される過程で、前記コンテンツ転送要求に対する応答として返されるコンテンツの前記クライアントへの転送に関連する可能性のある複数の通信規則候補を通信規則サーバから取得する取得手段と、
前記コンテンツを含む応答が前記少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、前記複数の通信規則候補の中から、前記転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、
前記各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項9】
クライアントからのコンテンツ転送要求を宛先のコンテンツサーバに中継し、前記コンテンツ転送要求に対してコンテンツサーバから返されるコンテンツを含んだ応答を前記クライアントに中継する中継手段と、
前記中継手段によって中継される前記コンテンツ転送要求に自装置以外の識別情報が含まれている場合に、前記通信規則サーバに対して、前記識別情報収集手段によって収集された識別情報で示される前記少なくとも一つの通信装置それぞれに前記複数の通信規則候補の配信を依頼する依頼手段と、
前記中継手段によって中継される前記コンテンツ転送要求に自装置以外の識別情報が含まれていない場合に、自装置を特定する識別情報を前記コンテンツ転送要求に付加する付加手段と、
前記通信規則サーバから配信される前記複数の通信規則候補を保持する保持手段と、
前記コンテンツを含む応答が前記少なくとも一つの通信装置によって転送される際に、前記複数の通信規則候補の中から、前記転送対象のコンテンツの内容に対応する通信規則を選択させる選択手段と、
前記各通信装置において選択した通信規則に基づいてコンテンツの転送の可否を判定させる判定手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−140179(P2010−140179A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314709(P2008−314709)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、独立行政法人情報通信研究機構、「ネットワーク認証型コンテンツアクセス制御技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】