説明

通信装置

【課題】通信ネットワークの経路計算に影響を与えることなく、省電力化のためにトラフィック量に応じてインタフェースの休止・復旧を可能とする通信装置を提供する。
【解決手段】トラフィック量と連携させて装置のインタフェースを休止・復旧制御する通信装置は、インタフェースのトラフィック量を監視し、トラフィック量がないインタフェースを検出し、該当インタフェースに関するルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する。リンク死活監視機能停止後、インタフェースを休止する。その後、当該インタフェースを使用したリンクの接続性を監視することで、リンク死活監視を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークの分野において、通信ネットワークの運用管理技術、および伝送装置の省電力化に寄与する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現状の通信ネットワークでは、通信機器のインタフェースは、流れるトラフィックの量に関わらず常時一定の処理能力で運用されている。そのため、トラフィック量が少ない時間帯においては、通信ネットワーク全体で見ると多くのインタフェースにおいてトラフィック量に対して処理能力が過剰な状態であり、無駄な電力が消費されていることになる。そのような背景から、トラフィック量が少ない場合には、インタフェースを休止させ、無駄な消費電力を抑える技術が提案されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】IEEE802.1az, "Energy Efficient Ethernet" Draft 2.1(現在、規格化検討中の段階であるため、正式な文書はリリースされていない。2010年1月にDraft 2.1からDraft 2.2に更新される予定。
【非特許文献2】M. Gupta and S. Singh, “Greening of the Internet,” Proc. ACM SIGCOMM’03, August 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トラフィック量に応じてインタフェースを休止状態にする場合、そのインタフェースを使用したリンクの通信が途絶してしまう。そのため、ルーティングプロトコルによるリンク死活監視により、そのリンクの帯域が使用不可能と判断され、ルーティング経路の再計算が発生する。トラフィック量の変動が頻繁に発生した場合、インタフェースの休止・復旧も頻繁に発生するようになるため、インタフェースの休止・復旧に応じて、ルーティング経路の計算も頻発し、場合によっては経路計算が収束しなくなる可能性が発生するという課題がある。
【0005】
したがって、本発明は、通信ネットワークの経路計算に影響を与えることなく、省電力化のためにトラフィック量に応じてインタフェースの休止・復旧を可能とする通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を実現するため本発明による通信装置は、トラフィック量と連携させて装置のインタフェースを休止・復旧制御する通信装置において、インタフェースのトラフィック量を監視する手段と、前記監視手段により、トラフィック量がないインタフェースを検出し、該当インタフェースに関するルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する手段と、前記リンク死活監視機能停止後、前記インタフェースを休止する手段と、前記インタフェースを使用したリンクの接続性を監視することで、リンク死活監視を行う手段とを備える。
【0007】
また、前記インタフェースを休止する前に、該当インタフェースの警報マスクを設定する手段をさらに備えることも好ましい。
【0008】
また、休止インタフェースのトラフィック量を監視する手段と、前記監視手段によりトラフィックを検出した休止インタフェースを復旧する手段と、前記休止インタフェース復旧後、前記インタフェースに関するルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を再開する手段とをさらに備えることも好ましい。
【0009】
また、前記休止インタフェースのリンク死活監視機能再開後、該当インタフェースの警報マスクを解除する手段をさらに備えることも好ましい。
【0010】
また、前記リンクの接続性監視は、休止されデータ変調を停止された前記インタフェースから送出される連続光を用いて行われることも好ましい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明は、装置の省電力化のためにトラフィック量と連携させてインタフェースを休止させる場合に、ルーティングプロトコルのリンク死活監視を停止させ、休止インタフェースを使用したリンクの接続性を確認することでリンクの死活監視を行う。また、インタフェースを復旧させる場合には、ルーティングプロトコルのリンク死活監視を起動させ、通常の運用に戻す。これらにより、省電力化のためのインタフェース休止・復旧技術が適用されたネットワークにおいて、インタフェース休止・復旧動作が与えるルーティングプロトコルへの影響を抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の通信装置のブロック図を示す。
【図2】本発明の通信装置のルータ部の基本構成を示す。
【図3】本発明の通信装置の動作フローチャートを示す。
【図4】本発明の通信装置を用いた実施例1を示す。
【図5】本発明の通信装置を用いた実施例2を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の通信装置のブロック図を示す。本通信装置は、制御部1、ルータ部2、クライアント信号送受信部3、光送受信機4、および監視光部5を備える。
【0014】
制御部1は、ルータ部2、クライアント信号送受信部3、光送受信機4、および監視光部5の制御を行う。制御部1は、装置の省電力化のためにライン信号のトラフィック量と連携させて、光送受信機4のインタフェースを休止させる場合に、ルータ部2のルーティングプロトコルのリンク死活監視を停止させる。その時に、休止インタフェースを使用したリンクの接続性を確認することで、リンクの死活監視を行う。また、光送受信機4のインタフェースを復旧させる場合には、ルータ部2のルーティングプロトコルのリンク死活監視を起動させ、通常の運用に戻す。
【0015】
ルータ部2は、IP(Internet Protocol)ルータとして動作する。すなわち、クライアント信号をルーティングテーブルに従って適切なポートに振り分ける機能を有する。また、受信したライン側信号を、適切なクライアントポートに振り分ける機能を有する。図2にルータ部2の基本構成を示す。ルータ部2は、パケット入力部21、フォワーディング部22、ルーティングテーブル(図示せず)、スイッチ部23、出力スケジューリング部24、およびパケット出力部25を備える。
【0016】
パケット入力部21は、入力パケットの検出、および正常性の確認を行い、パケットをフォワーディング部22へ転送する。
【0017】
フォワーディング部22は、パケットのヘッダのあて先アドレスを基に、ルーティングテーブルを参照して、どの出力インタフェースへパケットを出力するか決定する。パケットは出力インタフェースのあて先情報を付与され、スイッチ部23へ転送される。
【0018】
ルーティングテーブルは、パケットの転送先に関する情報を有する。固定ルートを設定しておくスタティックルーティング、もしくは他の通信装置から受けるルーティング情報を用いてルーティング情報を更新するダイナミックルーティングを用いる。
【0019】
スイッチ部23は、パケットの出力インタフェースのあて先情報に基づいて、各出力インタフェースに振り分ける。出力インタフェースでは、複数の入力インタフェースから同時に複数のパケットが転送されてくることがあるため、パケットを蓄積するためのバッファを有する。
【0020】
出力スケジューリング部24は、各パケットの優先度を考慮して、どのような順番でパケットを出力インタフェースへ出力するかを決定する。
【0021】
パケット出力部25は、出力スケジューリング部24の決定に従って、パケットを出力する。
【0022】
クライアント信号送受信部3は、クライアント装置からの信号を受信し、ルータ部へ送信する機能、および光送受信機4からルータ部を介して受信したクライアント信号を、クライアント装置へ送信する機能を有する。
【0023】
光送受信機4は、クライアント信号をライン信号に変換して、伝送路へ送信、およびライン信号を受信して、クライアント信号に変換する機能を有する。また、トラフィック量に応じて、ライン側インタフェースの速度を適応的に制御する機能を有する(参考:非特許文献1)。また、受信ポートは受信光のパワーを測定する機能を有する。
【0024】
監視光部5は、監視光を用いて、対向装置との制御情報を授受する。監視光は、クライアント信号を収容するライン信号とは別信号を用いる。
【0025】
図3に、本発明装置の動作フローチャートを示す。なお、本フローチャートにおいて、ステップ2〜5とステップ7〜9は独立に動作している。
【0026】
ステップ1:本発明装置の動作を開始する。
【0027】
ステップ2:送受信トラフィック量を監視する。インタフェースのバッファを監視、もしくは、MIB(Management Information Base)によるトラフィック量の監視を行う。変化なしの場合、ステップ2のトラフィック量監視へ戻る。アイドル状態(トラフィックが流れない)の場合、ステップ3へ進む。
【0028】
ステップ3:休止するインタフェースを決定し、対向装置に接続されたインタフェースの休止を監視光を介して通知する。ステップ4へ進む。
【0029】
ステップ4:該当インタフェースの警報マスクを設定する。ステップ5へ進む。
【0030】
ステップ5:ルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する。これにより、対向装置間のパケット授受によるリンク死活監視を停止する。ただし、ここでの死活監視停止は、障害とはならない。ステップ6へ進む。
【0031】
ステップ6:該当インタフェースからのデータ変調を停止し、連続光のみを出力する。ステップ10へ進む。
【0032】
ステップ7:監視光部からの監視光を介して対向装置から通知される、インタフェース設定要求がないか確認する。なしの場合、ステップ7へ戻る。ありの場合、ステップ8へ進む。
【0033】
ステップ8:双方向の該当インタフェースの警報マスクを設定する。該当インタフェースの警報マスクが既に設定されている場合は、そのままの状態を保持する。ステップ9へ進む。
【0034】
ステップ9:インタフェースを休止、もしくは復旧させるかどうかについて対向装置からの要求を確認する。復旧の場合、ステップ11へ進む。休止の場合、ステップ5へ進む。
【0035】
ステップ10:監視トラフィック量を基に、データ送信を休止していたインタフェースを復旧させるかどうか確認する。トラフィックが発生している場合は、復旧させる。一方、トラフィックが発生していないアイドル状態の場合は、復旧なしとする。復旧の場合、ステップ11へ進む。復旧なしの場合、ステップ14へ進む。
【0036】
ステップ11:データ送信を休止していたインタフェースを復旧させる。また、ステップ10から来た場合は、対向装置の接続されたインタフェースの復旧を、監視光を介して通知する。ステップ12へ進む。
【0037】
ステップ12:ステップ10から来た場合は、ステップ5において停止していたルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を再開する。ステップ13へ進む。
【0038】
ステップ13:ステップ4もしくはステップ8で設定されたインタフェースの警報のマスクを解除する。ステップ2またはステップ7へ戻る。
【0039】
ステップ14:受信連続光のパワーを監視することにより、リンク接続性を確認する。障害なしの場合、ステップ10へ戻る。障害ありの場合、ステップ15へ進む。
【0040】
ステップ15:送信している連続光を停止する。ステップ16へ進む。
【0041】
ステップ16:ステップ5において停止していたルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を再開する。ステップ17へ進む。
【0042】
ステップ17:ステップ4もしくはステップ8で設定されたインタフェースの警報マスクを解除する。ステップ18へ進む。
【0043】
ステップ18:終了する。
以上のような動作により、省電力化のためのインタフェース休止・復旧技術が適用されたネットワークにおいて、インタフェース休止・復旧動作が与えるルーティングプロトコルへの影響を抑制する。
【0044】
図4に、本発明装置を用いた実施例1を示す。実施例1では、リンクが正常状態から、断状態になった場合の振る舞いを示す。
【0045】
装置1と装置2が対向して接続されている。ライン側の信号、および監視光が光合分波器により、送信光を合波、受信光を分波している。リンクは正常状態とする。
【0046】
まず、各装置はトラフィック量を監視する。ここでは、装置1が、双方向トラフィックがアイドル状態になったインタフェースを検出し、そのインタフェースを休止する決定を下す。
【0047】
休止インタフェースが決定された後、対向装置(装置2)の接続されたインタフェースの休止を、装置1が監視光を介して通知する。装置1は、上記を通知後、休止インタフェースの警報をマスクし、ルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する。これにより、対向装置間のパケット授受によるリンク死活監視を停止するが、ここでの死活監視停止は、障害とはならない。次に、休止インタフェースのデータ変調を停止し、連続光のみを出力する。
【0048】
一方、休止インタフェースの通知を受けた装置2も、休止インタフェースの警報をマスクし、ルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する。次に、休止インタフェースのデータ変調を停止し、連続光のみを出力する。
両装置は、受信光パワーを用いたリンク接続性の確認に移る
【0049】
ここで、リンク断が発生したとする。この時、各装置は受信光パワーの低下により障害を検出する。障害を検出した各装置は、送信光を停止し、ルーティングプロトコルのリンク死活監視機能停止を解除する。これにより、対向装置間のパケット授受によるリンク死活監視が正常に動作しないため、ルーティングレイヤにおいても障害を検出することができる。その後、該当インタフェースの警報マスクを解除し、ライン側における障害を検出する。
【0050】
図5に、本発明装置を用いた実施例2を示す。実施例2では、インタフェースが休止状態から復旧状態になる場合の振る舞いを示す。
【0051】
リンク接続性確認までの動作は、実施例1と同様である。この例では、リンク接続性確認以降に、アイドル状態であったインタフェースにトラフィックが流れる場合を想定している。
【0052】
トラフィック量を監視していた装置1において、トラフィックが検出されたため、インタフェースの復旧動作を開始する。まず、該当インタフェースを復旧させると共に、対向装置である装置2に対して、接続されたインタフェースの復旧を、監視光を介して通知する。装置1は、リンク死活監視機能停止を解除後、復旧させたインタフェースの警報マスクを解除し、トラフィック量の監視に入る。
【0053】
装置2は、装置1からの復旧インタフェースの通知を確認し、該当インタフェースの復旧を行う。さらに、リンク死活監視機能停止を解除後、復旧させたインタフェースの警報マスクを解除し、トラフィック量の監視に入る。
【0054】
また、以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様および変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲およびその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【符号の説明】
【0055】
1 制御部
2 ルータ部
3 クライアント信号送受信部
4 光送受信機
5 監視光部
21 パケット入力部
22 フォワーディング部
23 スイッチ部
24 出力スケジューリング部
25 パケット出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラフィック量と連携させて装置のインタフェースを休止・復旧制御する通信装置において、
インタフェースのトラフィック量を監視する手段と、
前記監視手段により、トラフィック量がないインタフェースを検出し、該当インタフェースに関するルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を停止する手段と、
前記リンク死活監視機能停止後、前記インタフェースを休止する手段と、
前記インタフェースを使用したリンクの接続性を監視することで、リンク死活監視を行う手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記インタフェースを休止する前に、該当インタフェースの警報マスクを設定する手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
休止インタフェースのトラフィック量を監視する手段と、
前記監視手段によりトラフィックを検出した休止インタフェースを復旧する手段と、
前記休止インタフェース復旧後、前記インタフェースに関するルーティングプロトコルのリンク死活監視機能を再開する手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記休止インタフェースのリンク死活監視機能再開後、該当インタフェースの警報マスクを解除する手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記リンクの接続性監視は、休止されデータ変調を停止された前記インタフェースから送出される連続光を用いて行われることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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