説明

通信装置

【課題】容易に接続先を切替えることができる通信装置を提供する。
【解決手段】通信装置は、外部装置からの信号を受信する、ノン・アダプティブな指向性アンテナ101と、受信された信号に基づいて、外部装置のアドレスを記憶するアドレス記憶部105と、受信された信号に基づいて、外部装置PCの電波状態を表す値を記憶する電波状態記憶部106と、電波状態記憶部106に記憶された値の中で、最も良い値に対応する外部装置を指定する第1のアドレスを選択する選択部107と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、数m〜数十mの近距離で使用される近距離用の通信技術として、無線PAN(WPAN:Wireless Personal Area Network)と呼ばれる技術の標準化が進められている。
【0003】
このWPANの利用形態には、パソコンと、マウス、キーボード等の周辺機器との接続、カー・ナビゲーション・システムと携帯電話との接続、あるいは、センサー・ネットワークや家庭内の家電を制御するホーム・ネットワーク等がある。
【0004】
このように、近年ではWPANの利用形態も増加し、複数のPANへの接続を容易に切替える技術が求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−230715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容易に接続先を切替えることができる通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の通信装置は、外部装置からの信号を受信する、ノン・アダプティブな指向性アンテナと、受信された前記信号に基づいて、前記外部装置のアドレスを記憶するアドレス記憶部と、受信された前記信号に基づいて、前記外部装置の電波状態を表す値を記憶する電波状態記憶部と、前記電波状態記憶部に記憶された値の中で、最も良い値に対応する前記外部装置を指定する第1のアドレスを選択する選択部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る無線通信システムの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】実施形態に係る通信装置の基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図3】実施形態に係るマウスの基本的な接続方法を模式的に示すフローチャートである。
【図4】実施形態に係るマウスの具体的な接続方法を模式的に示すブロック図である。
【図5】実施形態の変形例2に係るマウスの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図6】比較例に係るマウスの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【図7】比較例に係るマウスの接続切替え方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の詳細を図面を参照して説明する。この説明に際し、全図にわたり、共通する部分には共通する参照符号を付す。
【0010】
(実施形態)
<WPAN概要>
以下の実施形態では、数m〜数十mの近距離で使用される近距離用の通信技術の例として、WPAN技術を用いて説明する。このWPANは、主にIEEE802.15ワーキング・グループにおいて、標準化が進められている。このWPANとは、主に一人の個人ユーザーが使用する機器同士を接続するネットワークを指している。
【0011】
WPANの代表的なものとしては、Bluetooth(登録商標)やZigBee等があり、更に、UWB(Ultra Wideband)WPANや、ミリ波WPAN等がある。ここで、WPAN技術のうちBluetoothを用いて、以下の実施形態を説明する。
【0012】
更に、以下の実施形態では、例えばPC(無線通信装置)に接続されるマウス(無線通信端末)を、実施形態に係る通信装置の一例として説明する。
【0013】
<通信システム構成>
図1を用いて、本実施形態に係る無線通信システムの基本的な構成を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【0015】
図1に示すように、無線通信システムは無線通信装置であるPC1、2、3及び無線通信端末であるマウス100を備えている。マウス100は、複数のPC1、2、3との通信を切替え可能とし、Bluetooth規格に準拠した無線通信システムを形成している。本実施形態における無線通信システムは、無線通信装置と無線通信端末とがアドホックモードで接続されるネットワークであり、Bluetooth規格においてピコネット(Piconet)と呼ばれるものである。この無線通信システムにおいてアドホックモード通信とは、無線基地局などのようなアクセスポイントを必要とせず、端末同士で通信を行うモードでの通信のことであり、IEEE802.11規格においてIBSS(Independent Basic Service Set)と呼ばれる。
【0016】
ここで無線通信装置とは、ピコネットに収容された無線通信端末に対して制御機能を付与された機器のことをいい、マスタとも呼ぶ。
【0017】
また、無線通信端末はマスタからの指示に従って動作する機器のことをいい、スレーブとも呼ぶ。また、スレーブは、所属するピコネット内のマスタが備えるクロックを取得し、スレーブ自身のクロックとのオフセットを計算することでマスタと同期を取ることが出来、そのクロックに従ったデータ転送を行うことができる。
【0018】
図1に示すマウス(スレーブ)100は、それぞれ独立なピコネット(PAN1〜3)内のPC(マスタ)1〜3と接続が可能である。マウス100とPC1〜3の装置とを通信させる際には、対応するそれぞれのPAN1〜3に切替えて接続を行う。
【0019】
<マウスの構成>
次に、図2を用いて、複数のPAN(ピコネット)を切替え可能なマウスの基本的な構成を説明する。図2は、本実施形態に係るマウスの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【0020】
図2に示すように、本実施形態のマウス(スレーブ)100は、ノン・アダプティブな指向性アンテナ101と、受信部102と、受信処理部103と、制御処理部104と、接続先アドレス記憶部105と、電波状態記憶部106と、接続先選択部107と、送信処理部108と、送信部109と、無指向性アンテナ110と、マウス・センサ111と、測量処理部112と、スイッチ群113と、スイッチ処理部114と、を備えている。
【0021】
ノン・アダプティブな指向性アンテナ101は、電波の送受信において、特定の方向に対する感度が良いアンテナである。受信部102は、指向性アンテナ101を介して、接続先(マスタ)から送信された信号を受信する。受信処理部103は、受信部102が受信した信号から所望のデータを抽出する。接続先アドレス記憶部105は、抽出されたデータに含まれる接続先(マスタ)のMacアドレス(Bluetoothアドレス)を記憶する。電波状態記憶部106は、指向性アンテナ101を介して得られる信号の振幅の強さに基づいて、接続先(マスタ)の電波状態(信号強度等)を表す値(RSSI等)を、接続先に関連付けて記憶する。接続先選択部107は、電波状態記憶部106に記憶された電波状態を表す値の中で、最も良い(例えば、最も大きい)値に関連付けられた接続先に対応するアドレスを、接続先アドレス記憶部105から選択する。
なお、ノン・アダプティブとは、アンテナの電波指向性が常に端末の方向を向くように追いかけていかない性質のことである。
【0022】
制御処理部104は、受信処理部103から抽出されたデータや、接続先選択部107によって選択されたアドレスに基づいて、周波数の切替え、及び接続先(マスタ)との同期(周波数ホッピングのシーケンスを合わせる動作)を行う。マウス・センサ111は、マウスの動きを認識するセンサであり、測量処理部112は、マウスの動きの数値を計算し、計算データを送信処理部108に供給する。スイッチ群113は、例えばマウスのクリック部のスイッチ、及びホイール部のスイッチ等を有し、スイッチ処理部114は、各スイッチの認識を行い、認識データを送信処理部108に供給する。送信処理部108は、供給されたデータを信号に変換し、制御処理部104によって制御された周波数に合わせて該信号を送信部109に供給する。送信部109は、供給された信号を、無指向性アンテナ110を介してマスタに送信する。
【0023】
<マウスの検索及び登録方法>
次に、本実施形態に係るマウスの基本的な検索及び登録方法について説明する。
【0024】
本実施形態に係るマウスは、マウス(スレーブ)内に登録されている接続先の中から通信状態の最も良い接続先(マスタ)と通信を行う。まずマウス(スレーブ)は、接続を行うPC(マスタ)の検索及び登録を行う。
【0025】
[接続先の検索(問合せ/問合せ応答)]
PC(マスタ)1は、問合せ(IQ:Inquiry)処理を行って、マウス(スレーブ)100を探索する。ここでは、PC1側がブロードキャストでIQパケットを連続送信することにより、マウス100に対して問合せを行う。
マウス100は、制御処理部104で周波数の切替えを行いながら、問合せ走査(Inquiry Scan)処理を行う。そして、マウス100は、指向性アンテナ101を介して、PC1側から送信されたIQパケットを受信する。
マウス100において、IQパケットを受信したと受信処理部103で判断されると、制御処理部104は周波数を受信周波数と同一の周波数に設定する。そして、マウス100は、制御処理部104の周波数タイミングに合わせて無指向性アンテナ110を介して、マウス100自身のアドレスを含むFHS(Frequency Hopping Synchronization)パケットをPC1に返信する(問合せ応答)。PC1は、マウス100からのFHSパケットを受信する。PC1はこのFHSパケットによって、マウス100の情報を把握できる。
【0026】
[ページ/ページスキャン]
PC1は、FHSパケットを返信したマウス100に対して、ID(Identity)パケットを送信する(ページまたは呼び出し)。
マウス100は、制御処理部104で周波数切替えを行いながら、ページスキャン(呼び出し走査)を行う。指向性アンテナ101を介して、PC1からIDパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、制御処理部104は周波数を受信周波数と同一の周波数に設定する。そして、マウス100は、制御処理部104の周波数タイミングに合わせて、無指向性アンテナ110から、受信したIDパケットと同一のIDパケットをPC1に返信する。
PC1は、マウス100からIDパケットを受信すると、PC1自身のアドレスを含むFHSパケットをマウス100に送信する。
マウス100は、制御処理部104で周波数切替えを行いながら、指向性アンテナ101を介して、PC1からのFHSパケットを受信する。FHSパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、制御処理部104は周波数を受信周波数と同一の周波数に設定する。そして、マウス100は、制御処理部104の周波数タイミングにあわせて、無指向性アンテナ110から、IDパケットをPC1に返信する(ページ・レスポンスまたは呼び出し応答)。
マウス100は、FHSパケットに含まれる接続先(PC1)のアドレスを、接続先アドレス記憶部105にPC1(接続先)に登録する。
その後、マウス100が信号を受信できる範囲内において、IQパケットを発信している他のPCに関して、上述の[接続先の検索(問合せ/問合せ応答)]、及び[ページ/ページスキャン]と同様の動作を行う。この動作を、マウス100が信号を受信できる範囲内において、IQパケットを発信している全てのPCがマウス100内に登録されるまで繰り返す。このようにして、例えばPC1〜3のアドレスがマウス100に登録される。
【0027】
<マウスの接続方法>
次に、図3を用いて、本実施形態に係るマウスの接続方法を説明する。図3は、本実施形態に係るマウスの基本的な接続方法を模式的に示すフローチャートである。
【0028】
(ステップS1001)
接続先選択部107は、接続先アドレス記憶部105に登録済みの接続先アドレスのうち、電波状態記憶部106に電波状態(信号強度)を表す値(例えばRSSI)が記憶されていない接続先アドレスが存在するか否かを探す。もし、電波状態が求められていない接続先(PC)が存在するならばステップS1002を行い、電波状態が求められていない接続先が存在しなければステップS1004を行う。
【0029】
(ステップS1002)
接続先選択部107は、接続先アドレス記憶部105に登録済みの接続先アドレスの中で、電波状態を表す値が求められていない接続先のアドレスを選択する。
【0030】
(ステップS1003)
[ページ/ページスキャン]
問合せ処理で、既にマウス100が登録されている各PCは、登録されているマウス100に対してIDパケットを定期的に送信する。
マウス100は、制御処理部で周波数切替えを行いながら、ページスキャンを行う。指向性アンテナ101を介して、接続先(PC)からIDパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、マウス100は、無指向性アンテナ110から、制御処理部104の周波数タイミングにあわせてIDパケットを接続先(PC)に返信する。
接続先(PC)は、マウス100からIDパケットを受信したことが分かると、自身のアドレスを含むFHSパケットを送信する。
マウス100は、制御処理部104で周波数切替えを行いながら、指向性アンテナ101を介して、接続先(PC)からのFHSパケットを受信する。FHSパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、制御処理部104は、受信したFHSパケット内のアドレスと、選択した接続先アドレスとが同一か否かを判別する。受信したFHSパケット内のアドレスと、選択した接続先アドレスとが等しい場合のみ、制御処理部104は周波数を受信周波数と同一の周波数に設定する。そして、マウス100は、制御処理部104の周波数タイミングにあわせて、無指向性アンテナ110から、IDパケットを接続先(PC)に返信する(ページ・レスポンス)。
【0031】
[接続(connection)]
続いて、接続先(PC)及びマウス100のクロックの同期が行われ、送受信されるデータの暗号化が行われる(ピコネットの確立)。
接続先(PC)は、マウス100のプロファイルを認識する。マウス100は、受信処理部103において、指向性アンテナ101を介して得られた信号の振幅の強さを計測する。そして、この振幅の強さを、PC1(接続先)と関連付けて電波状態(信号強度)を表す値(例えばRSSI)として電波状態記憶部106に格納する。これにより、マウス100の電波状態記憶部106にPC1の電波状態を表す値が記憶される。その後、マウス100は、PC1との接続を切断する。その後、再度ステップS1001を行う。
【0032】
(ステップS1004)
接続先アドレス記憶部105に登録された全接続先アドレスに関連する電波状態を表す値が、電波状態記憶部106に記憶されている場合、接続先選択部107において、最も良い(大きい)値を選択する。そして、最も良い値に対応する接続先アドレスを、接続先アドレス記憶部105から選択する。
【0033】
[ページ/ページスキャン]
その後、問合せ処理で既にマウス100が登録されている各PC(接続先アドレス記憶部105に登録されたPC)は、登録されているマウス100に対してIDパケットを定期的に送信する状態となる。
マウス100は、制御処理部で周波数切替えを行いながら、ページスキャンを行う。指向性アンテナ101を介して、接続先(PC)からIDパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、マウス100は、無指向性アンテナ110から、制御処理部104の周波数タイミングにあわせてIDパケットを接続先(PC)に返信する。
接続先(PC)は、マウス100からIDパケットを受信したことが分かると、自身のアドレスを含むFHSパケットを送信する。
マウス100は、制御処理部104で周波数切替えを行いながら、指向性アンテナ101を介して、接続先(PC)からのFHSパケットを受信する。FHSパケットを受信したと受信処理部103が判断すると、制御処理部104は、受信したFHSパケット内のアドレスと、選択した接続先アドレスとが同一か否かを判別する。受信したFHSパケット内のアドレスと、選択した接続先アドレスとが等しい場合のみ、制御処理部104は周波数を受信周波数と同一の周波数に設定する。そして、マウス100は、制御処理部104の周波数タイミングにあわせて、無指向性アンテナ110から、IDパケットを接続先(PC)に返信する(ページ・レスポンス)。
【0034】
[接続(connection)]
続いて、接続先(PC)及びマウス100のクロックの同期が行われ、送受信されるデータの暗号化が行われる(ピコネットの確立)。接続先(PC)は、マウス100のプロファイルを認識する。このようにして、マウス100は、通信状態の最も良いPCと接続することができる。
【0035】
<具体例>
次に、図4を用いて、本実施形態に係るマウスの具体的な接続方法を簡略的に説明する。図4は、本実施形態に係るマウスの具体的な接続方法を模式的に示すブロック図である。
【0036】
図4に示すように、マウス(スレーブ)100のノン・アダプティブな指向性アンテナ101の感度(破線楕円)は、マウスの向きに依存して変化する。そして、マウス100がPC(マスタ)1の方向に向いている図1のような場合がある。このような場合、マウス100が受信する電波の強度は、PC1が最も高く、PC3が最も低くなる。このように、マウス100が受信する電波の強弱は、指向性アンテナ101の感度の方向に依存する。上述した方法を用いることにより、マウス100は、PC1との通信状態(電波状態)が最も良いと判断し、自動的にPAN1上でPC1に接続される。
【0037】
<実施形態に係る効果>
上述した実施形態によれば、通信装置(マウス)100は、外部装置(PC)からの信号を受信する、ノン・アダプティブな指向性アンテナ101と、受信された信号に基づいて、外部装置のアドレスを記憶する接続先アドレス記憶部105と、受信された信号に基づいて、外部装置の電波状態(通信状態または信号強度)を表す値を記憶する電波状態記憶部106と、電波状態記憶部106に記憶された値の中で、最も良い値に対応する外部装置を指定する第1のアドレスを選択する接続先選択部107と、を備えている。また、通信装置100は、選択された第1のアドレスに基づいて、第1のアドレスに対応する外部装置への接続処理を行う制御処理部104と、を更に備えている。更に、接続先選択部107は、接続先アドレス記憶部105及び電波状態記憶部106を参照し、接続先アドレス記憶部105に記憶されているアドレスに対応する外部装置の中で、電波状態を表す値が得られていない外部装置を指定する第2のアドレスを更に選択する。そして、制御処理部104は、第2のアドレスに対応する外部装置(PC)との通信処理を行い、外部装置から信号を受信し、受信された信号に基づいて、電波状態記憶部105に外部装置の電波状態を表す値を記憶させる。
【0038】
本実施形態に係る通信装置100はノン・アダプティブな指向性アンテナ101を用いているため、マウス(通信装置)100の向き及び位置に依存してPC(外部装置)の電波の強弱は変化する。また、マウス100の接続先アドレス記憶部105に記憶された接続先の電波の強弱を全て比較して、最も電波の強い(良い)接続先を自動的に導出している。その結果、方向及び位置を変えるだけで、複数のPANへの接続の切替えを容易(自動的)に行うことが可能となる、通信装置を得ることができる。
【0039】
(変形例1)
次に、本実施形態の変形例1に係るマウスの接続方法を説明する。尚、基本的な構成及び基本的な動作は、上述した実施形態と同様である。従って、上述した実施形態で説明した事項及び上述した実施形態から容易に類推可能な事項についての説明は省略する。
変形例1では、接続の切替えを一度だけ行うのではなく、接続を複数回、使用に応じて切替える点で、上記実施形態と相違する。
【0040】
本変形例1では、例えば制御処理部104に、所定の時間が設定される。そして、所定の時間経過後に、電波状態記憶部106に記憶されている、値を全て消去し、図3と同様の処理を行い、再度、全ての接続先の電波状態を表す値を取得する。そして、図3で説明したように、マウス100は、最も電波状態の良い接続先(PC)と接続される。この動作は、該所定の時間が経過する毎に行われる。このため、所定の時間間隔で、マウスとPCの電波状態を更新することができる。
【0041】
上述した変形例1によれば、通信装置(マウス)100において、制御処理部104は、所定の時間に基づいて、電波状態記憶部106に記憶されている外部装置の全ての電波状態を表す値を全て消去し、接続先アドレス記憶部105に記憶されている全アドレスに対応する外部装置(PC)との通信処理を行い、全ての外部装置から信号を受信し、受信された信号に基づいて、電波状態記憶部105に外部装置の電波状態を表す値を記憶させる。
【0042】
例えばマウス(通信装置)が接続中のPC(外部装置)から離れたり、マウスの向きが接続中のPCから大きく変化したりすることがある。しかし、マウスは所定の時間毎に、PCの電波状態を更新している。このため、マウスを、接続中のPCから遠ざけ、他のPCと接続する場合においても、自動的に接続を切替えることが可能である。この結果、複数のPANへの接続の切替えを、更に容易に行うことが可能となる、通信装置を得ることができる。
【0043】
(変形例2)
次に、図5を用いて、本実施形態の変形例2に係るマウスの接続方法を説明する。図5は、本実施形態の変形例2に係るマウスの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。尚、基本的な構成及び基本的な動作は、上述した実施形態と同様である。従って、上述した実施形態で説明した事項及び上述した実施形態から容易に類推可能な事項についての説明は省略する。
変形例2では、接続の切替えを一度だけ行うのではなく、接続を、通信の品質に応じて切替える点で、上記実施形態及び変形例と相違する。
【0044】
図5に示すように、受信処理部103の中に、オート・ゲイン・コントローラ(AGC)103aが設けられている。AGC103aは、指向性アンテナ101を介して受信した信号が所定の強さになるようにゲイン・コントロールするものである。AGC103aのゲイン量を見ることで、受信した信号の強弱がわかる。
【0045】
例えば受信処理部103は、AGC103aのゲイン量の変化を監視する。マウス100と、接続先(PC)とが接続状態である場合において、AGC103aのゲイン量が、所定の量(例えば予め設定された閾値)以上変化することがある。この場合、通信の品質が落ちたと見なされ、より良い電波状態の接続先との接続へ切替える必要がある。従って、マウス100と接続先(PC)とが接続中の場合でも、例えば電波状態記憶部106内の値を全て消去し、図3と同様の処理を行い、再度、全ての接続先の電波状態を表す値を取得する。そして、図3で説明したように、マウス100は、最も電波状態の良い接続先(PC)と接続される。
【0046】
上述した実施形態の変形例2によれば、通信装置(マウス)100において、制御処理部104は、受信処理部103によって取得された外部装置(PC)との電波状態の変化(ゲイン量の変化)に基づいて、電波状態記憶部106に記憶されている外部装置の電波状態を表す値を全て消去し、接続先アドレス記憶部105に記憶されている全アドレスに対応する外部装置との通信処理を行い、外部装置の全ての電波状態を表す値を取得する。
【0047】
例えばマウス(通信装置)が接続中のPC(外部装置)から離れたり、マウスの向きが接続中のPCから大きく変化したりすることがある。しかし、マウスはAGCのゲイン量を監視することで、接続中のPCの電波の強弱(通信の品質)を常に監視している。このため、マウスを、接続中のPCから遠ざけ、他のPCと接続する場合においても、自動的かつ瞬時に接続を切替えることが可能である。この結果、複数のPANへの接続の切替えを、更に容易に行うことが可能となる、通信装置を得ることができる。
【0048】
(比較例)
次に、図6を用いて、上記実施形態と比較するために、比較例に係るマウスについて概略的に説明する。図6は比較例に係るマウスの基本的な構成を模式的に示すブロック図である。
【0049】
図6に示すように、比較例のマウス(スレーブ)200は、無指向性アンテナ201と、受信部202と、受信処理部203と、制御処理部204と、接続先アドレス記憶部205と、接続先選択部206と、送信処理部207と、送信部208と、無指向性アンテナ209と、マウス・センサ210と、測量処理部211と、スイッチ群212と、スイッチ処理部213と、を備えている。
【0050】
無指向性アンテナ201は、電波の送受信において、特定面では360度、感度が等しいアンテナである。受信部202は、無指向性アンテナ201を介して、PC(マスタ)から送信された信号を受信する。受信処理部203は、受信部202が受信した信号から所望のデータを抽出する。接続先アドレス記憶部205は、抽出されたデータに含まれるPC(マスタ)のアドレスを記憶する。
【0051】
マウス・センサ210は、マウスの動きを認識するセンサであり、測量処理部211は、マウスの動きの数値を計算し、計算データを送信処理部207に供給する。スイッチ群212は、例えばマウスのクリック部のスイッチ、ホイール部のスイッチ、及びPAN切替え部のスイッチ等を有し、スイッチ処理部213は、各スイッチの認識を行い、クリック部及びホイール部に関する認識データを送信処理部207に供給し、PAN切替え部に関する認識データを接続先選択部206に供給する。接続先選択部206は、スイッチ群212のPAN切替え部において、選択されたPCに対応するアドレスを、接続先アドレス記憶部205から選択する。
【0052】
制御処理部204は、受信処理部203から抽出されたデータや、接続先選択部206によって選択されたアドレスに基づいて、周波数の切替え、及びPC(マスタ)との同期(周波数ホッピングのシーケンスを合わせる動作)を行う。送信処理部207は、供給されたデータを信号に変換し、制御処理部204によって制御された周波数に合わせて該信号を送信部208に供給する。送信部208は、供給された信号を、無指向性アンテナ209を介してマスタに送信する。
【0053】
次に、図7を用いて、比較例に係るマウスの接続切替え方法について概略的に説明する。図7は、比較例に係るマウスの接続切替え方法を模式的に示すフローチャートである。
【0054】
接続先のアドレスが接続先アドレス記憶部205に全て登録されると、以下の手順を用いて接続を切り替えることが出来る。
【0055】
(ステップS2001)
マウス200において、スイッチ群212のPAN切替え部のスイッチをクリックすることで、接続先アドレス記憶部205に登録されたPCを選択することができる。
【0056】
(ステップS2002)
接続先選択部206は、スイッチ群212によって選択されたPCに対応するアドレスを、接続先アドレス記憶部205から選択する。その後、ページ及びページスキャンが行われる。その後、ページ・レスポンスを行い、マウス200は、スイッチ群212によって選択されたPCに接続することができる。
【0057】
しかしながら、本比較例によれば、複数のPANを切り替えることができる通信装置において、通信接続先のアドレスを切替える際には、複数のスイッチが必要になるか、複数回のスイッチ操作が必要になる。その結果、上述した実施形態に係る通信装置と比べて、複数のPANへの接続の切替え動作が煩雑、且つ構造が複雑になってしまう。
【0058】
尚、上述で説明した図2、及び図5の各ブロックは、機能別に分けられたものであり、それぞれが構造的に分かれている必要はない。例えば受信部102と、送信部109とを構造的に組み合わせること等も可能である。また、無指向性アンテナ110を設けず、送信部109は指向性アンテナ101に接続され、指向性アンテナ101を用いて信号の送信を行う構成であっても良い。
【0059】
また、上述した実施形態では、通信装置としてマウスを例に説明した。しかし、これに限らず、上述したように、ノン・アダプティブな指向性アンテナを有し、接続先の電波の強弱を比較し、最も電波状態が好ましい接続先と接続する通信装置であれば、どのような構成でも良い。また、接続先をPCとして説明したが、これに限るものではない。
【0060】
また、上述した実施形態では、Bluetoothを用いた通信方法について説明した。しかし、これに限らず、ZigBee等の他の規格について用いても良い。更に、上述した実施形態は、数m〜数十mの近距離で使用される近距離用の通信技術の例としてWPAN技術を用いて説明されている。しかし、これに限らず、数m〜数十mの近距離で使用される近距離用の通信技術であれば、どのようなものでも良い。
【0061】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示された構成要件を適宜組み合わせることによって種々の発明が抽出される。例えば、開示された構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、所定の効果が得られるものであれば、発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0062】
100…マウス、 101…指向性アンテナ、 102…受信部
103…受信処理部、 103a…オート・ゲイン・コントローラ
104…制御処理部、 105…接続先アドレス記憶部、
106…電波状態記憶部、 107…接続先選択部、 108…送信処理部
109…送信部、 110…無指向性アンテナ、 111…マウス・センサ
112…測量処理部、 113…スイッチ群、 114…スイッチ処理部
200…マウス、 201…無指向性アンテナ、 202…受信部
203…受信処理部、 204…制御処理部、 205…接続先アドレス記憶部
206…接続先選択部、 207…送信処理部、 208…送信部
209…無指向性アンテナ、 210…マウス・センサ、 211…測量処理部
212…スイッチ群、 213…スイッチ処理部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置からの信号を受信する、ノン・アダプティブな指向性アンテナと、
受信された前記信号に基づいて、前記外部装置のアドレスを記憶するアドレス記憶部と、
受信された前記信号に基づいて、前記外部装置の電波状態を表す値を記憶する電波状態記憶部と、
前記電波状態記憶部に記憶された値の中で、最も良い値に対応する前記外部装置を指定する第1のアドレスを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記選択された第1のアドレスに基づいて、前記第1のアドレスに対応する前記外部装置への接続処理を行う処理部と、を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記アドレス記憶部に記憶されているアドレスに対応する前記外部装置の中で、電波状態を表す値が得られていない前記外部装置を指定する第2のアドレスを更に選択し、
前記処理部は、前記第2のアドレスに対応する前記外部装置との通信処理を行い、前記外部装置から信号を受信し、受信された前記信号に基づいて、前記電波状態記憶部に前記外部装置の電波状態を表す値を記憶させることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記処理部は、所定の条件に基づいて、前記電波状態記憶部に記憶されている前記外部装置の全ての電波状態を表す値を無効にし、前記アドレス記憶部に記憶されている全アドレスに対応する前記外部装置との通信処理を行い、全ての前記外部装置から信号を受信し、受信された前記信号に基づいて、前記電波状態記憶部に前記外部装置の電波状態を表す値を記憶させることを特徴とする請求項2または3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記所定の条件は、所定の時間、または前記外部装置との電波状態の変化であることを特徴とする請求項4に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−204881(P2012−204881A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64936(P2011−64936)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】