説明

通信装置

【課題】通信装置に関して、防水性能を維持しつつアンテナの性能を向上させることが可能な技術を提供する。
【解決手段】アンテナに電気的に接続された電子部品が搭載された操作側基板36のグランドパターンに電気的に接続された導電性部材39は、操作側ヒンジ部41に設けられている。導電性部材26は、導電性部材39と容量結合を成すように表示側ヒンジ部40に設けられている。電子部品が搭載された表示側基板のグランドパターンと電気的に接続された導電性部材28は、隔壁260bの外側側面よりも内側に位置し、表示側基板のグランドパターンと電気的に接続された隔壁内側部分280と、隔壁内側部分280から隔壁230bの外側に延び、導電性部材26と容量結合を成す隔壁外側部分281とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水機能を有し、アンテナを用いて通信する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信装置に関して従来から様々な技術が提案されている。例えば特許文献1,2には、アンテナを有する通信装置の一種である携帯電話機に関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−130468号公報
【特許文献2】特開2010−154445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、通信装置が有するアンテナの性能を向上させる技術が記載されている。特許文献2に記載されているような、防水機能を有する通信装置において、特許文献1のようにアンテナの性能を向上させる際には、防水性能を維持しつつ、アンテナの性能を向上させることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は上述の点に鑑みて成されたものであり、通信装置に関して、防水性能を維持しつつアンテナの性能を向上させることが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る通信装置は、防水機能を有し、アンテナを用いて通信する通信装置であって、ヒンジ機構によって互いに連結され、開閉することが可能な第1及び第2筐体を備え、前記第1筐体には、前記アンテナに電気的に接続された電子部品が搭載された第1基板と、前記ヒンジ機構の一部を構成する第1筐体側ヒンジ部と、前記第1基板のグランドパターンに電気的に接続された第1導電性部材とが設けられ、前記第2筐体には、電子部品が搭載された第2基板と、前記第2基板を取り囲む防水用の隔壁と、前記隔壁よりも外側に位置し、前記ヒンジ機構の一部を構成する第2筐体側ヒンジ部と、第2導電性部材と、前記第2筐体にインサート成形され、前記第2基板のグランドパターンに電気的に接続された第3導電性部材とが設けられ、前記第1導電性部材は、前記第1筐体側ヒンジ部に設けられ、前記第2導電性部材は、前記第1導電性部材と容量結合を成すように前記第2筐体側ヒンジ部に設けられ、前記第3導電性部材は、前記隔壁の外側側面よりも内側に位置し、前記第2基板のグランドパターンと電気的に接続された隔壁内側部分と、前記隔壁内側部分から前記隔壁の外側に延び、前記第2導電性部材と容量結合を成す隔壁外側部分とを有する。
【0007】
また、本発明に係る通信装置は、防水機能を有し、アンテナを用いて通信する通信装置であって、ヒンジ機構によって互いに連結され、開閉することが可能な第1及び第2筐体を備え、前記第1筐体には、前記アンテナに電気的に接続された電子部品が搭載された第1基板と、前記ヒンジ機構の一部を構成する第1筐体側ヒンジ部と、前記第1基板のグランドパターンに電気的に接続された第1導電性部材とが設けられ、前記第2筐体には、電子部品が搭載された第2基板と、前記第2基板を取り囲む防水用の隔壁と、前記隔壁よりも外側に位置し、前記ヒンジ機構の一部を構成する第2筐体側ヒンジ部と、第2導電性部材と、前記第2筐体の肉厚部分の内部に成形され、前記第2基板のグランドパターンに電気的に接続された第3導電性部材とが設けられ、前記第1導電性部材は、前記第1筐体側ヒンジ部に設けられ、前記第2導電性部材は、前記第1導電性部材と容量結合を成すように前記第2筐体側ヒンジ部に設けられ、前記第3導電性部材は、前記隔壁の外側側面よりも内側に位置し、前記第2基板のグランドパターンと電気的に接続された隔壁内側部分と、前記隔壁内側部分から前記隔壁の外側に延び、前記第2導電性部材と容量結合を成す、前記第2筐体の前記肉厚部分から露出しない隔壁外側部分とを有する。
【0008】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記隔壁内側部分は、前記第2筐体の前記肉厚部分から部分的に露出している。
【0009】
また、本発明に係る通信装置の一態様では、前記隔壁外側部分には絞りが設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、防水性能を維持しつつ、アンテナの性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係る携帯電話機の外観を示す平面図である。
【図2】本実施の形態に係る携帯電話機の外観を示す平面図である。
【図3】本実施の形態に係る携帯電話機の分解斜視図である。
【図4】本実施の形態に係る表示側フロント部材を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る表示側フロント部材を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態に係る表示側フロント部材を示す側面図である。
【図7】本実施の形態に係る表示側第1ヒンジケースを示す断面図である。
【図8】本実施の形態に係る表示側第2ヒンジケースを示す断面図である。
【図9】本実施の形態に係る操作側リア部材における台座部付近を示す断面図である。
【図10】本実施の形態に係る導電性部材を示す斜視図である。
【図11】導電性部材と操作側基板とが接続されている様子を示す図である。
【図12】本実施の形態に係る導電性部材を示す斜視図である。
【図13】本実施の形態に係る導電性部材を示す斜視図である。
【図14】本実施の形態に係る導電性部材を示す斜視図である。
【図15】本実施の形態に係る導電性部材を示す側面図である。
【図16】2つの導電性部材の位置関係を示す図である。
【図17】閉状態の携帯電話機でのヒンジ機構付近の断面構造を示す図である。
【図18】本実施の形態に係る携帯電話機の比較対象となる携帯電話機でのヒンジ機構付近の断面構造を示す図である。
【図19】導電性部材がインサートピンで挟持されている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1,2は本実施の形態に係る通信装置の外観を示す平面図である。本実施の形態に係る通信装置は、例えば携帯電話機であって、防水機能を有し、アンテナを用いて通信相手装置と通信を行う。以後、本通信装置を「携帯電話機1」と呼ぶ。
【0013】
携帯電話機1は、いわゆる折り畳み式携帯電話機であって、表示部が設けられた表示側筐体2と、ユーザによって操作される操作部が設けられた操作側筐体3とを備えている。表示側筐体2及び操作側筐体3は、樹脂で形成されており、それぞれの形状は、やや一方向に長い略立方体を成している。
【0014】
表示側筐体2の長手方向の一方の端部と、操作側筐体3の長手方向の一方の端部とは、表示側筐体2及び操作側筐体3の長手方向が揃うようにヒンジ機構4で連結されている。ヒンジ機構4は、表示側筐体2に設けられた表示側ヒンジ部40と、操作側筐体3に設けられた操作側ヒンジ部41とが対を成して構成されている。ヒンジ機構4の働きにより、表示側筐体2と操作側筐体3とは相対的に回動可能となっている。これにより、表示側筐体2と操作側筐体3とは開閉可能となっている。
【0015】
図1は、表示側筐体2と操作側筐体3とが開いている状態を示しており、図2は、表示側筐体2と操作側筐体3とが閉じている状態を示している。以後、携帯電話機1において、表示側筐体2と操作側筐体3とが開いている状態を「開状態」と呼び、表示側筐体2と操作側筐体3とが閉じている状態を「閉状態」と呼ぶ。
【0016】
表示側筐体2には、メインディスプレイ20と、メインディスプレイ20よりも表示画面が小さいサブディスプレイ21とが設けられている。メインディスプレイ20は、表示側筐体2の一方の主面2a側から視認可能となっている。サブディスプレイ21は、表示側筐体2において一方の主面2aとは反対側に位置する他方の主面2b側から視認可能となっている。
【0017】
操作側筐体3には、複数の操作キー30aで構成された操作部30が設けられている。操作部30は、操作側筐体3の一方の主面3aから露出しており、ユーザによる操作が可能となっている。
【0018】
図2に示されるように、閉状態の携帯電話機1においては、表示側筐体2の主面2aと、操作側筐体3の主面3aとが互いに対面するように、表示側筐体2と操作側筐体3とが重ね合わされている。そのため、閉状態の携帯電話機1においては、メインディスプレイ20及び操作部30は視認することができず、サブディスプレイ21が視認可能となっている。
【0019】
閉状態の携帯電話機1において、互いに重ね合わされている表示側筐体2及び操作側筐体3が、表示側筐体2の主面2aと操作側筐体3の主面3aとが引き離されるようにして開かれると、携帯電話機1は図1に示されるような開状態となる。開状態の携帯電話機1においては、表示側筐体2のメインディスプレイ20と、操作側筐体3の操作部30とが視認可能となっている。よって、ユーザは、メインディスプレイ20の表示を確認しながら、操作部30を操作することが可能である。
【0020】
<表示側筐体の構造>
図3は携帯電話機1の分解斜視図である。図3に示されるように、表示側筐体2は、開状態の携帯電話機1においてユーザにとって前面側となる表示側フロント部材23と、開状態の携帯電話機1においてユーザにとって背面側となる表示側リア部材22とで構成されている。表示側筐体2内には、メインディスプレイ20、サブディスプレイ21、複数の電子部品が搭載された表示側基板24、スピーカ25などの部品が収納される。表示側基板24上には、スピーカ25を駆動するための電子部品、メインディスプレイ20を駆動する電子部品、サブディスプレイ21を駆動する電子部品などが搭載されている。また、表示側基板24には、各電子部品に信号を伝達するための信号パターン、各電子部品にプラス電源電位を供給するための電源パターン、各電子部品に接地電位を供給するためのグランドパターンが形成されている。
【0021】
図4〜6は表示側フロント部材23の構造を示す図である。図4は表示側フロント部材23をその一方の主面23a側から見た際の斜視図であって、図5は表示側フロント部材23をその他方の主面23b側から見た際の斜視図である。図6は、表示側フロント部材23を図4の矢視Aから見た際の側面図である。閉状態の携帯電話機1では、主面23bは操作側筐体3側に位置し、主面23aは表示側リア部材22側に位置する。
【0022】
図3〜6に示されるように、表示側フロント部材23は、電子部品が主に配置され、水の進入を防止する必要がある電子部品収納部分230と、表示側ヒンジ部40の一部を構成する表示側第1ヒンジケース231とで構成されている。メインディスプレイ20、サブディスプレイ21、表示側基板24、スピーカ25は、電子部品収納部分230に配置される。表示側第1ヒンジケース231には、導電性部材26(図3参照)が配置される。この導電性部材26について後で詳細に説明する。
【0023】
電子部品収納部分230における、表示側リア部材22側の主面230aには、サブディスプレイ21、表示側基板24、スピーカ25などが配置される。電子部品収納部分230の主面230aには、その外縁に沿って、当該主面230aに配置された各種部品を取り囲むように防水用の隔壁230bが立設されている。隔壁230bの上端面には溝230cが設けられており、この溝230cには、リング状の防水用パッキン27(図3参照)が嵌め込まれている。
【0024】
表示側フロント部材23には、導電性部材28がインサート成形されている。これにより、導電性材料28は、表示側フロント部材23の肉厚部分の内部に形成される。図4,5に示されるように、導電性部材28は、表示側フロント部材23から部分的に露出している。導電性部材28は、表示側フロント部材23の剛性を高めるためと、グランドプレーンとして機能させて携帯電話機1のアンテナの特性を向上するために設けられている。導電性部材28については後で詳細に説明する。
【0025】
図4に示されるように、電子部品収納部分230の主面230aの中央部には、導電性部材28を露出させる四角形の開口部230dが設けられている。この開口部230dにはサブディスプレイ21が配置され、サブディスプレイ21を取り囲むように表示側基板24が配置される。表示側基板24には、そのグランドパターンに接続された導通部材(図示せず)が設けられている。この導通部材には、導電性部材28における、表示側フロント部材23から露出している部分が接触している。これにより、表示側基板24のグランドパターンと、導電性部材28とが電気的に接続される。
【0026】
図5に示されるように、電子部品収納部分230における、主面230aとは反対側の主面230eには、その大部分を占めるように、導電性部材28を露出させる四角形の開口部230fが設けられている。この開口部230fにはメインディスプレイ20が配置される。表示側フロント部材23の主面23bには、メインディスプレイ20を保護するためのカバー(図示せず)が取り付けられる。
【0027】
図7は表示側第1ヒンジケース231の概略構造を示す断面図である。図7には、表示側フロント部材23の長手方向での表示側第1ヒンジケース231の断面構造が示されている。
【0028】
図3〜7に示されるように、表示側第1ヒンジケース231は、電子部品収納部分230の隔壁230bに繋がった平坦部分231aと、平坦部分231aの端に繋がった湾曲部分231bとで構成されている。湾曲部分231bは、その断面形状が半円状となっており、表示側フロント部材23の主面23b側に凸となるように湾曲している。導電性部材26は、その一部が平坦部分231aにおける表示側リア部材22側の面と接触し、残りの部分が湾曲部分231bの内側の面(表示側リア部材22側の面)と接触するように、表示側第1ヒンジケース231に配置される。表示側第1ヒンジケース231は、表示側ヒンジ部40の外側部分(ケース)の一部を成している。
【0029】
表示側リア部材22は、表示側フロント部材23の電子部品収納部分230と嵌合する電子部品収納部分220と、表示側フロント部材23の表示側第1ヒンジケース231と嵌合する、表示側ヒンジ部40の一部を構成する表示側第2ヒンジケース221とで構成されている。表示側リア部材22と表示側フロント部材23とが組み合わされた状態では、サブディスプレイ21、表示側基板24、スピーカ25は、電子部品収納部分220,230の間に配置される。
【0030】
電子部品収納部分230と同様に、電子部品収納部分220における、表示側フロント部材23側の主面220aには、電子部品収納部分220,230の間に配置された各種部品を取り囲むように防水用の隔壁が立設されている。表示側リア部材22が表示側フロント部材23に取り付けられると、電子部品収納部分220の隔壁は、電子部品収納部分230の隔壁230b内の防水用パッキン27を隔壁230b側に押さえつけるようにして、隔壁230bの上端面の溝230cと嵌合する。これにより、電子部品収納部分220,230で取り囲まれた空間に水が進入することが防止され、当該空間内の電子部品が保護される。
【0031】
図8は表示側第2ヒンジケース221の構造を示す斜視図である。図3,8に示されるように、表示側第2ヒンジケース221は、電子部品収納部分220の隔壁220bに繋がった平坦部分221aと、平坦部分221aの端に繋がった湾曲部分221bとで構成されている。湾曲部分221bは、その断面形状が円弧状となっている。湾曲部分221bは、表示側リア部材22における、表示側フロント部材23側とは反対側の主面側に凸となるように湾曲している。表示側第2ヒンジケース221は、表示側ヒンジ部40の外側部分(ケース)の一部を成している。
【0032】
表示側第2ヒンジケース221における、表示側フロント部材23側の面には、操作側筐体3に設けられた後述のヒンジ軸37(図3参照)が嵌合する軸受け部222が設けられている。この軸受け部222は、表示側ヒンジ部40の一部を構成する。
【0033】
軸受け部222は、筒状を成しており、表示側リア部材22の短手方向に沿って延在している。軸受け部222の延在方向の一方の平坦面222aには、ヒンジ軸37が嵌合する嵌合穴222bが設けられている。軸受け部222の延在方向の他方の平坦面は、フラットケーブルが巻き付けられる巻き付け軸223の一端と繋がっている。巻き付け軸223には、表示側筐体2に収納された表示側基板24と、操作側筐体3に収納された後述の操作側基板36とを電気的に接続するためのフラットケーブル(図示せず)が巻き付けられる。以後、このフラットケーブルを「基板間接続ケーブル」と呼ぶ。
【0034】
表示側筐体2では、表示側第1ヒンジケース231と表示側第2ヒンジケース221とが、ヒンジ機構4の表示側ヒンジ部40のケースを構成しており、当該ケースに軸受け部222と巻き付け軸223とが設けられている。
【0035】
<操作側筐体の構造>
図3に示されるように、操作側筐体3は、開状態の携帯電話機1においてユーザにとって前面側となる操作側フロント部材31と、開状態の携帯電話機1においてユーザにとって背面側となる操作側リア部材32と、操作側リア部材32における、操作側フロント部材31側とは反対側の主面を部分的に覆うリアカバー部材33とで構成されている。
【0036】
操作側筐体3内には、操作部30、複数の電子部品が搭載された操作側基板36、ヒンジ軸37、アンテナ38、導電性部材39、電池(図示せず)などが設けられる。操作側基板36上には、フィルタやアンプなどの、アンテナ38で受信された受信信号を処理する高周波部品、アンテナ38に入力する送信信号を処理する高周波部品、携帯電話機1全体の動作を管理するCPUなどが搭載されている。また、操作側基板36には、各電子部品に信号を伝達するための信号パターン、各電子部品にプラス電源電位を供給するための電源パターン、各電子部品に接地電位を供給するためのグランドパターンが形成されている。
【0037】
操作部30は、複数のスイッチ35aが設けられたシート状のスイッチ基板35と、スイッチ基板35を覆うキーカバー部材34とで構成されている。キーカバー部材34の表面には、スイッチ基板35の複数のスイッチ35aの配置位置に対応した位置に、複数の突起部34aが形成されている。そして、キーカバー部材34は、その複数の突起部34aが、操作側フロント部材31に設けられた複数の穴31aから露出するように、操作側フロント部材31における、操作側リア部材32側の主面に配置される。1つの操作キー30a(図1参照)は、1つのスイッチ35aと、それを覆う1つの突起部34aとによって構成される。
【0038】
操作側基板36は、スイッチ基板35に重なるようにして操作側リア部材32に配置される。携帯電話機1が無線通信する際に使用するアンテナ38は操作側リア部材32に取り付けられる。そして、アンテナ38は、操作側基板36に搭載された高周波部品に電気的に接続される。これにより、アンテナ38での受信信号が操作側基板36上の高周波部品で処理されるとともに、操作側基板36上の高周波部品で処理された送信信号がアンテナ38に入力される。
【0039】
操作側リア部材32は、電子部品が主に配置され、かつ水の進入を防止する必要がある電子部品収納部分320と、操作側ヒンジ部41の一部を構成する台座部321とで構成されている。アンテナ38は、操作側リア部材32の長手方向における、電子部品収納部分320の端部であって、台座部321とは反対側の端部に取り付けられる。スイッチ基板35及び操作側基板36は、操作側基板36を下側にして、電子部品収納部分320における、操作側フロント部材31側の主面320aに配置される。携帯電話機1が備える各電子部品に電源を供給する電池は、電子部品収納部分320における、リアカバー部材33側の主面に配置される。
【0040】
電子部品収納部分320の主面320aには、その外縁に沿って、当該主面320aに配置された各種部品を取り囲むように防水用の隔壁320bが立設されている。隔壁320bの上端面には溝320cが設けられている。操作部30のキーカバー部材34の背面には、リンク状の防水用パッキン(図示せず)が設けられており、操作側フロント部材31が操作側リア部材32に取り付けられた際に、この防止用のパッキンが、操作側リア部材32における隔壁320bの溝320cに嵌め込まれるようになっている。これより、隔壁320bの内側に水が進入することを防止することができ、電子部品収納部分320の主面320aに配置された各電子部品を保護することができる。
【0041】
図9は、操作側リア部材32における、台座部321付近の概略構造を示す断面図である。図9では、操作側リア部材32の長手方向の断面構造が示されている。図3,9に示されるように、台座部321は、電子部品収納部分320の隔壁320bに繋がっている。台座部321における操作側フロント部材31側の主面321aには、導電性部材39が載置される。
【0042】
操作側リア部材32には、その短手方向において台座部321を間に挟むようにして互いに対向配置された軸受け部322と巻き付け軸323とが設けられている。ヒンジ軸37が嵌合する軸受け部322は、台座部321及び隔壁320bに繋がっている。上述の基板間接続ケーブルが巻き付けられる巻き付け軸323は、隔壁320bに繋がっている。軸受け部322には、操作側リア部材32の短手方向において貫通する嵌合穴322aが設けられている。ヒンジ軸37は、この嵌合穴322aに挿入されて嵌合することによって、軸受け部322によって保持される。ヒンジ軸37及び軸受け部322は、操作側ヒンジ部41の一部を構成する。
【0043】
軸受け部322及び隔壁320bには、操作側リア部材32の長手方向において貫通する貫通孔324が設けられている。この貫通孔324には、導電性部材39が有する、後述の接続部分39a(図3参照)が操作側リア部材32の外側から挿入される。これにより、接続部分39aの先端部が隔壁320bの内側に進入する。この先端部は、操作側基板36のグランドパターンと電気的に接続される。導電性部材39は、接続部分39a以外にも、台座部321に載置される載置部分39bと、接続部分39aと載置部分39bとを連結する連結部分39cとを有する。導電性部材39と、上述の導電性部材26,28とは、操作側基板36のグランドパターンと、表示側基板24のグランドパターンとを交流的に接続するためのものである。この点については後で詳細に説明する。
【0044】
なお、隔壁320bのうち、台座部321に繋がっている部分の上端面には、図9に示されるように、操作側フロント部材31と嵌合する嵌合溝320dが設けられている。
【0045】
操作側フロント部材31は、キーカバー部材34が設けられるとともに、操作側リア部材32の電子部品収納部分320と嵌合する操作キー露出部分310と、操作側ヒンジ部41の一部を構成する操作側第1ヒンジケース311とで構成されている。操作側フロント部材31と操作側リア部材32とが組み合わされた状態では、操作部30及び操作側基板36は、操作側フロント部材31の操作キー露出部分310と、操作側リア部材32の電子部品収納部分320との間に配置される。操作側第1ヒンジケース311は、操作側リア部材32に設けられた軸受け部322を覆う第1カバー部分311aと、操作側リア部材32に設けられた巻き付け軸323を覆う第2カバー部分311bとで構成されている。
【0046】
リアカバー部材33は、周端部カバー部分330と、操作側ヒンジ部41の一部を構成する操作側第2ヒンジケース331とで構成されている。周端部カバー部分330は、操作側リア部材32の電子部品収納部分320を間に挟んで操作側フロント部材31の操作キー露出部分310に嵌合する。周端部カバー部分330は、操作側リア部材32の電子部品収納部分320におけるリアカバー部材33側の主面の周端部を覆う。周端部カバー部分330には、電池を操作側筐体3内に入れるための開口部330aが設けられている。リアカバー部材33には、開口部330aから操作側筐体3内に入れられた電池を保護するために、開口部330aを覆う電池カバー(図示せず)が取り付けられる。
【0047】
操作側第2ヒンジケース331は、操作側リア部材32の台座部321を間に挟んで操作側フロント部材31の操作側第1ヒンジケース311に嵌合する。操作側筐体3では、操作側第1ヒンジケース311と操作側第2ヒンジケース331とが、ヒンジ機構4の操作側ヒンジ部41のケースを構成しており、当該ケースに軸受け部322及びヒンジ軸37と巻き付け軸323とが設けられている。
【0048】
以上のような構造を有する表示側筐体2及び操作側筐体3においては、表示側第1ヒンジケース231、表示側第2ヒンジケース221及び軸受け部222から成る表示側ヒンジ部40と、操作側第1ヒンジケース311、操作側第2ヒンジケース331、台座部321、軸受け部322及びヒンジ軸37から成る操作側ヒンジ部41とが連結することによって、表示側筐体2と操作側筐体3とが連結する。
【0049】
表示側ヒンジ部40と操作側ヒンジ部41とが連結すると、表示側ヒンジ部40は、操作側ヒンジ部41の台座部321と対向するように、操作側第1ヒンジケース311の第1カバー部分311a及び第2カバー部分311bの間に配置される。そして、操作側ヒンジ部41において軸受け部322に保持されたヒンジ軸37と、表示側ヒンジ部40の軸受け部222とが嵌合する。これにより、表示側筐体2及び操作側筐体3はヒンジ軸37の軸心回りで相対的に回動可能となり、表示側筐体2及び操作側筐体3は開閉可能となる。
【0050】
上述の基板間接続ケーブルの一端は、表示側フロント部材23において隔壁230bで取り囲まれた表示側基板24に対してコネクタ(図示せず)を介して接続される。隔壁230bにおいては、表示側第1ヒンジケース231に繋がった部分に貫通孔230g(図3参照)が設けられており、当該貫通孔230gから基板間接続ケーブルの他端が、隔壁230bの外側に導出される。この貫通孔230gには、防水用パッキンが詰められる。
【0051】
一方で、操作側リア部材32の隔壁320bでは、台座部321の近傍に貫通孔320e(図3参照)が設けられている。表示側筐体2の隔壁230bの外側に導出された基板間接続ケーブルの他端は、この貫通孔320eから操作側筐体3の隔壁230bの内側に導入される。そして、基板間接続ケーブルの他端は、隔壁230bに取り囲まれた操作側基板36に対してコネクタ(図示せず)を介して接続される。
【0052】
基板間接続ケーブルでは、表示側筐体2の隔壁230bから、操作側筐体3の隔壁230bまでの経路において、表示側ヒンジ部40内の巻き付け軸223と、操作側ヒンジ部41内の巻き付け軸323とに巻き付けられている。これにより、基板間接続ケーブルは、表示側筐体2の隔壁230bから操作側筐体3の隔壁230bまでの経路において、ヒンジ機構4内に収められている。
【0053】
以上のようにして、表示側筐体2の表示側基板24と、操作側筐体3の操作側基板36とは、基板間接続ケーブルによって電気的に接続される。基板間接続ケーブルには、信号線、電源線及びグランド線が含まれている。これにより、表示側基板24に形成された信号パターン、電源パターン及びグランドパターンと、操作側基板36に形成された信号パターン、電源パターン及びグランドパターンとがそれぞれ電気的に接続される。
【0054】
<各導電性部材の構造>
次に導電性部材26,28,39について詳細に説明する。導電性部材26,28,39のそれぞれは例えばステンレス鋼で形成されている。
【0055】
図10は導電性部材39の構造を示す斜視図である。図10に示されるように、導電性部材39は、操作側リア部材32に設けられた上述の貫通孔324に挿入されて、操作側基板36に接続される棒状の接続部分39aと、操作側リア部材32の台座部321に載置される板状の載置部分39bと、接続部分39aと載置部分39bとを連結する板状の連結部分39cとで構成されている。接続部分39aには、それが貫通孔324に挿入された際に当該貫通孔324を塞ぐためのリング状の防水用パッキン325が取り付けられている。
【0056】
図11は、導電性部材39の接続部分39aと、操作側基板36とが接続されている様子を示す図である。図11では、操作側基板36及び導電性部材39が設けられた操作側リア部材32における、台座部321付近の概略の断面構造が示されている。
【0057】
図11に示されるように、操作側基板36における操作側リア部材32側の主面36aには、操作側基板36のグランドパターンに接続された導通部材36bが搭載されている。接続部分39aが、軸受け部322及び隔壁320bを貫通する貫通孔324に挿入されつつ、載置部分39bが台座部321に載置されるように、導電性部材39が操作側リア部材32に取り付けられた状態で、操作側基板36が隔壁320bの内側に配置されると、接続部分39aの先端部が操作側基板36上の導通部材36bに当接するようになる。これにより、操作側基板36のグランドパターンと、導電性部材39とが電気的に接続されるようになる。
【0058】
次に導電性部材26の構造について説明する。図12は導電性部材26の構造を示す斜視図である。図12に示されるように、導電性部材26は、平坦部分26aと、当該平坦部分26aの端に繋がった湾曲部分26bとで構成されている。導電性部材26が表示側第1ヒンジケース231に配置される際には、導電性部材26の平坦部分26aが、表示側第1ヒンジケース231の平坦部分231aにおける表示側リア部材22側の面に載置され、導電性部材26の湾曲部分26bが、表示側第1ヒンジケース231の湾曲部分231bの内側の面に載置される。湾曲部分26bの外側の面の形状は、湾曲部分231bの内側の面の形状に対応していることから、湾曲部分26bと湾曲部分231bとは互いに接触するようになる。
【0059】
次に導電性部材28の構造について説明する。図13〜15は導電性部材28の構造を示す図である。図13は導電性部材28その一方の主面28a側から見た際の斜視図であって、図14は導電性部材28をその他方の主面28b側から見た際の斜視図である。図15は、導電性部材28を図13の矢視Bから見た際の側面図である。導電性部材28は、その主面28aが、表示側フロント部材23における表示側リア部材22側の主面23a側に向くように、表示側フロント部材23にインサート成形される。図13では、導電性部材28が表示側フロント部材23にインサート成形された場合において、隔壁230bの外側側面よりも内側の領域を波線500で示している。つまり、波線500の位置は、隔壁230bの外側側面の位置と一致している。
【0060】
図13〜15に示されるように、導電性部材28は、表示側フロント部材23にインサート成形された際に隔壁230bの外側側面よりも内側に位置し、表示側基板24と電気的に接続される隔壁内側部分280と、表示側フロント部材23にインサート成形された際に隔壁内側部分280から隔壁260bの外側に延びる隔壁外側部分281とで構成されている。隔壁外側部分281は導電性部材26と容量結合を成す。隔壁内側部分280は、電子部品収納部分230と一体化され、隔壁外側部分281は、表示側第1ヒンジケース231と一体化される。
【0061】
隔壁外側部分281は、隔壁内側部分280の端に繋がった平坦部分281aと、当該平坦部分281aの端に繋がった湾曲部分281bとを備えている。湾曲部分281bの断面形状は円弧状を成している。湾曲部分281bは、導電性部材28の主面28b側に向かって凸となるように湾曲している。
【0062】
導電性部材28には、隔壁内側部分280における、隔壁外側部分281との境界部分から、隔壁外側部分281の平坦部分281aにかけて、細長い絞り282が設けられている。絞り282は、隔壁外側部分281が隔壁内側部分280から隔壁260bの外側に向かって延びている方向に沿って、主面28a側が凹むように導電性部材28に設けられている。
【0063】
図16は、導電性部材26と、それと容量結合を成す隔壁外側部分281との位置関係を示す図である。図16では、導電性部材28がインサート成形された表示側第1ヒンジケース231と、それに配置された導電性部材26との概略の断面構造が示されている。図16に示されるように、導電性部材26の平坦部分26aと、隔壁外側部分281の平坦部分281aとは、表示側フロント部材23を間に挟んで対向配置されている。そして、導電性部材26の湾曲部分26bと、隔壁外側部分281の湾曲部分281bとは、表示側フロント部材23を間に挟んで対向配置されている。これにより、導電性部材26と導電性部材28とが容量結合する。
【0064】
<3つの導電性部材の間での容量結合>
本実施の形態に係る携帯電話機1において、アンテナ38の特性を向上させるためには、アンテナ38に流れる高周波電流を流すことが可能なグランドプレーンをできるだけ大きく形成することが望まれる。
【0065】
そこで、本実施の形態では、操作側基板36のグランドパターンに電気的に接続された、操作側ヒンジ部41内の導電性部材39と、表示側ヒンジ部40内の導電性部材26とを容量結合させるとともに、導電性部材26と、表示側基板24のグランドパターンに電気的に接続され、かつ表示側筐体2にインサート成形された導電性部材28とを容量結合させることによって、操作側基板36のグランドパターンと、表示側基板24のグランドプレーンとを交流的に接続する。これにより、アンテナ38に流れる高周波電流を流すことが可能な、大きなグランドプレーンを形成することができ、アンテナ38の性能が向上する。以下に、導電性部材26,28,39の間での容量結合について詳細に説明する。
【0066】
図17は閉状態の携帯電話機1でのヒンジ機構4付近の概略の断面構造を示す図である。図17では、表示側筐体2及び操作側筐体3の長手方向での断面構造が示されている。図17に示されるように、操作側ヒンジ部41に設けられた導電性部材39の載置部分39bと、表示側ヒンジ部40に設けられた導電性部材26の湾曲部分26bとは、表示側第1ヒンジケース231の湾曲部分231bを間に挟んで対向配置されている。したがって、導電性部材39と導電性部材26とは容量結合する。
【0067】
一方で、図16を用いて説明したように、導電性部材26の平坦部分26aと、導電性部材28の隔壁外側部分281の平坦部分281aとは対向配置され、導電性部材26の湾曲部分26bと、導電性部材28の隔壁外側部分281の湾曲部分281bとは対向配置されている。したがって、導電性部材26と導電性部材28とが容量結合する。
【0068】
このように、携帯電話機1のヒンジ機構4では、操作側基板36のグランドパターンに電気的に接続された導電性部材39と、表示側基板24のグランドパターンに電気的に接続された導電性部材28と容量結合する導電性部材26とが容量結合しているため、操作側基板36のグランドパターンと、表示側基板24のグランドパターンとは交流的に接続されることになる。よって、アンテナ38に流れる高周波電流を流すことができるグランドプレーンが大きくなり、アンテナ38の性能が向上する。また、導電性部材28は、表示側フロント部材23の広範囲にわたってインサート成形されていることから、この点からもグランドプレーンが大きくなり、アンテナ38の性能が向上する。
【0069】
また、本実施の形態では、互いに容量結合する導電性部材26,39が表示側ヒンジ部40及び操作側ヒンジ部41にそれぞれ設けられているため、表示側筐体2及び操作側筐体3が図17のように閉じている場合であっても、開いている場合であっても、操作側基板36のグランドパターンと、表示側基板24のグランドパターンとを交流的に接続することができ、アンテナ38の性能を向上できる。つまり、ヒンジ機構4内で実現される、導電性部材26,39間の容量結合によって、携帯電話機1の開閉状態にかかわらず、アンテナ38の性能を向上できる。
【0070】
携帯電話機1が閉状態から開状態に変化した場合には、表示側ヒンジ部40に設けられた導電性部材26と、操作側ヒンジ部41に設けられた導電性部材39との間の距離が、携帯電話機1が閉状態の場合と比べて大きくなるものの、導電性部材39と導電性部材26とは対向配置されるため、導電性部材39と導電性部材26とは容量結合する。導電性部材26と導電性部材28とは、ともに表示側筐体2に設けられているため、携帯電話機1の開閉状態が変化したとしても、それらの間の相対的な位置関係は変化せず、導電性部材39と導電性部材26とは容量結合する。したがって、携帯電話機1の開閉状態にかかわらず、操作側基板36のグランドパターンと、表示側基板24のグランドパターンとを交流的に接続することができる。
【0071】
ここで、図18に示されるように、表示側筐体2にインサート成形されている導電性部材28(湾曲部分281b)を表示側第1ヒンジケース231の方に大きく延ばすことができれば、導電性部材28のうち表示側ヒンジ部40内の部分と、操作側ヒンジ部41内の導電性部材39との間の容量結合を強くすることができることから、導電性部材26が不要となる。
【0072】
しかしながら、導電性部材28を、表示側基板24を取り囲む防水用の隔壁230bの外側に延ばしすぎると、導電性部材28を表示側筐体2にインサート成形する際に、隔壁230bの外側において導電性部材28が表示側筐体2の肉厚部分から露出しやすくなる。つまり、導電性部材28の隔壁外側部分281についての隔壁230bの外側への延在距離d(図18参照)が大きくなると、隔壁230bの外側において導電性部材28が表示側筐体2の肉厚部分から露出しやすくなる。隔壁230bの外側において導電性部材28が表示側筐体2から露出すると、その露出部分から水が進入し、当該水が導電性部材28と表示側筐体2との境界面を伝って隔壁230bの内側に進入する。隔壁230bの内側では、インサート成形の製法上、導電性部材28が表示側筐体2から部分的に露出していることから、導電性部材28と表示側筐体2との境界面を伝って隔壁230bの内側に進入した水は、隔壁230bに取り囲まれた、電子部品が存在する空間内に進入し、携帯電話機1の防水性能が低下する。以下にこの問題点について詳細に説明する。
【0073】
導電性部材28を表示側フロント部材23にインサート成形する際には、まず、導電性部材28が金型内に装填される。金型内では、図19に示されるように、導電性部材28は、複数インサートピン600で挟持されている。その後、金型内に成形材料(樹脂)が流し込まれる。そして、金型内の成形材料が硬化されることによって、導電性部材28と表示側フロント部材23が一体成形される。
【0074】
このように、インサート成形においては、導電性部材28がインサートピン600によって保持されていることから、導電性部材28のうち、インサートピン600が当たっている箇所には成形材料は流れ込まず、その結果、当該箇所は表示側フロント部材23の肉厚部分から露出するようになる。導電性部材28のうち隔壁外側部分281をインサートピン600で保持すると、表示側フロント部材23の肉厚部分の内部に形成される隔壁外側部分281は当該肉厚部分から部分的に露出するようになる。そうすると、隔壁外側部分281の露出部分から水が進入するようになる。隔壁外側部分281の露出部分から進入した水は、表示側フロント部材23の肉厚部分の内部に存在する、導電性部材28と表示側フロント部材23との境界面を伝って、隔壁230bの内側まで進入する。インサート成形では、導電性部材28のうち隔壁内側部分280はインサートピン600で保持されていることから、隔壁内側部分280は、表示側フロント部材23の肉厚部分から部分的に露出するようになる。したがって、導電性部材28と表示側筐体2との境界面を伝って隔壁230bの内側に進入した水は、隔壁230bに取り囲まれた空間に進入し、携帯電話機1の防水性能が低下する。よって、隔壁外側部分281をインサートピン600で保持することはできない。
【0075】
図18に示されるように、防水性能が低下することを抑制する観点からインサートピン600で保持することができない隔壁外側部分281の延在距離dが大きくなると、金型内に成形材料を流し込む際に、そのときに発生する圧力によって、保持されていない隔壁外側部分281が撓みやすくなる。その結果、成型後に隔壁外側部分281が表示側フロント部材23の肉厚部分から露出しやすくなり、隔壁外側部分281をインサートピン600で保持した場合と同様に防水性能が低下する可能がある。
【0076】
これに対して、本実施の形態では、ヒンジ機構4内での容量結合を実現するために、表示側筐体2にインサート成形された導電性部材28とは別に、操作側ヒンジ部41内の導電性部材39と容量結合する導電性部材26を表示側ヒンジ部40内に設けている。この導電性部材26は、隔壁230bと同じ表示側筐体2に設けられていることから、図17のように、隔壁260bに近づけて配置することができる。図17の例では、導電性部材26は隔壁230bの外側側面に接触するように配置されている。そのため、導電性部材28を隔壁260bの外側に少し延ばすだけで、導電性部材28を導電性部材26に対して容量結合させることができる。よって、図17に示されるように、導電性部材28の隔壁外側部分281についての隔壁230bへの外側への延在距離dを抑えることができる。その結果、導電性部材28を表示側筐体2にインサート成形する際に、インサートピン600で保持することができない隔壁外側部分281が撓みにくくなり、成型後に表示側筐体2の肉厚部分から露出することを抑制できる。よって、防水性能を維持しつつアンテナ38の性能を向上させることができる。
【0077】
また、本実施の形態では、図13〜15に示されるように、インサートピン600で保持することができない隔壁外側部分281には絞り282が設けられているため、インサート成形の際にさらに撓みにくくなる。よって、表示側筐体2の肉厚部分に形成される隔壁外側部分281が当該肉厚部分から露出することをさらに抑制することができる。
【0078】
なお、上述のように、ある対象部材を成形品に対してインサート成形する際には、成形材料を金型に流し込む際に対象部材が金型内で動かないように対象部材をインサートピンで保持する必要があることから、対象部材のうちインサートピンで支持されたところは成形品の肉厚部分から露出する。したがって、成形品の肉厚部分の内部に形成された部材に当該成形品からの露出部分があるかどうかによって、当該部材が成形品にインサート成形されているかどうかを判断することができる。
【0079】
また、本実施の形態に係る携帯電話機1では、1軸のヒンジ機構4を採用しているが、2軸のヒンジ機構4を採用して、表示側筐体2がその長手方向に沿った軸の回りに回転するようにしても良い。
【0080】
また、上述の実施の形態では、本願発明を携帯電話機に適用する場合について説明したが、本願発明は他の通信装置にも適用することができる。例えば、無線通信機能を有するゲーム機や無線通信機能を有するデジタルオーディオプレーヤなどに本願発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 携帯電話機
2 表示側筐体
3 操作側筐体
4 ヒンジ機構
24 表示側基板
26,28,39 導電性部材
36 操作側基板
38 アンテナ
40 表示側ヒンジ部
41 操作側ヒンジ部
230b 隔壁
280 隔壁内側部分
281 隔壁外側部分
282 絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水機能を有し、アンテナを用いて通信する通信装置であって、
ヒンジ機構によって互いに連結され、開閉することが可能な第1及び第2筐体を備え、
前記第1筐体には、
前記アンテナに電気的に接続された電子部品が搭載された第1基板と、
前記ヒンジ機構の一部を構成する第1筐体側ヒンジ部と、
前記第1基板のグランドパターンに電気的に接続された第1導電性部材と
が設けられ、
前記第2筐体には、
電子部品が搭載された第2基板と、
前記第2基板を取り囲む防水用の隔壁と、
前記隔壁よりも外側に位置し、前記ヒンジ機構の一部を構成する第2筐体側ヒンジ部と、
第2導電性部材と、
前記第2筐体にインサート成形され、前記第2基板のグランドパターンに電気的に接続された第3導電性部材と
が設けられ、
前記第1導電性部材は、前記第1筐体側ヒンジ部に設けられ、
前記第2導電性部材は、前記第1導電性部材と容量結合を成すように前記第2筐体側ヒンジ部に設けられ、
前記第3導電性部材は、
前記隔壁の外側側面よりも内側に位置し、前記第2基板のグランドパターンと電気的に接続された隔壁内側部分と、
前記隔壁内側部分から前記隔壁の外側に延び、前記第2導電性部材と容量結合を成す隔壁外側部分と
を有する、通信装置。
【請求項2】
防水機能を有し、アンテナを用いて通信する通信装置であって、
ヒンジ機構によって互いに連結され、開閉することが可能な第1及び第2筐体を備え、
前記第1筐体には、
前記アンテナに電気的に接続された電子部品が搭載された第1基板と、
前記ヒンジ機構の一部を構成する第1筐体側ヒンジ部と、
前記第1基板のグランドパターンに電気的に接続された第1導電性部材と
が設けられ、
前記第2筐体には、
電子部品が搭載された第2基板と、
前記第2基板を取り囲む防水用の隔壁と、
前記隔壁よりも外側に位置し、前記ヒンジ機構の一部を構成する第2筐体側ヒンジ部と、
第2導電性部材と、
前記第2筐体の肉厚部分の内部に成形され、前記第2基板のグランドパターンに電気的に接続された第3導電性部材と
が設けられ、
前記第1導電性部材は、前記第1筐体側ヒンジ部に設けられ、
前記第2導電性部材は、前記第1導電性部材と容量結合を成すように前記第2筐体側ヒンジ部に設けられ、
前記第3導電性部材は、
前記隔壁の外側側面よりも内側に位置し、前記第2基板のグランドパターンと電気的に接続された隔壁内側部分と、
前記隔壁内側部分から前記隔壁の外側に延び、前記第2導電性部材と容量結合を成す、前記第2筐体の前記肉厚部分から露出しない隔壁外側部分と
を有する、通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信装置であって、
前記隔壁内側部分は、前記第2筐体の前記肉厚部分から部分的に露出している、通信装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の通信装置であって、
前記隔壁外側部分には絞りが設けられている、通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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