説明

通信評価機能付き通信装置

【課題】通信評価機能付き通信装置において、通信プロトコルの差異を調整して支障無く通信評価を行う。
【解決手段】通信装置A1,A2内に、その通信部1a,1bの通信評価を行う通信評価部3を内蔵する。通信評価部3に、異なる通信プロトコルのトランシーバ31,33,35を搭載する。トランシーバ31,33,35を、出力電圧の低い順に切り換えて通信部1a,1bと通信を試み、通信が成立した場合に、そのトランシーバ31,33,35の通信プロトコルが通信部1a,1bに設定された通信プロトコルと判断して通信評価を行う。通信部1a,1bに過負荷を与えずに通信評価できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信評価機能付き通信装置及びそれに関連する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の自動車では、車内通信の通信プロトコルとして例えばCAN(Controller Area Network)通信が採用されることが多くなってきている。そして、かかる通信プロトコルの通信が実車搭載時に正しく行われるか否かを監視、記録及び診断することは、自動車内の通信が高度化するに従って重要度を増してきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、通信プロトコルの診断は、通信装置が自動車に設置される前の時点で、専用の通信評価装置を利用して行われる。
【0004】
しかしながら、通信装置単体で通信が正しく行われることが検出できても、実際に自動車に搭載された以後に、通信装置内の素子の発熱による暴走等の異常事態等を検出できることが望ましい。したがって、通信装置に通信評価機能を予め付与しておき、自動車の出荷時や修理点検時等の任意のタイミングで、通信装置の通信評価を行うことは有意義である。
【0005】
ところで、自動車内の通信においては、エンジン制御等に関して即応性(高速性)が要求される制御系の通信と、パワーウィンドゥやドアロック/アンロック等の比較的低速でも差し支えない車体系の通信とがある。そして、これらの複数の系の通信の要求水準に応じて、様々な特徴を持った種々の通信プロトコルを適宜すれば、全体として効率よく、しかも安価な通信システムを構築することが可能である。
【0006】
具体的に、CAN通信には、大きく分けて、高速CAN(ISO11898),低速CAN(ISO11519),シングルワイヤCAN(SAE-J2411)の3種類の通信プロトコルが知られている。
【0007】
このうち、高速CAN(ISO11898)は、伝送媒体としてツイストペアが適用され、CAN通信の能力を最大限に発揮できる点が特徴となっている。
【0008】
また、低速CAN(ISO11519)は、伝送媒体としてツイストペアが適用され、断線に強く信頼性が高い点が特徴となっている。
【0009】
さらに、シングルワイヤCAN(SAE-J2411)は、伝送媒体としてシングルワイヤが適用され、構造が簡単で安価な点が特徴となっている。
【0010】
したがって、これらの各通信プロトコルの特徴を考慮して、自動車内の制御系や車体系の各通信に適用することが好ましいと言える。
【0011】
しかしながら、CAN通信に係る上記の3種類の通信プロトコルのうち、高速CAN(ISO11898)の通信速度は最大1Mbps、低速CAN(ISO11519)の通信速度は最大125Kbps、シングルワイヤCAN(SAE-J2411)の通信速度は最大40Kbpsであり、通信速度が異なって規定されている。
【0012】
また、これらの通信プロトコルは、信号の電圧レベルについても、次の表1及び表2のように異なって規格化されている。
【0013】
【表1】

【0014】
【表2】

【0015】
ここで、表1は、高速CAN及び低速CANのそれぞれについての電圧レベルを示しており、また表2は、シングルワイヤCANについての電圧レベルを示している。そして、表1において、高速CANのドミナントレベルの最高値は4.5Vであり、低速CANのドミナントレベルの最高値は5Vであり、また、表2において、シングルワイヤCAN電圧レベルの最高値(ウェイクアップ伝送モード)は12Vである。
【0016】
このように、CAN通信の3種類の通信プロトコルでは、物理層での規格が異なっているため、これらの互いに異なる通信プロトコルの通信の評価を行う場合、同一の評価方式で通信評価を行うことは困難であった。したがって、通信装置に通信評価機能を付与する場合、通信プロトコルが異なる毎に異なった通信評価機能を付与する必要がある。そうすると、通信装置内に通信評価機能を備えた所定の半導体チップを実装する際に、この通信評価用の半導体チップを通信装置の通信プロトコル毎に予め設計して管理する必要があり、多大な労力が要求されるとともに、大量生産によるコストメリットが得られず高価になってしまう。
【0017】
そこで、本発明の課題は、通信プロトコルの差異を調整して支障無く通信評価を行うことのできる通信評価機能付き通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決すべく、請求項1に記載の発明は、複数の通信プロトコルのうちのいずれかの通信プロトコルで通信を行う通信部と、複数の通信プロトコルについて通信評価を行うことが可能とされ、且つ当該複数の通信プロトコルのうち、前記通信部に適用される前記通信プロトコルを選択して通信評価を行う通信評価部とを備えるものである。
【0019】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通信評価機能付き通信装置であって、前記通信評価部が、前記複数の通信プロトコルの各物理層のインタフェースを司るようそれぞれ形成された複数のトランシーバと、前記複数のトランシーバを切り替える切換スイッチと、前記切換スイッチを切り換えて前記複数のトランシーバを順次選択しながら、選択されたトランシーバを通じた前記通信部との間での通信が成立しているか否かを判断し、成立している場合に当該選択されたトランシーバの通信プロトコルでの通信評価を行う通信評価用コントローラとを備えるものである。
【0020】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の通信評価機能付き通信装置であって、前記通信評価用コントローラが、前記複数のトランシーバのうち、出力される信号の電圧の低い順番に前記複数のトランシーバを順次選択するものである。
【0021】
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載の通信評価機能付き通信装置であって、前記複数のトランシーバから出力される信号の電圧を抑制して前記通信部を保護する電圧保護回路をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明の通信評価機能付き通信装置は、通信部が、複数の通信プロトコルのうちのいずれかの通信プロトコルで通信を行う場合に、この通信部の通信評価を行う通信評価部が、複数の通信プロトコルについて通信評価を行うことが可能とされ、且つ当該複数の通信プロトコルのうち通信部に適用される通信プロトコルを選択して通信評価を行うので、外部の専用の通信評価装置を通信装置に接続しなくても、容易に通信評価を行うことが可能である。この場合に、通信部がどのような通信プロトコルにより通信を行うものであっても、同一の通信評価部を用いて通信評価を行うことができる。したがって、通信評価部として通信部の通信プロトコル毎に予め設計して管理する必要がなく、設計の労力を軽減でき、且つ通信評価部として大量生産によるコストメリットが得られる利点がある。
【0023】
この場合、請求項2に記載のように、通信評価部の通信評価用コントローラが、切換スイッチを切り換えて複数のトランシーバを順次選択しながら、選択されたトランシーバを通じた通信部との間での通信が成立しているか否かを判断し、成立している場合に当該選択されたトランシーバの通信プロトコルでの通信評価を行うので、通信部がどのような通信プロトコルにより通信を行うものであっても、その通信プロトコルを通信評価部によって容易に峻別して支障無く通信評価を行うことができる。
【0024】
請求項3に記載の発明の通信評価機能付き通信装置は、通信評価用コントローラが、複数のトランシーバのうち、出力される信号の電圧の低い順番に複数のトランシーバを順次選択するので、耐電圧の低い通信部に対して大電圧を印加して過負荷となる事態を防止できる。
【0025】
請求項4に記載の発明の通信評価機能付き通信装置は、電圧保護回路により、複数のトランシーバから出力される信号の電圧を抑制して通信部を保護するので、耐電圧の低い通信部に対して大電圧を印加して過負荷となる事態を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
<構成>
図1及び図2は本発明の一の実施形態に係る通信評価機能付き通信装置を示すブロック図であって、図1は高速CANまたは低速CANが適用された通信評価機能付き通信装置A1、図2はシングルワイヤCANが適用された通信評価機能付き通信装置A2を示している。
【0027】
この通信評価機能付き通信装置A1,A2は、自動車に搭載されて、複数の電子ユニットの間で通信を行うものであり、高速CAN、低速CAN及びシングルワイヤCANの3つの通信プロトコルのうち所望の通信プロトコルで通信を行う通信部1a,1bと、この通信部1a,1bの初期設定時や故障診断時等に、自動的に通信評価(ダイアグノーシス)を行う通信評価部3とを備える。
【0028】
通信部1a,1bは、高速CAN(図1)、低速CAN(同じく図1)及びシングルワイヤCAN(図2)といった異なる通信プロトコルで異なった回路部品が適用されるもので、それぞれにおいて、通信プロトコルの物理層の処理を受け持つCANトランシーバ11a,11bと、その後のデータ処理を受け持つCANコントローラ13と、これらの制御を行うCPU15とを備える。
【0029】
CANトランシーバ11a,11bは、CAN通信の物理層のインタフェースを司る集積回路であって、高速CAN、低速CAN及びシングルワイヤCANといった異なる通信プロトコルで異なった部品が使用される。高速CAN及び低速CANにおいては、図1のように、CANトランシーバ11aは、2つの独立な通信ワイヤ(CAN#H,CAN#L)17a,17b上で差動しながらシリアルデータを転送する。また、シングルワイヤCANでは、図2のように、CANトランシーバ11bは、1本の通信ワイヤ17cでシリアルデータを転送する。
【0030】
CANコントローラ13は、CANトランシーバ11a,11bに対して2つの信号線(CAN#H,CAN#L)19a,19bにより接続されており、この両信号線(CAN#H,CAN#L)19a,19bの電位差によりCANバス(通信線)21a,21b,21cのレベルを判断し、例えばデータリンク層、ネットワーク層及びトランスポート層の通信制御を行う。
【0031】
CPU15は、CANコントローラ13に対して2つの信号線23a,23bにより接続されており、例えばセッション層、プレゼンテーション層及びアプリケーション層の通信制御を行う。
【0032】
尚、通信部1a,1bのCANトランシーバ11a,11b及びCANコントローラ13は、別々の集積回路として構成されてもよいし、あるいは、単一の集積回路にまとめて抗されても良い。さらに、CPU15は、図1及び図2では通信部1a,1b内の構成要素として描かれているが、通信部1a,1bとは別途の構成として、この通信部1a,1bが受け持つ他の電子制御ユニット内のCPUを利用してもよい。
【0033】
通信評価部3は、高速CAN(図1)、低速CAN(同じく図1)及びシングルワイヤCAN(図2)といった異なる通信プロトコルに共通に同一のものが使用されるものであり、通信部1a,1bの各通信ワイヤ17a,17b,17cに接続されて当該通信ワイヤ17a,17b,17cにおける通信評価を行う。具体的に、通信評価部3は、高速CAN用トランシーバ31と、低速CAN用トランシーバ33と、シングルワイヤCAN用トランシーバ35と、通信評価用CANコントローラ(通信評価用コントローラ)37と、3個のトランシーバ31,33,35を切り替える第1及び第2の切換スイッチ38,39と、電圧保護回路41とを備える。
【0034】
3個のトランシーバ31,33,35は、互いに物理層の異なる高速CAN、低速CAN及びシングルワイヤCANの規格にそれぞれ対応して、各通信プロトコルの物理層のインタフェースを司る回路であって、各通信ワイヤ17a,17b,17cと通信評価用CANコントローラ37との間でシリアルデータを転送する。そして、高速CAN用トランシーバ31は、前述の表1に示すように、最大4.5Vの電圧の信号を出力し、低速CAN用トランシーバ33は最大5Vの電圧の信号を出力し、シングルワイヤCAN用トランシーバ35は、12Vの電圧レベルのウェイクアップ伝送モード(表2参照)を除くローレベル=0V、ハイレベル=4Vのデータを出力するようになっている。
【0035】
通信評価用CANコントローラ37は、SOFフィールド、プライオリティフィールド、メッセージ長フィールド、ディスティネーションIDフィールド等の所定のフィールドを有する所定のデータフレームの通信評価用データを通信部1a,1bに出力し、かかる通信評価用データに応答して通信部1a,1bから出力された信号を評価することで、通信部1a,1bにおける通信評価を行うようになっている。
【0036】
また、通信評価用CANコントローラ37は、第1及び第2の切換スイッチ38,39を切り替える機能と、この両切換スイッチ38,39を切り換えることで選択された各通信プロトコルのトランシーバ31,33,35で通信可能か否かをチェックする機能と、通信可能であればその物理層の規格であったと判断して通信評価を行う機能とを有する。具体的には、後述のように、高速CAN用トランシーバ31〜低速CAN用トランシーバ33〜シングルワイヤCAN用トランシーバ35の順で選択されるように、両切換スイッチ38,39を切り換えて通信可能か否かを判断し、通信可能であった場合に、その時に通信可能であったトランシーバ31,33,35を選択している切換スイッチ38,39の切換状態を保持して、通信評価を行うようになっている。
【0037】
さらに、通信評価用CANコントローラ37は、後述の電圧保護回路41の電圧保護機能の有効/無効を切り換えるようになっており、具体的に、第1及び第2の切換スイッチ38,39により高速CAN用トランシーバ31または低速CAN用トランシーバ33を選択しているときには、電圧保護回路41の電圧保護機能を有効にする一方、第1及び第2の切換スイッチ38,39によりシングルワイヤCAN用トランシーバ35を選択しているときには、電圧保護回路41の電圧保護機能を無効にする。
【0038】
第1及び第2の切換スイッチ38,39は、上記の3個のトランシーバ31,33,35の両端に接続されて、通信評価用CANコントローラ37からの制御に基づいて、これらの3個のトランシーバ31,33,35のいずれか1個を選択するようになっている。
【0039】
電圧保護回路41は、通信部1aが高速CAN用のものであったり低速CAN用のものであったりする場合に、誤ってシングルワイヤCAN用の12Vの電圧を印加するのを防止するものであって、通信評価用CANコントローラ37からの制御に基づいて電圧保護機能の有効/無効が切り換えられて、有効の場合に、通信時の電圧が5Vを超えるデータが各トランシーバ35から出力された場合に、かかるデータの最大電圧を5V以下に設定するようになっている。尚、この場合において、前述の表1のように高速CANの最大電圧が4.5Vであるのに、5Vのデータを許容するのは、実際には高速CANであっても5Vの電圧までは回路破壊を行うことが無く支障無く通信できるものと考えられるからである。
【0040】
尚、通信評価部3は、単一の半導体集積回路によってまとめて構成されてもいいし、あるいは、この通信評価部3の各トランシーバ31,33,35、通信評価用CANコントローラ37、各切換スイッチ38,39及び電圧保護回路41が個々の別々の回路部品として構成されてもよく、あるいはこれらの一部ずつが集積回路として分けられて構成されてもよい。
【0041】
<動作>
以下に、例えば、通信装置A1,A2の出荷時、当該通信装置A1,A2の自動車に搭載された時点、あるいは自動車の修理点検時等において、上記構成の通信評価機能付き通信装置A1,A2の通信評価を行う場合の動作を説明する。
【0042】
前述の表1及び表2のように、一般に、シングルワイヤCANでは12Vの通信を行うこともあるが、高速CANでは最大で4.5Vの電圧が通信されるように規定され、また、低速CANについては、最大が5Vの電圧が通信されるように規定されている。
【0043】
このように、通信データの電圧レベルが、高速CAN〜低速CAN〜シングルワイヤCANの順で大きくなっているため、高速CANのように電圧レベルの低い物理層の規格の通信部1aに対して大電圧を印加することは、通信部1aの内部回路に過大な負荷を与えることになり、最悪の場合は回路破壊を生じかねない。
【0044】
そこで、通信部1aの内部回路の過負荷を防止すべく、通信評価用CANコントローラ37により、切換スイッチ38,39を、高速CAN〜低速CAN〜シングルワイヤCANの物理層の規格の順番に電圧レベルを徐々に大きくするようにして切り換え、それぞれの通信プロトコルにおいて通信部1a,1bとの間で通信可能か否かをチェックする。この場合、例えば、高速CANでは通信不能であったが、低速CANでは通信可能であった場合、低速CANであると判断する。
【0045】
具体的には、図3に示したフローチャートのように、まずステップS01において、通信評価用CANコントローラ37により、切換スイッチ38,39を、高速CAN用トランシーバ31に切り換える。
【0046】
この際、通信評価用CANコントローラ37は、電圧保護回路41の電圧保護機能を有効にする。そうすると、電圧保護回路41は、通信時の電圧が5Vを超えるデータが流れようとした場合に、かかるデータの最大電圧を5V以下に設定する。これにより、通信部1a,1bが高速CAN用のもの(図1に示した通信部1a)であった場合に、この通信部1aに過負荷を与えるのを防止できる。
【0047】
そして、ステップS02において、通信評価用CANコントローラ37から高速CAN用トランシーバ31及び電圧保護回路41を通じて通信部1a,1bに所定のデータ(コマンドデータ)を送信する。
【0048】
このとき、通信評価用CANコントローラ37は、1ビットのデータを時系列的に16分割するなどして、所定の位置にビットを立てるようにする。この場合の分割されたビットの小単位をTQとし、例えば8TQの場合が1/2、12TQの場合が3/4のビットタイミングとする。そして、通信速度、パルス周波数及びサンプリングポイント(データ内でビットをどの位置に立てるか、例えば、ビットを3/4の位置に立てた時に通信部1a,1bがコマンドデータを認識して応答データを返信するのか、あるいは、ビットを1/2の位置に立てた時に通信部1a,1bがコマンドデータを認識して応答データを返信するのか等を判断しながら、通信部1a,1bとの間で通信が成立するか否かを判断する。
【0049】
そして、通信評価部3と通信部1a,1bとの間で通信が成立した場合は、この通信部1a,1bが高速CAN用の通信部1aであると判断し、通信評価を行う(ステップS03)。
【0050】
一方、ステップS02において、通信が成立しないと判断した場合は、次のステップS04に進み、通信評価用CANコントローラ37は、電圧保護回路41の電圧保護機能を有効にした状態のまま、切換スイッチ38,39を、低速CAN用トランシーバ33に切り換える。
【0051】
続いて、ステップS05において、通信評価用CANコントローラ37から低速CAN用トランシーバ33及び電圧保護回路41を通じて通信部1a,1bに所定のコマンドデータを、上記同様にして送信し、通信部1a,1bとの間で通信が成立するか否かを判断する。
【0052】
そして、通信評価部3と通信部1a,1bとの間で通信が成立した場合は、この通信部1a,1bが低速CAN用の通信部1aであると判断し、通信評価を行う(ステップS03)。
【0053】
一方、ステップS05において、通信が成立しないと判断した場合は、次のステップS06に進み、通信評価用CANコントローラ37は、電圧保護回路41の電圧保護機能を無効に切換え、さらに切換スイッチ38,39を、シングルワイヤCAN用トランシーバ35に切り換える。
【0054】
次のステップS07では、通信評価用CANコントローラ37からシングルワイヤCAN用トランシーバ35及び電圧保護回路41を通じて通信部1a,1bに所定のコマンドデータを、上記同様にして送信し、通信部1a,1bとの間で通信が成立するか否かを判断する。
【0055】
そして、通信評価部3と通信部1a,1bとの間で通信が成立した場合は、この通信部1a,1bが低速CAN用の通信部1aであると判断し、通信評価を行う(ステップS08)。
【0056】
このようにして、各通信プロトコルのトランシーバ31,33,35を順次変更して通信部1a,1bにコマンドデータを伝送した後、このデータに対して通信部1a,1bから応答された応答データを受信したときに、その通信プロトコルが適用された通信部1a,1bであると判断するので、通信部1a,1bがどのような通信プロトコルにより通信を行うものであっても、同一の通信評価部3を用いて通信評価を行うことができる。したがって、通信評価部3として通信部1a,1bの通信プロトコル毎に予め設計して管理する必要がなく、設計の労力を軽減でき、且つ通信評価部3として大量生産によるコストメリットが得られる利点がある。
【0057】
また、通信評価用CANコントローラ37が、複数のトランシーバ31,33,35のうち、出力される信号の電圧の低い順番にトランシーバ31,33,35を順次選択するので、耐電圧の低い通信部1a,1bに対して大電圧を印加して過負荷となる事態を防止できる。
【0058】
さらに、電圧保護回路41により、複数のトランシーバ31,33,35から出力される信号の電圧を抑制して通信部1a,1bを保護するので、耐電圧の低い通信部1a,1bに対して大電圧を印加して過負荷となる事態を防止できる。
【0059】
尚、上記実施形態では、通信評価部3から通信部1a,1bに対してコマンドデータを送信し、このコマンドデータに対して通信部1a,1bから応答データが返信されるか否かを判断することをもって、通信可能か否かを判断していたが、通信ワイヤ17a,17b,17cにおいて所定のデータタイミングのビットがレセシブからドミナントに反転するか否かによって、通信プロトコルが合致しているか否かを判断するようにしてもよい。具体的に、送信元の通信評価部3から送信先の通信部1a,1bにデータを送信する場合、データ内の所定の位置に設定されるAckフィールドという部分の論理値を「0」に設定し、このAckフィールドのタイミングでレセシブレベルを出現させる。かかるデータを受信した通信部1a,1bは、このAckフィールドの論理値を「1」に変換して、ドミナントレベルを出現させる。これにより、通信評価部3では、Ackフィールドとしてレセシブを指定したにもかかわらず、このAckフィールドがドミナントとなっている旨を検出し、これにより通信部1a,1bにおいてデータが支障無く認識されたことを通信評価部3で判断することができる。
【0060】
逆に、Ackフィールドとしてレセシブを指定した状態で、そのAckフィールドがレセシブのままである場合には、通信部1a,1bにおいてデータが認識されていないことを通信評価部3で判断することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、CAN通信を例に挙げて説明したが、CAN通信に限るものではなく、例えばFlexRayやTTP/C等の他の通信に適用しても差し支えない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一の実施形態に係る通信評価機能付き通信装置の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明の一の実施形態に係る通信評価機能付き通信装置の他の例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一の実施形態に係る通信評価機能付き通信装置における通信評価の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0063】
A1,A2 通信装置
1a,1b 通信部
3 通信評価部
11a,11b,11c CANトランシーバ
13 CANコントローラ
15 CPU
17a,17b,17c 通信ワイヤ
31,33,35 トランシーバ
37 通信評価用CANコントローラ
38,39 切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の通信プロトコルのうちのいずれかの通信プロトコルで通信を行う通信部と、
複数の通信プロトコルについて通信評価を行うことが可能とされ、且つ当該複数の通信プロトコルのうち、前記通信部に適用される前記通信プロトコルを選択して通信評価を行う通信評価部と
を備える通信評価機能付き通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信評価機能付き通信装置であって、
前記通信評価部が、
前記複数の通信プロトコルの各物理層のインタフェースを司るようそれぞれ形成された複数のトランシーバと、
前記複数のトランシーバを切り替える切換スイッチと、
前記切換スイッチを切り換えて前記複数のトランシーバを順次選択しながら、選択されたトランシーバを通じた前記通信部との間での通信が成立しているか否かを判断し、成立している場合に当該選択されたトランシーバの通信プロトコルでの通信評価を行う通信評価用コントローラと
を備える通信評価機能付き通信装置。
【請求項3】
請求項2に記載の通信評価機能付き通信装置であって、
前記通信評価用コントローラが、前記複数のトランシーバのうち、出力される信号の電圧の低い順番に前記複数のトランシーバを順次選択することを特徴とする通信評価機能付き通信装置。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の通信評価機能付き通信装置であって、
前記複数のトランシーバから出力される信号の電圧を抑制して前記通信部を保護する電圧保護回路をさらに備える通信評価機能付き通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−14118(P2006−14118A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190763(P2004−190763)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】