説明

通報システム及びそれに用いられる電子機器

【課題】 周波数別の機器(親機・子機)を作る必要がなく、設定が不要で、無線を用いて短時間で確実に緊急通報を伝えることができる緊急通報システムを提供すること
【解決手段】 親機は、子機向け信号を、複数の所定の周波数を順次切り替えて送信する。複数の親機は、図に示すように、それぞれの複数の所定の周波数(CH1〜CH4)の順次切り替えのタイミングが等しく、順次切り替えの順序が等しく、複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を異なる周波数とした複数のグループ(A〜D)で構成する。子機は、親機の1つの周波数の送信時間中に全ての周波数を順次走査して子機向け信号を受信する。これにより、いずれのグループの親機からの信号も受信できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緊急通報システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通報を行なう場合に複数の端末から警報音を一斉通知するシステムが知られている。通報としては、例えば、問題の発生を知らせる通報や、災害の発生やその予知情報の発生などを知らせる通報などが挙げられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、定点観測によって地震を観測する地震観測装置と、地震観測装置によって観測された地震の観測情報を解析する解析装置と、この解析装置の解析結果に応じて所定の地震警報を送出する装置と、当該装置から送出された地震警報を伝達するネットワークと、ネットワークを介して受信した地震警報に応じて地震の到来を警報する複数の端末とを有する地震警報システムが示されている。このシステムでは、例えば、地震の主要振動であるS波(セカンダリ波)が伝達される前に、P波(プライマリ波)の初動を検出し、マグニチュード、震央位置及び深さを推定し、地震到来を警告する警報情報を生成するとともに、この警報情報をインターネットや公衆回線網などのあらゆるネットワークを介して、S波到来前に事業者や個人に伝達することによって、人的および物的被害を最小限度に食い止めることを目的としている。
【特許文献1】特開2001−307265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に開示された技術を用い、所定の通報(例えば緊急情報)を個人宅に伝達する場合、上記の複数の端末は、各家庭に設置することになる。個人宅で簡単に利用できるネットワークは、インターネットや公衆回線網があるが、いずれにしても、そのネットワークに接続する箇所は、電話のモジュラージャック等となる。従って、端末は、その電話のモジュラージャック等が既に配線されている位置(例えばリビング)に設置することになる。その結果、他の部屋にいる人は、リビングに設置された端末から報知される緊急通報を聞き逃す可能性がある。
【0005】
この問題を解決するためには、たとえば、緊急通報を通知する端末は、ネットワークに有線で接続された親機と、当該親機から緊急通報を無線で受信した場合に通知を行なう子機とからなる端末システムとすることができる。このようにすれば、子機の設置場所は親機との無線電波が届く範囲に設置すればよく、配線が不要となるため、設置の自由度が高まる。つまり、ユーザが子機を持ち歩き、移動先の部屋に置いたり、手元に持ったりすることで、ユーザは、宅内のどの位置にいてもその子機から報知される緊急通報を確実に認識することができる。また、子機を複数用意し、それらを個人宅内の適宜位置にすることで、宅内のどの位置にいてもいずれかの子機から報知される緊急通報を認識することができる。
【0006】
ところが親機と子機との間で、無線で行なう場合、複数の親機の設置位置が近接する場合には、近接する親機からの電波も存在する。隣接する親機の周波数が同一である場合、同一での周波数の妨害が発生し、各子機は親機からのデータを受信できなくなる場合がある。従って、たとえば親機をマンションなどの集合住宅の各家庭に設置した場合には、複数の親機の設置位置が近接し、上記の問題を生じるおそれがある。
【0007】
確実に親機から発せられたデータを子機に伝送させるためには、親機と子機の間で双方向通信して通信ができたか確認する方法があるが、隣接する部屋からの電波でキャリアセンスが働き、短時間で報知できないという問題が起こる。また双方向通信は、コストの増加を招くという問題を有する。一方、キャリアセンス無しの単方向無線通信システムでは、周波数別の機器を作る必要があり、設置時に近接する部屋との周波数の区分けや周波数設定が必要になるという問題がある。
【0008】
緊急通報を発する端末は、緊急時に確実に動作して、通報を発することが要求される。また、緊急通報を発するまでの時間は、短時間であることが要求される。さらには、ローコストで実現でき、機器の設置時の設定が不要であることが望ましい。
【0009】
そこで、本発明は、周波数別の機器(親機・子機)を作る必要がなく、設定が不要で、無線を用いて短時間で確実に緊急通報を伝えることができ、ローコストで、機器の設定が不要な通報システム及びそれに用いられる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明に係る緊急通報システムは、(1)外部からの所定の信号を受信した際に子機に対して子機向け信号を無線送信する親機と、前記子機向け信号を受信した場合、所定の報知をする子機と、を備える通報システムにおいて、前記親機は、前記子機向け信号を、複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成であり、前記子機は、前記複数の所定の周波数を走査して前記子機向け信号を受信する構成であって、前記親機は、自己が、前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループのいずれに属するかを判別し、当該判別された開始位置から前記所定のパターンでの送信を開始するように構成した。
【0011】
親機が行なう、自己がどのグループに属しているかの判別は、例えば、スイッチ等により手動で設定された状態に基づいて判別するようにしてもよいし、後述のように、親機に固有の識別符号に基づいて決定した内容から判別するようにしてもよい。
【0012】
(2)(1)の発明を前提とし、前記外部からの所定の信号は、外部からの緊急通報信号であり、前記所定の報知は、緊急通報の報知であって、前記複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成は、複数の所定の周波数を順次切り替えて送信する構成であり、前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループは、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を異なる周波数とした複数のグループとすることができる。
【0013】
(3)別の解決手段としては、外部からの所定の信号を受信した際に子機に対して子機向け信号を無線送信する複数の親機と、前記子機向け信号を受信した場合、所定の報知をする複数の子機と、を備える通報システムにおいて、前記親機は、前記子機向け信号を、複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成であり、前記子機は、前記複数の所定の周波数を走査して前記子機向け信号を受信する構成であって、複数の前記親機は、前記所定のパターンが同一であり、当該所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループで構成することである。
【0014】
(4)(3)の発明を前提とし、前記外部からの所定の信号は、外部からの緊急通報信号であり、前記所定の報知は、緊急通報の報知であって、前記複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成は、複数の所定の周波数を順次切り替えて送信する構成であり、複数の前記親機は、前記順次切り替えのタイミングが等しく、前記順次切り替えの順序が等しく、前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループは、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を異なる周波数とした複数のグループとすることができる。
【0015】
親機は、複数の周波数(チャンネル)を順次切り替えながら子機向けの信号を送信する。仮に、使用する周波数を4種類(CH1,CH2,CH3,CH4)とすると、「順次切り替えの順序が等しい」とは、例えば、ある親機は、“CH1→CH2→CH3→CH4→CH1→CH2→CH3→CH4→……”と順次切り替えながら送信することになる。もちろん、使用する周波数の数は、4種類よりも少なくても良いし、多くても良い。そして、グループの異なる親機は、最初に送出する所定の周波数が異なるので、上記のCH1から開始する親機を1つのグループとした場合、CH2から開始するグループは、“CH2→CH3→CH4→CH1→CH2→CH3→CH4→CH1→……”と順次切り替えながら送信することになる。また、グループの数は、最大で使用する周波数の種類の数(上記の例では、“4”)となる。もちろん、グループの数を、使用する周波数の種類の数よりも少ない数に設定しても良い。
【0016】
また、複数の親機における複数の所定の周波数の順次切り替えのタイミングが等しいとは、切り替えのパターン(1つの周波数を用いて送信する時間や、休止時間がある場合にはその休止している時間など)を同じにすることである。従って、異なるグループに属する親機が、最初の周波数での送信を同時に開始した場合、周波数の切り替えタイミングが一致するので、複数の親機は、それぞれ異なる周波数を用いて送信することになり、同時に同一周波数を用いて送信することを抑制できる。もちろん、各親機の送信開始時期がずれた場合には、送信する周波数の切り替え時期も、その分だけずれることになる。
【0017】
また、本発明の親機は、「複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信」すればよいので、必ずしも、上述のように、切り替えの順序が等しくなくてもよく、そのパターンは任意である。
【0018】
なお、使用する周波数(CH)の数を増すと、グループ数も増すことができるので、近接・隣接する親機が同時に同じ周波数を用いて送信してしまうといった重なりを生じる可能性は減る。ただし、スキャン速度の関係で子機への通達時間が増加するため、数種類(数CH)程度が望ましい。ただし、スキャン速度の上げることより周波数の数(CH数)を増すことはできる。
【0019】
一方、子機は、親機が送信に使用する複数の所定の周波数をスキャン(順次走査)して子機向け信号を受信するので、対となる親機のグループがいずれであっても受信することができる。この手段を用いる事により、コストの安い単方向システムで構築できる。また、周波数違いのセットを作らなくて良い(管理もなし)。設置業者は、周波数設定をする事無く設置できる。そして、確実に早く地震速報を子機に伝えることができる。
【0020】
なお、「外部から緊急通報信号を受信した」とは、例えば、ネットワーク・回線を介して緊急通報を発する必要があることを示す信号を受信した場合をいう。複数の親機は、同時に外部から緊急通報信号を受信する構成であることが望ましい。同時に受信すると、送信開始するタイミングが一致する可能性が高く、送信に使用する周波数の切り替え時期がほぼ一致するので、使用する周波数の重なりを発生する可能性が可及的に抑制される。
【0021】
外部からの緊急通報信号は、実施形態では、地震警報信号としたが、本発明はこれに限ることはなく、たとえば、大雨・洪水・津波その他の気象に関する警報の通知であったり、土砂崩れその他の避難勧告・避難警報等をするための通知であったり、周囲・地域の人に対して一斉に通知するような情報を伝えるための信号などがある。更に、本発明では、必ずしも緊急性を有しない情報の通報を行なうシステムにも適用できる。この緊急性を有しない情報の通報は、例えば、官公庁等からのお知らせや、周辺地域で開催される催し物その他の公告・宣伝情報などがある。
【0022】
また、(2),(4)に示すように、通知・通報する情報が緊急情報の場合、同時に多数の人に確実に通報する必要がある。そこで本発明では、使用する周波数の衝突により通報がスムーズに行なわれない状況の発生を未然に防止することができるので、特に好ましく適用できる。
【0023】
(5)前記親機は、集合住宅の各住戸に設置されるものであり、近隣の住戸に設置する親機は、異なるグループのものとするとよい。このようにすると、近接する親機から送信される子機に向けての信号は、互いに異なる周波数で送信され、確実に通信することができる蓋然性が高くなる。なお、この場合に、各親機に対しては、一斉に(好ましくは同時に)緊急通報信号が送られるようにするのが好ましい。一例としては、一旦集合住宅の共有設備に設置された配信システム(実施形態・変形例の“ルーター”等)が緊急信号を受信し、各住戸に設置された親機に対して緊急通報信号を送信するようにすることである。
【0024】
(6)前記子機は、前記複数の所定の周波数を全て走査する1サイクルの時間が、前記親機が前記複数の所定の周波数のうちのある1つの周波数を用いて子機向けの信号を送信している時間よりも短く設定するとよい。このようにすると、親機の1回の送信の最中に、子機が受信することができる。
【0025】
(7)前記親機は、1つの周波数を用いて子機向けの信号を送信後に、所定時間送信を行なわない休止期間をおいた後に、別の周波数へ切り替えて送信をするように構成するとよい。親機は、子機向け信号を、ある周波数で送信した後、送信を行なわない時間を設けずに、続けてすぐに別の周波数へ切り替えて送信をするようにしてもよい。このようにすれば、緊急通報を早く行なうことができる。一方、(4)の発明のように、親機は、子機向け信号を、ある周波数で送信した後、所定時間送信を行なわないようにした後、別の周波数へ切り替えて送信をするようにした場合には、複数の親機の間で、外部から緊急通報信号を受信するタイミングにずれがあった場合でも、そのずれが、送信を行なわない所定時間内であれば、周波数のぶつかりを避けることができる。特に、送信を行なわない時間を、1つの周波数の送信時間より長く設定すると、より好ましい。
【0026】
(8)前記親機は、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を当該親機に固有の識別符号に基づいて決定するようにするとよい。このようにすれば、グループごとに親機を作る必要がなくなる。よって、例えば、グループごとに製造ラインを分けたり、製造するグループが特定のものに偏らないように管理したり、出荷を管理したりすることが不要となるため、製造や管理のコストを削減できる。また、設置業者が親機や子機を設置する際に、それぞれの機器について周波数の設定をすることなく設置することができる。よって設置のコストも削減できる。また、親機に固有の識別符号は、例えば製造番号などの元々設定されるものを利用しても良いし、このグループ分けのために設けても良い。
【0027】
(9)前記親機と前記子機との間で行なわれる無線送信は、周波数変調方式で行なうようにするとよい。周波数変調方式(FM波)であれば、万一、複数の親機の送信チャンネルが重なったとしても、それぞれの子機は、それぞれの子機にとって最も強い電界強度の電波によって子機向け信号を受信することができ、他の変調方式による場合に比べて確実に緊急通報を行なうことができる。
【0028】
(10)前記親機と前記子機との間で行なわれる無線送信は、特定小電力無線で行なうようにするとよい。無線送信の空中線電力は任意の値とすることができる。例えば、放送網や携帯電話網で利用される電力としてもよいし、あるいは、免許が不要な微弱電波に相当する電力としてもよい。しかし、無線送信は、特に、特定小電力無線で行なうとよい。このようにすれば、マンションや団地のように住宅が集合している場所に対する一斉通報が容易にでき、特定の地域に対してのみ通報を行なうことも容易にできる、更に、簡単な回路構成で通信距離を長くすることができる等の各種の作用効果を奏する。また、使用する周波数は任意の値とすることができるが、特に400MHz帯を用いるとよい。このようにすれば、設置環境による影響を少なくできる。
【0029】
(11),(12)本発明の電子機器は、上記の(1)〜(10)のいずれか1つに記載の通報システムにおける子機の構成を有する電子機器であったり、上記の(1)〜(10)のいずれか1つに記載の通報システムにおける親機の構成を有する電子機器であったりすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明では、周波数別の機器(親機・子機)を作る必要がなく、設定が不要で、無線を用いて短時間で確実に緊急通報を伝えることができ、ローコストで、機器の設定が不要となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明による緊急通報システムの実施形態としての地震警報システムに適用した例について説明する。本実施形態の地震警報システムが外部から受信する緊急通報信号を発信するための配信システムは、以下のようになっている。
【0032】
図1に示すように、まず、上位側では、定点観測によって地震を観測する複数の観測装置1と、観測装置1によって観測された地震の観測情報を解析して、その解析結果に応じて第一の地震警報信号を送出する気象観測団体側配信システム2を備える。
【0033】
観測装置1は、地震の発生によって伝達されるP波の周期や振幅等の諸特性を検出する。気象観測団体側配信システム2は、観測装置1からの観測情報を分析し、地震の震源の位置(北緯・東経)、震源の深さ、マグネチュード、最大震度に関する情報を含む第一の地震警報情報を生成する。これらは、気象庁等の気象観測団体によって設置されている。
【0034】
また、下位側となる地震情報提供会社等には、情報提供団体側配信システム3を備える。この情報提供団体側配信システム3は、上位の気象観測団体側配信システム2と専用回線或いは公衆回線その他の通信回線で接続される。そして、情報提供団体側配信システム3は、気象観測団体側配信システム2から配信された第一の地震警報信号を受信したならば、その受信した第一の地震警報信号を解析し、配信先のインターホン制御装置4を決定し、そのインターホン制御装置4に向けて第二の地震警報信号を送信する。すなわち、地震情報提供会社等には、事前に本サービスの適用を受けるユーザからの申請(オンライン/オフラインのいずれもか)を受け、その申請に従って、情報提供団体側配信システム3が持つ或いはアクセス可能なデータベースに、インターホン制御装置4を設置した各マンションの位置(北緯・東経)情報と、インターホン制御装置4のIPアドレスとを記憶しておく。そして、情報提供団体側配信システム3は、第一の地震警報情報を気象観測団体側配信システム2から受信した場合に、前記データベースにアクセスし第一の地震警報情報に含まれる震源の位置情報と各マンションの位置情報とを比較して、地震の到達する範囲のマンションに設置されたインターホン制御装置4のIPアドレスを抽出して、これらのIPアドレスのインターホン制御装置に対して、第二の地震警報信号を送信する。この第二の地震警報信号の送信は、既存のネットワークの一つであるインターネット5と、インターホン制御装置4が配置されるマンション共有設備のルーター6を用いる。
【0035】
マンションの共用設備として配備されるインターホン制御装置4は、インターネット5及びルーター6を介して情報提供団体側配信システム2から受信した第二の地震警報信号を、マンション内の各戸に設置されたインターホン装置10へ一斉送信する機能を持つ。このインターホン装置10とインターホン制御装置4は、宅内配線により接続される。
【0036】
マンションの各戸には、上記のインターホン制御装置4に接続されたインターホン装置10と、そのインターホン装置10に接続されたコントローラ20と、1台以上の子機30とが、設置されている。
【0037】
インターホン制御装置4は、マンションのエントランスに設置されており、マンションのエントランスに設置されている一般的なインターホン機能を有する。すなわち、マイクとカメラと操作部と通信部とこれらを制御する制御部を有し、呼び出したい部屋番号等が操作部から入力されると、通信部を制御して該当する部屋番号の部屋に設置されたインターホン装置に呼び出し信号とカメラ画像信号及びマイク音声信号を送信する。そして、インターホン装置から応答信号が送信された場合にインターホン装置のマイクで受けたマイク音声信号をスピーカで音声信号に変換して出力する。さらに本実施形態に用いられるインターホン制御装置4は、こうした一般的なインターホン機能に加え、第二の地震警報信号をマンション内の各戸に設置されたインターホン装置10へ一斉送信する機能を備える。
【0038】
次に、マンションの各戸に設置されたインターホン装置10、コントローラ20、子機30の構成について、図2を参照してさらに詳細に説明する。なお、インターホン装置10及びコントローラ20が、親機を構成する。以下、インターホン装置10及びコントローラ20をまとめて親機とも称する。
【0039】
インターホン装置10は、制御部11と、制御部11にそれぞれ接続されたディスプレイ12・スピーカ13・操作スイッチ14を有する。インターホン装置10は、上述したとおりの一般的なインターホン機能に加え、地震警報報知機能を有する。この地震警報報知機能は、第二の地震警報信号をインターホン制御装置4から受信した場合に、スピーカ13を動作させて地震警報を音声で報知するとともに、コントローラ20に対して地震警報信号の送信を行う。
【0040】
具体的には、インターホン装置10の制御部11は、第二の地震警報信号をインターホン制御装置4から受信した場合に、コントローラ20に対して第二の地震警報信号の送信を行うとともに、「ピピピピ 地震が来ます」と警報音と音声合成によりスピーカ13から警報を出力する制御を行なう。また制御部21は、LED24を発光/点滅させることで、視覚による警報も出力する。なお、これらの制御は、第二の地震警報信号を受信してから20秒間の間、行なう。このインターホン装置10が、受信した第二の地震警報信号に基づいて警報動作を行なうのは、特許文献11に開示された警報動作を行なうものなどと同様の構成によっても実現できる。
【0041】
コントローラ20は、卓上等に設置可能な箱型の機器である。コントローラ20は、制御部21と、制御部21にそれぞれ接続された無線送信器22と、LED24を有する。コントローラ20の制御部21は、インターホン装置10から第二の地震警報信号を受信した場合に、無線送信器22を制御して子機30に対して第二の地震警報信号を無線送信するとともに、LED24を点滅させる制御を行なう。
【0042】
無線送信器22は、子機30に対して無線送信するに際し、400MHz帯の4つの異なるチャンネル(周波数)を順次切り替えながら使用する。これらのチャンネルをCH1、CH2、CH3、CH4と標記する。変調方式は周波数変調とし、送信電力は10mWとする。さらに、無線送信器22は、製造時に、4グループ(A〜D)に分けて製造する。無線送信器22がいずれのグループに属するかは、無線送信器22の有する回路により、無線送信器22が元々持つ固有の識別符号である無線IDの下2桁を、4で割った余り(0〜3)から、それぞれグループ(A〜D)のいずれであるかを決定する。そして、それぞれのグループとも4チャンネル(以下、チャンネル(周波数)をCHと表記する)を順番に切り替えて送信する構成とする。
【0043】
具体的には、図3に示すように、グループAの無線送信器は、CH1→(2秒休止)→CH2→(2秒休止)→CH3→(2秒休止)→CH4の順に、グループBの無線送信器は、CH2→(2秒休止)→CH3→(2秒休止)→CH4→(2秒休止)→CHlの順に、グループCの無線送信器はCH3→(2秒休止)→CH4→(2秒休止)→CH1→(2秒休止)→CH2の順に、グループDの無線送信器は、CH4→(2秒休止)→CHl→(2秒休止)→CH2→(2秒休止)→CH3の順に送信を行なう。CH1〜CH4のすべてのCHの送信時間は、同一の送信時間(933ms)とする。
【0044】
この送信に使用するCHの切り替えタイミングは、たとえば、第二の地震警報信号を受信したときを基準し、送信を開始することができる。そのようにすると、同一のマンションに配置された複数のコントローラ20の無線送信器22は、インターホン装置10の制御部11から一斉同報で送信された第二の地震警報信号を、制御部21を介して受信するので、その受信時期はほぼ同一と推定できる。すると、同一のマンションに設置された複数のコントローラ20の無線送信器22は、図3に示す該当するグループのタイミングで、送信することになり、各無線送信器22は、同じタイミングで所定のCHを用いて送信し、同じタイミングで一時休止することになる。よって、各グループに属する無線送信器は、一斉に送信を開始した場合、他のグループに属する無線送信器とは、同時期に同じチャンネルを使用して送信することが無くなる。
【0045】
また、各無線送信器は、他の無線送信器と通信等を行なって同期をとるものではないので、インターホン装置10の制御部11から一斉同報した第二の地震警報信号をコントローラ20の制御部21が受信するタイミングがずれたり、制御部21での内部処理のしより時間の相違から、制御部21から無線送信器22に対して第二の地震警報信号の送信開始命令を与えるタイミングがずれたりして、無線送信器22が第二の地震警報信号を受信するタイミングがずれると、その後に開始する送信タイミング(CHの切り替え、休止タイミング)もずれる。本実施形態では、図3に示すように、ある周波数(CH)で送信した後、次の周波数(CH)で送信するまで、2秒間休止し、その間は送信を行なわないようにしたので、複数の親機の間で、外部から緊急通報信号(第二の地震警報信号)を受信するタイミングにずれがあった場合でも、そのずれが、送信を行なわない所定時間内であれば、周波数のぶつかりを避けることができる。
【0046】
よって、近隣の家庭には、異なるグループに属する無線送信器22を持つコントローラ20を設置することにより、同一での周波数の妨害の発生を抑制し、各子機30は親機からのデータを受信することができる。なお、本実施形態では、周波数変調を用いているので、仮に、複数の親機の送信チャンネルが重なったとしても、それぞれの子機は、それぞれの子機にとって最も強い電界強度の電波によって子機向け信号を受信することができるので、他の変調方式による場合に比べて確実に緊急通報を行なうことができる。
【0047】
なお、本実施形態では、親機は、複数の所定の周波数(CH1〜CH4)を順次切り替えて送信するようにし、しかも、切り替えタイミングも等しくするようにしたが、本発明は、これに限ることはなく、グループごとに各種の切り替えパターンを用いることができ、切り替えタイミングも適宜に変更して設定が可能である。但し、同じグループに属する親機の切り替えパターンは、同じに設定する。
【0048】
子機30は、図2に示すように、無線受信器32とLED34とスピーカ35とこれらに接続された制御部31とを有する。子機30の無線受信器32は、常にCH1〜CH4の周波数をスキャンする。スキャンの速度は、送信側の1つのCHの送信中(10連送=933ms)に全4CH分をスキャンできるようにする。このようにすることで、子機30の無線受信器32は、対となるコントローラ20の無線送信器22がグループAからDのいずれであっても、そのコントローラ20の無線送信器22が送信した第二の地震警報信号の送信中(933ms)に、全4CH分をスキャンすることで、いずれかのCHのスキャン時に当該第二の地震警報信号を受信することができる。つまり、子機30は、どのグループに属する無線送信器にも対応できるので、グループ分けする必要がなく、1種類を製造すればよい。
【0049】
子機30の制御部31は、無線受信器32にて親機(コントローラ20)から送信された第二の地震警報信号を受信した場合に、「ピピピピ 地震が来ます」と警報音と音声合成によりスピーカ13から警報を出力する制御を行なうとともに、LED24を発光/点滅させることで、視覚による警報も出力する。なお、この警報の態様は各種のものを採ることができる。また、子機30における警報の態様は、コントローラ20における警報と同じでも良いし異ならせても良い。
【0050】
図4は、親機と子機の設置例を示している。図に示すように、隣接する各家庭では、異なるグループの親機40a,40b,40c(特に、個々の親機を区別留守必要がない場合に、親機40と称する)を設置する。この親機40の設置位置は、既設のインターホン装置の近隣に置くことになり、たとえば、各家庭ともリビング等の同様の場所となる。上述したように、この親機40からも地震警報が発せられるので、親機40の設置位置であるリビング等にいる人は、その親機40からの警報により、所定時間後に地震が発生することを知ることができる。
【0051】
また図4に示すように、子機30a〜30e(特に各子機を区別する必要がない場合には、子機30と称する)は、持ち運びもできるので、各家庭の住人が存在している部屋に配置されたり、住人の存在位置とは関係なく、所定の場所に1または複数個が配置されたりする。このようにすると、第二の地震警報信号を受信した親機から子機に向けて無線送信された第二の地震警報信号を、子機30が受信し、それに基づいて所定の警報を発するので、親機の周辺にいない場合でも、住人は子機からの警報に基づいて緊急事態を認識することができる。
【0052】
上述したように、子機30は、いずれのグループの親機からの第二の地震警報信号をも受信できるので、マンションの他の家に設置された親機など、近隣の親機からの信号を受信する場合もあり、より早く地震警報を住人に伝えることができる。すなわち、例えば図4に示すものの場合、中央の家庭(住戸)に設置された子機30bは、対応する親機400bよりも隣家に設置された親機40aの方が近い位置関係にあり、同様に、右側の家庭(住戸)に設置された子機30dは、対応する親機40cよりも隣家に設置された親機40bの方が近い位置関係にある。この場合、例えば子機30bの設置位置には、親機40aから送信された第二の地震警報信号と、親機40bから送信された第二の地震信号のいずれもが到達する。子機30dも、親機40bと親機40cの通信範囲内に存在する。そして、各親機40a〜40cは、ほぼ同じタイミングで異なるCHを用いて第二の地震警報信号を送信し、子機側では、親機が第二の地震警報信号を1回送信する間に全4CH分についてスキャンすることから、子機は、全4CHのスキャンの順番でより早いCHを用いて第二の地震警報信号を送信した親機からの信号、或いは、近い方の親機からの信号に基づいて警報処理をすることができる。以上のようにして、確実に早く地震速報を子機に伝えることができる。
【0053】
また、本システムによれば、コストのかからない単方向通信システムを実現できる。さらには、子機は全ての親機に対応するので、周波数違いのセットを作る必要もない。また設置業者が親機や子機の周波数設定をすることなく設置をすることができるので、簡単に運用開始を行なうことができる。
【0054】
なお、本発明の実施形態は、上述したものに限定されることはなく、各種の態様を採りうる。例えば、上記実施形態では、マンション内のインターホン制御装置を経由して、親機に第二の地震警報信号を配信する構成としたが、例えば図5に示すように、インターネット5を介して、マンションの各戸に設置したルーター6を介して親機に対して配信する構成としてもよい。
【0055】
この場合の親機40は、例えば図6に示すように、ルーター6に接続した卓上コントローラとするとよい。卓上コントローラ(親機40)は、制御部41と無線送信器42とLED44とスピーカ43とを備える。この親機40は、図2に示したコントローラ20の機能にインターホン装置10の有していたスピーカ13とその制御に関する機能を付加し、上記実施形態におけるインターホン装置の制御部11への接続機能に代えてルーター6への接続機能を制御部41に設けたものである。具体的には、制御部41は、ルーター6経由で第二の地震警報信号を受信すると、「ピピピピ 地震が来ます」と警報音と音声合成によりスピーカ13から警報を出力する制御を行なう。また制御部41は、LED44を発光/点滅させることで、視覚による警報も出力する。なお、これらの制御は、第二の地震警報信号を受信してから20秒間の間、行なう。また、制御部41は、無線送信器42に対して第二の地震警報信号の送信命令を与える。この送信命令を受けた無線送信器42は、無線送信器42は前述の無線送信器22と同様の構成で、所定のタイミングでCHを切り替えながら第二の地震警報信号を無線送信する。
【0056】
なお、図5ではルーター6を各戸に設ける構成を例示したが、例えば、各戸にはルーターを備えず、代わりに、マンションの管理室にルーターを備え、当該ルーターと各戸に備えた卓上コントローラとをケーブルで接続する構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明が適用されるシステムの一例を示す図である。
【図2】本実施形態を示すブロック図である。
【図3】グループ別の送信周波数(CH)の切り替えタイミングの一例を示す図である。
【図4】集合住宅の各住戸への設置例を示す図である。
【図5】別の実施形態を示すブロック図である。
【図6】別の実施形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0058】
10 インターホン装置
20 コントローラ
30,30a〜30e 子機
40,40a〜40c 親機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの所定の信号を受信した際に子機に対して子機向け信号を無線送信する親機と、
前記子機向け信号を受信した場合、所定の報知をする子機と、
を備える通報システムにおいて、
前記親機は、前記子機向け信号を、複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成であり、
前記子機は、前記複数の所定の周波数を走査して前記子機向け信号を受信する構成であって、
前記親機は、自己が、前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループのいずれに属するかを判別し、当該判別された開始位置から前記所定のパターンでの送信を開始すること
を特徴とする通報システム。
【請求項2】
前記外部からの所定の信号は、外部からの緊急通報信号であり、
前記所定の報知は、緊急通報の報知であって、
前記複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成は、複数の所定の周波数を順次切り替えて送信する構成であり、
前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループは、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を異なる周波数とした複数のグループであることを特徴とする請求項1に記載の通報システム。
【請求項3】
外部からの所定の信号を受信した際に子機に対して子機向け信号を無線送信する複数の親機と、
前記子機向け信号を受信した場合、所定の報知をする複数の子機と、
を備える通報システムにおいて、
前記親機は、前記子機向け信号を、複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成であり、
前記子機は、前記複数の所定の周波数を走査して前記子機向け信号を受信する構成であって、
複数の前記親機は、前記所定のパターンが同一であり、当該所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループで構成すること
を特徴とする通報システム。
【請求項4】
前記外部からの所定の信号は、外部からの緊急通報信号であり、
前記所定の報知は、緊急通報の報知であって、
前記複数の所定の周波数を所定のパターンで切り替えて送信する構成は、複数の所定の周波数を順次切り替えて送信する構成であり、
複数の前記親機は、前記順次切り替えのタイミングが等しく、前記順次切り替えの順序が等しく、
前記所定のパターン内での開始位置が異なる複数のグループは、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を異なる周波数とした複数のグループであることを特徴とする請求項3に記載の通報システム。
【請求項5】
前記親機は、集合住宅の各住戸に設置されるものであり、近隣の住戸に設置する親機は、異なるグループのものとすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項6】
前記子機は、前記複数の所定の周波数を全て走査する1サイクルの時間が、前記親機が前記複数の所定の周波数のうちのある1つの周波数を用いて子機向けの信号を送信している時間よりも短く設定していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項7】
前記親機は、1つの周波数を用いて子機向けの信号を送信後に、所定時間送信を行なわない休止期間をおいた後に、別の周波数へ切り替えて送信をするように構成したことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項8】
前記親機は、前記複数の所定の周波数のうち最初に送出する前記所定の周波数を当該親機に固有の識別符号に基づいて決定することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項9】
前記親機と前記子機との間で行なわれる無線送信は、周波数変調方式で行なうことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項10】
前記親機と前記子機との間で行なわれる無線送信は、特定小電力無線で行なうことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の通報システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の通報システムにおける子機の構成を有する電子機器。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の通報システムにおける親機の構成を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−116492(P2009−116492A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287026(P2007−287026)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(391001848)株式会社ユピテル (238)
【Fターム(参考)】