説明

通気性包装材料および通気性二重包装材料

【課題】脱酸素剤などの収納に好適な透気度を有する通気性包装材料を提供する。
【解決手段】少なくとも外層から内層に向かって、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなり、前記耐油層の外側および/または通気性基材層と通気性ヒートシール層との間に、透気度調整層が積層される積層材であって、前記積層材の王研法による透気度が10〜800秒であることを特徴とする。透気度調整層をパタン印刷で構成することで、透気度を簡便に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気性に優れる通気性包装材料、および前記通気性包装材料と保護フィルムとからなる通気性二重包装材料などに関し、より詳細には、脱酸素剤や乾燥剤などを収納するに好適な通気性包装材料や通気性二重包装材料、ならびにこれらに脱酸素剤などを収納した包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の変質、劣化、電子部品の酸化などを防止するために、脱酸素剤や乾燥剤などが多用され、これらは通気性を有する小袋で包装され、食品などの内容物とともに密封されている。
【0003】
脱酸素剤は、鉄粉などの脱酸素剤用組成物を脱酸素剤用包装材料で被覆したものである。このような脱酸素剤用組成物を収納する包装材料としては、脱酸素剤用組成物が雰囲気中の酸素を吸収できるように、外気と脱酸素剤用組成物とが連通できる通気孔が形成され、かつ、脱酸素剤用組成物が遺漏して内容物を汚染しない程度の固定性が要求される。このため、紙などの通気性基材の内側にヒートシール層が積層され、外気側にプラスチックフィルムなどが積層され、前記プラスチックフィルムに細孔を形成した包装材料を使用することが一般的である。紙基材によって脱酸素剤用組成物を収納し、かつプラスチックフィルムで機械的強度を確保することができる。
【0004】
このような脱酸素剤や乾燥剤を包装する包装材料として、通気性を有するシート材料の片面又は両面に、一層又は複数層の非通気性合成樹脂フィルムを貼り合わせて積層体を形成し、前記非通気性合成樹脂フィルム層に、前記シート材料に通じる通気部を形成してなる通気性を有する包装材料もある(特許文献1)。上記公報によれば1回の積層工程で通気性を有するシート材料と非通気性合成樹脂フィルムの積層体を形成し、その表面層から通気孔を開孔し包装材料を製造するため製造が容易であり、包装材料製造時の通気孔の配置や形状のバラツキを抑制でき、所定の透気度を安定して得ることができるという。
【0005】
また、二軸延伸ナイロンフィルム層と、前記二軸延伸ナイロンフィルム層の片面に積層された網状構造の強化材層と、前記強化材層に積層された、ヒートシール性を有する長繊維不織布層とを有する、通気性包装材料もある(特許文献2)。従来から、紙などの通気性基材の表面にポリエチレン層を積層したもの、あるいは、格子網状物をポリエチレン層でサンドイッチした強化材層を積層したものに、前記ポリエチレン層や強化材層を貫通するが基材までは貫通しない多数の細孔を形成するものが使用されているが、基材までは貫通しない細孔の形成は容易でない。そこで、通気性を有する二軸延伸ナイロンフィルム層やヒートシール層を使用し、細孔を形成することなく通気性を確保するというものである。
【0006】
更に、非通気性の外材とシール層とが接着され、通気性を有する内材と通気性を有するシール層とが接着された包装材料であって、包装に際して前記シール層と前記内材とが積層接着され、通気性を有する内材の切断面および通気性を有するシール層を通じて通気しうるようにする通気性二重包装材料もある(特許文献3)。脱酸素剤の包装材料としてポリエチレンフィルムなどを使用したものは、水分含有量の多い食品などの場合に耐水性に劣り、脱酸素剤の包装袋が破損する場合があるが、上記通気性二重包装材料によれば、強度が強く、多湿食品にも適用できかつ安定した通気性を確保できる、という。
【0007】
また、多層構造を有するシートから成る包装材料であって、該多層構造を有するシートの最外層が、シリコーン樹脂コーティング層から成る脱酸素剤用包装材料もある(特許文献4)。内容物によっては、脱酸素剤の包装材料にも耐油性が要求される。シリコーン樹脂コーティング層によれば、耐水性および耐油性を確保できる、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−126212号公報
【特許文献2】特開2004−25662号公報
【特許文献3】特公平3−305号公報
【特許文献4】特開平7−17559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
脱酸素剤は、食品や電子機器などと共に密封されて製品となる。脱酸素剤の包装材料は通気性を有するため、食品などと共に密封して製品を製造する際に、ハンドリング時間が長いと脱酸素剤が外気の酸素を吸収し、前記製品に密封した場合に既に酸素吸収能が低下する場合がある。一方、通気性を低減すれば、前記製品を製造した後に酸素吸収性が弱く、同封した内容物が変質する場合がある。このように、通気性の程度は、脱酸素剤の活性にも影響する重要な要素であるが、その制御は容易でない。
【0010】
例えば、特許文献2記載の方法は、通気性を有する二軸延伸ナイロンフィルム層やヒートシール層とを使用するものであるが、機械的強度を確保するための二軸延伸ナイロンフィルム層やシール強度を確保するためのヒートシール層の厚さが、通気性を確保するための厚さと一致しない場合には、所望の通気性を確保することができない。
【0011】
また、内容物によっては、耐油性が要求されるが、特許文献3記載の通気性二重包装材料は、耐水性に優れるが、更に耐油性に優れることが望ましい。一方、特許文献4記載の脱酸素剤用包装材料は、シリコーン樹脂コーティング層によって耐油性を確保するものであるが、通気性を制御することができない。
【0012】
また、このような通気性を確保するため、特許文献1記載の方法は、非通気性合成樹脂フィルムからなる積層体に通気孔を開孔するものであるが、通気孔を形成するために開孔装置が必要となり、製造が容易でない。
【0013】
上記現状に鑑み、本発明は、通気性の制御が容易で、耐油性に優れる通気性包装材料を提供することを目的とする。
また、本発明は、開孔装置を使用せずに通気性を制御できる、通気性包装材料、及びその製造方法を提供するものである。
【0014】
更に、前記通気性包装材料に機械的強度に優れる保護層を積層した、二重包装材を提供することを目的とする。
加えて、このような通気性包装材料や二重包装材に脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、通気性基材層に耐油層を積層することで、得られる通気性包装材料に耐油性を確保しうること、前記耐油層の上に通気性の低い部材をパタン印刷してなる透気度調整層を積層することで、得られる通気性部材の通気性を容易に調整できること、前記通気性基材層の内側に通気性を有するヒートシール層を積層することで、前記ヒートシール層同士を接着して三方シール、四方シールなどで簡便に脱酸素剤などを製造しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち本発明は、少なくとも外層から内層に向かって、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなり、前記耐油層の外側および/または通気性基材層と通気性ヒートシール層との間に、透気度調整層が積層される積層材であって、前記積層材の王研法による透気度が10〜800秒であることを特徴とする、通気性包装材料を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、前記耐油層と通気性基材層との積層体は、王研法による透気度が10〜600秒である、上記通気性包装材料を提供するものである。
また、本発明は、更に、王研法による透気度が10〜600秒の接着補助層が最外層に積層されることを特徴とする、上記通気性包装材料を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、上記通気性包装材料の外側に通気性保護フィルムを接着することなく重ねてなる、通気性二重包装材料を提供するものである。
また、本発明は、前記通気性保護フィルムが、外層から内層に向かって、非通気性基材樹脂層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層および低温熱融着層からなり、通気用の貫通孔が形成されていることを特徴とする、上記通気性二重包装材料を提供するものである。
【0019】
また、本発明は、上記通気性包装材料に、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる、通気性包装材料被覆包装体を提供するものである。
【0020】
また、本発明は、上記通気性二重包装材料に、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる、通気性二重包装材料被覆包装体を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、少なくとも外層から内層に向かって、透気度調整層、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなる通気性包装材料の製造方法であって、少なくとも耐油層を積層した通気性基材層の前記耐油層に、透気度調整インキを、前記耐油層の面積の5〜95%になるようにパタン印刷し、前記通気性包装材料の王研法による透気度を10〜800秒に調整する工程を有することを特徴とする、通気性包装材料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、開孔装置を使用することなく、通気性に優れる通気性包装材料を製造することができる。しかも、得られる通気性包装材料は、耐油性に優れ、かつ一定した通気性を有し、最内層のヒートシール層によって、容易に製袋することができる。
【0023】
本発明の通気性包装材料は、更に通気性保護フィルムを積層することもでき、強度を確保することができる。その際、通気性包装材料の最外層にヒートシール層を形成すると、通気性保護フィルムとの接着性に優れる。
【0024】
本発明の包装体は、食品や電子部品などの内容物と共に密封する充填作業のハンドリング時間に合わせて通気性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る通気性包装材料の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって、透気度調整層(40)、耐油層(30)、通気性基材層(20)、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層(10)とが積層されてなる態様を説明する図である。
【図2】本発明に係る通気性包装材料の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、外層から内層に向かって、耐油層(30)、通気性基材層(20)、透気度調整層(40)、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層(10)とが積層される態様を説明する図である。
【図3】本発明に係る通気性包装材料の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、最外層に、更に透気度が10〜600秒の接着補助層(50)が積層される態様を説明する図である。
【図4】本発明に係る通気性二重包装材料の層構成の一例を示す槻略的断面図であり、本発明の通気性包装材料(A)と、外層から内層に向かって、非通気性基材樹脂層(90)、ヒートシール層(80)、低温熱融着層(70)からなる通気性保護フィルム(B)との態様を説明する図である。
【図5】本発明の通気性包装材料被覆包装体を説明する図であり、図3に示す通気性包装材料(A)からなる容器に脱酸素剤を充填した通気性包装材料被覆包装体の断面図である。
【図6】本発明の通気性二重包装材料被覆包装体を説明する図であり、図4に示す通気性二重包装材料からなる容器に脱酸素剤を充填した通気性包装材料被覆包装体の断面図である。
【図7】本発明の通気性包装材料における透気度調整層のパタン印刷を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の第一は、少なくとも外層から内層に向かって、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなり、前記耐油層の外側および/または通気性基材層と通気性ヒートシール層との間に、透気度調整層が積層される積層材であって、前記積層材の王研法による透気度が10〜800秒であることを特徴とする、通気性包装材料である。
【0027】
また、本発明の第二は、上記通気性包装材料の外側に通気性保護フィルムを接着することなく重ねてなる、通気性二重包装材料である。
また、本発明の第三は、上記通気性包装材料または通気性二重包装材料に、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる、通気性包装材料被覆包装体である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
(1)通気性包装材料および通気性二重包装材料の層構成
本発明の通気性包装材料は、図1に示すように、外層から内層に向かって、透気度調整層(40)、耐油層(30)、通気性基材層(20)、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層(10)とが積層されてなる。前記耐油層(30)の外側に、透気度調整層(40)が積層されることを特徴とする積層材である。また、図2に示すように、外層から内層に向かって、耐油層(30)、通気性基材層(20)、透気度調整層(40)、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層(10)とが積層される積層材であってもよい。このように、耐油層(30)の外側および/または通気性基材層(20)と通気性ヒートシール層(10)との間に、透気度調整層(40)を積層することで、得られる通気性包装材料の通気性を調整することができる。また、図3に示すように、最外層に、更に透気度が10〜600秒の接着補助層(50)が積層されるものであってもよい。本発明の通気性包装材料と共に他の保護フィルムなどを積層する場合に、前記接着補助層(50)を介して積層接着することができるからである。
【0029】
本発明の通気性二重包装材料は、図4に示すように、前記通気性包装材料(A)と、通気性保護フィルム(B)との接着することなく重ねた積層物であり、前記通気性保護フィルム(B)としては、外層から内層に向かって、非通気性基材樹脂層(90)、通気性ヒートシール層(80)、低温熱融着層(70)からなり、貫通孔(C)が形成されたものを好適に使用することができる。図4は、図3に示す通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とを積層した態様である。図4に示す通気性二重包装材料を用いてヒートシールによって製袋すると、通気性保護フィルム(B)の低温熱融着層(70)と通気性包装材料(A)の接着補助層(50)とが前記ヒートシールによって接触し、熱融着時の低温シール性に優れる。なお、本発明において、上記通気性包装材料、通気性二重包装材料は、王研法による透気度が、10〜800秒であることが好ましい。
【0030】
本発明では、上記通気性包装材料(A)に脱酸素剤(D)などを充填して通気性包装材料被覆包装体(100)とすることができる。図5にこのような通気性包装材料被覆包装体(100)の断面図を示す。本発明によれば、開孔装置を使用せずに通気性を制御した通気性包装材料(A)を使用することで脱酸素剤の遺漏を防止でき、かつハンドリングに好適な通気性を確保することができる。なお、図5では、便宜のため、通気性基材層(20)、耐油層(30)、透気度調整層(40)を一層で示した。
【0031】
また、上記通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とからなる通気性二重包装材料に脱酸素剤(D)を充填して通気性二重包装材料被覆包装体(100)とすることができる。このような通気性二重包装材料被覆包装体の断面図を図6に示す。本発明によれば、上記通気性包装材料(A)の外周に通気性保護フィルム(B)を積層した通気性二重包装材料を使用することで、強度を確保することができる。しかも、上記通気性二重包装材料は、通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とからなるが、製袋の際の熱融着部以外は、通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とは接着されておらず空間部(E)が形成され、通気性保護フィルム(B)の貫通孔(C)が熱融着されないため、通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)との通気性が低減されることがない。
【0032】
(2)通気性包装材料
本発明の通気性包装材料は、脱酸素剤などの包装体を形成する際に好適に使用でき、かつ開孔装置を使用せずに通気性を確保できる包装材料である。通気性を確保するため、予め通気性を有する耐油層を積層した通気性基材層、ヒートシール層、接着補助層を使用し、これに通気性を有しない樹脂をパタン印刷してなる通気性調整層を積層し、パタン印刷面積を制御することで通気性を調整したものである。
【0033】
(i)通気性基材層
本発明の通気性包装材料で使用しうる通気性基材層としては、これが通気性包装材料を構成する基本素材となることから、耐屈曲性、剛性、腰、強度等を有するものを使用することができ、かつ透気度が10〜600秒の部材を使用することができる。なお、本発明において、各部材や包装材料などの透気度は、後記する実施例に示すJAPAN TAPPI No.5−2:2000に基づいく、王研法による測定値である。
【0034】
例えば、パルプ紙やポリエチレン等を抄紙した混抄紙等の紙類、又はポリエチレンやポリエステルなどの合成樹脂からなるスパンボンド法やスパンレース法による不織布等の繊維質層、ポリエチレン系合成樹脂等を材料として微細有孔処理を施した微多孔性フィルム等の通気性素材を用いることができる。また、クラフト紙、上質紙、片艶クラフト紙、純白ロール紙、グラシン紙、カップ原紙などの非塗工紙の他、天然パルプを用いない合成紙なども用いることができる。
【0035】
本発明で使用する通気性基材の秤量には制限はないが、好ましくは坪量10〜120g/m2の範囲のもの、より好ましくは坪量20〜100g/m2のものである。この範囲で、通気性と剛性や強度を確保できるからである。
【0036】
(ii)耐油層
本発明の通気性包装材料では、上記通気性基材層の外側に耐油層を積層させる。耐油層の積層によって、脱酸素剤が食品などから出る油分の影響を回避することができる。
【0037】
前記した通気性基材層に耐油層を形成するには、予め撥油処理や耐油処理を施したパルプ紙やポリエチレン等を上記した通気性基材層の上に混抄してもよし、上記通気性基材層に耐油性樹脂などを塗工して形成することができる。このような耐油層を構成する樹脂としては、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などがある。上記した通気性基材層に、例えば、乾燥時塗工量が0.1〜5g/m2となるように積層することで、通気性基材層に耐油性を付与し、耐油層を形成することができる。
【0038】
また、耐油層として、不飽和カルボン酸またはその無水物を0.01〜5質量%の範囲で含むポリオレフィン共重合樹脂も好適に使用することができる。
不飽和カルボン酸またはその無水物としては、分子内に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。なお、不飽和カルボン酸はアンモニアやトリエチルアミンなどの有機アミン化合物を含む塩基性化合物によって中和されていてもよい。本発明では、上記不飽和カルボン酸またはその無水物に加えて、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが挙げられ、これらの混合物を更に共重合したものであることが好ましい。更に、上記炭素数2〜6のアルケンに加えて、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸エステル類、(メタ)アクリル酸アミド類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類、ぎ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類ならびにビニルエステル類を塩基性化合物等でケン化して得られるビニルアルコール、これらの混合物などの他の共重合成分を共重合することが好ましい。なお、共重合の形態は限定されるものではなく、例えばランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等のいずれであってもよい。なお、本発明では、エチレン、アクリル酸メチルあるいはアクリル酸エチル、無水マレイン酸からなる三元共重合体を上記配合範囲で共重合したものが好適である。
【0039】
上記した不飽和カルボン酸またはその無水物(I)、炭素数2〜6のアルケン(II)、他の共重合成分(III)の配合割合は、0.01≦(I)/{(I)+(II)+(III)}×100<5であり、かつ(II)/(III)=55/45〜99/1であることが好ましい。このようにして得られる数平均粒子径が1μm以下のポリオレフィン樹脂を含む水性分散液を、前記通気性基材層に塗工する。なお、ポリオレフィン共重合樹脂含有率は、好ましくは10〜45質量%である。この水性分散液には、40質量%以下の範囲で、アルコール類やエーテル類などの有機溶媒を含有させてもよい。この水性分散液を、前記通気性基材層に、乾燥時の塗布量が0.1〜100g/m2となるように塗布、加熱乾燥して形成し、耐油層を形成することができる。
【0040】
なお、本発明では、通気性の確保を目的とするため、耐油層と通気性基材層との王研法による透気度は、10〜600秒であることが好ましい。
(iii)通気性ヒートシール層
本発明で使用する通気性ヒートシール層は、王研法による透気度が10〜600秒のものである。従来公知のヒートシール層を使用することができ、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂からなる1種以上のフィルムもしくはシートまたは塗布膜などを使用することができる。
【0041】
本発明では、ポリオレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体を好適に使用することができる。ポリオレフィン系樹脂であれば、シングルサイト系メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系ランダム共重合体も好適である。具体的には、プロピレンとエチレン、あるいは、プロピレンと1−オクテンとのブロックまたはランダムコポリマーからなるポリプロピレン系ランダム共重合体である。接着性に優れるからである。
【0042】
ヒートシール層は、ヒートシール性樹脂を溶融押出などによって積層することが好ましい。通気性を確保するためである。
上記のヒートシール層は、厚さ2〜20μm、好ましくは5〜10μmである。
【0043】
(iv)透気度調整層
本発明では、図1に示すように耐油層の外側や、図2に示すように通気性基材層と最内層のヒートシール層との間に、透気度調整層を積層することを特徴とする。
【0044】
前記したように、本発明の通気性包装材料は、通気性を有する耐油層、通気性基材層および通気性ヒートシール層とからなり、透気度調整層を積層することで所望の透気度を有する包装材料を得るものである。
【0045】
透気度調整層は、透気度調整層用樹脂を、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式で形成することができる。所定面積となるように印刷することで、容易かつ精密に透気度を調整することができる。この際、図柄が左右対称、上下対象のパタン印刷を行えば、包装材料の全体の透気度を均一に調整することができる。
【0046】
このようなパタン印刷の図柄は特に限定はない。例えば図7は、このようなパタン印刷の例示であり、菱型の白抜き部分を等間隔に形成した態様であり、黒部分が透気度調整層用樹脂であって通気性に劣る部分であり、白部分が通気部分となる。図7のパタンでは、約75%の面積が印刷されているが、白部分の面積を多くすることで通気性を高めることができる。このようなパタン印刷によれば、印刷面積の制御が容易であり、したがって、通気性包装材料の透気度を精度高く調整することができる。
【0047】
このようなパタン印刷としては、図7に示す以外に、例えば2mm間隔に幅5mmの縦、または横に形成した直線状の縞模様を形成してなるボーダー柄であってもよいし、前記菱型に代えて円形の水玉を白抜きしたものであってもよい。なお、印刷部分が不定形であってもよい。
【0048】
本発明において、透気度調整層は、得られる通気性包装材料の他の部材の透気度を勘案して、パタン印刷し、最終的な通気性包装材料の透気度を10〜800秒、特には、100〜700秒、より好ましくは200〜600秒に調整することが好ましい。使用する通気性を有する耐油層、通気性基材層および通気性ヒートシール層の透気度に応じて、適宜、パタン印刷によって印刷面積を変更し、得られる通気性包装材料の透気度が上記範囲となるように調整する。
【0049】
透気度調整層は、前記耐油層の上に形成することができ、また通気性基材層と通気性ヒートシール層との間に形成する場合には、前記通気性基材層に上記したパタン印刷によって形成することができる。本発明では、前記耐油層と通気性基材層の双方に透気度調整層を形成してもよい。
【0050】
透気度調整層用樹脂としては、使用する耐油層や通気性基材層の種類に応じて適宜選択できるが、例えば、ニトロセルロース、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂などを例示することができる。透気度は、使用する透気度調整層用樹脂によっても異なるため、透気度調整層用樹脂の種類、乾燥時塗工量、印刷パタンなどを適宜選択することができる。
【0051】
(v)接着補助層
本発明の通気性包装材料は、王研法による透気度が10〜600秒の接着補助層を最外層に積層することが好ましい。本発明において、接着補助層とは、本発明の通気性包装材料に他のフィルムを積層する場合に、当該他のフィルムとの接着を容易にしうる層を意味する。
【0052】
具体的には、本発明の通気性包装材料は、それ自体で脱酸素剤などを収納して包装体を構成できるが、通気性包装材料に他の通気性保護フィルムを積層して通気性二重包装材料とし、これに脱酸素剤などを収納して包装体とすることもできる。このような通気性保護フィルムを積層する場合、前記通気性保護フィルムとの接着性を確保することが好ましい。このような通気性保護フィルムの最内層に限定されることなく通気性保護フィルムとの接着性を確保するために積層される。したがって、通気性保護フィルムの最内層がヒートシール層である場合には、通気性包装材料には、このような接着補助層は形成する必要がない。
【0053】
上記趣旨より、本発明の通気性包装材料で好適に使用できる接着補助層としては、上記した通気性ヒートシール層を構成する樹脂を好適に使用することができる。上記の接着補助層は、厚さ0.1〜10μm、好ましくは0.5〜1μmである。
【0054】
(vi)印刷層
本発明では、通気性包装材料を構成するいずれかの層に、「脱酸素剤」や「食べられません」などの文字を印刷することができる。このような印刷層は、最外層に形成することが好ましく、この際、裏印刷によれば印刷層を保護することができる。
【0055】
印刷層としては、通常のインキビヒクルの1種ないし2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種ないし2種以上を任意に添加し、更に、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム、その他などの1種または2種以上を併用することができる。
【0056】
印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷、その他等の印刷方式であってもよい。
(vii)製造方法
本発明の通気性包装材料の製造方法に限定はない。例えば、少なくとも耐油層を積層した通気性基材層の前記耐油層に、透気度調整インキを、前記耐油層になるようにパタン印刷し、前記通気性包装材料の王研法による透気度を10〜800秒に調整する工程を有することが好ましい。前記通気性基材層には、前記耐油層に加えて、予めヒートシール層を積層したものであってもよい。すなわち、通気性基材層の両面にそれぞれ耐油層とヒートシール層とを積層し、前記耐油層の上面に透気度調整インキを、前記耐油層の面積の5〜95%になるようにパタン印刷する。耐油層の外側に接着補助層を積層する場合には、上記パタン印刷についで接着補助層の塗工工程を行えばよい。
【0057】
本発明によれば、予め通気性基材層に耐油層を形成した積層体を使用すると、耐油層の上に前記した透気度調整層を印刷によって形成し、前記透気度調整層の上に接着補助層を、他面の通気性基材層の上にヒートシール層を溶融接着法で同時に積層できるため製造が容易である。
【0058】
(3)通気性保護フィルム
本発明の通気性二重包装材料を構成する通気性保護フィルムは、上記通気性包装材料の外側に積層され、通気性包装材料を保護する機械的強度に優れる通気性フィルムである。最も簡単には、非通気性基材樹脂層に貫通孔を形成したフィルムを例示することができる。一方、通気性包装材料との接着性を確保するため、内層にヒートシール層が積層されたものを好適に使用することができる。更に、通気性二重包装材料の用途によっては、低温シールが要求される場合がある。このような場合には、最内層に非通気性基材樹脂層が積層されることがより好ましい。なお、通気性を確保するため、貫通孔が形成されている。
【0059】
(i)非通気性基材樹脂層
本発明の通気性保護フィルムを構成する非通気性基材樹脂層としては、機械的強度を確保でき、かつ耐薬品性などに優れるものを使用することができる。
【0060】
例えば、非通気性基材樹脂層としては、ポリアミド系樹脂またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂を使用することができる。
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを好適に使用することができる。ポリエステル系樹脂は、比重1.00〜1.41g/m3であることが好ましい。
【0061】
ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミドであっても、芳香族ポリアミドであっても、これらを混合した組成物であってもよい。好ましいポリアミドの具体例としては、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリ‐ε‐アミノへプタン酸(ナイロン7)、ポリ‐ε‐アミノノナン酸(ナイロン9)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリラウリンラクタム(ナイロン12)、ポリエチレンジアミンアジパミド(ナイロン2・6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン4・6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6・6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6・10)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6・12)、ポリオクタメチレンドデカミド(ナイロン8・12)、ポリオクタメチレンアジパミド(ナイロン8・6)、ポリデカメチレンアジパミド(ナイロン10・6)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン10・10)、ポリドデカメチレンドデカミド(ナイロン12・12)、メタキシレンジアミン‐6ナイロン(MXD6)などを挙げることができ、これらを主成分とする共重合体であってもよく、その例としては、カプロラクタム/ラウリンラクタム共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ラウリンラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体、エチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート共重合体、カプロラクタム/ヘキサメチレンジアンモニウムアジぺート/ヘキサメチレンジアンモニウムセバケート共重合体などを挙げることができる。これらのポリアミドには、フィルムの柔軟性改質成分として、芳香族スルホンアミド類、p‐ヒドロキシ安息香酸、エステル類などの可塑剤や低弾性率のエラストマー成分やラクタム類を配合することも有効である。ポリアミド系樹脂は、比重1.14〜1.22g/m3であることが好ましい。
【0062】
本発明において、上記非通気性基材樹脂層の膜厚としては、5〜25μm、より好ましくは、5〜15μmが望ましい。
なお、上記非通気性基材樹脂層の製膜化に際して、例えば、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、離形性、難燃性、抗カビ性、強度、その他等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができ、その添加量としては、極く微量から数十%まで、その目的に応じて、任意に添加することができる。
【0063】
上記において、一般的な添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、その他等を使用することができ、更には、改質用樹脂等も使用することができる。
【0064】
本発明では、非通気性基材樹脂層として、上記基材樹脂からなるフィルムを使用することもできる。
(ii)ヒートシール層
本発明の通気性保護フィルムを構成するヒートシール層としては、上記した通気性包装材料に使用するヒートシール層を同様に使用することができる。なお、ヒートシール層は、上記ヒートシール層を構成する樹脂からなるフィルムであってもよい。この場合、上記した非通気性基材樹脂層にラミネート用接着剤などでヒートシール層を接着してもよい。ラミネート用接着剤によると通気性が低減するが、本発明では貫通孔を形成することで通気性を確保できるからである。

(iii)低温熱融着層
本発明の通気性保護フィルムを構成する低温熱融着層としては、王研法による透気度が10〜600秒のヒートシール層のうち、溶融温度が120〜160℃の樹脂を好適に使用することができる。例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体や、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレンとα−オレフィンとの共重合で得られる直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレンなどの融点が120〜160℃の樹脂を例示することができる。
【0065】
低温熱融着層としては、上記した樹脂からなるフィルムであってもよい。この場合、低温熱融着層は、前記ヒートシール層の上にラミネート用接着剤などを介して積層してもよい。ラミネート用接着剤によって通気性は低減しても貫通孔によって通気性を確保できるからである。
【0066】
なお、低温熱融着層の積層は、低温シール性の確保である。すなわち、本発明の通気性包装材料と通気性保護フィルムとを積層してなる通気性二重包装材料を使用して脱酸素剤用組成物などを充填した包装体を製造する場合には、脱酸素剤用組成物に熱を与えずに充填包装することが好ましい。このため、三方シールや四方シールの際に低温で熱融着できるように、通気性保護フィルムのヒートシール層に更に低温熱融着層を積層したのである。従って、充填する内容物によって、高温でのヒートシールできる場合には、このような低温熱融着層を積層する必要はない。本発明において、低温熱融着層を積層する場合は、厚さ5〜50μm、好ましくは10〜20μmであることが好ましい。
【0067】
(iv)通気性保護フィルムの製造方法
本発明の通気性保護フィルムは、上記非通気性基材樹脂層に前記通気性ヒートシール層と低温熱融着層とを積層し、通気のための貫通孔を開孔を形成すればよく、その製造方法に限定はない。たとえば、非通気性基材樹脂層として非通気性フィルムを使用し、その上にヒートシール層を構成するフィルムと低温熱融着層を構成するフィルムとをラミネート接着剤によって積層することができる。また、非通気性基材樹脂層として非通気性フィルムを使用し、この上にヒートシール層と低温熱融着層とを溶融押出によって積層してもよい。
【0068】
本発明では、上記によって得られた積層物に貫通孔(C)を形成する。開孔の程度は、通常の脱酸素剤などに使用する包装材料の開孔の範囲でよい。
(4)通気性二重包装材料
本発明の通気性二重包装材料は、前記通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とを接着することなく重ねたものである。その際、前記通気性包装材料(A)の最内層と、通気性保護フィルム(B)の最外層とが接触するように重ねる。例えば、通気性保護フィルム(B)が低温熱融着層(70)を有し、通気性包装材料(A)が接着補助層(50)を有する場合には、前記接着補助層(50)と低温熱融着層(70)とが接触するように重ねる。
【0069】
本発明の通気性二重包装材料は、ヒートシールによって通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とが接着されればよい。低温シールを必要としない場合には、例えば、通気性保護フィルム(B)が非通気性基材樹脂層(90)とヒートシール層(80)のみで構成され、低温熱融着層(70)が存在しない場合であってもよい。同様に、通気性保護フィルム(B)と接着が可能であれば、通気性包装材料(A)の最外層に接着補助層(50)が存在しなくてもよい。すなわち、外層から内層に向かって、非通気性基材樹脂層(90)、ヒートシール層(80)からなる通気性保護フィルム(B)と、外層から内層に向かって、透気度調整層(40)、耐油層(30)、通気性基材層(20)、ヒートシール層(10)からなる通気性包装材料(A)との組み合わせなどであってもよい。
【0070】
本発明では、この通気性二重包装材料を構成する通気性包装材料のヒートシール層(10)を対向させ、例えば三方シールすることで製袋することができる。例えば、通気性保護フィルム(B)が低温熱融着層(70)を有し、通気性包装材料(A)が接着補助層(50)を有する場合には、通気性保護フィルム(B)の低温熱融着層(70)と前記通気性包装材料(A)の接着補助層(50)とによって通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とが熱融着するが、通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)との熱融着部分以外は熱融着することなく分離している。
【0071】
本発明では、この通気性二重包装材料を使用し、脱酸素剤用組成物を充填し、三方シールすれば、シール部分で前記接着補助層と低温熱融着層とを接着させて脱酸素剤を製造しうること、三方シール以外の箇所は接着補助層と低温熱融着層とが接着されないため、通気性包装材料と通気性保護フィルムとの通気性が確保されること、通気性保護フィルムによって脱酸素剤の機械的強度を確保できることなどを見出したものである。
【0072】
本発明の通気性二重包装材料は、耐油性、耐水性に優れ、通気性が要求される場合に好適に使用することができる。
(5)脱酸素組成物
本発明では、従来公知の脱酸素剤用組成物をいずれも好適に使用することができる。例えば、脱酸素剤用組成物の主剤となる還元性金属としては、従来から公知の脱酸素剤の主剤として知られる鉄粉、銅粉、亜鉛粉等の粒状の金属粉を使用することができる。粒状の金属粉は、酸素との接触を良好にするために、通常1700μm以下、特に10〜300μmであることが好ましい。金属粉としては、鉄粉が好ましく、還元鉄粉、電解鉄粉、噴霧鉄粉等が好適に用いられる。その他、鋳鉄等の粉砕物、研削品等を用いることができる。
【0073】
また、脱酸素剤用組成物の酸素吸収反応促進剤として、金属沃化物や金属臭化物を配合することができる。例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の沃化物と臭化物が好ましく、沃化ナトリウム、沃化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウムが好ましい。還元性金属に対する金属沃化物又は金属臭化物の配合量は、還元性金属100質量部当たり、金属沃化物又は金属臭化物0.01〜20質量部である。
【0074】
更に、必要に応じて添加剤を加えることができる。このような添加剤としては、例えば、臭気防止、粉塵抑制、錆滲出防止等の目的で、シリカ粉末、パーライト、珪藻土、水酸化アルミニウム、アルミナ、活性炭、吸水性高分子等を混合することができる。添加剤を加えた脱酸素剤用組成物の水分含有量は1質量%以下であることが好ましい。
【0075】
上記脱酸素剤用組成物は、主剤の還元性金属と反応促進剤として機能する金属沃化物や金属臭化物を含むため、水分の補給なしに、また、水分移行を伴うことなく脱酸素することができる。
【0076】
(6)包装体の製造方法
本発明の包装体は、上記通気性包装材料や通気性二重包装材料を製袋して製造することができる。包装体は、内容物の種類や大きさによって適宜選択することができ、上記包装材料のヒートシール層の面を対向して重ね合わせ、しかる後、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することができる。その製袋方法としては、上記包装材料を、折り曲げるかあるいは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、更にその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他等のヒートシール形態によりヒートシールして製造することができる。
【0077】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0078】
本発明の通気性包装材料被覆包装体(100)の一例である、脱酸素剤の横断面図を図5に示す。通気性包装材料(A)を構成するヒートシール層(10)が対向して熱融着され、袋状に製袋され、内部に脱酸素剤用組成物(D)が充填されている。
【0079】
図6に、通気性二重包装材料被覆包装体(100)の横断面図を示す。図6では、通気性保護フィルム(B)が低温熱融着層(70)を有し、通気性包装材料(A)が接着補助層(50)を有する場合には、前記接着補助層(50)と低温熱融着層(70)とが接触するように重ねた通気性二重包装材料を使用する態様を示す。熱融着部では、通気性包装材料(A)のヒートシール層(10)同士が対向して熱融着され、かつ通気性包装材料(A)の接着補助層(50)と通気性保護フィルム(B)と低温熱融着層(70)とが熱融着されて製袋されている。前記熱融着部以外は、通気性包装材料(A)と通気性保護フィルム(B)とは接着されておらず空間部(E)が形成されている。このように通気性保護フィルム(B)が熱融着されないため、通気性保護フィルム(B)に形成した貫通孔(C)が潰れることがなく、通気性二重包装材料の通気性が低減されることがない。
【0080】
(7)用途
本発明の通気性包装材料や通気性二重包装材料は、耐水性、耐油性に優れ、かつ通気性に優れる。このため、各種の通気性包装材料として好適に使用することができる。特に、最内層にヒートシール層を有するため、熱融着による製袋が容易である。
【0081】
本発明では、上記した通気性包装材料や通気性二重包装材料を使用し、脱酸素剤用組成物を充填した場合には、脱酸素剤を製造することができる。また、上記した脱酸素剤用組成物に代えて、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤などの成分を収納し、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を製造することができる。本発明の包装体は、機械的強度、耐水性、耐油性、通気性に優れるため、上記内容物の性能を有効に発揮させることができる。
【実施例】
【0082】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。
(実施例1)
紀州晒クラフト紙(坪量50g/m2)の一方の面に、EVAエマルジョン(東洋モートン製、商品名「AD−37R345J」)を乾燥時塗工量5g/m2でコーティングした。これを積層体(i)とする。
【0083】
前記積層体(i)の紀州晒クラフト紙の面に、耐油コート(ソルベイ・ソレシクス社製、商品名「ソルベラPT5060」)を乾燥時塗工量0.5g/m2でコーティングした。これを積層体(ii)とする。
【0084】
前記積層体(ii)の上に透気度調整層(東洋インキ製、商品名「ファインスターRメジウム」)を、耐油コートの80%の面積となるように、図7に示すパタンでコーティングした。これを積層体(iii)とする。
【0085】
前記積層体(iii)の上に、EVAエマルジョン(東洋モートン製、商品名「AD−37R345J」)を乾燥時塗工量1g/m2でコーティングして、通気性包装材料を得た。これを積層体(iv)とする。
【0086】
(測定方法)
実施例1で使用した通気性基材層、ならびに積層体(i)〜(iv)について、王研法による透気度(JAPAN TAPPI No.5-2:2000)、耐油度(JAPAN TAPPI No.42:2000)、最内層のヒートシール強度、最外層のポリエチレンとの接着性を測定した。結果を表1に示す。
【0087】
(i)透気度
JAPAN TAPPI No.5−2:2000に基づいて、王研法による透気度を測定した。
【0088】
(ii)耐油度
JAPAN TAPPI No.42:2000に基づいて、キット法による耐油度を測定した。
【0089】
(iii)ヒートシール強度
積層体(i)〜(iv)を幅15mmに切断して試験片を2枚づつ調製した。各積層体について、前記試験片の紀州晒クラフト紙に積層したヒートシール層同士を重ね合わせ、温度110℃、2kg/cm2、1秒の条件でヒートシールし、放冷却後、50mm/minの引張速度でヒートシール強度を測定を測定した。
【0090】
(iv)ポリエチレンとの接着性
厚さ12μmのポリエチレンテレフタレートフィルムに、ポリエチレンを厚さ15μm、EMAAを15μmで押出コーティングして保護フィルムを形成した。積層体(i)〜(iv)を幅15mmに切断して試験片を調製し、この試験片を前記保護フィルムのポリエチレン層と積層し、温度120℃、2kg/cm2、1秒でシールした。放冷却後、手で剥離し、紙の凝集破壊を起こせば○、紙の表層で剥離すれば×とした。
【0091】
【表1】

【0092】
(実施例2)
厚さ12μmのPETフィルムに、LDPE15μmおよびEMAA15μmを押出しコーティングしたのち、110mm巾にスリットし、直径1.0mmの貫通孔を、幅110mmのフィルム1mにつき500〜7000個形成し、通気性保護フィルムとした。
【0093】
また、実施例1の積層体(iv)を通気性包装材料として使用した。
上記通気性包装材料のEVAエマルジョン層と通気性保護フィルムのEMAA層とを重ねて、通気性二重包装材料とし、これを半分に折り、中に脱酸素剤を充填して三方シールし、包装体を得た。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の通気性包装材料は、開孔装置を使用することなく通気性を有する包装材料を製造することができ、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤などの分野に有用効である。
【符号の説明】
【0095】
10・・・通気性ヒートシール層、
20・・・通気性基材層、
30・・・耐油層、
40・・・透気度調整層、
50・・・接着補助層、
70・・・低温熱融着層、
80・・・ヒートシール層、
90・・・非通気性基材樹脂層、
A・・・通気性包装材料、
B・・・通気性保護フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外層から内層に向かって、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなり、
前記耐油層の外側および/または通気性基材層と通気性ヒートシール層との間に、透気度調整層が積層される積層材であって、
前記積層材の王研法による透気度が10〜800秒であることを特徴とする、通気性包装材料。
【請求項2】
前記耐油層と通気性基材層との積層体は、王研法による透気度が10〜600秒である、請求項1記載の通気性包装材料。
【請求項3】
更に、王研法による透気度が10〜600秒の接着補助層が最外層に積層されることを特徴とする、請求項1または2記載の通気性包装材料。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の通気性包装材料の外側に通気性保護フィルムを接着することなく重ねてなる、通気性二重包装材料。
【請求項5】
前記通気性保護フィルムが、外層から内層に向かって、非通気性基材樹脂層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層および低温熱融着層からなり、通気用の貫通孔が形成されていることを特徴とする、請求項4記載の通気性二重包装材料。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の通気性包装材料に、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる、通気性包装材料被覆包装体。
【請求項7】
請求項4記載の通気性二重包装材料に、脱酸素剤、乾燥剤、発熱剤、吸湿剤、脱臭剤、吸湿剤または防虫剤を収納してなる、通気性二重包装材料被覆包装体。
【請求項8】
少なくとも外層から内層に向かって、透気度調整層、耐油層、通気性基材層、王研法による透気度が10〜600秒の通気性ヒートシール層とが積層されてなる通気性包装材料の製造方法であって、
少なくとも耐油層を積層した通気性基材層の前記耐油層に、透気度調整インキを、前記耐油層の面積の5〜95%になるようにパタン印刷し、前記通気性包装材料の王研法による透気度を10〜800秒に調整する工程を有することを特徴とする、通気性包装材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−86855(P2012−86855A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233497(P2010−233497)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】