説明

通気構造

【課題】室内と室外との間の通気性を向上させる。
【解決手段】ベントダクト10では、弁部50が閉じられて通気路46を閉鎖しており、車室内の気圧が所定の気圧以上になった際には弁部50が開けられて通気路46を開放する。ここで、弁部50と通気路46の上壁及び下壁とが、第1吸音部材38及び第2吸音部材40によって構成されて、車外から通気路46を通過する音を吸収できる。このため、通気路46の車幅方向内側又は車幅方向外側を被覆する吸音材を別途設ける必要がなく、車室内の車外に対する通気路46を介しての通気性を向上できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内と室外との間で空気を通過させる通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通気構造としては、車両の外面に設けられた複数の分割開口をそれぞれフラップバルブが開閉可能にされると共に、複数の分割開口の車室側に連通されたダクトに連通孔が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この通気構造では、ダクトの内面に吸音材が貼着されると共に、ダクトの連通孔を開閉可能にされた吸音フラップバルブが吸音材にて形成されて、車室内の車外との間の遮音性が確保されている。
【0004】
しかしながら、この通気構造では、車室内の空気が、車両外面の複数の分割開口のみならず、複数の分割開口に比し開口面積が小さいダクトの連通孔を介して、車外へ排気される必要がある。このため、車室内の空気の車外との間の通気性が悪い。
【特許文献1】実公平7−41610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、室内と室外との間の通気性を向上できる通気構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の通気構造は、室内と室外との隔離部の室内側面又は室外側面に設けられ、室内と室外との間で空気を通過させる通気口を形成する通気口部と、前記通気口を開閉可能にされ、少なくとも一部を吸音材によって構成された開閉部と、を備えている。
【0007】
請求項2に記載の通気構造は、請求項1に記載の通気構造において、前記通気口部の少なくとも一部を吸音材によって構成した、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3に記載の通気構造は、請求項1又は請求項2に記載の通気構造において、前記開閉部の吸音を必要とする室内側又は室外側に設けられた凸部又は凹部の少なくとも一部を吸音材によって構成した、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の通気構造では、室内と室外との隔離部の室内側面又は室外側面に通気口部が設けられており、通気口部は、室内と室外との間で空気を通過させる通気口を形成する。さらに、開閉部が通気口を開閉可能にされている。
【0010】
ここで、開閉部の少なくとも一部が吸音材によって構成されている。このため、通気口を通過する音を開閉部が吸音できて、室内と室外との間での遮音性を確保することができる。これにより、通気口の室内側又は室外側を被覆する吸音材を別途設ける必要をなくすことができ、室内と室外との間の通気性を向上させることができる。
【0011】
請求項2に記載の通気構造では、通気口部の少なくとも一部が吸音材によって構成されている。このため、通気口を通過する音を一層吸音することができる。
【0012】
請求項3に記載の通気構造では、開閉部の吸音を必要とする室内側又は室外側に設けられた凸部又は凹部の少なくとも一部が吸音材によって構成されている。このため、通気口を通過する音を一層吸音することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1には、本発明の通気構造が適用されて構成された実施の形態に係るベントダクト10が断面図にて示されており、図4には、ベントダクト10が適用されて構成された車両12が前斜め左方から見た斜視図にて示されている。なお、本実施の形態では、車両前方を矢印FRで示し、車幅方向外方(車両左方)を矢印OUTで示し、上方を矢印UPで示す。
【0014】
本実施の形態における車両12では、左右両側面にそれぞれドアとしてのサイドドア14が所定数(本実施の形態では2つ)設けられており、サイドドア14が開閉されることで、車室16内(室内)を開閉可能にされている。車両12の後面には、ドアとしてのバックドア18が設けられており、バックドア18が開閉されることで、車室16内を開閉可能にされている。車両12には、換気手段としてのエアコンディショナー(図示省略)が設けられており、エアコンディショナーは、車外(室外)からの空気を例えば温度を調節して車室16内に送風可能にされている。
【0015】
車両12には、隔離部としての周壁20が設けられており、周壁20は、車両12の外周面及び車室16の外周面を構成している。周壁20には、装着部材としての板状の外パネル22が設けられており、外パネル22は、車両12の外周面を構成している。外パネル22には、車両12の側面(本実施の形態では左側面)の後端部において、矩形状の開口24が貫通形成されており、開口24は、車両12の後側のバンパ26(バンパカバー)に被覆されると共に、車室16内に連通されている。
【0016】
本実施の形態に係るベントダクト10は、外パネル22の開口24に装着されている。ベントダクト10には、通気口部を構成する本体部材としての略矩形筒状のベントダクト本体28が設けられており、ベントダクト本体28の外周には、全周に亘って、装着部としての一対の装着爪30が設けられている。車幅方向外側(車外側)の装着爪30は断面三角形状にされると共に、車幅方向内側(車室16内側)の装着爪30は断面矩形状にされており、ベントダクト本体28が外パネル22の開口24に車幅方向内側から挿入されて、一対の装着爪30間に外パネル22が挟持されることで、ベントダクト本体28(ベントダクト10)が外パネル22の開口24に装着されている。
【0017】
ベントダクト本体28の一対の側壁間には、車幅方向外側端において、係止部としての平板状の係止板32が所定数(本実施の形態では4つ)架け渡されている。最上位及び最下位の係止板32は、垂直に配置されて、それぞれベントダクト本体28の上壁及び下壁と一体にされている。中間位の係止板32(最上位及び最下位の係止板32以外の係止板32)は、水平に配置されている。
【0018】
ベントダクト本体28の車幅方向内側には、通気口部を構成する取付部材としての略矩形筒状のベントダクトカバー34が取り付けられており、ベントダクトカバー34内にベントダクト本体28の外周が嵌合されている。ベントダクトカバー34の一対の側部間には、車幅方向内側部分において、取付部としての取付板36が所定数(本実施の形態では4つ)架け渡されている。最上位及び最下位の取付板36は、断面L字形板状にされて、それぞれベントダクトカバー34の上壁及び下壁と一体にされている。中間位の取付板36(最上位及び最下位の取付板36以外の取付板36)は、断面U字形板状にされている。
【0019】
ベントダクト本体28内には、通気口部を構成する吸音部材としての第1吸音部材38が収容されると共に、通気口部及び開閉部を構成する吸音部材としての第2吸音部材40が所定数(本実施の形態では3つ)収容されており、第1吸音部材38及び第2吸音部材40は、ウレタン等の発泡樹脂製の吸音材にされている。
【0020】
第1吸音部材38は、矩形平板状にされており、第1吸音部材38はベントダクト本体28内の下面全体に密着されている。第1吸音部材38は、ベントダクト本体28の最下位の係止板32に当接(係止)されると共に、ベントダクトカバー34の最下位の取付板36内に挿入されており、これにより、第1吸音部材38が、最下位の係止板32と最下位の取付板36との間に挟持されて、ベントダクト本体28及びベントダクトカバー34に取り付けられている。
【0021】
第2吸音部材40には、通気口部を構成する矩形平板状の壁部42が設けられており、壁部42の車両前後方向両端面全体は、それぞれベントダクト本体28の一対の側部に密着されている。
【0022】
中間位の第2吸音部材40(最上位の第2吸音部材40以外の第2吸音部材40)の壁部42には、車幅方向外側端部において、断面矩形状の係止孔44が形成されており、係止孔44は車両前後方向両側及び車幅方向外側へ開放されている。係止孔44にはベントダクト本体28の中間位の係止板32が挿入(嵌入)されて当該壁部42が中間位の係止板32に係止されると共に、当該壁部42はベントダクトカバー34の中間位の取付板36内に挿入(嵌入)されており、これにより、当該壁部42が中間位の係止板32と中間位の取付板36との間に挟持されて、中間位の第2吸音部材40がベントダクト本体28及びベントダクトカバー34に取り付けられている。
【0023】
最上位の第2吸音部材40の壁部42は、ベントダクト本体28の最上位の係止板32に当接(係止)されると共に、ベントダクトカバー34の最上位の取付板36内に挿入されており、これにより、当該壁部42が最上位の係止板32と最上位の取付板36との間に挟持されて、最上位の第2吸音部材40がベントダクト本体28及びベントダクトカバー34に取り付けられている。
【0024】
ベントダクト10内には、通気口としての通気路46(空気流路)が所定数(本実施の形態では3つ)形成されており、通気路46は、ベントダクト本体28の一対の係止板32と一対の側壁との間、一対の第2吸音部材40の壁部42とベントダクト本体28の一対の側壁との間又は第1吸音部材38と第2吸音部材40の壁部42とベントダクト本体28の一対の側壁との間、及び、ベントダクトカバー34の一対の取付板36と一対の側壁との間を通過している。
【0025】
壁部42の下面には、断面略半円状の凸部48が形成されており、凸部48の車両前後方向両端面全体は、それぞれベントダクト本体28の一対の側部に密着されている。
【0026】
第2吸音部材40には、開閉部としての断面略U字形板状の弁部50が設けられており、弁部50は、壁部42の凸部48より車幅方向内側から下側かつ車幅方向外側へ延出されると共に、車両前後方向両端面全体がそれぞれベントダクト本体28の一対の側部に接触されている。弁部50の上部には、変形手段としての断面三角形状の切欠52が形成されており、弁部50は、特に切欠52形成部分において、弾性変形可能にされている。図2(A)に示す如く、弁部50は、弾性変形された状態で、下側の壁部42又は第1吸音部材38の下壁に接触されており、弁部50は、閉じられて、通気路46を閉鎖している。これにより、車室16内の空気が通気路46を介して車外へ流出(通過)されることが防止されている。
【0027】
車室16内の気圧が所定の気圧以上になった際には、図2(B)に示す如く、弁部50が、車室16内の空気の圧力によって、上側へ弾性変形(移動)されることで、弁部50が、開けられて、通気路46を開放可能にされている。これにより、車室16内の空気が通気路46を介して車外へ流出可能にされている。
【0028】
次に、本実施の形態の作用を説明する。
【0029】
以上の構成のベントダクト10では、弁部50が閉じられて通気路46を閉鎖している。これにより、車室16内の空気が通気路46を介して車外へ流出されることが防止されている。
【0030】
車両12のサイドドア14やバックドア18が閉じられたり、車両12のエアコンディショナーが車外から車室16内に空気を送風したりして、車室16内の気圧が所定の気圧以上になった際には、弁部50が、車室16内の空気の圧力によって、上側へ弾性変形されることで、弁部50が、開けられて、通気路46を開放する。これにより、車室16内の空気が通気路46を介して車外へ流出されて、サイドドア14やバックドア18の閉まり性能及びエアコンディショナーの作動時の車室16内の換気性能を確保することができる。
【0031】
ここで、弁部50の全体が吸音材(第2吸音部材40)によって構成されると共に、通気路46の上壁及び下壁の全体が吸音材(第1吸音部材38及び第2吸音部材40の壁部42)によって構成されている。このため、図3に示す如く、弁部50の全体及び通気路46の上壁及び下壁の全体が、車外から通気路46を通過する音を吸収する(音のエネルギーを減衰させる)ことができ、車室16内の車外に対する遮音性(車室16内の振動騒音を抑制する性能)を確保することができる。これにより、通気路46の車幅方向内側又は車幅方向外側を被覆する吸音材を別途設ける必要をなくすことができ、車室16内の車外に対する通気路46を介しての通気性を向上させることができると共に、省スペース化を図ることができ、かつ、部品点数を低減することができる。
【0032】
さらに、弁部50の全体が吸音材によって構成されて、吸音面積が大きくされている。このため、車外から通気路46を通過する音を良好に吸収することができ、車室16内の車外に対する遮音性を良好に確保することができる。
【0033】
しかも、第2吸音部材40の壁部42に凸部48が形成されて、吸音面積が大きくされると共に、凸部48が反射した音を弁部50が吸音可能にされている。このため、車外から通気路46を通過する音を一層良好に吸収することができ、車室16内の車外に対する遮音性を一層良好に確保することができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、通気路46の上壁及び下壁に吸音材(第1吸音部材38及び第2吸音部材40の壁部42)を設けた構成としたが、通気路46の外周全体に吸音材を設けた構成としてもよい。
【0035】
また、本実施の形態では、通気路46の外周面に凸部48を設けた構成としたが、通気路46の外周面に凹部を設けた構成としてもよい。
【0036】
さらに、本実施の形態では、第1吸音部材38及び第2吸音部材40(吸音材)をウレタン等の発泡樹脂製のものにした構成としたが、これに限らず、第1吸音部材38及び第2吸音部材40(吸音材)は、グラスウール、ガラスクロス、及び、フェルト(不織布)等の多孔質材料のものであればよい。
【0037】
また、本実施の形態では、ベントダクト10を車両12の周壁20の車外側面(室外側面)に設けた構成としたが、ベントダクト10を車両12の周壁20の車室16内側面(室内側面)に設けた構成としてもよい。
【0038】
さらに、本実施の形態では、ベントダクト10を車両12に設けた構成としたが、ベントダクト10を建造物(例えば住宅)に設けた構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係るベントダクトを示す断面図である。
【図2】(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係るベントダクトの一部を示す断面図であり、(A)は、ベントダクトにおける空気の遮断状況を示す図であり、(B)は、ベントダクトにおける空気の通過状況を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るベントダクトにおける吸音状況を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るベントダクトが適用されて構成された車両を示す前斜め左方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
10 ベントダクト(通気構造)
20 周壁(隔離部)
28 ベントダクト本体(通気口部)
34 ベントダクトカバー(通気口部)
38 第1吸音部材(通気口部、吸音材)
40 第2吸音部材(吸音材)
42 壁部(通気口部)
46 通気路(通気口)
48 凸部
50 弁部(開閉部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外との隔離部の室内側面又は室外側面に設けられ、室内と室外との間で空気を通過させる通気口を形成する通気口部と、
前記通気口を開閉可能にされ、少なくとも一部を吸音材によって構成された開閉部と、
を備えた通気構造。
【請求項2】
前記通気口部の少なくとも一部を吸音材によって構成した、ことを特徴とする請求項1記載の通気構造。
【請求項3】
前記開閉部の吸音を必要とする室内側又は室外側に設けられた凸部又は凹部の少なくとも一部を吸音材によって構成した、ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の通気構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−67148(P2009−67148A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235804(P2007−235804)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】