説明

通気装置

【課題】製造コスト、快適な環境状態を生み出す能力、および/またはエネルギー消費に関して有利な、通風機を用いた、座席カバーを通して空気を吹きつける方式の座席用通気装置の開発。
【解決手段】少なくとも1つの遮断層(125)と、1つのカバー層(126)と、その間にある1つの分配層(124)と、を有しており、少なくとも1つの前記遮断層(125)が前記分配層(124)の使用者とは反対の側に配置され、少なくとも1つの前記カバー層(126)が前記分配層(124)の使用者を向いた側に配置されている空気ガイド装置(122)を少なくとも1つ備える、特に人に近い表面または人が触れる表面を通気するための通気装置(120)に関する。少なくとも1つのカバー層(126)は少なくとも一部通気性で、また少なくとも一部が蒸気透過性であり、遮断層(125)は少なくともブロック単位でカバー層(126)よりも低い通気性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に記載した通気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通風機を用いて、座席カバーを通して空気を吹きつける方式の座席用通気装置が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特にその製造コスト、快適な環境状態を生み出す能力、および/またはエネルギー消費に関して有利な、改善された代替の技術的解決策を開発することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記した背景のもと、請求項1の特性をもった技術的コンセプトが提案される。その他の有利な実施形態は、他の請求項および以下の説明により理解されるだろう。
【0005】
例えば、湿気を吸収する材料、通風機の連続運転、カバーの表面のすぐ下で透過性の層の代わりに通風機を使用すること等、考えられる多数の解決可能性の中から、本発明では通風機がオフの時でも有意な環境状態の改善をもたらすためには、驚くべきことに、使用する材料の通気性と蒸気透過性とを区別すれば十分であるという解決策が見出された。
【0006】
本発明による通気装置では、通風機が作動する間の効率的な通気が可能である。同時に本発明による通気装置では、通風機がオフの時にも、通気されるべき表面および/または使用者の肌に湿気がたまるのを防ぐ。
【0007】
以下に、本発明の詳細を説明する。これらの実施例は本発明をわかりやすくするためのものである。ただし、これらは単なる例であるに過ぎない。説明された個々の、または複数の特性を本発明の枠内で省略、変更、補足できるのは当然である。異なった実施形態の特性も、当然お互いに組み合わせることができる。肝心なのは、本発明のコンセプトがおおよそ実現されるということである。ある特性が少なくとも一部実現されるべきであるという時は、その特色が完全に実現される、またはおおよそ完全に実現されることを含む。この際、「おおよそ」とは特に、実施することにより希望される用益が認識できる程度に達成できることを意味する。これは特に、ある該当の特性が少なくとも50%、90%、95%、または99%実現されることを意味しうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】通風装置を備えた乗物の一部縦断面図。
【図2】第一実施形態に係る通風装置の分解図。
【図3】第二実施形態に係る通風装置の分解図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面に基づき本発明を説明する。
【0010】
図1は、乗物1000を示す。これは、例えば飛行機、汽車、船あるいは、この例のように自動車であってもよい。
【0011】
乗物1000は、少なくとも一つのインテリア装備品1100を有する。これは、明らかにしない時には、たとえば乗物用のステアリング装置1120、インストラメントパネル1130、アームレスト1140、ドアのライニング1150、シートクッション1160、暖房用毛布1170、乗物の天井1180、パッディング400、カバー500、あるいはこの例のように座席1110などといった、乗客室の使用者が触れるすべての構成部品のことを意味する。
【0012】
インテリア装備品1100は、少なくとも一つのパッディング400および/または少なくとも一つのカバー500を有するのが好ましい。
【0013】
インテリア装備品1100は、少なくとも一つの空調・温度調節装置100を備えているのが好ましい。これは、たとえば乗物の乗客室の中で、使用者が触れる表面の温度調節/空調をする役目をする。空調・温度調節装置100は、少なくとも一つの温度調節装置110、少なくとも1つの通気装置120および/または少なくとも一つの湿気調節装置130を有する。温度調節装置とは、その周囲の温度を故意に変動させるために使用可能な装置の全てをいい、例えば少なくとも一つの電気抵抗発熱体、一つのテキスタイル平型ヒーター、一つのヒートポンプ、一つのペルティエ素子ならびに/または通風機等の空気を動かす装置を備えた装置全てのことをいう。通気装置とは、例えば車載空調装置、少なくとも一部が通気性のスペーサー手段、スペーサー用ニットおよび/または空調用インサートなどのような、特定の表面あるいは空間領域中で空気の組成を故意に変えるために、あるいは換気の目的で空気の流れを故意に変えるために使用可能な装置全てを意味する。湿気調節装置とは、その周囲の空気の湿度を調節する装置、特に前記した温度調節装置や活性炭ファイバーまたはポリマー・スーパーアブソーバなどの湿気吸収体を意味する。
【0014】
図2および図3による通気装置は、1つ以上の空気の入口121、1つ以上の空気ガイド装置122、および1つ以上の空気の出口123,123’を有する。
【0015】
少なくとも1つの空気ガイド装置122は、1つ以上の分配層124、1つ以上の遮断層125、および1つ以上のカバー層126,126’を有するのが好ましい。
【0016】
遮断層125とは、特に、少なくともその1つの部分領域において、空気・水および/または水蒸気の透過を抑制するあるいは妨げる層のことをいう。これは、特に、35(mPa)/Wより大きな耐水蒸気透過性をもつ層のことを意味する。
【0017】
その際、拡散の尺度として、材料に依存する耐拡散係数(Diffusionswiderstandszahl)μと層の厚さdからの計算で得られるSD値を使うこともできる。その際、特にDIN4108−3によると、層はそのSD値が0.5m以下である時は拡散に対してオープンとされ、SD値が1,500m以上の時は拡散に対して密であり、さらにSD値が0.5m〜1,500mの時は拡散抑止性とされる。少なくとも一つの遮断層125は、その蒸気透過性またはsD値が0.5mよりも大きい、より良くは10mより大きい、更にいいのは1,000mより大きい、更に良いのは1,500より大きい部分領域を少なくとも1つ有するのが好ましい。SD値は可変であってもよく、たとえば遮断層125に存在する湿気に依存してもよい。その際、湿気が高くなればなるほど、SD値がより高い値を示すと有利である。
【0018】
遮断層125は、僅かしか、または全く通気性でないのが好ましい。これは、特に100l/(dmxmin)未満、もっと良いのは10l/(dmxmin)未満、さらに良いのは5l/(dmxmin)未満の通気性であることを意味する。これらの値は、100Paの試験圧の時のものである。
【0019】
1つ以上の遮断層125は、1つ以上の分配層124のところにおいて、各々の分配層124を少なくともブロック単位でその周囲からシールドするように配置されているのが好ましい。これが、分配層124の、乗客と反対側の面全体をカバーし、更には1つ以上の端部においては少しそれ以上にはみ出しているのが好ましい。これが、空気および圧力の損失を防ぐ。少なくとも1つの遮断層125は、少なくとも一部がフィルムまたはプラスチック、ポリマーあるいは例えば金属フィルムのようなその他の透過性の悪い材料からできている。これは、例えば座席のパッディングのフォーム材のように発泡された、好ましくは独立気泡材料からできていてもよい。遮断層125は、一つの同質な材料でできた単一の層としてできているのが好ましい。
【0020】
遮断層125は、たとえばそこに通風機を接続するために、1つ以上の空気通過口127を有していても良い。ここで空気通過口127は、そこに接続された通風機が使用者に向けて空気を吹きつけるべき時には、空気ガイド装置122への空気の入口121として働くことができる。また、空気が通風機によって使用者の方から吸引されるべき時には、空気の出口123として働くこともできる。
【0021】
1つ以上の分配層124は、少なくともブロック単位で、好ましくは1つ以上のカバー層126が少なくとも1つの遮断層125から距離をおくようにするスペーサー装置を有するのが好ましい。そのためには、例えば、スペーサー用ニットおよび/またはプラスチックおよび/あるいはグラスファイバーの成分を含む、並んで配置された複数の螺旋構造体が適している。
【0022】
カバー層126とは、特に、使用者に向かって通気装置を少なくとも一部カバーする層のことを意味する。特に、少なくともその1つの部分領域において少なくとも空気を透過させにくい、あるいは透過性がない層のことを意味する。その値は遮断層の場合と同様に設定されていてよい。
【0023】
1つ以上のカバー層126は1つ以上の分配層124のところに配置され、これが少なくともブロック単位でその周囲から分配層124をシールドすることが好ましい。カバー層126は分配層124の乗客の方に向いた表面全体をカバーし、更には少しそれよりもはみ出しているのが好ましい。これが空気および圧力の損失を防ぐ。
【0024】
少なくとも1つのカバー層126は、少なくとも一部が、少なくともフィルムあるいはプラスチックポリマーあるいは、たとえば金属フィルムのような空気または蒸気を透過しにくいその他の材料からできているのが好ましい。これは、たとえば座席のパッディングのフォーム材のような発泡した、独立気泡材料によってできていてもよい。代わりに、あるいはそれに加えて、カバー層は少なくともブロック単位で蒸気・水および/または空気に対して透過性が良い材料からできていてもよい。カバー層126は、一つの同質な材料からできた単一の層としてできていてもよいが、空気および/または水・蒸気に対して異なった透過性挙動を有する、2枚の異なる層を備えると好ましい。
【0025】
カバー層126は、たとえば通風機を接続するために、1つ以上の空気通過口127’を有してよい。その際、空気通過口127’は、そこに接続された通風機が使用者に向かって空気を吹き付けるべき時には空気ガイド装置122への空気の入口121として働くことができる。また、空気が通風機によって使用者から吸引されるべき時には空気の出口123として働くこともできる。
【0026】
少なくとも一つのカバー層126により、少なくとも一部および/またはブロック単位で、水蒸気および/または水が通過することができる。少なくとも一つのカバー層126は、通気性が10l/(dmxmin)、もっと良いのは50l/(dmxmin)、さらに良いのは少なくとも100l/(dmxmin)である部分領域を有するのが好ましい。更にカバー層126は、蒸気透過性ないしはそのSD値が1,500m未満、もっと良いのは10m未満、より良くは1m未満、さらに良いのは0.5m未満である部分領域を少なくとも一つ有するのが好ましい。これは、特に35(mPa)/W未満の耐水蒸気透過性のことを意味する。少なくとも一つのカバー層126が、少なくともブロック単位で、好ましくはその全面積にわたって蒸気透過性であるのが好ましい。通気性ないしは耐水蒸気透過性Refは、35(mPa)/W以下であるのが好ましく、20(mPa)/W以下であるともっと好ましく、5(mPa)/W以下であるとさらに好ましく、3(mPa)/W以下であるともっと良い。
【0027】
SD値は変動値であってもよく、たとえばカバー層126に存在する湿気に依存してもよい。この際、湿気が高ければ高いほどSD値が大きくなると有利である。
【0028】
空気通過口127’は、図2に示すように、カバー層126中の窓状の穴であってよい。しかし、これらはまた図3のようにマイクロ穿孔および/またはメッシュあるいは、テキスタイルの糸ないしはファイバー間の隙間により形成されてもよい。
【0029】
例えば、133g/m以下の基本重量をもつテキスタイルが適している。このようなテキスタイルはフリースであるのが好ましく、および/またはたとえばポリエチレン(PET)およびポリアミド(PA6)のようないくつかのタイプのファイバーを使ったテキスタイルが好ましい。PETファイバーの割合がPA6ファイバーのそれよりも大きいのが好ましい。PETファイバーの割合は少なくとも60%、よりよくは70%以上であるのが好ましい。PA6ファイバーの割合は15〜45%であるのが好ましい。カバー層126は少なくともその一部が湿気をほんの僅かしか、あるいは全く吸収しない材料からできているのが好ましい。
【0030】
空気ガイド装置122は、少なくとも1つの遮断層125、1つの分配層124および1つのカバー層126が1つのまとまったアセンブリを形成するモジュールシステムとしてできているのが好ましい。さらに、このアセンブリは一つの電気ヒーター、できれば電気平型ヒーター、1つの通風機および/または一つの熱風ファンと組み合わせて空調インサートモジュールを形成していてもよい。空気ガイド装置は、それ自身は同質の単層の材料から形成される、2つまたは3つの層しか有していないのが好ましい。
【0031】
カバー層126と遮断層125は、たとえば接着、溶接あるいは縫製によって互いに接合された分配層124の1つ以上の端を、少なくとも一部はみ出して(覆って)いるのが好ましい。この接合は空気ガイド装置122の端全体にわたらなくてもよく、分配層124に横から空気を吹き入れ、およびそこから吸引するために、空気通過口127が予定されていてもよい。また、通気される表面から離れている箇所に空気ガイド装置122を接続することができるように、この領域に図3のようなシュノーケル129を設けてもよい。シュノーケル129は、例えば座席の足の領域において冷たい空気を吸引するよう働くことができる。
【0032】
空気ガイド装置122の内部が、通風機をオフにしても通気されるべき表面または座席1110の周囲の空気とつながっていると有利である。これにより、カバー層126を通って空気ガイド装置122の内部に拡散する湿気が、通気されるべき表面から離れた空気通過口127において(外に)出ることができる。
【符号の説明】
【0033】
100 空調・温度調節装置
110 温度調整装置
120 通気装置
121 空気の入口
122 空気ガイド装置
123,123’ 空気の出口
124 分配層
125 遮断層
126,126’ カバー層
127 空気通過口
129 シュノーケル
130 湿気調節装置
400 パッディング
500 カバー
1000 乗物
1100 インテリア装備品
1110 座席
1120 乗物のステアリング装置
1130 インストラメントパネル
1140 アームレスト
1150 ドアのライニング
1160 シートクッション
1170 暖房用毛布
1180 乗物の天井

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの遮断層(125)と、1つのカバー層(126)と、その間にある1つの分配層(124)と、を有しており、少なくとも1つの前記遮断層(125)が前記分配層(124)の使用者とは反対の側に配置され、少なくとも1つの前記カバー層(126)が前記分配層(124)の使用者を向いた側に配置されている空気ガイド装置(122)を少なくとも1つ備える、特に人に近い表面または人が触れる表面を通気するための通気装置(120)であって、
少なくとも1つの前記カバー層(126)が少なくとも一部は通気性で、また少なくとも一部は蒸気透過性であり、
前記遮断層(125)が少なくとも部分的に空気および/または蒸気の通過を抑制するようにできていることを特徴とする通気装置(120)。
【請求項2】
前記カバー層(126)の蒸気透過性の領域が、そのベース面積および/または通気されるべき表面の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より良くは50%、より良くは70%、もっと良いのは90%の領域であることを特徴とする請求項1記載の通気装置(120)。
【請求項3】
前記カバー層(126)は、通気性が50l/(dmxmin)未満、さらに好ましくは10l/(dmxmin)未満であって、しかも蒸気透過性がSD値1,500m未満、より好ましくは10m未満、さらに好ましくは0.5m未満である領域を少なくとも一つ有することを特徴とする請求項1または2記載の通気装置(120)。
【請求項4】
前記カバー層(126)の蒸気透過性領域の総面積が前記カバー層(126)の通気性領域の総面積よりも大きい、好ましくは少なくとも10%大きい、より良くは50%大きい、さらに良いのは100%大きい、もっと良いのは300%以上大きいことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の通気装置(120)。
【請求項5】
前記カバー層(126)が、フリースを有し、好ましくはポリエステルマイクロファイバーおよび/またはポリアミドファイバーを、好ましくは10%〜90%対60%〜10%の混合割合で含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の通気装置(120)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の通気装置(120)を少なくとも1つ備えることを特徴とする座席(1110)。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項記載の通気装置(120)を少なくとも1つ備え、および/または請求項6記載の座席(1110)を少なくとも1つ備えていることを特徴とする乗物(1000)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−247897(P2009−247897A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88983(P2009−88983)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(599067662)ヴィー・エー・テー・オートモーティヴ・システムス・アクチェンゲゼルシャフト (29)
【Fターム(参考)】