説明

通気防音ドア

【課題】ドア内部の劣化の防止やドア自体の遮音性能の維持を達成しつつ、通気及び防音の両方を満足させる通気防音ドアが得られるようにする。
【解決手段】一端がドアA表面に開口する表面側開口部21に連通する一方、他端がドアA裏面に開口する裏面側開口部22に連通して両開口部21,22間で通気させる通気路24が、ドアA内部の上端寄り及び下端寄りの両方に形成されている。通気路24は、ドアA内部で裏面側開口部22外側に延出し、当該延出領域で吸音空間部Sが構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の建物に用いられる通気防音ドアに関し、特に、通気性を損なうことなく遮音性をより向上させたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の内装仕上げに使用される塗料や接着剤に含まれるホルムアルデヒド等に起因するシックハウスの問題に対処するために、建築基準法の改正に伴い、ドアの閉時においても一定の通気性を確保することが求められている。
【0003】
そして、1日中常時、つまり24時間連続して換気する場合に、ドアにおける換気経路として、そのドアに有効開口面積で100〜150cmの開口部(ガラリやアンダーカット)を設けることで対応することができる。
【0004】
しかし、室外からの騒音や室内の発生音が開口から外に漏れる等の問題があり、特にトイレにおいて発生する音が、隣接する廊下や居室等に漏れてくる問題があった。
【0005】
このような通気及び防音の両方を満足させるための通気防音ドアとして、従来、例えば特許文献1〜3に示されるものが提案されている。
【0006】
これら提案のものは、細部の構造で異なるものの、基本的にはドアの上下において設けられる開口部分がそれぞれドアの表裏両側に位置する室内空間と室外空間とに向かって開口し、開口部分はドアの内部に形成した上下に連通する通気路と通じて、室内と室外の間を空気が移動する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−235960号公報
【特許文献2】特開2005−105579号公報
【特許文献3】特開2007−113307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これら提案例のように、ドアの内部に位置する上下に連通する防音のための通気路を設けると、その通気路はドアの略全体に亘る長い大きな空間(通気空間)となってしまい、汚れた空気や湿気を多く含んだ空気が通気空間を長時間かかって通過することとなり、その分、通気空間内は汚れたり湿ったりする確率が高くなり、そのことでドアが内部から劣化し易くなる。
【0009】
また、ドア内部の略全体に通気空間としての空洞が生じることで、ドアの強度が低下するだけでなく、ドアの面密度が大きい(重い)ほど遮音性が向上するという特性に反して、ドア自体の防音性が低下するのも避けられない。
【0010】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたもので、その目的は、ドアの構造に工夫を凝らすことにより、これらの問題点を解決し、通気及び防音の両方を満足させる通気防音ドアが得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明では、ドアの内部に形成される通気路のドア全体に対して占める割合を小さくし、かつ通気路に連通する吸音構造を採用したことを特徴とする。
【0012】
具体的には、第1の発明は、一端がドア表面に開口する表面側開口部に連通する一方、他端がドア裏面に開口する裏面側開口部に連通して両開口部間で通気させる通気路が、ドア内部の上端寄り及び下端寄りの少なくとも一方に形成され、上記通気路は、ドア内部で上記裏面側開口部外側に延出し、当該延出領域で吸音空間部が構成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明では、ドアの内部に通気路が形成され、この通気路はドアの表面側開口部と裏面側開口部とに連通しているので、ドア表側の空間の空気が表面側開口部、通気路及び裏面側開口部を通ってドア裏側の空間に流れるか、或いはそれとは逆方向に流れるようになる。このことでドア両側の空間の間で通気を確保することができる。
【0014】
また、ドア内に通気路の延出部分からなる吸音空間部が設けられているので、ドアの裏側の音(又は表側の音)が通気路を経由してドア表側(又はドア裏側)に伝わる際に吸音空間部内で干渉しながら吸音減衰され、このことでドア両側間の音の伝播を抑制することができる。
【0015】
そして、上記吸音空間部の容積を変えることで、所望の吸音領域(低音ないし高音)に対応させることができる。
【0016】
また、そのため、従来のように、ドアの内部に大きな空洞の通気空間が不要となり、通気空間が大きいことに起因して、ドア内部の通気空間に汚れたり湿ったりした空気が通ることが生じないので、ドア内部が劣化することはないとともに、ドア内部の空洞化によるドアの軽量化がなく、ドア自体の遮音性能を維持することができる。よって、ドア内部の劣化防止やドア自体の遮音性能の維持を図りつつ、ドアの防音を図ることができる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において、上記通気路が、ドア内部の上端寄り及び下端寄りの両方に形成され、上記吸音空間部は、各々の通気路に連続して設けられていることを特徴とする。
【0018】
この発明では、ドアの上端寄り及び下端寄りの両方で通気量を確保しつつ遮音及び防音効果を図ることができ、第1の発明に比べて各々の効果が倍増する。
【0019】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記吸音空間部には、吸音材が収容されていることを特徴とする。
【0020】
この発明では、吸音空間部に収容された吸音材の併用により、遮音及び防音効果をさらに高めることができる。また、吸音空間部の容積により吸音させる周波数帯域を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、第1の発明によると、ドアの内部にドア表面側開口部及びドア裏面側開口部に連通する通気路を設け、この通気路の延出領域を吸音空間部とすることにより、ドア両側の空間の間で通気を確保し、かつドア内部の大きな通気空間に起因する劣化防止を図ることができる。また、ドアが必要以上に軽くならないので(ドア内部の空洞が大きくならないので、)、ドア自体の遮音性能の維持を達成しつつ、吸音空間部によりドア両側間の音の伝播を吸音して抑制することができる。
【0022】
第2の発明によると、吸音空間部を有する通気路をドア内部の上端寄り及び下端寄りの両方に形成することにより、遮音及び防音効果を保ちつつ通気量を高めることができる。
【0023】
第3の発明によると、吸音材を吸音空間部に収容することにより、遮音及び防音効果をさらに高め、かつ吸音空間部の容積により吸音させる周波数帯域の調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施形態に係る通気防音ドアの要部を示す拡大断面図である。
【図2】ガラリの拡大断面図である。
【図3】ガラリ枠の裏側を示す正面図である。
【図4】ガラリ枠の表側を示す正面図である。
【図5】一実施形態におけるドア内部のフレームの正面図である。
【図6】一実施形態に係る通気防音の正面図である。
【図7】音源をピンクノイズとしたときの通気防音ドアの遮音性能を示す図である。
【図8】音源をトイレでの水洗音としたときの通気防音ドアの防音性能を示す図である。
【図9】音源をトイレでの男性の行為音としたときの通気防音ドアの防音性能を示す図である。
【図10】他の実施形態に係る通気防音ドアの図1相当図である。
【図11】他の実施形態におけるドア内部のフレームの図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0026】
図6は本発明の実施形態に係る通気防音ドアAの全体構成を示し、表側から見たものである。このドアAは縦長の長方形状のもので、図1に拡大して示すように、室外側空間R1(例えば廊下)に面する表面板1と、室内側空間R2(例えばトイレ)に面する裏面板2とを備えている。両面板1,2は同一形状のもので、図5に示すようなフレーム8の表裏に一体に貼り付けられている。尚、ドアAは、トイレとその外側の空間(廊下)とを仕切るものを例として挙げているが、その他の屋内用や屋外用のドアでもよいのはいうまでもない。
【0027】
再び図6に示すように、ドアAの図示左側であって高さ方向の略中央には、ドアノブ(図示せず)を取り付けるためのノブ取付け部4と、箱錠(図示せず)を取り付けるための錠取付け部5とが上下に並んで形成されている。このドアAは、ノブ取付け部4と反対側である図6右側の辺がドア枠(図示せず)に取り付けられて、その取り付けられた側を回動中心としてスイングするタイプのドアである。
【0028】
図5により上記ドアAのフレーム8について説明すると、このフレーム8は各面板1,2と同じ形状のもので、上下方向に延びて左右の辺(長辺)となる左右1対の縦枠9,9と、水平方向に延びて上下の辺(短辺)となる上下1対の横枠10,10とを縦長の矩形枠状に結合固定したものである。
【0029】
上側横枠10の下側であってドアAの上端寄り部分には、水平左右方向に延びる上下1対の横桟11,11Aが所定の間隔をあけて配置され、この各横桟11,11Aの左右両端部は左右の縦枠9,9に結合されている。上側の横桟11と上側横枠10との間には、上下方向に延びる4本の短い縦桟12,12,…が左右方向に並びかつ上下両端部をそれぞれ横桟11及び上側横枠10に接合した状態で配置され、これらの縦桟12,12,…により上側の横桟11と上側横枠10との間が5つの空間(範囲)に仕切られ、そのうちの左右両端の空間に芯材13,13が充填されている。
【0030】
また、上記上下の横桟11,11A間の左右両端部には上下方向に延びる左右1対の縦桟14,14が上下両端部をそれぞれ上下の横桟11,11Aに接合しかつ側面を上記縦枠9,9に接した状態で配置されており、この左右1対の縦桟14,14と上下の横桟11,11Aとの間に、例えば左右長さが490mmで上下幅が303mmの矩形状の通気路用開口15が形成されている。
【0031】
一方、ドアAの下端部も同様の構造となっている(尚、上記ドアAの上端部と同様の部材は同じ符号を付して説明する)。すなわち、下側横枠10の上側であってドアAの下端寄り部分には、水平左右方向に延びる上下1対の横桟11A,11が所定の間隔をあけて配置され、この各横桟11A,11の両端部は左右の縦枠9,9に結合されている。下側の横桟11と下側横枠10との間には、上記ドアA上部の各縦桟12と上下に対応する位置に、上下方向に延びる4本の短い縦桟12,12,…が左右方向に並びかつ上下両端部をそれぞれ横桟11及び下側横枠10に接合した状態で配置され、これらの縦桟12,12,…により下側の横桟11と下側横枠10との間が5つの空間(範囲)に仕切られ、そのうちの左右両端の空間に芯材13が充填されている。
【0032】
また、ドアA下側における上記上下の横桟11A,11間の左右両端部には上下方向に延びる左右1対の縦桟14,14が上下両端部をそれぞれ上下の横桟11A,11に接合しかつ側面を上記縦枠9,9に接した状態で配置されており、この左右1対の縦桟14,14と上下の横桟11A,11との間に、例えば左右長さが490mmで上下幅が303mmの矩形状の通気路用開口15が形成されている。
【0033】
上記ドアA上部の下側横桟11AとドアA下部の上側横桟11Aとの間には、上記ドアA上下部の縦桟12,12,…と上下に対応する位置に4本の縦桟16,16,…が上下両端部をそれぞれ上記上下の横桟11A,11Aに接合した状態で配置され、これらの縦桟16,16,…により上下の横桟11A,11A間が上下方向に細長い5つの空間(範囲)に仕切られ、そのうちの左右両端の空間には縦に細長い例えば厚さ24mmのパーティクルボード17,17が充填されている。また、ドア幅方向(左右方向)中間部の残り3つの空間には、それら空間での同じ高さ位置に、水平方向に延びる5段の短い横桟18,18,…が両端部をそれぞれ隣接する縦桟16,16に接合した状態で配置され、これらの横桟18,18,…により各空間が上下に並んだ6つの空間に仕切られている。これら各空間毎の6つの空間は大小3種類に分けられ、上下両端の2つ(ドアA全体では6つ)の空間同士は、互いに同じ高さで上記横桟11の上下幅と同程度の高さ(例えば30mm)を持つ横長直方体のものとされている。上下中程の2つ(ドアA全体では6つ)の空間同士は、互いに同じ高さ(例えば279.5mm)を持つ縦長直方体のものとされている。上下両端の空間と上下中程の空間との間の空間同士は、互いに同じ高さ(例えば129.5mm)を持つ縦長直方体のものとされている。そして、上下両端の空間を除く合計12箇所のにはグラスウール等の吸音材19が充填されている。
【0034】
図6に示すように、上記表面板1には、その上下端寄り部分にそれぞれ水平方向に延びる横長の表面側開口部21,21が開口されている。上側の表面側開口部21は、その上端がフレーム8における上記上側の通気路用開口15の上端(横桟11の下端)に、また左右端が該上側の通気路用開口15の左右端にそれぞれ一致し、下端は上側の通気路用開口15の上端から僅かに下がった上部領域に位置している。一方、下側の表面側開口部21は、その下端がフレーム8における下側の通気路用開口15の下端(横桟11の上端)に、また左右端が該下側の通気路用開口15の左右端にそれぞれ一致し、上端は下側の通気路用開口15の下端から僅かに上がった下部領域に位置している。
【0035】
これに対し、上記裏面板2には、図6に破線にて示すように、その上下端寄り部分にそれぞれ水平方向に延びる横長の裏面側開口部22,22が開口されている。上側の裏面側開口部22は、その下端がフレーム8における上側の通気路用開口15の上下中程より下がった位置(横桟11Aの上方)に、また左右端が該上側の通気路用開口15の左右端にそれぞれ一致し、上端は上側の通気路用開口15の上下中程に位置している。一方、下側の裏面側開口部22は、その上端がフレーム8における下側の通気路用開口15の上下中程より上がった位置(横桟11Aの下方)に、また左右端が該下側の通気路用開口15の左右端にそれぞれ一致し、下端は下側の通気路用開口15の上下中程に位置している。
【0036】
そして、図1に示すように、表面板1はフレーム8の表面に、また裏面板2はフレーム8の裏面にそれぞれ各々の外周面を互いに一致させて接合一体化されている。このことで、フレーム8の上下の通気路用開口15,15はそれぞれ表面板1及び裏面板2で閉塞されて、これらによって囲まれる空間において、表面側開口部21と裏面側開口部22との間の空間で上下の通気路24,24がドアA内部の上端寄り及び下端寄りの両方に形成されている。
【0037】
すなわち、図6にも示すように、ドアAには、その上部及び下部の2箇所に通気路24,24が形成されており、この各通気路24を通じて、室外側空間R1と室内側空間R2との間で換気をするようになっている。
【0038】
そして、上側の通気路24は、一端(表側端)がドアA表面の表面板1に開口する表面側開口部21に連通する一方、他端がドアA裏面の裏面板2において表面側開口部21よりも低い位置に開口する裏面側開口部22に連通して、両開口部21,22間で通気させる。一方、下側の通気路24は、一端(表側端)がドアA表面の表面板1に開口する表面側開口部21に連通する一方、他端がドアA裏面の裏面板2において表面側開口部21よりも高い位置に開口する裏面側開口部22に連通して、両開口部21,22間で通気させるようになっている。
【0039】
上側の通気路24は、ドアA内部で裏面側開口部22外側(下側)に延出し、当該延出領域で吸音空間部Sが構成されている。この吸音空間部Sは、例えば左右長さが490mmで上下幅が303mmの通気路用開口15に対し、左右長さが490mmで上下幅が横桟11Aから上方50mmに亘って所定の容積を有する直方体形状に設定され、通気路用開口15の裏面側開口部22下方に形成されている。
【0040】
下側の通気路24は、ドアA内部で裏面側開口部22外側(上側)に延出し、当該延出領域で吸音空間部Sが構成されている。この吸音空間部Sも、例えば左右長さが490mmで上下幅が303mmの通気路用開口15に対し、左右長さが490mmで上下幅が横桟11Aから下方50mmに亘って所定の容積を有する直方体形状に設定され、通気路用開口15の裏面側開口部22上方に形成されている。つまり、上下の吸音空間部S,Sは、上下の通気路24,24にそれぞれ連続して設けられている。
【0041】
尚、上記フレーム8における各通気路用開口15内の表面側開口部21と裏面側開口部22との間には、1つの芯材26が通気路24での通気を阻害しないように配置固定されており、この芯材26により通気路用開口15での面板1,2のドア厚さ方向の剛性を高めている。この芯材26は複数設けてもよい。
【0042】
図1に示すように、上記表面板1の各表面側開口部21及び裏面板2の各裏面側開口部22にはそれぞれガラリ31が装着されていて、このガラリ31により該各開口部21,22が通気可能に閉じられている(尚、図6にはガラリ31は示していない)。この各ガラリ31は、図2〜図4に拡大して示すように、開口部21,22に対応した大きさの矩形枠状のガラリ枠32を有する。このガラリ枠32は、先端側から上記各開口部21,22にドアA外側から略面板1,2の厚さ程度の部分まで密嵌合される枠本体33と、この枠本体33のドアA外側となる基端側外周部全体に面板1,2外面に沿うように突出するフランジ部35とからなり、枠本体33の内部には矩形状の開口34が形成されている。
【0043】
図2に示すように、上記枠本体33のドアA内側に位置する先端側外周部にはルーバ部材40が一体的に取付固定されている。このルーバ部材40は、例えば金属や硬質樹脂等からなる矩形箱状のもので、枠本体33の先端側外周部に外嵌合されて固定されている。このルーバ部材40の底部において枠本体33の開口34に相当する部分には水平横長の複数(図示例では3つ)の通気口41,41,…が開口され、これら通気口41,41,…の境界部分には複数枚(図示例では2枚)のルーバ42,42(羽板)が設けられている。このルーバ42,42は互いに平行で、ドアAの下側の表面側開口部21及び上側の裏面側開口部22のガラリ31にあっては、ドア厚さ方向の中央側(ドアAの内側)に向かって上方に向かうように、またドアAの上側の表面側開口部21及び下側の裏面側開口部22のガラリ31にあっては、ドア厚さ方向の中央側に向かって下方に向かうように、それぞれ傾斜しており、その上下面に対する傾斜角度θ1は例えばθ1=20°〜60°(40°±20°)とされている。
【0044】
上記各ルーバ42は、例えばルーバ部材40の底部に略コ字のスリットを形成して該スリット内の部分を、スリット端部同士を結ぶ線を支点にして斜めに切り起こすことで設けることができ、このスリット内を含む部分が通気口41となる。
【0045】
そして、上記枠本体33の開口34において、ドアA内側に位置する先端側(図2で右端側)の周縁部には、該周縁部の隅角部を斜めに切り欠いた傾斜面37が開口周縁の全体に形成されており、この開口周縁の傾斜面37により、その上下端部とルーバ42のドア厚さ方向中央側端部(図2で右端部)との間の開口面積がルーバ42の傾斜に伴って小さくなるのを阻止するようにしている。
【0046】
上記傾斜面37の傾斜角度θ2は開口34周縁全体に亘って同じであり、そのうち上下端部の上下面に対する傾斜角度θ2は、例えば上記ルーバ42の傾斜角度θ1と略同じとされている。
【0047】
したがって、この実施形態においては、ドアAのフレーム8内の上下の通気路用開口15,15がそれぞれ表裏の面板1,2で覆われ、その各面板1,2に各通気路用開口15,15に連通する表面側及び裏面側の各開口部21,22が高さ位置を異ならせて開口されているので、ドアA内部に、ドアAの表面側開口部21と裏面側開口部22とに連通する2つの通気路24,24が形成される。そのため、ドアA表側の室外側空間R1の空気が表面側開口部21、通気路24及び裏面側開口部22を通ってドアA裏側の室内側空間R2に流れるか、或いはそれとは逆方向に流れるようになり、このことでドアA両側の空間R1,R2の間で通気を確保することができる。例えば室外側空間R1が廊下であり、室内側空間R2がトイレである場合には、トイレ内の換気扇(図示せず)の作動等によりトイレ内の空気が吸引されることで、廊下の空気がドアAの上下の通気路24,24を通ってトイレ内に流れ、トイレの換気が行われる。
【0048】
そして、ドアA内部の上下位置に、上記各通気路24を延出させて、つまり各通気路24に連続して構成された所定の容積を有する直方体形状の吸音空間部Sが設けられているので、ドアAの裏側の音(又は表側の音)が通気路24を経由してドアA表側(又はドアA裏側)に伝わる際に、その特定の周波数域の音が吸音空間部S内で干渉しながら吸収されて減衰される。このことで、ドアA両側間の音の伝播を抑制でき、防音ドアAが得られる。また、上下の吸音空間部S,Sで遮音及び防音効果を保ちつつ通気量を高めることができる。
【0049】
このように吸音空間部SによってドアA両側の音の伝播を抑制するため、ドアAの内部に大きな空洞の通気空間を設けて防音する場合の空洞は不要となり、通常の容積の通気路を持つドアAにおいて、それに吸音空間部Sを設けるだけで済み、大きな改良は不要である。しかも、ドアA内部に大きな通気空間を設けることで、汚れたり湿ったりした空気がドアA内部を通ることがないので、ドアA内部の劣化も生じない。さらに、ドアA内部の空洞化に起因するドアAの軽量化がなく、ドアA自体の遮音性能をも維持することができる。これらによって、ドアA内部の劣化防止やドアA自体の遮音性能の維持を図りつつ、ドアAの防音を図ることができる。
【0050】
そして、吸音空間部Sの容積を変えることで、所望の吸音領域に対応させることができる。
【0051】
また、上記ドアAの上下の表面側開口部21及び裏面側開口部22に装着されているガラリ枠32において、その開口34のドア厚さ方向中央側(ドアA内側)の上下端部に傾斜面37が形成されているので、この傾斜面37のないものと比べ、ガラリ枠32の開口34周縁のドア厚さ方向中央側端部と傾斜したルーバ42との間の開口面積が大に確保され、その間を空気が渦の発生による通気損失を招くことなくスムーズに流れるようになり、ガラリ31を経由して効率よく通気することができる。
【実施例】
【0052】
次に、具体的に実施した実施例について説明する。
【0053】
(遮音性能)
上記実施形態の構成を有する通気防音ドアの遮音性能について、一般のドアと比較して比較した。音源はピンクノイズであり、125Hz,250Hz,500Hz,1kHz,2kHz,4kHzの遮音性能(単位はdBである)を評価した。その結果を図7に示す。
【0054】
この図7をみると、実施形態に係る通気防音ドアは一般のドアと比べて250Hz〜4kHzの広い周波数域で遮音性能が向上している。
【0055】
(N値による評価)
室内側空間をトイレとし、室外側空間を廊下としたときに、トイレ内で水洗の洗浄音を発生させ、そのトイレ内で録音した実際の洗浄音と、廊下で録音した洗浄音との音圧レベルを比較し、N値による評価を行った。その結果を図8に示す。ドアは上記実施形態の構成の通気防音タイプのものと、一般のドアとを比較した。
【0056】
また、これと同様に、室内側空間をトイレとし、室外側空間を廊下としたときに、トイレ内で男性の行為音(小便音)を発生させ、そのトイレ内で録音した実際の行為音と、廊下で録音した行為音との音圧レベルを比較し、N値による評価を行った。その結果を図9に示す。ドアは上記実施形態の構成の通気防音タイプのものと、一般のドアとを比較した。
【0057】
これらの図8及び図9をみると、水洗音及び行為音のいずれにおいても、一般ドアのN値はN−45(「多少大きく聞こえる」)である。これに対し、本発明の実施形態に係る通気防音ドアのN値はN−35(「小さく聞こえる」)であり、一般ドアよりもN値で10低下していて2等級の差が生じており、防音性能が有効であることが判る。
【0058】
(他の実施形態)
図10及び図11は他の実施形態に係る通気防音ドアAを示す。
【0059】
この実施形態では、上下の吸音空間部Sにグラスウールやロックウール等からなる吸音材25が収容されている。そのほかは、上記の実施形態と同様に構成されているので、同一の構成箇所に同一の符号を付して詳細な説明を割愛する。
【0060】
この実施形態では、吸音空間部Sに収容された吸音材25により、遮音及び防音効果をさらに高めることができるとともに、吸音空間部Sの容積により吸音させる周波数帯域の調整をすることができる。
【0061】
尚、上記各実施形態では、ドアAの上下2箇所に通気路24,24を形成しているが、必ずしも上下両方に設けられている必要はなく、いずれか一方のみの1箇所であってもよい。しかし、1箇所の場合は通気量を確保するために開口部21,22やガラリ31の大きさが大きくなるので、意匠性を良くする点では、上記各実施形態のように通気路24を複数設けて小型のガラリ31を取り付けるのが好ましい。
【0062】
また、上記各実施形態では、ガラリ31を水平横方向に延びるルーバ42,42を持つものとしているが、本発明は、垂直縦方向のルーバを有するガラリを備えた通気防音ドアに対しても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、ドア両側の空間の通気を確保し、かつドア内部の劣化の防止やドア自体の遮音性能の維持を達成しつつ、ドア両側間の音の伝播を抑制できるので、極めて有用で産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0064】
21 表面側開口部
22 裏面側開口部
24 通気路
25 吸音材
A ドア
S 吸音空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がドア表面に開口する表面側開口部に連通する一方、他端がドア裏面に開口する裏面側開口部に連通して両開口部間で通気させる通気路が、ドア内部の上端寄り及び下端寄りの少なくとも一方に形成され、
上記通気路は、ドア内部で上記裏面側開口部外側に延出し、当該延出領域で吸音空間部が構成されていることを特徴とする通気防音ドア。
【請求項2】
請求項1に記載の通気防音ドアにおいて、
上記通気路が、ドア内部の上端寄り及び下端寄りの両方に形成され、
上記吸音空間部は、各々の通気路に連続して設けられていることを特徴とする通気防音ドア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の通気防音ドアにおいて、
上記吸音空間部には、吸音材が収容されていることを特徴とする通気防音ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−202073(P2012−202073A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66238(P2011−66238)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000204985)大建工業株式会社 (419)
【Fターム(参考)】