説明

通気電気炊飯方法と通気電気炊飯器

【課題】送風が保温を含む炊飯域への通気によって、より優れた保温を達成し、炊飯にも生かせるようにする。
【解決手段】器体1に収容した施蓋状態の飯器2内で、飯器2を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、飯器2内の炊飯や保温が行われる炊飯域3に臨ませた通気部4を通じ、炊飯域3に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気電気炊飯方法と通気電気炊飯器に関し、詳しくは、炊飯域への通気を図って保温を含む炊飯を行う通気電気炊飯方法と通気電気炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、飯器と、これを収容して施蓋し炊飯を行う炊飯器本体との間にできる隙間の上部にのみ送風する機能を、炊飯後の保温開始時に利用し、炊き上がり後のご飯を所定温度域に保温するのに、送風により保温温度域までの降温を早めることで、
所定の保温温度までの途中温度まで強制冷却して脂肪酸の酸化を防ぎ、その後は所定の保温温度まで自然冷却を図る場合に生じる、降温中にご飯が長時間高温にさらされて劣化し、変色するのを防止する技術を開示している。
【0003】
また、下記特許文献2は、送風ファンから、発熱部品に向けた第1の送風路と、飯器側に向けた第2の送風路とを備え、蒸らし工程から保温工程に移行する段階で第2の送風路を通じ飯器側に送風して冷却するのに併せ、第1の送風路を閉じることで、第2の送風路での正圧を高めてご飯を緩やかに早く冷却し、所定の保温温度までの降温に時間が掛かり過ぎて黄変などのご飯の老化が生じないようにする技術を開示している。
【0004】
さらに、下記特許文献3は、蓋に外気を吸引して飯器内の上部空間に送風する機能を備え、炊飯完了後に外気を飯器の上部空間に送風してご飯を直接強制空冷することで、短時間に所定の保温温度まで降温させてご飯の味の劣化を防止する技術を開示している。特許文献3は、また、直接の強制空冷によってご飯の表面が乾燥しないように、保温最適温度よりも高い所定温度に達したときに送風ファンを停止して徐冷する技術、検出湿度の基に送風ファンによる空冷を制御し、適正な湿度を超えて強制空冷されないようにする技術、蓋体内に飯器内上部の空気を冷却空気として循環させる機能、および蓋内の循環経路内で循環空気の放熱を図る機能、を備え、強制空冷時に水分が内部循環するだけで外部に放出されず、ご飯の乾燥を防ぐ技術、をそれぞれ開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3058148号公報
【特許文献2】特許第3109434号公報
【特許文献3】特開2001−87126号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1、2に開示の技術は、特許文献3が言うように、間接冷却であるが、特許文献2に記載の技術は、穏やかな早期冷却を達成している。また、特許文献3に記載の技術は、ご飯の直接の強制冷却を図りながら、強制冷却によるご飯の表面の乾燥を防止している。
【0007】
しかし、特許文献3に記載の技術は、直接の強制冷却と言いながら、ご飯全体、つまりご飯の保温域に対しては、飯器内の上部空間という限られた範囲での、外まわりからのものでしかない。この意味で、特許文献1〜3に記載の冷却技術では、保温域のご飯の冷却域外まわりと、非冷却域外まわり、および保温域内部との、温度差によって、ご飯内部での保湿が却って部分的な結露によるべたつき、臭い発生の原因になり、さらなるご飯の美味しさ追及の妨げになる。同時に、折角の送風機構は、種々な工程のある炊飯全般に生かせない課題もある。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑み、送風が保温を含む炊飯域への通気によって、より優れた保温を達成し、炊飯にも生かせる通気電気炊飯方法と通気電気炊飯器を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気炊飯方法は、器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、飯器内の炊飯や保温が行われる炊飯域に臨ませた通気部を通じ、炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行することを特徴とする。
【0010】
このような構成では、炊飯域に臨む通気部を通じ、炊飯や保温が行われる炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御により、炊飯域全域での米粒やご飯粒とのより細部での接触を図っての、直接的で効率がよく均等な熱交換またはおよび湿度の授受にて、その工程に必要な温度またはおよび湿度の環境を、通電制御に併行して補助的に制御し、また、炊飯域が流動環境にある補助的な制御時は通気勢力による対流、撹乱を伴い、補助的な制御を均等に作用させられる。
【0011】
本発明の電気炊飯方法は、また、器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの、低温域での吸水工程、炊飯後のご飯を保温する保温工程の少なくとも1つの工程を、飯器の炊飯や保温が行われる炊飯域に臨ませた通気部を通じ、炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行することを特徴とする。
【0012】
このような構成では、通気制御が、低温域での吸水工程で行われると、炊飯域が流動環境にあることから、吹き込み空気の通気勢力による米および水の対流、撹拌を伴い、温度の均一化と、相互の更新的な接触とを図って、各米粒の吸水を均等に促進させられる。また、必要に応じ、吹き込み空気の温度制御によって温度環境も補助的に整えられる。通気制御が、保温工程で行われると、炊飯域が非流動環境にあることから、吹き込み空気がご飯粒間を通り抜ける通気によって、ご飯の細部につき直接強制冷却し、各部を所定の保温温度まで均一に早期降温させられる。この保温時の強制冷却の場合、送風を断続的にするだけで、つまり送風空気の湿度の管理なしにもご飯の過度の乾燥なく早期降温が達成できる。もっとも、飯器内から外部に出る蒸気の取り込みなどによる送風空気の湿度管理のもとでは、連続送風による早期降温がご飯の過度の乾燥を招かずに達成できる。
【0013】
保温工程では、所定温度での通常保温に移行して後、間欠的に飯器の炊飯域への通気を行うようにすることができる。これにより、所定温度で保温中のご飯粒間に時間経過に伴い滞留しやすい臭気を、蓋の蒸気通路を通じ外部に放出することができる。
【0014】
上記のような方法を達成する本発明の電気炊飯器は、飯器と、この飯器を収容し、収容した飯器を、蒸気を外部に放出する蒸気通路を有して施蓋する蓋を装備した器体と、器体に収容した飯器を加熱する加熱手段と、飯器に設けた通気部を通じ炊飯や保温が行われる炊飯域に空気を吹き込み通気する送風手段と、加熱手段を通電制御して炊飯と炊飯後のご飯の保温とを行うのに併せ、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、送風手段を駆動して送風口を通じ、炊飯域に空気を適宜吹き込み通気させる通気制御を図りながら遂行する制御手段と、を備えたことを特徴とするもので足りる。
【0015】
上記において、さらに、通気部は、通気の開始によって開かれ、通気の停止によって閉じられる弁機能を有したものとすることができる。これによって、通気部を通じ万一にも蒸気が漏れ出るのを防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気炊飯方法および電気炊飯器によれば、炊飯や保温が行われる炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御により、炊飯域が流動環境にある場合は通気勢力による対流、撹乱を伴って特に、非流動環境にある場合は対流、攪拌なしにも、炊飯域全域で米粒やご飯粒との細部での接触を図っての、直接的で効率がよく均等な熱交換またはおよび湿度の授受にて、その工程に必要な温度またはおよび湿度の環境を加熱のための通電制御に併行して補助的に制御し、通電制御単独の場合以上に炊飯環境をよりよく整えられ、ご飯を美味しく炊飯しまた保温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の1つの具体例を示す断面図。
【図2】同電気炊飯器の通気部付近を示す断面図。
【図3】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の別の具体例を示す断面図。
【図4】同電気炊飯器の通気部付近の断面図および平面視した通気孔配列図。
【図5】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の他の具体例を示す断面図。
【図6】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の今1つの具体例を示す通気部付近を示す断面図。
【図7】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の保温を含む炊飯工程の1つの具体例を時間経過に伴う温度変化と共に示すグラフ。
【図8】本願発明の実施の形態に係る通気電気炊飯器の各具体例に共通した制御手段の基本構成を示す概略ブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態に係る通気炊飯方法と通気電気炊飯器につき、図1〜図8を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0019】
本実施の形態に係る通気炊飯方法の1つの具体例は、図1に示す例、図3に示す例、図5に示す例の通気電気炊飯器100、200、300を参照して、器体1に収容した施蓋状態内の飯器2内で、飯器2を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する。この際、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、飯器2の炊飯域3に臨ませた通気部4を通じ、炊飯域3に図1、図3に代表して示す空気20を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行する。
【0020】
このように、炊飯域3に臨む通気部4を通じ、炊飯や保温が行われる炊飯域3に空気20を吹き込んで通気する電気的な通気制御により、炊飯域3全域での図1に代表して示す水30および米40、あるいはご飯との細部にわたる接触を図っての、直接的で効率がよく均等な熱交換またはおよび湿度の授受にて、その工程に必要な温度またはおよび湿度の環境を、通電制御に併行して補助的に制御し、また、炊飯域3が流動環境にある通気制御時は通気勢力による対流、撹乱を伴い、補助的な制御を均等に作用させられる。
【0021】
また、本実施の形態に係る通気電気炊飯方法の別の具体例は、器体1に収容した施蓋状態の飯器2内で、飯器2の加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、炊飯制御の初期工程から保温の最終工程までの、低温域での吸水工程、炊飯後のご飯を保温する保温工程の少なくとも1つの工程を、飯器の炊飯や保温が行われる炊飯域3に臨ませた通気部4を通じ、炊飯域3に空気20を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行する。
【0022】
このように、通気による補助的な制御が、低温域での吸水工程で行われると、炊飯域3が流動環境にあることから、吹き込み空気の通気勢力による米40および水30の対流、撹拌を伴い、温度の均一化と、相互の更新的な接触とを図って、各米粒の吸水を均等に促進させられる。また、必要に応じ、吹き込み空気の温度制御によって通電制御に併せ温度環境も補助的に整えられる。このような温度制御は、飯器2上部からの取り込み蒸気量の調整、専用加熱手段への通電制御による調整など種々な方法を採用できる。通気による補助的な制御が、保温工程で行われると、炊飯域3が非流動環境にあることから、吹き込み空気20がご飯粒間を通り抜ける通気によって、ご飯の細部を所定の保温温度まで均一に早期降温させられる。この場合、送風を断続的にするだけで、つまり送風空気の湿度の管理なしにもご飯の過度の乾燥なく早期降温が達成できる。もっとも、飯器2内から出る蒸気の取り込みなどによる送風空気の湿度管理のもとでは、連続送風による早期降温がご飯の過度の乾燥を招かずに達成できる。
【0023】
以上のような電気炊飯方法によれば、炊飯や保温が行われる炊飯域3に通気部4を通じ空気20を吹き込んで通気する電気的な通気制御により、炊飯域3が流動環境にある場合は通気勢力による対流、撹乱を伴って特に、非流動環境にある場合は対流、攪拌なしにも、炊飯域3全域で米粒やご飯粒との細部での接触を図っての、直接的で効率がよく均等な熱交換またはおよび湿度の授受にて、その工程に必要な温度またはおよび湿度の環境を加熱のための通電制御に併行して補助的に制御し、通電制御単独の場合以上に炊飯環境を整え、ご飯を美味しく炊飯できる。また、ご飯全体を所定の保温温度まで、よりむらなく、従って部分的な温度差による結露や臭いの発生を防止して、また、より早期に、従ってご飯の劣化や変色なく、降温させて、美味しいご飯の状態で通常保温に移行させられる。このように通気が冷却を意図している場合、送風は外気を吸引して用いるのが好適となる。しかし、これに限られることはない。
【0024】
また、保温工程では、所定温度での通常保温に移行して後、間欠的に飯器2の炊飯域3への通気を行うようにする。これにより、所定温度で保温中のご飯粒間に時間経過に伴い滞留しやすい臭気を、蓋6の蒸気通路5を通じ外部に放出することができる。従って保温中のご飯粒間に保温臭が篭ることが無く保温臭がしなくなる。
【0025】
上記のような方法を達成するのに図1に示す例、図3に示す例、図5に示す例の通気電気炊飯器100、200、300は、共通して、飯器2と、この飯器2を収容し、収容した飯器2を、蒸気を外部に放出する蒸気通路5を有して施蓋する蓋6を装備した器体1と、器体1に収容した飯器2を加熱する加熱手段7と、飯器2に設けた通気部4を通じ炊飯や保温が行われる炊飯域3に空気を吹き込み通気する送風手段9と、加熱手段7を通電制御して炊飯と炊飯後のご飯の保温とを行うのに併せ、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、送風手段9を駆動して通気部4を通じ、炊飯域3に空気20を吹き込み通気させる通気制御を図りながら遂行する図8に示す制御手段11と、を備えたものとしている。
【0026】
ここで、通気部4は、通気のみが可能なことを意味し、通水は阻止するものである。これには、半透膜(semipermeable memberane)といわれる多孔質膜を適用できるし、飯器2に直接孔あけ加工して形成した通気孔でもよい。いずれもそれらの孔径の選択によって空気は通すが水は通さないものとすることができる。図1の例、図5の例の電気炊飯器100、300は多孔質膜12を採用している。0.1μm〜10μmの微細孔が1cm当たり数億個あり、通水を阻止し、通気のみが図れる選択透過性を持っている。このような多孔質膜は四ふっ化エチレン製のものが提供されている。このものは、その材質上、耐熱性、食品衛生に問題は無い。図3に示す例の電気炊飯器200は孔加工による通気孔13を採用している。通気孔13は100μm以下の孔径であれば表面張力で水は通らないとされている。従って、通気孔13は100μmの孔径に孔加工する。通気部4に特別な部材や部品、組み立て構造が不要になる。しかし、生産性の上からは孔径×10程度の肉厚制限にするのが好適との示唆を受けている。万一板厚限界を超える場合、孔加工域の厚みを部分的に薄くしたり、水に面する側のボトム径のみを所定径に規正して対応するようにもできる。
【0027】
なお、多孔質膜12や通気孔13を設ける通気部4は、飯器2内の炊飯や保温が行われる炊飯域3に臨んで、従って、少なくとも最小水位以下の部分、一例として図示しているように底部に設けるが、多孔質膜12は特に洗浄などの際に外力を受けて損傷しやすい。そこで、これを採用する図1や図5の通気電気炊飯器100、300では、保護ケース14に収容して装着してある。詳細は図2に示すように、飯器2の取付け孔15にシール部材16を介しフランジ部17a部で圧着するように内面側から無理嵌めして取り付け、またねじ合わせて固定し、上端フランジ面に多孔質膜12を貼着した通気通路基部17と、この通気通路の基部17のフランジ部17a外周、またはこの外周の周壁に、自身の周壁をねじ合わせて着脱できるように装着して多孔質膜12の貼着域をまわりから覆うキャップ18とで構成し、通気部4への吹き込み空気20は、キャップ18の周壁に形成した横向きの連通孔18aから飯器2の炊飯域3内に向け通気され、水や水内の米粒との衝突やご飯粒との衝突によって拡散しながら炊飯域を通過されるようにしている。このような通気部4は図示例の金属製とした飯器2に限らず、土鍋で代表される非金属製の飯器2にも同様に適用できる。
【0028】
これに対し、通気部4に通気孔13を採用する図3に示す通気電気炊飯器200は、金属製の飯器2の底部に、図4に詳細を示すように、その軸線まわりに同心な2つの環状線10a、10b上に、通気孔13が適当なピッチで並ぶように配設してある。これによって、通気部4から吹き込まれる空気20は、通気孔13を通じて飯器2の炊飯域3内に直接通気され、水や水内の米粒との衝突やご飯粒との衝突によって拡散しながら炊飯域を通過されるようにしている。
【0029】
通気部4への空気の吹き込みは、器体1内において送風手段9としての送風ファン21からダクト22を通じ行うようにしている。このために、ダクト22は、器体1の内装ケース23内に臨んで飯器2の通気部4に対向し、この対向端に、器体1に飯器2が収容されたときその通気部4の外まわりに圧接して双方間をシールするシール部材24が設けられ、双方間で空気漏れが生じないようにしている。シール部材24は弾性体で例えばシリコンゴムであり、通気部4と飯器2および内装ケース23の底部中央位置で対向し合い、飯器2が収容される都度、その自重で通気部4がシール部材24に圧着するようにしている。従って、シール忘れや、飯器2、内装ケース23の寸法精度、組み立て精度などが影響して、シール不良が生じる心配はない。なお、実際には、シール部材24は、内装ケース23の底部の取付け孔25に上方から弾性的に装着し、ダクト22の対向端をシール部材24に下方から嵌め合わせて接続している。これによって、シール部材24はダクト22の内装ケース23に対する貫通部のシールをも兼ねている。
【0030】
ところで、図1の例、図3の例、図5の例の通気電気炊飯器100、200、300は、いずれも金属製の飯器2を採用していることから、加熱手段7は、内装ケース23を透磁率の高い樹脂製としておき、その底部外まわりに配置した中央側、外周側のワークコイル31、32からの交番磁界によって発熱させて炊飯や保温のための加熱を行う電磁誘導による加熱方式を採用している。しかし、これに限られることは無くヒータで加熱することもできる。図示例では胴部ヒータ71、蓋ヒータ72を併用している。また、非金属製の飯器2であれば、その外面または内面、場合によっては内部に埋め込んだ発熱体を電磁誘導で発熱させて炊飯や保温を行っても良い。また、既に知られるように、電磁誘導による加熱とヒータによる加熱とを併用して炊飯や保温を行うこともできる。いずれにしても、制御手段11により加熱手段7を通電制御するのに併せ、送風手段9を動作制御して上記各場合の電気炊飯を実行することになる。
【0031】
さらに、蓋6は、器体1の後部に開閉できるようにヒンジ連結された外蓋41と、この外蓋41の内側で飯器2の口部を閉じる内蓋42とを備え、中空の外蓋41内に内蓋42の蒸気孔を通じて流出してくる蒸気を、それに随伴するおねばの分離部5aを通じ外部に逃がす既述の蒸気通路5を形成している。また、図示しないが外蓋41の自由端には閉じ状態で器体1の前部と係合してロックするロック機構がロック解除操作機構と共に設けられ、閉じ不足や不用意な開きによって炊飯や保温に支障を来たさないようにしている。
【0032】
炊飯および保温のための炊飯制御は、図1、図3、図5に示す温度センサ34が検出する飯器2の底部まわりの温度を基に行われ、炊飯モード、調理モードによって異なりはあるが、一般炊飯につき述べると、図7に示すように初期温度から米粒への吸水に適当な温度、例えば40℃まで昇温させてこれを所定時間維持する吸水工程、これに続き100℃を維持して炊き上げを行うまでの昇温期間を利用し、その間の昇温特性、つまり単位時間当たりの昇温率ないしは上昇温度幅から炊飯の量を合数などとして判定する合数判定工程、100℃に達してからの判定した合数に見合った時間分の温度維持の後、130℃程度までに昇温させて水分を飛ばすまでご飯の炊き上げを行う炊き上げ工程、続いて100℃までの降温を図って後それを所定時間維持して炊き上がったご飯を蒸らす蒸らし工程にて炊飯の全工程を完了し、以後、72℃など所定の保温温度への降温を図った後に通常保温に移行する保温工程を行う。同時に図1に電磁誘導加熱を制御する制御手段11は、特に、中央側、周辺側ワークコイル31、32を駆動制御するIGBTや電源電圧整流用のダイオードブリッジを含む平滑回路などの発熱性部品を備えた制御回路基板を含み、これを冷却する送風ファン35が必須となっている。そして、従来、既述したように、この送風ファン35を共用して保温工程にて炊飯後のご飯を、所定の保温温度まで、破線で示す自然降温の場合に比し、実線で示すように早期に低下させる間接冷却を図ることが行われている。
【0033】
しかし、本実施の形態では、飯器2の炊飯域3への通気を図ることから、この通気を保温工程はもとより、吸水工程にても行い、また、炊飯後の保温工程を含む全炊飯工程で実行し、通気機能を有利に働かせるといったことから、その通気目的に応じた通気量、通気速度、場合によっては通気空気の温度や湿度の調整が必要なことから、図1の例で代表して示したように、送風ファン35とは独立した送風手段9を採用し、制御手段11によって、その時々で必要とする温度調節手段や湿度調節手段と共に独立に制御するのが好適となる。
【0034】
このような制御のために、制御手段11は図8に示すように、入力側に温度センサ34が接続され、出力側に制御負荷としてのワークコイルドライバ44、45、送風ファン21、35の各モータドライバ46、47が接続され、入出力部に操作パネル43が接続される。
【0035】
因みに、本発明者が行った図7に示す炊飯工程での吸水工程にて、通気を行った場合と、通気を行わない場合との、炊飯域3の上段、中段、下段で生じる温度差につき比較実験した結果を示すと下記表1の通りである。
【0036】
【表1】

【0037】
表1から、「孔あきナベ」での通気を行うエア吹き込み有りでは、温度むらの平均は3.2℃であるのに対し、「孔なし(量産ナベ)」での通気を行わないエア吹き込み無しでは、温度むらの平均は6.8℃である。従って、本実施の形態によれば、通気を行わない場合よりも温度差が半減しており、通気勢力による対流、攪拌の効果が現れているといえる。
【0038】
図1に示す例について詳述すると、通気部4を飯器2の底部中央に設けて、炊飯域3への通気に偏りが生じないようにしている関係から、温度センサ34は飯器2の底部の周辺に当接して、飯器2の温度、炊飯温度を検出するようにしている。特に、中央側のワークコイル31と周辺側のワークコイル32との間のスペースを通って温度センサ34が飯器2の底部周辺部に当接するようにしている。これにより、器体1内でデッドスペースとなっているのを有効利用できるし、センサケースを大きなものにできる利点もある。ここで、飯器2の底部の温度センサ34が当接する下面位置を上向きに窪んだ環状の凹部52として、温度センサ34の天面中央の温度検出位置が確実に接触できるようにしてあり、凸な上面は局部加熱面の増大となって加熱特性が高く局部的な上昇流を作ることで、炊飯域3での実線矢印で示すような対流を強められる。これによって、加熱による対流の弱い吸水工程での水および米の対流、攪拌作用を高めて均一な昇温、吸水温度維持ができ、吸水効率が向上する。これに、合数判定での100℃に向けた昇温段階で活発化していく加熱による対流と、これを維持するがまだ水がある炊き上げ工程初期での加熱によりさらに活発化する対流とが、通気20の炊飯温度への加熱を受けることによる米粒細部への熱伝達を伴い、加わるので、その間の加熱むらも回避し、ご飯をむら無く美味しく炊き上げられる。通気空気20による熱伝達が不足するような場合は、ダクト22の途中にヒータを設けるなどして加熱して温度補償することもできる。さらに、蒸らし工程では、なお残る余剰水分を飛ばしながらご飯をふっくらと仕上るが、ここでも、適度な通気量、通気速度、通気温度での、通気を図って余剰水分の発散とご飯の細部へのまわりをよくして蒸らし効果を高め、必要時間を短縮することができる。このようにすると、最後に保温工程においても通気を行うので、炊飯の保温を含む全工程で通気を行うことになり、気体である蒸気が万一にも、通気部4を通じダクト22の側に逆流するようなことを防止できるし、炊飯域3側から生じるかもしれない詰まりも防止することができる。
【0039】
保温工程において飯器2内の蒸気を湿度補償や温度補償に用いるには、飯器2の炊飯域3よりも上にダクト22からの分岐吸引ダクトを通気部4に倣った通気部を介し接続して適宜開閉できるようにし、分岐吸引ダクトを必要に応じて開いて蒸気がダクト22に吸引され通気空気20に加わるようにできる。もっとも、これに限られることはなく別の機構を採用することもできる。
【0040】
なお、図1の例では温度センサ34は、飯器2との接触位置から下方に向かって外側に傾斜する姿勢で飯器2との凹部52での好適な接触状態が得られるように設けてある。しかし、図5に示す通気電気炊飯器300のように、凹部52の形状を変更して垂直配
位置した温度センサ34天面の温度検出位置が確実に接触できるようにすることができる。これにより、温度センサ34の取付け部55の成形金型が割り方向のみで対応可能になり、コストダウンが図れる。他の構成は、構造は図1に示す通気電気炊飯器100と変わるところは無い。
【0041】
図3に示す通気電気炊飯器200は、通気部4以外は、図1に示す通気電気炊飯器100と変わることろはない。
【0042】
図6に示す通気電気炊飯器400は、通気部4に、通気の開始によって開かれ、通気の停止によって閉じられる弁機能を有したものとしている。これによって、蒸気が多発する炊き上げ工程などで通気部4を通じ万一にも蒸気が漏れ出るのを防止できる。具体的には、シール部材24の内側で飯器2の通気部4をばね61の付勢によって下方から閉じる常閉の弁体62を設け、この弁体62に連結した図示しないソレノイドを制御手段11による通電制御し、送風手段9を働かせて炊飯域3への通気を実行するときだけ、ソレノイドを働かせて弁体62をばね61に抗して開き、送風手段9からの空気のダクト22への吹き込みによって通気ができるようにしている。弁体62はダクト22の通気部4との対向端部内に内蔵してばね61を働かせてあり、対抗端部を器体1の内装ケース23の底部に取付けた中継通気ガイド63を介しシール部材24に連通するようにしている。
【符号の説明】
【0043】
1 器体
2 飯器
3 炊飯域
4 通気部
5 蒸気通路
6 蓋
7 加熱手段
9 送風手段
11 制御手段
12 多孔質膜
13 通気孔
22 ダクト
24 シール部材
34 温度センサ
62 弁
100、200、300、400 通気電気炊飯器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、
通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、飯器内の炊飯や保温が行われる炊飯域に臨ませた通気部を通じ、炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行することを特徴とする通気炊飯方法。
【請求項2】
器体に収容した施蓋状態の飯器内で、飯器を加熱する通電制御と、発生する蒸気の外部放出と、を伴い、炊飯し、炊飯後のご飯を保温する炊飯方法において、
通電制御の初期工程から保温の最終工程までの、低温域での吸水工程、炊飯後のご飯を保温する保温工程の少なくとも1つの工程を、飯器の炊飯や保温が行われる炊飯域に臨ませた通気部を通じ、炊飯域に空気を吹き込んで通気する電気的な通気制御を図りながら遂行することを特徴とする通気炊飯方法。
【請求項3】
保温工程では、所定温度での通常保温に移行して後、間欠的に飯器の炊飯域への通気を行う請求項1、2のいずれか1項に記載の通気炊飯方法。
【請求項4】
飯器と、この飯器を収容し、収容した飯器を、蒸気を外部に放出する蒸気通路を有して施蓋する蓋を装備した器体と、器体に収容した飯器を加熱する加熱手段と、飯器に設けた通気部を通じ炊飯や保温が行われる炊飯域に空気を吹き込み通気する送風手段と、加熱手段を通電制御して炊飯と炊飯後のご飯の保温とを行うのに併せ、通電制御の初期工程から保温の最終工程までの少なくとも1つの工程を、送風手段を駆動して送風口を通じ、炊飯域に空気を適宜吹き込み通気させる通気制御を図りながら遂行する制御手段と、を備えたことを特徴とする通気電気炊飯器。
【請求項5】
通気部は、通気の開始によって開かれ、通気の停止によって閉じられる弁機能を有した請求項4に記載の通気電気炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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