説明

速硬性油取り込みエポキシ系構造用接着剤

二液型接着剤組成物が記載される。二液型接着剤組成物は、第1部及び第2部を有し、前記組成物は、第1部に少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂と、第2部に少なくとも1種のアミン硬化剤と、第1部及び/又は第2部の少なくとも一方に少なくとも1種のエステルと、を含む。前記エステルは、一般式:
−CO−OR(式中、Rは、(i)少なくとも1つのエポキシ基、又は(ii)少なくとも1つのアクリル基、のうちの少なくとも1つを含む有機部分であり、Rは、分岐アルキル基である)に相当する。構造用接着剤は、清浄な表面を有する被着材間に、並びに油、加工助剤及び潤滑剤等の炭化水素含有物質で汚染された表面を有する被着材間に、接着接合を形成するために使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二液型エポキシ系接着剤に関する。本開示はまた、二液型エポキシ系接着剤を作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造用接着剤は、典型的には、スクリュー、ボルト、くぎ、止め金、鋲、及び金属融合加工(例えば、溶接、ろう付け、及びはんだ付け)等の従来の接合技術に置き換わる又は補完するために用いることができる、熱硬化性樹脂組成物である。構造用接着剤は、汎用工業用途、並びに自動車及び航空宇宙産業における高性能用途を含む種々の用途に用いられる。構造用接着剤として好適であるためには、接着剤は、高い機械的強度、高い耐衝撃性、及び/又は機械的締結により得られる強度に匹敵する結合強度を示さなければならない。
【0003】
被着材の表面(典型的には、金属表面、セラミック表面、合金表面、ガラス表面等、特に自動車部品及び飛行機の構成品)は、未処理のまま残された場合、接着剤/被着材界面で不所望の結合破壊を導き得る炭化水素含有物質で汚染されていることが多い。汚染物質は、圧延油(mill oil)及び防食油、潤滑油又はグリース、指紋、並びに製造過程及び倉庫で見られる他のほこり及び汚れを含み得る。
【0004】
被着材の表面から炭化水素含有物質を除去することは困難であり得る。乾拭き、及び/又は加圧空気の使用等の機械的処理は、炭化水素含有物質の薄層を表面上に残す傾向がある。液体洗浄組成物は、有効であり得るが、洗浄液を回収及び再利用するか、又は廃棄しなくてはならないため、処理の観点から、あまり望ましくない場合がある。加えて、洗浄工程の後に、通常は乾燥時間が必要とされる。したがって、清浄な表面に加えて、炭化水素含有物質で汚染されている表面上でも強力な接着結合を形成する構造用接着剤が、業界では必要とされている。
【0005】
エポキシ接着剤は、金属表面に強力に接着することが知られているため構造用接着剤として使用される。典型的には、これら接着剤は、接合された基材が速やかに熱に曝露される(熱硬化)状況で使用されるとき、適切な接着をもたらす。しかし、場合によっては、接合された基材は、高温で硬化される前にある期間室温で放置される。かかる状況の1つは、自動車組立工場に存在する。金属の自動車パネルを結合させるために用いられる接着剤は、所定の位置にパネルを保持するために、幾つかの場所で誘導加熱により局部硬化されるが、接着剤の大部分は、自動車が塗装され、塗料焼き付けサイクルを通過して、塗料及び接着剤が硬化されるまで、室温で未硬化のまま放置される。自動車は、自動車が塗料焼き付けサイクルを通過するときによって、数分から数日のいずれかの期間室温で放置される場合がある。これらの状況では、接着剤は、一般的に、要望通りに高い剪断強度を生成しない、又は要望通りに速く剪断強度を生成しない。更に、これらの状況における破壊モードは、接着剤が基材の1つからきれいに剥がれる接着破壊であることが多く、これは、接着力が乏しいことを示す。一般的に、構造用接着剤は、接着剤が分裂し、接着剤の一部が結合した表面のそれぞれに接着したまま残る、凝集モードで破壊されることが望ましい。凝集破壊される結合は、「ロバスト」であると言われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、油の付着した金属表面を湿潤させて、清浄な表面だけでなく、汚染されている表面、特に油又はグリースの付着した表面上でもロバストな構造結合を形成することができる接着性エポキシ組成物を見出すことが望まれている。望ましくは、接着剤は、室温で硬化する際、強力な接着結合(重なり剪断(over lap shear)により測定したとき)を速やかに形成する。好ましくは、接着剤組成物は、凝集破壊モードを示す。好ましくは、接着剤は、硬化が完了した後、構造結合、即ち、機械的締結に匹敵する強度の基材間の結合を形成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下では、第1部と第2部とを有する二液型接着剤組成物であって、
第1部に少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂と、
第2部に少なくとも1種のアミン硬化剤と、
第1部及び/又は第2部の少なくとも一方に少なくとも1種のエステルと、を含み、エステルが一般式:
−CO−OR
(式中、
は、
(i)少なくとも1つのエポキシ基、又は
(ii)少なくとも1つのアクリル基、のうちの少なくとも1つを含む有機部分であり、
は、分岐アルキル基である)に相当するエステルを含む組成物が提供される。
【0008】
別の態様では、上記硬化性組成物の一部を組み合わせ、硬化させることにより得ることができる硬化した組成物が提供される。
【0009】
更なる態様では、上記二液型接着剤組成物を表面に塗布する工程と、前記二液型接着剤組成物を硬化させて複合物品を形成する工程と、を含む、複合物品を作製する方法が提供される。
【0010】
更に別の態様では、金属表面上のエポキシ接着剤組成物の結合強度を高めるための、上記式のエステルの使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示のいずれかの実施形態が詳細に説明される前に、本開示は、以下の記述で説明される構成の詳細及び構成要素の配置の適用に限定されないことが理解されるべきである。本開示は、他の実施形態が可能であり、且つ様々な方法で実践又は実行することができる。又、本明細書で使用される専門語及び専門用語は、説明目的のためであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解されるべきである。「から成る」の使用とは対照的に、本明細書で使用される「含める」、「含有する」、「含む」、又は「有する」は、その後に記載されるもの、その同等物、並びに追加物を包含することを意味する。「1つの(a又はan)」の使用は、「1以上の」を包含することを意味する。本明細書に引用される任意の数値範囲には、低位の値から高位の値までの全ての値を含む。例えば、濃度範囲が1%〜50%であると記載される場合、これは2%〜40%、10%〜30%、又は1.5%〜3.9%などの値が明確に列挙されることを意図する。これらは何が具体的に意図されているのかの例に過ぎず、列挙された最も低位の値と最も高位の値との間、並びに最も低位の値及び最も高位の値を含む、数値の全ての可能性のある組み合わせが、本明細書において明確に記載されていると考慮される。
【0012】
本開示は、清浄な基材に加えて、炭化水素含有物質で汚染されている基材にも塗布できる二液型エポキシ系構造用接着剤に関する。二液型エポキシ系構造用接着剤は、少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂と、少なくとも1種のアミン硬化剤と、末端エポキシ官能基又はアクリル酸官能基を有する少なくとも1種の低分子量エステル化合物とを含む。低分子量エステルをエポキシ接着剤に添加すると、汚染されている基材上で熱硬化した後(硬化完了後)T字剥離試験により測定したとき、より強い又は同程度の結合強度を得ることができるだけでなく、室温で硬化させた後重なり剪断試験により測定したとき、結合強度の上昇を加速させることもできることが見出されている。化合物の最適な比は、組成物の所望の最終性質に適合させることができ、またルーチンな最適化実験を通じて特定することができる。
【0013】
レオロジー及び/又は機械的特性を適合させるために、接着剤は、更に他の成分を含有し得る。更なるエポキシ樹脂及び/又は強化剤を、例えば、硬化した接着剤の耐衝撃性、結合強度、及び/又は強靱性を高めるために添加し得る。反応性液体改質剤を添加して、エポキシ樹脂組成物に可撓性を付与し得る、及び/又は強化剤の作用を高め得る。充填剤(具体的には、無機鉱物繊維、有機繊維、並びに/又は非球面及び/若しくは血小板状構造を有する繊維)を添加して、レオロジー特性を適合させ得る、接着を促進し得る、防食性を改善し得る、レオロジーを制御し得る、及び/又は硬化中の収縮を低減し得る。反応性希釈剤を添加して、組成物の流動特性を制御し得る。界面活性剤を添加して、基材上における油置換を補助し得る。二次硬化剤及び/又は触媒を添加して、組成物の硬化を更に増加させ得る。
【0014】
本明細書に提供される構造用接着剤を使用して、部品の結合における、溶接又は機械的締結具などの従来の接合手段を置き換え得る又は補完し得る。
【0015】
芳香族エポキシ樹脂
本明細書に記載される接着剤組成物は、少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂を含有する。本明細書に記載される芳香族エポキシ樹脂とは、骨格鎖又は側鎖(存在する場合)に、少なくとも1つの芳香族単位を含むエポキシ樹脂である。典型的には、芳香族エポキシ樹脂は、好ましくは樹脂の骨格鎖又は側鎖(存在する場合)の末端位置に、例えばグリシジルエーテル等の、少なくとも1つの芳香族エポキシドを含む。使用され得る芳香族エポキシ樹脂としては、例えば、フェノール又は(フェノール及びホルムアルデヒド)とエピクロヒドリンとの反応生成物、過酸エポキシ、グリシジルエステル、グリシジルエーテル、エピクロロヒドリンとアミノフェノールとの反応生成物、エピクロロヒドリンとグリオキサールテトラフェノールとの反応生成物等が挙げられる。上述のフェノールとしては、多核フェノール(即ち、少なくとも2つのフェノール官能基を有する化合物)が挙げられる。多核フェノールの典型例は、ビスフェノールである。
【0016】
好適な飽和エポキシ樹脂としては、芳香族グリシジルエーテル(例えば、二価フェノール(即ち、例えばヒドロキシル基等の反応性プロトンを有する別の官能基を有するフェノール)と過剰のエピクロロヒドリンを反応させることにより調製され得るもの)が挙げられる。有用な二価フェノールの例としては、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、及びp,p’−ジヒドロキシジベンジル、p,p’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシフェニルスルホン、p,p’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ジヒドロキシ−1,1−ジナフチルメタンを包含する多核フェノール、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピレンフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトリルエタン、ジヒドロキシジフェニルトリルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’異性体が挙げられる。
【0017】
好適な市販の芳香族エポキシドとしては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Hexion Specialty Chemicals Inc.,Houston,TX,USAから商品名「EPON 828」、「EPON 872」、「EPON 1001」、「EPON 1310」、及び「EPONEX 1510」として入手可能)、「DER−331」、「DER−332」、及び「DER−334」(Midland,MI,USAのDow Chemical Co.から入手可能);ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、DIC株式会社;日本、東京から商品名「EPICLON 830」として入手可能)が挙げられる。ビスフェノールに基づく他のエポキシ樹脂は、例えば、商品名「D.E.N.」(Dow Chemical Company,Midland,Michigan,USA)、「EPALLOY」、(CVC Thermoset Specialities,Moorestown,NJ,USA)及び「EPILOX」(Leuna Harze GmbH,Leuna,Germany)として市販されている。
【0018】
芳香族エポキシ樹脂の骨格鎖は、置換基を含み得る。置換基は、オキシラン環に対して反応性である、求核基又は求電子基(活性水素原子など)を有さない任意の基であり得る。例示的な置換基としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、アミド基、ニトリル基、及びリン酸基が挙げられる。
【0019】
飽和エポキシ樹脂の(重量平均)分子量は、モノマー又はオリゴマー樹脂の約100g/モルから、ポリマー樹脂の50,000g/モル以上の範囲であり得る。好適なエポキシ樹脂は、典型的には、室温(即ち、25℃)で液体である。しかし、可溶性固体エポキシ樹脂を用いてもよい。
【0020】
不飽和エポキシ樹脂
本明細書で提供される組成物は、1種以上の不飽和エポキシ樹脂を更に含有し得る。不飽和エポキシ樹脂は、例えば末端不飽和基が挙げられるが、これらに限定されない、1分子当たり1つ又は複数のエポキシ官能基と、1つ又は複数のエチレン性不飽和基とを含有し得る。エチレン性不飽和基は、例えば、アクリル酸又はその誘導体等の、重合性カルボン酸又はその誘導体から誘導され得る。好ましくは、不飽和硬化性エポキシ樹脂は、硬化性エポキシアクリレート又はポリアクリレートである。本明細書で使用するとき、用語「不飽和エポキシ樹脂」とは、脂肪族炭素−炭素二重結合(エチレン型の不飽和)を指し、芳香族炭素−炭素二重結合を指すものではない。
【0021】
不飽和エポキシ樹脂の好適なエポキシ基は、一般式(I)に示すようなグリシジルオキシ基を含む任意のオキシラン保有部分であり得る。式(I)は、典型的なグリシジルエーテル型の不飽和エポキシ樹脂を表し、式中、Rは、1つ以上の硬化性エチレン性不飽和部分を含む樹脂の骨格鎖を表し、nは1超の整数を表す。
【化1】

【0022】
好適な樹脂は、芳香族又は脂肪族、環状又は非環式、一官能性又は多官能性であってよい。樹脂の主鎖は、任意の種類であってよく、その置換基は、エポキシ基と反応する求核基又は求電子基(活性水素原子など)を有さない任意の基であってよい。例示的な置換基としては、ハロゲン、エステル基、エーテル、スルホネート基、シロキサン基、ニトロ基、アミド基、ニトリル基、及びリン酸基が挙げられる。
【0023】
かかる樹脂は、室温で液体であってよい。しかし、可溶性固体エポキシ樹脂を用いてもよい。エポキシ樹脂は、4000〜7000、又は約5,000〜約6,000mmol/kg(ASTM D1652)、又は約5,600〜約5,800mmol/kgのエポキシ基含量を有してよい。好適な樹脂は、25℃で、約500〜約3,000、又は約800〜約1,200mPa.s(ASTM D445)の粘度を有してよい。
【0024】
硬化性不飽和エポキシ樹脂は、既知であり、例えば、Rothらの米国特許第6,747,101号及び本明細書に引用される参照文献に開示されている方法により調製することができる。硬化性不飽和エポキシ樹脂はまた、例えば、Hexion Speciality Chemicals Inc,Houston,TX,USAから商品名「EPON EPOXY POLYACRYLATES」として市販されている。
【0025】
不飽和エポキシ樹脂は、芳香族樹脂とは異なる樹脂であってもよく、又は芳香族樹脂の一部であってもよい。前者の場合、組成物は、少なくとも2種の異なるエポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂、及び不飽和エポキシ樹脂を含む。後者の場合、組成物は、上記のような不飽和基も含む芳香族樹脂を含む。好ましくは、組成物は、芳香族エポキシ樹脂である第1のエポキシ樹脂と、不飽和エポキシ樹脂である第2のエポキシ樹脂とを含む。
【0026】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される接着剤組成物は、約20重量%〜約90重量%のエポキシ樹脂を含んでもよい。他の実施形態では、構造用接着剤は、約40重量%〜約70重量%のエポキシ樹脂を含んでもよい。更に他の実施形態では、接着剤は、約50重量%〜約70重量%のエポキシ樹脂を含んでもよい。重量%は、二液型構造用接着剤の総重量(即ち、二液型接着剤の場合、1部と2部との合計重量)に基づく。
【0027】
硬化剤
本明細書に提供される接着剤はまた、硬化性エポキシ樹脂を架橋することができる1種以上の硬化剤を含む。典型的には、これらの剤は、一級又は二級アミンである。アミンは、脂肪族、脂環式、芳香族、又は1つ以上のアミノ部分を有する芳香族構造であってもよい。
【0028】
好適なアミン硬化剤としては、一般式(II):
【化2】


(式中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素又は約1〜15個の炭素原子を含む炭化水素であり、前記炭化水素は、ポリエーテルを含み;nの値は、約1〜10の範囲である)を有するアミンが挙げられる。幾つかの実施形態では、硬化剤は、一級アミンである。同じ又は他の実施形態では、Rは、ポリエーテルアルキルである。
【0029】
例示的なアミン硬化剤としては、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ヘキサエチレンヘプタミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタメチレン−ジアミン、4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン、アミノエチルピペラジン等が挙げられる。
【0030】
幾つかの実施形態では、アミン硬化剤は、1つ以上のアミン部分を有するポリエーテルアミンであり、ポリプロピレンオキシド又はポリエチレンオキシドから誘導可能なポリエーテルアミンが挙げられる。市販のポリエーテルアミンとしては、ポリエーテルポリアミン(Huntsman Corporation,The Woodlands,TX,USAから商品名「JEFFAMINE」として入手可能)及び4,7,10−トリオキサトリデカン−1,13−ジアミン(TTD)(BASF,Ludwigshafen,Germanyから入手可能)が挙げられる。
【0031】
幾つかの実施形態では、本明細書で提供される接着剤は、約3重量%〜約30重量%のアミン硬化剤を含んでもよい。他の実施形態では、接着剤は、約5重量%〜約15重量%のアミン硬化剤を含んでもよい。
【0032】
エポキシド部分と一級又は二級アミン水素とのモル比は、ルーチンな実験を通じて、最適性能を得るように調整することができる。本開示の接着剤は、約0.5:1〜約3:1の範囲の、硬化性エポキシ樹脂のエポキシ部分とアミン硬化剤のアミン水素とのモル比を有してもよい。幾つかの実施形態では、モル比は約2:1である。他の実施形態では、モル比は約1:1である。
【0033】
二次硬化剤
幾つかの実施形態では、本開示の接着剤は、所望により二次硬化剤を含んでもよい。本開示にかかる二次硬化剤としては、イミダゾール、イミダゾール塩、イミダゾリン、又は式(III):
【化3】


(式中、
は、H又はアルキル(例えば、メチル又はエチル)であり、
はCHNRであり;
10及びR11は、互いに独立して、存在しても又は存在しなくてもよく、存在する場合は、R10及びR11は、CHNR1213であり、
12及びR13は、互いに独立して、アルキル(例えば、CH又はCHCH)である)の構造を有するものを含む芳香族三級アミンが挙げられる。
【0034】
例示的な二次硬化剤は、トリス−2,4,6−(ジメチルアミノメチル)フェノール(Air Products Chemicals(Europe B.V)から、商品名「ANCAMINE K54」として入手可能)の構造を有するものを含む芳香族三級アミンが挙げられる。
【0035】
低分子量エステル
本明細書で提供される接着剤組成物は、1種以上の低分子量エステルを更に含む。かかるエステルは、接着剤組成物と、炭化水素含有物質で汚染されている被着材表面との間の接着を促進することが判明されている。用語「炭化水素含有物質」とは、被着材の加工、取扱、及び保管に起因し得る種々の表面汚染物質を指す。炭化水素含有物質の例としては、鉱物油、脂肪、乾燥した潤滑油、深絞り油、防食剤、平滑剤、及びワックスが挙げられる。しかし、表面は、炭化水素含有物質に加えて、他の汚染物質を含む場合もある。熱硬化工程の必要なしに、低分子量エステルを含む接着剤を用いて、十分な結合強度を得ることができる。
【0036】
本開示の低分子量エステルは、一般に液体化合物である。それらは、一般式(IV):
−CO−OR
(式中、
は、(i)少なくとも1つのエポキシ基、又は(ii)少なくとも1つのアクリル基、のうちの少なくとも1つを含む有機部分であり、
は、分岐アルキル基である)に相当する。
【0037】
は、脂肪族又は芳香族であり得、好ましくは脂肪族残基である。残基は、少なくとも1つのエポキシ基及び/又は少なくとも1つのアクリル基を有する。エポキシ基としては、エポキシ樹脂について上に記載されたエポキシ基が挙げられる。アクリル基としては、アクリル酸及びその誘導体、特にメタクリル酸及びその誘導体が挙げられる。好ましくは、エポキシ又はアクリル基は、末端位置に存在する。アルキル残基は、置換されなくてもよく、又は例えばアルキル、アルコキシ、又はヒドロキシルアルキル残基により置換されてもよい。Rは、好ましくは20個未満、より好ましくは10個未満の炭素原子を含む。
【0038】
は、分岐アルキル残基であり、好ましくは一般式(V):
−(CH−C(Ri)(Rii)(Riii)
(式中、
Riは、H又は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖、環状、若しくは分岐アルキル残基を表し、好ましくは、メチル、エチル、又はプロピル基であり、より好ましくは、メチル基である;
Riiは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖、環状、若しくは分岐アルキル残基を表し;
Riiiは、1〜12個の炭素原子を有する直鎖、環状、若しくは分岐アルキル残基を表し;
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10、好ましくは、1、2、又は3、より好ましくは1である)の分岐アルキル残基である。
【0039】
好ましくは、Rは、20個未満の炭素原子を含み、より好ましくは、Rは、20個未満の炭素原子を含み、且つ一般式:
−C(Ri)(Rii)(Riii)
(式中、Riは、メチル又はエチルを表す)によるものである。
【0040】
幾つかの実施形態では、Rは、20個未満の炭素原子を含み、より好ましくは、Rは、20個未満の炭素原子を含み、且つ一般式:
−C(Ri)(Rii)(Riii)
(式中、Riは、メチル又はエチルであり、Rは、アクリレート又はエポキシ基保有アルキル残基であって、置換されなくてもよく、例えば、アルキル、アルコキシ、又はヒドロキシルアルキル残基により置換されてもよい)によるものである。Rは、好ましくは20個未満、より好ましくは10個未満の炭素原子を含む。より好ましくは、Rは、エポキシ−又はアクリレートで終端する。
【0041】
低分子量エステルは、例えば、アクリル酸又はそのオリゴマーを含む誘導体と、グリシジルt−アルカノエート又はs−アルカノエートとを反応させることにより得ることができる。したがって、好適な実施形態は、アクリル酸又はメタクリル酸と、グリシジルt−アルカノエート又はs−アルカノエートとの反応生成物を含む。グリシジルt−又はs−アルカノエートは、10〜25個の炭素原子、好ましくは10〜15個の炭素原子を含んでもよい。
【0042】
低分子量エステルはまた、エピクロロヒドリン又はそのオリゴマーを含む誘導体と、三級又は二級カルボン酸とを反応させることにより得てもよい。カルボン酸は、10〜25個の炭素原子、好ましくは10〜15個の炭素原子を含んでもよい。
【0043】
本明細書で提供される接着剤は、約0.001重量%〜約50重量%の低分子量エステルを含んでもよい。他の実施形態では、接着剤は、約0.01重量%〜約25重量%の油置換剤を含んでもよい。更に他の実施形態では、接着剤は、約2重量%〜約10重量%の低分子量エステルを含んでもよい。
【0044】
本明細書で提供される低分子量エステルはまた、例えば、Hexion Speciality Chemicals,B.V.,Hoogvliet,NLから商品名「ACE」及び「CARDURA E10P」として市販されている。
【0045】
「ACE」低分子量エステルは、以下の化学構造:
C=CCOOC(CHOH)CHOOCC(CH)R1415
(式中、R14及びR15は、合計7個の炭素原子を有するアルキル残基である)を有する。CARDURA E10P低分子量エステルは、以下の化学構造:
Ox−CH−O−CO−C(CH)R1617
(式中、Oxは、オキシラン残基(エチレンオキシド)を表し、R16及びR17は、合計7個の炭素原子を有するアルキル残基である)を有する。
【0046】
本明細書で提供される低分子量エステルを用いて、表面、特に液体、固体、若しくは油の付着した炭化水素含有物質で汚染されている、又は保護されている金属表面に対するエポキシ樹脂の接着力を改善することができる。或いは又は更に、本明細書で提供される低分子量エステルは、基材、特に液体、固体、若しくは油の付着した炭化水素含有物質で汚染されている、又は保護されている金属基材上における、例えば重なり剪断により測定することによる結合強度の高まりを増加させるために用いることができる。
【0047】
強化剤
強化剤は、上記エポキシ樹脂以外の、硬化したエポキシ樹脂の強靭性を高めることが可能なポリマーである。強靭性は、硬化した組成物の剥離強度によって測定することができる。典型的な強化剤としては、コア/シェル型ポリマー、ブタジエンニトリルゴム、アクリルポリマー及びアクリルコポリマー等が挙げられる。市販の強化剤(例えば、3M Company,St.Paul,MN,USAから商品名「DYNAMAR POLYETHERDIAMINE HC 1101」として入手可能なものを含む)、及びカルボキシル終端ブタジエンアクリロニトリル(例えば、Emerald Chemical,Alfred,ME,USAから入手可能)。
【0048】
幾つかの実施形態では、本開示の接着剤は、約5重量%〜約55重量%の強化剤を含んでもよい。他の実施形態では、接着剤は、約5重量%〜約30重量%の強化剤を含んでもよい。更に他の実施形態では、接着剤は、約5重量%〜約15重量%の強化剤を含んでもよい。
【0049】
好適な強化剤としては、コア/シェル型ポリマーが挙げられる。コア/シェル型ポリマーは、コア/シェル構造を有するポリマーを意味する。コア/シェル型ポリマーは、「シェル」を形成するポリマーがグラフト化されたポリマー(「コア」)を提供することにより調製される。
【0050】
コアポリマーは、0℃よりも低いガラス転移温度を有してもよい。典型的には、コアは、ブタジエンポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、アクリレートポリマー若しくはコポリマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含むか又はそれらから成る。ポリマー又はコポリマーは、架橋されていても、架橋されていなくてもよい。幾つかの実施形態では、コアポリマーは架橋されている。
【0051】
コア上には、1種類以上のポリマー、即ち「シェル」、がグラフト化されている。典型的には、シェルポリマーは、高いガラス転移温度、即ち26℃を超えるガラス転移温度を有する。ガラス転移温度は、動的機械的熱分析(DMTA)により決定されてもよい。「シェル」ポリマーは、スチレンポリマー若しくはコポリマー、メタクリレートポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルポリマー若しくはコポリマー、又はこれらの組み合わせから成る群から選択されてもよい。このようにして生成された「シェル」は更に、エポキシ基又は酸基によって官能化されてもよい。「シェル」の官能化は、例えば、グリシジルメタクリレート又はアクリル酸との共重合によって実現することもできる。特に、シェルは、アセトアセトキシ部分を含んでよく、その場合、アセトアセトキシ官能化ポリマーの量を減らしてもよく、又はアセトアセトキシ官能化コア/シェル型ポリマーによって完全に置換してもよい。
【0052】
好適なコア/シェル型ポリマーのシェルは、例えば、ポリメチルメタクリレートシェル等のポリアクリレートポリマー又はコポリマーシェルを含んでもよい。ポリメチルメタクリレートシェルなどのポリアクリレートシェルは、架橋されていなくてもよい。
【0053】
好適なコア/シェル型ポリマーのコアは、ブタジエンポリマー若しくはコポリマー、スチレンポリマー若しくはコポリマー、又はブタジエン−スチレンコポリマーを含んでもよい。ブタジエン−スチレンコア等のコアを構成するポリマー又はコポリマーは、架橋されてもよい。
【0054】
幾つかの実施形態では、本開示に係るコア/シェル型ポリマーは、約10nm〜約1,000nmの粒径を有してもよい。他の実施形態では、コア/シェル型ポリマーは、約150nm〜約500nmの粒径を有してもよい。コア/ポリマーの組み合わせ、例えば、二峰性又は多峰性粒径分布を有するコア/シェル型ポリマーの混合物を用いてもよい。
【0055】
好適なコア/シェル型ポリマー及びその調製品は、例えば、Hentonらの米国特許第4,778,851号に記載されている。市販のコア/シェル型ポリマーとしては、例えば、Rohm & Haas Company,Philadelphia,PA,USAから商品名「PARALOID EXL 2600」及び「PARALOID EXL 2691」として入手可能なもの、及びKaneka in Belgiumから商品名「KANE ACE MX120」として入手可能なものを挙げることができる。
【0056】
反応性液体改質剤
反応性液体改質剤を所望により添加して、硬化性エポキシ樹脂に可撓性を付与し、また得られる接着剤における強化剤の効果を高めることができる。
【0057】
本開示の反応性液体改質剤は、少なくとも1つのアセトアセトキシ基を、好ましくは末端位置に含有する、アセトアセトキシ官能化化合物を含んでもよい。このような化合物としては、アルキル、ポリエーテル、ポリオール、ポリエステル、ポリヒドロキシポリエステル、ポリオキシポリオール、及びこれらの組み合わせなどの炭化水素を有するアセトアセトキシ基(1又は複数)が挙げられる。
【0058】
アセトアセトキシ官能化化合物はポリマーであってもよい。幾つかの実施形態では、本開示のアセトアセトキシ官能化化合物は、約100g/mol〜約10,000g/molの分子量を有してもよい。他の実施形態では、アセトアセトキシ官能化化合物は、約200g/mol〜約1,000g/molの分子量を有してもよい。更に他の実施形態では、アセトアセトキシ官能化化合物は、約150g/molから約4,000g/mol未満又は約3,000g/mol未満の分子量を有してもよい。好適な化合物としては、一般式(VI):
【化4】


(式中、
18は、メチル、エチル、プロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチルなどの、C1〜C12直鎖又は分枝鎖又は環状アルキルを表し、
Xは1〜10の整数である)を有するものが挙げられる。幾つかの実施形態では、xは、1〜4の整数である。反応性液体改質剤が、Xの異なる化合物の混合物を含む場合、1残基当たりのアセトアセトキシ基(Res)の平均数は、1〜10の非整数であり得る。例えば、幾つかの実施形態では、1残基当たりのアセトアセトキシ基(Res)の平均数は、約2〜5に及んでもよい。これは、1残基当たりのアセトアセトキシ基(Res)の平均数が約3.5であり、
Yが、O、S又はNHを表す実施形態を含む。幾つかの実施形態では、Yは、Oであり、
「Res」は、ポリヒドロキシアルキル、ポリヒドロキシアリール又はポリヒドロキシアルキルアリール;ポリオキシアルキル、ポリオキシアリール及びポリオキシアルキルアリール;ポリオキシポリヒドロキシアルキル、−アリール、−アルキルアリール;ポリエーテルポリヒドロキシアルキル、−アリール若しくは−アルキルアリール;又はポリエステルポリヒドロキシアルキル、−アリール若しくは−アルキルアリールから成る残基の群から選択される残基を表し、式中、Xが1であるとき、Resは炭素原子を介してYに連結し、Xが1以外であるとき、Resは、Xに相当する数の炭素原子を介して、Yに連結する。幾つかの実施形態では、Resはポリエーテルポリヒドロキシ−アルキル、−アリール若しくは−アルキルアリール残基、又はポリエステルポリヒドロキシ−アルキル、−アリール又は−アルキルアリール残基を表す。
【0059】
前記残基(Res)は、例えば、2〜20個の又は2〜10個の炭素原子を含有してもよい。前記残基はまた、例えば、2〜20個の又は2〜10個の酸素原子を含有してもよい。前記残基は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。
【0060】
ポリエステルポリヒドロキシ残基の例としては、多塩基性カルボン酸又は多塩基性カルボン酸無水物と、化学量論的過剰量の多価アルコールとの縮合反応から得ることができる、又は多塩基酸、一塩基酸及び多価アルコールの混合物からの縮合反応から得ることができるポリエステルポリヒドロキシ残基が挙げられる。多塩基性カルボン酸、一塩基性カルボン酸又は無水物の例には、2〜18個の炭素原子を有するものが挙げられる。幾つかの実施形態では、多塩基性カルボン酸、一塩基性カルボン酸又は無水物は、2〜10個の炭素原子を有する。
【0061】
多塩基性カルボン酸又は多塩基性カルボン酸無水物の例としては、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、マロン酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、アゼライン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロフタル酸(例えば、テトラヒドロ酸又はヘキサデヒドロフタル酸)及び対応する無水物、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0062】
一塩基性カルボン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸など、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0063】
多価アルコールには、2〜18個の炭素原子を有するものが挙げられる。幾つかの実施形態では、多価アルコールには、2〜10個の炭素原子を有するものが挙げられる。多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロールなど、並びにこれらのポリマーが挙げられる。
【0064】
ポリエーテルポリオール残基の例としては、ポリアルキレンオキシドから誘導されるものが挙げられる。典型的には、ポリアルキレンオキシドは、約2〜約8個の炭素原子のアルキレン基を含有する。幾つかの実施形態では、ポリアルキレンオキシドは、約2〜約4個の炭素原子のアルキレン基を含有する。アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。ポリエーテルポリオール残基の例としては、ポリエチレンオキシドポリオール残基、ポリプロピレンオキシドポリオール残基、ポリテトラメチレンオキシドポリオール残基等が挙げられる。
【0065】
アセトアセトキシ官能化オリゴマーは、ポリヒドロキシ化合物と、アルキルアセトアセテート、ジケテン又は例えば、欧州特許第0 847 420 B1号に記載されているその他のアセトアセチル化化合物のアセトアセチル化により調製することができる。
【0066】
その他のポリヒドロキシ化合物は、アクリレート及び/又はメタクリレートと、ヒドロキシル基を含有する1種以上の不飽和モノマーとのコポリマーであってもよい。ポリヒドロキシポリマーの更なる例としては、ブタジエンとアクリロニトリルとのヒドロキシル基で末端処理したコポリマー;ヒドロキシ基で末端処理した有機ポリシロキサン;ポリテトラヒドロフランポリオール;ポリカーボネートポリオール又はカプロラクトン系ポリオールが挙げられる。
【0067】
アセトアセトキシ官能化ポリマーは、例えば、King Industries,Norwalk,CT,USAから商品名「K−FLEX XM−B301」及び「K−FLEX 7301」として市販されている。幾つかの実施形態では、反応性液体改質剤は、トリアセト酢酸官能エステルを含む。
【0068】
本開示の反応性液体改質剤はまた、オキサミドも含んでもよい。好適なオキサミド系改質剤は、オキサミドエステル終端ポリプロピレンオキシドを含んでもよい。
【0069】
本開示の接着剤は、約5重量%〜約15重量%の反応性液体改質剤を含んでもよい。その他の実施形態では、構造用接着剤は、約6重量%〜約12重量%の反応性液体改質剤を含んでもよい。更に他の実施形態では、構造用接着剤は、約6重量%〜約10重量%の反応性液体改質剤を含んでもよい。
【0070】
触媒
幾つかの実施形態では、本開示の構造用接着剤は、1種以上の触媒を含んでもよい。触媒は、典型的には、金属塩である。本組成物で作用し得る好適な触媒としては、アニオンが硝酸、ヨウ化物、チオシアン酸、トリフラート、アルコキシド、過塩素酸、及びスルホン酸から選択されるI族金属(例えば、リチウム)、II族金属(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、又はランタノイド塩(例えば、ランタン)が挙げられる。例示的な金属塩としては、硝酸ランタン、ランタントリフラート、ヨウ化リチウム、硝酸リチウム、硝酸カルシウム、及びこれらに対応する水和物が挙げられる。
【0071】
一般に、触媒量の塩が用いられる。幾つかの実施形態では、構造用接着剤は、約0.05重量%〜3.0重量%の金属塩を含有してもよい。
【0072】
界面活性剤
所望により、界面活性剤を接着剤に添加して、基材上における油置換を補助することもできる。イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及び双極性界面活性剤が挙げられる、接着剤製剤に可溶性である任意の界面活性剤を用いることができる。例示的な界面活性剤としては、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル及びポリエチレンソルビトールが挙げられる。
【0073】
反応性希釈剤
所望により反応性希釈剤を添加して、接着性組成物の流動特性を制御することができる。適切な希釈剤は少なくとも1つの反応性末端部分、好ましくは飽和又は不飽和の環状骨格鎖を有することができる。反応性末端部分にはグリシジルエーテルが挙げられる。好適な希釈剤の例としては、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテルが挙げられる。市販の反応性希釈剤としては、Hexion Specialty Chemical,Houston,TX,USAから商品名「REACTIVE DILUENT 107」として、及びAir Products and Chemical Inc.,Allentown,PAから商品名「EPODIL 757」として入手可能なものが挙げられる。
【0074】
幾つかの実施形態では、構造用接着剤は、約0.001〜25重量%の反応性希釈剤を含有してもよい。
【0075】
充填剤
所望により、充填剤を構造用接着剤に添加して、例えば、接着を促進、防食性を改善、接着剤のレオロジー特性を制御、及び/又は硬化中の収縮を低減することができる。充填剤としては、シリカゲル;Caケイ酸塩;リン酸塩;モリブデン酸塩;ヒュームドシリカ、非晶質シリカ、非晶質ヒュームドシリカ;ベントナイト、有機粘土などの粘土;アルミニウム三水和物;中空ガラス微小球;中空高分子微小球及び炭酸カルシウムを挙げることもできる。市販の充填剤としては、商品名「SHIELDEX AC5」(非晶質シリカ、水酸化カルシウム混合物、W.R.Grace,Columbia,MD,USA製)、「CAB−O−SIL TS 720」(ポリジメチルシロキサンポリマーで処理された疎水性ヒュームドシリカ、Cabot GmbH in Hanau,Germany製)、AEROSIL VP−R−2935(疎水性シリカ、Degussa,Dusseldorf,Germany)、「MICRO−BILLES DE VERRE 180/300」(非晶質シリカ、CVP S.A.,France)、「GLASS BUBBLES K37」(非晶質シリカ、3M Company,St.Paul,MN,USA)、「MINSIL SF 20」(非晶質シリカ、Minco Inc.,Midway,TN,USA製)、及びAPYRAL 24 ES2(エポキシシラン官能化(2重量%)アルミニウム三水和物、Nabaltec GmbH,Schwandorf,Germany製)として入手可能なものが挙げられる。好ましい実施形態では、これら市販の充填剤を組み合わせる。
【0076】
充填剤は、無機鉱物繊維、有機鉱物繊維、並びに非球面及び/又は血小板構造を有する繊維を挙げることができる。
【0077】
無機鉱物繊維は主に岩、粘土、スラグ又はガラスから製造される、繊維状の無機物である。鉱物繊維には、ガラス繊維(グラスウール及びグラスフィラメント)、ミネラルウール(ロックウール及びスラグウール)及び耐火セラミック繊維が挙げられる。特に好適な鉱物繊維は、10μm未満の平均繊維径を有してもよい。幾つかの実施形態では、鉱物繊維は、約37重量%〜約42重量%のSiO2、約18重量%〜約23重量%のAl2O3、約34重量%〜約39重量%のCaO+MgO、0重量%〜約1重量%のFeO、及び約3重量%のK2O+Na2Oを含んでもよい。市販の繊維としては、例えば、Lapinus Fibres BV,Roermond,The Netherlands製の商品名「COATFORCE CF50」及び「COATFORCE CF10」が挙げられる。他の繊維としては、ウォラストナイト(Sigma−Aldrich,Milwaukee,WI,USAから入手可能)が挙げられる。
【0078】
有機繊維としては、EP Minerals,Reno,NV,USAから商品名「SYLOTHIX 52」、「SYLOTHIX 53」、及び「ARBOTHIX PE100」として入手可能なもの等の高密度ポリエチレン繊維を挙げることができる。
【0079】
非球形及び/又は血小板構造を有する充填剤としては、KaMin,LLC,Macon,GA,USAから商品名「HUBER 70C」及び「HUBER 2000C」として入手可能なもの、海泡石、ベントナイト、及び珪藻土を挙げることができる。
【0080】
本開示の構造用接着剤は、約0.001重量%〜約50重量%、又は約2重量%〜約40重量%の充填剤を含んでもよい。これは、構造用接着剤中の充填剤の量が、約2重量%〜約30重量%の充填剤、より具体的には約2重量%〜約10重量%の範囲である実施形態を含む。
【0081】
幾つかの実施形態では、本開示の構造用接着剤は、少なくとも1種の無機鉱物繊維、有機繊維、非球形及び/又は血小板構造を有する充填剤、並びにこれらの組み合わせを含む。他の実施形態では、構造用接着剤は、無機鉱物繊維を含む。更に他の実施形態では、構造用接着剤は、有機繊維を含む。
【0082】
顔料
顔料としては、酸化第二鉄、れんが粉、カーボンブラック、酸化チタン等を含む無機又は有機色素を挙げてもよい。
【0083】
構造用接着剤組成物
本開示の二液型組成物は、1部及びそれとは別個の2部を含む。1部は、硬化性エポキシ樹脂(不飽和、及び存在する場合飽和エポキシ樹脂も)を含み、2部は、アミン硬化剤を含む。1部の硬化性エポキシ樹脂に加えて、2部も硬化性エポキシ樹脂(飽和及び/又は不飽和エポキシ樹脂)を含んでもよい。用いられるとき、反応性液体改質剤は、典型的には、1部に添加される。任意の残りの成分(例えば、強化剤、油置換剤、二次硬化剤、充填剤、反応性希釈剤、金属塩、界面活性剤、顔料等)に関しては、エポキシ反応性基を有する化合物は、好ましくは2部に添加され、アミン反応性基を有する化合物は、好ましくは1部に添加され、エポキシ反応性基又はアミン反応性基のいずれとも反応しない化合物は、1部、2部、又はこれらの組み合わせに添加されてもよい。或いは、1つ以上のこれら成分用の別個の部も想到され得る。
【0084】
幾つかの実施形態では、1部は、硬化性エポキシ樹脂、強化剤、及び油置換剤を含み、2部は、アミン硬化剤及び二次硬化剤を含む。他の実施形態では、充填剤が1部及び/又は2部に添加され、前記充填剤は、少なくとも1種の無機鉱物繊維、有機繊維、非球形及び/又は血小板構造を有する充填剤、並びにこれらの組み合わせを含む。
【0085】
二液型構造用接着剤は、1部と2部とを混合することにより調製される。1部及び2部の量は、構造用接着剤中の所望のエポキシとアミン水素とのモル比に依存する。本開示の構造用接着剤は、約0.5:1〜約3:1の範囲の、硬化性エポキシ樹脂のエポキシ部分と、アミン硬化剤のアミン水素とのモル比を有してもよい。幾つかの実施形態では、モル比は約2:1である。他の実施形態では、モル比は約1:1である。1部及び2部のそれぞれの量は、使用直前に混合されることが好ましい。
【0086】
結合強度
硬化時に、1つ以上の基材上において、二液型エポキシ系接着剤が強力且つロバストな結合を形成することが望ましい。重なり剪断試験で試験した際には高い剪断値で、及びT字剥離試験で試験した際には高いT字剥離値で、結合が凝集的に壊れる場合、結合がロバストであると見なされる。結合は、以下の3つの異なるモードで壊れることがある、(1)凝集破壊モードで、両方の金属表面に接着している接着剤の部分を残して接着剤が割れる、(2)接着破壊モードで、どちらかの金属表面から接着剤が引き離される、又は(3)接着及び凝集破壊の組み合わせ。本開示の接着剤は、重なり剪断試験及び/又はT字剥離試験中に、接着及び凝集破壊の組み合わせを、より好ましくは凝集破壊を呈することがある。かかる接着剤は、清浄な基材又は油の付着した基材に塗布することができる。
【0087】
硬化
本開示の構造用接着剤は、室温で硬化可能及び/又は熱硬化可能である。幾つかの実施形態では、接着剤は、室温で少なくとも3時間硬化させることができる。これは、接着剤が室温で少なくとも24時間硬化される実施形態を含む。これはまた、接着剤が室温で少なくとも72時間硬化される実施形態を含む。
【0088】
他の実施形態では、接着剤は、室温で硬化され、続いて後硬化される。これは、接着剤が室温で約18時間硬化され、続いて約180℃で約30分間後硬化される実施形態を含む。
【0089】
更なる実施形態では、接着剤は、短時間熱硬化した後、所望の凝集強度に達し得る。凝集強度は、組成物を同条件で長期間硬化させたときに更に上昇し得るため、この種の硬化は、本明細書では、部分硬化(例えば、生強度に達するための)と呼ばれる。原理上は、部分硬化は任意の種類の加熱方法によって実施することができる。好ましくは、組成物は、清浄な又は油の付着した鋼基材上におけるT字剥離試験により測定したとき、180℃で30分間硬化させた後、少なくとも90N/25mmの結合強度に達するのに有効な量の上記成分を用いて調製することができる。組成物はまた、室温(25℃)で3時間硬化させた後、重なり剪断試験により測定したとき、少なくとも0.8MPaの結合強度に達するのに有効な量の上記成分を用いて調製することができる。
【0090】
幾つかの実施形態では、誘導硬化(例えば、スポット誘導硬化又はリング誘導硬化)を部分硬化に用いることができる。誘導硬化は、誘導コイル(物質の近くでこれを通して交流が流れる)を配置することによって、導電性材料中に熱を発生させるために電力を使用した非接触式加熱法である。ワークコイル内の交流は、被加工物中に循環電流を発生させる電磁場を確立する。被加工物中のこの循環電流は、材料の固有抵抗に逆らって流れ、熱を発生する。誘導硬化装置は、例えば、IFF−GmbH,Ismaning,Germany製のEWSが市販品として入手可能である。
【0091】
更なる実施形態では、本開示の接着剤は、誘導硬化させ、続いて室温硬化、及び後硬化させることができる。
【0092】
接着剤組成物の使用
接着剤組成物を、接合させる2つの部品の間に塗布することによって、及び接合継手を形成するために接着剤を硬化させることによって、本発明の接着剤組成物を使用して、溶接又は機械的締結具を補完又は完全に排除することもできる。その上に本開示の接着剤を塗布することができる好適な基材としては、金属(例えば、鋼、鉄、銅、アルミニウム等と、これらの合金が含まれる)、炭素繊維、ガラス繊維、ガラス、セラミックス、エポキシ繊維複合材料、木、及びこれらの混合物が挙げられる。幾つかの実施形態では、基材の少なくとも1つは金属である。他の実施形態では、基材の両方が金属である。
【0093】
基材の表面は、構造用接着剤の塗布前に清浄にしてもよい。しかしながら、本開示の接着剤はまた、表面に炭化水素含有材料を有する基材に接着剤を塗布する用途においても有用である。具体的には、構造用接着剤は、例えば、圧延油(mill oil)、切削液、ドロー油(draw oil)等の炭化水素含有油又はワックスで汚染されている鋼表面に塗布してもよい。
【0094】
接着剤結合の分野では、接着剤は、液体、ペースト、及び加熱によって液化可能な半固体又は固体として塗布することができる、又は接着剤はスプレーとして塗布してもよい。それは、有用な結合の形成に適合する連続ビーズ、中間ドット、ストライプ、対角線又はその他のあらゆる幾何学的形状として適用することができる。幾つかの実施形態では、接着剤組成物は、液体又はペーストの形態である。
【0095】
接着剤配置の選択肢は、溶着又は機械的締結によって増やしてもよい。溶接は、スポット溶接、連続シーム溶接、又は接着剤組成物と組み合わせることが可能な任意のその他の溶接技術によって行い、機械的にしっかりした接合を形成することができる。
【0096】
本開示の組成物は、構造用接着剤として使用することができる。特に、それらは、船、航空機、又は車、モーターバイク若しくは自転車等のモータークラフト車の組立等の機体組立における構造用接着剤として使用してよい。特に、接着剤組成物は、ヘムフランジ接着剤として使用してよい。接着剤は更に、ボディフレーム組立において使用してもよい。組成物はまた、建築における構造用接着剤として、又は家庭及び工業製品における構造用接着剤として使用することもできる。
【0097】
組成物を用いて、液体、固体、又は油が付着した炭化水素含有物質で汚染されている表面、又は保護されている表面上における接着を促進することができる。
【0098】
幾つかの実施形態では、本開示は、複合物品を作製する方法であって、本開示の二液型接着剤を表面に塗布する工程と、表面に接触している二液型接着剤を硬化させて、複合物品を形成する工程とを含む方法を提供する。
【0099】
他の実施形態では、本開示は、複数の部材間に接合継手を形成する方法であって、本開示の二液型接着剤を2つ以上の部材のうちの少なくとも1つの表面に塗布する工程と、二液型接着剤が2つ以上の部材間に挟まれるように部材を接合させる工程と、二液型接着剤を硬化させて2つ以上の部材間に接合継手を形成する工程と、を含む方法を提供する。
【0100】
組成物は、金属−金属接着剤、金属−炭素繊維接着剤、炭素繊維−炭素繊維接着剤、金属−ガラス接着剤、及び炭素繊維−ガラス接着剤として使用してよい。
【0101】
二液型エポキシ系構造用接着剤の例示的な実施形態を、以下の実施例に提供する。以下の実施例は、構造用接着剤、及び構造用接着剤を塗布するための方法を説明するために存在し、当業者がそれを製造及び使用するのに役立つ。実施例は、決して本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0102】
使用される材料
低分子量エステル1:ヒドロキシアクリレートモノマー(Hexion Specialty Chemicals B.V.,Hoogvliet Rt.,Netherlandsから商品名「ACE」として入手)、2−プロペン酸とグリシジルt−デカノエートとの反応生成物。
【0103】
低分子量エステル2:バーサチック酸(versatic acid)のグリシジルエステル(Hexion Specialty Chemicals B.V.,Hoogvliet Rt.,Netherlandsから商品名「CARDURA E10P」として入手)。
【0104】
工業銘柄トリス−2,4,6−ジメチルアミノメチル−フェノール触媒三級アミン添加剤(Air Products and Chemicals Inc.,Allentown,PA,USAから商品名「ANCAMINE K54」として入手)。
【0105】
充填剤(Nabaltec AG,Schwandorf,Germanyから商品名「APYRAL 24」として入手)。
【0106】
n−ブチルグリシジルエーテル(Alfa Aesar,Ward Hill,MA,USAから入手)。
【0107】
1,4−シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルに基づく反応性希釈剤(Air Products and Chemicals Inc.,Allentown,PA,USAから商品名「EPODIL 757」として入手)。
【0108】
約187.5のエポキシ当量を有するビスフェノールAのジグリシジルエーテル(Hexion Specialty Chemicals,Houston,TX,USAから商品名「EPON 828」として入手)。
【0109】
ポリアクリレートエポキシ樹脂(Hexion Specialty Chemicals,Houston,TX,USAから商品名「EPON 8111」として入手)。
【0110】
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Munich,Germanyから入手)。
【0111】
ガラス球(3M Company,St.Paul,MN,USAから商品名「GLASS BUBBLES K37」として入手)。
【0112】
グリシジルメタクリレート(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Munich,Germanyから入手)。
【0113】
オクチル/デシルグリシジルエーテル(Sigma−Aldrich Chemie GmbH,Munich,Germanyから入手)。
【0114】
粒径約250nmのコア/シェル構造(コア:ポリブタジエン−co−ポリスチレン−コポリマーを含む架橋ゴム、シェル:ポリメタクリレート)を備えるメタクリレート/ブタジエン/スチレンポリマー(Rohm and Haas Company in Philadelphia,PA,USAから商品名「PARALOID EXL 2600」として入手)。
【0115】
t−ブチルグリシジルエーテル(TCI America,Portland,OR,USAから入手)。
【0116】
4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(BASF,Ludwigshafen,Germanyから商品名「TTD」として入手)。
【0117】
接着剤組成物の調製
A部の調製:以下の表に示す成分及び量を用いてA部を調製した。アミン硬化剤(TTD)を80℃に加熱した。少量の芳香族エポキシ樹脂(「EPON 828」)を、温度が100℃を超えて上昇しないように添加した。二次硬化剤(「ANCAMINE K54」)を添加し、混合物を更に5分間撹拌した。触媒(硝酸カルシウム)を分散ディスクによって分散させ、混合物を6時間攪拌した。3000rpmで高速ミキサ(Hausschild Engineering,Germanyから商品名「DAC 150 FVZ SPEEDMIXER」として入手)を用いて1分間撹拌しながら、残りの材料を23℃で添加した。
【0118】
B部の調製:以下の表に示す成分及び量を用いてB部を調製した。エポキシ樹脂(「EPON 828」)及び強化剤(「PARALOID EXL 2600」)を、1分間3000rpmで高速ミキサ(「DAC 150 FVZ SPEEDMIXER」)で撹拌した。混合物を80℃に加熱し、再度1分間混合した。強化剤が完全に溶解するまで(目視検査で)、上記手順を繰り返した。混合物を室温まで冷却した。残りの成分を続いて添加し、各々を23℃で添加した後、3000rpmで1分間高速度ミキサー(「DAC 150 FVZ SPEEDMIXER」)を用いて均質化させた。
【0119】
接着剤組成物の調製:A部及びB部を、30秒間3000rpmで、高速ミキサ(「DAC 150 FVZ SPEEDMIXER」)を用いて混合した。
【0120】
試験パネルの調製
清浄な鋼パネル溶融亜鉛めっきされた鋼パネル(150×25×0.67mm、Ste Etalon,Ozoir−la−Farriere,Franceから入手)を、ヘプタンで拭き取り、次いで空気乾燥させた。パネルの下側(ground side)を全ての試験に使用した。
【0121】
油の付着した鋼パネル十分な体積の油を清浄な鋼パネル(上記)に塗布して、適切な油の製品安全データシート(MSDS)の製品安全性及びデータシートから得た密度データを用いて、コーティングされる領域に3g/m2のコーティングを行うことにより、油の付着した鋼パネルを調製した。清浄なニトリル手袋の指の先端を用いて、基材表面上に油を均一に広げた。処理した表面を、使用前に24時間室温で保管した(ドウェル時間)。
【0122】
重ね剪断強度測定重なり剪断強度は、クロスヘッド速度10mm/分にて引張試験機を使用し、DIN EN 1465に従って決定した。試験結果を、3回の測定の平均としてMPaで報告した。設備:引張試験機(Zwick GmbH & Co.KG,Ulm,Germanyから商品名「ZWICK/ROELL Z050」として入手)基材:100×25×0.67mmの鋼ストリップ(上記)。
【0123】
試験用組立体の作製:スパチュラを使用して試験基材の一端に接着剤を塗布し、続いて処理済ストリップの端を、無処理ストリップの端と重なり合わせた。2つの端部を互いに押し付けて、10mmの重なりを形成した。次いで、スパチュラを用いて過剰な接着剤を除去した。重なり合ったストリップは、キャパシティバインダークリップを使用して、接着剤の端でクランプした。クランプした組立品を、3日間周囲条件で保管し、その後重なり剪断試験に供した。
【0124】
T字剥離強度測定T字剥離強度は、DIN EN 1464に従い、クロスヘッド速度100mm/分で稼働する引張試験機(ZWICK/ROELL Z050」)を使用して決定した。試験結果を、3回の測定の平均としてN/25mmで報告した。
【0125】
150×25×0.67mmの鋼ストリップ(上記)を、ストリップの組立中、エクステンドエリアに接着剤が流れるのを防ぐために、100mm×25mmのブランク領域を残して、ポリテトラフルオロエチレンテープ(3M Company,St.Paul,MNから商品名「PTFE TAPE」(5490)として入手)で被覆した。これにより、画定されたボンドラインを確保し、測定中に境界の明瞭な亀裂が得られる。試験接着剤を、スパチュラを用いて基材の1枚のストリップのブランク領域に塗布し、次いで接着剤の塗布された領域を試験基材の第2のストリップで被覆した。ストリップを相互に押しつけ、残留接着剤をスパチュラで除去した。組立体は、キャパシティバインダークリップを使用して、ボンドラインの長さにわたって両面をクランプした。クランプされた組立品を24時間周囲条件で保管し、次いで180℃で30分間オーブン内で硬化させた後、T字剥離試験に供した。
【0126】
結果(1)エポキシ接着剤の結合強度に対する油置換化合物の添加の効果
【表1】


(1)3M(商標)K37ガラス球(3M Companyから入手可能)
(2)シランZ−6040接着促進剤(Dow Corningから入手可能な3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン)
(3)SHIELDEX AC−5(Grace Davidsonから入手可能なカルシウムイオン交換された非晶質シリカ)
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】


a=接着破壊 c=凝集破壊
【0130】
表1c(上記)に示された結果は、参照実施例1と実施例1〜3とを比較することにより分かるように、エステル化合物をエポキシ接着剤に添加すると、完全に硬化された組成物の結合強度が上昇し(T字剥離試験により測定したとき)、また接着強度(結合強度)がより急速に上昇する(重なり剪断試験により測定したとき)ことを示す。
【0131】
結果(2)非エステルと比較したエステルの効果結果を比較しやすくするために、結果(1)の実施例2の詳細を以下の表でも繰り返す。
【0132】
【表5】


ACE
**CARDURA E10P
(1)3M(商標)K37ガラス球(3M Companyから入手可能)
(2)シランZ−6040接着促進剤(Dow Corningから入手可能な3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン)
(3)SHIELDEX AC−5(Grace Davidsonから入手可能なカルシウムイオン交換された非晶質シリカ)
【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
【表8】


a=接着破壊 c=凝集破壊
【0136】
結果は、請求される構造と類似の構造であるが、エステル架橋を有しない化合物は、請求される構造による化合物と同じ速度では結合強度を増加させないことを示す(参照実施例2〜5と実施例4の重なり剪断結果を比較)。
【0137】
結果はまた、エステル架橋だけでなく短鎖残基も有する化合物は、請求される構造による化合物と同じ速度では結合強度を増加させないことを示す(参照実施例5と実施例2及び4の結果を比較)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部と第2部とを有する二液型接着剤組成物であって、
前記第1部に少なくとも1種の芳香族エポキシ樹脂と、
前記第2部に少なくとも1種のアミン硬化剤と、
前記第1部及び/又は前記第2部の少なくとも一方に少なくとも1種のエステルと、を含み、前記エステルが一般式:
−CO−OR
(式中、
は、
(i)少なくとも1種のエポキシ基、又は
(ii)少なくとも1種のアクリル基、のうちの少なくとも1つを含む有機部分であり、
は、分岐アルキル基である)に相当する、組成物。
【請求項2】
が、式:
−(CH−C(Ri)(Rii)(Riii)
(式中、
Riは、H又は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
Riiは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
Riiiは、1〜12個の炭素原子を有するアルキル基を表し、
nは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10を表す)により表される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Riが、メチル基又はエチル基を表す、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
が20個未満の炭素原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記芳香族エポキシ樹脂が、少なくとも1種のビスフェノールグリシジルエーテル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1種の強化剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記芳香族エポキシ樹脂が、少なくとも1種の脂肪族炭素−炭素二重結合を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
非芳香族、不飽和エポキシ樹脂を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記非芳香族、不飽和エポキシ樹脂が、ポリアクリレートエポキシ樹脂である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
金属塩を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の前記二液型接着剤組成物の前記第1部及び前記第2部の硬化した組み合わせを含む硬化した組成物。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の前記二液型接着剤組成物を表面に塗布する工程と、
前記二液型接着剤組成物を硬化させて、複合物品を形成する工程とを含む、複合物品を作製する方法。
【請求項13】
前記表面が、炭化水素含有物質を含む金属表面である、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−504177(P2012−504177A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529271(P2011−529271)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/058413
【国際公開番号】WO2010/039614
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】