説明

速結端子装置

【課題】ケースの強度を確保しながら狭いスペースにより多くの電線挿通孔を形成することができる速結端子装置を提供する。
【解決手段】 ケース1が上面部6を有し、上面部6の一方向に複数の電線挿通孔7a〜7fを千鳥状に並べて形成している。端子板2はケース1内に配設されて各電線挿通孔7a〜7fから挿通された電線導体を接続するものである。複数の鎖錠ばね3はケース1内に配設されて各電線挿通孔7a〜7fから挿通された電線導体を端子板2に押圧接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじによらずに電線導体を接続する速結端子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分電盤に配設されるアース端子用の従来の速結端子装置は、ケースの上面に複数の電線挿通孔を一直線上に並べて形成するとともに、2つの電線毎に解錠を行うための解錠ボタンを電線挿通孔間に隣接配置している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−243483号(特許第3520796号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の速結端子装置は、分電盤のアース端子用として用いられているので、電線を一度接続すると外すことは殆どない。一方、近年の電気機器はアース接続機器が増加している。そこで、解錠ボタンを無くして一つの速結端子装置に接続する電線を増やすことが考えられている。
【0004】
しかし、電線挿通孔を直線状に並べて形成した場合、限られた長さのケース内で電線挿通孔を増やそうとすると、各電線挿通孔間の間隔が狭くなってケースの強度を確保できないという問題がある。一方、電線挿通孔の並び方向と直角な方向にケースのスペースがある場合に、上記のように複数の電線挿通孔を直線状に並べることは、スペースの有効利用にはならない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、ケースの強度を確保しながら狭いスペースにより多くの電線挿通孔を形成することができる速結端子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の速結端子装置は、ケースが上面部を有し、前記上面部の一方向に複数の電線挿通孔を千鳥状に並べて形成している。端子板はケース内に配設されて各電線挿通孔から挿通された電線導体を接続するためにある。複数の鎖錠ばねは前記ケース内に配設されて各電線挿通孔から挿通された前記電線導体を前記端子板に押圧接続する。
【0007】
上記構成において、前記複数の電線挿通孔は、前記上面部において前記電線挿通孔の前記一方向およびそれに直角な方向の接線上に、隣合う前記電線挿通孔の一部が重なる関係で配置されている。
【0008】
上記構成において、前記ケースの前記上面部の中央に取付孔を形成し、前記取付孔を間にして前記一方向の両側にそれぞれ前記複数の電線挿通孔が配置され、かつ前記取付孔の両側の前記複数の電線挿通孔が前記取付孔に対して対称である。
【0009】
上記構成において、前記ケースは、前記取付孔の両側に対称に配置された3つの相隣合う電線挿通孔において、前記一方向の直線上に並ぶ2つの前記電線挿通孔の間に前記端子板を取着する引掛部を内部に有し、前記端子板は前記引掛部を受ける引掛受け部を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の速結端子装置によれば、電線挿通孔を千鳥状に形成することにより、直線状に形成したものに比べ、ケースの強度を確保しながら狭いスペースにより多くの電線挿通孔を形成することができる。
【0011】
電線挿通孔の相互は電線挿通孔の縦横方向の接線に、隣り合う電線挿通孔の一部が重なるため、電線挿通孔同士の距離を短くすることができ、本発明の速結端子装置と同数の電線挿通孔を一列に形成したものと比べ、ケースの大きさを小さくすることができる。
【0012】
取付孔の両側に複数の電線挿通孔を対称に形成したため、ケースを取付孔を中心に反転して取り付けても電線挿通孔の位置が同じとなるので取付方向間違いによる着脱作業を行う必要がなく、ケースを取付ける作業が容易となる。
【0013】
端子板を取着する引掛部を電線挿通孔の一方向の直線上に並ぶ2つの電線挿通孔間に形成したため、引掛部も千鳥配置にすることができ、ケースのスペースを有効活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施の形態の速結端子装置は、ケース1内に端子板2および鎖錠ばね3を配設し、ケース1内に挿入した電線導体4を鎖錠ばね3で端子板2に押圧接続する。
【0015】
ケース1は、周側壁部5および上面部6を有し、下端に開口を有する底部のない箱形であり、上面部6の一方向Pすなわち長手方向に複数の電線挿通孔7を千鳥状に並べて形成している。これらの電線挿通孔7は、図2に示すように上面部6において、各電線挿通孔7の一方向Pおよびそれに直角な方向の接線Q1、Q2上に、隣合う前記電線挿通孔7の一部が重なる関係で配置されている。またケース1の上面部6の中央に取付孔8を形成し、取付孔8を間にして長手方向の一方側の複数の電線挿通孔7a〜7cと他方側の複数の電線挿通孔7d〜7fとを取付孔8に対して対称に形成している。さらに上面部6の取付孔8の両側の対称な配置をなして相隣合う3つの電線挿通孔7a〜7cと7d〜7fにおいて、上面部6の長手方向の一直線上に配設された2つの電線挿通孔7aと電線挿通孔7cの間、および2つの電線挿通孔7dと電線挿通孔7fの間にそれぞれ端子板2を取着する引掛部9を形成している(図3、図4参照)。これにより一対の引掛部9は取付孔8に対して対称に配置されている。10は引掛部9を形成するための金型の抜き孔である。
【0016】
端子板2は、両側より一対の側板11a、11bを折曲し、両端より側板11a、11bの外側に接続部12を延出している。この場合、側板11a、11bはケース1に被覆され、かつ接続部12はケース1の外方にはみ出すように寸法設定されている。接続部12に電線接続ねじ13を設けている。このようにして側板11a、11bがケース1内に配設されると、各電線挿通孔7から挿通された電線導体4が側板11a、11bに接触可能となる。また端子板2はケース1の引掛部9に対応して引掛部9を受ける引掛受け部14を孔により形成している。15はケース1を端子板2に被せた際に引掛部9を引掛受け部14に案内する切欠である。したがって、ケース1を側板11a、11bに被せる際に引掛部9が切欠15にガイドされ、側板11a、11bを乗り越えて引掛受け部14に引っ掛かる。
【0017】
鎖錠ばね3は、板ばねの一端をくの字に折り返して鎖錠片16を形成し、他端を鎖錠片16の内側に折込みさらに外側に折り返して押圧片17を形成している。各鎖錠ばね3を端子板2の側板11a、11b間に押圧片17を下にして収め、ケース1を側板11a、11bに被せることにより、ケース1の上面部6の裏面側に設けた突出部19で鎖錠片16を押さえ、これにより鎖錠ばね3の中央部3aの背面側を側板11a、11bの一方の内面に当接して、鎖錠ばね3を一対の側板11a、11b間に位置決めしている(図5参照)。この場合、側板11a、11bの一方すなわち、ケース1の周側壁部5の短手方向に対向する壁の一方に近い電線挿通孔7b、7d、7fについては鎖錠ばね3の中央部3aが周側壁部5の短手方向に対向する壁の他方側に位置する端子板2の側板11bの内面に当接し、周側壁部5の短手方向に対向する壁の他方側に近い電線挿通孔7a、7c、7eについては鎖錠ばね3の中央部3aが周側壁部5の短手方向に対向する壁の一方側に位置する端子板2の側板11aの内面に当接している。それぞれの電線挿通孔7より電線導体4が差し込まれると、図5から図6に示すように、電線導体4が鎖錠片16を乗り越え、押圧片17が電線導体4を側板11aまたは側板11bに押圧し、電線導体4の抜き方向には鎖錠片16が電線導体4に食い込むことにより抜け止めされて接続状態とする。なお複数の鎖錠ばね3の相互間には絶縁板18を介在している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1の実施の形態の分解斜視図である。
【図2】組立状態の平面図である。
【図3】ケースの裏面図である。
【図4】ケースの引掛部を端子板の引掛受け部に引っ掛けた状態の断面図である。
【図5】電線導体を接続する前の状態の断面図である。
【図6】電線導体を接続した状態の断面図である。
【図7】図2のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 ケース
2 端子板
3 鎖錠ばね
4 電線導体
6 上面部
7 電線挿通孔
8 取付孔
9 引掛部
14 引掛受け部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面部を有し前記上面部の一方向に複数の電線挿通孔を千鳥状に並べて形成したケースと、このケース内に配設されて各電線挿通孔から挿通された電線導体を接続するための端子板と、前記ケース内に配設されて各電線挿通孔から挿通された前記電線導体を前記端子板に押圧接続する複数の鎖錠ばねとを備えた速結端子装置。
【請求項2】
前記複数の電線挿通孔は、前記上面部において、前記電線挿通孔の前記一方向およびそれに直角な方向の接線上に、隣合う前記電線挿通孔の一部が重なる関係で配置されている請求項1記載の速結端子装置。
【請求項3】
前記ケースの前記上面部の中央に取付孔を形成し、前記取付孔を間にして前記一方向の両側にそれぞれ前記複数の電線挿通孔が配置され、かつ前記取付孔の両側の前記複数の電線挿通孔が前記取付孔に対して対称である請求項1または請求項2記載の速結端子装置。
【請求項4】
前記ケースは、前記取付孔の両側に対称に配置された3つの相隣合う電線挿通孔において、前記一方向の直線上に並ぶ2つの前記電線挿通孔の間に前記端子板を取着する引掛部を内部に有し、前記端子板は前記引掛部を受ける引掛受け部を有する請求項3記載の速結端子装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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