説明

造形装置、除粉装置、造形システム及び造形物の製造方法

【課題】作業効率を高めることができる造形装置、また、この造形に用いられる除粉装置、造形システム及び造形物の製造方法を提供すること。
【解決手段】本技術に係る造形装置は、ボックス保持機構と、ボックスと、供給機構と、昇降機構とを具備する。前記ボックスは、本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられる。前記供給機構は、前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する。前記昇降機構は、前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、ラピッドプロトタイピング技術のうち、粉体材料を用いて造形物を形成する造形装置、造形物の周囲の粉体を除去する除粉装置、これらの装置を含む造形システム及び造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の造形装置は、積層造形ユニット(20)及び粉末除去ユニット(30)等を備える。積層造形ユニット(20)では、トレイ(9)上で造形物(91)の積層造形作業が行われる。このトレイ(9)は、トレイ搬送部(50)により下降移動するように構成されている。積層造形ユニット(20)において造形物(91)が形成された後、トレイ(9)が下降し、粉末除去ユニット(30)において粉末除去処理が行われる(例えば、特許文献1の明細書段落[0060]、[0070]、図1、4,7参照)。
【0003】
このように、この造形装置では、造形処理から除粉処理までが自動化されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−248691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
造形処理から除粉処理までが自動化されていない一般的な造形装置では、その造形ユニットにおいて造形物が形成された後、作業者が、造形装置に搭載された造形ユニットから造形物を取り出す必要がある。これでは作業効率が悪くなる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本技術の目的は、作業効率を高めることができる造形装置、また、この造形に用いられる除粉装置(デパウダー装置)、造形システム及び造形物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本技術に係る造形装置は、ボックス保持機構と、ボックスと、供給機構と、昇降機構とを具備する。
前記ボックスは、本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられる。
前記供給機構は、前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する。
前記昇降機構は、前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる。
【0008】
ボックス保持機構によりボックスが着脱可能に保持されるので、作業者またはロボットが、ボックス保持機構からそのボックスを取り外すことができる。作業者またはロボットは、取り外されたボックスから造形物を取り出したり、造形物を収容したボックスを除粉装置に装着したりすることができる。これにより、作業効率を高めることができる。
【0009】
前記昇降機構は、昇降駆動される昇降部材と、前記昇降部材が前記ステージをクランプするためのクランプ機構とを有してもよい。
【0010】
例えば、前記クランプ機構は、電磁石を利用してクランプを行ってもよい。ボックスがボックス保持機構に着脱可能であること、あるいは、ステージがボックスの本体に相対的に移動可能に設けられることにより、ボックス及びステージの製造誤差(サイズ誤差等)が発生することも想定される。しかし、本技術のクランプ機構によれば、その製造誤差範囲を吸収してクランプを行うことができる。
【0011】
前記ボックスは、前記本体の側面に設けられた被支持部材を有してもよい。その場合、前記ボックス保持機構は、昇降可能に設けられた、前記被支持部材を下方から支持する支持部材を有する。これにより、ボックス保持機構は、支持部材を上昇させて被支持部材を押し上げることにより、ボックスを簡単に持ち上げることができる。
【0012】
前記ボックス保持機構は、前記支持部材により支持された前記被支持部材が当接するストッパーを有してもよい。このストッパーを、ボックスの位置決め機構の一部または全部として用いることができ、簡易な構成でボックスの位置決めを実現することができる。
【0013】
前記ボックスは、前記ステージの周囲に装着されたシール部材を有してもよい。これにより、ボックスから粉体が漏れ落ちることを防ぐことができる。
【0014】
本技術に係る除粉装置は、ボックス保持機構と、ボックスと、ステージ移動聞くと、除粉処理機構とを具備する。
前記ボックスは、開口を有する本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有する。また、ボックスは、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられ、ラピッドプロトタイピング技術により粉体を用いて形成された造形物を、未結合の粉体とともに前記ステージ上に配置させるように、前記造形物及び未結合の粉体を収容可能である。
前記ステージ移動機構は、前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に上昇移動させることが可能である。
前記除粉処理機構は、前記ステージ移動機構の駆動により前記開口を介して押し出された前記造形物の周囲の前記未結合の粉体を除去する。
【0015】
本技術に係る造形システムは、前記造形装置と、前記除粉装置と、造形装置と前記除粉装置との間で、前記ボックスを搬送する搬送装置とを具備する。
【0016】
本技術に係る造形物の製造方法は、本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有するボックス内に、粉体を収容することを含む。
造形装置において、前記ボックス内で、ラピッドプロトタイピング技術により前記粉体を材料とした造形物が形成される。
前記ボックスが前記造形装置から取り外される。
前記取り外されたボックスが除粉装置に装着される。
前記除粉装置により、前記造形物の周囲の未結合の粉体が除去される。
【発明の効果】
【0017】
以上、本技術によれば、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本技術の一実施形態に係る造形装置を示す図である。
【図2】図2は、図1に示す造形装置の側面図である。
【図3】図3は、図1に示す造形装置の平面図である。
【図4】図4Aは、造形部に設けられたボックスを示す斜視図である。図4Bは、このボックスを示す断面図である。
【図5】図5は、供給部及び造形部のそれぞれの要部を示し、これらを斜め下方から見た図である。
【図6】図6は、供給部及び造形部を、供給部から見た側面図である。
【図7】図7は、主にボックスが造形装置に装着される時の動作を示すフローチャートである。
【図8】図8は、搬送台車がボックスを保持している状態を示す図である。
【図9】図9は、作業者が造形装置に搬送台車のフォークを挿入する前の、搬送台車及び造形装置を示す斜視図である。
【図10】図10は、作業者が造形装置に搬送台車のフォークされた状態の、搬送台車及び造形装置を示す斜視図である。
【図11】図11A〜Eは、その時のボックス保持機構の動きを説明するための図である。
【図12】図12A〜Dは、造形装置の造形動作を順に示す図であり、側面から見た模式図である。
【図13】図13は、造形装置による造形処理後、主に、ボックスが造形装置から取り外される時の動作を示すフローチャートである。
【図14】図14は、除粉装置の外観を示す斜視図である。
【図15】図15は、図14に示す除粉装置の模式的な断面図である。
【図16】図16は、この除粉装置の動作を説明するための図である。
【図17】図17は、この除粉装置から造形物が取り出される様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本技術の実施形態を説明する。
【0020】
[造形装置]
【0021】
(造形装置の構成)
図1は、本技術の一実施形態に係る造形装置を示す図である。図2は、図1に示す造形装置の側面図であり、図3は、その平面図である。
【0022】
この造形装置100は、ラピッドプロトタイピング技術により、粉体を材料とした造形物を形成する装置である。
【0023】
造形装置100は、造形ユニット30と、これに隣接して配置された制御ユニット60とを備える。造形ユニット30は、フレーム1と、このフレーム1上に固定されたプレート2とを備える。プレート2の概ね中央部には、プレート2の長手方向であるY方向に沿って造形作業用の開口部2aが設けられている。その開口部2aの下部には、粉体の供給部10、粉体による造形物が形成される造形部20、及び、粉体の排出路部材31(図1ではこれを省略)が配置されている。これら供給部10、造形部20及び排出路部材31は、図2及び図3に示すように、それらの図中左側からY方向に沿って順に並ぶように配置されている。
【0024】
なお、プレート2上にも図示しないフレームが設けられ、図1に示すように、フレームにカバー33が取り付けられている。カバー33はアクリル等により形成され、ユーザーが、造形ユニット30の外部からその内部を見ることができるようになっている。また、このカバー33には、静電気を帯びた粉体が取り付いたりして視認性を妨げないように、静電防止処理が施されている。
【0025】
供給部10は、粉体4(図12参照)を貯留することが可能な、供給ステージ12を含む供給ボックス11、供給ステージ12を供給ボックス11内で昇降させる昇降機構70を有する。供給ステージ12は、昇降機構70の駆動により、供給ボックス11内で供給ボックス11に貯留された粉体4を下から押し上げることで、開口部2aを介してプレート2上に粉体4を供給する。昇降機構70としては、ボールネジ機構またはラックアンドピニオン機構等が用いられる。
【0026】
図1及び2に示すように、この供給部10上には、作業者またはロボットにより粉体が供給されて一時的に貯溜されるタンクシューター15が設けられている。タンクシューター15の底部には、例えば電気的な制御で開閉する図示しないカバーが設けられている。このカバーが開くと、貯溜されている粉体が自重で落下し、供給部10に供給される。
【0027】
粉体4としては、水溶性の材料が用いられ、例えば、食塩、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウムなどの無機物が用いられる。塩化ナトリウムとにがり成分(硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウムなど)が混合されたものが用いられてもよい。すなわち、これは塩化ナトリウムを主成分とするものである。あるいは、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ナトリウム、メタアクリル酸アンモニウム、メタアクリル酸ナトリウムやその共重合体などの有機物を用いることもできる。
【0028】
粉体4の平均粒子径は、典型的には10μm以上100μm以下である。食塩が用いられることにより、例えば金属またはプラスチック等の粉体材料を用いる場合に比べ、粉体材料の抽出や加工等に要するエネルギーが低いので環境に良い。
【0029】
供給部10に隣接して配置された造形部20は、粉体4を収容することが可能なボックス21と、このボックス21に設けられたステージ22を昇降させる昇降機構50とを有する。ボックス21は、ボックス保持機構40に着脱可能に設けられている。ボックス保持機構40及び昇降機構50の詳細は後述する。
【0030】
図3で見て、ボックス21のX方向の長さは20〜50cm、そのY方向の長さは10〜30cmに設定されるが、この範囲に限られない。このボックス21(の本体23)内に収容された粉体が配置される領域が、造形可能領域となる。
【0031】
各ボックス11、12及び排出路部材31の上端部には開口が設けられ、それらの開口面は、プレート2の開口部2a(図3参照)にそれぞれ対面するように配置されている。
【0032】
プレート2の開口部2aの供給部10側の端部付近には、供給部10から供給された粉体4を造形部20に搬送するローラ16が配置されている。ローラ16は、各ボックス11、12及び排出路部材31の配列方向とは水平面内で直交する方向、すなわちX方向に沿って設けられた回転軸17(図2参照)を有する。回転軸17を回転させる図示しないモータも設けられている。プレート2上にはローラ16をY方向に移動させる図示しない機構が設けられている。
【0033】
排出路部材31は、図2に示すように、ボックス保持機構40をよけるために折れるように設けられている。排出路部材31の下部には、回収ボックス34が配置されている。排出路部材31を自重により落下する余剰の粉体が、この回収ボックス34に回収されるようになっている。
【0034】
プレート2上には、プリントヘッド41、及びこのプリントヘッド41をX−Y方向に移動させるプリントヘッド移動機構46が設けられている。プリントヘッド41は、造形部20においてステージ22上の粉体4にインクを吐出することが可能になっている。プリントヘッド41及びプリントヘッド移動機構46は、液体を供給する供給機構として機能する。
【0035】
プリントヘッド移動機構46は、開口部2aのX方向での両側でY方向に沿って延設されたガイドレール45、これらのガイドレール45の端部に設けられたY軸駆動機構48、これらのガイドレール45の間に架け渡されたX軸駆動機構47を有する。X軸駆動機構47にプリントヘッド41がX方向に移動可能に接続されている。また、X軸駆動機構47は、ガイドレール45に沿って、Y軸駆動機構48によりY方向に移動可能となっている。X軸駆動機構47及びY軸駆動機構48は、ボールネジ機構、ベルト機構、またはラックアンドピニオン機構等により構成されている。
【0036】
プリントヘッド41は、公知のインクジェットプリントヘッドの構造を備えるものが用いられればよい。例えば、プリントヘッド41内には、図示しない複数のインクタンクが設けられている。各インクタンクは、シアン、マゼンダ及びイエローの各色(以下CMYという。)のインクをそれぞれ貯溜している。
【0037】
プリントヘッド41内には、図示しないが例えば透明インクを貯溜するタンクも設けられている。この透明インクは、粉体を結合して硬化させるためのバインダーの成分を含む。粉体がバインダー成分を含む場合には、インクはバインダー成分を含んでいなくてもよい。
【0038】
インクとしては、例えば水性インクが用いられ、市販のインクジェットプリンタ用のインクを用いることも可能である。インクは、粉体4の材料に応じて油性であってもよい。
【0039】
プリントヘッド41の方式として、インクジェット方式とは異なる方式が採用されてもよい。
【0040】
制御ユニット60は、CPU、RAM及びROMを有するコンピュータの機能を備える。また、制御ユニット60は、前面の上部に配置された表示部61、及びその下部に配置された入力操作機器62を有している。入力操作機器62は、典型的にはキーボードにより構成される。表示部61は、タッチパネルによる入力デバイスを有していてもよい。
【0041】
この制御ユニット60には、3次元データとして機能するCT(Computed Tomography)データが入力される。制御ユニット60は、入力されたCTデータに基づいて、造形物を形成するために、造形ユニット30の各部の動き及びそのタイミングを制御する。
【0042】
図4Aは、造形部20に設けられたボックス21を示す斜視図である。図4Bは、このボックス21を示す断面図である。
【0043】
ボックス21は、上記したように、上端に開口23aを有する本体23と、この本体23に移動可能に設けられ、この本体23の底板を構成するステージ22とを有する。本体23の形状は、四角の筒状であり、ステージ22は、この本体23の内面の形状に沿うように、四角形の板状を有する。図4Bに示すように、本体23の下部にはフランジ部23bが設けられており、ステージ22の周縁部がこのフランジ部23b上に載置された状態で、本体23の容積が最も大きくなる。
【0044】
ステージ22の周縁部には、シール部材29が装着されており、シール部材29は、本体23とステージ22との間の隙間をシールする。シール部材29は、例えばウレタン等、スポンジ状の素材で構成される。ステージ22の裏面には、後述するクランプ機構56の一部を構成する部材として、例えば強磁性材料でなる鉄プレート55が取り付けられている。なお、図2、11A〜E等では、シール部材29の図示を省略している。
【0045】
このボックス21の本体23の側面23cには、ボックス保持機構40の後述する支持部材27に支持される被支持部材24が設けられている。被支持部材24は、例えば板状に形成されるが、この形状に限られない。ボックス保持機構40の支持部材27がボックス21を支持できるように、被支持部材24は連続的または断続的に本体23の周囲の少なくとも一部に設けられていればよい。本実施形態では、被支持部材24は、本体23の対向する一対の側面23cにそれぞれ設けられている。
【0046】
図5は、供給部10及び造形部20のそれぞれの要部を示し、これらを斜め下方から見た図である。図6は、これら供給部10及び造形部20を、供給部10から見た側面図である。以下の供給部10及び造形部20の説明は、図5及び6だけでなく、図2も参照すると理解しやすい。
【0047】
供給部10及び造形部20は、上記したプレート2の開口2aに取り付けられる取付フレーム80を有する。供給ボックス11は、この取付フレーム80の所定位置に固定されている。
【0048】
取付フレーム80の、供給ボックス11が固定された位置に隣接する部分には、ガイドフレーム81が取り付けられている。ガイドフレーム81は、例えば本体23の外形に沿った四角形に形成されている。ガイドフレーム81は、ボックス21がボックス保持機構40に装着される時に、ボックス21の本体23の上部を案内し、この本体23を位置決めする機能を有する。
【0049】
ガイドフレーム81の内側は、図6に示すように、テーパー形状に形成されている。具体的には、そのガイドフレーム81の下方から上方に向かうにしたがって、そのガイドフレーム81の内側の幅(ガイドフレーム81の内部空間の幅)が狭くなるように形成されている。これにより、後述するように上昇移動されるボックス21の上部がガイドされやすくなり、つまり、ボックス21の上部がガイドフレーム81に嵌りやすくなり、ボックス21の位置決めが容易となる。
【0050】
造形部20の昇降機構50は、駆動部54と、この駆動部54によって昇降移動する昇降アーム(昇降部材)52と、昇降アーム52がステージ22をクランプするためのクランプ機構56(図5参照)とを含む。昇降アーム52は例えばL字形状を有する。
【0051】
クランプ機構56は、例えば、昇降アーム52の上端部に取り付けられた、磁界発生デバイス53と、上述のように、ステージ22の裏面に設けられた鉄プレート55とを有する。磁界発生デバイス53が、図示しないコイルの通電により磁力を発生し、この磁力が鉄プレート55と作用することで、磁界発生デバイス53と鉄プレート55とが接続され、ステージ22がクランプされる。
【0052】
供給部10の昇降機構70も、基本的に昇降機構50と同様の構造を有しており、L字形状の昇降アーム72の端部に供給ステージ12が直接取り付けられている点で、昇降機構50と異なる。
【0053】
また、造形部20に設けられたボックス保持機構40は、一対の昇降シリンダ28を有する。昇降シリンダ28は、駆動部25と、駆動部25により昇降移動するロッド26とをそれぞれ有し、ロッド26の先端には上記支持部材27がそれぞれ取り付けられている。すなわち、支持部材27が、ボックス21に設けられた被支持部材24を下方から支持するようになっている。昇降シリンダ28としては、例えば流体圧シリンダ(典型的にはエアシリンダ)が用いられる。
【0054】
昇降シリンダ28は、ボックス21及び昇降アーム52を挟むような位置で、取付フレーム80に接続された2枚の垂直板フレーム82にそれぞれ固定されている。これら昇降シリンダ28は同期して駆動するように、造形ユニット30の図示しないコントローラにより、あるいは制御ユニット60によりその駆動が制御される。
【0055】
垂直板フレーム82には、ボックス保持機構40の一部として機能する一対のストッパー83が設けられている。これらのストッパー83は、昇降シリンダ28が支持部材27を上昇移動させる時に、その上昇移動を規制する機能を有する。後述するように、このストッパー83に被支持部材24が当接した時点で、ボックス21がガイドフレーム81により位置決めされた状態となる。ガイドフレーム81が、ボックス保持機構40の一部として機能してもよい。
【0056】
このように、ガイドフレーム81及びストッパー83が設けられることにより、簡易な構成で、造形部20におけるボックス21の位置決めを実現することができる。
【0057】
(造形装置における造形処理前の動作)
次に、主に、ボックス21が造形装置100に装着される時の動作を説明する。図7は、その動作を示すフローチャートである。図11は、その時のボックス保持機構の動きを説明するための図である。
【0058】
最初、造形装置100の各部の機構は、原点位置(初期位置)にある(ステップ100)。ボックス保持機構40の原点位置は、図11Aに示すような位置である。すなわち原点位置では、昇降シリンダ28の支持部材27が、図2で示した位置より下降した状態にある。
【0059】
作業者は、図8に示すように、ボックス21を搬送台車150に乗せる(ステップ101)。搬送台車150は、搬送対象物であるボックス21を保持するフォーク153を有する。フォーク153は手動または電動により上下動できるように構成されている。フォーク153は図示するようにボックス21の底部を下方から支持するようにして、ボックス21を保持する。後述するように、作業者が搬送台車150のフォーク153を造形装置100内に挿入した時に、造形装置100の昇降シリンダ28上にボックス21が配置されるように、フォーク153の高さが予め調整されている。
【0060】
なお、フォーク153の上面に図示しない凸部(または凹部)が設けられ、この凸部(または凹部)に、ボックス21の裏面側に設けられた凹部(または凸部)が係合するようになっていてもよい。あるいは、搬送台車150は、フォーク153の代わりに、ボックス21の本体23の側面を両側から挟むようにしてボックス21を保持する保持機構を有していてもよい。
【0061】
図9及び10に示すように、作業者は、造形装置100内に搬送台車150のフォーク153を挿入するように、搬送台車150を移動させる(ステップ102)。そうすると、図11Bに示すように、ボックス保持機構40が配置される所定の高さ位置にボックス21が配置される。図11Bに示す状態で、作業者が造形装置100の入力操作機器62を介して操作することにより、ボックス保持機構40は、ボックス21の保持動作を開始する。
【0062】
なお、作業者によるフォーク153の造形装置100への挿入時、ボックス21のX軸方向での位置決めは、次のようにして行われればよい。例えば、フォーク153の長さや、搬送台車150のサイズが、造形装置100のサイズに対応するように予め設計され、フォーク153の所定位置にボックス21が載せられることにより、その位置決めが行われるようにすればよい。この場合におけるボックスの21のY軸方向での位置決めについては、例えば搬送台車150用の移動のためのガイドレールが、造形装置100の設置位置に対応するように設けられている等により行われればよい。
【0063】
あるいは、例えばフォーク153の端部にカメラが設けられ、そのカメラにより撮影された映像を作業者が見ながら搬送台車150をX及びY軸方向で移動させて、ボックス21を位置決めしてもよい。あるいは、作業者の搬送台車150を移動させる技量により、ボックス21が位置決めされてもよい。
【0064】
図11Bに示した状態の後、図11Cに示すように、ボックス保持機構40では、昇降シリンダ28の駆動により、支持部材27が上昇する。支持部材27が被支持部材24に当接しながら上昇することにより、ボックス21が持ち上げられ、ボックス21がフォーク153から離れる(ステップ103)。昇降シリンダ28は、被支持部材24がストッパー83に当接するまで支持部材27を上昇させる。被支持部材24がストッパー83に当接することにより、その上昇が終了する。
【0065】
図10は、ボックス21がフォーク153から離れ、ボックス21の上昇が終了した時の状態を示している。この時、ボックス21の上部がガイドフレーム81(図6参照)内に挿入され、ボックス21はガイドフレーム81に案内されながら上昇し、位置決めされる。このようにしてボックス保持機構40は、ボックス21を保持する。
【0066】
ボックス21の下部には昇降機構50が配置されるため、ボックス21を保持するボックス保持機構40は、このように動きが少ない、極力簡易な構成とされる。
【0067】
作業者は搬送台車150をバックさせることによりそのフォーク153を造形装置100から引き抜く(ステップ104)。作業者は、安全を考慮してフォーク153を少し下降させてから引き抜いてもよい。
【0068】
次に、図11Dに示すように、昇降機構50が作動を開始する。昇降アーム52が上昇し、クランプ機構56によりステージ22がクランプされる(ステップ105)。ステージ22がクランプされると、図11Eに示すように、昇降機構50は、ステージ22をボックス21の本体23の最上位置、すなわち開口付近まで上昇させる(ステップ106)。その後、後述する造形処理(図12参照)が開始される(ステップ107)。
【0069】
以上のように、本実施形態では、ボックス保持機構40によりボックス21が着脱可能に保持されるので、作業者は、ボックス保持機構40からそのボックス21を取り外すことができる。作業者は、取り外されたボックス21から造形物を取り出したり、造形物を収容したボックス21を後述するように除粉装置300に装着したりすることができる。これにより、作業効率を高めることができる。
【0070】
また、本実施形態に係るクランプ機構56は、電磁クランプ力を利用している。本実施形態では、ボックス21がボックス保持機構40に着脱可能であること、あるいは、ステージ22がボックス21の本体23に移動可能に設けられることにより、ボックス21及びステージ22の製造誤差(サイズ誤差等)が発生することも想定される。しかし、本技術のような電磁クランプ力が利用されることにより、部材同士が係合してクランプ力を発生するメカニカルなクランプ力が利用される場合に比べ、その製造誤差を吸収してクランプを行うことができる。
【0071】
本実施形態に係るボックス21は、上述のようにステージ22の周縁部に設けられたシール部材29を有する。これにより、ボックス21から粉体が漏れ落ちることを防ぐことができる。特に、シール部材29として、本実施形態のようにスポンジ状の柔らかい素材が用いられる場合、上記のようにボックス21の本体23とステージ22とのX−Y平面内における相対位置は、厳密に固定されるわけではなく、多少の自由度がある。したがって、上記のような製造誤差だけでなく、クランプ機構56は、このようなステージ22の多少の自由度によるステージ22の位置誤差も吸収することができる。
【0072】
(造形装置の造形処理)
図12は、造形装置100の造形動作を順に示す図であり、側面から見た模式図である。
【0073】
造形装置100が造形物を形成する前の段階で、造形の対象となる対象物のCTデータが制御ユニット60に入力される。
【0074】
図12A〜Dでは、後述するように、プリントヘッド41からインクが吐出されることで粉体4が硬化(結合)される層が1層分(所定の層厚分)形成される工程が示されている。粉体4及び未硬化(未結合)の粉体4がドットのハッチングで示され、硬化層が黒塗りで示されている。
【0075】
図12Aに示すように、供給ボックス11には既に上記のタンクシューター15から粉体4が供給されて貯溜さている。造形部20のステージ22には、硬化層及び未硬化の粉体層が積層された状態となっており、この状態から、硬化層を1層形成する工程が開始される。図12Aにおいて、ローラ16及びプリントヘッド41が示されている位置が、ぞれぞれの待機位置とされる。
【0076】
まず、図12Bに示すように、供給部10の供給ステージ12に堆積している粉体4が昇降機構70(図2等参照)により押し上げられ、1層分の粉体層よりも少し過剰な量の粉体4が、プレート2の上面2bより高い位置まで供給される。また、造形部20において、昇降機構50によりステージ22が降下することで、硬化層及び未硬化の粉体層の上面とプレート2の上面2bとの間に、粉体層の1層分の厚みの間隔が設けられる。
【0077】
図12Bにおいて粉体層の1層分の厚みuは、典型的には、0.1mm〜0.2mm程度であるが、この範囲より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0078】
図12Cに示すように、図12Cにおいてローラ16が反時計回りに回転しつつ、白抜きの矢印の方向に移動することにより、供給部10から供給された粉体4が搬送される。ここで、ローラ16の回転方向は、ローラ16を回転自在にして(ローラ16の回転軸にかかる回転力をフリーにして)白抜きの矢印の方向に移動させたとしたときに、ローラ16と造形部20との摩擦によりローラ16が回転するであろう方向に対して逆の方向である。このようなローラ16の回転により粉体4が搬送されることで、造形部20の硬化層及び未硬化の粉体層の上面に設けられた間隔に粉体4が充填されて、均一に均された粉体層が形成される。
【0079】
図12Dに示すように、ローラ16が造形部20を通過して、過剰な量の粉体4を排出路部材31から排出する。そしてローラ16が待機位置まで戻る動作と連動するように、プリントヘッド41がプリントヘッド移動機構46の駆動により移動しながら、着色された画像を描くようにインクを吐出する。この場合、粉体層に水性インク(カラーインク及び透明インク)が浸透し、インクが吐出された部分の粉体4が互いに接着され、硬化層(結合層)が形成される。
【0080】
粉体を硬化させる(結合させる)ためには、プリントヘッド41は、上記のようにバインダーを含む透明インクを吐出する。つまり、着色されたインク(CMYインク)が吐出された領域と同じ領域に、透明インクが吐出されることにより、着色された粉体の硬化層が形成される。
【0081】
なお、着色しない硬化層を形成する場合、プリントヘッド41は、透明インクのみを造形可能領域に選択的に吐出すればよい。
【0082】
なお、ローラ16が粉体4を搬送し終えて待機位置に戻った後に、プリントヘッド41は移動を開始し、インクの吐出を開始させてもよい。しかし、上記のように、ローラ16の戻り動作の時間帯とヘッドの移動動作の時間帯とが重なることにより、処理時間を短縮することができる。
【0083】
プリントヘッド41が待機位置まで戻ると、図12Aに示す状態に戻り、1層分の着色された硬化物が形成される。造形装置100は、以上のような動作を繰り返すことにより、硬化層が積層されて造形物が形成されていく。
【0084】
このように造形装置100による造形処理後、造形装置100とは別の、図示しない加熱装置により造形物が加熱されることで、さらに硬度の高い造形物を得るようにしてもよい。
【0085】
(造形装置における造形処理後の動作)
次に、造形装置100による造形処理後、主に、ボックス21が造形装置100から取り外される時の動作を説明する。図13は、その動作を示すフローチャートである。
【0086】
造形処理の終了後、作業者が搬送台車150を移動させて、フォーク153を造形装置100の所定の位置まで挿入する(ステップ200)。フォーク153の挿入前に、作業者はフォーク153の位置を下げておいてもよい。フォーク153が挿入されると、昇降シリンダ28が作動して、ボックス21の本体23が下降することで、ボックス21が搬送台車150のフォーク153上に載置される(ステップ201)。この場合、本体23がステージ22に対して下降する。そして、昇降機構50が、ステージ22が本体23の最下部に位置するまで昇降アーム52を下降させる(ステップ202)。
【0087】
クランプ機構56が、クランプ力を解除し、昇降アーム52を最下部まで下降させる(ステップ203)。
【0088】
作業者は、運搬台車のフォーク153を造形装置100から引き抜き(ステップ204)、ボックス21を保持した搬送台車150をそのまま後述の除粉装置300へ運搬する(ステップ205)。
【0089】
[除粉装置]
【0090】
次に、除粉装置について説明する。
【0091】
(除粉装置の構成)
図14は、除粉装置の外観を示す斜視図である。図15は、この除粉装置の模式的な断面図である。
【0092】
除粉装置300は、支持フレーム301と、支持フレーム301上に設けられた除粉室320と、除粉室320の下部に設けられ支持フレーム301内に配置された機構室360とを備えている。例えば、図14に示すように、除粉装置300の前方には、除粉処理後に造形物を除粉装置300から取り出すロボット160が配置されている。ロボット160の形態は、図14に示すような人型に限られず、あらゆる形態に置き換え可能である。
【0093】
除粉室320は、例えば透明なアクリル等を有するカバー325を有する。カバー325の前方側は、上下方向に開閉可能なドア326として形成されている。カバー325には、静電気を帯びた粉体が取り付いたりして視認性を妨げないように、静電防止処理が施されている。
除粉室320には、図15に示すようにガスブロー用のノズル328が設けられている。ノズル328は、図15に示すように複数設けられていてもよい。ガスとしては典型的には空気が用いられるが、窒素等の不活性ガスが用いられてもよい。ノズル328は、ガスを収容したタンクに、ポンプ及びバルブ等(図示せず)を介して接続されている。少なくともノズル328が、除粉処理機構として機能する。
【0094】
機構室360には、ボックス21、これを着脱可能に保持するボックス保持機構340、及び、ステージ22を昇降移動させるステージ移動機構350が配置されている。ボックス21は、造形装置100に装着されていたボックス21である。上記のように、造形装置100から搬送台車150により運搬されて来たボックス21が、この除粉装置300に装着される。
【0095】
機構室360の背面には、除粉室320内に飛散する主に未結合の粉体4を排出する排出ダクト361が接続されている。排出ダクト361には、図示しないが、真空ポンプ及び、粉体4を回収して収容する回収容器等が接続されている。排出ダクト361は、除粉室320にも、あるいは、除粉室320のみに接続されていてもよい。ノズル328の他、排出ダクト361も除粉処理機構の一部として機能する。
【0096】
ボックス保持機構340は、造形装置100におけるボックス保持機構40と実質的に同様の構造及び機能を有するので、その説明を省略する。
【0097】
ステージ移動機構350は、造形装置100における造形部20の昇降機構50と実質的に同様の構造及び機能を有する。しかしながら、ステージ移動機構350は、ステージ22を支持して昇降できる構造であれば、昇降機構50と同様の構造を有していなくても、どのような構造であってもよい。
【0098】
除粉室320と機構室360とは、パンチメタルのような多数の穴324aを有する区画部材324により区画されている。区画部材324には、ボックス21の外形または内径に対応する形状の開口部324bが設けられている。ボックス21は、ボックス保持機構340に支持された状態で、ボックス21の本体23の上部がその開口部324bに挿入されるか、または、開口部324bの周囲に当接するようになっている。
【0099】
区画部材324の開口部324bの周囲に、図5に示したようなガイドフレームが設けられ、このガイドフレームがボックス保持機構340の一部として機能してもよい。
【0100】
支持フレーム301には、この機構室360を覆うような壁を形成する部材が取り付けられ、支持フレーム301内の領域をほぼ密閉できるようになっている。この部材には、ボックス21を保持した搬送台車150のフォーク153が挿入可能な窓が設けられている。
【0101】
(除粉装置の動作)
作業者が、造形物を収容したボックス21を保持した搬送台車150を、除粉装置300の、ボックス保持機構340に装着する。この装着方法は、造形装置100でのボックス21の装着方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0102】
図16に示すように、ステージ移動機構350の昇降アーム352が、所定の高さ分上昇する。所定の高さとは、例えば、ボックス21内に上下方向に複数段で複数の造形物4’が配置されている場合に、実質的にその1つ分の造形物4’の高さである。図16では、その1段ごとの高さを、破線で区切って図示している。このような昇降アーム352によるステージ22の上昇により、本体23の開口23a(図4A、B参照)を介して最上段にある造形物4’がボックス21外に押し出される。
【0103】
そして、ノズル328からガスが噴出し、造形物4’の周囲にある主に未結合(未硬化)の粉体4が、造形物4’から離れて飛散する。つまり、未結合の粉体4が造形物4’から除去される。このような除粉処理中は、真空ポンプによる排気が連続的に行われている。これにより、粉体4は、排出ダクト361を介して回収容器に収容される。
【0104】
ボックス21内の最上段の造形物4’の除粉処理が終了すると、図17に示すように、除粉室320のドア326が開き、ロボット160がその造形物を除粉室320から取り出して、それらを図示しない収容ボックスに収容する。このロボット160による造形物4’の取り出し時に、排出ダクト361を介しての排気動作は停止されてもよいし、あるいはそのまま連続的に作動されてもよい。
【0105】
ロボット160による最上段の造形物4’の取り出し作業が終了すると、除粉室320のドア326が閉まり、また、ステージ移動機構350の昇降アーム352が、さらに所定の高さ分上昇する。そして、最上段の造形物4’と同様に、ボックス21内の2段目の造形物4’の周囲の粉体が除去される。
【0106】
除粉装置300は、このような動作を、ボックス21内に収容された造形物4’の段数分、繰り返し行う。
【0107】
ロボット160によって造形物4’が取り出されると、ボックス21が除粉装置300から取り外される。ボックス21の、除粉装置300からの取り外し方法は、造形装置100でのボックス21の取り外し方法と同様であるので、その説明を省略する。
【0108】
作業者は、空のボックス21を保持した搬送台車150から、その空のボックス21を取り出すか、または、空のボックス21を保持した搬送台車150を所定の位置に運搬する。
【0109】
以上のように、本実施形態では、造形装置100により形成された造形物を収容するボックス21ごとに、除粉装置300により未結合の粉体が除去されるので、造形装置100の内部が粉体4で汚れる、といった問題を解決することができる。つまり、本技術のような着脱可能なボックス21を用いない、一般的な粉体ラピッドプロトタイピング装置においては、作業者が、ボックスから粉体に埋もれた造形物を取り出す際に、粉体が周りに拡散し、未結合の粉体でその造形部(プリントヘッドやそれを動かす移動機構等)を汚す、といった問題があった。しかし、本技術ではこのような問題を解決することができる。
【0110】
本実施形態では、ステージ移動機構350がボックス21に設けられたステージ22を上昇させることで、本体23の開口23aから造形物4’がボックス21外に押し出される。これにより、ボックス21の上部で未結合の粉体4を除去することができる新たな除粉装置300を提供することができる。
【0111】
本技術と対比される参考例に係る造形装置では、ボックスの下方側から未結合の粉体を自重で落とすようにして排出していた。このような装置では、そのボックスから作業者が造形物を取り出し、除粉作業を手作業で行う必要があり、非常に手間がかかっていた。
【0112】
また、ボックス内に複数の造形物が形成される場合であって粉体が一度に排出されるような造形装置(本技術と対比される参考例に係る造形装置)では、複数の造形物が順序や配列がばらばらになっていた。このような状況の下では、例えば複数の造形物の形状が似通ってはいるが、多少異なる場合、作業者にとってそれら造形物の識別が困難となる。
【0113】
また、そのように粉体が一度に排出される場合、それら造形物が転がったり、造形物同士がぶつかったりするため、造形物の破損(割れ、欠け、崩れ)するおそれがある。
【0114】
本技術によれば、複数段で収容された造形物4’が、一段ずつ押し出されて除粉が行われることにより、例えば、ボックス内の未結合の粉体が一度に除去される場合に比べ、複数の造形物4’を個別に識別可能にしつつ、これら造形物4’を上から順に取り出すことが可能となる。したがって、参考例に係る造形装置が含んでいる上記のような問題をすべて解決することができる。
【0115】
本実施形態では、複数のボックス21を用意することにより、除粉装置300による、それらボックスのうち第1のボックス内の造形物についての除粉処理の間に、造形装置100により第2のボックス内の造形物についての造形処理を行うことができる。このような造形システムは、例えば造形処理部と除粉処理部とが一体となった装置とは異なり、造形処理を中断する時間を短くすることができ、造形物の生産性を高めることができる。その結果、造形処理のコストも抑えることができるようになる。
【0116】
また、造形装置100及び除粉装置300が別体の装置であることにより、それぞれの装置のメンテナンスを独立して行うことができる。
【0117】
[除粉処理の制御方法]
【0118】
上記したように、除粉装置300は、造形物のサイズに応じてステージ22を1段ごとに上昇させて除粉を行う。このような技術を実現するために、造形システムは次のように構成されればよい。
【0119】
例えば、造形装置100の制御ユニット60と除粉装置300(の図示しない制御ユニット)とが無線または有線で通信可能に接続される。除粉装置300は、制御ユニット60から、造形の対象物のCTデータ、またはそのCTデータに基づく造形物の3次元形状データを取得する。3次元形状データには、その造形物のサイズ及び形状のデータが含まれるので、除粉装置300の制御ユニットは、それらのデータに基づいて、除粉処理を制御することができる。
【0120】
除粉処理の制御とは、例えば、ノズル328からのガスの噴出流量、噴出時間、ステージ22の上昇速度(または上昇の仕方)、ノズル328の選択個数、ノズル328の配置及び姿勢等のうち、少なくとも1つを制御することである。
【0121】
例えば、ボールネジ機構、ラックアンドピニオン機構、その他ギア機構等、ノズル328の配置及び姿勢を変えることが可能な駆動機構が設けられることにより、その配置及び姿勢が制御可能となる。
【0122】
例えば除粉装置300は、造形物の複雑な形状部分(第1の表面積を持つ部分)の除粉処理について、それより単純な形状部分(第1の表面積より小さい第2の表面積を持つ部分)の除粉処理に比べ、長い時間となるようにまたは流量を多くするように、その除粉処理を制御することもできる。
【0123】
あるいは、除粉装置300は、造形装置100からの3次元形状データを取得する方法に代えて、または、それに加えて、ボックス21ごとにそのボックスを個別に識別する識別子が、ボックス21に設けられていてもよい。識別子としては、例えばICタグまたは情報コード(バーコードや2次元情報コードなど)を含む。これにより、除粉装置300は、そのボックス21ごと、あるいはそのボックス21内に収容されている造形物ごとに、除粉処理を制御することができる。
【0124】
除粉装置300の上記の説明では、ボックス21内に複数の造形物が収容されている例を説明した。しかし、ボックス21内に1つの造形物が収容されている場合であっても、昇降アーム352がステージ22を段階的(断続的)に上昇させながら、ノズル328からの連続的または断続的なガスの噴出によって、その造形物4’の周囲の未結合の粉体4が除去されればよい。あるいは、昇降アーム352がステージ22を連続的に上昇させながら、未結合の粉体4が除去されてもよい。このように、ステージ22が連続的に上昇される場合でも、除粉装置300は、上述のように3次元形状データに応じて、そのステージ22の上昇速度を可変に制御することもできる。
【0125】
[その他の実施形態]
【0126】
本技術は、以上説明した実施形態に限定されず、他の種々の実施形態を実現することができる。
【0127】
上記実施形態に係るクランプ機構56として電磁クランプが用いられた。しかし、クランプ機構として、静電容量によりクランプ力を発生する機構、あるいは機械的な係合によりクランプ力を発生する機構が用いられてもよい。
【0128】
上記ボックス保持機構40、340における主要部分の機構として流体圧シリンダが用いられたが、これに代えて、ボールネジ、ラックアンドピニオン、あるいはベルト等の機構が用いられてもよい。
【0129】
昇降機構50、70等の昇降部材として、上記実施形態ではL字形状の昇降アームを例に挙げたが、このような形態に限られず、昇降部材はロッド状等、どのような形態を有していてもよい。
【0130】
ボックスの形状は、上記実施形態のような四角筒状に限られず、三角筒、五角形以上の筒、あるいは、円筒、楕円筒、これらのうち少なくとも2つの組み合わせ、あるいは、その他の任意の形状でもよい。
【0131】
上記ボックス保持機構40、340に設けられたストッパー83の配置の代わりとして、ボックス21の上端側の上昇を規制する位置に設けられストッパー83が配置されていてもよい。あるいは、ストッパー83がなく、昇降シリンダ28の上死点に対応するボックス21の位置が、ボックス保持機構40、340によるボックス21の保持位置(装着位置)とされてもよい。
【0132】
上記実施形態では、造形装置100及び除粉装置300は別体であるとしたが、これらは一体となって設けられていてもよい。
【0133】
あるいは、造形装置100及び除粉装置300が一体及び別体に関わらずインラインで配置され、自動の搬送装置が、造形装置100及び除粉装置300の間で、ボックス21を搬送するような造形システムにも本技術を適用可能である。自動の搬送装置としては、例えばRGV(Rail Guided Vehicle)、あるいはPGV(Personal Guided Vehicle)のようなAGV(Automatic Guided Vehicle)がある。
【0134】
自動の搬送装置としては、例えばアームアンドハンドのような、車輪を持たない搬送装置であってもよい。この場合、造形装置100及び除粉装置300は、このような車輪を持たない搬送装置とともに一体的な装置として構成されてもよい。
【0135】
造形物の3次元形状データのうち少なくとも造形物のサイズに応じて、複数の異なるサイズの容積を持つボックスが用意されてもよい。例えば、造形装置100の制御ユニット60は、小さい造形物を形成する場合、それに対応した小さいボックスを選択し、そのボックスを用いて造形処理を行うことで、すべて同じ容積を持つボックスを用いる場合に比べ、粉体の使用量を節約することができる。この場合、ボックスの外形及びその外形のサイズは、複数のボックスで実質的に同じでよく、それらの容積が異なるように、各ボックスが形成されていればよい。
【0136】
粉体として、上記した材料の他、金属や樹脂であってもよい。金属粉が用いられる場合、焼結により金属粉を結合(硬化)させることができる。造形可能領域にある金属粉を選択的に焼結させるためには、レーザーが用いられる。
【0137】
また、磁性を持つ金属粉が用いられる場合であって、クランプ機構56として上記実施形態のような電磁クランプが用いられる場合、ステージ22の上面と下面(裏面)との間で磁界を遮断する磁気シールドが設けられていればよい。
【0138】
上記昇降機構50は、ステージ22を本体23に対して昇降移動させたが、本体23をステージ22に対して昇降移動させてもよい。除粉装置300のステージ移動機構350も、ステージ22を本体23に対して昇降移動させたが、本体23をステージ22に対して昇降移動させてもよい。この場合、ステージ移動機構350は、ボックス21の下端部が区画部材324付近の高さ位置するように設置され、その状態から、本体23を徐々に下降させていけばよい。
【0139】
上記実施形態では、造形装置100の制御ユニット60と、除粉装置300(の制御ユニット)とが通信可能に接続されていたが、例えばサーバーとなるコンピュータが、造形装置100及び除粉装置300に通信可能に接続され、このコンピュータが造形装置100及び除粉装置300を管理してもよい。
【0140】
以上説明した各形態の特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を組み合わせることも可能である。
【0141】
本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)ボックス保持機構と、
本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられたボックスと、
前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する供給機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる昇降機構と
を具備する造形装置。
(2)(1)に記載の造形装置であって、
前記昇降機構は、昇降駆動される昇降部材と、前記昇降部材が前記ステージをクランプするためのクランプ機構とを有する
造形装置。
(3)(2)に記載の造形装置であって、
前記クランプ機構は、電磁石を利用してクランプを行う
造形装置。
(4)(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の造形装置であって、
前記ボックスは、前記本体の側面に設けられた被支持部材を有し、
前記ボックス保持機構は、昇降可能に設けられた、前記被支持部材を下方から支持する支持部材を有する
造形装置。
(5)(4)に記載の造形装置であって、
前記ボックス保持機構は、前記支持部材により支持された前記被支持部材が当接するストッパーを有する
造形装置。
(6)(1)から(5)のうちいずれか1つに記載の造形装置であって、
前記ボックスは、前記ステージの周囲に装着されたシール部材を有する
造形装置。
(7)ボックス保持機構と、
開口を有する本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられ、ラピッドプロトタイピング技術により粉体を用いて形成された造形物を、未結合の粉体とともに前記ステージ上に配置させるように、前記造形物及び未結合の粉体を収容可能なボックスと、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に上昇移動させることが可能なステージ移動機構と、
前記ステージ移動機構の駆動により前記開口を介して押し出された前記造形物の周囲の前記未結合の粉体を除去する除粉処理機構と
を具備する除粉装置。
(8)造形装置であって、
ボックス保持機構と、
本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられたボックスと、
前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する供給機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる昇降機構とを含む造形装置と、
除粉装置であって、
前記ボックスを着脱可能に保持するボックス保持機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に上昇移動させることが可能なステージ移動機構と、
前記ステージ移動機構の駆動により前記ボックスの前記開口を介して押し出された前記造形物の周囲の未結合の粉体を除去する除粉処理機構とを含む除粉装置と、
搬送装置であって、
前記造形装置と前記除粉装置との間で、前記ボックスを搬送する搬送装置と
を具備する造形システム。
(9)本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有するボックス内に、粉体を収容し、
造形装置において、前記ボックス内で、ラピッドプロトタイピング技術により前記粉体を材料とした造形物を形成し、
前記ボックスを前記造形装置から取り外し、
前記取り外されたボックスを除粉装置に装着し、
前記除粉装置により、前記造形物の周囲の未結合の粉体を除去する
造形物の製造方法。
【符号の説明】
【0142】
4’…造形物
4…(未結合の)粉体
20…造形部
21…ボックス
22…ステージ
23…本体
23a…開口
23c…側面
24…被支持部材
27…支持部材
28…昇降シリンダ
29…シール部材
40…ボックス保持機構
41…プリントヘッド
46…プリントヘッド移動機構
50…昇降機構
52…昇降アーム
56…クランプ機構
83…ストッパー
150…搬送台車
300…除粉装置
320…除粉室
340…ボックス保持機構
350…ステージ移動機構
360…機構室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックス保持機構と、
本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられたボックスと、
前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する供給機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる昇降機構と
を具備する造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の造形装置であって、
前記昇降機構は、昇降駆動される昇降部材と、前記昇降部材が前記ステージをクランプするためのクランプ機構とを有する
造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の造形装置であって、
前記クランプ機構は、電磁石を利用してクランプを行う
造形装置。
【請求項4】
請求項1に記載の造形装置であって、
前記ボックスは、前記本体の側面に設けられた被支持部材を有し、
前記ボックス保持機構は、昇降可能に設けられた、前記被支持部材を下方から支持する支持部材を有する
造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の造形装置であって、
前記ボックス保持機構は、前記支持部材により支持された前記被支持部材が当接するストッパーを有する
造形装置。
【請求項6】
請求項1に記載の造形装置であって、
前記ボックスは、前記ステージの周囲に装着されたシール部材を有する
造形装置。
【請求項7】
ボックス保持機構と、
開口を有する本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられ、ラピッドプロトタイピング技術により粉体を用いて形成された造形物を、未結合の粉体とともに前記ステージ上に配置させるように、前記造形物及び未結合の粉体を収容可能なボックスと、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に上昇移動させることが可能なステージ移動機構と、
前記ステージ移動機構の駆動により前記開口を介して押し出された前記造形物の周囲の前記未結合の粉体を除去する除粉処理機構と
を具備する除粉装置。
【請求項8】
造形装置であって、
ボックス保持機構と、
本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有し、粉体を収容可能であり、前記ボックス保持機構に着脱可能に設けられたボックスと、
前記粉体を結合させるための液体を、前記ボックス内の造形可能領域に選択的に供給する供給機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に昇降させる昇降機構とを含む造形装置と、
除粉装置であって、
前記ボックスを着脱可能に保持するボックス保持機構と、
前記ステージを、前記本体内で、前記本体に相対的に上昇移動させることが可能なステージ移動機構と、
前記ステージ移動機構の駆動により前記ボックスの前記開口を介して押し出された前記造形物の周囲の未結合の粉体を除去する除粉処理機構とを含む除粉装置と、
搬送装置であって、
前記造形装置と前記除粉装置との間で、前記ボックスを搬送する搬送装置と
を具備する造形システム。
【請求項9】
本体と、前記本体に移動可能に設けられたステージとを有するボックス内に、粉体を収容し、
造形装置において、前記ボックス内で、ラピッドプロトタイピング技術により前記粉体を材料とした造形物を形成し、
前記ボックスを前記造形装置から取り外し、
前記取り外されたボックスを除粉装置に装着し、
前記除粉装置により、前記造形物の周囲の未結合の粉体を除去する
造形物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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