説明

造影剤のインサイチュ過分極

本発明は、概して造影剤において、造影剤が被験体に導入された後に過分極を誘導するための組成物、システムおよび方法に関する。本発明の方法は、非ゼロスピン核およびゼロスピン核を含む固体造影剤を含む被験体を提供する工程と、該被験体から該固体造影剤を除去することなく該非ゼロスピン核の少なくとも一部を過分極する工程とを包含する。また、この固体造影剤は、129Xe、29Si、31P、19F、15N、13C、11Bおよび10Bからなる群より選択される非ゼロスピン核を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の情報
この出願は、2005年12月10日に出願された米国出願第60/748,857号への優先権を主張する。この出願はまた、2006年1月11日に出願された米国出願第60/758,245号への優先権を主張する。この出願はまた、2006年3月16日に出願された米国出願第60/783,202号への優先権を主張する。これらの出願の全体の内容は、参考として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
磁気共鳴映像法(MRI)システムは一般に、加えられた外部磁場における原子核の磁気モーメントの歳差運動(precession)を検出することによって、被験体内の領域の診断的な画像化を提供する。画像化を可能にする空間的な選択性は、準静的な場において核の歳差運動の周波数に対して、加えられた高周波(rf)振動磁場の周波数をマッチさせることによって達成される。準静的な加えられた場において制御された勾配を導入することによって、この被験体の特定の切片が選択的に共振され得る。複数の方向でこれらの勾配を制御し、そしてrf共鳴場のパルスされた適用を制御する種々の方法によって、核歳差運動の種々の特性を示す三次元画像が、検出され得、これによって、核の密度、それらの環境、およびそれらの緩和過程についての情報が得られる。加えられた準静的磁場の振幅およびrf周波数の適切な選択により、種々の核が画像化され得る。
【0003】
代表的には、MRIの医学的適用では、画像化されるのは水素原子の核、すなわち、プロトンである。当然ながら、これは単なる可能性ではない。目的の核を囲む環境についての情報は、緩和過程をモニタリングすることによって得ることが可能で、これによって核の歳差運動が、ティッピングパルス(tipping pulse)の後に準静的場とならぶように戻る核運動方向の緩和によって(タイムスケールT1)、または加えられたrf周波数に対してより急速なまたはより遅い歳差を生じる環境的な効果に起因する歳差の位相散逸(dephasing)によって(タイムスケールT2)鈍くなる。従来のMRI造影剤、例えば、ガドリニウム化合物に基づく造影剤は、プロトンのTIまたはT2緩和過程を局所的に変更することによって、機能する。代表的には、これは、プロトンの局所磁気環境を変更する、造影剤の磁気特性に依拠する。この場合、画像がこれらの緩和時間のいずれかを、この被験体における位置の関数として提示する場合、この造影剤の位置は、画像中で際立ち、これによって診断情報が得られる。コントラスト促進はまた、オーバーハウザー効果を利用することによっても達成され、ここでは常磁性造影剤における電子遷移は、内因性の核(例えば、プロトン)画像化の核スピンシステムにカップリングされる。このいわゆるオーバーハウザー増強磁気共鳴映像法(Overhauser−enhanced magnetic resonance imaging(OMRI)技術は、画像化された核の分極を増大し、これによって獲得されたシグナルを増幅する。
【0004】
MRI画像化に対する別のアプローチは、被験体に造影剤を導入することであり、その核自体が、上記の技術によって画像化される。すなわち、身体における内因性のプロトンの局所環境に影響して、それによってプロトン画像におけるコントラストを提供するのではなく、内因性の造影剤がそれ自体画像化される。このような造影剤としては、原子および分子物質が挙げられ、これは非ゼロスピン核、例えば、He、129Xe、31P、29Si、13Cなどを有する(例えば、特許文献1を参照のこと)。これらの物質における核は、この因子における核の大きい画分を配向する、種々の方法(光学的方法、または室温もしくは低温で相当な大きさの加えられた磁場を用いる方法を含む)によってエキソビボで分極され得る。次いで、この過分極された物質が身体に導入される。一旦身体に入れば、造影剤の高い程度の分極に起因して強力な画像化シグナルが得られる。また、身体からは小さいバックグラウンドシグナルしか存在しない。なぜならこの造影剤は、身体中でプロトンを励起しない共振周波数を有するからである。例えば、特許文献2は、MRIのための過分極希ガスの使用を開示する。
【0005】
過分極されたMRIの多くの提唱された造影剤は、短いスピン格子緩和(spin−lattice relaxation)(T1)時間を有し、このため、この材料はこの過分極する装置から身体へ急速に移され、そして身体への導入後に極めて素早く、しばしば、10秒程度のタイム・スケールで画像化される必要がある。多数の適用について、T1より長い時間で造影剤を用いることが所望される。ガスに比較して、固体または液体の物質は通常、それらの過分極を急速に失う。従って、過分極された物質は代表的にはガスとして用いられる。例えば、特許文献3は、数分間のT1時間を提供するという、過分極ガスを用いる磁気共鳴画像化を得る方法を開示する。しかし、過分極ガスがその磁気方向を失うことを防ぐことさえまた、特定の適用では困難である。例えば、特許文献4は、接触誘発性のスピン緩和を最小限にしながら、Heおよび129Xeガスを収集して輸送するための特別な容器の使用を開示している。特許文献5は、129XeガスまたはHeガスを超微粒気泡中に提供し、次いでこれを身体に導入する工程を開示する。このガスは、このガスのT1時間を増大する目的のために超微粒気泡中に提供される。しかし、このようなガスのスピン格子弛緩時間はやはり限られている。
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0171928号明細書
【特許文献2】米国特許第5,545,396号明細書
【特許文献3】米国特許第6,453,188号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0009126号明細書
【特許文献5】米国特許第6,488,910号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、核磁気共鳴画像化法の間に緩和時間を設計するのにおいて、より大きい柔軟性が得られる造影剤が必要である。詳細には、既に利用可能な時間よりも長いT1時間を有する過分極可能な造影剤が必要である。さらにまたはあるいは、インサイチュで過分極される造影剤、および造影剤をインサイチュで、すなわち被験体に導入された後に、過分極し得るのに伴う方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の要旨
本発明は一般に、被験体に導入された後の造影剤において核過分極を導入する(すなわち、インサイチュの過分極)ための組成物、システムおよび方法に関する。造影剤は、非ゼロスピン核およびゼロスピン核の両方を含む固体状態の材料である。1局面では、この固体造影剤はまた、不対電子を含み、そして非ゼロスピン核は、加えられた磁場内にこの被験体を置くこと、およびこの被験体に貫通しかつ不対電子において電子スピン遷移を励起する放射線をこの被験体に照射することによって過分極される。別の局面では、この不対電子は、投与の時点では存在しないが、放射線(これも被験体に貫通する)の第二の供給源を用いて光学的に生成される。
【0008】
本発明は、図面のいくつかの図を参照して記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の特定の実施形態の説明
本出願は、特許、特許出願および文献を含む公表書類を指す。これらの公表された書類の各々は、参照によって本明細書に援用される。
【0010】

本発明は一般に、造影剤が、被験体に導入された後、それらの造影剤において核過分極を誘導するための組成物、システムおよび方法に関する。本出願を通じて、簡略な言及である「インサイチュの過分極(in situ hyperpolarization)」を用いて、この概念を捉える。対照的に、それらが被験体に導入される前に造影剤を過分極する工程を包含する先行技術の方法は、「エキソビボ過分極(ex vivo hyperpolarization)」という簡略な言及を与えられる。背景のセクションで考察されるとおり、造影剤のエキソビボの過分極は、核スピン緩和から生じる多数の制限を被る。実際、核スピン緩和の結果として、過分極因子の投与とシグナル獲得との間で利用可能な時間は、T1時間によって限定される。より長いT1時間を有する造影剤の開発によって、投与と獲得との間の潜在的なウインドウを長くすることにより、この問題の部分的な解決が得られる。しかし、インサイチュで造影剤を過分極する能力によってこの制限は完全に取り除かれる。従って、インサイチュの過分極を用いれば、未分極の造影剤を、被験体に導入し得、次いで数時間、数日、数週間または数年後でさえ過分極し得る。これは、T1時間内に被験体の所望の領域(例えば、腫瘍)に達することができない造影剤については特に有用である。さらに、このユーザーは、過分極と獲得との間の遅れを減じてもよいし、または無くしてさえよく、それによってその獲得されたシグナル強度を増強する。インサイチュの過分極はまた、過分極および獲得サイクルを複数回繰り返す能力を切り開く。特定の実施形態では、これは、シグナル平均化によってシグナル強度をさらに増強するために用いられ得る。他の実施形態では、これは、造影剤の空間的進行を経時的にモニターするために用いられてもよい。
【0011】
造影剤
本発明のインサイチュの過分極方法は、固体状態の造影剤で行われる。液体および固体は代表的には、短い緩和時間(T1)を有するが、本発明者らは、長いT1時間を有する特定の固体材料が製造され得ること、およびこれらの材料が、過分極可能な造影剤として用いられ得ることを発見している。例えば、図1は、ミクロン−スケールの粉末を含む、種々のケイ素材料についてのT1時間の測定を示す。示されるとおり、1時間より長いT1時間が、種々の材料で達成され得る。本発明の方法は、長いT1時間を有する材料の調製および使用が可能であるが、本発明はこのような材料には限定されないことが理解されるべきである。従って、一般には、本発明の材料は、1分より短いT1時間を有しても、1分より長いT1時間を有しても、10分より長いT1時間を有しても、30分より長いT1時間を有しても、1時間より長いT1時間を有しても、2時間より長いT1時間を有しても、またはさらに4時間より長いT1時間を有してもよい。
【0012】
本発明の固体材料としては、非ゼロスピン核およびゼロスピン核(例えば、限定はしないが、28Si、12Cなど)の両方が挙げられる。特定の実施形態では、この非ゼロスピン核は、スピン1/2核(例えば、限定はしないが、129Xe、29Si、31P、19F、15N、13C、3Heなど)である。しかし、他の非ゼロスピン核、例えば、限定はしないが、スピン−3核である10B、および/またはスピン−3/2核である11Bが用いられてもよい。この固体材料は、種々の非ゼロスピン核の混合物を含み得る。この固体材料はまた、種々の非ゼロスピン核の混合物を含んでもよい。
【0013】
この固体材料内のゼロスピンおよび非ゼロスピン核の相対的な濃度は使用者によって仕立てられ得ることが理解されるべきである。1実施形態では、ゼロ−スピン核の濃度は、非ゼロスピン核の濃度よりも大きい。例えば、非ゼロスピン核の濃度は、固体材料における核の総濃度の50%未満であっても、40%未満であっても、30%未満であっても、20%未満であっても、10%未満であっても、5%未満であっても1%未満であっても、または0.1%未満であってさえよい。別の実施形態では、非ゼロスピン核の濃度は、ゼロ−スピン核の濃度よりも大きい。例えば、ゼロスピン核の濃度は、固体材料における核の総濃度の50%未満であっても、40%未満であっても、30%未満であっても、20%未満であっても、10%未満であっても、5%未満であっても1%未満であっても、または0.1%未満であってさえよい。特定の実施形態では、特定の元素の種々の同位体がほぼ天然存在度のレベルで存在してもよい。あるいは、その固体材料は、特定の同位体について富化されても、または枯渇されてもよい。このような材料を調製するための方法は、例えば、Agerら,J.Electrochem.Soc.152:G488,2005に記載されており、ここでは同位体的に富化されたケイ素を調製するための方法が記載される。
【0014】
1局面では、固体材料は、核スピンを有さない原子物質と非ゼロスピン核を有する原子物質との混合物を含んでもよい。例えば、28Siおよび12Cは、核スピンを有さないが、129Xe、29Si、31P、19F、15N、13Cおよび3Heは、スピン−1/2核を有する。1実施形態では、この材料は、同位体28Si(ゼロ−スピン、約92.2%)、29Si(スピン−1/2、約4.7%)および30Si(ゼロ−スピン、約3.1%)の天然存在度の混合物を有するケイ素核を含む。別の実施形態では、29Siのレベルは、その天然存在度レベルよりも高く、例えば、約4.7%、5%、7%、10%、20%、30%、40%またはさらに50%よりも高い。さらに別の実施形態では、29Siのレベルは、その天然の存在度レベルよりも低く、例えば、約4.7%、4%、3%、2%、1%、0.5%またはさらに0.1%より低い。ケイ素同位体のレベルを変化してケイ素材料(例えば、ケイ素またはシリカ)を調製するための方法は、コンピューター産業について開発されており、そして当該分野で周知である。例えば、Haller,J.Applied Physics 77:2857,1995を参照のこと。別の実施形態では、この材料は、同位体12C(ゼロ−スピン、約98.9%)および13C(スピン−1/2、約1.1%)の天然存在度の混合物を有する炭素核を含む。別の実施形態では、13Cのレベルは、その天然存在度のレベルよりも高く、例えば、約1.1%、2%、5%、10%、20%、30%、40%またはさらに50%より高い。なお別の実施形態では、13Cのレベルは、その天然存在度のレベルより低く、例えば、約1.1%、1%、0.8%、0.6%、0.4%、0.2%またはさらに0.1%より低い。種々のレベルの炭素同位体で炭素材を調製するための方法も、当該分野で公知であり、例えば、Graebnerら、Applied Physics Letters,64:2549,1994を参照のこと。
【0015】
一般には、本発明の材料は、非ゼロスピン核およびゼロ−スピン核の任意の組合せを含んでもよい。29Siおよび13Cを例示的な非ゼロスピン核と鑑み、本発明は、核および材料の以下の例示的な組み合わせを含む造影剤を包含する:ケイ素(Si)材料(例えば、天然存在度のケイ素、29Si富化ケイ素または29Si欠失ケイ素)中の29Si;シリカ(SiO)材料(例えば、天然存在度シリカ,29Si富化シリカ、または29Si欠失シリカ)中の29Si:炭化ケイ素(SiC)材料中の29Siおよび/または13C;炭素材(例えば、ダイアモンドまたはフラーレン)中の13C;ケイ素(Si)材料(例えば、亜リン酸ドープしたケイ素)中の31P;ケイ素(Si)材料(例えば、ホウ素ドープしたケイ素)中の10Bまたは11B;など。1実施形態では、本発明の材料は、非ゼロスピン核を組み込む内包フラーレン(endohedral fullerenes)を含む。例えば、本発明の材料は、15N@60C、15N@80Cなどの内包フラーレンを含んでもよい(15N@の印は、コア15N核を有する内包フラーレンを示す)。15Nは、スピン−1/2核だけでなく、また本発明のインサイチュの過分極方法を容易にするフリーのスピンも有する。129Xeおよび3Heは、内包フラーレン内に組み込まれてもよい他の例示的な核である。これらの内包フラーレンは、当該分野の方法、例えば、Fatourosら、Radiology 240:756,2006に基づいて調製されてもよく、この方法は、金属内包フラーレン(endohedral metallofullerene)粒子を調製するための方法を記載する。
【0016】
この固体材料は、任意の形態であってもよい。特定の実施形態では、この固体材料は、乾燥粒子形態であってもよい。例えば、この固体材料は、10nm〜10μmの範囲の寸法を有する粒子を含む粉末の形態であってもよい。特定の実施形態では、この粒子は、10nm〜1μmの範囲の寸法を有してもよい。他の実施形態では、この粒子は、10〜100nmの範囲の寸法を有してもよい。特定の実施形態では、この粒子は、投与の目的で組み合わされて、圧縮されても(例えば、錠剤の形態で)よいし、そして薬学的に受容可能なキャリア(例えば、結合剤、潤滑剤、充填剤など)を含む他の成分とともに処方されてもよいということが理解される。あるいは、この固体材料は、同じ範囲の寸法を有する粒子を有する懸濁物の形態であってもよい(例えば、図2を参照のこと)。この懸濁物の液体は、水性であっても、または非水性であってもよく、そして懸濁物を安定化する成分(例えば、サーファクタント)および薬学的に受容可能なキャリアを含んでもよい。本明細書において用いる場合、「薬学的に受容可能なキャリア(pharmaceutically acceptable carrier)」という用語は、非毒性、不活性固体、半固体または液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料または任意のタイプの処方補助剤を意味する。Remington’s Pharmaceutical Sciences 編集者Gennaro,Mack Publishing,Easton,Pa.,1995は、薬学的組成物を処方するのに用いられる種々のキャリアおよびそれらを調製するための公知の技術を開示する。着色料、コーティング剤、甘味料、香味料および芳香剤ならびに防腐剤もまた、本発明の固体材料に含まれてもよい。一般には、あるキャリアが用いられる場合、これは1つ以上の投与経路、標的組織の位置、送達されている造影剤、造影剤の送達の時間経過などに基づいて選択される。
【0017】
一般には、造影剤は、任意の公知の投与経路を用いて過分極の前に被験体に投与されてもよい。例えば、造影剤は、粉末、錠剤、カプセル、懸濁液などの形態で経口的に投与されてもよい。造影剤はまた、粉末またはスプレーの形態で吸入によって投与されてもよい。あるいは、造影剤の懸濁物は、組織に、または直接循環に注射(例えば、静脈内に、皮下に、筋肉内に、腹腔内になど)されてもよい。直腸、膣および局所(粉末、クリーム、軟膏またはドロップなどによる)投与もまた包含される。
【0018】
特定の実施形態では、投与される造影剤は、インサイチュの過分極および検出の前に被験体内の特定の位置に達するために十分な時間を与えられる。1セットの実施形態では、その造影剤は、インサイチュの過分極の時点で被験体の内腔内に存在する。これは、胃腸の空間(例えば、腸、小腸、大腸など)であっても、またはその被験体の気道であってもよい。他の実施形態では、その造影剤は、インサイチュの過分極の時点でその被験体の循環内に存在する。さらに他の実施形態では、その造影剤は、インサイチュの過分極の時点でその被験体の組織内に存在する。
【0019】
特定の実施形態では、固体材料の粒子は、標的化因子であって、特定の細胞タイプ(例えば、腫瘍細胞)または組織タイプ(例えば、特定の細胞表面レセプターを発現する神経組織)にそれらを指向させる標的化因子を含むように改変されてもよい。これらの改変された造影剤は、目的の細胞または組織タイプを含む被験体の領域で濃くなる。これらの改変された造影剤の適切な標的化には、目的の部位で十分な濃度を可能にするために投与後に数時間または数日間を必要とし得る。数分間またはさらに数時間という程度でT1時間を示す造影剤によるエキソビボの過分極方法は、このような適用には不十分であり得る。インサイチュで造影剤を過分極するための方法を提供することによって、本発明は、それらのT1時間に無関係にこれらの標的化材料の画像化を可能にする。
【0020】
この標的化因子は、共有結合または非共有結合(例えば、リガンド/レセプタータイプの相互作用)によって粒子と会合され得る。1実施形態では、表面のパターン化は、標的化因子と本発明の粒子との間の非共有結合を促進するために用いられ得る。あるいは、標的化因子と共有結合または非共有結合を形成する表面部分を生成するために本発明の粒子の表面を化学的に官能化するには、多数の合成方法が存在する。例えば、Bhushanら、Acta Biomater.1:327,2005は、生体分子とケイ素粒子表面との会合のための化学結合体化および表面パターン化の両方の方法を記載する。Shirahataら,Chem.Rec.5:145,2005は、単層を用いるケイ素表面の化学的修飾、およびこれらの層と生体分子を会合するための方法を記載する。Nakamuraら,Ace.Chem.Res.36:807,2003;Pantarottoら、Mini Rev.Med.Chem.4:805,2004;およびKatzら、Chemphyschem 5:1084,2004によって、炭素フラーレンを官能化し、それによってそれらと生体分子とを会合するための方法の概説が得られる。
【0021】
十分な安定性および特異性を有する任意のリガンド/レセプター対が、標的化因子を粒子と会合するために使用され得ることも理解されるべきである。一般には、このリガンド/レセプター相互作用は、標的化因子の早期放出を妨げるために十分に安定であるべきである。1例をあげるだけだが、標的化因子は、ビオチンと共有結合されてもよく、そして粒子表面はアビジンで化学的に修飾されてもよい。次いで、アビジンに対するビオチンの強力な結合によって、標的化因子および粒子の会合が可能になる。Ahmedら、Biomed. Microdevices 3:89,2004は、ケイ素粒子についてのこのアプローチを記載する。Capaccioら、Bioconjug.Chem.16:241,2005は、このアプローチを炭素フラーレンについて記載する。一般には、可能性のあるリガンド/レセプター対としては、抗体/抗原、タンパク質/補因子(co−factor)および酵素/基質の対が挙げられる。ビオチン/アビジンに加えて、これらとしては、例えば、ビオチン/ストレプトアビジン、FK506/FK506−結合タンパク質(FKBP)、ラパマイシン/FKBP、サイクロフィリン/サイクロスポリンおよびグルタチオン/グルタチオントランスフェラーゼという対が挙げられる。他の適切なリガンド/レセプター対は、当業者によって理解される。
【0022】
種々の適切な標的化因子が当該分野で公知である(例えば、Cottenら、Methods Enzym. 217:618,1993;Garnett,Adv.Drug Deliv.Rev.53:171,2001を参照のこと)。例えば、標的細胞の表面上の抗原に結合する任意の多数の異なる因子が使用され得る。標的細胞表面抗原に対する抗体は一般に、標的抗原に必須の特異性を示す。抗体に加えて、適切な免疫反応性フラグメント、例えば、Fab、Fab’またはF(ab’)フラグメントがまた使用されてもよい。標的化因子を形成するのにおける使用に適切な多くの抗体フラグメントが既に、当該分野で利用可能である。同様に、標的細胞の表面上の任意のレセプターについてのリガンドが、標的化因子として適切に使用され得る。これらとしては、所望の標的細胞の表面で見出されるレセプター(例えば、タンパク質または糖タンパク質)に特異的に結合する、天然または合成の、任意の低分子または生体分子(ペプチド、脂質およびサッカライドを含む)が挙げられる。
【0023】
インサイチュの過分極方法
一般には、本発明のインサイチュの過分極方法は、本発明の造影剤を含む被験体を提供する工程と、その被験体から造影剤を取り出すことなくその因子の非ゼロスピン核の少なくとも一部を過分極する工程とを包含する。
【0024】
1局面では、造影剤は、不対電子を含む。これらの電子における電子スピン遷移は、被験体に貫通し得る放射線によって励起される。1実施形態では、この不対電子は、n型またはp型の不純物のいずれかを用いて本発明の造影剤をドープすることによって提供される。ドーパントの存在は、T1時間を短くするだけだなく、温和にする。例えば、種々のレベルのn型またはp型の不純物でドープされた純粋なケイ素における29SiのT1時間は、ShulmanおよびWyluda,Phys.Rev.103:1127,1956において検討された。29SiのT1時間は、移動性のキャリア濃度が1×1014〜1×1019に調節された場合に数時間から数分に及んだ。N型の不純物は、T1時間に対してより大きい影響を有した。任意の不純物のタイプまたはレベルが用いられ得ることが理解される。特定のレベルの不純物を選択する場合、使用者は、より長期のT1時間と、分極および緩和の適切な組み合わせを達成するための過分極の容易さとの間の競合を均衡させる必要がある。ある適用では、長期のT1時間を好み、これにより不純物のレベルを低くする。他の適用では、T1に対して感度を低くし、これによって、より高い不純物レベルを耐容する。本発明の本発明の固体材料における正確な濃度のドーパントは容易に商業的に入手可能であり(例えば、Virginia Semiconductor of Fredericksburg,VAより)、または半導体の当該分野で公知の方法を用いて作成されてもよい(例えば、Haller,J.Applied Physics 77:2857,1995を参照のこと)。
【0025】
本発明のこの局面において造影剤として用いられ得る例示的かつ非限定的な材料としては、PドープまたはB−ドープされたケイ素が挙げられる。いずれの場合も、29Si核が過分極されかつ画像化され得る。Pドープのケイ素によって、不対電子および非ゼロスピン31P核(スピン−1/2)の両方が得られる。特定の実施形態では、31P核は過分極されて、画像化のために用いられ得る。ホウ素は2つの安定な同位体である10B(スピン−3、20%の天然存在度)および11B(スピン−3/2、80%の天然存在度)を有し、これはまた過分極されて画像化されてもよい。11Bは、高いNMR受容性という利点を有し(従って、同じ分極密度についてより高いシグナル)、これが、1/2より高いスピンでの機能の不利な点を相殺し得る。
【0026】
上記で注記されるとおり、本発明のこの局面の本発明の材料内の不対電子の存在によって、強力な核電子カップリングという理由で、T1時間は減る。結果として、核間カップリング(例えば、29Si核の間)が弱いほど、T1に対する効果が少ない。このような実施形態では、材料におけるゼロ−スピン核のレベルは、T1時間に影響が小さいかもしれず、そしてより高濃度の非ゼロスピン核(例えば、29Siまたは13C)を有する造影剤は、最大シグナル強度を生成するために有益に用いられ得る。例えば、PドープまたはBドープのケイ素材料では、28Siおよび30Siの合わせた濃度は、この材料における核の総濃度の50%未満であっても、40%未満であっても、30%未満であっても、20%未満であっても、10%未満であっても、5%未満であっても1%未満であっても、またはさらに0.1%未満であってもよい。
【0027】
一旦、ドープされた造影剤が、被験体に対して投与されれば、過分極は、加えられた磁場内にこの被験体を配置すること、そしてこの被験体を貫通し、かつ不対電子において電子スピン遷移を励起する周波数を有する放射線で被験体を照射することによって達成される。特定の実施形態では、この放射線は、f±fの範囲内の周波数fを有し、ここでfは不対電子のラーモア回転数であり、fは非ゼロスピン核のラーモア回転数である。この範囲内の放射線の正確な周波数に依存して、不対電子のESR(電子スピン共鳴)スペクトルの線幅(linewidth)、および関与する電子核カップリング、放射線によって生じる電子分極は、1つ以上のDNP(動的核分極(dynamic nuclear polarization))機構(すなわち、オーバーハウザー効果、固体効果および/または熱混合)によって非ゼロスピン核に移動される。
【0028】
造影剤内の過分極された核は今や、非ゼロスピン核のスピン遷移を励起するために適切な放射線を用いて検出され得る。特定の実施形態では、この検出工程は、過分極工程よりも異なる(例えば、より高い)磁場で行われてもよい。1実施形態では、この加えられた磁場は、2つの工程の間で調節され得る。あるいは、この被験体は、2つの場の間で物理的に運動され得る。必要に応じて、この核スピンシグナルはまた、任意の公知のMRI技術を用いて造影剤の空間的分布を造影するために用いられ得る。例えば、MRI、Practice 編集Westerbrookら、Blackwell Publishing,Oxford,UK,2005を参照のこと。有利には、インサイチュの過分極とそれに続くシグナル獲得のサイクルは、造影剤が被験体内に存在する限り反復されてもよい。これによって、造影剤が検出されることが可能になり、そして必要に応じて時間内に種々のポイントで画像化されることが可能になる。
【0029】
1セットの実施形態では、この被験体は動物、例えば、哺乳動物である。例示的な哺乳動物としては、ヒト、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ネコ、イヌ、霊長類およびウサギが挙げられる。1実施形態では、その被験体はヒトである、ヒト身体を含む、動物の身体は、特定の閾値(fmax)より大きい周波数を有する放射線に対しては不貫通である。ヒトについては、この閾値は、約1GHzである。動物被験体に貫通してそれによって造影剤の不対電子内で電子スピン遷移を励起するために、従って放射線はfmax未満の周波数fを有する必要がある。ヒトについては、これは、約1GHz未満、例えば、750MHz未満、500MHz未満、400MHz未満、300MHz未満、200MHz未満、またはさらに100MHz未満でさえある。この周波数要件は、造影剤における電子有効性g因子(electron effective g−factor)には依存せず、そして加えられた磁場BがB<Bmax=hfmax/(gμ)を満たすという低い磁場要件に移行し、ここでhはプランク定数であり、gは材料のg−因子であり、そしてμはBohr磁子である。これは、代表的な磁場スケールをミリテスラ(millitesla)範囲で設定する。例えば、約300MHzという電子共鳴周波数は、10mTという加えられた磁場に移行する。従って、放射線周波数fは、ほとんどの動物被験体について約1GHz〜100MHz未満に及んでもよいが、加えられた磁場Bは、約35mT〜約3mT未満にわたる必要がある。この方法によって、ミリテスラの加えられた磁場で画像化が可能になるので、既存のテスラスケール(tesla−scale)のMRIシステムに比較して大きな費用削減が実現され得る。特定の実施形態では、この被験体は、低い磁場で過分極された後にテスラスケールのMRIシステム内で画像化され得る。
【0030】
別の局面では、本発明のインサイチュの過分極方法は、不対電子のインサイチュでの作成に依拠する。これらの方法は、既に被験体内にある本発明の造影剤に対して光学的なアクセスを可能にする透過性の周波数ウインドウ(transparent frequency window)を利用する。ヒトを含むほとんどの動物被験体は、約600〜1000nmまたは約1〜2eVにおよぶ波長について、近赤外領域においてこのような透明な窓を有する(例えば、Vlietら、J.Biomed.Opt,4:392,1999を参照のこと)。適切な造影剤は、この透過性のウインドウ内の波長でエネルギーを吸収し、そして吸収されたエネルギーの結果として不対電子を生じる。例えば、造影剤がケイ素を含む場合、ケイ素のバンドギャップ(約1.1eV)を超えるそして透過性のウインドウの上限(約2eV)を下回る照射波長は、この被験体を貫通し、そして造影剤によって吸収されて、不対電子を生じ、これが造影剤の非ゼロスピン核を過分極するために用いられ得る。特定の実施形態では、この照射波長は、約1.2〜1.8eVという、またはさらに約1.4〜1.6eVという範囲内である。これらの特性内の任意の本発明の材料は、本発明のこの局面で用いられ得る。例えば、他の適切な材料としては、IRフィルターシリカを含む赤外エネルギーを吸収する特定の形態のシリカが挙げられる(例えば、Schott North America,Inc. of Elmsford,NYのSchott RG1000フィルター、またはMaxMax of Carlstadt,NJから入手できるXNite BP2フィルター)。
【0031】
別の実施形態によれば、ハイブリッド材料は、ケイ素のような材料の代わりに用いられてもよく、過分極可能な核および赤外吸収の両方を提供する。適切なハイブリッド材料は、貫通する赤外エネルギーを吸収する第一の材料と、過分極可能な核を有する第二の材料とを含む。例えば、この第一の材料は、ケイ素であってもまたは適切なシリカ(例えば、IR−フィルターシリカ)であってもよい。この第二の材料は、本発明の造影剤の組成物(すなわち、ゼロ−スピン核および非ゼロスピン核の混合物)を有し、かつ任意の上述の造影剤から選択され得る。一般には、この第一および第二の材料は、ハイブリッド造影剤内に均一に分布されても、または不均一に分布されてもよい。電子は、2つの材料の間で、貫通する近赤外線の存在下で流れる。この放射が切られるとき、この材料は、お互いと独立して効率的である。それらは電気的に一緒に接続されないので、電子は散逸する。従って、特定の実施形態では、この第一の吸収材料は、第二の過分極可能材料から物理的に分離され得る。例えば、1実施形態では、この第一および第二の材料は、それぞれ粒子のシェルおよびコアとして配列されてもよい。あるいは、この第一および第二の材料は、同心性であってもまたは並行であってもよい、複数の隣接する層として配列されてもよい。
【0032】
一旦、不対電子が透過性のウインドウ内の照射の結果として作成されれば、f±f(上記されるとおり)の範囲内の電子および核共鳴周波数での差におけるオーバーハウザー励起が、これらの光学的に励起された電子の分極をインサイチュで核状態まで移行する電子状態で行われ得る。
【0033】
造影剤内の過分極核は、非ゼロスピン核のスピン遷移を励起する適切な放射線を用いてここで検出され得る。特定の実施形態では、この検出工程は、過分極工程とは異なる(例えば、より高い)磁場で行われてもよい。1実施形態では、この加えられた磁場は、2工程の間で調節され得る。あるいは、この被験体は、2つの磁場の間で物理的に動かされ得る。必要に応じて、この核スピンシグナルはまた、任意の公知のMRI技術を用いて造影剤の空間分布を画像化するために用いられ得る。例えば、MRI in Practice Westerbrookら編集、Blackwell Publishing,Oxford,UK,2005を参照のこと。有利には、インサイチュ過分極とその後のシグナル獲得のサイクルは、造影剤が被験体内に存在する限り、反復され得る。これによって、造影剤が検出され、かつ必要に応じて時間内の種々のポイントで画像化されることが可能になる。
【0034】
インサイチュの過分極を行うためのシステム
本発明はまた、上述の近赤外透過性のウインドウに基づいてインサイチュ過分極を行うための新規なシステムを提供する。一般には、このシステムは、(a)加えられた磁場を生じ得るデバイスと;(b)被験体に貫通し得かつインサイチュの造影剤内で不対電子を生成し得る放射線の第一の供給源と;(c)この第一の供給源によって生成されている加えられた磁場で不対電子を分極するための放射線の第二の供給源とを備える。1実施形態では、このシステムは、(a)約1〜100mTの範囲で加えられた磁場を生成し得るデバイスと;(b)約1〜2evの範囲でエネルギーを有する造影剤中で不対電子を生成するための放射線の第一の供給源と;(c)約50MHz〜3GHzの範囲の周波数を有する第一の供給源によって生成される不対電子を分極するための放射線の第二の供給源とを備える。特定の実施形態では、このデバイスは、加えられた磁場を約3〜35mT、例えば、約10〜25mTという範囲で生じる。特定の実施形態では、この第一の供給源は、約1.2〜1.8eV、例えば、約1.4〜1.6eVの範囲でエネルギーを有する放射線を生じる。特定の実施形態では、この第二の供給源は、約100MHz〜1GHz、例えば、約300MHz〜約700MHzの範囲で周波数を有する放射線を生じる。1実施形態では、この第二の供給源の周波数は、電子ならびに/または電子および核スピン遷移の両方を、造影剤内の加えられた磁場で励起し、それによって動的な核分極を駆動するように調整される。Subramanianら、NMR Biomed.17:263,2004は、100mT未満の加えられた磁場を生じるための適切なデバイスを備えるOMRIシステム、および3GHz未満の放射線供給源(すなわち、放射線の第二の供給源)に対してこれらをカップリングするための方法を記載する。ここで、本発明のシステムはさらに、被験体に貫通し得、かつ造影剤内の不対電子をインサイチュで生成し得る放射線の供給源(すなわち、放射線の第一の供給源)を備える。以前に注記されるとおり、1セットの実施形態では、この供給源は、約1〜2eVの範囲でエネルギーを有する放射線を生じた。種々の適切な供給源が、当該分野で公知であり、これには種々の近赤外供給源が挙げられる。
【0035】
本発明のシステムは、さらなる成分を含み得ることが理解される。詳細には、このシステムは、造影剤の核分極を検出するための成分を含み得る。これは代表的には、造影剤内に存在する1つ以上の非ゼロスピン核の周波数に調整されている1つ以上のデバイスの形態(例えば、コイル)であってもよい(例えば、129Xe、29Si、31P、19F、15N、13C、3Heなど)。1実施形態では、このシステムは、29Siスピン遷移を検出するたのデバイスを包含する。別の実施形態では、このシステムは、13Cスピン遷移を検出するためのデバイスを備える。この核分極の検出は、約1〜100mTの範囲の加えられた磁場のもとで行われてもよい(すなわち、低磁場検出)。あるいは、このシステムは、より高磁場、例えば、1〜10Tを生じ得るデバイスを備えてもよく、そして核分極は、約1〜10Tの範囲で加えられた磁場のもとで検出され得る。本発明のシステムは、MRI装置と通常接続されている他の構成要素をさらに備えてもよい。例えば、このシステムは、適切な位置(例えば、加えられた磁場((単数または複数)内)に被験体を保持するため、そしてこのシステムにまたはこのシステム内にこの被験体を物理的に動かすためのデバイスを備えてもよい。このシステムはまた、画像化目的のための磁場勾配を生じるためのデバイスを備えてもよい。このシステムはまた、種々の成分を制御するため、そして各々の成分へまたは各々の成分からデータシグナルを処理するための分光計を備えてもよい(例えば、被験体内の造影剤の画像を生じるために)。
【0036】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、本明細書の考察または本明細書に開示される本発明の実施から当業者に明白である。本明細書および実施例は例示としてのみ解釈され、本発明の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示されるということが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、ミクロン−スケールの粉末を含む、種々のケイ素材についてのT1時間の測定を示すグラフである。示されるとおり、1時間より長いT1時間が種々の材料において達成され得る。
【図2】図2は、粒子10の懸濁物を含む造影剤の1実施形態の略図である(標的化因子を含むように必要に応じて改変される)。この粒子は注射によって被験体に投与され、かつそれらがその標的部位に達した後にインサイチュで過分極され得る。各々の粒子内で、非ゼロ核スピン30を担持するホスト材料原子20の濃度、および不対電子40を提供する不純原子の濃度は、その材料が合成されるとき制御され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
非ゼロスピン核およびゼロスピン核を含む固体造影剤を含む被験体を提供する工程と;
該被験体から該固体造影剤を除去することなく該非ゼロスピン核の少なくとも一部を過分極する工程と;
を包含する、方法。
【請求項2】
前記固体造影剤が、129Xe、29Si、31P、19F、15N、13C、11Bおよび10Bからなる群より選択される非ゼロスピン核を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固体造影剤が29Si核を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固体造影剤が13C核を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記固体造影剤が28Si核を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記固体造影剤が12C核を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記固体造影剤が28Si核を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記固体造影剤が12C核を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記29Si核が天然存在度のレベルで存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記29Si核が天然存在度のレベルより低く存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記29Si核が天然存在度のレベルより高く存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記固体造影剤が29Si核をケイ素材料中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記固体造影剤が、29Si核をシリカ材料中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記固体造影剤が、29Siおよび/または13C核を炭化ケイ素材料中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記固体造影剤が、13C核を炭素材中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記固体造影剤が、31P核をケイ素材料中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記固体造影剤が、10Bおよび/または11B核をケイ素材料中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記固体造影剤が、15N核を炭素材中に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記炭素材が内包フラーレンである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
非ゼロスピン核のT1時間が1時間よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記固体造影剤が前記被験体に粒子の形態で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記粒子が10nmから10μmの範囲の寸法を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記粒子が、10nmから1μmの範囲の寸法を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記粒子が、10nmから100nmの範囲の寸法を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記固体造影剤が、粒子の懸濁物の形態で前記被験体に投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記被験体が動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体が哺乳動物である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記被験体が、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ネコ、イヌ、霊長類およびウサギからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記提供する工程が、前記固体造影剤を前記被験体に投与する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記固体造影剤が経口的に投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記固体造影剤が吸入によって投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記固体造影剤が注射によって投与される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
請求項30に記載の方法であって、前記提供する工程がさらに、過分極の工程を行う前に、前記固体造影剤が前記被験体内の特定の位置に達するようにさせるために十分な時間待つ工程を包含する、方法。
【請求項35】
前記固体造影剤が、過分極の時点で前記被験体の内腔内に存在する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記固体造影剤が、過分極の時点で前記被験体の胃腸内に存在する請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記固体造影剤が、過分極の時点で前記被験体の気道内に存在する請求項34に記載の方法。
【請求項38】
前記固体造影剤が、過分極の時点で前記被験体の循環系内に存在する請求項34に記載の方法。
【請求項39】
前記固体造影剤が、過分極の時点で前記被験体の組織内に存在する請求項34に記載の方法。
【請求項40】
請求項1に記載の方法であって、
前記固体造影剤が前記被験体内に存在する間、前記過分極した非ゼロスピン核を検出する工程、をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
前記被験体内の前記固体造影剤の空間分布が磁気共鳴画像化によって画像化される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記被験体から前記固体造影剤を除去することなく、過分極工程および検出工程を少なくとも1回反復する、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
前記被験体内の固体造影剤の空間分布が経時的にモニターされる、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
過分極および検出の前記工程が同じ磁場で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
過分極および検出の前記工程が、異なる磁場で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
前記生物体が、2つの異なる磁場の間で物理的に動かされる、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
過分極および検出の前記工程が調節可能な磁場源を用いて行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記固体造影剤が、細胞の表面上に存在する抗原と結合する標的化因子と会合される、請求項1に記載の方法。
【請求項49】
前記標的化因子が、前記細胞の表面に存在する抗原についての抗体または抗体の免疫反応性フラグメントである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記標的化因子が、リガンドであり、かつ前記細胞の表面上に存在する前記抗原が該リガンドについてのレセプターである、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
請求項1に記載の方法であって、前記固体造影剤が、不対電子を含み、かつ過分極の前記工程が:
加えられた磁場内に前記被験体を配置する工程と;
該被験体に貫通しかつ該不対電子において電子スピン遷移を励起させる放射線を用いて該被験体を照射する工程と、
を包含する、方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、前記放射線が、f±fの範囲で周波数fを有し、fが前記不対電子のラーモア回転数であり、かつfが前記非ゼロスピン核のラーモア回転数である、方法。
【請求項53】
前記固体造影剤が、n型の不純物でドープされる、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記固体造影剤が、p型の不純物でドープされる、請求項51に記載の方法。
【請求項55】
前記固体造影剤が、亜リン酸でドープされたケイ素を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項56】
前記固体造影剤が、ホウ素でドープされたケイ素を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項57】
前記放射線が、約1GHzより低い周波数を有し、かつ前記加えられた磁場が約35mTより低い、請求項51に記載の方法。
【請求項58】
前記放射線が、約100〜750MHzの範囲の周波数を有する、請求項51に記載の方法。
【請求項59】
前記加えられた磁場が約3〜25mTの範囲である、請求項51に記載の方法。
【請求項60】
前記被験体が、1GHzより大きい周波数を有する放射線に対して不透明体である、請求項51に記載の方法。
【請求項61】
請求項1に記載の方法であって、前記過分極工程が、
加えられた磁場内に前記被験体を配置する工程と;
該被験体を貫通する放射線の第一の形態を該被験体に照射する工程であって、放射線の該第一の形態のエネルギーおよび前記固体造影剤の組成は、放射線の該第一の形態が該固体造影剤内で不対電子を生じるような、工程と、
を包含する、方法。
【請求項62】
放射線の前記第一の形態が、約1〜2eVの範囲のエネルギーを有する、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
放射線の前記第一の形態が、約1.2〜1.8eVの範囲のエネルギーを有する、請求項61に記載の方法。
【請求項64】
放射線の前記第一の形態が、約1.4〜1.6eVの範囲のエネルギーを有する、請求項61に記載の方法。
【請求項65】
前記固体造影剤が、ケイ素を含む、請求項61に記載の方法。
【請求項66】
放射線の前記第一の形態が、約1.2eVより大きいエネルギーを有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記固体造影剤がシリカを含む、請求項61に記載の方法。
【請求項68】
前記過分極工程がさらに、
前記被験体に貫通し、かつ前記不対電子において電子スピン遷移を励起する放射線の第二の形態で該被験体を照射する工程、を包含する、請求項61に記載の方法。
【請求項69】
放射線の前記第二の形態が、約1GHzより低い周波数を有し、かつ前記加えられた磁場が約35mTより低い、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
放射線の前記第二の形態が、約100〜750MHzの範囲の周波数を有する、請求項68に記載の方法。
【請求項71】
前記加えられた磁場が約3〜25mTの範囲である、請求項68に記載の方法。
【請求項72】
請求項61に記載の方法であって、前記固体造影剤が、不対電子を生成するための放射線の前記第一の形態を吸収する第一の材料と、非ゼロスピン核およびゼロスピン核を含む、第二の材料とを含むハイブリッド材料である、方法。
【請求項73】
前記第一の材料がケイ素を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第一の材料が、n型の不純物でドープされたケイ素を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記第一の材料が、p型の不純物でドープされたケイ素を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項76】
前記第一の材料が、亜リン酸でドープされたケイ素を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項77】
前記第一の材料が、ホウ素でドープされたケイ素を含む、請求項72に記載の方法。
【請求項78】
前記第一の材料が、シリカを含む、請求項72に記載の方法。
【請求項79】
前記第一および第二の材料が、前記固体造影剤内に均一に分布される、請求項72に記載の方法。
【請求項80】
前記第一および第二の材料が、前記固体造影剤内に不均一に分布される、請求項72に記載の方法。
【請求項81】
前記第一の材料が、前記第二の材料のコアを囲むシェルを形成する、請求項72に記載の方法。
【請求項82】
前記第一および第二の材料が、隣接する層として配置される、請求項72に記載の方法。
【請求項83】
前記第二の材料の非ゼロスピン核のT1時間が1時間より大きい、請求項72に記載の方法。
【請求項84】
被験体に存在しているままで固体造影剤を過分極するためのシステムであって:
磁場を生成し得るデバイスと;
被験体に貫通し得、かつ該固体造影剤内で不対電子を生成し得る、放射線の第一の供給源と;
放射線の該第一の供給源によって生成されている加えられた場で不対電子を分極するための放射線の第二の供給源と;
を備える、システム。
【請求項85】
請求項84に記載のシステムであって、前記デバイスが、加えられた場を約1〜100mTの範囲で生じ;放射線の前記第一の供給源が、約1〜2eVの範囲のエネルギーを有し;放射線の前記第二の供給源が、約50MHz〜3GHzの範囲の周波数を有するシステム。
【請求項86】
前記デバイスが、加えられた場を約3〜35mTの範囲で生じる、請求項85に記載のシステム。
【請求項87】
前記デバイスが、加えられた場を約10〜25mTの範囲で生じる、請求項85に記載のシステム。
【請求項88】
放射線の前記第一の供給源が、エネルギーを約1.2〜1.8eVの範囲で有する、請求項85に記載のシステム。
【請求項89】
放射線の前記第一の供給源が、エネルギーを約1.4〜1.6eVの範囲で有する、請求項85に記載のシステム。
【請求項90】
放射線の前記第二の供給源が、周波数を約100MHz〜1GHzの範囲で有する、請求項85に記載のシステム。
【請求項91】
放射線の前記第二の供給源が、周波数を約300MHz〜約700MHzの範囲で有する、請求項85に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−518440(P2009−518440A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−544583(P2008−544583)
【出願日】平成18年12月11日(2006.12.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/047205
【国際公開番号】WO2007/070466
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(505061964)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (11)
【Fターム(参考)】