説明

造影剤の調製方法

本発明は、pHの該反応環境を監視する必要なく、適当なアルキル化剤および塩基の存在下で起こるカルボキシメチル化反応による、式(I)の化合物の調製方法に言及する。式(I)の化合物は、MRI技術の診断用造影剤の調製において有用な中間体である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は核磁気共鳴画像法(MRI)のための診断用造影剤の調製方法に関するもので、より具体的には、それは常磁性金属イオンを配位することができる中間化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRIは、診断の分野において、水プロトンの空間位置を特定することによりヒトまたは動物体内の異なる組織または器官を視覚化して識別する目的で施用される核磁気共鳴技術である。
いくつかのMRI造影剤が、当該技術分野において知られており、ガドベン酸ジメグルミン塩と称される常磁性MRI造影剤があり、それはまた、GdBOPTA-Dimeg(MultiHance登録商標、ブラッコイメージングS.p.A製)の名称で引用される。
GdBOPTA-Dimegの一般参照として、例えば、EP-A-230893、Invest. Radiol., (1990), 25 /Suppl. 1), S59-S60; および C. de Haen et al. Journal of Computer Assisted Tomography 1999, 23(Suppl.1):S161-168を参照する。
ガドベン酸ジメグルミンは常磁性MRI造影剤であり、常磁性ガドリニウムイオンが、キレート剤であるBOPTAが該ガドリニウムイオンGd(III)の周囲に高度に安定な配位球体を形成することにより、錯体を形成し、さらにN-メチルグルカミン(この後者はまたメグルミンと呼ばれる)により塩化される。
このMRI造影剤は他の既知のガドリニウム錯体以上に緩和能特性を有することを特徴とし、そのためそれは診断の分野において特に有利である。
例としては、原発性肝癌(例えば肝細胞癌)または転移性疾患と判明したまたは疑わしい患者において局所的な肝臓障害の発見のために適応される。
加えて、それはまた、異常な血液脳関門 または脳、脊椎および関連組織の異常な血管分布を伴う障害を視覚化するために、成人の中枢神経系のMRIに適応される。
【0003】
該ガドリニウムイオンを配位する該配位子(一般にBOPTAと称される)は、4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-酸であり、下式(I):
【化1】

を有する。
【0004】
式(I)のキレート剤BOPTAの合成は、以下のスキーム:
【化2】

に従って示すことができる。
この合成は本質的に、ジエチレントリアミン(DETA)を2-クロロ-3-フェニルメトキシプロピオン酸により、水の存在下、温度50℃にて選択的にモノアルキル化し、続いて該得られた化合物を単離し、樹脂を通して精製し、式(II)のN-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-O-(フェニルメチル)セリンを塩酸塩として得る方法である。
引続く工程において、該中間体(II)をブロモ酢酸により、水中で、温度50℃およびpH10にてカルボキシメチル化する。ついで、該得られた粗生成物を単離し、樹脂を通して精製した後、式(I)の固体化合物、BOPTAを得る(得られる全収率は21%)。
上記合成プロセスおよびその操作条件の一般参照として、例として、EP-A-230893およびInorg. Chem., 1995, 34(3), 633-42を参照する。
【0005】
改良方法について、国際特許出願WO 00/02847は、BOPTAのDETAからの調製(この後者を2-クロロ-3-(フェニルメトキシ)プロピオン酸カリウム塩によりアルキル化することを含む)を開示する。
続いての中間体(II)のブロモ酢酸によるカルボキシメチル化反応工程を、塩基性pHおよび温度55℃にて行う。
具体的には、塩基を添加してpH値を11〜12の範囲内に維持しながら、ブロモ酢酸を、例えばアルカリカルボン酸塩として存在する式(II)の前駆体の水溶液にゆっくり加える。
上記操作条件によって該反応を達成することができ、式(I)の化合物を得ると同時に不要な副生成物の過剰な形成を避けることができる。
事実、低いpHレベルでは、四級アンモニウム塩の形成が所望の最終化合物である式(I)の形成と競合しうる。
反対に、カルボキシメチル化工程の間にpH値が高いときは、臭素置換に対するヒドロキシ(OH-)基の競合のために、大量のブロモ酢酸が必要である。さらに、高いpH値では、該ベンジルオキシプロピオン酸部の分解が生じうる。
従って、種々のpH条件によって、かなりの量の副生成物が該反応の過程間に生じ、よって、該方法の収率および最終化合物(I)の純度に関して顕著な減少が起こるうる。
それ故、該反応はpH値に対して敏感であるため、WO 00/02847の上記カルボキシメチル化工程は、両方の反応物質、すなわちブロモ酢酸および塩基を正確に添加を行うことによって、該反応の全過程の間に所望の塩基性pH値に維持して行われる。
【0006】
概して、工業規模において、pH反応環境に影響する反応物質の好適な用量を知る手段は例えば、pH計の使用が知られている。
従って、上記の副生成物の形成を避けることを目的として、上記カルボキシメチル化反応において、ブロモ酢酸および該塩基の添加をコントロールして行うために、pH計を使用することができる。
しかしながら、pHの軽微な変化がかなりの量の副生成物および不純物を形成するために最終化合物の調製の収率を低くしうるため、不正確な電極pH測定が上記反応物質の添加を調節ために使用されたときは、確実に顕著な不利益および制限となる。
この点において、上記温度およびアルカリ度の操作条件下で、該反応の全過程の間にpH測定を可能とするpH電極の必要性は最も重要である。
例えば水酸化ナトリウムの使用のために大量のナトリウムイオンの場合には、その存在はpH電極の測定に緩衝することが知られており、正確で信頼性ある該反応媒質のpH測定の上記必要性はさらにより重要となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題と課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概要
本発明に従って、式(I)のBOPTAの改良された調製方法が発見された。これは、式(II)の該上記中間体のカルボキシメチル化工程を、該反応が完了するまで該反応媒質のpHを監視し、従って反応物質の添加量をコントロールする必要なく、行うものである。
【0008】
従って、本発明第一の目的は、下記スキーム:
【化3】

に従い、式(II)のN-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-O-(フェニルメチル)セリンまたはそのカルボン酸アルカリ塩を、式(III):
XCH2COOH (III)[式中、Xはハロゲン原子である]
の化合物と、塩基の存在下に反応させる、式(I)の化合物の調製方法であり:
a) 第一工程において、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを、同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、温度範囲約10℃〜約30℃にて、式(II)の化合物の水溶液に加え; および
b) 第二工程において、該反応混合物を温度範囲約30℃〜約60℃まで加温し、適宜、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを該反応混合物に、同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、該反応が完了するまで加える、
ことを特徴とする。
【0009】
本発明の方法は、いずれの工程も相当に簡易化および標準化された手順により行われるため、特に工業規模で有利である。
加えて、式(III)の化合物および該塩基の添加の間に該反応のpHを継続的に監視(例えば使用の性能が低下する、または潜在的に低下することが知られているpH電極によって)する必要なしに操作できることが特に有利である。
重要なことは、本発明の方法は、式(I)のキレート化合物を著しく高収率また高純度で得ることができる。
【0010】
本発明の詳細な説明
本発明の方法に従った式(I)の化合物の調製は、式(III)の化合物(式中、Xはハロゲン原子、特に臭素または塩素原子である)を用いて行われる。好ましくは、式(III)の化合物はブロモ酢酸である。
この後者のアルキル化剤を用いるとき、ブロモ酢酸水溶液の濃度は、好ましくは少なくとも30重量%で使用され、さらにより好ましくは約80重量%で使用される。
【0011】
概して、該塩基は、水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)からなる群から選択される。
好ましくは、該カルボキシメチル化反応は、水酸化ナトリウム水溶液の存在下で行われる。さらにより好ましくは、約30重量%の水酸化ナトリウム水溶液を用いる。
【0012】
式(II)の出発物質は既知であり、既知の方法、例えば先に報告されたDETAの2-クロロ-3-(フェニルメトキシ)プロピオン酸カリウム塩によるアルキル化を介する方法(例えば上記の国際特許出願WO 00/02847を参照)に従って、容易に調製することができる。この後者の場合において、そのようにして得られた式(II)の化合物の水溶液は、本発明の方法において、単離しさらに精製する必要なく、そのように使用することができる。
先に報告されたように、該カルボキシメチル化反応は、(II)の水溶液について、好ましくは、カルボン酸アルカリ塩として、さらにより好ましくは、カルボン酸ナトリウム塩として行う。
【0013】
特別の規定のない限り、(II)の水溶液中、該化合物は、適当な濃度で存在する。例として、適当な濃度は、少なくとも10重量%であり、さらにより好ましくは、約20%〜約50重量%であり、このパーセンテージは、例えばWO 00/02847により三塩酸塩に基づき計算する。
上記から、当業者にとって明らかなように、式(II)の出発物質および他の反応物質の濃度は、プラントのディメンション性能(dimensionability)、従ってその生産性に厳格に関連するため、本発明の方法のスケールアップにおいて最も重要である。
【0014】
本発明の方法に従って、式(III)および(II)の化合物間のモル比は、基質(II)のモル当たり、アルキル化化合物(III)が少なくとも4モルである。
好ましくは、前記モル比(III):(II)は、4 : 1 〜 10 : 1 の間であり、さらにより好ましくは、7 : 1 〜 9 : 1である。
カルボキシメチル化反応において用いられる塩基の量は、該反応の化学量論に、具体的には、用いられるの式(III)のアルキル化剤の量に関連する。
式(II)の基質に基づいて、前記モル比は化合物(II)のモル当たりの塩基が約8〜約20モルの範囲である。
【0015】
本発明の方法は、2つの異なる工程(a)および(b)を連続的に行うことを特徴とする。
最初の方は、式(III)の化合物および該塩基を式(II)の化合物の水溶液に、温度範囲約10℃〜約30℃にて加えることを含む。
工程(a)における反応物質の前記添加は、式(III)の化合物の所定のアリコートおよび塩基の所定のアリコートを含み、同時に、任意の順序で連続してまたは交互に、のいずれかの方法で加えることができる。
例として、工程(a)において、式(III)の化合物の単一のアリコートおよび塩基の単一のアリコートを出発物質(II)の水溶液に加えるとき、両反応物質を同時に、または任意の順序で連続して(すなわち式(III)の化合物の後に該塩基を、もしくはその逆に)加えることができる。
参照しやすいように、工程(a)における両反応物質の添加スケジュールは以下のように示すことができる:
- AおよびBを同時に; または
- Aの後にB、またはBの後にA、
その際、特別の規定のない限り、Aは式(III)のアルキル化剤を表し、Bは該塩基を表す。
【0016】
更なる実施例に従って、工程(a)において、式(III)の化合物および該塩基を式(II)の出発物質に、同時に、任意の順序で連続してまたは交互の経路を介して行われる、いずれかにより、複数回にわたり添加することで加えることができる。
具体的には、例えば工程(a)において式(III)の化合物の4アリコートおよび塩基の4アリコートを加える場合、以下のスケジュールのいずれかで行われうる:
− 4×Aおよび4×Bを同時に; または
− 4×Aの後に4×Bを、または4×Bの後に4×A; または
− Aに替わってBまたはBに替わってA、各一対の添加を4回繰り返す、すなわちそれぞれ4×(AB)または4×(BA)。
【0017】
好ましくは、工程(a)において、本発明の方法の両反応物質を交互に複数回の添加により加える。さらにより好ましくは、前記添加は、化合物(III)および塩基の両方の3〜8アリコートを交互に加える[例えば3×(AB)〜8×(AB)または3×(BA)〜8×(BA)]ことを含むことができる。
実施例の項で説明するように、例えば、初めAおよびBを交互に添加し、続いてこれらの同一反応物質を逆順に、すなわちBおよびAを交互に添加することを含め、両反応物質の該添加スケジュールにおける可能なバリエーションもまたあり得る。
【0018】
追加量の式(III)のアルキル化剤および塩基を、工程(a)から得られた該反応混合物に加える場合のみ、実質的に同様の考えを工程(b)に適応することができる。
しかしながら、好ましくは、工程(b)はまた、反応物質(III)および該塩基の両方を該上記工程(a)のように該反応混合物に加えることを含む。
この場合においても、両反応物質を同時に、任意の順序で連続してまたは交互にする添加するいずれかの方法で加えることができる。
【0019】
工程(a)において該反応物質を添加し、工程(a)が完了までの間、それは温度範囲約10℃〜約30℃にて行われるが、工程(b)は、該反応物質を適宜添加する間、および該カルボキシメチル化反応が完了するまではとにかく、温度範囲約30℃〜約60℃にて行われる。
この点で、実施例の項で説明するように、工程(b)における該反応物質の添加の順番は、行う際はいつでも、先の工程(a)における該反応物質の添加の順番から独立して選択される。
従って、工程(a)を、化合物(III)の5アリコートおよび塩基の5アリコートの添加を交互に、例えば5×(AB)のように行う場合、工程(b)においては、反応物質を例えば化合物(III)および塩基の3アリコートを交互に適宜添加するときは、: 3×(AB)または3×(BA)のように行う。
本発明の更なる好ましい実施形態に従って、工程(a)を室温、すなわち温度範囲約20℃〜約25℃にて行うことができ、および式(III)の化合物および該塩基の添加を含むかどうかに関わらず、工程(b)を温度範囲約50℃〜約55℃にて行うことができる。
さらにより好ましくは、工程(a)において温度範囲約20℃〜約25℃、工程(b)において約50℃〜約55℃にて操作することにより該全方法を行う。
それ故に、本発明のこの後者の実施形態に従って、工程(a)において該反応物質を添加した後に、該反応媒質を工程(b)の該温度まで加温する。
【0020】
上記の全てから、当業者にとって明らかなように、工程(a)および(b)の両方において選択された該反応物質の添加スケジュールに従って、加えられた式(III)の化合物および塩基の全量を該工程のいずれにおいて行われる単一の添加間に分配することができる。
好ましくは、必須でないが、本発明の方法で用いられる式(III)の化合物および塩基の全量を加えられる単一のアリコート間に均等に分配する。
【0021】
高度に再現性ある上に、工程(a)および(b)のいずれにおいて該反応物質を添加する時間における可能なバリエーションは、本発明の方法にさほど影響しないので、本発明の方法はさらに高度な頑健性を特徴とする。
それ故に、本発明の方法が言及するカルボキシメチル化反応は、工業規模に適する時間、例えば数時間内、好ましくは12時間内に完了することができるので、反応物質のアリコートの添加を行う時間、添加自体の間の可能なポーズの時間、および該反応が完了するまでの時間は、適宜スケジュールされるべきであることは、当業者に明らかであろう。
概して、工業規模においては、反応物質の各添加を約1分〜約60分の時間範囲に行う。同様に、加える反応物質のアリコートの数に依存して、添加間の経過時間(先にポーズと記載した)はゼロまたは約45分までであってよい。
同様の考えを、該反応媒質を工程(b)の温度まで加温する間である、工程(a)と(b)の間に生じる可能なポーズにも適応することができ、例えば約10〜約30分である。
この点において、工程(b)における該反応物質の該任意の添加を、該反応混合物の加熱時(すなわち工程(a)の完了直後)、またはさらにその後に(すなわち適当な時間[例えば工程(a)における該反応物質の一方の最後の添加と工程(b)における該反応物質の一方の最初の任意の添加の間の可能なポーズ]の後)のいずれかにて開始することができることは注目に値する。
【0022】
本発明の方法で採用される操作条件の一般参照として、その詳細と共に、実施例の項を参照する。
【0023】
カルボキシメチル化反応が完了した後に、従来の方法に従って、例えばWO 00/02847に報告されるように、該混合物をワークアップする。
概して、該反応混合物を室温に冷却し(すなわち約20℃〜約25℃)、例えば34%w/w水溶液の塩酸を添加してpHを約5に調整し、式(I)の化合物を含む水溶液を得る。
後の(I)の精製および回収をWO 00/02847に報告されるように行う。実質的には以下のとおりである:
a) クロマトグラフの樹脂での浸出および溶出;
b) ナノろ過による濃縮および脱塩;
c) 酸性化および続いて(I)の結晶化
本発明の方法に従って得られた最終化合物(I)は、その結晶形では、容易に遠心分離および乾燥するため、高品質プロファイルで扱い易いことを特徴とする。
【0024】
実施例の項で説明するように、本発明の方法に従っていくつかの試験を行い、式(I)の化合物を調製した。
そこで報告されるように、いくつかのバリエーションは例えば、アルキル化剤および該塩基の添加の様式、該反応物質自体の量、工程(a)および(b)における温度範囲、ならびに該反応物質の添加時間に影響するにも関わらず、得られたデータの全ては明確に該方法の一貫性および信頼性を支持する。
【0025】
全てのケースにおいて、式(I)の化合物は、式(II)の出発物質から計算して特に高い収率が得られた。加えて、この同一化合物(I)は、従来の方法に従って得られたHPLCデータ[(I)の面積%を参照]により、常に高純度であることを特徴とした。
予想外に、本発明の方法に従って得られた式(I)の化合物の収率および純度の両方が、意図的に比較例として報告した実施例1で得られたものより有意に優れた結果となった。
実施例1に従って、まず出発物質(II)の水溶液を55℃に加熱し、ゆっくりアルキル化剤を加え、該塩基を適当な用量にて加え、所望のpH値に維持して、実際に、式(I)の化合物を調製した。
よって、本発明の方法を、該反応物質の添加および該反応の全過程の間に該反応混合物のpHを監視する必要なく、工業規模で行うことができる事実に加え、それはまた診断用の分野で使用される中間化合物である式(I)の合成において顕著な改良も提供する。
【0026】
上記の全てに加えて、本発明の方法はまた、適当な一級および二級アミンにて起こるカルボキシメチル化工程への有用で有利な適応であるとも分かる。
従って、本発明の更なる目的は、式(IV)または(V):
R-N(CH2COOH)2 (IV) RR’NCH2COOH (V)
の化合物の調製をもたらす、一級または二級アミンのカルボキシメチル化方法であり、該方法は、式(VI)または(VII):
R-NH2 (VI) RR’NH (VII)
[式中、RおよびR’は、各々独立して、該アミノ基で起こるカルボキシメチル化反応を受けることができる有機残基である]
のアミンの水溶液を式(III):
XCH2COOH (III)[式中、Xは、ハロゲン原子である]
の化合物と塩基の存在下で反応させることを含み:
a) 第一工程において、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを式(VI)または(VII)の化合物の水溶液に、同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、温度範囲約10℃〜約30℃にて加え、; および
b) 第二工程において、該反応混合物を約30℃〜約60℃の温度範囲まで加温し、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、該反応が完了するまで該反応混合物に適宜加えることを特徴とする。
【0027】
特に断らない限り、RおよびR’基のいずれも、該アミノ基にてカルボキシメチル化されることのできる、適宜置換された直鎖または分岐炭化水素鎖でありうる。特に、該RおよびR’基は、有意な量の副生成物を形成することなく式(IV)または(V)の化合物を得るために、該上記操作条件下で該反応物質の作用に耐えなければならない。
【0028】
一級または二級アミンのカルボキシメチル化、およびその可能なバリエーションについて更に検討する際には、工程(a)および(b)における反応物質の量およびそれらの添加の様式を含め、式(I)の化合物の調製について詳しく説明した先の記載が参照される。
【0029】
制限することなく本発明をより良く説明することを目的として、以下の実施例を本明細書に提供する。
【実施例1】
【0030】
式(I): 4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-酸(I)の化合物の調製
【0031】
比較例
標記の化合物を上記のWO 00/02847に開示される類似の操作により調製した(その実施例5を参照)。
452gの(II)のカルボン酸ナトリウム塩の水溶液(37%w/w、三塩酸塩として、0.43molに相当する)を、92mlの水の入った3Lの容器に入れた。該溶液を55℃に加熱し、536gの80%ブロモ酢酸水溶液をゆっくりと加えて反応させた。pHを30%(w/w)水酸化ナトリウム溶液で11〜12に維持した。該反応を55℃、pH11〜12にて約5時間で完了した。
ついで、該溶液を25℃に冷却し、34%塩酸溶液(w/w)によりpHを約5.5に調整し、標記の化合物の水溶液を得た。
タイターHPLC面積%: 63(BOPTA含量)
収率: 溶液中66%、化合物(II)に基づく
【実施例2】
【0032】
該反応物質を交互に順次添加する方法に従った、4-カルボキシ-5,8,11-トリス(カルボキシメチル)-1-フェニル-2-オキサ-5,8,11-トリアザトリデカン-13-酸(I)の調製
【0033】
工程(a) 3Lの容器で、417gの(II)のカルボン酸ナトリウム塩の水溶液(40%w/w 三塩酸塩として、0.43molに相当する)を、室温(20〜25℃)に維持し、74g(0.43mol)の80%ブロモ酢酸水溶液と反応させるため、これを15分内に加えた。該添加の後に、114gの30%水酸化ナトリウム水溶液(0.85mol、30%溶液)を、この同一温度20〜25℃を維持しながら、15分内に加えた。
ついで、80%ブロモ酢酸溶液(各アリコート74g)の追加の3アリコートおよび30%水酸化ナトリウム溶液(各アリコート114g)の追加の3アリコートを交互の方法で連続して該反応混合物に加えた。各添加を15分内に行った。
【0034】
工程(b) ついで、工程(a)の後に、下記に説明するように水酸化ナトリウムおよびブロモ酢酸のアリコートを添加する、また、該反応混合物を50〜55℃の間を含む温度まで加温する、のいずれかでそれを開始した。該反応混合物の加温を約30分内に行った。
水酸化ナトリウムを添加した後にブロモ酢酸を添加して、30%水酸化ナトリウム溶液(各アリコート114g)の4アリコートおよび80%ブロモ酢酸溶液(各アリコート74g)の4アリコートを交互の方法で該反応混合物に加えた。各添加を15分内に行った。該反応物質の添加の後に、約50℃〜約55℃を含む温度にて、該溶液を3時間維持した。ついで、それを室温に冷却し、34%塩酸溶液(w/w)によりpHを約5.5に調整し、標記の化合物の水溶液を得た。
タイターHPLC面積%: 70(BOPTA含量)
収率:溶液中76%、化合物(II)に基づく
【0035】
実施例3
該方法の種々の実施形態による式(I)の化合物の調製
【0036】
実施例2に示された操作条件、例えば: 温度、反応物質のアリコートの添加の順序、該反応物質自体の量、および添加時間などのいくつかを適当に変えることにより、本発明の方法に従って式(I)の化合物を調製した。
【0037】
試験1〜2および4〜6は、417gの(II)のカルボン酸ナトリウム塩の水溶液(三塩酸塩として40%w/w、0.43molに相当する)を用いて行った。試験3は、および(II)のカルボン酸ナトリウム塩の水溶液(三塩酸塩として計算して34%w/w、0.43molに相当する)を用いて行った。該試験の全てにおいて、80%w/wブロモ酢酸溶液および30%w/w水酸化ナトリウム溶液のアリコートを加えた。結果は下記の表Iに示される。
【0038】
全ての試験において:
Aは、80%ブロモ酢酸溶液(74g; 0.43mol)の相当する;
A’は、Aの半分の量(37g; 0.213mol)に相当する;
Bは、30%水酸化ナトリウム溶液(114g; 0.85mol)に相当する;
B’は、Bの半分量(57g; 0.425mol)に相当する;
B”は、30%水酸化ナトリウム溶液(89g; 0.65mol)に相当する。
該反応混合物を工程(a)の温度から工程(b)の温度にするための時間は、約30分である。
工程(b)中の反応物質の添加はいずれも、工程(a)の完了時、すなわち加熱の時間、または選択された時間ポーズ後に開始する。
【表1】

【0039】
表Iに示されるデータは、本発明の方法の上記の優位性、ならびに採用した操作条件のバリエーションにおける再現性および信頼性を有する該方法自体の頑健性を明確に支持する。特に、上記の実施例2に相当する試験(1)は、(I)の収率および純度に関して、これまでに報告された当該技術分野で従来知られている方法を超えた、予期せぬ結果であった。
さらに、反応自体は可能なpHバリエーションに対して敏感であるにも関わらず、反応物質の添加時間を変えられる可能性、添加自体の順序および様式、および加えられる反応物質の量をかなりの程度変えられる可能性は、予想外に有利であると確実に見なされる。
【0040】
この後者の態様は、試験1および3の比較によりさらに支持される。試験1において塩基の全量はアルキル化剤の全量の2倍であり、試験3においては、対応する塩基の全量は、アルキル化剤の全量の2倍(B”)を超えるにも関わらず、両者は、(I)に関して同様の結果である。
【0041】
実施例4
工程(a)および(b)において種々の温度範囲による式(I)の化合物の調製
【0042】
式(I)の化合物を、実施例3に報告されるように、以下のスケジュール:
工程(a)において、(i)3×(AB)および(ii)1×(AB); および
工程(b)において、(i)1×(AB)および(ii)3×(BA)
に従ってブロモ酢酸および該塩基を添加し、ならびに、試験2(実施例3)のタイムスケジュールに従って調製した。
この方法で操作し、工程(a)および(b)において温度範囲を変えた以下の試験により、式(I)の化合物を調製した。
結果は以下の表IIに報告される。
【表2】

【0043】
表(II)の試験(1)は、表Iの試験(2)に対応する(実施例3を参照)。表IIで示されるように、本発明の方法に従って上記に特定された該範囲内での工程(a)および(b)の両方の温度範囲における可能なバリエーションは、HPLC面積%に関して表されるように、実質的に高純度の式(I)の最終化合物を常に提供する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)のN-[2-[(2-アミノエチル)アミノ]エチル]-O-(フェニルメチル)セリンまたはそのカルボン酸アルカリ塩を式(III):
XCH2COOH (III)
[式中、Xはハロゲン原子である]
の化合物と塩基の存在下に反応させることからなる下記スキーム:
【化1】

による式(I)の化合物の調製方法であって、
a) 第一工程において、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、温度範囲10℃〜30℃にて、式(II)の化合物の水溶液に加え; および
b) 第二工程において、該反応混合物を温度範囲30℃〜60℃に加温し、適宜、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、該反応が完了するまで該反応混合物に加えることを特徴とする方法。
【請求項2】
式(III)の化合物中、Xが塩素または臭素原子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)の化合物がブロモ酢酸である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該塩基が水酸化アルカリ金属または水酸化アルカリ土類金属からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該塩基が水酸化ナトリウムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
式(II)の化合物がカルボン酸ナトリウム塩として存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
式(II)の化合物が、ジエチレントリアミンの2-クロロ-3-(フェニルメトキシ)プロピオン酸カリウム塩によるアルキル化により得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
工程(a)中、式(III)の化合物の1〜8アリコートおよび塩基の1〜8アリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、式(II)の化合物の水溶液に加える、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程(a)中、式(III)の化合物の3〜8アリコートおよび塩基の3〜8アリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で式(II)の化合物の水溶液に加える、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
工程(b)中、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で該反応混合物に加える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)中、式(III)の化合物の1〜8アリコートおよび塩基の1〜8アリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で該反応混合物に加える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
工程(a)を温度範囲20℃〜25℃にて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)を温度範囲約50℃〜55℃にて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)を温度範囲20℃〜25℃にて行い、および工程(b)を温度範囲50℃〜55℃にて行う、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
工程(b)からの該反応混合物を室温にて冷却し、酸性化して、式(I)の化合物の水溶液を得る、上記の請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
式(VI)または(VII):
R-NH2 (VI) RR’NH (VII)
[式中、RおよびR’は各々独立して、該アミノ基上に生じるカルボキシメチル化反応を受けることができる有機残基を示す]
のアミンの水溶液を式(III):
XCH2COOH (III)
[式中、Xはハロゲン原子である]
の化合物と塩基の存在下に反応させる方法において、
a) 第一工程において、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で、温度範囲約10℃〜約30℃にて、式(VI)または(VII)の化合物の水溶液に加え; および
b) 第二工程において、該反応混合物を温度範囲約30℃〜約60℃に加温し、適宜、式(III)の化合物および該塩基の1以上のアリコートを同時に、連続してまたは交互に添加する方法で該反応が完了するまで該反応混合物に加える
ことを特徴とする、下式(IV)または(V):
R-N(CH2COOH)2 (IV) RR’NCH2COOH (V)
の化合物を調製するために一級または二級アミンをカルボキシメチル化する方法。
【請求項17】
式(VI)または(VII)の化合物中のRおよびR’基が、式(IV)または(V)の化合物の形成を導くために、アミノ基にてカルボキシメチル化されることができる適宜置換された直鎖または分岐炭化水素鎖である、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2009−507882(P2009−507882A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530460(P2008−530460)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065634
【国際公開番号】WO2007/031390
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(504448162)ブラッコ・イメージング・ソシエタ・ペル・アチオニ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRACCO IMAGING S.P.A.
【住所又は居所原語表記】Via XXV Aprile No.4, 20097 San Donato Milanese,Italy
【Fターム(参考)】