説明

造粒装置及び造粒方法

【課題】溶融相分離法を効率よく大規模で実施でき、使用済みの分散媒を効率よく回収可能な造粒装置及び造粒方法を提供すること。
【解決手段】合成高分子含有組成物を該組成物とは相溶しない分散媒と加熱混練して該合成高分子含有組成物の微粒子を形成する造粒手段、該分散媒をアルコール類中に溶解して該分散媒及び該アルコール類からなる分散媒混合物とすると共に該微粒子を該分散媒混合物中に懸濁させる溶解手段、該微粒子を該分散媒混合物から分離する固液分離手段、及び、該分散媒混合物から該分散媒及び/又は該アルコール類を回収する回収手段、を備える造粒装置、及び、これを用いる造粒方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、造粒装置及び造粒方法に関し、更に詳しくは合成高分子又はこれに充填剤を含む組成物の微粒子を製造するための造粒装置及び造粒方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子化合物、特に各種の合成高分子又はこれを含む組成物をミクロンオーダー粒径の微細な球状粒子にすることのできる装置や方法に対する要求が高まっている。高分子化合物の微細粒子の製造方法は2方法に大別できる。1つは、乳化重合等で得られるナノオーダー粒径の粒子を凝集する方法であり、他の1つは数センチ以上の大きさの塊状高分子を粉砕して所期の粒径の粒子を分級する方法である。
本発明者らは、合成高分子又はその組成物をこれと相溶性のない分散媒中で加熱混練して微細な球状の微粒子を製造する方法を開発した(特許文献1参照)。この溶融相分離法の一実施態様によれば、酸化チタンを混合したナイロン12を分散媒であるポリエチレングリコール(PEG)中で230℃において混練して、平均粒子径が6μmの酸化チタン内包ナイロン12の球状粒子を得ている。混練混合物を冷却した後水と混合すれば分散媒のPEGは水と溶解するので、目的とする微粒子を固液分離して単離することができる。
この造粒方法においては、使用済みの分散媒を含む水溶液の廃液処理が問題となる。
【特許文献1】特開2001−114901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする一つの課題は、上記の状況に鑑みて、有限な地球資源の有効利用の観点から、分散媒を回収して再使用せんとするものである。
本発明が解決しようとする別の課題は、溶融相分離法を効率よく大規模でも実施できる造粒装置及び造粒方法を提供することである。特に、使用した分散媒を効率よく回収可能な造粒装置及び造粒方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の上記課題は以下の達成手段(1)及び(3)により解決された。代表的な好ましい実施態様(2)及び(4)〜(6)と共に列記する。
(1)合成高分子含有組成物を該組成物とは相溶しない分散媒と加熱混練して該合成高分子含有組成物の微粒子を形成する造粒手段、該分散媒をアルコール類中に溶解して該分散媒及び該アルコール類からなる分散媒混合物とすると共に該微粒子を該分散媒混合物中に懸濁させる溶解手段、該微粒子を該分散媒混合物から分離する固液分離手段、及び、該分散媒混合物から該分散媒及び/又は該アルコール類を回収する回収手段、を備える造粒装置、
(2)回収手段がアルコール類の蒸留手段である(1)に記載の造粒装置、
(3)合成高分子含有組成物を該組成物とは相溶しない親水性分散媒と加熱混練して合成高分子含有組成物の微粒子を形成する造粒工程、該分散媒を溶解するアルコール類中に溶解して該分散媒及び該アルコール類からなる分散媒混合物とすると共に該微粒子を該分散媒混合物中に懸濁させる溶解工程、該微粒子を該分散媒混合物から分離する固液分離工程、及び、該分散媒混合物から該分散媒及び/又は該アルコール類を回収する回収工程、を含む造粒方法、
(4)合成高分子が疎水性の熱可塑性樹脂である(3)に記載の造粒方法、
(5)親水性分散媒が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩よりなる群から選ばれた(3)又は(4)に記載の造粒方法、
(6)アルコール類が、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、又はこれらの2種以上の混合物である(3)〜(5)にいずれか1つに記載の造粒方法。
【発明の効果】
【0005】
本発明の造粒装置は、造粒手段で使用する分散媒を、その使用後に資源として回収し再利用可能とする。また、分散媒の溶媒であるアルコール類も同時に回収することも可能であり、分散媒と共に造粒装置に循環再利用することができる。このために、分散媒やアルコール類の廃液処理をする負担から解放される。
本発明の造粒方法は、同じく、親水性分散媒及び/又はアルコール類を工程終了後に、資源として回収し再利用可能とする。よって、省資源やコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の造粒装置の一例を以下適宜図面も参照しながら概説する。本発明の造粒方法の一例もまたこの説明により概説されるであろう。
図1は、本発明の製造装置及び製造方法の1例を示す概念図である。
図1において、熱可塑性樹脂R、必要な添加剤A及び分散媒であるポリエチレングリコール(新品)PEG−fは、それぞれ計量ホッパー10により計量され、定量フィーダー11によりミキサー12に投入される。ミキサー12により粉砕された混合物は造粒機14により熱可塑性樹脂Rの軟化点以上に加熱されながら混練される。添加剤Aを包含し軟化した熱可塑性樹脂は、造粒機の剪断力により微細な(直径1〜1,000μm)粒子に分散され、高粘度の液体ポリエチレングリコールを連続相(海状)とした中に微粒子(島状)として分散される。
【0007】
溶解槽1にはイソプロピルアルコール(IPA)が予め貯留されており、適当な速度で機械撹拌されていても良い。造粒機14からIPA液の中に押し出された樹脂組成物(R+A)の球状粒子はその分散形状を維持したままIPA中でさらに冷却され、分散された固体粒子となる。粒子の分散媒であるポリエチレングリコール(PEG)はIPAに溶解して液相を形成する。溶解槽1の液温は必要により温度調節しても良い。
溶解槽1には例えば加圧濾過装置3等の固液分離手段が接続されている。この加圧濾過装置3では、製品9の樹脂粒子がスラリーとして濾取される。樹脂粒子の表面に付着したPEG及びIPAは、水洗により洗浄して除去する。清浄にされた粒子は乾燥して製品9として出荷できる状態になる。
加圧濾過装置3により濾過された、PEGとIPAとの分散媒混合物は配管パイプにより濾液蒸留器5に導かれる。濾液蒸留器5は、加熱ボイラー15により内温100℃まで加熱することにより、82℃の沸点を有するIPAはイソプロピルアルコール蒸気IPA−vになるので、IPA凝縮器6に導き、冷却凝縮することにより液体イソプロピルアルコールIPA−lとして回収される。IPA凝縮器6には、冷水循環機16を接続して冷水を凝縮コイルに循環する。IPA−lはIPA貯留タンク8に一旦貯留することが好ましい。IPA貯留タンク8に保管されたIPAは適宜溶解槽1に導入して再利用することができる。
濾液蒸留器5には、分散媒が蒸留残渣として残るので、これを回収分散媒固化粉砕機7に導き、冷却部7Aで分散媒を冷却固化した後、粉砕部7Bで粉砕して、ポリエチレングリコール(回収)(PEG−r)として外部に回収する。また冷却部7Aには冷却水循環機17から冷却水を循環する。
【0008】
なお、溶解槽1と加圧濾過装置3等の固液分離手段は防爆室20の中で操作することが好ましい。溶解槽1の溶解操作及び加圧濾過装置3等の濾過操作で発生するイソプロピルアルコール蒸気(IPA−v)も、IPA凝縮器6に導き凝縮することが好ましい。
【0009】
本発明は、合成高分子単独の微粒子又は合成高分子と少なくとも1種の充填剤を含む合成高分子組成物の微粒子を製造する装置及び製造方法に係る。
以下に本発明の造粒装置に使用する造粒手段、溶解手段、固液分離手段及び分散媒回収工程の順に説明する。
なお、「合成高分子含有組成物」は、合成高分子単独をも含むものとする。また、合成高分子としては、熱硬化性樹脂よりも熱可塑性樹脂が好ましく使用できるので、以下熱可塑性樹脂を使用する場合を中心に説明する。本発明においては疎水性の熱可塑性樹脂を好ましく使用できる。ここで、「疎水性の」とは、室温における吸水率が5重量%以下の樹脂を意味するものとする。
【0010】
(造粒手段)
本発明に使用できる造粒手段は、合成高分子含有組成物と親水性分散媒とを加熱混練して、分散媒中に微粒子として分散することができる手段であれば特に限定されない。ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、単軸押出機、2軸押出機等が例示できる。
本発明の造粒装置は、湿式撹拌造粒に属するものであり、合成高分子含有組成物を引き裂く力である、混練による剪断力と、微粒子を保持する力である、組成物の粘弾性と界面張力とのバランスにより、造粒される微粒子の粒子サイズが決定される。均一な粒子サイズ分布を得るためには、撹拌による剪断力と高分子含有組成物の粘弾性を造粒手段中において均一にすることが好ましい。このためには、密閉型の分散機を用いて、高分子含有組成物を加熱混練しながら、かつその分散機内部の温度分布が均一になるように温度制御することが好ましい。
【0011】
本発明において、分散媒の軟化点は熱可塑性樹脂の軟化点よりも50℃以上低いことが好ましい。混練分散の温度は、熱可塑性樹脂含有組成物の軟化点よりも10〜200℃高い温度であることが好ましい。ここで軟化点はビカート(Vicat)軟化点による。
合成高分子、これに混合することのできる充填剤、分散媒、及び分散媒の展開溶媒であるアルコール類については、後述する。
【0012】
(溶解手段)
溶解手段は、造粒工程後に、熱可塑性樹脂含有組成物と分散媒の混合物を、必要に応じて熱可塑性樹脂含有組成物の軟化点以下に冷却した後、該組成物の貧溶媒であってかつ分散媒の良溶媒である展開溶媒、すなわちアルコール類中に投入して、分散媒をアルコール類中に少なくとも一部溶解するための手段である。この溶解手段により、分散媒はアルコール類に少なくとも一部溶解した分散媒混合物となり、生成した微粒子はこの分散媒混合物中に懸濁される。溶解工程は、該混合物を冷却した後、クラッシャー等で粉砕したり、ペレタイザーでペレット化したり、押出機、ロール等でシート状に成形してからアルコール類中に溶解してもよい。
【0013】
(固液分離手段)
固液分離手段は、溶解槽で得られた微粒子の懸濁液(分散媒混合物)から目的とする微粒子を分離するための手段である。具体的には、遠心分離、濾過、又はこれらの方法を組み合わせて分離する固液分離手段が好ましく、加圧濾過がより好ましい。
分離された微粒子は、リンス(洗浄)し、乾燥してから使用することが好ましい。リンスには水道水等を純水装置で浄化して、最終リンス液槽に保存して適宜固液分離装置に配管を通して供給することができる。最終リンスに使用した洗浄液は一次リンス液槽に保存して一次リンスに使用することができる。
【0014】
(分散媒及び/又はアルコール類を回収する回収手段)
本発明では、アルコール可溶性の分散媒を使用することが好ましく、従来はこの分散媒に対する展開溶媒としては水が使用されてきた。この場合には、分散媒の水溶液を廃液処理する必要がある。本発明においては、分散媒を溶解するためにアルコール類を使用し、分散媒とアルコールの少なくとも一方を回収するものである。
本発明に展開溶媒として使用するアルコール類は、沸点が100℃以下の1価アルコールが好ましく、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、又はこれらの2種以上の混合物が例示できる。
本発明の回収手段は、使用済みの分散媒及びアルコール類の少なくとも片方を回収する手段であり、好ましくは両方を回収するための手段である。具体的には、蒸留装置が例示できる。
本発明においては、使用済みの分散媒及びアルコール類からなる分散媒混合物から、低沸点のアルコール類を蒸留操作により除去して、蒸留残渣をPEG等の分散媒のみとすることが好ましい。分散媒等に残留するアルコール類は、別途真空蒸留等により除去しても良い。また2種以上のアルコール混合物を使用した場合には、沸点の差により分留することが好ましい。
【0015】
図1には、本発明の造粒装置に配置することができる他の設備が図示されている。これらの設備には、仕込みに使用する合成高分子及び分散媒、並びに必要に応じて添加剤を計量するための一群の計量ホッパー10、計量された原料(合成高分子、充填剤)及び分散媒をミキサーに運搬する定量フィーダー11、合成高分子含有組成物及び分散媒を機械的に混合するミキサー12が含まれる。この他に、水道水又は井水をイオン交換する純水装置(不図示)、分離された微粒子を最終的に洗浄する最終リンス液槽(不図示)、及び得られた最終製品の微粒子を計量のために保存する微粒子計量用容器(不図示)を設けても良い。
計量ホッパー、定量フィーダー、ミキサー等としては、公知のものを適宜使用することができる。
【0016】
また、純水装置は、目的に応じて、各種の処理を組み合わせたものとすることが好ましい。逆浸透膜装置、イオン交換装置、脱酸素装置等による純水化が一般的である。更に必要に応じて、紫外線殺菌及び酸化装置、イオン交換ポリシャー、ファイナルフィルター等を使用して超純水にすることもできる。
リンスは、目的の微粒子の表面に残存する分散媒やアルコール類を除去する工程をいう。通常2回以上のリンス工程を繰り返すことが好ましい。
リンスの途中で、微粒子の表面に残る分散媒を酸化分解処理することも好ましい。酸化処理には、過酸化水素の希釈溶液やオゾンを使用することができる。
【0017】
(合成高分子)
本発明の造粒方法又は造粒装置に使用できる合成高分子は、石油化学又は石炭化学により得られた原料から合成された高分子である。合成高分子は、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂に大別されるが、本発明においては熱可塑性樹脂が好ましく使用できる。熱可塑性樹脂は、加熱により可塑性を有する樹脂であり、熱可塑性樹脂には、多くの合成高分子が該当する。本発明で使用する熱可塑性樹脂は、疎水性であることが好ましく、その例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド類、特に各種ナイロン、例えばナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ポリエステル類、例えばポリエチレンテレフタート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリふっ化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアセタール、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、アクリル酸メチル・メタクリル酸メチルコポリマー、アクリロニトリル・スチレンコポリマー、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、エチレン・アクリル酸コポリマー、エチレン・プロピレンコポリマー、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー)、熱可塑性弾性体、例えばスチレン・ブタジエンブロックポリマー等の付加重合体が挙げられる。
【0018】
熱可塑性樹脂は、2種以上の、同種又は異種の、熱可塑性樹脂の混合物であっても良い。異種の熱可塑性樹脂混合物(ポリマーブレンド)の成分が非相溶である場合には、相溶化剤を用いて両相の分散を良化させることが好ましい。更に好ましくは混合状態を制御したいわゆるポリマーアロイを本発明に用いることができる。ポリマーアロイを用いて、耐熱性、強靱性、造粒性を改良することができる。ポリマーアロイの例としては、ポリフェニレンオキサイド(PPO)/ポリスチレン(PS)、ポリベンズイミダゾール(PBI)/ポリイミド(PI)、PPO/ABS、ABS/ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)/PC、PET/PC、PBT/PET、PBI/PI、ナイロン/変性ポリオレフィン、PBT/変性ポリオレフィン、ナイロン/PPO、ABS/ナイロン、ABS/PBT、ナイロン/PPO、ナイロン/ABS、ナイロン/PCを挙げることができ、その他の具体例は、高分子学会編、先端高分子材料シリーズ3「高性能ポリマーアロイ」(平成3年、丸善)等に記載されている。
【0019】
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては各種のナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー(ABS)、エチレン・酢酸ビニルコポリマー(EVA)、スチレン・アクリロニトリルコポリマー(SAN)およびポリカプロラクトンが好ましく、ナイロン、ポリプロピレン、ポリ乳酸およびポリカプロラクトンがより好ましく、ナイロンおよびポリカプロラクトンがさらに好ましい。
官能基(水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基等)を有する熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン・アクリル酸の共重合体を球状微粒子に分散して、表面に露出するカルボキシル基を、生体対象物質を固定分離するために使用することができる。
再生医療用臓器の幹細胞付着マトリックスに使用する場合には、生分解性を有する、ポリ乳酸やポリカプロラクトンを好ましく用いることができる。
【0020】
(分散媒)
本発明に使用することのできる分散媒は、前記の分散工程において、合成高分子組成物、好ましくは疎水性の熱可塑性樹脂組成物を微粒子として分散させるための連続相を形成することができ、熱可塑性樹脂と相溶性を有しない化合物である。「相溶性を有しない」とは、加熱温度において、1重量%以上の溶解度を有しないことをいう。分散媒は、好ましくは熱可塑性樹脂に対して、相溶性を有さず、好ましくは貧溶剤であることが望ましい。ここで、貧溶媒とは、分散温度における熱可塑性樹脂溶液に添加するとその熱可塑性樹脂の溶解度が減少するような溶媒をいう。本発明に使用する分散媒は、2以上の分散媒の混合物であっても良く、熱可塑性樹脂組成物に対して、室温から分散工程の加熱温度に至る範囲にわたり、貧溶媒であることが望ましい。本発明に使用する分散媒は、熱可塑性樹脂組成物に対して、容量で、0.5倍以上5倍以下使用される。
【0021】
本発明に使用する分散媒の好ましい例は、アルコール可溶性の分散媒であり、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド等)、ポリアルケンカルボン酸の単独重合体若しくは共重合体又はこれらの塩(例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム)、ポリアルケンアミドの単独重合体又は共重合体(ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド)等、ポリビニルアルコール(加水分解されていない酢酸ビニル単位を少量含んでいることが好ましい。)であり、これらを単独で、あるいは組み合わせて使用することができる。ポリエチレングリコールは、通常分子量が約2万までのポリマーであり、ポリエチレンオキシドは分子量が約15万以上のポリマーである。
また、疎水性の分散媒も、プロピルセルロース、ポリスチレンが例示できるが、親水性の分散媒に優る物質ではない。
分散媒とその展開溶媒の好ましい組み合わせがある。例えば、ポリアルキレンオキシドにはイソプロピルアルコールが好ましく、ポリアクリル酸にはメタノールが好ましい。
【0022】
(充填剤)
本発明において合成高分子は、少なくとも1種の充填剤を含有することができる。充填剤は、光学的、機械的、電気的、又は熱的性質を改良しうる性質を有し、少なくとも1種の有機充填剤、無機充填剤、及びこれらの2種以上の、同種又は異種の、充填剤の混合物であり、熱可塑性樹脂と混合可能な成分であることが好ましい。本発明に使用できる充填剤には、紫外線を吸収ないし散乱する物質、顔料、染料、赤外線吸収剤、電磁波ないし放射線の吸収剤等が含まれる。本発明に使用する充填剤は大別すると、(1)着色顔料、(2)体質顔料、(3)着色顔料の混合物、及び、(4)着色顔料で被覆した体質顔料がある。
着色顔料の例を挙げると、酸化チタン(チタンホワイト、チタンブラック)、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、超微粒子酸化鉄)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、窒化チタン、窒化ジルコニウム、酸化セレン、炭化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ホウ素、アルミン酸ストロンチウム、等である。また、体質顔料としては、タルク、カオリン、マイカ、セリサイト、黄土、アンバー、二酸化チタン、酸化亜鉛、モンモリロナイト、クレー、ベントナイト等が挙げられる。着色顔料の混合物としては、単なる混合物に加えて、ある種の着色顔料で被覆した別種の着色顔料があり、後者の例としては、二酸化チタン被覆雲母、及び、ベンガラ、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック若しくはチタンブラック1種又は2種以上により被覆された雲母チタンが挙げられる。着色顔料で被覆した体質顔料の例としては、二酸化チタン被覆雲母、及び、ベンガラ、黒酸化鉄、群青、紺青、カーボンブラック若しくはチタンブラック1種又は2種以上により被覆された体質顔料がある。
【0023】
本発明において、必要に応じて、機能の異なる又は同一の、2以上の異なった充填剤を併用することができる。充填剤は熱可塑性樹脂の球状粒子内部に含有させることが好ましい。また、充填剤に予め表面処理を行っておき、熱可塑性樹脂への内包や被覆を容易にしても良い。微粒子に分散する工程において、充填剤の熱可塑性樹脂への内包や被覆を行うこともできる。
合成高分子組成物は、実質的に熱可塑性樹脂及び充填剤からなることが好ましい。「実質的に熱可塑性樹脂及び充填剤からなる」とは、その他の成分が20重量%以下、好ましくは10重量%以下であって、充填剤の特性が阻害されないことを意味する。
充填剤の熱可塑性樹脂組成物全体に対する配合量は、この組成物が微粒子として分散され造粒できる限り特に制限はないが、一般的には、0.1重量%以上90重量%以下であり、好ましくは10重量%以上90重量%以下、更に好ましくは30重量%以上90重量%以下である。
【0024】
また、内包型複合粉体に、引き続き適当な物質で表面処理を行い、内包・被覆型複合粉体としても良い。表面処理の方法としては、湿式粉砕装置を用いて、内包型複合粉体表面に金属酸化物(鉄、亜鉛、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、コバルト等の酸化物)をメカノケミカル的に被覆する方法も採用できる(特開平8−59433号公報)。
【0025】
(粒子径)
本発明において得られる合成高分子の微小球体の平均粒子径は0.1〜100μmであるが、1〜90μmであることが好ましく、1〜50μmであることがより好ましい。平均粒子径とは、数平均粒子径を意味し、粒子径は、電子顕微鏡、光学顕微鏡等により測定できる。
本発明の装置又は製造方法では、略球状の粒子(以下、単に「球状粒子」ともいう。)を得ることができる。ここで、「略球状」とは、粒子の直交3軸の比が2以下のものをいう。略球状の粒子には、真球状の粒子を含むことはいうまでもない。
【0026】
本発明の製造方法において、造粒工程における加熱温度は、熱可塑性樹脂組成物の軟化点よりも10〜200℃高い温度であることが好ましく、20〜150℃高い温度であることがより好ましい。加熱温度が上記範囲内であると、熱可塑性樹脂組成物が微粒子に分散されやすく、絡まった繊維状とならないので好ましい。また、熱可塑性樹脂組成物の熱分解等が生じないので好ましい。上記の軟化点(軟化温度)は、種々の測定方法があるが、本発明ではVicat軟化温度(Vicat softening temperature;VST)とする。VSTは、加熱浴槽又は加熱相の試験片に垂直に置いた針状圧子を通じて、所定の荷重を加えながら一定速度で媒体を昇温させ、針状圧子が1mm侵入したときの伝熱媒体の温度を測定することによる求めることができる。具体的には、JIS K 7206:1999の試験法に従う。
【0027】
本発明の製造方法によって製造された球状粉体又は球状複合粉体を構成する樹脂分子は、その粉体への分散剪断力により高度な分子配列が進むと考えられる。エマルジョン重合法により製造される球状粉体又は球状複合粉体に比べて、本発明により得られる粉体の方が力学特性等に優れ、数倍の強度を有することが明らかとなった。
【0028】
本発明の生分解性球状複合粉体は、化粧品添加剤、潤滑剤、微小スペーサー、生化学用担体、複写機用トナー、磁性流体、電気粘性流体、導電ペースト、静電・帯電防止剤、電磁遮蔽剤、放射線遮蔽剤、プラスチックマグネット、圧電体、焦電体、誘電体、光触媒、癌温熱治療用磁性粉体、反射材料、CMP(Chemical Mechanical Polishing)スラリー等に使用できる。
【実施例】
【0029】
(実施例1)
図1に示したように造粒機14、加圧濾過装置3及び濾液蒸留機5を備えた造粒装置を製作した。加圧濾過装置3には、シュナイダーフィルターを使用した。
【0030】
背景技術に記載した特開2001−114901号公報に開示されている溶融分相法を用いて平均粒子径が90μmのほぼ正規分布をしたナイロン12(ダイセルデグサ工業(株)製のダイアミドL1640)の微小球体約10kgを作製した。具体的には、ナイロン12を10kgと、ポリエチレングリコール(三洋化成(株)製のP−20000)の11.25kg及び明成化学工業(株)製のポリエチレンオキサイドR150の3.75kgの混合物である分散媒15kgを良く混合した後、2軸型の加圧混練機中で230℃に均一に加熱しながら混練して、造粒した。
【0031】
ここで、ポリエチレングリコールP−20000及びポリエチレンオキサイドR150は、ナイロン12と相溶性のないアルコール類可溶性の分散媒である。230℃におけるナイロン12のポリエチレングリコール又はポリエチレンオキサイドR150に対する溶解度は、1%以下であった。また、ナイロン12の軟化点は163℃であった。軟化点の測定は、Vicat法にて行った。
【0032】
その後、得られた混合物を150℃まで冷却後、IPA150リットルと混合して、ポリエチレングリコールP−20000及びポリエチレンオキサイドR150をIPAに溶解させ、微小球体の懸濁溶液を得た。なお、溶解槽1の温度は約80℃に保温しておいた。
【0033】
この溶液を加圧濾過装置3により、固液分離した。分散媒15kgを含む165kgの分散媒混合物を濾液蒸留器5に移して蒸留した結果、約143kgのIPAが回収できた(回収率95%)。回収されたIPAは溶解槽に再利用した。
【0034】
(実施例2)
ユニチカ(株)製のポリ乳酸ペレット(PLA4031DK)1kgと日本純薬(株)製のポリアクリル酸ペレット(ジュリマーAC−103AP)1.5kgを良く混合した後、加圧混練機中で180℃において10分間混練して、190℃で5分間安定静置した。その後120℃まで冷却し、20リットルのメタノール中にてポリアクリル酸を溶解して、直径約10μmのポリ乳酸球状粒子の懸濁液を得た。目的の球状粒子を加圧濾過してポリ乳酸の球状粒子を得た。ポリアクリル酸のメタノール溶液を蒸留して、メタノールを留去回収して、残渣としてポリアクリル酸を回収することができた。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の造粒装置及び造粒方法の1例を模式的に示す概念図である。
【符号の説明】
【0036】
1:溶解槽
3:加圧濾過装置
5:濾液蒸留器
6:IPA凝縮器
7:回収分散媒固化粉砕機
7A:冷却部
7B:粉砕部
8:IPA貯留タンク
9:製品(樹脂粒子)
10:計量ホッパー
11:定量フィーダー
12:ミキサー
14:造粒機
15:加熱ボイラー
16:冷却水循環機
17:冷却水循環機
20:防爆室
R:熱可塑性樹脂
A:添加剤
PEG−f:ポリエチレングリコール(新品)
PEG−r:ポリエチレングリコール(回収)
IPA−l:液体イソプロピルアルコール
IPA−v:イソプロピルアルコール蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成高分子含有組成物を該組成物とは相溶しない分散媒と加熱混練して該合成高分子含有組成物の微粒子を形成する造粒手段、
該分散媒をアルコール類中に溶解して該分散媒及び該アルコール類からなる分散媒混合物とすると共に該微粒子を該分散媒混合物中に懸濁させる溶解手段、
該微粒子を該分散媒混合物から分離する固液分離手段、及び、
該分散媒混合物から該分散媒及び/又は該アルコール類を回収する回収手段、を備えることを特徴とする
造粒装置。
【請求項2】
回収手段がアルコール類の蒸留手段である請求項1に記載の造粒装置。
【請求項3】
合成高分子含有組成物を該組成物とは相溶しない親水性分散媒と加熱混練して合成高分子含有組成物の微粒子を形成する造粒工程、
該分散媒を溶解するアルコール類中に溶解して該分散媒及び該アルコール類からなる分散媒混合物とすると共に該微粒子を該分散媒混合物中に懸濁させる溶解工程、
該微粒子を該分散媒混合物から分離する固液分離工程、及び、
該分散媒混合物から該分散媒及び/又は該アルコール類を回収する回収工程、を含むことを特徴とする
造粒方法。
【請求項4】
合成高分子が疎水性の熱可塑性樹脂である請求項3に記載の造粒方法。
【請求項5】
親水性分散媒が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸塩よりなる群から選ばれた請求項3又は4に記載の造粒方法。
【請求項6】
アルコール類が、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコール、又はこれらの2種以上の混合物である請求項3〜5いずれか1つに記載の造粒方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−321027(P2007−321027A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151520(P2006−151520)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(302050123)トライアル株式会社 (19)
【Fターム(参考)】