説明

造血刺激作用を有する組成物

【課題】 長期間摂取し続けても副作用の心配がなく安全で、かつ経口投与でも貧血予防及び/又は治療、ひいては持久力増強作用を充分に発揮する造血刺激作用を有する組成物を提供し、さらに、該造血刺激作用を有する組成物を含有する貧血予防及び/又は治療、ひいては持久力増強作用を有する飲食品を提供する。
【解決手段】 ハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体を有効成分として含有することを特徴とする造血刺激作用を有する組成物であり、該組成物を有効成分として含有することを特徴とする貧血予防及び/又は治療剤並びに該組成物を有効成分として含有することを特徴とする持久力増強剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハナビラタケを有効成分として含む、造血刺激作用を有する組成物に関するものであり、さらにそれを含む貧血予防及び/又は治療剤、及び持久力増強剤に関するものである。また、別の本発明は、造血刺激作用を有する組成物を含む飲食品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現代社会においては、ストレスによって生活リズムが崩れ、体に何かの不具合を感じたり、生活習慣病に悩まされたりしている人は少なくない。成人男女では、肉体的及び精神的疲労、精力減退、貧血、冷えを訴える人の率が高く、このような症状を改善させるための医薬品、医薬部外品、健康食品などが多数開発され販売されている。
【0003】
例えば、貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態を言うが、その原因により、鉄欠乏に起因する鉄欠乏性貧血、赤血球の寿命短縮に起因する溶血性貧血、骨髄多能性幹細胞の異常に起因する再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、腎不全が原因で生じる腎性貧血などに分類される。
【0004】
赤血球は、骨髄多能性幹細胞(CFU-GEMM)が前期赤芽球前駆細胞(BFU-E)、後期赤芽球前駆細胞(CFU-E)、赤芽球という順に分化した後、赤芽球の脱核という過程を経て成熟する。この過程には、腎臓から分泌されるエリスロポエチン(EPO)という糖タンパク質が重要な役割を果たしていることが知られている。また、EPOは生体への注射によっても赤血球を増加させる作用があることから、既に貧血治療薬として使用されている。
【0005】
また、低酸素状態や多量の失血を起こした状態では、EPOの産生が上昇し、それに伴って赤血球が増加することが知られている。赤血球の増加は生体における酸素運搬能力を高めること、ひいては持久力を増強することにもつながる。実際、マラソンランナーをはじめとした多くのアスリート達は、自身の酸素供給能力を高めて持久力を増強するために、低酸素状態である高地においてトレーニングを行ったりしている。
【0006】
これまで、上記のような造血刺激作用、特に赤血球増加作用を有する薬品としては、EPOの他には、ダーベポエチン(DPO)やerythropoiesis-stimulating agent(ESA)などが開発されている。しかし、これらの物質は血液粘性の増加などの副作用を考慮しなければならないため、容易には使用できないという欠点が存在する。
【0007】
この他、天然物由来の造血刺激作用、貧血予防及び/又は治療作用、持久力増強作用を有するものとしては、人参および阿膠を含み、黄精または冬虫夏草のいずれか1つまたは両者を含む組成物(特許文献1)、冬虫夏草およびカイクジンを含有する内服液(特許文献2)、ムイラプアマと冬虫夏草とを含有する組成物(特許文献3)、冬虫夏草のエタノール抽出物(非特許文献1)などが知られている。
【0008】
一方、キノコ類は古くから食用として利用されており、1980年代から徐々にその成分の生理活性が明らかにされてきている。クレスチン、レンチナン、シゾフィラン(いずれも商品名)などは、抗悪性腫瘍剤としての有用性が認められており、アガリクス、メシマコブ、霊芝などは免疫賦活作用や抗腫瘍作用を期待して、子実体や菌糸体の乾燥物や抽出物を健康食品素材として利用することが試みられている(例えば、特許文献4、5及び6)。
【0009】
このようなキノコ類に属するハナビラタケは、カラマツ等の針葉樹に生えるキノコであって、非常に希少なキノコである。歯ごたえがよく、その純白の色合いと葉牡丹のような形態が特徴である食用キノコである。これまで、このハナビラタケは成長が遅く人工栽培は非常に困難であるとされてきたが、最近になって、比較的短期間で栽培可能な新しい栽培法が確立され、商業規模での供給が可能となっている。
【0010】
このハナビラタケの子実体については、マウスを用いた検討により、抗腫瘍作用やアトピー性皮膚炎の抑制作用(非特許文献2)が示されている。また、ハナビラタケ子実体から溶媒でβ-グルカンを抽出する方法が提案され、その抽出物について医薬品分野での用途も提案されており(特許文献7及び8)、例えばこの抽出物を担癌マウスに腹腔内投与すると抗腫瘍作用(非特許文献3)を発揮することが報告されている。また、この抽出物に関しては、シクロフォスファミド投与によって白血球を減少させたマウスに対する造血刺激作用(非特許文献4、5及び6)も報告されているものの、本報では白血球の増加についてのみしか検討されておらず、赤血球を増加させる作用については報告されていない。
【0011】
キノコ由来の造血刺激作用を有する物質としては、上述した冬虫夏草のエタノール抽出物の他、スエヒロタケ、マイタケ、菌核菌及び酵母などに由来するβグルカン(非特許文献7)が知られている。しかし、前者については腹腔内投与による効果しか検証されていない。後者についても白血球の増加作用しか報告されておらず、赤血球の増加作用については知られていない。
【特許文献1】特開2002−275086号公報
【特許文献2】特開2001−158747号公報
【特許文献3】特開平9−235237号公報
【非特許文献1】Y.リ(Li), G.-Z.チェン(Chen) and D.-Z.ヤン(Jiang), 「 [和訳]マウス骨髄におけるコルディセプス・シネンシスの赤血球産生作用(Effect of Cordyceps cinensis of erythropoiesis in mouse bone marrow).」, (1993), チャイニーズ メディカル ジャーナル(Chinese medical J.), 106(4):313-316
【特許文献4】特開2001−10970号公報
【特許文献5】特開2001−131083号公報
【特許文献6】特開2003−183176号公報
【非特許文献2】長谷川明彦、山田宗紀、鈍宝宗彦、福島隆一、松浦成昭、杉立彰夫、「ハナビラタケの免疫調整作用について」、(2004)、癌と化学療法、31(11):1761-1763.
【特許文献7】特開2000−217543号公報
【特許文献8】特許第3509736号公報
【非特許文献3】N.オオノ(Ohno), N.N.ミウラ(Miura), M.ナカジマ(Nakajima) and T.ヤドマエ(Yadomae),「 [和訳]栽培されたスパラシス・クリスパ子実体由来の抗腫瘍性1,3−ベータグルカン(Antitumor 1,3-beta-glucan from cultured fruit body of Sparassis crispa).」, (2000), バイオロジカル アンド ファーマシューティカル ブレティン(Biol. Pharm. Bull.), 23(7): 866-872.
【非特許文献4】T.ハラダ(Harada), N.ミウラ(Miura), Y.アダチ(Adachi), M.ナカジマ(Nakajima), T.ヤドマエ(Yadomae) and N.オオノ(Ohno), 「 [和訳]シクロフォスファミドで誘導した白血球減少症マウスに対するスパラシス・クリスパ由来の1,3−ベータ−ディー−グルカン(エスシージー)の造血作用(Effect of SCG, 1,3-beta-D-glucan from Sparassis crispa on the hematopoieticresponse in cyclophosphamide induced leukopenic mice).」, (2002), バイオロジカル アンド ファーマシューティカル ブレティン(Biol. Pharm. Bull.), 25(7):931-939.
【非特許文献5】N.オオノ(Ohno), T.ハラダ(Harada), S.マスザワ(Masuzawa), N.N.ミウラ(Miura), Y.アダチ(Adachi), M.ナカジマ(Nakajima) and T.ヤドマエ(Yadomae), 「 [和訳]食薬用キノコであるスパラシス・クリスパから抽出したベータグルカンの抗腫瘍作用及び造血作用(Antitumor activity and hematopoieticresponse of a β-glucan extracted from an edible and medicinal mushroom Sparassis crispa Wulf.:Fr. (Aphyllophoromycetideae)).」, (2002), インターナショナル ジャーナル オブ メディシナル マッシュルーム(Inter. J. Med. Mushr.), 4:13-26.
【非特許文献6】T.ハラダ(Harada), S.マスダ(Masuda), M.アリイ(Arii), Y.アダチ(Adachi), M.ナカジマ(Nakajima), T.ヤドマエ(Yadomae), and N.オオノ(Ohno), 「 [和訳]大豆イソフラボンアグリコンは可溶性ベータグルカン(エスシージー)との組み合わせで造血反応を修飾する(Soy isoflavone aglycone modulates a hematopoietic response in combination with soluble beta-glucan: SCG).」, (2005), バイオロジカル アンド ファーマシューティカル ブレティン(Biol. Pharm. Bull.), 28(12):2342-2345.
【非特許文献7】T.タテイシ(Tateishi), N.オオノ(Ohno), Y.アダチ(Adachi) and T.ヤドマエ(Yadomae), 「 [和訳]マウスに対するベータグルカンによる造血反応の促進(Increases in hematopoietic responses caused by β-glucans in mice).」, (1997), バイオサイエンス バイオテクノロジー アンド バイオケミストリー(Biosci, Biotech. Biochem.), 61(9):1548-1553
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これまでに造血刺激作用が明らかにされた上記の医薬品は、貧血症状の改善や持久力の増強に有用であると考えられるが、副作用が懸念される。また、上記の天然物もしくはそれらの抽出物についても、経口投与による効果が充分でないか、もしくは明らかでないという問題があった。
【0013】
本発明は、このような実情に鑑みなされたものであり、長期間摂取し続けても副作用の心配がなく安全で、かつ経口投与でも貧血予防及び/又は治療もしくは持久力増強作用を充分に発揮する造血刺激作用を有する組成物を提供し、さらに、上記の造血刺激作用を有する組成物を含有する貧血予防及び/又は治療並びに持久力増強作用を有する飲食品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するため新規な素材の開発を求めて鋭意検討した結果、ハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体に造血刺激作用を見いだし、本発明に到達した。
【0015】
すなわち、本発明の第一は、ハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体を有効成分として含有することを特徴とする造血刺激作用を有する組成物を要旨とするものであり、好ましく、造血刺激作用が、赤血球を増加させる作用であるものである。
【0016】
本発明の第二は、前記の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする貧血予防及び/又は治療剤を要旨とするものである。
【0017】
本発明の第三は、前記の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする持久力増強剤を要旨とするものである。
【0018】
本発明の第四は、前記の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする飲食品を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた造血刺激作用、特に赤血球増加作用を示す組成物が提供できる。また、食用キノコであるハナビラタケを原料としているため、極めて安全性が高いことから、飲食品に含ませて用いることができる他、経口投与剤に含ませて用いることもできる。従って、貧血症状を訴える人や持久力の増加を望む人に対して適した投与方法を選択することができる。
【0020】
なお、本発明において、貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが減少した状態を言い、具体的には、鉄欠乏に起因する鉄欠乏性貧血、赤血球の寿命短縮に起因する溶血性貧血、骨髄多能性幹細胞の異常に起因する再生不良性貧血や骨髄異形成症候群、腎不全が原因で生じる腎性貧血などの病態を含むこととする。
【0021】
さらに、本発明において、持久力増強作用とは、長時間又は激しい運動を行うなかで疲労困憊に至るまでの時間の延長作用、肉体的疲労を感じにくくする作用、肉体疲労から回復するまでの時間を短縮する作用(すなわち、抗疲労作用)、さらには身体の運動能力が短期的もしくは長期的に向上したりするような作用のことを含めることとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
ハナビラタケは、標高1千メートル以上のカラマツ等の針葉樹に特異的に発生するキノコで、発見することが難しいために「幻のキノコ」と言われてきた。これまで、その栽培は難しく、一般にはあまり知られていなかったが、近年、人工栽培方法が確立され、量産されるに至った。
【0024】
本発明で用いられるハナビラタケの子実体は、天然のものでも人工栽培されたものでもよい。人工栽培の方法としては、従来から知られている人工栽培用の菌床を作成することにより行うことができる(詳細は、例えば、特開平11−56098号公報、特開2002−369621号公報、特開2002−125460号公報参照)。
【0025】
また、本発明においては、ハナビラタケの菌糸体も用いることができる。菌糸体は液体培養法によって得ることができる。培地に使用する炭素源としては、グルコースなどの単糖の他、デキストリン、グリセロールなど通常用いられる炭素源が使用できる。また、窒素源としては無機又は有機窒素源が使用できるが、生育速度の観点からは有機窒素源を用いるほうが好ましい。また、必要に応じて微量元素やビタミン等の生育因子を添加することは通常の培養と何ら変わりはない。培養温度は15℃〜30℃、好ましくは18℃〜28℃、20℃〜25℃が最も好ましい。pHは2.5〜8.0、好ましくは3.0〜7.0、3.5〜5.0が最も好ましい。培地成分には不溶成分を添加することが均一に生育させることができることから好ましい。培養期間は培地組成や菌株により、数日から数週間程度に設定されうる。
【0026】
このようにして得られたハナビラタケの子実体又は菌糸体は、そのままで本発明の造血刺激作用を有する組成物とすることができる。また、ハナビラタケの子実体又は菌糸体から溶媒を用いて抽出された溶媒抽出物、あるいはハナビラタケの子実体又は菌糸体を酵素剤により処理を行った酵素処理物を本発明の造血刺激作用を有する組成物とすることもでき、そのような溶媒抽出物又は酵素処理物を得るために、ハナビラタケの子実体あるいは菌糸体を生のままで処理工程に移してもよいし、乾燥し、必要により粉末化などの加工をしてから処理工程に移してもよい。
【0027】
ハナビラタケの子実体又は菌糸体から溶媒抽出物を得るために用いられる抽出溶媒としては、水、酸水溶液、アルカリ水溶液、アルコール、アセトニトリル、酢酸エステル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エーテル、グリコール、THF、アセトン、塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサン、シクロヘキサンなどが使用できる。また、有効性、安全性をさらに高めるため抽出液を希釈又は濃縮した後、限外ろ過または逆浸透膜処理したもの若しくはそれらを活性炭または各種樹脂で処理したもの、またはそれらの処理液を希釈又は濃縮したものを使用することもできる。
【0028】
また、ハナビラタケの子実体又は菌糸体から酵素処理物を得るために用いられる酵素剤としては、エンド−1,4−グルカナーゼ、キシラナーゼおよびエンド−1,3−グルカナーゼを含有する酵素剤が挙げられ、例えばトリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride)由来の酵素類を含有する製剤(商品名「ファンセラーゼ」、「セルラーゼオノヅカ」ヤクルト本社製など)やヘミセルラーゼ、セルラーゼ、マンナーゼ、アラバナーゼ、キシラナーゼ、ペクチナーゼなどの市販の酵素群も利用することが出来る。
【0029】
酵素処理条件は従来から知られている条件が好ましい。すなわちハナビラタケに対する添加割合は「セルラーゼオノヅカ」を例にとると、0.01〜20質量%、好ましくは0.05〜15質量%であり、0.1〜10質量%が最も好ましい。処理液のpHは2.0〜9.0、好ましくは3.0〜8.0であり、4.0〜7.0が最も好ましい。酵素作用温度は20℃〜70℃、好ましくは30℃〜65℃であり、40℃〜60℃が最も好ましい。また、酵素処理時間は、工程の都合により数分から数時間程度に設定しても差し支えない。
【0030】
酵素処理後、処理液を加熱して酵素反応を停止させる。通常、80℃〜100℃で約60分間加熱して酵素を失活させる。その後、残渣を濾別せずに処理液を凍結乾燥やスプレードライなどの乾燥手段を施して粉末などの乾燥物としてもよいし、残渣を濾別した濾液を濃縮してエキスとしてもよい。本発明におけるハナビラタケの酵素処理物は、これらの乾燥物や濃縮エキスを包含するものである。
【0031】
本発明の造血刺激作用を有する組成物は、上述したハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体を有効成分として含むものであって、その含有量としては、0.01〜100質量%、さらに好ましくは、0.1〜80質量%である。この範囲であれば十分な効果を期待できる。
【0032】
本発明の造血刺激作用を有する組成物は、造血刺激作用、特に赤血球の増加作用を有しており、貧血の予防及び/又は治療並びに持久力増強に有効である。また、食経験のあるキノコ由来の組成物であることから、副作用がないという優れた特性も有している。
【0033】
ハナビラタケ子実体は食経験があり極めて安全なキノコであることから、本発明の造血刺激作用を有する組成物の使用量は厳しく制限されるものではないと考えられるが、概ね、下限は予防又は治療などの目的に応じた効果を発揮しうる量を、上限は使用のしやすさ、経済性等の観点から実際的な量を基準とし、通常、ハナビラタケ乾燥物に換算して成人1日あたり約0.01g〜約100g、好ましくは約0.1g〜約10gを使用すればよい。もちろん、使用する者の年齢、体重、症状、使用期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて投与することもできる。また、他の造血刺激剤と組み合わせて使用することもできる。
【0034】
本発明の第二の貧血予防及び/又は治療剤は、本発明の第一の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含むものである。これの使用量は厳しく制限されるものではないと考えられるが、概ね、下限は予防又は治療といった目的に応じた効果を発揮しうる量を、上限は使用のしやすさ、経済性等の観点から実際的な量を基準とし、通常、ハナビラタケ乾燥物に換算して成人1日あたり約0.01g〜約100g、好ましくは約0.1g〜約10gを使用すればよい。もちろん、使用する者の年齢、体重、症状、使用期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて投与することもできる。また、他の貧血予防もしくは治療剤と組み合わせて使用することもできる。
【0035】
本発明の第三の持久力増強剤は、本発明の第一の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含むものである。これの使用量は厳しく制限されるものではないと考えられるが、概ね、下限は疲労困憊に至るまでの時間の延長又は疲労回復などの目的に応じた効果を発揮しうる量を、上限は使用のしやすさ、経済性等の観点から実際的な量を基準とし、通常、ハナビラタケ乾燥物に換算して成人1日あたり約0.01g〜約100g、好ましくは約0.1g〜約10gを使用すればよい。もちろん、使用する者の年齢、体重、症状、使用期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて投与することもできる。また、他の持久力増強効果を有する剤と組み合わせて使用することもできる。
【0036】
上記した本発明の第二の貧血予防及び/又は治療剤並びに本発明の第三の持久力増強剤の形態としては、適用の仕方に応じて種々の形態にすることができる。経口投与する場合には、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤とすることができる。
【0037】
製剤には薬剤的に許容できる種々の担体を加えることができる。例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着香剤、着色剤、甘味剤、矯味剤、溶解補助剤、懸濁化剤、乳化剤、コーティング剤を含むことができるが、これらに限定されない。また、周知の方法により製剤を持続性、徐放性のものとしてもよい。
【0038】
本発明の第四の飲食品は、本発明の第一の造血刺激作用を有する組成物を含有するものである。ハナビラタケ子実体は食経験があり極めて安全なキノコである。この点から、この飲食品の摂取量は厳しく制限されるものではないと考えられるが、概ね、下限は貧血予防及び/又は治療、持久力増強といった目的に応じた効果を発揮しうる量を、上限は摂取のしやすさ、経済性等の観点から実際的な量を基準とし、通常、ハナビラタケ乾燥物に換算して成人1日あたり約0.01g〜約100g、好ましくは約0.1g〜約10gを摂取すればよい。もちろん、摂取する者の年齢、体重、症状、投与期間、治療経過等に応じて変化させることもできる。1日あたりの量を数回に分けて摂取することもできる。
【0039】
本発明の飲食品は、加工飲食品、医薬部外品、医薬品に用いられる水性成分、油性成分、植物抽出液、動物抽出液、粉末、界面活性剤、油剤、アルコール、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、色素、香料等を本発明の造血刺激作用を有する組成物とともに原材料に配合することにより調製される。形態としては、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤、乳剤、懸濁剤、溶液剤、酒精剤、シロップ剤、エキス剤、エリキシル剤などの健康飲食品類;麺類;パン類;無果汁飲料、果汁入り飲料、乳酸菌飲料、茶類飲料、コーヒー飲料、豆乳飲料、スープ類等の飲料類;スナック、クッキー、ガム、キャンディー等の菓子類;アイスクリーム、シャーベット、みぞれなど冷菓類;プリン、ババロア、ゼリー、ヨーグルト、ケーキなどのデザート食品類及びその他のインスタント食品とすることができる。
【0040】
本発明の飲食品は、本発明の造血刺激作用を有する組成物及び上記した成分などのほかに、さらに、鉄、カルシウム等の無機成分、種々のビタミン類、オリゴ糖、キトサン等の食物繊維、大豆抽出物等のタンパク質、レシチンなどの脂質、ショ糖、乳糖等の糖類、乳酸菌を含んでいてもよい。
【0041】
また本発明の飲食品は、既存の健康食品類、飲料類、菓子類、冷菓類、デザート類及びその他インスタント食品類に、上記した本発明の造血刺激作用を有する組成物を含ませることによっても得ることができる。
【0042】
さらに本発明の飲食品は、上記した本発明の造血刺激作用を有する組成物のほかに、他の造血刺激作用を有する剤、貧血予防及び/又は治療もしくは持久力増強に有効な成分を含ませるものであってもよく、そうした場合、より高い効果を持つ飲食品とすることができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の実施例を挙げるが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0044】
製造例1〔ハナビラタケ子実体の製造〕
ハナビラタケ子実体を以下のようにして製造した。カラマツの大鋸屑、小麦粉、栄養分(バナナ、蜂蜜、エビオス、ペプトン、塩化カルシウム、ハイポネックス)及び水を、大鋸屑:小麦粉:栄養分:水=100:11.5:1.9:51の重量比で含む菌床基材を準備した。この菌床基材(520g)を、850ml容のポリプロピレン製の培養瓶に入れ、常法に従って培養瓶を滅菌した後に、ハナビラタケの種菌(16g)を接種した。その後、この培養瓶を、23℃の温度下で、56日間放置することによりハナビラタケ子実体を収穫した。子実体の重量は培養瓶1本当たり140gであった。
【0045】
製造例2〔ハナビラタケ菌糸体の製造〕
ハナビラタケ菌糸体を以下のようにして製造した。イーストエキス0.4質量%、グルコース2質量%、リン酸2水素カリウム0.1質量%、リン酸水素2ナトリウム0.1質量%となるように水に溶解し、1Nの塩化水素でpH5.0に調製し、500ml容三角フラスコにそれぞれ200ml入れ、常法に従って滅菌した。この液体培地にハナビラタケの種菌を生育させた平板培地から径6mmの寒天片を打ち抜き、その一片を接種し、24℃の暗黒下で、21日間振とう培養(100rpm)することによりハナビラタケ菌糸体を収穫した。菌糸体の乾燥重量は三角フラスコ1本当たり2gであった。
【0046】
比較例1〔冬虫夏草とムイラプアマを含む液剤の作製〕
冬虫夏草(Cordyceps sinensis)とムイラプアマを含む液剤を以下のようにして作製した。冬虫夏草の中切に70%エタノールを加え、室温で約2時間放置した。更に、70%エタノールを加え、室温で3日間放置した後、浸出液を流出させ、エキスを得た。更に、得られたエキスを室温で2日間放置した後、ろ紙を用いてろ過して流エキスを得た。一方、ムイラプアマの根の細切りに70%エタノールを加え、ときどき攪拌しながら2日間抽出後、ろ過した。この残渣について、更に70%エタノールを加え、ときどき攪拌しながら、2日間抽出し、ろ過した。両ろ液を合わせ、減圧濃縮し、ムイラプアマエキスを得た。さらに、得られた冬虫夏草エキス(原生薬換算量として100mg相当量)とムイラプアマエキス(原生薬換算量として300mg相当量)を混合して液剤とした。
【0047】
実施例1〔造血刺激作用(in vivo)〕
ハナビラタケの造血刺激作用、特に赤血球増加作用につき、マウスを用いた試験により検討した。
【0048】
7週齢の雄性ICRマウス(日本エスエルシー)を1週間馴化飼育後、5匹ずつ4群に分け、製造例1のハナビラタケ子実体乾燥粉末を各個体に投与した。試験群は、対照群(水投与)、低用量群(500mg/kg)、中用量群(1000mg/kg)、高用量群(2000mg/kg)とした。これらの被検物質を強制的に経口投与し、その24時間後及び48時間後に大腿骨を採取した。大腿骨中の骨髄細胞を56℃で30分間非働化したfetal bovine serum (FBS)で洗い流して遠沈管に回収した。1000rpmで5分間の遠心分離後、濃い細胞浮遊液を作り、その少量をスライドグラスに滴下し、カバーガラスで塗末した。一晩乾燥させた後、パッペンハイム染色し、水洗、乾燥させた。その後、全赤血球中に対する幼若赤血球の割合を求めた。
【0049】
図1に結果を示す。
【0050】
図1より、ハナビラタケには幼若赤血球を増加させる造血刺激作用があることが示された。
【0051】
実施例2〔持久力増強効果(in vivo)〕
ハナビラタケには造血刺激作用が認められたことから、生体の酸素供給能力の向上による持久力増強作用が期待された。そこで、製造例1記載のハナビラタケ子実体について、マウスを用いた遊泳試験を行った。
【0052】
7週齢の雄性ICRマウス(日本エスエルシー)を1週間馴化飼育し、10匹ずつ3群に分け、対照群、比較群、ハナビラタケ群とした。対照群には水を、比較群には比較例1に示した冬虫夏草とムイラプアマを含む液剤(400mg/kg/day;両原生薬の合計換算量として)を、ハナビラタケ群には製造例1のハナビラタケ子実体乾燥粉末(400mg/kg/day)を週に5日間強制経口投与した。その5日目にはマウスの体重の15%体重相当のおもりをつけて強制遊泳させ、疲労によって遊泳が不可能となるまでの時間を遊泳時間として計測した。以上の操作を5週間繰り返した。
【0053】
図2に結果を示す。
【0054】
図2より、ハナビラタケ子実体には持久力増強作用があることが示され、その作用はムイラプアマと冬虫夏草を含有する液剤よりも強いことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】ハナビラタケ子実体粉末投与後の、全骨髄中赤血球における幼若赤血球の割合を示す図である。
【図2】ハナビラタケ子実体粉末、冬虫夏草とムイラプアマを含む液剤および水を継続してマウスに経口投与した際の遊泳時間を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハナビラタケの子実体及び/又は菌糸体を有効成分として含有することを特徴とする造血刺激作用を有する組成物。
【請求項2】
造血刺激作用が、赤血球を増加させる作用である請求項1に記載の造血刺激作用を有する組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする貧血予防及び/又は治療剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする持久力増強剤。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の造血刺激作用を有する組成物を有効成分として含有することを特徴とする飲食品。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−69080(P2008−69080A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246758(P2006−246758)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】