説明

造血前駆細胞の分化を増強する為の手段及び方法

本発明は、造血前駆細胞、リンパ球(好ましくはT細胞)及び単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞を含む培養物中において、分化した造血細胞の産生を刺激する為の手段及び方法を提供する。該方法は、とりわけ、該細胞又はその前駆体を、該単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞又は該リンパ球(好ましくはT細胞)上に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子の存在下において培養することを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
骨髄異形成症候群(MDS)は、血球減少、髄異形成及び、白血病の発症の増加したリスクにより特徴付けられる造血疾患の異質のグループ(heterogenous group)である。
【0002】
骨髄異形成症候群は、前白血病を含む多くの名前により以前は呼ばれていた。語「前白血病」は、それが誤解させるものであるので、もはや用いられていない。MDSを伴う患者の少数が急性白血病を発症するが、多くは発症しない。白血病への転換(leukaemic transformation)が起こるとき、それは一般に急性骨髄性白血病(AML)になる。MDSから発展するAMLは典型的には、原発性AML(既往の骨髄疾患を有さない患者に生じる症例)よりも、処置することが困難である。
【0003】
骨髄異形成症候群における骨髄は典型的には、正常よりも活発であり、しかしながら、循環中の血液細胞の数は減少されている。これは、骨髄において産生されている細胞の多くが、欠陥があり及び/又は、それらが骨髄を出発して血流に入る前に破壊されると考えられるからである。血液細胞の全ての種類の数の減少は、汎血球減少と呼ばれている。骨髄異形成症候群の他の共通する特徴は、骨髄及び血液細胞の様子における異常である。これらの異常(例えば正常顆粒を欠く白血球)が該状態に特徴的である。
【0004】
骨髄異形成症候群は、活発な髄しかし不適切な血液細胞産生の異常な組み合わせの故に、処置することが困難である。潜在的に病気に効くと考えられる唯一の処置は、より若く且つより適当な患者におけるドナー幹細胞移植である。残念ながら、多くの患者は、年をとりすぎていてこれが選択肢とらない。
【0005】
MDSと、再生不良性貧血のような免疫介在性の病因が提案されている他の髄不全症候群との間に、ある程度の重なりがある。例えば再生不良性貧血と髄が不活発であるMDSのサブタイプとの間を区別することはときどき困難でありうる。
【0006】
MDSは、いずれの齢でも診断されうるが、幼年時代はまれであり、そして若年成人では珍しい。診断時の年齢中央値は65〜75歳であり、患者の90%超が診断のときに50歳を超えている。
【0007】
男性は、女性よりも、MDSを発症しそうである。これは典型的高齢患者集団においてもっとも著しい。若年患者に起こる症例は、男性及び女性の間に、より均一に分布されている。
【0008】
症例の約20%は、化学療法又は放射線療法のいずれかを、他の病気のための彼らの処置として受けた患者に生じる。これは、二次性又は治療関連(t−MDS)の処置関連MDSとして知られている。これは、比較的若い年齢でMDSを発症する患者によりしばしばあてはまる。
【0009】
2つの分類体系がある:FAB及びWHO。1982年に、French−American−British共同研究グループがMDSの分類に関するガイドラインを提案した。骨髄細胞系列における形態学的異形成及び骨髄芽球の数が、患者を5つの別個のサブクラスに分けた。2001年に、FAB分類は、MDSの世界保健機構(WHO)分類において修正されそして最新のものとされた。この分類は、形態学に基づくだけでなく、MDS実体を定義する為の臨床的、遺伝的、免疫表現型的及び生物学的な所見も含んだ。
【0010】
現在用いられているとおり、FAB体系において骨髄異形成症候群の5つのタイプがある。
【0011】
これらは、不応性貧血、環状鉄芽球を伴う不応性貧血、過剰な芽球を伴う不応性貧血、転換期の(in transformation)、過剰芽球を伴う不応性貧血及び慢性骨髄単球性白血病である。
【0012】
不応性貧血(refractory anaemia:RA)
【0013】
赤血球を産生する骨髄細胞が異常にみえる。白血球及び血小板を産生する細胞もまた異常にみえるが、原始細胞(芽球細胞)の割合は有意に増加しない。該疾患の臨床的特徴は貧血であり、これは通常は軽症から中等症であるが、重症になりうる;しばしば赤血球が正常よりも大きな平均サイズを有し、これは大赤血球症と呼ばれる。白血球及び/又は血小板の数は正常よりも低くありうる。
【0014】
RAは、症例の約30〜45%を占める。RAの症例の約10%は、急性白血病に転換するであろう。RAを有する患者のいくつかは、5年又は10年さえを超えて健康に生き抜くが、平均生存は2〜5年である。
【0015】
環状鉄芽球を伴う不応性貧血(refractory anaemia with ring sideroblasts:RARS)
【0016】
RAにおけるものと同じ変化がみられるが、赤血球集団における追加の異常がある。赤血球前駆体は、正常に鉄を利用することができず、そして代わりに鉄が赤血球前駆体中の特徴的環に堆積する。これらの細胞は、環状鉄芽球と呼ばれる。もし、骨髄中に15%超の環状鉄芽球があるならば、該病気はRARSとして分類される。貧血はやはり共通の臨床的問題である一方で、白血球及び/又は血小板の数もまた正常より低くありうる。全体的な生存はRAにおけるものと同じであるが、急性白血病への転換は、症例の約8%でより低い。MDSのこの形は、症例の約15%を構成する。
【0017】
過剰の芽球を伴う不応性貧血(refractory anaemia with excess blasts:RAEB)
【0018】
この形では、骨髄中の前駆体血球細胞(芽球細胞と呼ばれる)における増加がある。正常骨髄は最大で約5%の芽球細胞を含む。
【0019】
RAEBを有する患者は、彼らの骨髄中に5〜20%の芽球細胞を有する。この形を有する患者は、彼らの血液中に血小板及び/又は白血球並びに赤血球の減少された数をより有しそうである。この形は、症例の約15%を占め、そして約1年の生存期間中央値を有する。
【0020】
RAEBを有する患者の約40%が、急性白血病を発症することになるであろう。
【0021】
以下のサブタイプが現在FABスキームに含まれているが、世界保健機構により作られた血液及び骨髄のガンの新規提案された分類は、それらが他のカテゴリーに移されることを示唆した。
【0022】
転換期の、過剰芽球を伴う不応性貧血(refractory anaemia with excess blasts in transformation:RAEB−t)
【0023】
これらの患者における所見は、RAEBにおけるそれらと同様であるが、骨髄における芽球のより高い割合(20〜30%)を伴う。この形は、症例の約5〜15%を占める。最近、これらの患者が今、急性骨髄性白血病を有すると分類されるべきであると提案された。overt白血病(骨髄中の30%超の芽球)への転化の割合は高く(60〜75%)、そして、処置は、急性骨髄性白血病について用いられるものと同様である。
【0024】
生存期間中央値は6ヶ月以下であるが、幹細胞移植を伴う又は伴わない化学療法が、いくつかの症例において延長された生存期間を作る。
【0025】
慢性骨髄単球性白血病(CMML)
【0026】
CMMLにおいて、赤血球前駆体は通常、異常に見える。CMMLの決定的な特徴は、血液中の白血球(単球)の1種類の数が、1×10/リットル超に増加されることである。骨髄は、芽球細胞の増加した割合を含むことがあり又は含まないこともある。貧血及び/又は少ない血小板がありうる。
【0027】
CMMLは、骨髄が該疾患の他の形において見られるものと同様の特徴を示すので、骨髄異形成症候群の1つの形であると考えられるが、骨髄増殖性疾患として知られる関連疾病と同様の特徴も示す。新たなWHO分類は、CMMLを、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患と呼ばれる別のカテゴリーに移す。
【0028】
CMMLは、骨髄異形成症候群の約15%を占める。CMMLの急性白血病への転換は、他の形の骨髄異形成症候群と同様の様式で起こる。生存期間中央値は、12〜18月のオーダーである。患者の15〜30%が、急性白血病に進行する。
【0029】
大抵の患者は、彼らの疾患についての明白な原因を有さないが、いくつかのよく確立されたリスク因子がある。高水準の或る化学物質、特にはベンゼン、への曝露、及び高水準の電離放射線への曝露は、両方ともMDSの推定原因と考えられる。MDSの増加した発生が、喫煙者及び元喫煙者において報告されており、タバコの煙中に存在する特定の化学物質と関連するであろう。
【0030】
全ての患者がすぐに積極的治療を受けるわけではないであろう。なぜなら、多くの症例において、早期の処置が全体的な生存期間に影響することの証拠がないからである。処置を開始していない患者は、定期的な健診を受けるであろう。これはしばしば、経過観察(watch-and-wait)といわれる。
【0031】
患者の過半について、処置の選択は、国際予後スコアリングシステム(IPSS)のリスクカテゴリー、彼らの年齢及び彼らの全身状態に基づくであろう。IPSSは疾患ステージ、冒された細胞タイプの数及び細胞遺伝学(MDSにおいて通常見られる染色体変化)についての情報も含む。これらは全て、結果(予後)を予測すること及び最適な処置を選択することにおいて関連があると分かった。4つのリスクカテゴリーが、IPSS内で認められている。これらは、低リスク、中間−1及び中間−2リスク、並びに高リスクである。
【0032】
成長因子は、体内で産生される天然物質であり、これは血液細胞の産生及び成熟を制御し、そして、処置において用いられうる。骨髄異形成症候群の処置において用いられる主な成長因子は、エリトロポエチン(EPO)、これは赤血球の産生を刺激する、及びG−CSF/GM−CSFと呼ばれる因子、これは顆粒球(白血球)の産生を刺激する、である。残念ながら、エリトロポエチンは、MDSを有する患者の約15〜20%にだけ有益であると分かり、そして、これらは主に、輸血に依存しない不応性貧血を有する患者である。EPOとG−CSFの組み合わせにより処置されたMDS患者の約40%が、彼らの貧血の改善を示すであろう。G−CSF単独は、慣用の治療に応答しない重度の感染エピソードの間の短期間処置のために用いられうる。
【0033】
実験的治療
【0034】
MDSの処置におけるそれらの潜在的役割を決定する為の比較研究(臨床試験)において現在試験されているいくつかの処置アプローチがある。これらは、MDS細胞が正常な成熟を受けることを誘発することを試みる、サイトカインと呼ばれる天然の生化学物質の使用を含む。
【0035】
今まで研究されてきたサイトカインは、成長因子、インターロイキン及びインターフェロンを含む。サイトカインが生存期間を延長するであろうこと又は寛解を誘発するであろうことは予測されず、むしろそれらがMDS患者についての生活の質(quality of life)を改善するであろうこと及び輸血及び抗生物質処置のニーズを減少するであろうことが期待される。汎血球減少がMDSにおける病的状態及び死亡率の主要な原因であるので(少数だけだALMへと転換するであろう)、血球減少を改善することは患者の健康状態を増加するであろう。
【0036】
現在調査下にある他の有望な試薬は、低メチル化剤(hypomethylating agent)、サリドマイド及びその類似体レナリドマイドである。メチルトランスフェラーゼインヒビター(5−アザシチジン及び5−アザ−2'−デオキシシチジン)が現在、MDSを処置する為のFDA承認を有する唯一の薬剤である。
【0037】
MDSの、免疫により媒介された病因
【0038】
MDSにおけるBM疾患の病因は複雑であり、そして、造血前駆細胞における内因性欠陥とこれらの前駆細胞が存在するBMミクロ環境との間の繊細な相互作用に関連すると考えられる(参考文献)。免疫機構が汎血球減少の病因において重要な役割を果たすことの増えている証拠がある。この証拠は、自己Tリンパ球がMDS前駆体増殖を抑制することのin vitro実験、及び、選択された患者におけるオリゴクローナルT細胞増殖の存在の報告から来ており、抗原により駆動される病態生理学を想起させる。BM疾患のプロセスにおける免疫機構の役割についての示唆は、低リスクMDS患者の最大で30%が、免疫抑制剤、例えばシクロスポリンA(CsA)及び/又は抗胸腺細胞グロブリン(ATG)など、に応答するとの観察から来る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
多くの研究は、この免疫プロセスにおけるリンパ球の役割に焦点を当てた。本発明において、我々は、CD40を発現する細胞、特には単球、が、免疫細胞関連骨髄疾患を患う患者のBMにおいて起こる免疫反応の一部であること、及び、これらのCD40を発現する細胞がリンパ球に呼応して作用することを示す。MDS単球のCD40刺激が、有意に増加したTNFα産生をもたらすことが示された。我々はさらに、共刺激性分子(CD40、CD80及びCD86)の単球発現が増加されることを示す。また、CD40の天然リガンド、CD154が、Tヘルパー細胞により、有意により多く発現される。我々はさらに、これらの個体からの骨髄細胞の培養物中において、これらの共刺激性分子の1以上と特異的に相互作用する分子が、該結合性分子の無い比較培養物よりも多くの数の産生された子孫細胞を結果することを示す。
【課題を解決するための手段】
【0040】
1つの実施態様において、本発明は、造血前駆細胞、CD40レセプターリガンドを発現する細胞、好ましくはリンパ球、及びCD40レセプターを発現する細胞、好ましくは単球 /マクロファージ及び/又は樹状細胞を含む細胞のコレクションを培養する為の方法であって、該細胞又はその前駆体を、該CD40レセプターリガンドを発現する細胞、好ましくはリンパ球又はCD40レセプターを発現する細胞、好ましくは単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞上に発現された共刺激性分子に特異的な結合性分子の存在下で培養することを含む上記方法を提供する。本発明はさらに、造血前駆細胞、CD40レセプターリガンドを発現する細胞、好ましくはリンパ球、及びCD40レセプターを発現する細胞、好ましくは単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞、を含む培養物中における、分化した造血細胞の産生を刺激する為の方法であって、該細胞又はその前駆体を、該CD40レセプターリガンドを発現する細胞、好ましくはリンパ球、及びCD40レセプターを発現する細胞、好ましくは単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞、上に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子の存在下で培養することを含む上記方法を提供する。そのような培養物は、そのような結合性分子の無い培養物よりも、より多くの分化した細胞を産生する。種々のタイプの培養物が用いられうる。培養は、典型的には、培養培地と一緒に該細胞をインキュベートすることを含む。該現象は、「標準の」培養物中において及びいわゆるフィーダー層上の培養物中において、いわゆる長期間骨髄培養において典型的に行われるように、検出されうる。該造血前駆細胞は、培養の開始の際に存在してよく、又は該培養物に導入されたより原始的な前駆細胞/幹細胞から産生されうる。本明細書において定義されるとき、(造血)幹細胞は、成体の造血系の少なくともいずれかの種類の造血細胞を生じさせる能力を有する細胞である。造血幹細胞又は造血前駆細胞は、血液系から得られる。他の種類の幹細胞、例えば胚性幹細胞など、は当該定義に含まれない。造血幹細胞は、赤血球、白血球及び血小板を含む、通常の血液成分を生じさせる。幹細胞は通常、骨髄中及び血液中に位置されており、そして、移植の為に回収されうる。造血幹細胞は、広範な自己再生能力を有する。該幹細胞は、より分化した前駆細胞のカスケードを介して、種々の段階で成熟最終細胞へ分化する。これらのより分化した前駆細胞は、より限定された自己再生能力を有する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】共刺激性分子CD40、CD80及びCD86の表面発現についてのPB CD14+単球のフローサイトメトリー分析結果を示す図である。
【図2】CD40Lの表面発現についてのPB Tヘルパー細胞のフローサイトメトリー分析結果を示す図である。
【図3】精製された単球のCD40刺激は、MDS患者において、有意により高い水準のTNF−αを誘発することを示すグラフである。
【図4】単球は、in vitro骨髄増殖を抑制し、そして、これは、CD40レセプターをブロックすることにより克服されうることを示すグラフである。
【図5】マウス5D12の軽鎖及び重鎖の可変領域並びに脱免疫化5D12を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明の方法は、単球又はリンパ球の少なくともいずれかが、免疫細胞介在性骨髄疾患(immune cell mediated bone marrow failure)を患う個体又は患うリスクがある個体から得られた場合に特に有用である。これらの個体からの該言及された細胞が活性化され、又は活性化された細胞のより多い画分を少なくとも含むこと、及び結果としてより原始的な前駆細胞からの分化した細胞の産生が減少されることが考えられる。これは少なくとも部分的に、これらの個体の血液中の分化した細胞の観察された減少を説明する。好ましい実施態様において、該単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞は、免疫細胞介在性骨髄疾患を患う個体又は当該骨髄疾患を患うリスクのある個体から得られる。
【0043】
免疫細胞介在性骨髄疾患病の非限定的な例は例えば、移植片対宿主病(GVHD)及びその逆、宿主対移植片(HVG)病(HVGD)である。好ましい実施態様において、該免疫細胞関連骨髄疾患病は、クローン性骨髄疾患である。そのようなクローン性疾患の好ましい例は、骨髄異形成症候群(MDS)、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、赤芽球ろう(PRCA)、骨髄線維症又は大顆粒リンパ球性白血病(LGL)である。理論にとらわれることなく、該免疫介在性疾患は、前駆細胞及び分化した細胞のより活発な発生を結果すると考えられる。このより活発な発生が最終的に、選択及びすなわちクローン性を結果する。
【0044】
本発明はさらに、個体における血球減少及び/又は骨髄疾患の処置の為の方法であって、該個体に、単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞又はリンパ球に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子を与えることを含む上記方法を提供する。さらに、個体における血球減少及び/又は骨髄疾患の処置の為の方法であって、該個体に、該個体中の免疫活性化を減少し及び/又は抑制する為の結合性分子を与えることを含む上記方法が提供される。語「血球減少」は、本明細書において、血液中を循環する、細胞の数の減少又は細胞の1種類の数の減少として定義される。いくつかの種類の血球減少がある;低い赤血球数:貧血;低い白血球数:白血球減少又は好中球減少(好中球は全ての白血球の少なくとも半分を構成するので、それらは白血球減少においてはほとんどいつも低い);低い血小板数:血小板減少;低い赤血球、白血球及び血小板の数:汎血球減少。本発明は特に、骨髄細胞系列の血球減少の処置に適当である。
【0045】
該細胞の共刺激性分子を介した単球/マクロファージ及びT細胞の刺激に関与する経路の抑制が、該言及された培養物中又は該循環中のより多くの分化した細胞を結果することが示された。該共刺激性分子のいずれか1つはすなわち、免疫細胞介在性骨髄疾患の処置における標的である。共刺激性分子の好ましい例は、B7抗原、CD40レセプター及びCD40レセプターリガンド(CD154)である。しかしながら、いくつかの他の共刺激性分子、例えば腫瘍壊死因子レセプター(TNFR)ファミリーメンバー CD27、CD30、CD137(4−1BB)、HVEM、GITR及びOX40(CD134)など、も存在する(参考文献:Watts TH,Annu Rev Immunol 2005(23)23−68)。CD40は、樹状細胞(DC)上にB7ファミリーリガンド並びにいくつかのTNFファミリーリガンドを誘発するその能力の故に、T細胞共刺激にとっての支配的なスイッチとして機能しうる(参考文献1、13〜18、Watts THから)。
【0046】
特に好ましい実施態様において、該共刺激性分子は、単球/マクロファージ上のCD40レセプター又はリンパ球上、特にはT細胞上、のCD40リガンド(CD154)である。好ましい実施態様において、該T細胞は、刺激性T細胞である。好ましくは、該刺激性T細胞はTヘルパー細胞、好ましくはCD4T細胞である。
【0047】
該結合性分子は、該共刺激性分子に対する特異性を有する結合性分子の任意のタイプでありうる。好ましい実施態様において、該結合性分子は、タンパク質又はタンパク質性の結合性分子である。好ましくは、該結合性分子は、非抗体足場タンパク質バインダーのいずれかのファミリー、例えばアンチカリン(anticalin)、C型レクチンドメインバインダー、アビマー(avimer)、アドネクチン(Adnectin)、及びDARPins(設計されたアンキリン繰り返しタンパク質:Designed Ankyrin Repeat Proteins)などであるがこれらに限定されない、に属する(参考文献Sheridan C. Nature Biotechnology 2007,(25),365−366)。
【0048】
好ましくは、該結合性分子は、抗体の重鎖若しくは軽鎖の可変ドメイン又はその等価物を少なくとも含む。そのようなタンパク質の非限定的な例は、VHH、ナノボディ(nanobody)、Human Domain Antibody(dAb)、Unibody、Shark Antigen Reactive Protein(ShArp)、Small Modular ImmunoPharmaceutical(SMIP(商標)) Drug、モノボディ(monobody)及び/又はIMab(参考文献Sheridan C.Nature Biotechnology 2007,(25),365−366)である。抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン又はその等価物を少なくとも有する結合性分子が好ましい。そのような結合性分子の非限定的な例は、F(ab)−断片及び単鎖Fv断片である。標的に特異的に結合する為に操作されうるIGフォールドを有する多くの様々なタンパク質が存在する。そのような操作されるタンパク質は、抗体の等価物と考えられる。好ましい実施態様において、該結合性分子は抗体を含む。該抗体は、天然の抗体又は合成の抗体でありうる。好ましい実施態様において、抗体は、抗体のCDR1、CDR2、CDR3領域を含む。しかしながら、例えばファージディスプレーにより選択されうるようなCDR様領域の人工的生成も、本発明に含まれる。好ましい実施態様において、該抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体又はヒト様抗体である。(それらの特異性は別として)免疫系とさらに相互作用しない結合性分子が特に好ましい。抗体の場合、該抗体が、IgG4定常領域、又はIgG4様定常領域を含むことが好ましい。好ましくは、該定常領域はヒト定常領域である。例えば、IgG1分子の定常領域を、それがその標的に結合するともはや補体系を活性化しないように変異させることが可能である。
【0049】
該結合性分子は好ましくは、非刺激性及び/又は拮抗性の結合性分子である。そのような分子は、それらに対し特異的である共刺激性分子に結合し、そして、該共刺激性分子を通じてシグナル伝達(活性化)を防ぎ及び/又は抑制する。好ましい実施態様において、該結合性分子は、CD40特異的抗体又はその等価物である。好ましくは、該抗体は、非刺激性CD40特異的抗体である。最も好ましくは、該抗体は、マウス抗ヒトCD40モノクローナル抗体5D12、キメラ5D12抗体又は脱免疫化(deimmunized)5D12抗体である。マウス5D12並びに脱免疫化5D12の軽鎖及び重鎖の可変領域が、図5中に描かれている。他の実施態様において、該抗体は、完全ヒト抗CD40モノクローナル抗体15B8である(国際公開第2002028904号パンフレット)。
【0050】
他の実施態様において、該結合性分子は、CD40L(CD154)特異的抗体又はその等価物である。好ましくは該抗体は、ATCCアクセスナンバーHB−10916を有するモノクローナル抗体5c8又はモノクローナル抗体IDEC131(Dumont FJ,Curr Opin Investig Drugs.2002 May;3(5):725−34)である。
【0051】
本発明はさらに、造血前駆細胞、リンパ球(特にはT細胞)及び単球/マクロファージ/樹状細胞を含む培養物中で分化した造血細胞の産生を刺激する為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法を提供する。さらに、免疫細胞介在性骨髄疾患の処置の為の医薬の調製の為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法が提供される。さらに他の実施態様において、本発明は、造血前駆細胞、リンパ球(特にはT細胞)及び単球/マクロファージ/樹状細胞を含む培養物中において分化した造血細胞の産生を刺激する為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法を提供する。
【0052】
さらに、免疫細胞介在性骨髄疾患の処置の為の医薬の調製の為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法が提供される。
【実施例1】
【0053】
患者、材料及び方法
【0054】
患者データ及び試料
【0055】
全ての試料の予備調製(prelevation)及び取扱いは、University Hospital of Leuvenの地方倫理委員会のガイドライン(これはヘルシンキ宣言に従う)に従い実施された。MDSを組織学的に証明された95の異なる患者からの試料がこの研究のために用いられた。患者の特徴は、表1にまとめられている。試料は、インフォームドコンセントの後に、ルーチンの抹消血(PB)及びBMサンプリングで得られた。患者の大部分(95の患者のうち70)は、試料が収集されたときに、MDSについての治療を受けていなかった。細胞遺伝学的分析についてのデータが、Center for Human Genetics of the University Hospital of Leuven及びCytogenetic Lab of the Bordet Institute of Brusselsにより提供された。
【0056】
加えて、PB試料が、60の健康なボランティアから得られた。フローサイトメトリー研究において用いられたドナー(n=29)は、MDS患者と年齢が合った(平均年齢68、範囲59〜82)。11の健康な若いボランティア(平均年齢21、範囲19〜24)のBM吸引物もまた、対照試料として働く為に得られた。
【0057】
血液学的な値が、Sysmex XE−2100自動Hematology Analyzerにより決定された。血清C反応性タンパク質(CRP)濃度が、日立Modular Analytics D 自動アナライザーで、粒子により増大される免疫濁度測定方法(particle-enhanced immunoturbidimetric method)により(CRPLX、Roche Diagnostics)、測定された。
【0058】
フローサイトメトリー
【0059】
PB及びBM試料が、EDTAナトリウムにより被覆されたチューブ中に集められ、そしてすぐに処理された。10:1NHClバッファーによる溶解及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Bio−Whittaker Europe、Cambrex、ベルギー)による洗浄の後、細胞が以下の蛍光イソチオシアネート(FITC)、フィコエリトリン(PE)及びPeridinin chlorophyll(PerCP)により複合体化されたモノクローナル抗体(MoAb):抗CD3、抗CD4、抗CD14、抗CD40L、抗CD40、抗CD80、抗CD86、抗CD45(全てBecton Dickinson、Erembodegem、ベルギー、から)により免疫染色された。適切なアイソタイプマッチ陰性対照が、それぞれの試料について用いられた。細胞が、10μlのモノクローナル抗体と一緒に30分間4℃で暗所においてインキュベートされ、その後、1回洗浄されそして400μlのCellFIX(Becton Dickinson)中に再懸濁された。試料は、FACScan又はFACSCanto Flowcytometer(Becton Dickinson)で分析された。単球の表現型を決定する為に、我々はCD14+集団について、中間の(intermediate)側方散乱(SSC)によりゲートし、そして、CD14及びCD40、CD14及びCD80、並びにCD14及びCD86について二重陽性である、この集団中の細胞のパーセンテージを数えた。同様に、我々は、CD4及びCD3について二重陽性である低いSSCを伴う該集団についてゲートして、CD40Lを発現したこの集団のパーセンテージを決定した。
【0060】
単球の分離及び刺激
【0061】
PB単核細胞(PBMNC)が、Ficoll−Hypaque(Lymphoprep、Nycomed Pharma、オスロ、ノルウェー)のステップ勾配上で分離され、そして、1回、PBS中で洗浄されそしてその後MACSバッファー中で洗浄された。CD14+細胞は、製造者の指示に従い、CD14+磁性ビーズ(Miltenyi Biotec、Bergisch Gladbach、ドイツ)を用いてMACSにより分離された。分離されたCD14+細胞は、トリパンブルー排除を用いて数えられた。それらは次に、24ウェルプレート(Falcon Multiwell、Becton Dickinson)のウェル中の、ペニシリン及びストレプトマイシン(Gibco BRL Life Technologies、ペーズリー、英国)並びに15%ウシ胎仔血清(FBS,Stem Cell Technologies、バンクーバー、BC、カナダ)を補われたIscoveの修正Dulbecco培地(IMDM、Gibco BRL Life Technologies、ペーズリー、英国)中に、mL当たりウェル当たり3×10細胞の密度で、プレートされた。37℃で5%のCOを伴う、加湿されたインキュベーター中において1週の培養後、培地が、リポ多糖(LPS、Santa Cruz Biotechnology、ドイツ)を1μg/mLで補われた又は10μg/mLでのクローン64(アゴニスト抗ヒトCD40モノクローナル抗体、Pangenetics、オランダ)及び1000IU/mLの最終濃度でのインターフェロンγ(IFN−γ、Santa Cruz Biotechnology、ドイツ)との混合物を補われた新鮮培地により置き換えられた。24時間後、上清が回収され、そしてさらなる分析まで−20℃で貯蔵された。
【0062】
コロニー形成アッセイ
【0063】
生存細胞の計数に続き、BMMNC(MDS患者について5×10、対照について2.5×10)が、30%FBS、50ng/mLの幹細胞因子、10ng/mLの顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子、10ng/mLのインターロイキン−3、及び3U/mLのエリトロポエチンを含むMethoCult H4434培地(StemCell Technologies、バンクーバー、BC、カナダ)中に調製された。それぞれの試料について、ch5D12(アンタゴニストキメラ抗ヒトCD40抗体、PanGenetics、オランダ)を有さないチューブ及びch5D12を10μg/mLの最終濃度で有するチューブが調製され、そしてまったく同じウェル中にプレートされた。14日のインキュベーションに続き、プレートは倒立顕微鏡を用いてスコア化された。細胞数及びコロニーの形態学に基づき、我々は、顆粒球−単球コロニー形成単位(CFU−GM)、及びBFU−Eとしての、シングル又はクラスターの、赤芽球コロニー形成単位を、定めた。
【0064】
酵素連結イムノソルベントアッセイ
【0065】
TNF−α(BD、Pharmingen)が、製造者の推奨により、ELISAによって検出された。ELISAの感度限界は1.25pg/mLであった。
【0066】
統計
【0067】
全ての統計分析は、Prism3.0ソフトウェアを用いて実施された。我々は、2つの集団の間の平均値を比較する為に、Mann−Whitney u検定を用いた。Wilcoxonマッチドペアー検定(Wilcoxon matched pairs test)が、TNF−α産生の結果及びBM培養物の結果を分析する為に用いられた。スピアマンの検定が、2つの変数の間の共分散を分析する為に用いられた。P値は、両側検定(double-sided test)を表す。P値<0.05は有意と考えられた。
【0068】
結果
【0069】
MDSについてのCD40、CD80及びCD86の増加した発現水準
【0070】
単球
【0071】
フローサイトメトリーを用いて、我々は61のMDS患者のPB中の循環する単球の表現型を分析した。FAB分類に従い、37の患者が不応性貧血(RA)と診断され、20が環状鉄芽球を伴う不応性貧血(RARS)及び4が過剰な芽球を伴う不応性貧血(RAEB)と診断され;そしてWHO分類に従い、1の患者がRAと診断され、30が多系列異形成を伴う不応性血球減少(RCMD)と診断され、1がRARSと診断され、19が他系列異形成及び環状鉄芽球を伴う不応性血球減少(RCMD−RS)と診断され、3が、5q−症候群と診断され、3がRAEB−1と診断され、1がRAEB−2と診断され、及び3が分類されないMDS(MDS−u)と診断された。大部分(61のうち40)は、試料収集の前にMDSについての処置を何ら受けなかった。MDSについての治療は、輸血(n=9)、成長因子(4のrhEPO、1のrhG−CSF及び1のrhEPOとrhG−CSFとの組み合わせ)、鉄キレート化治療単独(n=2)又はこれらの治療の組み合わせ(n=4)を含んだ。単球の表現型に対する年齢の何らかの影響を排除する為に、29の年齢が合った対象のPBが、対照集団として働いた。我々は、単球を、CD14を発現する中間のSSC特徴を有するそれら細胞として定めた。我々は、CD40を共発現する単球のパーセンテージを計数するためにこの集団についてゲートした(図1Bを参照されたい)。CD40Lを発現するT細胞により活性化すると、単球は、CD40の発現を上方制御するが、B7分子CD80及びCD86の発現も上方制御する18、19。それ故に、我々は、CD80及びCD86の発現水準も分析した。
【0072】
循環する単球の絶対数は両方の集団において同程度であった。MDS患者は、年齢が合った対照の対象と比較して、有意により多い循環するCD40+(10.2%±1.1vs.2.8%±0.3、p<0.0001)、CD80+(3.8%±0.5vs.1.7%±0.2、p=0.004)及びCD86+(74.1%±3.0vs.56.9±4.3、p=0.001)単球を有した。同じ観察が、23の患者のBMにおいてなされた(データは示されていない)。我々は、CD40+及びCD80+の単球のパーセンテージの間の非常に有意な相関を発見した(Spearman r=0.54、p<0.0001)。これは、同じ患者において、両方の活性化マーカーが高い水準で発現されていることを示唆する。しかしながら、CD86の発現は、CD40又はCD80の発現水準のいずれとも有意に相関しなかった、これはおそらく、有意なCD40又はCD80の発現の不在下においてさえ、単球はすでに有意な水準のCD86を発現するからである。
【0073】
MDSのTヘルパー細胞上のCD40Lの増加した発現
【0074】
我々は、患者及び正常対照の同じ集団におけるTヘルパー細胞の表面のCD40L(CD154)の発現も評価した。Tヘルパー細胞は、低いSSC特徴を有するCD3+/CD4+であると定められた。CD40Lは、年齢が合った対照と比較して、MDS患者からのTヘルパー細胞上に有意により多く発現されることが分かった(4.2%±0.4vs.2.2%±0.2、p<0.0001、図2を参照されたい)。これは、MDS患者のBM吸引物中に存在するTヘルパー細胞についても見られた(5.0%±0.8vs.2.6%±0.5、p<0.01)。
【0075】
さらに、我々は、単球によるCD40の発現とTヘルパー細胞によるCD40L発現との間の相関を発見した(Spearman r=0.32、p=0.02)。これは単球及びリンパ球の活性化が同じ患者において起こることを示唆する。
【0076】
CDレセプターの活性化は、MDSにおけるより高いTNF−α産生を誘発する
【0077】
我々は次に、MDS患者からの又は健康対照ドナーからの単球がアゴニスト抗ヒトCD40抗体又はLPSにより刺激されたときに、TNF−α産生が異なるかどうかを評価した。それ故に、我々は、20のMDS患者及び25の健康な対照のPBからのCD14+細胞を分離した。FAB分類に従い、これらのMDS患者は、RA(n=12)、RARS(n=6)、RAEB(n=2)として、並びに,WHO分類に従いRCMD(n=10)、RCMD−RS(n=6)、RAEB−1(n=2)、5q−症候群(n=1)及びMDS−u(n=1)として診断された。成熟を誘発するための7日の培養後、CD14+細胞が、TNF−α産生を誘発する為の2つの異なる刺激(LPS又はアゴニスト抗ヒトCD40mAb(clone64、PanGenetics、オランダ26)に24時間付された。与えられた刺激に対する応答を最大化する為に、我々は高濃度のLPS(1μg/mL)を用いた。同じ理由のために、我々は、IFN−γがCD40レセプターの転写を誘発すると知られているので27、該アゴニスト抗CD40抗体をIFN−γ(最終濃度1000IU/mL)と組み合わせた。
【0078】
CD14+分離の平均純度は、対照について97.1%(範囲91.9〜99.7%)であり、そしてMDS患者について97.2%(範囲95.0〜98.9%)であった。刺激されていないCD14+細胞のTNF−α水準は両方の集団において低かった(3±1pg/mL)。図3において示されるとおり、LPSは、患者(123±44pg/mL)及び対照(100±32pg/mL)におけるTNF−αの同様の水準を誘発した。対照的に、IFN−γと組み合わせられたアゴニスト抗CD40抗体は、正常対照と比較して、MDS患者からのCD14+単球による有意により高いTNF−α産生を誘発した(449±131vs.67±20pg/mL、p=0.009)。
【0079】
単球によるCD40、CD80及びCD86の発現と臨床的特徴との間の相関
【0080】
我々は、CD14+単球上及びTヘルパーリンパ球上のそれぞれにおける、CD40及びCD40Lの発現と、病気又は患者の特徴との間に相関があるかどうかを評価した。第一に、我々は、CD40+又はCD80+単球のパーセンテージと血液学的値(ヘモグロビン水準、血小板、白血球及び好中球絶対数(ANC))とを関係付けた。我々は、ANCと、循環するCD80+単球のパーセンテージとの間の負の相関を観察した(r=−0.26、p<0.05)。同じ観察が、CD80+単球のパーセンテージがBM採取のときでのPB ANCと逆に相関するところの骨髄試料についてなされた(r=−0.51、p<0.05)。CD40又はCD86の発現と血液学的パラメーターとの間に有意な相関は無かった。注目すべきは、健康なドナーにおいて、我々は、ANCとCD80+単球のパーセンテージとの間の逆の相関も発見した(r=−0.49、p<0.01)。この種の分析は因果関係の実証を許すものでないが、これは、単球の活性化が、病気の状態に関係なく、より低いANC値に関係しうることを示唆する。我々は、芽球パーセンテージと共刺激性分子の発現との間の相関を発見しなかった。我々はまた、単球上のCD40、CD80及びCD86並びにTヘルパー細胞上のCD40Lの発現とCRPの血清濃度とを関連付けた。CRP水準は概して低く、そして共刺激性分子の発現と独立していた。臨床的兆候又は自己免疫の病歴が5の患者において観察されたが、CD40、CD80又はCD86発現の水準と相関しなかった。
【0081】
次に、我々は、単球上のCD40、CD80又はCD86の発現が、FABのサブタイプ、WHOのサブタイプ、IPSSスコア、細胞遺伝学、性別又は以前の処置に従い、疾病状態に相関するかどうかを決定した。我々は、RA、RARS及びRAEBの患者の間に差異を発見しなかった。興味深いことに、我々は、核型異常トリソミー8を有する患者が、循環するCD40+単球の最も高い水準を有することを発見した。中間−1のIPSSスコアを有する患者は、低リスク患者よりも有意により多いCD40+単球を有したが、これは、全てのトリソミー8の患者が中間−1リスクスコアを有したという事実に起因しえた。以前に処置を受けた患者と未処置の患者との間に、単球によるCD40又はCD80の発現に関して、差異は無かった。
【0082】
最後に、我々は、CD40を発現する単球のパーセンテージに基づき、対照集団において見られたCD40を発現する単球の最高の値をカットオフ値(6.4%)として用いて、患者を2つの集団に分けた:<6.4%のCD40+単球を有する患者の1集団、及び>6.4%のCD40+単球を有する患者の集団。高水準のCD40+単球は、より高いIPSSスコア、中間の及び乏しい細胞遺伝学的リスクスコア、60歳より低い年齢及びトリソミー8の存在に一致した(表2を参照されたい)。後者の2つの因子は、多変数分析において、免疫抑制的治療に対する応答の予測的な独立的因子であるとして同定された。注目すべきは、好ましい(favourable)核型異常を有する患者(del(5q)を有する3の患者、del(20q)を有する2の患者、及びYを有する2の男性)は、それらの循環する単球上にCD40の低い発現を有した。
【0083】
単球上のCD40レセプターを拮抗することは、MDSにおいて増加したコロニー形成をもたらす。
【0084】
我々は、CD40レセプターが単球上で上方制御されること及びこのレセプターの活性化が増加したTNF−α産生をもたらすことを実証したので、我々は、CD40シグナル伝達の干渉がin vitroでの造血前駆体増殖に影響しうるとの仮説を立てた。この仮説を試験する為に、我々は、CD40シグナル伝達を抑制する為に、アンタゴニスト抗CD40mAb(ch5D12、PanGenetics、オランダ)を用いた22。ch5D12はキメラ抗体であり、ヒト抗体の定常領域に連結された、図5の抗体5D12mの可変領域(Vh及びVlの両方)を有する。
【0085】
我々は、ch5D12の存在下又は不在下において26の患者のBMMNCをプレートした。患者は、FABに従いRA(n=17)、RARS(n=4)及びRAEB(n=5)として診断され、そしてWHOに従いRCMD(n=14)、5q−(n=2)、MDS−u(n=1)、RCMD−RS(n=4)、RAEB−1(n=2)及びRAEB−2(n=3)として診断された。有意により多いCFU−GM及びBFU−Eが、ch5D12の無い培養物と比較して、ch5D12の存在下において増えた(図4Aを参照されたい)。この効果が単球依存的であることを証明する為に、我々はまた、MACSカラムによりCD14陽性細胞を枯渇したBMMNCの培養物にch5D12を添加した。ch5D12の存在は、CD14を枯渇したBMMNCのコロニー形成を変化させなかったが、ch5D12は、全てのBMMNCの存在下における同じ試料においてコロニー産生を増加した(図4Bを参照されたい)。我々は、健康な対照(n=9)のBMMNC培養物におけるCFU−GM及びBFU−Eコロニー数に対するch5D12のこの効果を観察しなかった。
【0086】
CD40−CD40L相互作用が造血前駆体に影響しうることをさらに実証する為に、我々は、BMMNC内のCD40L+Tヘルパー細胞又はCD40+単球の数の間に相関が存在するかどうかを試験した。我々は、その特定の患者集団において、BFU−Eの数とCD40L+Tヘルパー細胞のパーセンテージとの間の逆の相関を実証した(r=−0.54、p=0.03)。CFU−GMのより低い数についての、CD40+単球のパーセンテージを増加することを伴う傾向もあったが、これは有意でなかった(r=−0.42、p=0.07)。
【0087】
考察
【0088】
血球減少は、MDSを有する大抵の患者の主症状であり、そして、病的状態及び死亡率の主要な原因である。異常クローン性前駆細胞の存在は、骨髄疾患の発症において重要な役割を果たし、そして免疫増強機構がこのプロセスにさまざまな程度で寄与する。最も前の研究は、このプロセスにおけるリンパ球の役割に焦点を当てた。自己のT細胞は、MDSにおける前駆細胞の増殖を抑制し2、3、そしてこの効果はATGによる成功裏の処置後に消えうる。免疫により媒介された造血抑制の役割は、トリソミー8のMDSにおいて最も広く明確にされた。MDS患者の一般集団について示されたものと一致して4,6、Sloand及び同僚は、T細胞の拡大したクローン性集団が、トリソミー8を有する全ての患者において見られ得ることを実証した。加えて、彼らは、これらの患者における自己T細胞の抑制作用が、この特定のクローン型を有するCD8+細胞に限定されることを示した。
【0089】
これらの洞察にもかかわらず、免疫により媒介される機構が、MDSにおいて見られる汎血球減少にどのように寄与するのか、いまだ知られていない。免疫抑制的治療に応答するトリソミー8患者において、余分な染色体8を有する前駆細胞の数は増加し、これは、これらの患者における該Tリンパ球の拡大したクローン性集団が、遺伝的に異常な造血前駆体の増殖を制御することを示唆する。該悪性クローンに特異的に方向付けられると分かるこの免疫応答に関連する骨髄疾患は、それ故に、残存する正常造血細胞に対するバイスタンダー効果(bystander effect)から来るべきである。どの因子がこのバイスタンダー現象を引き起こすかは知られておらず、そしていくつかの機構が、T細胞による正常前駆細胞のこの抑制について示唆されてきた:活性化T細胞によるサイトカインの放出28又は分子模倣又はエピトープスプレッディングを通じた標的の交差認識29
【0090】
この研究の目的は、免疫により媒介されるこのプロセスにおける単球の可能な役割を調査することであった。単球は、TNF−αの主な源である。活性化T細胞は、CD40−CD40L相互作用を介して、単球によるTNF−α産生を誘発することができる。CD40レセプターは、TNFレセプター(TNFR)スーパーファミリーの一員である、45〜50kDaのI型リンタンパク質である。単球は低水準のCD40を発現し30、しかし活性化するとCD40遺伝子の発現は誘発され、これはIFN−γによる刺激によって最も明白である27ことが実証された。TNF−αの産生に加えて、CD40ライゲーションもまた、他の炎症促進性サイトカイン及びケモカイン、例えばIL−1、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12及びマクロファージ炎症性タンパク質1aなど、の分泌を結果する18、19。加えて、Tヘルパー細胞上に存在する、CD40LによるCD40のライゲーションは、共刺激性分子(CD40、CD80、CD86、MHCクラスII分子)及びFasLの上方制御を促進する。CD40Lは、活性化Tヘルパー細胞上に一過性に発現され、そして、いくつかの自己免疫状態においてPBのTヘルパー細胞上に存在すると示された。MDSにおけるリンパ球は、活性化した表現型を有すると分かっているので7、31、この経路は、MDS患者のBMにおける単球の活性化に、TNF−αの産生に、及び続く造血抑制に関与しうる。
【0091】
本発明において、我々は、MDS関連の骨髄の病因におけるCD40−CD40L相互作用の役割を実証する。第1に、我々は、61の主に低リスク未処置患者の大きな集団において、有意により多いPB CD14+単球が、CD40及びCD80を発現することを示した。加えて、有意により多いPB Tヘルパー細胞が、MDS患者においてCD40を発現し、そしてTリンパ球上のCD40Lの発現は、CD14+単球のCD40発現と非常に相関した。CD40及びCD40Lの過剰発現もまた、BM試料において観察され、ここでリンパ球及び単球はそれらの機能を発揮すると考えられる。
【0092】
CD40及びCD40Lの発現水準の測定に加えて、我々は、TNF−α産生並びに造血前駆体の増殖及び分化に対するこの経路の刺激及び抑制のin vitro効果も分析した。アゴニスト抗CD40mAbを用いたMDS単球上のCD40のライゲーションは、対照と比較して、増加したTNF−α産生を結果した。我々の知る限り、これはTNF−α産生に関するMDS単球の異なる挙動を実証する最初の報告である。我々のシリーズにおいて(in our series)、TNF−α産生は、LPSにより刺激されたMDSと正常単球との間で同様であり、これは他による以前の報告と一致する17。MDS単球上のCD40レセプターの増加した表面発現は、この異なる挙動を説明しうるが、異なる下流経路の活性化も関与しうるが30、これはまだ調査されていない。
【0093】
加えて、我々は、コロニー形成アッセイにおいてこの経路を抑制することの効果を、モノクローナル抗体ch5D12(これは、炎症性腸疾患22及び自己免疫脳脊髄炎の非ヒト霊長類モデル24の治療において有効であると示されているアンタゴニストキメラ抗ヒトCD40抗体である)を用いて分析した。ch5D12の存在下において、BFU−E及びCFU−GMの数は、MDSのBMMNCの培養物において有意に増加したが、コロニー形成アッセイを開始する前にCD14+単球の枯渇は続かなかった。これは、造血に対する単球の抑制的効果が、ch5D12を用いて、これら単球上のCD40レセプターを拮抗することにより克服されうることを証明する。BFU−Eの数がCD40L+Tヘルパー細胞のパーセンテージに逆相関することの観察と一緒に、これは造血に対するリンパ球の抑制的効果が、単球からの追加のサイトカイン放出に部分的に起因しうることを示唆する。しかしながら、サイトカインがこれに関係するかどうかはいまだ明らかでない。我々のBM培養物中のTNF−α濃度は非常に低いので、我々は、ch5D12の存在下におけるTNF−α水準の下方制御を観察することができなかった(データは示されていない)。
【0094】
まとめると、これらの観察は、治療的及び診断的価値の両方を有する。第一に、我々は、MDS単球によるCD40の発現が、BMの内部で進行している免疫攻撃についてのマーカーとして働くことを示した。循環する単球上のCD40発現は、重度の敗血症を有する患者において増加されるが32、全身的な炎症性応答は、我々の結果に関与しないようである。CRP水準は低かった、そして、CD14+細胞上のCD40の発現と相関しなかった。加えて、最近の感染病歴を有する患者は、この研究から排除された。骨髄における免疫学的活性のマーカーとしてのCD40の使用はさらに、60歳より低い年齢及びトリソミー8が、高いCD40発現と一致するとの観察により支持される。両方の因子が、MDSにおける免疫抑制的治療に対する応答についての最も強力な予測因子として同定されており14、33、そしてそれ故に、免疫機構は、これらの患者において特に重要な役割を果たす。
【0095】
単球上のCD40シグナル伝達の抑制は、増加したBFU−E及びCFU−GM形成を結果する。さらに、CFU−GMの数は、統計学的な有意に達さなかったけれども、CD40+ CD14+の細胞のパーセンテージと逆相関した。加えて、共刺激性分子を共発現するCD14+単球の増加したパーセンテージは、減少したANCと一致し、61の血液試料において観察された。さらに、この観察は、異なる患者から得られた、23のBM試料において独立になされた。最後の観察もまた、年齢が合った対照からのPBにおいてなされており、それ故に、それはMDSに特異的でないが、全ての免疫細胞介在性骨髄疾患における一般的な現象であることを示唆する。
【0096】
以前の研究は、CD8+T細胞が、MDS患者において活性化した表現型を有することを実証した7、31。ここに、我々は、CD4+T細胞もまた、患者において活性化されることを示し、そして、CD40−CD40L相互作用を通じたMDS病因におけるそれらの関与を実証する。これはさらに、Tヘルパー細胞によるCD40L発現が、単球によるCD40発現と一致したとの観察により支持される。さらに、MDS BMMNC培養物中のBFU−Eの数が、Tヘルパー細胞によるCD40L発現の増加に伴い有意に減少された。循環するCD40L発現性Tヘルパー細胞の高いパーセンテージは興味深い。それは、CD40L発現が、MDSにおいて増加されるか又は安定化されること示す。増加したCD40L発現は、抑制性CD8クローン型の誘発において、抗原提示細胞を通じて関与しうるが、これもさらなる調査を請け負う。
【0097】
それらの診断的価値とは別に、我々の観察は、CD40−CD40L相互作用を拮抗することが、MDS関連血球減少を処置する為に用いられうるので、治療的適切さも有する。CD40に対するモノクローナル抗体は現在、種々の血液学的疾患、例えば多発性骨髄腫34、35及び非ホジキンリンパ腫36など、における使用について調査中である。これらの抗体の作用の様式は、抗体依存性の細胞媒介性細胞毒性に依存し37及び悪性細胞に対する直接的アポトーシス効果よる34。他の悪性腫瘍において、アゴニスト抗CD40 Mabを有する単球の活性化は、腫瘍増殖を抑制することが示されている38。しかしながら、MDSにおいて、治療的価値は、免疫応答を漸減させることにあり及び、従って血球数を改善する為に正常前駆体に対する巻き添え被害を限定することにある。この理由の故に、CD40−CD40L経路の刺激よりもむしろ抑制が治療的に、MDSにおいて適切である。本明細書において記載されたアゴニスト抗CD40 ch5D12は、MDSを含むヒト病理におけるCD40−CD40Lの抑制を標的とするための適切な選択肢である。
【0098】

【0099】
【表1】

MDS、骨髄異形成症候群;FAB、French−American−British;RA、不応性貧血;RARS、環状鉄芽球を伴う不応性貧血;RAEB:過剰な芽球を伴う不応性貧血;WHO:世界保健機構;RCMD、多系列異形成を伴う不応性血球減少;RCMD−RS、多系列異形成及び環状鉄芽球を伴う不応性血球減少;MDS−u、分類されないMDS;IPSS、国際予後スコアリングシステム
利用できない
【0100】
【表2】

患者は、対照集団における最高の測定値をカットオフポイントとして用いて(6.4%)、「高い」又は「低い」集団にグループ分けされた。B/表は、(a)両方の集団における平均を比較する為のMann−Whitney u検定の結果(数は平均±SEMとして表される)、及び、(b)カテゴリ変数についてのX検定の結果をまとめる。
61の患者のうち49から、細胞遺伝学的データが、IPSSスコアを決定する為に利用可能であった。IPSSは、核型異常を定義する−Y、del(20q)及びdel(5q)は、好ましいとして;トリソミー8、シングルの種々の異常及びダブルの種々の異常は、中間として;及び3以上の異常及び何らかの7番染色体の異常は、乏しいとして。
MDS処置は、成長因子(4のrhEPO、1のrhG−CSF、1のrhEPO及びrhG−CSFの組み合わせ)、輸血(n=9)、鉄キレート治療(n=2)、又は組み合わせ(n=4)を含んだ。
自己免疫疾患は、血管炎(n=1)、関節リウマチ(n=1)、自己免疫性溶血性貧血(n=1)、ITPと一緒の関節リウマチ(n=1)、炎症性腸疾患(n=1)を含んだ。
【0101】
図面の説明
【0102】
図1.共刺激性分子CD40、CD80及びCD86の表面発現についてのPB CD14+単球のフローサイトメトリー分析
全てのPB細胞が溶解され、洗浄され、そして次にPE−又はFITC−複合体化マウス抗ヒト抗CD14、抗CD40、抗CD80及び抗CD86のmAbにより二重染色された。(A)象限の設定の代表的ドットプロット。細胞は、適切なアイソタイプ対照抗体により染色され、そして分析は単球ゲートにおいて実施された。(B−C)CD40、CD80及びCD86を発現した単球のパーセンテージの決定の代表的ドットプロット。分析は、中間のSSCを有するCD14+細胞について実施された。(B)は、共刺激性分子の低水準の発現を有する、del(20)(q12)を伴うRARS/RCMD−RSを有する57歳女性患者の結果を表す;(C)は、共刺激性分子の高い発現を有する、RA/RCMD及び正常な細胞遺伝学を有する78歳女性患者の結果を表す;(D)61の患者のPB試料と29の年齢が合った対照のPB試料の結果。FABに従う患者分布:RA(n=37)、RARS(n=20)、RAEB(n=4);WHOに従い、RA(n=1)、RCMD(n=30)、RCMD−RS(n=19)、RARS(n=1)、5q−(n=3)、RAEB−1(n=3)、RAEB−2(n=1)、MDS−u(n=3)。プロットは、対照及び患者の平均を比較する為の、Mann−Whitney u検定の結果を示す。P値はそれぞれ、<0.0001***、0.004**及び0.001**であった。
【0103】
図2.CD40Lの表面発現についてのPB Tヘルパー細胞のフローサイトメトリー分析
PBが溶解され、洗浄されそして次にCD40L−PE、CD3−FITC及びCD4−PerCpにより三重染色された。Tヘルパー細胞は、低いSSC特徴を有するCD3+/CD4+二重陽性細胞として定義された。(A)活性化Tヘルパー細胞の増加した割合を有する患者を表す代表的ドットプロット。象限は、適切なアイソタイプ対照抗体に基づき決定された。(B)総計で、29の年齢が合った対照及び60の患者が、CD40L+Tヘルパー細胞の平均パーセンテージについての比較について利用可能であった(p<0.0001、Mann−Whitney u検定)。
【0104】
図3.精製された単球のCD40刺激は、MDS患者において、有意により高い水準のTNF−αを誘発する。
CD14+細胞が、25の健康な対照及びMDSを有する20の患者のPBから分離された。7日の培養後、これらの細胞は、LPS(1μg/mL)又はクローン64(10μg/mL、活性化する抗CD40 mAb)及びIFN−γ(1000IU/mL)により刺激された。上清が24時間後に集められ、そしてTNF−α濃度がELISAにより測定された。P値は、ウィルコクソン符号順位和検定(Wilcoxon matched pairs test)の結果を表す。
【0105】
図4.単球は、in vitro骨髄増殖を抑制し、そして、これは、CD40レセプターをブロックすることにより克服されうる。
BMMNCが、標準的条件下又はch5D12(アンタゴニストキメラ抗CD40 mAb)の存在下において、成長因子を補われたメチルセルロース(M4434、StemCell technologies)中で増殖された。14日後、CFU−GM及びBFU−Eがスコア化された。結果は、250×10のプレートされたBMMNCごとのコロニー数として示される。(A)26の患者のBMMNCが、ch5D12の存在下/不在下におけるM4434中で培養された。患者は、FABに従い、RA(n=17)、RARS(n=4)、RAEB(n=5)と診断され、そしてWHOに従い、RCMD(n=14)、5q−(n=2)、MDS−u(n=1)、RCMD−RS(n=4)、RAEB−1(n=2)及びRAEB−2(n=3)と診断された。ch5D12の存在は、コロニー形成を有意に増加した。p値は、ウィルコクソン符号順位和検定の結果を表し、そして、夫々、0.0007***、0.005**、及び0.02*であった。(B)10の患者の、BMMNC及びCD14+細胞を枯渇したBMMNCが、ch5D12の存在下/不在下において培養された。コロニーの合計数における有意な増加(p<0.05*)は、CD14を枯渇した条件下では観察されなかった。
【0106】
図5.5D12m:マウス抗ヒトCD40レセプター抗体。5D12di:5D12mの重鎖及び軽鎖の変異体。Vh=可変重鎖、Vl=可変軽鎖。FR1〜4(フレームワーク1〜4);Chothia;CDR領域のKABAT位置。
【0107】
参考文献







【特許請求の範囲】
【請求項1】
造血前駆細胞、リンパ球(好ましくはT細胞)及び単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞を含む細胞のコレクションを培養する為の方法であって、該細胞又はその前駆体を、該単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞又は該リンパ球(好ましくはT細胞)上に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子の存在下において培養することを含む上記方法。
【請求項2】
造血前駆細胞、リンパ球(好ましくはT細胞)及び単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞を含む培養物中で、分化した造血細胞の産生を刺激する為の方法であって、該細胞又はその前駆体を、該単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞又は該リンパ球(好ましくはT細胞)上に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子の存在下において培養することを含む上記方法。
【請求項3】
該単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞が、免疫細胞介在性骨髄疾患を患う個体又は患うリスクのある個体から得られたものである、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該免疫細胞介在性骨髄疾患が、クローン性骨髄疾患を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
該クローン性骨髄疾患が、骨髄異形成症候群(MDS)、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、赤芽球ろう(PRCA)、骨髄線維症又は大顆粒リンパ球性白血病(LGL)である、請求項3又は請求項4に記載の方法。
【請求項6】
個体における血球減少及び/又は骨髄疾患の処置の為の方法であって、該個体に、単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞又はリンパ球(好ましくはT細胞)上に発現される共刺激性分子に特異的な結合性分子を与えることを含む上記方法。
【請求項7】
個体における血球減少及び/又は骨髄疾患の処置の為の方法であって、該個体に、該個体中における免疫細胞活性化を減少し及び/又は抑制する為の結合性分子を与えることを含む上記方法。
【請求項8】
該共刺激性分子が、CD40又はCD40L(CD154)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
該リンパ球が、T細胞、好ましくは刺激性T細胞である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
該結合性分子が抗体を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
該抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体又はヒト様抗体である、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該結合性分子が、非刺激性の及び/又は拮抗性の結合性分子である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該結合性分子がCD40特異的抗体を含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
該抗体が非刺激性のCD40特異的抗体である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
該造血前駆細胞が骨髄系列のものである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
該造血前駆細胞が、分化した顆粒球及び/又は単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞を産生する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
造血前駆細胞、リンパ球(特にはT細胞)及び単球/マクロファージ及び/又は樹状細胞を含む培養物中において、分化した造血細胞の産生を刺激する為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法。
【請求項18】
免疫細胞介在性骨髄疾患の処置の為の医薬の調製の為に、共刺激性分子に特異的な結合性分子を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−526554(P2010−526554A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508322(P2010−508322)
【出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【国際出願番号】PCT/NL2007/050228
【国際公開番号】WO2008/140296
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507006293)パンジェネティクス ビー.ブイ. (2)
【Fターム(参考)】