説明

連結具

【課題】分割脚片を有するクリップ部と脚片を広げるピン体とを具備した連結具において、部材同士を確実に一体に連結することができ、連結を解除するときは、ピン体をクリップ部から簡単に抜き取ることができるようにする。
【解決手段】指で摘むことのできる摘み片を、ピン体の上面にヒンジ部を介して起倒自在に設ける。留め付けたクリップ部を取り外すためにピン体を抜き取るときは、倒れた摘み片を引き起こしてピン体上面上で起立させ、そのまま摘み片を摘んでピン体を上方へ引き上げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材同士を連結させるために用いるプラスチック製の連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
隣接配置した部材同士を一体に連結する連結具として、図7に示されるように、開口72aを有する鍔形の頭部72bの下部に、縦に割れた脚片72cが突設されてなるクリップ部72、72を有する結合体71と、クリップ部72の開口72aに挿入可能な大きさのピン体73、73とからなり、連結すべき部材74、74に結合体1を架け渡して両部材に形成された取付孔74a、74aにクリップ部72、72を差込み、ピン体73、73を両クリップ部の開口72a、72aに押し入れ、両クリップ部の脚片72c、72cをピン体で開脚拡径させてクリップ部72、72を取付孔73、73に嵌合させて留め付けることにより、部材74、74同士を連結する構造のものが知られている。図示した連結具は、一方のクリップ部72の頭部72bに板状の連結部71aを一体に成形するとともに、他方のクリップ部72の頭部72bを連結部71aに重ね合わさる大きさに形成し、当該他方のクリップ部72を連結部71aに形成された長孔71bに嵌め入れてクリップ部同士が一体化するように設けたものである(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】実公平5−47287号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プールの水深を調整するためにプールの底に設置されるプール用床同士の連結に前記従来の連結具を用いた場合、結合体71とピン体73がプール用床の床面に略面一に収まり、床面上に凹凸を作らずに床同士を連結することが可能である。
しかし、床同士の連結を解除するために連結具を取り外す際に、ピン体73が結合体71内にぴったりと嵌まっているためピン体73を抜き取り難く、ピン体73を引き抜くためにドライバなどの工具も必要となり、取り外し作業に時間と手間を要していた。ドライバの先端をピン体73と結合体71の接合面間に強く押し込んだ場合に、ピン体73の頂部が割れたり変形したりして、再利用できなくなることもあった。
【0005】
本発明は従来技術の有するこのような問題点に鑑み、分割脚片を有するクリップ部とクリップ部内に押し入れて脚片を広げるピン体とを具備して構成される連結具において、部材同士を確実に連結することができるとともに、連結を解除するときには、ピン体をクリップ部から簡単に抜き取ることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため本発明は、開口を有する鍔形の頭部の下部に縦に割れた脚片を突設してなるクリップ部同士が連結部を介して一体化された結合体と、前記クリップ部の開口に挿入されるピン体からなり、部材に形成された取付孔に差込んだクリップ部にピン体を押し入れることにより脚片を開脚拡径させてクリップ部を部材に留め付ける連結具において、前記ピン体の上面に起倒自在な摘み片を設けたことを特徴としている。
【0007】
これによれば、クリップ部の留め付けは、部材の取付孔内にクリップ部を差込み、このクリップ部の開口にピン体を挿入し、ピン体上面を押し込んで行うことができる。留め付けたクリップ部を取り外すためにピン体を抜き取るときは、倒れた摘み片を引き起こしてピン体上に起立させ、そのまま摘み片を指で摘んでピン体を上方へ引き上げれば、工具を用いることなく、容易な作業でピン体をクリップ部から抜き取ることができる。
【0008】
前記構成において、摘み片の端部には、ピン体上面部との係合部位を設けておき、ピン体を抜き取るとき以外は、摘み片がピン体上面に重なり倒れた状態が維持されるように設けることが好ましい。結合体とピン体は、汎用の樹脂材料を用いて薄肉に成形することが好ましく、ピン体は耐折曲特性に優れたPPを用いることがより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の好適な一実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態の連結具の外観図、図2は結合体の断面図、図3は摘み片を引き起こした状態のピン体の外観図、断面図及び摘み片を倒した状態のピン体頂部の拡大断面図、図4は他の実施形態の連結具の外観図、図5は図4の連結具を部材に留め付けた状態の断面図、図6は本発明の連結具で部材を連結するときとピン体を抜き取るときの操作の過程を示した図であり、図中、符号1は連結具、2は結合体、3はピン体、4は連結すべき部材をそれぞれ示している。
【0010】
図1〜図4において、連結具1は、クリップ部21、21を連結部22で一体化してなる結合体2と、クリップ部21、21に形成された開口に着脱するピン体3、3により構成されている。
【0011】
詳しくは、図2に示されるように、結合体2は、クリップ部21、21の、平面視略半円状の鍔形の頭部21a、21a同士を、適宜な幅の連結部22で接続して一体に形成してある。両クリップ部21は、その頭部21aの中央に開口21bを有し、頭部21aの下部に前記開口に沿って環状に突出していてスリットにより縦に四分割された脚片21cを一体に設けて形成してある。各脚片21cは、その下部を上部よりも厚肉とし且つ内側面を内方へ膨出させて開口径を小さくしてあり、ピン体3を開口21b内に挿入するのに伴い、ピン体3の周面に各脚片21cの下部が当接して各々側方に開脚し、脚片21cの外径が拡大するようになっている。また、頭部21aの上面縁部には、後述する摘み片33を引き起こすための凹面21dを形成してある。
【0012】
ピン体3は、その頂部31が、前記クリップ部21の頭部21aに重ね合わさる大きさを有する平面視略半円状の鍔形をなし、当該頂部の下部中央に、前記クリップ部21の開口21bに略一杯に挿入する太さの軸部32を一体に突出させて形成してある。軸部32は、その下部外周面に前記脚片21cの内面が係合するネジ溝32aが形成してあり、下端部は先細り状としてある。
【0013】
また、図3に示されるように、ピン体3の頂部31の上面には、起立及び倒伏自在な摘み片33を設けてある。
より詳しくは、ピン体3の頂部31は、その湾曲した側の側端部から上面中央に亘って上下に二分されているとともに当該上面中央に設けたヒンジ部34で上半部31aの端部が下半部31bに接続されて、ヒンジ部34を支点として上半部31aが下半部31b上で起倒及び倒伏し得るようになっており、この上半部31aを、その湾曲した縁部下面に沿って突片33aを設けて指で摘むことのできる摘み片33としてある。前記ヒンジ部34は、上半部31aと下半部31bの接続部分の厚みを筋状に薄肉として折曲変形可能にしたものであり、頂部31の略中央であって前記軸部32の中心を通る線上に配置してある。また、摘み片33の縁部に設けた突片33aの内側と、下半部31bの湾曲した縁部の外側はそれぞれ逆テーパ面としてあり、同図(C)に示されるように、摘み片33を倒伏させたときに、突片33a内側と下半部31b外側のテーパ面同士が係合し、倒伏した摘み片33が下半部31bに重なった状態で固定されるようになっている。また、この状態から突片33aを下側から押せば、テーパ面同士の係合が外れ、摘み片33を頂部31上に起立させることができるようになっている。
【0014】
図4及び図5に示された連結具1は、前記形態とは結合体2の形状が異なるものであり、図示されるように、この形態の結合体2は、一方のクリップ部21を頭部21aの側端に平面視略半円状の連結部22を突設して形成し、他方のクリップ部21を、これとは別体で、開口21bを有する平面視略半円状の頭部21aに分割脚片21cを一体に突設して形成してあり、前記連結部22の面内に形成された楕円形の開口22aに他方のクリップ部21を嵌め入れることにより、両クリップ部が一体に連結するように設けたものである。両クリップ部21の開口21b、21bに着脱するピン体3、3は前記形態と同じものが用いられる。
【0015】
次に、図6により本発明の連結具1の使用方法を説明する。
部材4への留め付けは、先ず、連結すべき部材4、4に結合体2を架け渡し、部材4、4に形成され取付孔41、41にクリップ部21、21を差込む(同図(A))。
次いで、クリップ部21、21の開口21b、21bにピン体3、3を押し入れれば(同図(B))、ピン体3の軸部32でクリップ部21の分割した脚片21cが開脚して外径が拡大するとともに脚片21cが軸部32周面のネジ溝32aに係止し(同図(C))、両クリップ部21の頭部21aと開脚した脚片21cとで部材4を上下に挟むようにして留め付き、これにより部材4、4が一体に連結される(図5参照)。
留め付ける操作は、ピン体3の摘み片33を倒伏させた状態で行われ、留め付けた後も、摘み片33の突片33aが頂部31の外側面に係合して、摘み片33は頂部上面に倒れ重なった状態に固定される。
部材4、4同士の連結を解除するために連結具1を取り外すときは、ピン体3、3の頂部31、31に倒れ重なった摘み片33、33を、突片33aの係合を外して上方に引き起こし(同図(D))、突片33aを指で摘んでそのまま上方に引き上げれば、ピン体3をクリップ部21から抜き取ることができ(同図(E))、両ピン体3を抜き取った後、結合体2を部材4、4から取り外せば部材4、4を分離することができる。
【0016】
このように本発明の連結具1によれば、ピン体3の上面に摘み片33を設けてあり、この摘み片33を指で摘み上方へ引き上げるという簡単な操作で、工具を用いることなく、ピン体3をクリップ部21から引き抜くことができる。この摘み片33は、起倒自在に設けてあるので、ピン体3をクリップ部21に押し込む操作の際に邪魔とならず、部材4に結合体2を留め付けた後も、摘み片33を倒しておくことにより、部材4の上面に不要な凹凸ができることもない。
【0017】
なお、摘み片を起倒自在に接続するヒンジ部は適宜な形状に形成することができ、また、倒れた摘み片をピン体頂部に固定する係合部位も、図示した突片と頂部外側のテーパ面同士が係合する形態以外に、互いに凹凸嵌合する形態など適宜な形態とすることができる。図示した形態では、一対のクリップ部を直線上に連結して結合体を構成したが、二つ以上のクリップ部により構成すること、屈曲した連結部でクリップ部同士を連結して構成することは、連結すべき部材の数や連結箇所の形態に応じて適宜に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態の連結具の外観図である。
【図2】図1に示した結合体の断面図である。
【図3】摘み片を引き起こした状態のピン体の外観図(A)、断面図(B)及び摘み片を倒した状態の頭部の拡大断面図(C)である。
【図4】他の実施形態の連結具の外観図である。
【図5】図4の連結具を部材に留め付けた状態の断面図である。
【図6】(A)〜(E)は本発明の連結具で部材を連結するときとピン体を抜き取るときの操作の過程を示した図である。
【図7】従来の連結具の構成を要部を破断して示した外観図(A)と部材に留め付けた状態の断面図(B)である。
【符号の説明】
【0019】
1 連結具、2 結合体、21 クリップ部、3 ピン体、33 摘み片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する鍔形の頭部の下部に縦に割れた脚片を突設してなるクリップ部同士が連結部を介して一体化された結合体と、前記クリップ部の開口に挿入されるピン体からなり、部材に形成された取付孔に差込んだクリップ部にピン体を押し入れることにより脚片を開脚拡径させてクリップ部を部材に留め付ける連結具において、
前記ピン体の上面に起倒自在な摘み片を設けたことを特徴とする連結具。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−2884(P2006−2884A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181072(P2004−181072)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】