説明

連結具

【課題】柱状体や管状体などの構造体に、取付対象をねじ構造を介して連結固定するための連結具において、構成部品の多くを、構造体の形状に関係の無い共通部品とすることにより、部品の製造コストや管理コストを削減する。
【解決手段】連結具は、構造体Pに巻回装着されるバンド体2と、バンド体2を構造体Pに締付固定するバンド締付構造3と、バンド締付構造3に設けたねじ体4とを含む。バンド体2は、構造体Pに外接する外接部15と、外接部15の端部に連続して外向きに延びる少なくとも一対の締付部16とを備える。バンド締付構造3は、一対の締付部16の間に挟持されるスペーサ9と、スペーサ9と一対の締付部16とを同時に締結して、外接部15を構造体Pに密着固定する締付ボルト11および締付ナット12とを含む。連結具のねじ体4に、取付対象Qの端部に設けたねじ体Sをねじ込んで、取付対象Qを構造体Pに連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、路上に立設された車止め用支柱などの柱状体や、水道管、ガス管などの管状体などに、チェーン、ロープ、ワイヤー、掛止フックなどの取付対象を、ねじ構造を介して連結固定するための連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、隣接する防護柵用支柱の間に車止め用のチェーンを連結するための連結具が開示されている。連結具は、円板状のフランジと、フランジの一方の面に突出される一対の弾性爪とを備えたプラスチック成形品からなり、フランジの中央にはチェーンを連結するためのねじ孔が設けられている。中空円筒状の支柱の周面には挿入孔が穿設されており、一対の弾性爪を挿入孔を介して支柱内に押し込むことにより、連結具を支柱に固定できる。また、支柱に固定されたフランジのねじ孔に、アイボルトのねじ軸をねじ込むことにより、チェーンをアイボルトを介して連結具に取り付けることができる。
【0003】
特許文献2の連結具は、棒材を挟持する一対の狭持片からなる係合体と、係合体に外嵌して各狭持片が開かないように拘束する係合体固定部材とで構成される。係合体には雌ねじ部が設けてあり、係合体固定部材には雌ねじ部に臨む貫通孔が設けてある。フック状の保持具に挿通したビスを、係合体固定部材の貫通孔を介して係合体の雌ねじ部にねじ込むことにより、フック状の保持具を連結具に取り付けている。このように、特許文献2の連結具は、棒材に穿孔を形成する必要もなく、棒材を抱持する状態で取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平07−259039号公報
【特許文献2】特開2010−53950号公報(段落番号0014、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の連結具は、予め支柱に挿入孔を設けておく必要があるため、例えば、既設の支柱を利用してチェーンを掛け渡し、臨時の車止めを構成したいような場合に対応できない。また、いたずら等によってチェーンに大きな力が加えられるような場合に、弾性爪が破損し、あるいは連結具が挿入孔から脱落するおそれがあり、連結具の適用対象が、比較的小さな力が加わる状況に限られてしまう。また、孔を開けることができない水道管やガス管などに特許文献1の連結具を取り付けることはできない。
【0006】
特許文献2の係合体は、棒材の形状や太さに対応した専用品であるため、連結具を製品化する際には、棒材の形状等の違いに応じて幾種類もの係合体と係合体固定部材を用意する必要がある。そのため、係合体と係合体固定部材の形状が異なるごとに複数種の金型を用意せざるを得ず、部品の製造コストや管理コストが高く付く。
【0007】
本発明の目的は、構成部品の多くを、支柱などの構造体の形状に関係の無い共通部品とすることにより、部品の製造コストや管理コストを削減して全体コストを削減できる連結具を提供することにある。本発明の目的は、構造体の形状に対応した専用品となる部品を安価に製造でき、全体コストを削減できる連結具を提供することにある。本発明の目的は、外観がすっきりとした見栄えの良い連結具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、柱状体や管状体などの構造体Pに取付対象Qをねじ構造を介して連結固定するための連結具に関する。連結具は、構造体Pの外周面に巻回装着されるバンド体2と、バンド体2を構造体Pに締付固定するバンド締付構造3と、バンド締付構造3に設けたねじ体4とを含む。バンド体2は、構造体Pの外周面に外接する外接部15と、外接部15の端部に連続して外向きに延びる少なくとも一対の締付部16とを備える。バンド締付構造3は、一対の締付部16の間に挟持されるスペーサ9と、スペーサ9と一対の締付部16とを同時に締結して、外接部15を構造体Pの外周面に密着固定する締付ボルト11および締付ナット12とを含む。連結具のねじ体4に、取付対象Qの端部に設けたねじ体Sをねじ込んで、取付対象Qを構造体Pに連結できることを特徴とする。
【0009】
本発明における構造体Pの具体例としては、路上に立設された車止め用支柱などの柱状体や、水道管、ガス管などの管状体などを挙げることができる。構造体Pの伸び方向や断面形状に特に制限は無く、中空と中実のいずれであるかも問わない。取付対象Qの具体例としては、チェーン、ロープ、ワイヤー、掛止フックなどの他に、ねじ体Sを一体に備えるアイボルトやねじ付きフックなどを挙げることができる。
【0010】
バンド体2を、外接部15と締付部16とを一体に備えた、金属板材を素材とするプレス加工品で形成する。
【0011】
バンド締付構造3は、一対の締付部16の外面を覆う化粧カバー10を備える。化粧カバー10を、締付ボルト11および締付ナット12で、スペーサ9および締付部16と同時に締結する。
【0012】
連結具のねじ体をナット4で構成して、スペーサ9と化粧カバー10とで固定保持する。スペーサ9は、一対の締付部16に挟持される基部24と、ナット4を受ける受座26とを一体に備える。受座26は、基部24の外側に設けた保持体27と、保持体27の内奥に設けた受面28とを含む。ナット4を、保持体27で回転不能に保持する。化粧カバー10は、一対の締付部16の外面を覆う一対の対向壁34・35と、両対向壁34・35の外端同士を繋ぐ端壁36とを一体に備える。ナット4を、受面28と端壁36とで、ナット4の軸心方向に移動不能に挟み固定する。バンド体2をバンド締付構造3で構造体Pに固定した状態において、締付部16と基部24と受座26とナット4との外面を、化粧カバー10で覆う。
【0013】
スペーサ9の基部24に、締付ボルト11を挿通するための切欠29を形成する。バンド体2の各締付部16に、締付ボルト11を挿通するための締付孔18を形成する。化粧カバー10の第1対向壁34に、一方の締付部16の締付孔18に臨む第1通口37を形成し、第2対向壁35に、他方の締付部16の締付孔18に臨む第2通口38を形成する。締付ボルト11の操作頭部56は、第1通口37に入り込んで、一方の締付部16の外面に密着する。締付ナット12は、第2対向壁35の外面に密着するナット本体45と、第2通口38に係合する係合部46とを一体に備える。締付ボルト11の操作頭部56と締付ナット12のナット本体45とにより、一対の締付部16とスペーサ9と第2対向壁35とを締結する。
【0014】
締付ナット12を、係合部46と第2通口38との間に設けた回り止め構造で回転不能に保持する。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、構造体Pに巻回したバンド体2をバンド締付構造3で締付固定する。バンド締付構造3は、バンド体2の一対の締付部16の間に挟持されるスペーサ9と、締付ボルト11および締付ナット12とを含む。締付ボルト11および締付ナット12でスペーサ9と一対の締付部16とを同時に締結することにより、バンド体2の外接部15を構造体Pの外周面に密着固定する。以上のように構成したバンド締付構造3は、構造体Pの構造や形状とは無関係に共通部品化できる。また、バンド締付構造3に設けるねじ体4も、同様に共通部品化できる。このように、バンド締付構造3およびねじ体4を共通部品化すると、構造や形状が異なる多種類の構造体Pに対して、1種類のバンド締付構造3およびねじ体4を用意すればよく、バンド締付構造3の構成部品やねじ体4の製造に要するコストを大幅に削減でき、管理コストも少なくて済む。
【0016】
金属板材を素材とするプレス加工品でバンド体2を形成すると、外接部15の形状が異なる複数種のバンド体2を簡単に製造することができる。つまり本発明によれば、構造体Pの構造や形状に対応した専用品であるバンド体2を安価に製造することができ、従って、全体として低コストで連結具1を製造できる。また、バンド体2が金属板材を素材とすると、外接部15を容易に拡径させて、一対の締付部16の間隔を拡げることができ、構造体Pの所望位置にバンド体2を素早く装着できる。さらに、無端状の構造体Pにも問題無くバンド体2を装着できる。
【0017】
一対の締付部16の外面を化粧カバー10で覆うと、連結具1の外観をすっきりとした見栄えの良いものにすることができる。化粧カバー10を、締付ボルト11および締付ナット12で、スペーサ9および締付部16と同時に締結すると、化粧カバー10を固定するための構造を締付ボルト11および締付ナット12とは別に設ける場合に比べて部品点数を削減して、連結具1の低コスト化を図ることができる。
【0018】
連結具のねじ体をナット4で構成すると、既製品を利用して連結具1の製造コストを削減できる。また、ナット4を受ける受座26をスペーサ9に設け、受座26を構成する一対の保持体27で、ナット4を回転不能に保持し、受座26を構成する受面28と化粧カバー10の端壁36とで、ナット4を軸心方向に移動不能に挟み固定する。つまり、スペーサ9と化粧カバー10とを利用してナット4を固定保持するので、部品点数が増えるのを避けて、連結具1の低コスト化を図ることができる。さらに、締付部16と基部24と受座26とナット4との外面を化粧カバー10で覆うと、連結具1の外観をすっきりとした見栄えの良いものにすることができる。
【0019】
締付ボルト11の操作頭部56を第1対向壁34の第1通口37に入り込ませて、締付部16の外面に密着させると、第1対向壁34を締結するのを避けて、一対の締付部16とスペーサ9と第2対向壁35との四者だけを締結することができる。このように、化粧カバー10の一方の対向壁34を締結するのを避けると、両対向壁34・35が接近する方向に化粧カバー10を変形させなくても、一対の締付部16を互いの接近方向に締め付けることができる。従って、スペーサ9の基部24と一対の締付部16とを加えた厚み寸法が、両対向壁34・35の対向間隔に比べて極端に小さい場合にも、一対の締付部16を確実に締め付けて、バンド体2を構造体Pに確りと固定できる。
【0020】
締付ナット12の係合部46と第2通口38との間に回り止め構造を設けて、締付ナット12を回転不能に保持すると、締付ボルト11を回動操作する際に、締付ナット12が回転しないように保持する必要が無いので、締付ボルト11の回動操作を簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図2のA−A線断面図である。
【図2】第1実施形態に係る連結具の使用状態を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る連結具の分解斜視図である。
【図4】化粧カバーと締付ナットの係合形態を示す分解斜視図である。
【図5】図2のB−B線断面図である。
【図6】第1実施形態に係る連結具の六面図である。
【図7】第2実施形態に係る連結具の横断平面図である。
【図8】第3実施形態に係る連結具の横断平面図である。
【図9】第4実施形態に係る連結具の横断平面図である。
【図10】第5実施形態に係る連結具の横断平面図である。
【図11】第6実施形態に係る連結具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態) 図1から図6に、本発明に係る連結具を、車止め用支柱PにチェーンQを連結するための連結具に適用した第1実施形態を示す。なお、本実施形態における前後、左右、上下とは、各図に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0023】
図2に示すように、左右一対の各支柱Pの上端部に連結具1が固定されている。チェーンQは、その両端部がカラビナUおよびアイボルトRを介して、連結具1に連結されている。連結具1に対するチェーンQの連結手順としては、まずアイボルトRだけを連結具1にねじ込み固定し、次いで、チェーンQの両端の各カラビナUを、アイボルトRのリング部分に連結する。これにより、一対の支柱Pの間にチェーンQを架け渡して、支柱Pの間の通行を遮断することができる。
【0024】
図3において連結具1は、支柱Pの外周面に巻回装着されるバンド体2と、バンド体2を支柱Pに締付固定するバンド締付構造3と、アイボルトRの雄ねじ体(ねじ体)Sをねじ込み可能な六角ナット(ねじ体)4とで構成される。バンド締付構造3は、スペーサ9と、化粧カバー10と、締付ボルト11および締付ナット12とで構成される。以下ではまずバンド体2について説明し、次いで、バンド締付構造3を構成する各部材について説明する。
【0025】
バンド体2は、金属製の帯状薄板の両端部を直角に折り曲げ、さらに両端部を除く全体を円状に湾曲させて成るプレス加工品であり、支柱Pの外周面に外接する外接部15と、対向する一対の締付部16とで構成される。外接部15は、周方向の一箇所に分断部17を有する断面C字状に形成されており、この分断部17の対向端に連続して締付部16が、支柱Pから離れる方向に延びている。各締付部16には、締付ボルト11を挿通するための締付孔18が形成されている。
【0026】
締付部16の間に、硬質プラスチック成形品からなるスペーサ9が挟持される。スペーサ9は、締付部16に挟まれる基部24と、基部24の上下端に形成されるフランジ25と、六角ナット4を受ける受座26とを一体に備える。受座26は、両フランジ25の対向面における基部24の左側(外側)に形成した上下一対の保持体27と、保持体27の内奥に設けた受面28とで構成される。上下の保持体27の対向面はそれぞれV字状に形成されており、これら対向面の間に六角ナット4が保持される。保持体27のV字面で六角ナット4の外周面を受け止めることにより、スペーサ9に対する六角ナット4の回転が規制される。また、上下の保持体27の間に六角ナット4を嵌合したとき、六角ナット4の端面は受面28で受け止められる。
【0027】
基部24には、前方、後方および左方の三方向に開けた切欠29が形成されている。この切欠29は、両締付部16の締付孔18と、受座26に保持される六角ナット4のねじ孔とに臨む。切欠29の右半部は、締付ボルト11用の挿通空間であり、切欠29の左半部は、六角ナット4にねじ込まれる雄ねじ体S用の挿通空間である。バンド体2の各締付部16の上下幅寸法は、上下のフランジ25の対向間隔より僅かに小さく設定されており、締付部16の上下端は上下のフランジ25の対向面で受け止められる。
【0028】
化粧カバー10は、前後に対向する第1・第2対向壁34・35と、両対向壁34・35の左端どうしを繋ぐ端壁36とを一体に備える断面コ字状のプレス金具であり、図1に示すように締付部16と基部24と六角ナット4と受座26との外面を覆う。第1対向壁34には、一方の締付部16の締付孔18に臨む第1通口37が形成され、第2対向壁35には、他方の締付部16の締付孔18に臨む第2通口38が形成され、端壁36には、六角ナット4のねじ孔に臨む第3通口39が形成されている。端壁36の右面(内面)は、保持体27および六角ナット4の左面で受け止められる。六角ナット4は、端壁36の内面と受面28とで左右から挟持されることにより、左右方向(六角ナット4の軸心方向)へ移動不能に位置保持される。化粧カバー10の上下幅寸法は、締付部16のそれと同一に設定されており、化粧カバー10の上下端は、締付部16の上下端と同様に、上下のフランジ25の対向面で受け止められる。また、平面視において化粧カバー10の全体が、フランジ25の外郭線の内側に位置する。
【0029】
図4に示すように締付ナット12は、円筒状のナット本体45と、ナット本体45の軸心方向一側に設けられる係合部46と、これらナット本体45および係合部46を軸心方向に貫くねじ孔47とを一体に備える金属成形品である。係合部46の外周面は非円形断面状に形成されており、具体的には外周面の一箇所に平坦面からなる回り止め面48が形成されている。この係合部46に対応して、第2対向壁35の第2通口38も、平坦面からなる回り止め面49を有する非円形状に形成されている。係合部46を第2通口38に係合することにより、両回り止め面48・49が接当するので、締付ナット12は化粧カバー10に対して回転不能に保持される。図5に示すように、締付ナット12の係合部46の前後方向(ねじ孔47の軸心方向)の幅寸法と、第2対向壁35の前後厚み寸法とは同一に設定されており、第2対向壁35はナット本体45と締付部16とに挟持される。
【0030】
締付ボルト11は六角穴付ボルトであり、締付ナット12のねじ孔47にねじ込まれるねじ軸55と、ねじ軸55の一端に設けられる円柱状の操作頭部56とを一体に備える。操作頭部56の径寸法は、化粧カバー10の第1通口37のそれより小さく、かつ、締付部16の締付孔18のそれより大きく設定されている。操作頭部56の前部は第1通口37内に収容されて、締付ナット12と対向する操作頭部56の締付面57が、締付部16の外面に密着する。図6は、本実施形態に係る連結具1の六面図である。この六面図において、底面図は平面図と対称にあらわれるため省略する。
【0031】
連結具1を支柱Pに取り付けるには、まず支柱Pの上端部から外接部15を挿通して、バンド体2を支柱Pに装着する。次いで、六角ナット4が仮組みされたスペーサ9を締付部16の間に挿入し、スペーサ9および締付部16の外側に化粧カバー10を被せる。最後に締付ナット12を化粧カバー10の第2通口38に係合し、締付ボルト11を、化粧カバー10の第1通口37、一方の締付孔18、スペーサ9の切欠29、他方の締付孔18の順に挿通させて、締付ナット12にねじ込む。
【0032】
締付ボルト11を締付ナット12にねじ込むと、締付ボルト11の操作頭部56と締付ナット12のナット本体45とにより、一対の締付部16とスペーサ9と第2対向壁35とが締結されて、バンド体2とスペーサ9と化粧カバー10との三者が互いに遊動不能に固定される。同時に、一対の締付部16が接近方向に締め付けられて、外接部15が縮径方向に引き寄せられ、これにより外接部15が支柱Pに圧接して、バンド体2が支柱Pに固定される。
【0033】
連結具1にチェーンQを連結するには、まずアイボルトRを連結具1に取り付ける。具体的には、図1に示すように、アイボルトRの雄ねじ体Sを化粧カバー10の第3通口39を介して六角ナット4にねじ込む。次いで、アイボルトRのリング部分の向きを決めてから、雄ねじ体Sの外周面に螺合されたロックナットTをスパナなどで掴んで、締込方向に回動操作する。ロックナットTと六角ナット4とで端壁36を内外から締結することにより、アイボルトRを連結具1に回転不能に固定することができる。最後に、取り付けたアイボルトRのリング部分に、カラビナUを介してチェーンQを連結する。なお、アイボルトRの雄ねじ体Sの先端は、スペーサ9の切欠29に入り込んでいる。このように、スペーサ9の内部に雄ねじ体Sの先端が入り込むようにすると、雄ねじ体Sが連結具1の外面から大きく突出するのを避けることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態に係る連結具1は、支柱Pに巻回したバンド体2をバンド締付構造3で締付固定する。バンド締付構造3は、バンド体2の一対の締付部16の間に挟持されるスペーサ9と、締付ボルト11および締付ナット12とを含む。締付ボルト11および締付ナット12でスペーサ9と一対の締付部16とを同時に締結することにより、バンド体2の外接部15を構造体Pの外周面に密着固定する。以上のように構成したバンド締付構造3は、支柱Pの構造や形状とは無関係に共通部品化できる。また、バンド締付構造3に設けるねじ体4も、同様に共通部品化できる。このように、バンド締付構造3およびねじ体4を共通部品化すると、構造や形状が異なる多種類の支柱Pに対して、1種類のバンド締付構造3およびねじ体4を用意すればよく、バンド締付構造3の構成部品やねじ体4の製造に要するコストを大幅に削減でき、管理コストも少なくて済む。
【0035】
金属板材を素材とするプレス加工品でバンド体2を形成すると、外接部15の形状が異なる複数種のバンド体2を簡単に製造することができる。つまり本実施形態によれば、支柱Pの構造や形状に対応した専用品であるバンド体2を安価に製造することができ、従って、全体として低コストで連結具1を製造できる。
【0036】
化粧カバー10を、締付ボルト11および締付ナット12で、スペーサ9および締付部16と同時に締結すると、化粧カバー10を固定するための構造を締付ボルト11および締付ナット12とは別に設ける場合に比べて部品点数を削減して、連結具1の低コスト化を図ることができる。スペーサ9と化粧カバー10とを利用して六角ナット4を固定保持すると、部品点数が増えるのを避けて、連結具1の低コスト化を図ることができる。締付部16と基部24と受座26と六角ナット4との外面を化粧カバー10で覆うと、連結具1の外観をすっきりとした見栄えの良いものにすることができる。
【0037】
締付ボルト11の操作頭部56を第1対向壁34の第1通口37に入り込ませて、締付部16の外面に密着させると、第1対向壁34を締結するのを避けて、一対の締付部16とスペーサ9と第2対向壁35との四者だけを締結することができる。このように、化粧カバー10の一方の対向壁34を締結するのを避けると、両対向壁34・35が接近する方向に化粧カバー10を変形させなくても、一対の締付部16を互いの接近方向に締め付けることができる。従って、スペーサ9の基部24と一対の締付部16とを加えた厚み寸法が、両対向壁34・35の対向間隔に比べて極端に小さい場合にも、一対の締付部16を確実に締め付けて、バンド体2を支柱Pに確りと固定できる。締付ナット12の係合部46と第2通口38との間に回り止め構造を設けて、締付ナット12を回転不能に保持すると、締付ボルト11を回動操作する際に、締付ナット12が回転しないように保持する必要が無いので、締付ボルト11の回動操作を簡便に行うことができる。
【0038】
なお、本実施形態に係る連結具1を、路上に立設された逆U字状の車止めなどの構造体Pに取り付ける場合には、筒部15を拡径させて分断部17を拡げることにより、バンド体2を構造体Pに装着する。バンド体2の装着後の手順は先と同様である。本実施形態のように、バンド体2が金属板材を素材とするプレス加工品であると、分断部17を拡げることができるので、無端状の構造体Pにも問題無くバンド体2を装着することができる。
【0039】
(第2実施形態) 図7は、第1実施形態の一部を変更した第2実施形態を示しており、支柱Pの断面が矩形状である点と、バンド体2を一対の分割体63で構成する点が、第1実施形態と相違する。分割体63は、支柱Pの外周面に外接する断面コ字状の外接半部64と、外接半部64の一端に設けられる締付部16と、外接半部64の他端に設けられる接続部65とを一体に備えるプレス金具である。接続部65どうしを繋いで一対の分割体63が一体化されており、一対の外接半部64でバンド体2の外接部15が構成されている。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態において、連結具1を構成するバンド体2以外の部品、すなわち六角ナット4、スペーサ9、化粧カバー10、締付ボルト11および締付ナット12は、第1実施形態と同一のものが使用されている。
【0040】
(第3実施形態) 図8は、第1実施形態の一部を変更した第3実施形態を示しており、連結具1が二つのバンド締付構造3を備え、各バンド締付構造3に六角ナット4が設けてあり、一つの連結具1に二つの取付対象Qを取付可能な点が、第1実施形態と相違する。具体的にはバンド体2が、第1分割体71と第2分割体72とで構成される。第1分割体71は、断面優弧状の優弧部73と、優弧部73の両端に設けられる締付部16a・16bとを一体に備えるプレス金具である。第2分割体72は、断面劣弧状の劣弧部74と、劣弧部74の両端に設けられる締付部16a・16bとを一体に備えるプレス金具である。優弧部73と劣弧部74とで外接部15が構成され、優弧部73の一端と劣弧部74の一端との間に第1の分断部17aが形成され、優弧部73の他端と劣弧部74の他端との間に第2の分断部17bが形成される。第1の分断部17aの対向端に連続する一対の締付部16aが一方のバンド締付構造3で締め付けられ、第2の分断部17bの対向端に連続する一対の締付部16bが他方のバンド締付構造3で締め付けられる。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態においても、連結具1を構成するバンド体2以外の部品、すなわち六角ナット4、スペーサ9、化粧カバー10、締付ボルト11および締付ナット12は、第1実施形態と同一のものが使用されている。
【0041】
この第3実施形態では、第1分割体71に優弧部73を設け、第2分割体72に劣弧部74を設けたが、その変形例として、両分割体71・72の円弧部分の形状(中心角)を同一にすることもできる。この場合は、二つのバンド締付構造3および六角ナット4が、支柱Pの中心軸線に対して対称に配置される。
【0042】
(第4実施形態) 図9は、第3実施形態の一部を変更した第4実施形態を示しており、支柱Pの断面が矩形状である点が、第3実施形態と相違する。各分割体71・72は、断面コ字状の外接半部75・76と、外接半部75・76の両端に設けられる締付部16a・16bとを一体に備えるプレス金具であり、両分割体71・72は同一の形状に形成されている。一対の外接半部75・76で外接部15が構成され、第1分割体71の外接半部75の一端と第2分割体72の外接半部76の一端との間に第1の分断部17aが形成され、第1分割体71の外接半部75の他端と第2分割体72の外接半部76の他端との間に第2の分断部17bが形成される。本実施形態では、二つのバンド締付構造3および六角ナット4が、支柱Pに対して左右対称に配置される。他は第3実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。第3実施形態とその変形例、および第4実施形態に係る連結具1は、一列に並べられた多数の支柱Pに沿ってチェーンなどを架け渡すのに便利である。また、三つ以上の分割体でバンド体2を構成して、バンド締付構造3および六角ナット4を三つ以上設けることもできる。
【0043】
(第5実施形態) 図10は、第1実施形態の一部を変更した第5実施形態を示しており、連結具1のねじ体を六角ボルト4で構成する点が、第1実施形態と相違する。六角ボルト4は、スペーサ9の受座26と化粧カバー10の端壁36とで固定保持される六角柱状の頭部80と、端壁36の第3通口39を貫通して化粧カバー10の外面に露出する軸部81とを一体に備える。また、スペーサ9の切欠29が、基部24を締付ボルト11の軸心方向に貫く円形の孔で構成されている。本実施形態に係る連結具1には、例えば、挿通孔付きのフックを取り付けることができる。具体的には、フックの挿通孔を軸部81に通し、次いで、軸部81にナットをねじ込んで、当該ナットと端壁36とでフックを締結することにより、フックを連結具1に固定する。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。なお、本実施形態では、切欠29の形状が上記各実施形態とは異なるスペーサ9を用いたが、上記各実施形態と同形のスペーサ9を用いることもできる。
【0044】
(第6実施形態) 図11は、スペーサ9の一部を変更した第6実施形態を示しており、スペーサ9の各フランジ25の外面にリブ85を突設する点が、第1実施形態と相違する。各リブ85は、支柱Pに向かうに従って上下方向(支柱Pの軸心方向)の幅寸法が大きくなる三角板状に形成されており、リブ85の支柱P側の端面が支柱Pの外周面に当接している。アイボルトRに上下方向の力が加わると、締付ボルト11の軸心を中心とする傾動モーメントが発生するが、この傾動モーメントをリブ85で受け止めることができる。従って、バンド締付構造3に加わる上下方向の応力に対する連結具1の強度を上昇させることができる。他は第1実施形態と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0045】
その他、上記各実施形態では、バンド体2を金属製としたが、これを樹脂製などにすることもできる。外接部15と支柱Pとの間にゴム等を配して、支柱Pの傷付き防止材や連結具1の滑り止めとすることができる。ねじ体4を受ける受座26を化粧カバー10に設けることができる。また、スペーサ9あるいは化粧カバー10にねじ体4を一体に形成することができる。具体的には、例えば、第3通口39の周面にねじ溝を形成して、これをねじ体4とすることができる。また、化粧カバー10の外面にねじ軸を溶着固定して、これをねじ体4とすることができる。
【0046】
さらに、上記各実施形態では、構造体Pとして車止め用支柱を例示したが、これ以外の構造体Pとしては、例えば、建物などの外壁に沿って伸びる水道管やガス管を挙げることができる。水平方向に伸びる水道管等に連結具1を介してねじ付きフックを固定すれば、当該フックを物掛け具として使用することができる。連結具1を介して取り付けたフックは、単に水道管等に引っ掛けただけのS字状のフックのように、水道管等に沿って摺動することが無く、使い勝手が良い。
【符号の説明】
【0047】
1 連結具
2 バンド体
3 バンド締付構造
4 ねじ体(ナット・ボルト)
9 スペーサ
10 化粧カバー
11 締付ボルト
12 締付ナット
15 外接部
16 締付部
24 基部
26 受座
29 切欠
34 第1対向壁
35 第2対向壁
36 端壁
P 構造体(支柱)
Q 取付対象(チェーン)
S ねじ体(雄ねじ体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体や管状体などの構造体(P)に取付対象(Q)をねじ構造を介して連結固定するための連結具であって、
連結具は、構造体(P)の外周面に巻回装着されるバンド体(2)と、バンド体(2)を構造体(P)に締付固定するバンド締付構造(3)と、バンド締付構造(3)に設けたねじ体(4)とを含み、
バンド体(2)は、構造体(P)の外周面に外接する外接部(15)と、外接部(15)の端部に連続して外向きに延びる少なくとも一対の締付部(16)とを備えており、
バンド締付構造(3)は、一対の締付部(16)の間に挟持されるスペーサ(9)と、スペーサ(9)と一対の締付部(16)とを同時に締結して、外接部(15)を構造体(P)の外周面に密着固定する締付ボルト(11)および締付ナット(12)とを含み、
連結具のねじ体(4)に、取付対象(Q)の端部に設けたねじ体(S)をねじ込んで、取付対象(Q)を構造体(P)に連結できることを特徴とする連結具。
【請求項2】
バンド体(2)が、外接部(15)と締付部(16)とを一体に備えた、金属板材を素材とするプレス加工品で形成されている請求項1記載の連結具。
【請求項3】
バンド締付構造(3)が、一対の締付部(16)の外面を覆う化粧カバー(10)を備えており、
化粧カバー(10)が、締付ボルト(11)および締付ナット(12)で、スペーサ(9)および締付部(16)と同時に締結されている請求項1または2記載の連結具。
【請求項4】
連結具のねじ体がナット(4)で構成されて、スペーサ(9)と化粧カバー(10)とで固定保持されており、
スペーサ(9)が、一対の締付部(16)に挟持される基部(24)と、ナット(4)を受ける受座(26)とを一体に備えており、
受座(26)は、基部(24)の外側に設けた保持体(27)と、保持体(27)の内奥に設けた受面(28)とを含み、
ナット(4)が、保持体(27)で回転不能に保持されており、
化粧カバー(10)は、一対の締付部(16)の外面を覆う一対の対向壁(34・35)と、両対向壁(34・35)の外端同士を繋ぐ端壁(36)とを一体に備えており、
ナット(4)が、受面(28)と端壁(36)とで、ナット(4)の軸心方向に移動不能に挟み固定されており、
バンド体(2)をバンド締付構造(3)で構造体(P)に固定した状態において、締付部(16)と基部(24)と受座(26)とナット(4)との外面が、化粧カバー(10)で覆われている請求項3に記載の連結具。
【請求項5】
スペーサ(9)の基部(24)に、締付ボルト(11)を挿通するための切欠(29)が形成されており、
バンド体(2)の各締付部(16)に、締付ボルト(11)を挿通するための締付孔(18)が形成されており、
化粧カバー(10)の第1対向壁(34)に、一方の締付部(16)の締付孔(18)に臨む第1通口(37)が形成され、第2対向壁(35)に、他方の締付部(16)の締付孔(18)に臨む第2通口(38)が形成されており、
締付ボルト(11)の操作頭部(56)が、第1通口(37)に入り込んで、一方の締付部(16)の外面に密着しており、
締付ナット(12)は、第2対向壁(35)の外面に密着するナット本体(45)と、第2通口(38)に係合する係合部(46)とを一体に備えており、
締付ボルト(11)の操作頭部(56)と締付ナット(12)のナット本体(45)とにより、一対の締付部(16)とスペーサ(9)と第2対向壁(35)とが締結してある請求項4に記載の連結具。
【請求項6】
締付ナット(12)が、係合部(46)と第2通口(38)との間に設けた回り止め構造で回転不能に保持してある請求項5に記載の連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−159142(P2012−159142A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19571(P2011−19571)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(598038197)株式会社ふじわら (2)
【Fターム(参考)】