説明

連結具

【課題】視認性に優れた連結具の提供。
【解決手段】湾曲形状とされ一端部と他端部とを有し、EPDMを主たる成分として含む弾性体と、複数の環状体が連結されて鎖状とされ、前記弾性体に湾曲した状態で埋設され、前記複数の環状体が前記弾性体と非固着とされ、且つ前記一端部及び他端部の各々から前記環状体の一部が露出して構成された連結部を有する連結部材と、を備え、前記環状体に埋設された連結部材の少なくとも一部が、前記弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能である連結具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋桁と橋脚(橋台)など、2部材を連結する連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、橋桁と橋脚(橋台)などの2部材を連結する連結具としては、例えば、特許文献1のように、側面視にて略U字状に湾曲した弾性体の中に、連結部材が弾性体の形状に沿って埋め込まれており、該連結部材の端部が弾性体から露出した連結具が知られている。
【0003】
特許文献1のような連結具においては、弾性体に埋め込まれた連結部材の状態を目視等の簡易な手段により容易に確認できることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−326022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を考慮して成されたものであり、視認性に優れた連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の連結具は、湾曲形状とされ一端部と他端部とを有し、EPDMを主たる成分として含む弾性体と、複数の環状体が連結されて鎖状とされ、前記弾性体に湾曲した状態で埋設され、前記複数の環状体が前記弾性体と非固着とされ、且つ前記一端部及び他端部の各々から前記環状体の一部が露出して構成された連結部を有する連結部材と、を備え、前記弾性体に埋設された連結部材の少なくとも一部が、前記弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能に構成される。
【0007】
弾性体が、EPDMを主たる成分として含んで構成されることで、優れた視認性及び耐候性が発揮される。ここで、「EPDM」とは、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体をいう。なお、EPDM及び併用しうる他の成分等の弾性体の詳細については、後に詳述する。
【0008】
請求項1に記載の連結具は、弾性体に埋設された連結部材の少なくとも一部が、弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能に構成される。ここで、「連結部材の少なくとも一部が視認可能」とは、連結部材の少なくとも一部について、弾性体の中における存在及び弾性体表面からの概略距離を、目視により確認することが可能であること意味する。また、以下では、視認可能であることを、適宜、視認性を有するとも称する。
【0009】
このように、環状体に埋設された連結部材の少なくとも一部が、弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能であることにより、弾性体内部における連結部材の埋設状態、連結部材の表面性状の変化、弾性体内部に混入した気泡や夾雑物の存在など、連結具の性能に影響を与えうる弾性体の内部の状態の少なくとも一部を目視により容易に確認することができる。
【0010】
また、弾性体におけるEPDMの適用は、他の成分を弾性体の主たる成分として適用した場合に比して、より優れた耐候性が得られる。
【0011】
連結部材において、連結対象物に連結される連結部は、弾性体の一端部及び他端部の各々から環状体の一部が露出して構成されている。そして、当該連結部を構成する複数の環状体は弾性体と非固着とされている。
【0012】
EPDMは、優れた視認性及び耐候性を発揮する一方で、接着性が低い材料であるが、本発明における環状体と弾性体とは非固着であるため、EPDMの如く視認性が高く、接着性が低い材料を、弾性体における主たる成分として適用することができる。
【0013】
ここで「非固着」とは、環状体と弾性体とが離間可能であることをいい、環状体と弾性体とが密着している場合、及び、離間部分を有している場合の双方を含む。したがって、連結部を構成する環状体を弾性体に対して容易に移動させることができ、連結部を連結対象に連結させる際に、連結部を移動させることにより連結部の間の距離を変えて容易に取付距離を調整することができる。連結部材の全体を弾性体と非固着とすることにより、連結部材と弾性体との間で剥離が生じないため、安定した緩衝特性を得ることができる。また、環状体と弾性体とが非固着であることで、連結具に対して複数回の衝撃が付与された場合においても、良好な耐衝撃性を継続して得ることができる。
【0014】
請求項2に記載の連結具は、前記弾性体における一端部及び他端部の各々から、前記連結部を構成する環状体に連結された環状体の少なくとも一部が視認可能に構成される。
【0015】
弾性体における一端部及び他端部の各々から、連結部を構成する環状体に連結された環状体の少なくとも一部が視認可能であることで、弾性体を削る必要が生じた場合においても、連結部を構成する環状体に連結された環状体を弾性体内部から露出させることがない。
【0016】
請求項3に記載の連結具は、前記弾性体に埋設された前記連結部材の全体が、前記弾性体の表面から視認可能に構成される。
【0017】
このように、弾性体に埋設された複数の環状体の全体が、弾性体の表面から視認可能に構成されることで、弾性体内部における連結部材の埋設位置や、連結部材表面の性状の変化、弾性体内部に製造時に混入した気泡や夾雑物の存在など、連結具の性能に影響を与えうる弾性体の内部の状態の詳細を目視により容易に確認することができる。
【0018】
請求項4に記載の連結具は、前記連結部材の全体が、防錆用のメッキを施したものである。本発明の連結具は、連結部材を構成する複数の環状体が弾性体と非固着であり、また、弾性体が含む主たる成分として、接着性を考慮せずともよい材料であるEPDMが適用されていることから、連結部材と弾性体との接着性を考慮することなく、連結部材の全体に防錆処理を施すことができる。
【0019】
このように、全体に防錆用のメッキが施された連結部材が弾性体に埋め込まれていることで、連結部材を弾性体に埋め込んだ後に、弾性体の両端から露出した連結部に防錆処理を行うという煩雑な作業がなくなり、生産性を向上できる。また、製造工程で有機溶剤を使用しないので環境負荷が少ない。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、視認性に優れた連結具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る連結具を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る連結具を示す(A)は側面図であり、(B)は平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る連結具で橋桁と橋脚とが連結された状態を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る連結具で橋桁と橋脚とが連結された状態を示す側面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る連結具の他端連結部を移動させている状態を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の変形例に係る連結具を示す側面図である。
【図7】本発明の実施形態の他の変形例に係る連結具を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、本発明の連結具における特徴的な構成要素の一つである弾性体について説明し、続いて本発明の連結具の実施形態について図を用いて説明する。
【0023】
[弾性体]
本発明における弾性体は、EPDMを主たる成分として含む弾性体であることを特徴とする。
【0024】
<EPDM>
EPDMとは、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体である。EPDMは、弾性体においてゴム成分として含まれる。
【0025】
EPDMは、弾性体における主たる成分として含まれる。ここで、本明細書において「EPDMを主たる成分として含む」とは、弾性体に含まれるゴム成分に対し、75質量%以上がEPDMであることをいう。
【0026】
EPDMは、エチレン、プロピレン、及び、共役ジエンモノマーを含む共重合成分を、常法により共重合することにより合成することができる。
【0027】
EPDMの合成に用いる共役ジエンモノマーとしては、特に制限されないが、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン等に代表される任意の共役ジエンモノマーを用いることができる。
【0028】
また、EPDMは、マレイン酸等で変性されたものであってもよい。
【0029】
EPDMとしては、市販品を用いることもでき、例えば、JSR(株)より入手できるEP24、EP35、EP96(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0030】
弾性体に含まれるゴム成分は、EPDMのみであってもよいし、本発明の効果を損なわない範囲において、他のゴム成分を併用してもよい。視認性及び耐候性の観点からは、弾性体に含まれるゴム成分は、EPDMのみであることがより好ましい。
【0031】
<架橋剤>
弾性体において、EPDMを含むゴム成分は、架橋剤により架橋されていることが好ましい。
【0032】
架橋剤としては、例えば、イオウ、有機過酸化物、樹脂架橋剤、等が挙げられる。視認性の観点からは、架橋剤は有機過酸化物であることが好ましい。
【0033】
EPDMを含むゴム成分をイオウを用いて架橋する場合、イオウは、ゴム成分100質量部に対して、0.1〜10質量部用いることが好ましく、0.5〜5質量部用いることがより好ましい。
【0034】
架橋剤として用いうる有機過酸化物としては、この分野において通常使用されるものを配合することができる。有機過酸化物の具体例としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジイソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジコハク酸パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(3−メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)シクロへキシル)プロパン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2-エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、t−ブチルパーオキシベンゾエート、n−ブチル4,4−ジ−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド等が挙げられ、これらの中でも、本発明においては、ジ(2−t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサンを好適に用いることができる。
これらの有機過酸化物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0035】
EPDMを含むゴム成分を、有機過酸化物を用いて架橋する場合、有機過酸化物は、ゴム成分100質量部に対して、1〜10質量部用いることが好ましく、2〜8質量部用いることがより好ましい。
【0036】
<その他の成分>
本発明における弾性体は、本発明の効果を損なわない範囲において、EPDM、併用可能な他のゴム成分、及び架橋剤以外の他の成分を含有してもよい。本発明における弾性体は、他の成分を含有しないことがより好ましい。他の成分としては、例えば、汚染性の老化防止剤(アミン系、イミダゾール系)、有色の可塑剤(アロマオイル、ナフテンオイル)等が挙げられる。
【0037】
<弾性体形成用組成物の調製>
弾性体形成用組成物は、EPDMを含むゴム成分、架橋剤、その他の成分を、所定量はかり取り、密閉型ミキサーで混練りすることにより好適に調製することができる。
弾性体形成用組成物としては、市販品を用いることもできる。該市販品としては、例えば、エスイーシー化成(株)製より入手できるTUEP−901(商品名)等が挙げられる。
【0038】
以下に、図面にしたがって本発明の実施形態の連結具について説明する。
【0039】
本実施形態の連結具10は、架橋落下防止具として用いられ、連結対象物としての橋桁と橋脚を連結するものである。
【0040】
図1〜3に示すように、本実施形態の連結具10は、断面が円形で側面視にて略U字状に湾曲した弾性体として、EPDMを主たる成分として含むゴム体12を備えている。なお、ゴム体12の断面形状は、円形に限定されることなく、楕円、多角形でもよい。ゴム体12は、U字の中間部12A、中間部12Aの両端から互いに離れる方向に向かう傾斜部12B、及び、傾斜部12Bから互いに平行になるように屈曲して両端を形成する、一端部12C及び他端部12Dを有している。ゴム体12の中には、連結部材14が埋設されている。
【0041】
連結部材14は、5つの環状体13を互いに交差して連結した鎖状とされ、ゴム体12のU字形状に沿って埋め込まれている。各々の環状体13は、中央に長孔の構成された断面円形の環状とされている。5つの環状体13のうちの中央に配置される中央環状体13Aは、ゴム体12の中央部12Aに埋め込まれ、中央環状体13Aには、ゴム体12の傾斜部12Bに埋め込まれるサイド環状体13Bが角度θをもってリンクされている。
【0042】
図2(A)に示されるように、中央環状体13Aと各々のサイド環状体13Bとの交差部には、隙間aが設けられており、サイド環状体13Bの端部同士の間には、隙間bが形成されている。なお、ここでは、説明の都合上、隙間という表現を用いたが、これらの隙間においても、EPDMを主たる成分とするゴム組成物(弾性体形成用組成物)が充填され、ゴム体12と一体となっている。ここで、隙間のゴム体に、補強層(例えば、繊維層)を埋め込んだり、或いは、隙間のゴム体を他のゴム体の弾性率と異なるようにしたりする等、材質を変化させることで、緩衝機能を増減させることができる。
【0043】
連結部材14の一端側のサイド環状体13Bには、一端環状体13Cがリンクされ、他端側のサイド環状体13Bには、他端環状体13Dがリンクされている。一端環状体13C及び他端環状体13Dは、一端部12C、他端部12Dから互いに平行に立上げられて、長手方向の略半分が露出されており、一端連結部13E、他端連結部13Fが各々構成されている。一端連結部13E、他端連結部13Fが、各々連結対象物となる橋桁16のブラケット22に連結される。
【0044】
連結部材14には、外表面全体に防錆用のメッキが施されている。防錆用のメッキとしては、亜鉛、亜鉛とアルミの合金、亜鉛とアルミとマグネシウムの合金などのメッキを用いることができる。なお、本実施形態では、連結部材14の外表面全体に防錆用のメッキを施したが、連結部材14の一部にメッキを施す構成、又は、連結部材14にメッキを施さない構成としてもよい。
【0045】
ここで、連結部材14には、ゴム体12と固着させるための接着剤は塗布されていない。このため、連結部材14はゴム体12に非固着でゴム体12に埋め込まれている。これにより、一部がゴム体12から露出した一端環状体13C及び他端環状体13Dは、ゴム体12に対して移動させる力が加えられた時に、ゴム体12からの引っ張り力が作用されず、ゴム体12から離間可能となっている。したがって、ゴム体12と固着している場合と比較して、容易にゴム体12と相対移動させることができる。
【0046】
図3には、本実施形態の連結具10によって橋桁16と橋脚17が連結されている状態が示されている。なお、本実施形態の連結具10によって橋桁16同士を連結する場合もある。
【0047】
図4にも示すように、本実施形態の連結具10は、橋桁16及び橋脚17の側面に取り付けられたブラケット22へ、ピン24で連結される構成になっている。ブラケット22は、各々2枚の三角形状の板が平行に配置された取付部22A、及び、取付部22Aが立設される基台部22Bを備えている。ブラケット22は、基台部22Bが橋桁16、橋脚17に固定されている。連結具10は、取付部22Aの板間に一端連結部13E、他端連結部13Fが挿入され、ピン孔22Hと一端連結部13Eの取付孔13H、及び、ピン孔22Hと他端連結部13Fの取付孔13Hにピン24を貫通させて固定する。
【0048】
(連結具の製造方法)
次に、本形態に係る連結具10の製造方法を説明する。
【0049】
先ず、環状体13を5個リンクさせた連結部材14を製造し、メッキ工程において、連結部材14の全体に亜鉛、亜鉛とアルミの合金、亜鉛とアルミとマグネシウムの合金の何れか1つの防錆用のメッキを行う。
【0050】
次に、埋設工程において、メッキされた連結部材14の外側にゴム体12を形成する。埋設工程では、ゴム体12の長手方向にパーティングラインを形成するゴム体12に対応した形状の上下金型を用いる。まず、下金型にゴム体12の半分の未架橋のゴム組成物をセットし、その上に連結部材14を湾曲状態で、かつ、一端連結部13E、他端連結部13Fがゴム体12から外側に露出されるように下金型にセットする。なお、連結部材14に、ゴム体12と接着するための接着剤は塗布されていない。
【0051】
次に、連結部材14上に、ゴム体12の残り半分の未架橋のゴム組成物をセットすると共に上金型をセットし、プレスしながら架橋し、連結具10を得る。
なお、ゴム組成物の調製方法は、弾性体形成用組成物の調製方法として前述した事項を適用できる。これにより、連結部材14とゴム体12とが固着されることなく、連結部材14の外側にゴム体12が形成される。
【0052】
(作用及び効果)
次に、本形態に係る連結具10の作用を説明する。
【0053】
本形態に係る連結具10では、EPDMを主たる成分として含む視認性に優れたゴム体12に、連結部材14が埋設されており、埋設された連結部材14の少なくとも一部が、前記弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能に構成される。このため、ゴム体12の内部における連結部材14の埋め込み位置や状態、連結部材14の表面性状の変化、ゴム体12内部に製造時に混入した気泡や夾雑物など、連結具10の性能に影響を与えうるム体12の内部の状態を目視により容易に確認することができる。連結部材14は、その全体が、ゴム体12の表面から視認可能であることが望ましい。
【0054】
また、連結具10は、橋桁と橋脚(橋台)などの屋外構造物の連結に用いられるものであることから、耐候性についても求められる。ゴム体12におけるEPDMの適用は、他のゴム成分を主たる成分として適用したゴム体に比して、より優れた耐候性が得られることから、連結具10の更なる長寿命化が図れる。
【0055】
連結具10は、ゴム体12における一端連結部13E及び他端連結部13Fの各々から、サイド環状体13Bの少なくとも一部が視認可能であることがの望ましい。連結具10を、一端連結部13E及び他端連結部13Fにより、橋桁16と橋脚17と連結する際には、ゴム体12を削る必要が生じる場合がある。この場合において、サイド環状体13Bのゴム体12内部からの露出は、連結具10の性能を損う場合があるが、一端部12C及び他端部12Dの各々から、サイド環状体13Bの少なくとも一部が視認可能であることで、ゴム体12を削る必要が生じた場合においても、サイド環状体13Bをゴム体12内部から露出させることがない。
【0056】
連結具10で橋桁16と橋脚17とを連結する際には、作業者は、一端連結部13Eを橋桁16のブラケット22にピン24を用いて固定し、他端連結部13Fを橋脚17のブラケット22にピン24を用いて固定する。このとき、橋脚17と橋桁16のブラケット22のピン孔22H間の距離が一端連結部13E、他端連結部13Fの取付孔13H間の距離と一致しない場合には、一端連結部13E、他端連結部13Fに力を加えて、ゴム体12に対して移動させ、取付距離を調整する。図5(A)に示されるように、他端連結部13F(他端環状体13D)に対して一端連結部13Eと近づけるように力F1を加えると共に、ゴム体12との位置をずらす(埋め込み孔内で回転させる)ことにより、他端連結部13Fと一端連結部13Eとの距離を短くすることができる。一端連結部13Eについても同様に力を加えて移動させて、他端連結部13Fと一端連結部13Eの距離を短くすることができる。また、図5(B)に示されるように、他端連結部13F(他端環状体13D)に対して一端連結部13Eから離すように力F2を加えると共に、ゴム体12との位置をずらす(埋め込み孔内で回転させる)ことにより、他端連結部13Fと一端連結部13Eとの距離を長くすることができる。一端連結部13Eについても同様に力を加えて移動させて、他端連結部13Fと一端連結部13Eの距離を長くすることができる。
【0057】
本実施形態の連結具10は、ゴム体12と連結部材14とが固着されていないので、作業者が一端連結部13E、他端連結部13Fに力を加えることにより、ゴム体12に対して容易に移動させ、取付距離を調整することができる。
【0058】
上記のようにして取り付けられた連結具10は、地震時等に、橋脚17が揺れて図2の矢印A方向の力が連結具10に作用すると、一端環状体13Cと他端環状体13Dが互いに離れる方向へ力が加わる。このため、ゴム体12の角度θが小さくなり曲げ抵抗力が発生し、ゴム体12の弾性力及び形状特性によって橋桁16と橋脚17とが引っ張り合うように緩衝機能が働く。また、このとき、隙間aのゴムは圧縮されるため、環状体13の間に充填されたゴムによっても緩衝機能が発揮される。
【0059】
一方、桁16が接近して、矢印Aと反対方向の力が連結具10に作用すると、一端環状体13Cと他端環状体13Dが互いに接近しようとする。このため、ゴム体12の角度θが大きくなり曲げ抵抗力が発生し、ゴム体12の弾性力及び形状特性によって橋桁16と橋脚17とを引き離そうとする緩衝機能が働く。
【0060】
この際、本実施形態では、連結部材14のゴム体12に埋め込まれている部分は、ゴム体12と接着されていない。このため、図2の矢印A方向で示す変位によって、連結具10に作用する1回目の荷重によって、連結部材14とゴム体12との接着が剥がれるということがなく、安定した緩衝特性を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、連結具10の製造工程のメッキ工程において、連結部材14の全体に防錆用のメッキを施しているので、露出部分である一端連結部13E、他端連結部13Fへ防食用塗装を行うという煩雑な作業を行うことなく、簡易に露出した部分の錆を防止することができる。
【0062】
また、本実施形態の連結具10では、連結部材14とゴム体12とが固着されていないので、連結部材14とゴム体12との分離が容易となり、リサイクルが行いやすくなる。
【0063】
また、本実施形態では、連結部材14とゴム体12とを非固着とするために、連結部材14にメッキを施したが、他の方法により連結部材14とゴム体12とを非固着としてもよい
【0064】
また、本実施形態では、5個の環状体13で構成される連結部材14を用いた連結具10について説明したが、他の構成の連結部材を用いたものであってもよい。例えば、図6に示すように、7個の環状体13で構成される連結部材24をゴム体12に埋め込んで、大きな変位量に対応できるようにした連結具20の構成としてもよい。また、図7に示すように、湾曲度の小さいブロック状のゴム体12へ3個の環状体13構成される連結部材34を埋め込んだ連結具30の構成としてもよい。
【0065】
また、本発明の連結具は、橋桁16と橋桁16や、橋桁16と橋脚17を連結する架橋落下防止具に限定されず、他の連結対象物を連結する連結具にも適用可能である。
【実施例】
【0066】
以下、本発明について実施例を用いてより具体的に説明する。ただし、本発明は本実施例に限定されるものではない。また、下記実施例又は比較例において、「phr」とは、ゴム成分の質量100に対する各配合成分の質量部を指す。
【0067】
[実施例1]
以下のようにして、図1に示す形状を有する実施例1の連結具を作製した。
【0068】
・弾性体形成用組成物
下記組成1に示す各成分を常法に従って混練りすることにより、ゴム体を形成するための弾性体形成用組成物1を調製した。
<組成1>
・EPDM(製品名:EP24、JSR(株)製) 100phr
・架橋剤:2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 7phr
【0069】
・連結部材
連結具において連結部材となる鎖を準備し、該鎖に対して亜鉛メッキ処理を行った。
【0070】
・上下金型
連結具の作製に用いる金型として、ゴム体の長手方向にパーティングラインを形成するゴム体に対応した形状の上下金型を用いた。
【0071】
<連結具の作製>
まず、下金型にゴム体の半分を形成するための未架橋の弾性体形成用組成物を充填する。
次いで、下金型に充填された弾性体形成用組成物の上に、連結部材(亜鉛メッキ処理が施された鎖)を、湾曲状態で、かつ、その一端連結部及び他端連結部が、ゴム体から外側に露出されるようにセットする。
次いで、連結部材上に、ゴム体の残り半分を形成するための未架橋の弾性体形成用組成物をセットすると共に、上金型をセットし、プレスしながら架橋する
【0072】
以上のようにして、亜鉛メッキ処理が施された鎖を、連結対象物となる桁のブラケットに連結される連結部が湾曲したゴム体の両端から露出するように、ゴム体に埋設することにより、実施例1の連結具を作製した。
【0073】
[実施例2]
実施例1において用いた弾性体形成要組成物1を、下記組成2に示す各成分を常法に従って混練りすることにより調製した弾性体形成要組成物2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の連結具を得た。
<組成2>
・EPDM(製品名:EP24、JSR(株)製) 100phr
・架橋剤: イオウ 1phr
・加硫促進剤: テトラメチルチウラムモノスルフィド 1phr
・加硫促進剤: テトラメチルチウラムジスルフィド 2phr
【0074】
[比較例1]
実施例1において用いた弾性体形成用組成物「TUEP−901」を、シリコンゴム組成物(製品名:SR−6326、(株)竹原ゴム加工製)に変更した以外は、実施例1と同様にして比較例1の連結具を得た。
【0075】
[評価]
上記により得られた実施例1〜2及び比較例1の連結具について、ゴム体の表面から内部を目視により観察して、視認性を評価した
その結果、EPDM及び架橋剤として有機過酸化物を含む弾性体形成用組成物を用いた実施例1の連結具では、ゴム体表面のいずれの部位からも、5cm程度まで内部を確認することができ、ゴム体に埋設された鎖全体について、その存在及びゴム体表面から鎖まで概略距離のいずれについても目視で把握することができた。
また、EPDM及び架橋剤としてイオウを含む弾性体形成用組成物を用いた実施例2の連結具では、ゴム体表面のいずれの部位からも、3cm程度まで内部を確認することができ、ゴム体に埋設された鎖全体について、その存在を目視で把握することができた。
一方、シリコンゴム組成物を用いた比較例1の連結具では、ゴム体表面から連結部材を目視で確認することができなかった。
【符号の説明】
【0076】
10 連結具
12 ゴム体
12C 一端部
13C 一端環状体
13E 一端連結部
13 環状体
13D 他端環状体
13F 他端連結部
14 連結部材
16 橋桁
17 橋脚
20 連結具
24 連結部材
30 連結具
34 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲形状とされ一端部と他端部とを有し、EPDMを主たる成分として含む弾性体と、
複数の環状体が連結されて鎖状とされ、前記弾性体に湾曲した状態で埋設され、前記複数の環状体が前記弾性体と非固着とされ、且つ前記一端部及び他端部の各々から前記環状体の一部が露出して構成された連結部を有する連結部材と、
を備え、前記弾性体に埋設された連結部材の少なくとも一部が、前記弾性体の表面の少なくとも一部から視認可能である連結具。
【請求項2】
前記弾性体における一端部及び他端部の各々から、前記連結部を構成する環状体に連結された環状体の少なくとも一部が視認可能である請求項1に記載の連結具。
【請求項3】
前記弾性体に埋設された前記連結部材の全体が、前記弾性体の表面から視認可能である請求項1又は請求項2に記載の連結具。
【請求項4】
前記連結部材の全体が、防錆用のメッキを施したものである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の連結具。

【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−162937(P2012−162937A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24959(P2011−24959)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】