説明

連続する多面体エンボス部を形成したブランク板及び該ブランク板からなる紙製品と、ブランク板の製造方法

【課題】 板紙等の少なくとも一部の領域にエンボス加工で連続する多面体の凹凸を付けて装飾効果を高め、且つ前記エンボス加工による紙表面並びに基材層加工面の破損を抑止したブランク板および該ブランク板からなる紙製品と、ブランク板の製造方法を提供する。
【解決手段】 紙層と、熱接着性樹脂層と、基材層とが順次積層されたブランク板からなり、少なくとも一部の領域に構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交差部を有し、前記境界稜線及び交差部は構成単位面に比べて相対的に凹となっており、構成単位面は対向する交差部間で凸部を有し、且つ構成単位面の周方向に隣り合った配列が位相差をなして連続する多面体エンボス部を形成したことを特徴とするブランク板及び該ブランク板からなる紙製品並びに前記ブランク板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙等の少なくとも一部の領域にエンボス加工で連続する多面体の凹凸を付けて装飾効果を高めたブランク板及び該ブランク板からなる紙製品と、ブランク板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種多面体の凹凸をつけた容器としては、アルミ缶の缶胴の少なくとも一部に周状多面体壁が形成され、該周状多面体壁は、構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交差部からなり、前記境界稜線及び交差部が構成単位面に対し相対的に缶の外側に凸であり、構成単位面は対向する交差部間で窪んだ部分を有し、且つ構成単位面の周方向に隣り合った缶体軸方向配列が位相差をなした配列とされたものが、開封前は内圧により缶胴部は膨らんでほぼ滑らかで、開封すると窪んだ部分を有する構成単位面からなる多面体壁の立体形状を表出し、缶胴部の剛性を大きくして変形を防止し、手による把持も容易で、且つ前述した多面体壁の立体感による装飾効果を併せ持つ缶容器として知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−20038号公報
【0003】
一方、紙器では連続する多面体の構成単位面を有する紙箱が、板紙等を打ち抜いて作成されるブランクに施された折線を用いて折り曲げ組み立てられる形式で知られており、意匠性の高い容器として、菓子、食品用のカートンに使用されている(例えば、特許文献2参照)。
また、紙箱の絵柄部分や文字部分の浮き出しには、一般にエンボス加工すなわち紙箱裏面からエンボス凸型の押圧によって所定部分を突出させる加工により、立体感による装飾効果或いは使用者の認知性などを目的として利用されてきた。最近では、紙箱の一部に視覚障害者のための点字部分を設けるための提案もなされている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献2】実公昭41−010402号公報
【特許文献3】特開平11−301090号公報
【0004】
しかしながら、前記特許文献2に記載された多面体構成は、比較的大きな単位構成面しか形成することが出来ないばかりか、組み立てにあたっても各構成面を形作るべき折線の折り曲げに手間がかかり、複雑な場合は組み立て用の治具を必要とするなど、時間的経済的に大きな負担をしいるものであった。
また、前記特許文献3に記載されたデボス版による点字加工においては、デボス版凸部と凹部の形状を非相似形とし、凸部半球状の直径最大長aと高さbから示されるa/b値を凹部半球状の直径最大長cと高さdから示されるc/d値より小さくすることによって、紙表面の延伸量を凸部及び凹部の形状が相似形の場合に比べ小さくすることが出来、紙表面の割れ、亀裂を発生させにくくすることが出来る。
ところが、前述したアルミ缶の缶胴に形成されている連続する多面体のような凹凸形状を紙箱の表面に施す場合、図3に示すように凹部の深さ方向に凸部とのクリアランスを設けてしまうと、全く凸部及び凹部の形成による連続する多面体の立体形成が行われないことが判明した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決し、板紙等の少なくとも一部の領域にエンボス加工で連続する多面体の凹凸を付けて装飾効果を高め、且つ前記エンボス加工による紙表面並びに基材層加工面の破損を抑止したブランク板および該ブランク板からなる紙製品と、ブランク板の製造方法の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、紙層と、熱接着性樹脂層と、基材層とが順次積層されたブランク板からなり、少なくとも一部の領域に構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交差部を有し、前記境界稜線及び交差部は構成単位面に比べて相対的に凹となっており、構成単位面は対向する交差部間で凸部を有し、且つ構成単位面の周方向に隣り合った配列が位相差をなして連続する多面体エンボス部を形成したことを特徴とするブランク板である。
【0007】
請求項2の発明は、前記熱接着性樹脂層が、5μm以上50μm以下であるポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のブランク板である。
【0008】
請求項3の発明は、前記基材層が、アルミニウム箔層又は一方の面に金属蒸着層を有するフィルム層であることを特徴とする請求項1または2記載のブランク板である。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか記載のブランク板からなる紙製品である。
【0010】
請求項5の発明は、前記連続する多面体エンボス部を形成するためのエンボス版凸部を有するエンボス凸型と、前記エンボス版凸部と略相似形状でありエンボス型閉時のクリアランスが生じないエンボス版凹部を有するエンボス凹型からなるエンボス型内に前記ブランク板を挿入・加圧することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のブランク板の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、紙器及び紙製品の表面に連続する多面体エンボス加工を施すエンボス型の、多面体エンボス部を形成するためのエンボス版凸部を有するエンボス凸型と、エンボス版凹部を有するエンボス凹型とを略相似形状とし、エンボス型閉時に挿入されるブランク板のためのクリアランスが生じないようにすることで、連続する多面体形状を鮮明且つ正確に形成できるので、紙器及び紙製品の表面意匠の装飾効果がより高くなるという効果がある。
【0012】
また、ブランク板を、紙層と、熱接着性樹脂層と、基材層とが順次積層された構成とすることにより、前記熱接着性樹脂層がエンボス加工の衝撃を吸収し緩衝効果を発揮して、エンボス凸部で生じる紙表面の割れを抑止するとともに、表面平滑性を損なうことが無いという効果がある。しかも、前記基材層が、アルミニウム箔層または一方の面に金属蒸着層を設けたフィルム層であるブランク板においては、エンボス形成された多面体形状部分が金属板に凹凸加工を施したような形成面を見せ、その装飾効果は大なるものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
上記本発明につき、図面等を用いて以下に詳述する。図1(a)は本発明に係る実施例の多面体形状の部分平面模式図。(b)は同じく実施例の多面体形状の部分断面模式図。図2は本発明に係る実施例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図。図3は比較例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図。図4は本発明に係る実施例の紙材の拡大断面模式図である。
【0014】
図1(a)は本発明に係る実施例の多面体形状の部分平面模式図で、本実施例の多面体形状の構成単位面は、四辺形(菱形)イ、ロ、ハ、ニからなっており、構成単位面にそれぞれ隣り合う別の構成単位面の配列は1/2の位相差をなして配列される。四辺形(菱形)における各辺イ−ロ、ロ−ハ、ハ−ニ、ニ−イは、それぞれが構成単位面間の境界稜線fであり、構成単位面の中央交点はeで示され、図1(b)実施例の多面体形状の部分断面模式図では、それぞれ図中に示される位置を占めるものであり、前記構成単位面間の境界稜線fは四辺形(菱形)の構成単位面に比べて相対的に凹であり、前記構成単位面内の中央交点eは同じく四辺形(菱形)の構成単位面に相対的に凸となっている。
尚、構成単位面は実施例に示した四辺形(菱形)が好ましいが、これに限定されるものではなく、他の多角形(例えば、五角形、六角形、八角形等)とすることも可能であり、また、異なる多角形の組合せ(例えば五角形と六角形等)とすることもでき、基本的構成は前述の四辺形(菱形)と同様である。
【0015】
図2は本発明に係る実施例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図で、Aは真鍮等金属からなる凸型、Bは樹脂からなる凹型で、これらに使用される基材に関して特に制限は無く、要求されるエンボス形状の精細度、加工耐用度等種々の観点から選択することができる。
図中に示すaは凸部間ピッチ、bは凹部間ピッチを示しているが、後述するように本発明の実施例の多面体形状は位相差をなす同一の多面体形状であるので、その寸法は同一である。cは凸部におけるブランク板挿入の間隙、dは凹部におけるブランク板挿入の間隙を示しており、図2においてcとdは同一寸法であり、すなわち図1に示す実施例において、エンボス凸型および凹型とは略相似形であり、エンボス凸型Aとエンボス凹型Bが凸部ブランク板挿入間隙cおよび凹部ブランク板挿入間隙dをもってエンボス閉型状態にあることを表している。なお、図中の凸部と凹部との凹凸深さは、所望のエンボス形状により設定可能であるが、0.2〜2.0mmとすることができる。0.2mm未満では、凸部と凹部との差が小さくなり十分な凹凸感が得られず、2.0mm以上では、ブランク板に過度の圧力がかかり割れが発生したり、凹部での歪みや後工程のフィーダ部での引っ掛かりや2枚出しが起こるため好ましくない。また、図中の凸部間ピッチa及び凹部間ピッチbは、意匠性を考慮し、前記凹凸深さとの関係で任意に設定可能であるが、2.0mm未満では、凸部同士間もしくは凹部同士間が小さくなりブランク板に過度の圧力がかかり割れが発生しやすくなるため、2.0mm以上とすることが好ましい。凸部及び凹部におけるブランク板挿入の間隙は、ブランク板の厚さと略同一に設定される。
【0016】
図3は比較例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図で、凸型A´、凹型B´ともその基材は実施例と同一である。凸型A´は凸部間ピッチa´、凹部間ピッチb´およびそれぞれの凸部、凹部の高さにおいて前述の実施例凸型Aと同一である。凹型B´は凸部間ピッチa´、凹部間ピッチb´および凹型における凹部高さすなわちd´に現れる凹部におけるブランク板挿入間隙で前述の実施例凹型Bと同一であるが、c´で示される凸部におけるブランク板挿入間隙が相違し、同部分でエンボス凸型と凹型のクリアランスを形成することを示している。本比較例は、前記エンボス凸型と凹型のクリアランス部分を形成することで、エンボス加圧によって特に凸部において発生が予想される紙層表面部の割れの抑止を目的としたものである。
【0017】
しかしながら、実施例と比較例とのエンボス加工試験の結果、図2に示した実施例では、凸部および凹部いずれにおいても良好な型付け状態が見られたのに対し、図3に示した比較例では、凹部の型付けが強く見られる反面、凸部では先端の当たりがあるものの鮮明な型付け状態が見られないという結果となり、連続する多面体形状のエンボス加工においては、エンボス凸型および凹型の閉型状態でクリアランスを設けないことが良好であることが判明した
【0018】
図4は本発明に係る実施例のブランク板の拡大断面模式図で、紙層1の一方の面に熱接着性樹脂層2を介して基材層3が積層された構成となっており、本実施例では紙層1として310g/m2の板紙の表面に所定の印刷を施し、熱接着性樹脂層2側に金属蒸着層を形成した基材層3の12μmのポリエステルフィルムが、熱接着性樹脂層2の20μmのポリエチレン樹脂で熱接着されて構成されている。また、ブランク板の一部の領域には、図1(a)と同一形状の菱形多面体エンボス部が図2と同一形状のエンボス型(凸部間ピッチ5.5mm、凹部間ピッチ5.5mm、凹凸深さ0.35mm)を用いて形成されている。なお、紙層1の表面に基材層3が設けられているので、エンボス加工によって形成される凸部4の成形性が優れるとともに、紙層1表面側の紙割れも抑止される。また、前記基材層3の熱接着性樹脂層2側に施した金属蒸着層は、熱接着性樹脂層2が緩衝部となって、エンボス加工時の衝撃による金属蒸着面の割れを抑止できる。また、金属蒸着層を基材層表面に設けさらに金属蒸着層を被覆するように保護層を設けても良く、この場合、金属蒸着面がブランク板表面となり、より高い金属感をもったブランク板となり好ましい。 尚、エンボス加工によって形成される凹凸は相対的なものであるので、本明細書ならびに図面中で示す凸部および凹部は、凹部および凸部とも読み替えることができる。
【0019】
なお、紙層としては、コートボール、カード紙、アイボリー等を使用することができ、基材層としては、5〜30μm厚さの二軸延伸ナイロン、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート、アルミニウム箔等を使用することができる。また、熱接着性樹脂層としては、ポリエチレンの他、エチレンメタクリル酸、エチレンアクリル酸、エチレンビニルアルコール、アイオノマー等の樹脂を使用することができ、その厚さは、エンボス加工時の衝撃による金属蒸着層、紙層表面の割れを防止するため、5μm以上のものが好ましく、加工性、コスト等を考慮し50μm以下のものを用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)本発明に係る実施例の多面体形状の部分平面模式図。 (b)同じく実施例の多面体形状の部分断面模式図。
【図2】本発明に係る実施例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図。
【図3】比較例のエンボス凸型および凹型の一部拡大断面図。
【図4】本発明に係る実施例のブランク板の拡大断面模式図。
【符号の説明】
【0021】
A、A´ エンボス凸型
B、B´ エンボス凹型
a、a´ 凸部間ピッチ
b、b´ 凹部間ピッチ
c、c´ 凸部ブランク板挿入間隙
d、d´ 凹部ブランク板挿入間隙
e 多面体山部
f 多面体谷部
1 紙層
2 熱接着樹脂層
3 基材層
4 凸部
5 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層と、熱接着性樹脂層と、基材層とが順次積層されたブランク板からなり、少なくとも一部の領域に構成単位面と、構成単位面同士が接する境界稜線及び境界稜線同士が交わる交差部を有し、前記境界稜線及び交差部は構成単位面に比べて相対的に凹となっており、構成単位面は対向する交差部間で凸部を有し、且つ構成単位面の周方向に隣り合った配列が位相差をなして連続する多面体エンボス部を形成したことを特徴とするブランク板。
【請求項2】
前記熱接着性樹脂層が、5μm以上50μm以下であるポリエチレン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のブランク板。
【請求項3】
前記基材層が、アルミニウム箔層又は一方の面に金属蒸着層を有するフィルム層であることを特徴とする請求項1または2記載のブランク板。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか記載のブランク板からなる紙製品。
【請求項5】
前記連続する多面体エンボス部を形成するためのエンボス版凸部を有するエンボス凸型と、前記エンボス版凸部と略相似形状でありエンボス型閉時のクリアランスが生じないエンボス版凹部を有するエンボス凹型からなるエンボス型内に前記ブランク板を挿入・加圧することを特徴とする請求項1から3のいずれか記載のブランク板の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−216445(P2007−216445A)
【公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−37672(P2006−37672)
【出願日】平成18年2月15日(2006.2.15)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】