説明

連続反応帯域からの固体ポリオレフィンの回収制御方法および装置

【課題】オレフィン重合方法およびループ反応装置
【解決手段】ループ反応装置中で液体希釈剤中に一般に固体のポリマー粒子を含む液体スラリを生成し、生成したポリマーを沈殿レグ中に沈降させ、沈殿レグの端部に設けた製品取出し用回転弁を周期的に180°開いて、ポリマー粒子流を沈殿レグから流出させ、上記製品取出し用回転弁は複動アクチュエータで操作し、この複動アクチュエーは空気系で駆動し、この空気系は空気式制御弁を有するシステムで調節し、この空気式制御弁をV−ボール弁にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は固体ポリオレフィンの固体スラリーから固体ポリオレフィンを回収する方法に関するものである。
本発明は特に、ポリオレフィンのスラリー、例えばループ反応装置中を連続的に流れるポリマー混合物流からのポリオレフィン粒子の回収制御方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記文献にはループ反応装置の改良方法が記載されている。
【特許文献1】米国特許第3242150号明細書
【0003】
この特許ではループ反応装置の底部に沈殿レグ(沈殿脚、settling leg)とよばれる受け部を付けて、重力で沈降した固体(受け部より固体濃度が高い部分)を受け部から抜き出すようしている。
下記文献には複数の沈殿レグを有するループ反応装置が開示されている。
【特許文献2】米国特許第3293000号明細書
【0004】
弁の制御方法は第3欄第2〜22行目に記載されている。下記文献には改良されたポリマーの取出し方法が記載されている。
【特許文献3】米国特許第3374211号明細書
【0005】
下記の最近の特許ではフラッシュラインに加熱器を設け、ループ反応装置の沈殿レグを周期的に操作することが記載されている。
【特許文献4】米国特許第5183866号明細書
【0006】
この方法の特徴はフラッシュラインに加熱器を含む細長い帯域中のスラリーのフロー時間が沈殿レグ弁が閉じる時から次に開く時までの時間の約25%に等しくなるように上記の細長い帯域を設計する点にある。
下記文献には重合反応装置からポリマー製品を含んだ反応スラリーを連続的に抜き出すプロセスを制御する方法が開示されている。
【特許文献5】米国特許第5455314号明細書
【0007】
この特許では主ライン中のVノッチ付きのボール弁を連続的に操作し、主ラインが詰まった時に任意のラインの制御弁(主制御弁に対するバックアップ弁)を自動的に開くようになっている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、液体希釈剤中でオレフィンを重合する重合方法において、ループ反応装置中で一般に固体のポリマー粒子を含む液体スラリを生成し、生成したポリマーを沈殿レグ中に沈降させ、沈殿レグの端部に設けた製品取出し用回転弁を周期的に180°開いて、ポリマー粒子流を沈殿レグから流出させ、上記製品取出し用回転弁は複動アクチュエータで操作し、この複動アクチュエーは空気系で駆動し、この空気系は空気式制御弁を有するシステムで調節し、この空気式制御弁をV−ボール弁にする重合方法を提供する。
【0009】
本発明はさらに、ループ反応装置の沈殿レグの製品取出し用回転弁を180°回転させる空気式の複動アクチュエータの調節での、V−ボール制御弁の使用に関するものである。
【0010】
本発明はさらに、沈殿レグを有するループ反応装置において、沈殿レグの端部位置に180°回転する製品取出し用回転弁を有し、この180°回転する製品取出し用回転は空気圧駆動式の複動アクチュエータによって操作され、この複動アクチュエーは空気系で駆動され、この空気系は空気式制御弁を有するシステムで調節され、この空気式制御弁はV−ボール制御弁であることを特徴とするループ反応装置にも関するものである。
【0011】
制御弁は自動制御弁であるのが好ましい。
以下、添付図面を参照して本発明を説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
[図1]に示す本発明の実施例では重合はループ反応装置10で実行される。単量体および希釈剤はそれぞれライン14および16を介してライン13に導入され、触媒はライン17を介して導入される。これらの混合物はモータMに連結されたプロペラ11によって循環される。生じたポリマー粒子は沈殿レグ(沈殿脚、settling leg)22中に蓄積する。各沈殿レグには製品取出し弁(PTO弁またはPTO)23を備え、これらは管路20に接続されている。
【0013】
[図2]を参照する。ループ反応装置10には2つの沈殿レグ22aおよび22bが備えられ、各沈殿レグには制御装置28によって制御されるPTO弁(それぞれ23aおよび23b)が備えられている。
【0014】
[図3]は沈殿レグ22の底部を示し、この底部は管路20に接続したPTO弁23を有している。このPTO弁23は回転弁で、その回転は機構Mで制御される。
沈殿レグ22のPTO弁23は周期的にしか開かれない。PTO弁23が開くと沈殿レグ22中に存在するポリマー粒子が管路20中へ移動する。沈殿レグ22中に存在する実質的に全てのポリマー粒子が管路20中へ移り、しかも、単量体および希釈剤は反応装置10中を残るようにするためには、PTO弁23の開放時間を正確に制御しなければならない。
【0015】
2つのタイプのPTO弁が使用されている。最も一般的なPTO弁は可動部品の回転に頼る弁で、弁は閉(0°)から開(90°)へ回転し、そして閉(180°)になる。次ぎのサイクル中に弁は逆回転する。また、90°回転する弁も使用されている。この場合には可動部品が閉(0°)から開(90°)へ回転し、次ぎに逆回転して閉(0°)になる。本発明では最初のタイプのPTO弁を用いた場合に改良された制御システムが提供される
【0016】
PTO弁は一般に空気圧で作動される。
[図4a]に示すように、各PTO弁23は回転速度を制御する複動式の空圧式アクチュエータ40を備えている。180°回転する場合には、PTO弁が開放される時間がPTO弁の回転速度で直接制御されるという意味で、PTO弁の回転速度が特に重要になる。
【0017】
複動式の空圧式アクチュエータ40へ送られる空気流はソレノイドによって駆動される2方向弁(two way system)45を介して送られる。
[図4b]は2方向弁45の1つの位置を示し、この位置では管路50から来る空気が管路42を通って複動式の空圧式アクチュエータ40へ送られ、管路41を介して管路51から排出される。
[図4c]は2方向弁45の別の位置を示し、この位置では管路50から来る空気が管路41を通して複動式の空圧式アクチュエータ40へ送られ、管路42を介して管路52から排出される。
【0018】
空圧式で駆動されるこのPTO弁はこれまで常に制御弁61および62を使用して空気の出口流を手動で調整することで制御されてきた。PTO弁23中のボールが各方向へ異なる速度で回転した場合、各弁61および62への制御は別々の制御になる。
【0019】
驚くことに、自動制御弁61および62を使用するとPTO弁23の制御が改善されるということを本発明者は見出した。
【0020】
好ましい実施例ではV字−ボール制御弁(V-ball control valves)を使用する。このV字−ボール制御弁は切欠きが付いたボールセグメントの回転を用いてスロットルし、小さい開度の場合には空気流の極めて正確に制御でき、しかも、必要な場合には完全ボアまで開口できる形状を有している。V字−ボール制御弁の一つの例はウオルセスター(Worcester)V−フロー制御弁タイプV44-66UMPTN90はである。
【0021】
この正しい制御弁61および62を見付け出すことは自明なことではない。すなわち、アクチュエータ40中の空気量はかなり少ないため、これまでにテストした全ての制御弁は空気のフローを正確に制御していなかった。それより重要なことには反応装置10の運転がより安定になるということは自明なことではない。
【0022】
自動制御弁を使用することでPTO弁の信頼性がいくつかの点で良くなるという利点がある。もちろんPTO弁を頻繁に操作、例えば15〜90秒ごとに操作することで、この弁が磨耗し、操作が遅くなるが、この影響はアクチュエータが必要とする空気の量を自動的に増加させることで直ちに補償される。また、アクチュエータが必要とする空気量を自動制御することでPTO弁が開位置に固まって動かなくなることを避けることができる。さらに、自動制御弁を使用することで、弁をマニュアルで制御する場合に比べて、アクチュエータに入る空気量をより正確に制御できる。マニュアル制御弁を使用した場合には、アクチュエータに入る空気量を減らした時にPTO弁が最後の開位置にブロックされ、反応装置が減圧される、という危険が常にある。これは特にダブルループ系の最初の反応装置で、反応装置のPTO弁が長い開時間を必要とする場合に起こる。
【0023】
自動制御弁、そして、180°回転するPTO弁を使用することでPTO弁の開口時間は良好に制御することができる。これは90°回転のPTO弁を用いた場合には同じようには達成できないであろう。
【0024】
また、空気の流れを制約しない限り、管路51および52の内部体積は可能な限り最少にしなければならない、ということも見出した。管路51および52は1.27cm(1/2インチ)から2.54cmインチ(1インチ)までの直径を有する。これらの管路は約1.9cm(3/4インチ)の直径を有するのが好ましい。管路51および52は100cm以下の長さ、好ましくは150cm以下の長さを有する。最も好ましくは、管路51および52は1.9cm(3/4インチ)の直径を有し、2方向弁45と自動制御弁61および62との間に約20cmの長さを有する。
【0025】
[図5]に参照する。この図は制御機構の好ましい実施例を示している。PTO弁23は、複動式のアクチュエータの位置に、PTO弁23の位置を示すセンサ71および72を備えている。これらのセンサ71および72からの情報は伝送器73およびケーブル74、75を介してコンピュータ76に送られ、そこで、PTO弁の回転時間が決定される。このPTO弁の回転時間は回転制御装置79へ送られる。この回転制御装置79はオペレータからPTO弁の回転時間のための設定値81も受ける。運転中のPTO弁の回転時間とオペレータが入力した所望回転時間との間の差に従って信号82がV−ボール制御弁へ送られ、回転時間がオペレータの設定値より低速の場合にはサイクル毎に1%だけ弁の開口度を増加させ、回転時間がオペレータの設定値より速い場合には、1%だけ弁の開口度を減少させる。
【0026】
PTO弁の回転時間の設定値はオペレータが手動で調整するか、反応装置の各開口時の反応装置の圧力降下を関数としてシステムで制御できる。
【実施例】
【0027】
実施例および比較例
ループ反応装置に本発明のシステムを付けた。ループ反応装置は下記の特性を有している:
(1)定格容量:5.5トン/時
(2)容積:19m3
(3)沈殿レグの数:4
(4)沈殿レグのサイズ:20.3 cm
(5)フラッシュラインの寸法:7.6cm
(6)PTO弁の寸法:5cm
【0028】
PTO弁23の複動式アクチュエータ40は[図4]の制御装置を備えている。管路41および42は直径が1.27cm(1/2インチ)で、長さが3mである。自動制御弁61および62はCvが8のウオルセスター(Worcester)V−フロー制御弁タイプV44-66UMPTN90で、直径が1.9cm(3/4インチ)、長さが20cmの管路を介して2方向弁45に結合した。
【0029】
反応装置の運転の安定性は反応装置内で測定した圧力の変化で測定した。反応装置の運転は極めて安定だった。手動制御タイプの制御弁61および62を備えた比較例の反応装置と比較して、本発明では上記変化が25%だけ低下した。なお、比較例の反応装置の上記以外の特性は本発明のものと同じにした。また、比較例の反応装置では各沈殿レグの容量は10%だけ低下した。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】2つの沈殿レグとその制御装置とを有するループ反応装置の概念図。
【図2】上記制御装置の概念図。
【図3】製品取出し弁とその作動機構とを示す沈殿レグの底部の概念図。
【図4】空気圧系の概念図。
【図5】電子制御システムの概念図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体希釈剤中でオレフィンを重合する重合方法において、
ループ反応装置中で一般に固体のポリマー粒子を含む液体スラリを生成し、生成したポリマーを沈殿レグ中に沈降させ、沈殿レグの端部に設けた製品取出し用回転弁を周期的に180°開いて、ポリマー粒子流を沈殿レグから流出させ、上記製品取出し用回転弁は複動アクチュエータで操作し、この複動アクチュエーは空気系で駆動し、この空気系は空気式制御弁を有するシステムで調節し、この空気式制御弁をV−ボール弁にすることを特徴とする重合方法。
【請求項2】
上記制御弁が自動制御弁である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ループ反応装置の沈殿レグの製品取出し用回転弁を180°回転させる空気式の複動アクチュエータの調節での、V−ボール制御弁の使用。
【請求項4】
上記V−ボール制御弁が自動制御弁である請求項3に記載の使用。
【請求項5】
沈殿レグを有するループ反応装置において、沈殿レグの端部位置に180°回転する製品取出し用回転弁を有し、この180°回転する製品取出し用回転は空気圧駆動式の複動アクチュエータによって操作され、この複動アクチュエーは空気系で駆動され、この空気系は空気式制御弁を有するシステムで調節され、この空気式制御弁はV−ボール制御弁であることを特徴とするループ反応装置。
【請求項6】
上記V−ボール制御弁が自動制御弁である請求項5に記載のループ反応装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−522316(P2007−522316A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552619(P2006−552619)
【出願日】平成17年2月9日(2005.2.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050566
【国際公開番号】WO2005/079972
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】