説明

連続培養および抽出による、微生物からの細胞化合物の集約的抽出のための方法、ならびにその装置

本発明は、微生物を培養するステップと、前記微生物から細胞化合物を抽出するステップと、ここで、各ステップは連続した方法で実行され、前記抽出ステップは、前記培養ステップとは別々に実行され、かつ、前記抽出ステップは前記微生物と生体適合的な条件下で実行されることを特徴とし、続いて、前記細胞化合物を回収する少なくとも1つのステップと、前記微生物を前記培養ステップに再循環させる少なくとも1つのステップとを含む、微生物から細胞化合物を抽出するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、細胞化合物(cellular compound)の抽出のための方法の分野である。
【0002】
本発明は様々な用途を想定することができ、特に、
−医薬品、化粧品および食品加工の分野用の生理活性分子(色素、ビタミンなど)、
−エネルギー分野用の高エネルギー可能性分子(high energy potential molecules)(脂質)、
の抽出が想定され得る。
【0003】
より具体的には、本発明は、光合成微生物からの細胞内化合物の、集約的かつ生体適合的な抽出のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0004】
微細藻類およびシアノバクテリアなどの光合成微生物の利点の一つは、その独自の(original)組成にある。
【0005】
しかし、これらの化合物の大部分は、この種類の微生物の重要な代謝柔軟性を利用して所望の化合物の生合成を実現するための、培養物へのストレス条件の適用を伴う。
【0006】
この化合物が細胞内にあるならば(例えば、特に色素)、大多数の場合、培養に不可逆的な損傷を引き起こす(粉砕、熱もしくは浸透圧ショック、細胞崩壊など)、第2の抽出ステップを実施する必要がある。
【0007】
従って、この原則に基づく工業生産は、バイオマス生産、ストレス条件適用相、それに続いて収集、抽出および精製相を連続的に交互に行う、不連続生産を用いる。
【0008】
不連続生産の主な欠点は、頻繁な収集を阻む、光合成微生物の(細菌または酵母などの従属栄養微生物と比較して)低い増殖速度か、最低限でも、複数の生産系を平行して用いる作業を伴うことに関連する。
【0009】
一部の化合物に関して、細胞を有意に変えることなく化合物だけが抽出される(生体適合性抽出)、本来の抽出技法を実施することが可能である。これにより、化合物の連続的な生産が可能となり、同時に、増殖およびストレス相の繰り返しを防ぐことができる。
【0010】
実際に、この技法が光バイオリアクターでの連続的なバイオマス生産に付随するのであれば、ひとたび初期増殖相が実行されるとすぐ、その後に適用されるストレス条件は、生産された化合物が継続的に抽出されるという条件で、理論上無期限に維持され得る。
【0011】
この結果、不連続的方法と比較して無視できない生産の増加がもたらされ、所望の細胞組成を有するさらなるバイオマスを得る前に潜伏期に関連する損失が回避される。
【0012】
そのような連続的な生産−抽出技法は、2003年にHejaziおよびWijffelsにより提案され(特許文書はEP1501937のもとで公開される)、図1に関して説明される。
【0013】
この装置はまた、再利用可能な化合物、この場合微細藻類デュナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)由来のβカロテン(Leon et al.による研究、2003年)の抽出を可能にする生体適合性溶媒の存在を検出する研究にも基づいている。
【0014】
図1に例証されるように、この装置は、培養物1が抽出される化合物および溶媒2を含有し、共存する(coexist)化合物が漸進的に抽出される(二相系)、光バイオリアクターを備える。
【0015】
操作上のことではあるが、この方法は様々な制限を提示する。実際に、2つの非混和性相(水性媒体および疎水性溶媒の培養)を接触させて設置することが困難であるため、抽出率は比較的低いままである。接触界面は小さいままであるので、重要な、結果として生じる物質移動の制限がある。この溶液は全体を非常に激しく混合することからなるが、培養細胞の脆弱性により決定される限界に急速に達する。
【0016】
さらなる欠点は、両方のプロセス(生合成および抽出)が異なっているため、最適条件を課すことができないことにある。例えば、抽出されるβカロテンは感光性であるので、培養に強い照明を使用すること(生合成に必要なストレス条件)により、分解の前に定期的に色素を満たした溶媒の除去を必要とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、特に、先行技術の欠点を改善することである。
【0018】
より具体的には、本発明の目的は、先行技術の技法に対して増大した生産および抽出率を想定することを可能にする、微生物からの細胞化合物の連続的な生産−抽出のための技法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、抽出後のその特性を保護するため、または選択溶媒の選択および抽出時間の制御を用いて抽出化合物の純度を改良するために、抽出化合物に適した特有の運用条件を適用することを伴う、そのような技法を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、細胞内化合物および細胞外化合物の両方の抽出を可能にする、そのような技法を提供することである。これらの目的は、本明細書の下文に現れるその他の目的とともに、
−微生物を培養するステップと、
−細胞化合物を該微生物から抽出するステップと、
ここで、各ステップは連続した方法で実行され、該抽出ステップが該培養ステップとは別々に実行され、該抽出ステップは該微生物と生体適合的な条件下で実行されることを特徴し、続いて、
−該細胞化合物を回収する少なくとも1つのステップと、
−該微生物を該培養ステップに再循環させる少なくとも1つのステップと
を含む、微生物から細胞化合物を抽出するための方法に関する本発明を用いて達成される。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、その方法が、2つの別個かつ連続的な細胞化合物培養ステップおよび抽出ステップに基づくという点において、光合成微生物と非光合成微生物(細菌、酵母)の両方に適用可能である。培養ステップだけが異なるので、光バイオリアクター(光合成微生物の場合)は、使用する微生物に適した任意のその他のバイオリアクターに置き換えることができる。
【0022】
各々の相(培養および抽出による生産)は、非常に異なった原理、技術およびパラメーターに基づいているため、本発明による2つのサブシステムでの運用は、各々のサブシステムが強化され、独立した制御というオプションにより増強された全体的な方法を得ることを可能にする。
【0023】
注目すべきは、本発明が細胞内化合物の抽出に特に適用できることである。しかし、一部の例では、微生物は、代謝産物(細胞外代謝産物)を培地中に放出する可能性がある。本発明は、この場合にも同じ全体的な運用原理で適用でき、その唯一の違いはその代謝産物がその後培養培地から、細胞から直接抽出される(固−液抽出)代わりに抽出器(液−液抽出)により抽出されることである。
【0024】
しかし、代謝産物が細胞内であろうと細胞外であろうと、両方のサブシステムのループ状の運用概念は、抽出相が生物学的材料に対して破壊的でない場合にのみ可能であり、それにより、生細胞は生産サブシステムに再導入される。
【0025】
そうでなければ、両方のサブシステムを、従来の工業形式であるカスケードに運用する。従って、抽出ステップは、機械的原因であろうと、熱による原因であろうと、化学的原因であろうと、培養に対する不可逆的な損傷を回避するはずである。抽出システムの適した選定により、機械的損傷および熱ショックを防ぐことができる。
【0026】
従って、本発明の独創性は、連結した方法で運用される、2つの最適化されたサブシステムへの分割にあり、各々のサブシステムは最終的に連続した生産−抽出を可能にする制約に従う。既存のシステムと比較して、以下の2つの主な利益が提供される。
−抽出器での物質移動を増加させるオプション(およびそのために全体的な収量の改良)。
−抽出される細胞内化合物の完全性を保つために生産のためよりも抽出のための異なる条件を適用するオプション。
【0027】
要するに、本発明は、生産および抽出の各ステップのために設けられる2つのサブシステムを導入すること、および、連結された方法、すなわち、連続的生産および細胞内化合物ストレス条件下で運用することにより、物質移動に関するものと、両方のステップ(生産および抽出)に最適な運用条件を適用するために提供されるオプションに関するものの両方の主な改良を可能にし、該化合物に対して生体適合的な抽出部分を可能にする。
【0028】
注目すべきは、たとえ原理上は、2つのサブシステムの使用により本方法の複雑さが増大したとしても、連続的かつ永続的な様式での運用により連結が促進されることである。従って、抽出を改良するために培養条件を最適化することが可能である(一定の細胞内濃度を長期にわたり維持することにより、適用するべき抽出条件のより良い規定が可能になる)。
【0029】
一つの有利な解決策によれば、該培養ステップは生物生産ステップであり、所望の代謝産物の合成に必要とされる条件を生培地に提供する。
【0030】
有利には、該抽出ステップは、液−液(細胞外代謝産物)または固−液(細胞内代謝産物)抽出ステップである。
【0031】
そのような抽出様式は、細胞(細胞内化合物の場合)および/または培養培地(浸出する細胞外化合物の場合)から、その後に抽出器出口で回収される溶媒への、所望の代謝産物の移動を確実にする。
【0032】
好ましい解決策によれば、該抽出ステップは遠心分配クロマトグラフィー(CPC)を用いて行われる。
【0033】
このように、CPCの高い移動能力により、高性能液−液抽出システムを得ることが可能となる。
【0034】
しかし、CPCの使用は主な制約、すなわち、装置(遠心力場、培養ポンプ系、各分離細胞間および各分離細胞中の剪断)を通過する間に生細胞に供される高い機械的ストレスの可能性を伴う。従って、このシステムは、培養がこの処置に耐えることができる場合に、連続使用にのみ適している。試験によって、このアプローチの実現可能性およびその可能性(文献に対して増加した収量)が実証された(しかし、生物学的材料の完全性を保つ、許容可能なCPC操作範囲内にとどまることを前提とする)。
【0035】
一つの可能性のある代替的な実施形態によれば、該抽出ステップは光から保護されて実行される。
【0036】
さらなる可能性のある代替的な実施形態によれば、該抽出ステップは、気体窒素の中の無酸素中で実行される。
【0037】
従って、本発明による方法は、具体的な条件、例えば、生成物が感光性である場合には光から保護されて機能する、または、生成物が急速に酸化する場合には無酸素症条件下などの、抽出システムの即時の適用を可能にすることが理解される。同様に、採用される抽出様式は、高い選択性(溶媒および抽出時間制御の選択)を実現するように選択されてもよい。
【0038】
本発明はまた、
−微生物の培養するための少なくとも1つの容器と、
−該微生物からの細胞化合物を抽出するための少なくとも1つの容器と、ここで、該抽出容器は該培養容器とは分離され、該微生物と生体適合性である少なくとも1種類の溶媒を含有する、
−該細胞化合物を回収するための手段と、
−該微生物を該抽出槽から該培養容器に再循環させるための手段と
を含む、上記のような方法の実施のための装置に関する。
【0039】
注目される点は、本発明が、細胞溶解を導く可能性のある微生物の代謝を不可逆的に変えることなく、細胞内代謝産物を抽出する生体適合性溶媒を用いることにより、微生物への化学的損傷を防ぐことである。
【0040】
一つの有利な解決策によれば、該培養容器は光バイオリアクターであり、該抽出容器は液−液抽出容器である。
【0041】
本発明のその他の特徴および利点は、例示的な限定的ではない例として示される、以下の本発明の優先的な実施形態の説明および添付図面を読んでより明白に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】先行技術による本発明の生産抽出技法の模式図である。
【図2】本発明による方法の実施のための装置の模式図である。
【図3】本発明による方法を用いる、デュナリエラ・サリナ培養物の細胞内βカロテンCPC抽出結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上に特定されるように、本発明の原理は、各々が生産もしくは抽出相のいずれかのために特に設けられている、ループ状に運用される2つのサブシステムの関連性に基づく、細胞化合物の生産−抽出のための方法の提供にある。
【0044】
本発明に従う方法の実施のための装置は、図2を参照して説明される。
【0045】
そのような装置は、
−光合成微生物培養ステップを実行する、連続的な様式で運用される光バイオリアクター3と、
−細胞化合物の連続的な抽出を行う抽出器4と、
−微生物を光バイオリアクターから抽出器4へ移動させる手段5と、
−細胞化合物を回収するための手段41と、
−微生物を抽出器4から光バイオリアクター3の中に再循環させるための手段6と
を含む。
【0046】
従って、生合成相は、連続的に稼働する1または複数の光バイオリアクターで実行され、所望の化合物の最適化された生合成速度で実現される理想的な制御された条件の適用を可能にする。したがって、物理化学的培養パラメーター(温度、pH、培養培地、入射光)を修正することによって、生理学的ストレスを誘導することにより、例えば生理学的ストレスから微生物を保護する際に関与している特定の代謝産物(例として発光および酸化ストレス状態におけるβカロテン)の生合成を誘発することは、可能である。
【0047】
抽出器は、ドデカンまたはデカンなどの生体適合性溶媒を含有する容器からなる。
【0048】
そのような溶媒を用いて、生体適合的な抽出を行う。次に、連続的かつ選択的な方法で、細胞の生命力を保ちながら特定の細胞化合物を抽出することが可能である。
【0049】
僅かに疎水性の溶媒の場合には、接触によって細胞の構造が即座に変更される。この場合、抽出は非常に重要であるが、選択的でなく(大量の化合物が抽出される)、かつ生体適合的ではない。
【0050】
他方では、選択された溶媒が十分に無極性であるならば、細胞壁およびその生命機能を保存することができ、それと同時に特定の疎水性化合物、特にデュナリエラ・サリナ由来のクロロフィルおよびβカロテンの抽出が維持される。溶媒の無極性が大きいほど抽出能力は大きく低下し、クロロフィルに関してより顕著な低下が見られた。従って、適した溶媒を選択することにより、生体適合的な選択的βカロテン抽出を得ることができる。
【0051】
大雑把であるが、細胞内色素の準完全抽出のための従来法と比較して、(原理上は効果が弱い)非常に無極性の溶媒を使用することにより生じる生産性の損失は、培養細胞から直接βカロテンを連続的に抽出することを維持することにより補われ得る。
【0052】
本発明の原理によれば、溶媒は、培養物が(1または複数の)生産用光バイオリアクターに戻る前に通過する、抽出のために設けられた並列システム(抽出器4、明らかに物理的に分離した光バイオリアクター3)中に維持される。
【0053】
そのような装置により、そして例えば著しい浸出を適用することにより(分散相は培養物であり、連続的相は溶媒である)、結果として、水性生物媒体と溶媒との間に(非混和性相)界面表面積の著しい増加がもたらされる。これは、高レベルの機械的ストレス(流体力学的ストレス)を誘発するが、高い抽出率を考えると、これは抽出サブシステムを短時間通過することにより補われる。
【0054】
優先的な実施形態によれば、抽出ステップは、遠心分配クロマトグラフィー(CPC)を用いて実行される。CPCは、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)に匹敵するが、この技法は固体基板が無いことおよびその高い処理能力の点で異なる。
【0055】
CPC技法において、有用な部分は、一連の分離細胞が提供される回転ディスクからなる。強力な遠心力場を用いて、固定相と呼ばれる相の1つをこの装置で維持する。その後、強制流速で循環しているその他の相(移動相)は、固定相中の各細胞に浸出し、その結果、両液相の接触を有意に増加させる。効率は、運用条件(回転速度、移動相の流速)、両方の相の物理的特性および各々の分離細胞の形状によって決まる(Marchal 2001)。この方法は、通常、複合混合物(活性のある天然化合物、ペプチド、脂肪酸、リン脂質、抗生物質、香気抽出物、石油製品留分など)からの分子の精製に適用される。
【0056】
対象の適用によれば、大容量光バイオリアクター、培養槽、または小さいが容量の強化された光バイオリアクターの使用が想定され得る。このことは抽出器にも当てはまり、抽出器は、従来の液−液抽出カラムか、または物質移動および培養培地と抽出器溶媒の接触が最適化されている、強化された抽出器(例えばCPC)であってよい。
【0057】
CPC−光バイオリアクターの連結の実現可能性を証明するため、試験を行った。この試験は、ドデカンおよびデカンを溶媒として用いて、様々なCPC運用パラメーターの関数として、抽出されたβカロテンの量および関連する細胞損失の量を評価することを特に目的とした。結果の一部の例を図3に示す。
【0058】
これらの結果は、本方法の主な特徴の中の3つ、すなわち、
−抽出の間の物質移動の重要な役割、
−細胞の完全性を保つための妥協を見出す必要性、および
−溶媒中のβカロテンの溶解度の影響
を強調する。
【0059】
従ってCPCの移動(培養)相の供給流速は、重要な役割を果たす。より多い量のβカロテンは、より速い流速で抽出されるが、生細胞に相当な損傷(鞭毛の喪失、死亡率)を伴う。
【0060】
しかし、生培地の再生する能力により、バイオマスの僅かな損失は許容可能である。このようにして、過酷な条件下でCPC中の通過48時間後に、培養物の大部分が回復する(初期濃度に対する損失は40%〜20%)。
【0061】
このことは、中程度であるが永続的な抽出か、または高程度であるが順次抽出である、各抽出の間に、生きている物質(the live material)を再生するために規定される潜伏期間を伴う、可能性のある運用プロトコールの多様性を実証する。
【0062】
注目すべきは、これらの様々な運用オプションは決して変更(modify)ではなく、上に記載される本発明の総合的な原理(2つのサブシステムでの運用)に網羅されることである。
【0063】
注目すべきは、これら2つの生産および抽出ステップを分離することにより、各々の相の最適化(およびそれらの連結)が可能となることである。
【0064】
生産部分に関して、細胞内βカロテン化合物を最大にすることのできる条件を見出すことが重要である。これらの条件は、連続的な運用を保つ必要がある。従って、CPCの操作条件を、より容易に最適化することができる。
【0065】
2つのサブシステムで運用することによりもたらされる技術革新により、新しい具体的なプロトコールを実施するために様々な試験が行われた。
【0066】
実際に、既存のプロトコールの大部分は、広範な不連続培養に基づいて開発されたものである。
【0067】
連続的な光バイオリアクターで運用することにより、最適化するべき観点がもたらされる。
【0068】
このようにして、1細胞あたり通常15〜20pg前後の細胞内濃度が70に増大した。
【0069】
これは、従来の光バイオリアクター培養運用条件(温度、照射量、pH)を調節することによる、かつ、培養培地を変更することによる生理学的強制(forcing)を用いて得られた。従って、2つの化合物、すなわち、酢酸塩および鉄(Fe2+)を、標準的な培養培地に加えると、両化合物は、増殖とβカロテンの生合成の両方の促進を可能にした。注目すべきは、連続培養様式で運用することにより、各々の化合物のそれぞれの量(経時的に細胞あたり一定量)の容易な最適化が可能となることである。
【0070】
βカロテン生合成をもたらす条件が適用された、連続的に稼働する3cmの光学装置を有する、4リットルの単一の長方形の光バイオリアクターとのCPCの関連(association)は、各々のサブシステムにより提供される様々な改良点を裏付ける初期結果を得ることを可能にした。このようにして、単一の反応器においてβカロテン抽出に関して行われた先行技術の研究は、多くて5〜10mg/lまでを抽出することができたことを実証した。
【0071】
CPCは、カラムヘッドで148mg/lのβカロテン抽出を得ることを可能にし、これは先行技術により用いられる方法よりも30倍多い(CPC抽出条件;供給流速20ml/分−回転速度1000rpm−溶媒 デカン;培養条件:4−リットル、長方形−pH7.5−温度30℃−塩分220g/l−入射光700μE/m.s)。全体で、3200mlの培養物および60mlの溶媒に対して1.25mgのβカロテンが抽出された。
【0072】
連続的な生産では、1日に培養物1リットルあたりおよそ50mgのカロテノイドの生産性が予測される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物から細胞化合物を抽出するための方法であって、
微生物を培養するステップと、
細胞化合物を前記微生物から抽出するステップと、
ここで、各ステップは連続した方法で実行され、前記抽出ステップは前記培養ステップとは別々に実行され、前記抽出ステップは、前記微生物と生体適合的な条件下で実行されることを特徴とし、続いて、
前記細胞化合物を回収する少なくとも1つのステップと、
前記微生物を前記培養ステップに再循環させる少なくとも1つのステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記培養ステップが、生物学的生産ステップであることを特徴とする、請求項1に記載の抽出方法。
【請求項3】
前記抽出ステップが、液−液抽出ステップ又は固−液抽出ステップであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の抽出方法。
【請求項4】
前記抽出ステップが、遠心分配クロマトグラフィーを用いて実行されることを特徴とする、請求項3に記載の抽出方法。
【請求項5】
前記抽出ステップが、光から保護されて実行されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出方法。
【請求項6】
前記抽出ステップが、気体窒素中の無酸素下で実行されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の抽出方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の方法を実施するための装置であって
微生物の培養のための少なくとも1つの容器3と、
前記微生物からの細胞化合物の抽出のための少なくとも1つの容器4と、ここで、前記抽出容器4は、前記培養容器3とは分離されており、前記微生物と生体適合性である少なくとも1の溶媒を含有し、
前記細胞化合物を回収するための手段41と、
前記微生物を前記抽出槽から前記培養容器に再循環させるための手段6と
を備えることを特徴とする、装置。
【請求項8】
前記培養容器3が、バイオリアクターであることを特徴とする、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記抽出容器4が、液−液抽出容器又は固−液抽出容器であることを特徴とする、請求項7又は8に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−524480(P2010−524480A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504664(P2010−504664)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2008/054869
【国際公開番号】WO2008/135382
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(507421289)ユニヴェルシテ・ドゥ・ナント (6)
【出願人】(302013542)サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィーク(セーエヌエールエス) (1)
【Fターム(参考)】