説明

連続時間ΔΣ変調器

【解決課題】遅延の影響を軽減し、出力信号の品質を向上させることができるようにする。
【解決手段】入力されたアナログ信号が、フィルタ216を通過して、アナログデジタル変換器20によって、デジタル信号に変換される。そして、アナログデジタル変換器20の出力をフィルタ216にフィードバックするために、デジタルアナログ変換器24によって、アナログデジタル変換器20の出力をアナログ信号に変換し、減算器226によって、入力されたアナログ信号とデジタルアナログ変換器24の出力との差を演算してフィルタ216にフィードバックする。そして、フィルタ216及びアナログデジタル変換器20を介して、デジタル信号が出力される。このとき、タイムデジタイザ34によって、エクセスループディレイを検出し、コントローラ36によって、検出されたエクセスループディレイに基づいて、デジタルアナログ変換器24のゲインを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、連続時間ΔΣ変調器に係り、特に、入力されたアナログ信号を、デジタル信号に変換すると共に、フィードバックして出力する連続時間ΔΣ変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ΔΣ変調器は、通信機などに使用されており、フィードバック信号を与えることにより、入力となるアナログ信号と出力となるデジタル信号とのS/N比(SNR)を改善することが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
また、ΔΣ変調器として、低消費電力であり、かつ、高速、高周波の信号を扱うことができる連続時間ΔΣ変調器が知られている。
【特許文献1】特許3358728
【特許文献2】特許3483000
【特許文献3】特開2001−136072
【特許文献4】特開2002−135120
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の連続時間ΔΣ変調器では、高速の信号を扱った場合に、デジタルアナログ変換回路のトランジスタが即座にスイッチできないため、連続時間ΔΣ変調器内のアナログデジタル変換回路の出力とデジタルアナログ変換回路のパルスの立ち上がりとに遅延が生じ、出力信号の品質を劣化させてしまう、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、遅延の影響を軽減し、出力信号の品質を向上させることができる連続時間ΔΣ変調器を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために第1の発明に係る連続時間ΔΣ変調器は、特定周波数のアナログ信号を通過させるフィルタ、前記フィルタの出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器、前記アナログデジタル変換器の出力を前記フィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能なデジタルアナログ変換器、及び入力されたアナログ信号と前記デジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記フィルタにフィードバックする演算器を備えたΔΣ変調器と、前記アナログデジタル変換器及び前記デジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出する遅延時間検出器と、前記遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、前記遅延時間による影響が小さくなるように前記デジタルアナログ変換器のゲインを調整するゲイン調整器とを含んで構成されている。
【0007】
第1の発明に係る連続時間ΔΣ変調器によれば、入力されたアナログ信号が、フィルタを通過して、特定周波数のアナログ信号として出力され、アナログデジタル変換器によって、デジタル信号に変換される。そして、アナログデジタル変換器の出力をフィルタにフィードバックするために、デジタルアナログ変換器によって、アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、演算器によって、入力されたアナログ信号とデジタルアナログ変換器の出力との差を演算してフィルタにフィードバックする。そして、フィルタ及びアナログデジタル変換器を介して、デジタル信号が出力される。
【0008】
このとき、遅延時間検出器によって、アナログデジタル変換器及びデジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出し、ゲイン調整器によって、遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、遅延時間が小さくなるようにデジタルアナログ変換器のゲインを調整する。
【0009】
このように、アナログデジタル変換器及びデジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出し、アナログデジタル変換器の出力をフィルタにフィードバックするためにアナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器に対して、検出された遅延時間に基づいて、遅延時間による特性劣化が小さくなるようにゲインを調整するため、遅延の影響を軽減し、出力信号の品質を向上させることができる。
【0010】
第1の発明に係る遅延時間検出器は、アナログデジタル変換器と同一構成の検出用アナログデジタル変換器と、検出用アナログデジタル変換器の出力をデジタル信号に変換するデジタルアナログ変換器と同一構成の検出用デジタルアナログ変換器とを備え、検出用アナログデジタル変換器の出力と、検出用デジタルアナログ変換器の出力とに基づいて、遅延時間を検出することができる。
【0011】
また、第1の発明に係るデジタルアナログ変換器は、可変電流源と、可変電流源からの出力をオンオフする電流スイッチとを備え、電流スイッチをオンオフすることにより、アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、ゲイン調整器は、可変電流源の出力を調整することにより、デジタルアナログ変換器のゲインを調整することができる。
【0012】
第2の発明に係る連続時間ΔΣ変調器は、特定周波数のアナログ信号を通過させる第1のフィルタ、前記特定周波数のアナログ信号を通過させる第2のフィルタ、前記第2のフィルタの出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器、前記アナログデジタル変換器の出力を前記第1のフィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能な第1のデジタルアナログ変換器、前記アナログデジタル変換器の出力を前記第2のフィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能な第2のデジタルアナログ変換器、入力されたアナログ信号と前記第1のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記第1のフィルタにフィードバックする第1の演算器、及び前記第1のフィルタの出力と前記第2のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記第2のフィルタにフィードバックする第2の演算器を備えたΔΣ変調器と、前記第2のアナログデジタル変換器及び前記デジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出する遅延時間検出器と、前記第1のデジタルアナログ変換器のゲインを所定のゲインに設定すると共に、前記遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、前記遅延時間による影響が小さくなるように前記第2のデジタルアナログ変換器のゲインを調整するゲイン調整器とを含んで構成されている。
【0013】
第2の発明に係る連続時間ΔΣ変調器によれば、入力されたアナログ信号が、第1のフィルタを通過して、特定周波数のアナログ信号として出力され、更に、第2のフィルタを通過して、特定周波数のアナログ信号として出力され、アナログデジタル変換器によって、デジタル信号に変換される。そして、アナログデジタル変換器の出力を第1のフィルタにフィードバックするために、第1のデジタルアナログ変換器によって、アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、第1の演算器によって、入力されたアナログ信号と第1のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して第1のフィルタにフィードバックする。
【0014】
また、アナログデジタル変換器の出力を第2のフィルタにフィードバックするために、第2のデジタルアナログ変換器によって、アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、第2の演算器によって、第1のフィルタの出力と第2のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して第2のフィルタにフィードバックする。
【0015】
そして、第2のフィルタ及びアナログデジタル変換器を介して、デジタル信号が出力される。
【0016】
このとき、ゲイン調整器によって、第1のデジタルアナログ変換器のゲインを所定のゲインに設定し、また、遅延時間検出器によって、アナログデジタル変換器及び第2のデジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出し、ゲイン調整器によって、遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、遅延時間による影響が小さくなるように第2のデジタルアナログ変換器のゲインを調整する。
【0017】
このように、アナログデジタル変換器及び第2のデジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出し、アナログデジタル変換器の出力を第2のフィルタにフィードバックするためにアナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換する第2のデジタルアナログ変換器に対して、検出された遅延時間に基づいて、遅延時間による影響が小さくなるようにゲインを調整するため、出力信号の品質を向上させることができる。
【0018】
第2の発明に係る遅延時間検出器は、アナログデジタル変換器と同一構成の検出用アナログデジタル変換器と、検出用アナログデジタル変換器の出力をデジタル信号に変換する第2のデジタルアナログ変換器と同一構成の検出用デジタルアナログ変換器とを備え、検出用アナログデジタル変換器の出力と、検出用デジタルアナログ変換器の出力とに基づいて、遅延時間を検出することができる。
【0019】
また、第2の発明に係る第1のデジタルアナログ変換器及び第2のデジタルアナログ変換器は、可変電流源と、可変電流源からの出力をオンオフする電流スイッチとを備え、電流スイッチをオンオフすることにより、アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、ゲイン調整器は、可変電流源の出力を調整することにより、第1のデジタルアナログ変換器及び第2のデジタルアナログ変換器のゲインを調整することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明の連続時間ΔΣ変調器によれば、アナログデジタル変換器及びデジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出し、アナログデジタル変換器の出力をフィルタにフィードバックするためにアナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するデジタルアナログ変換器に対して、検出された遅延時間に基づいて、遅延時間による影響が小さくなるようにゲインを調整するため、出力信号の品質を向上させることができる、という効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、本実施の形態では、2次ローパス連続時間ΔΣAD変調器に本発明を適用した場合について説明する。
【0022】
図1に示すように、第1の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器10は、入力されたアナログ信号を変調すると共に、デジタル信号に変換して出力するΔΣAD変調部12と、ΔΣAD変調部12内の後述するデジタルアナログ変換回路のゲインを調整するゲイン調整部14とから構成されている。
【0023】
ΔΣAD変調部12は、特定の周波数のアナログ信号を通過させる2つのローパスフィルタ16、18と、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換回路20と、デジタル信号をアナログ信号に変換する2つのデジタルアナログ変換回路22、24と、2種類のアナログ信号を減算して出力する2つの減算器26、28とを備えている。
【0024】
減算器26の出力は、ローパスフィルタ16に入力され、減算器28の出力は、ローパスフィルタ18に入力され、また、ローパスフィルタ18の出力は、アナログデジタル変換回路20に入力されている。
【0025】
デジタルアナログ変換回路22は、アナログデジタル変換回路20の出力を、アナログ信号に変換して、ローパスフィルタ16にフィードバックするように、アナログデジタル変換回路20及び減算器26の間に設けられている。また、デジタルアナログ変換回路24は、アナログデジタル変換回路20の出力を、アナログ信号に変換して、ローパスフィルタ18にフィードバックするように、アナログデジタル変換回路20及び減算器28の間に設けられている。
【0026】
また、減算器26は、連続時間ΔΣAD変調器10の入力となるアナログ信号から、デジタルアナログ変換回路22の出力を減算して出力し、また、減算器28は、ローパスフィルタ16の出力から、デジタルアナログ変換回路24の出力を減算して出力する。
【0027】
デジタルアナログ変換回路22、24は、ゲイン調整部14によるゲインの調整が可能となっており、図2に示すように、デジタルアナログ変換回路22、24は、アナログデジタル変換回路20の出力に応じてオンオフする電流スイッチ50と、テール電流源となる可変電流源52とを備えている。電流スイッチ50は、ハイレベルのデジタル信号が入力されるとオンするスイッチ50Aと、ローレベルのデジタル信号が入力されるとオンするスイッチ50Bとから構成されている。また、可変電流源52は、ゲイン調整部14の後述するコントローラ36によるゲイン調整に応じて、テール電流を変更する。
【0028】
連続時間ΔΣAD変調器10のゲイン調整部14は、アナログデジタル変換回路20と同一構成の検出用アナログデジタル変換回路30と、デジタルアナログ変換回路22、24と同一構成であって、検出用アナログデジタル変換回路30の出力をアナログ信号に変換する検出用デジタルアナログ変換回路32と、検出用アナログデジタル変換回路30の出力がローレベルからハイレベルに切り替わるタイミングから、検出用デジタルアナログ変換回路32の出力のパルスの立ち上がりまでの遅延時間を検出するタイムデジタイザ(Time−to−digital−converter)34と、タイムデジタイザ34によって検出された遅延時間に基づいて、デジタルアナログ変換回路22、24のゲインを調整するゲイン調整器としてのコントローラ36とを備えている。
【0029】
検出用アナログデジタル変換回路30には、連続時間ΔΣAD変調器10の入力となるアナログ信号と同一周波数のパルスからなるアナログ信号が入力されるため、タイムデジタイザ34によって検出される遅延時間が、ΔΣAD変調部12のアナログデジタル変換回路20とデジタルアナログ変換回路24とを含むループ経路における遅延時間(エクセスループディレイ)と同一となっている。
【0030】
コントローラ36は、デジタルアナログ変換回路24と同様に検出用デジタルアナログ変換回路32のゲインも調整し、検出用アナログデジタル変換回路30と検出用デジタルアナログ変換回路32とによる遅延時間の発生条件が、アナログデジタル変換回路20とデジタルアナログ変換回路24とによる遅延時間の発生条件と同一となっている。
【0031】
タイムデジタイザ34は、図3に示すように、直列に接続された複数のインバータ66、位相検出回路68、チャージポンプ回路70、及びローパスフィルタ72を含むディレイロックドループ60と、複数のフリップフロップ62と、各フリップフロップ62の出力を記録するためのレジスタ64を備えている。
【0032】
直列接続されたインバータ66には、検出用アナログデジタル変換回路30の出力が、タイムデジタイザ34の基準信号として入力され、フリップフロップ62には、検出用デジタルアナログ変換回路32の出力が遅延信号として入力され、タイムデジタイザ34によって、レジスタ64に記録された各フリップフロップ62の出力に基づいて、検出用アナログデジタル変換回路30の出力のハイレベルへの切り替わりから、検出用デジタルアナログ変換回路32の出力の立ち上がりまでの遅延時間をデジタルで検出する。
【0033】
例えば、図4に示すように、検出用デジタルアナログ変換回路32の出力の立ち上がりのタイミング(例えば、タイミングT1)で、各フリップフロップ62の出力を取り込み、各フリップフロップ62の出力(例えば、Q1=1、Q2=0、Q3=0)に基づいて、インバータ66の1個分の遅延時間が、エクセスループディレイとして検出される。
【0034】
コントローラ36には、デジタルアナログ変換回路22、24の各々のゲインを調整するためのフィードバック係数を決定するルックアップテーブルが記憶されており、このルックアップテーブルを用いて、タイムデジタイザ34によって検出された遅延時間に対するフィードバック係数を決定する。
【0035】
このルックアップテーブルは以下のように生成される。例えば、デジタルアナログ変換回路22、24のラプラス変換の式を考慮して、s領域のループゲインの式を立て、その式に対して拡張z変換(Modified z−transform)を行い、離散時間ΔΣ変調器のz領域での式に合わせこむことにより、デジタルアナログ変換回路22のフィードバック係数k1、及びデジタルアナログ変換回路24のフィードバック係数k2を決定する。このとき、デジタルアナログ変換回路22、24のラプラス変換の式において、エクセスループディレイを考慮した式を立てて、その式に対して拡張z変換を行い、z領域の式を求める。例えば、デジタルアナログ変換回路22、24に、50%のRTZデジタルアナログ変換回路を用いた場合、ループゲインは以下で表せられる。
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、離散時間ΔΣ変調器の場合には、以下の式となる。
【0038】
【数2】

【0039】
従って、それぞれの係数k1、k2は、以下のように表すことができる。
【0040】
【数3】

【0041】
上記(3)式のように、エクセスループディレイτに関わらず、デジタルアナログ変換回路22のフィードバック係数k2は、−2に固定的に設定され、デジタルアナログ変換回路24のフィードバック係数k1は、エクセスループディレイτに応じて変化する。
【0042】
上記の(3)式のエクセスループディレイτとフィードバック係数k1、k2との関係を表すルックアップテーブルを予め生成し、コントローラ36に記憶しておく。
【0043】
従って、エクセスループディレイτをタイムデジタイザ34によって検出した場合には、このルックアップテーブルを用いて、検出されたエクセスループディレイτに対応するフィードバック係数k1、k2を決定することができる。また、決定されたフィードバック係数k1、k2に基づいて、デジタルアナログ変換回路22、24の可変電流源52のスイッチが調整され、ゲインが調整される。なお、可変電流源52に含まれる複数の電流源は、I、2I、4I、8I、・・・、2Iの電流を供給するテール電流源となっており、ルックアップテーブルによってフィードバック係数kが決定されると、可変電流源52からkIのテール電流が供給されるように、可変電流源52のスイッチが調整される。
【0044】
次に、第1の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器10の動作について説明する。まず、アナログ信号が入力されると、2段のローパスフィルタ16、18によって、特定の周波数のアナログ信号が出力され、そして、アナログデジタル変換回路20によって、ローパスフィルタ18から出力されたアナログ信号がデジタル信号に変換され、フィードバックするために、デジタルアナログ変換回路22、24に入力される。
【0045】
デジタルアナログ変換回路22では、入力されたアナログデジタル変換回路20の出力を、アナログ信号に変換して、減算器26に入力し、入力となるアナログ信号からデジタルアナログ変換回路22の出力を減算して、ローパスフィルタ16にフィードバックする。
【0046】
また、デジタルアナログ変換回路24では、入力されたアナログデジタル変換回路20の出力を、アナログ信号に変換して、減算器28に入力し、ローパスフィルタ16の出力となるアナログ信号からデジタルアナログ変換回路24の出力を減算して、ローパスフィルタ18にフィードバックする。そして、ローパスフィルタ18を介して、アナログ信号がアナログデジタル変換回路20に入力され、連続時間ΔΣAD変調器10の出力として、アナログデジタル変換回路20からデジタル信号が出力される。
【0047】
このとき、ゲイン調整部14では、上記の入力となるアナログ信号と同一周波数のパルス信号が、検出用アナログデジタル変換回路30に入力され、検出用アナログデジタル変換回路30によってデジタル信号に変換されて、タイムデジタイザ34に入力される。また、検出用デジタルアナログ変換回路32は、検出用アナログデジタル変換回路30から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して、タイムデジタイザ34に入力する。
【0048】
タイムデジタイザ34は、検出用アナログデジタル変換回路30からの出力及び検出用デジタルアナログ変換回路32からの出力に基づいて、遅延時間(エクセスループディレイ)を検出し、コントローラ36において、検出された遅延時間に応じて、デジタルアナログ変換回路24のフィードバック係数及び検出用デジタルアナログ変換回路32のフィードバック係数を調整して、デジタルアナログ変換回路24及び検出用デジタルアナログ変換回路32のゲイン調整を行う。また、コントローラ36は、デジタルアナログ変換回路22のフィードバック係数を所定値に設定して、デジタルアナログ変換回路22のゲイン調整を行う。
【0049】
上記のようにゲイン調整を行うことにより、ΔΣAD変調部12におけるエクセスループディレイの影響が軽減される。また、図5に示すように、エクセスループディレイがある場合に、フィードバック係数の調整を行わない場合に比べて、例えば、オーバーサンプリング比を64とすると、SNRが約14.5[dB]改善している。従って、SNRの劣化を軽減した高品質のデジタル信号が連続時間ΔΣAD変調器10から出力される。
【0050】
以上説明したように、第1の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器によれば、次数やローパスフィルタやデジタルアナログ変換回路に合わせて、式を導出し、導出された式に合わせたルックアップテーブルを生成しておき、生成されたルックアップテーブルを用いて、エクセスループディレイの影響を軽減するように、検出された遅延時間に基づいてフィードバック係数を決定し、デジタルアナログ変換回路のテール電流源の調整を行ってゲインを調整するため、エクセスループディレイの影響を軽減して、連続時間ΔΣAD変調器の出力信号のSNRの劣化を軽減し、出力信号の品質を向上させることができる。
【0051】
なお、上記の実施の形態では、コントローラにルックアップテーブルが記憶されている場合を例に説明したが、上述した式を用いて、検出された遅延時間に対応するフィードバック係数を算出するようにしてもよい。
【0052】
また、ローパスフィルタを設けた場合を例に説明したが、これに限定されるものではなく、バンドパスフィルタを設けて構成してもよい。
【0053】
次に、第2の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成の部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0054】
第2の実施の形態では、1次ローパス連続時間ΔΣAD変調器である点が第1の実施の形態と異なっている。
【0055】
図6に示すように、第2の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器210のΔΣAD変調部212は、特定の周波数のアナログ信号を通過させるローパスフィルタ216と、アナログデジタル変換回路20と、デジタルアナログ変換回路24と、アナログ信号を減算して出力する減算器226とを備えている。
【0056】
減算器226の出力は、ローパスフィルタ216に入力され、ローパスフィルタ216の出力は、アナログデジタル変換回路20に入力されている。また、デジタルアナログ変換回路24は、アナログデジタル変換回路20の出力をアナログ信号に変換してローパスフィルタ216にフィードバックするように、アナログデジタル変換回路20及び減算器226の間に設けられている。
【0057】
減算器226は、連続時間ΔΣAD変調器210の入力となるアナログ信号から、デジタルアナログ変換回路24の出力を減算して出力する。
【0058】
なお、ゲイン調整部14の構成は、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0059】
次に、第2の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器210の動作について説明する。まず、アナログ信号が入力されると、ローパスフィルタ216によって、特定の周波数のアナログ信号が出力され、アナログデジタル変換回路20によって、ローパスフィルタ216から出力されたアナログ信号がデジタル信号に変換され、フィードバックするために、デジタル信号がデジタルアナログ変換回路24に入力される。
【0060】
デジタルアナログ変換回路24では、入力されたアナログデジタル変換回路20の出力を、アナログ信号に変換して、減算器226に入力し、入力となるアナログ信号から、デジタルアナログ変換回路24の出力を減算して、ローパスフィルタ216にフィードバックする。そして、ローパスフィルタ216の出力が、アナログデジタル変換回路20によってデジタル信号に変換されて、連続時間ΔΣAD変調器210の出力としてデジタル信号が出力される。
【0061】
このとき、ゲイン調整部14では、タイムデジタイザ34によって、検出用アナログデジタル変換回路30からの出力及び検出用デジタルアナログ変換回路32からの出力に基づいて、エクセスループディレイとしての遅延時間を検出し、コントローラ36において、検出された遅延時間に応じて、デジタルアナログ変換回路24のフィードバック係数を調整してゲイン調整を行う。
【0062】
上記のようにゲイン調整を行うことにより、ΔΣAD変調部12におけるエクセスループディレイによる影響が軽減され、SNRの劣化を軽減した高品質のデジタル信号が、連続時間ΔΣAD変調器10から出力される。
【0063】
次に、第3の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器について説明する。なお、第1の実施の形態と同様の構成の部分については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0064】
第3の実施の形態では、複数ビットのアナログ信号を変調して、デジタル信号を出力する点が第1の実施の形態と異なっている。
【0065】
第3の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器では、図7に示すように、デジタルアナログ変換回路322、324が、複数の電流スイッチ350と、複数の可変電流源352とから構成されており、電流スイッチ350は、ハイレベルのデジタル信号が入力されるとオンするスイッチ350Aと、ローレベルのデジタル信号が入力されるとオンするスイッチ350Bとから構成されている。また、可変電流源352は、ゲイン調整部14のコントローラ36によるゲイン調整に応じて、テール電流を変更する。
【0066】
コントローラ36には、デジタルアナログ変換回路322、324の各々のビット毎のフィードバック係数を決定するためのルックアップテーブルが複数記憶されている。このルックアップテーブルは、デジタルアナログ変換回路322、324のラプラス変換の式を考慮して予め作成されており、ルックアップテーブルを用いて、タイムデジタイザ34によって検出された遅延時間に対するデジタルアナログ変換回路322のフィードバック係数k11、k12、k13、及びデジタルアナログ変換回路324のフィードバック係数k21、k22、k23を決定する。なお、上記ではルックアップテーブルを用いた例について説明したが、ルックアップテーブルを用いるのではなく、演算器を用い、検出された遅延時間からフィードバック係数を算出するようにしてもよい。これにより、遅延時間による影響が減少するように、デジタルアナログ変換回路322、324のゲインが調整され、SNRの劣化を軽減した高品質の複数ビットのデジタル信号が、連続時間ΔΣAD変調器から出力される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るデジタルアナログ変換回路の構成を示す回路図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るタイムデジタイザの構成を示す回路図である。
【図4】タイムデジタイザにおける各信号の様子を示すタイムチャートである。
【図5】フィードバック係数を調整した場合と調整していない場合とにおけるオーバーサンプリング比とSNRとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る連続時間ΔΣAD変調器の構成を示す概略図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係るデジタルアナログ変換回路の構成を示す回路図である。
【符号の説明】
【0068】
10、210 連続時間ΔΣAD変調器
12、212 ΔΣAD変調部
14 ゲイン調整部
16、18、216 ローパスフィルタ
20 アナログデジタル変換回路
22、24、322、324 デジタルアナログ変換回路
26、28、226 減算器
30 検出用アナログデジタル変換回路
32 検出用デジタルアナログ変換回路
34 タイムデジタイザ
36 コントローラ
50、350 電流スイッチ
52、352 可変電流源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定周波数のアナログ信号を通過させるフィルタ、
前記フィルタの出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器、
前記アナログデジタル変換器の出力を前記フィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能なデジタルアナログ変換器、及び
入力されたアナログ信号と前記デジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記フィルタにフィードバックする演算器を備えたΔΣ変調器と、
前記アナログデジタル変換器及び前記デジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出する遅延時間検出器と、
前記遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、前記遅延時間による影響が小さくなるように前記デジタルアナログ変換器のゲインを調整するゲイン調整器と、
を含む連続時間ΔΣ変調器。
【請求項2】
前記遅延時間検出器は、前記アナログデジタル変換器と同一構成の検出用アナログデジタル変換器と、前記検出用アナログデジタル変換器の出力をデジタル信号に変換する前記デジタルアナログ変換器と同一構成の検出用デジタルアナログ変換器とを備え、前記検出用アナログデジタル変換器の出力と、前記検出用デジタルアナログ変換器の出力とに基づいて、前記遅延時間を検出する請求項1記載の連続時間ΔΣ変調器。
【請求項3】
前記デジタルアナログ変換器は、可変電流源と、前記可変電流源からの出力をオンオフする電流スイッチとを備え、前記電流スイッチをオンオフすることにより、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、
前記ゲイン調整器は、前記可変電流源の出力を調整することにより、前記デジタルアナログ変換器のゲインを調整する請求項1又は2記載の連続時間ΔΣ変調器。
【請求項4】
特定周波数のアナログ信号を通過させる第1のフィルタ、
前記特定周波数のアナログ信号を通過させる第2のフィルタ、
前記第2のフィルタの出力をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器、
前記アナログデジタル変換器の出力を前記第1のフィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能な第1のデジタルアナログ変換器、
前記アナログデジタル変換器の出力を前記第2のフィルタにフィードバックするために、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換するゲインが調整可能な第2のデジタルアナログ変換器、
入力されたアナログ信号と前記第1のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記第1のフィルタにフィードバックする第1の演算器、及び
前記第1のフィルタの出力と前記第2のデジタルアナログ変換器の出力との差を演算して前記第2のフィルタにフィードバックする第2の演算器を備えたΔΣ変調器と、
前記第2のアナログデジタル変換器及び前記デジタルアナログ変換器を含むループ経路で生じる遅延時間を検出する遅延時間検出器と、
前記第1のデジタルアナログ変換器のゲインを所定のゲインに設定すると共に、前記遅延時間検出器で検出された遅延時間に基づいて、前記遅延時間による影響が小さくなるように前記第2のデジタルアナログ変換器のゲインを調整するゲイン調整器と、
を含む連続時間ΔΣ変調器。
【請求項5】
前記遅延時間検出器は、前記アナログデジタル変換器と同一構成の検出用アナログデジタル変換器と、前記検出用アナログデジタル変換器の出力をデジタル信号に変換する前記第2のデジタルアナログ変換器と同一構成の検出用デジタルアナログ変換器とを備え、前記検出用アナログデジタル変換器の出力と、前記検出用デジタルアナログ変換器の出力とに基づいて、前記遅延時間を検出する請求項4記載の連続時間ΔΣ変調器。
【請求項6】
前記第1のデジタルアナログ変換器及び前記第2のデジタルアナログ変換器は、可変電流源と、前記可変電流源からの出力をオンオフする電流スイッチとを備え、前記電流スイッチをオンオフすることにより、前記アナログデジタル変換器の出力をアナログ信号に変換し、
前記ゲイン調整器は、前記可変電流源の出力を調整することにより、前記第1のデジタルアナログ変換器及び前記第2のデジタルアナログ変換器のゲインを調整する請求項4又は5記載の連続時間ΔΣ変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−99035(P2008−99035A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279230(P2006−279230)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】