説明

連続的な特性移行を有する熱可塑性ポリマー材料の射出成形のための方法

【課題】成形部品のために、段階無しに連続的な特性移行を認識可能にする部材のための製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性ポリマー材料の射出成形による物理的及び/又は化学的特性の少なくとも一つの連続的な移行を有する成形部品を製造するための方法において、成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行を、それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する熱可塑性ポリマー材料の少なくとも二つの溶融ポリマー流のそれぞれの割合を逆方向に変更することにより生じさせることを特徴とする製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2の溶融物流からの熱可塑性ポリマー材料の射出成形による、物理的及び/又は化学的特性の少なくとも1の連続的な移行を有する成形部品、例えばシートの製造のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる色又はその他の特性を有する熱可塑性材料、即ち、成形体中において特性移行を有する熱可塑性材料の射出成形のための方法は公知である。従って、US 5,989,003, US 3,061,879, US 3,947,177又はWO 82/1160は、異なる色又は組成の溶融物流を時間的に又は空間的に異なる配置において射出成形型中に射出し、異なる色又は組成の領域を有する成形体を生じる射出成型方法を記載する。ここで記載される方法は、しかしながら、不連続的な、即ち、突然の特性移行、例えばある色から別の色への移行を有する成形体の製造のみを可能にする。
【0003】
他の技術分野、連続的なシート押出からは、シートの選択された領域中である色から別の色への連続的な移行が得られるように、異なる色の複数のポリマーの溶融物流を相応して設計した型中に一緒に導通することが公知である。
【0004】
従って、いわゆる色帯域(Farbband)を有する、即ち、着色した部分領域と着色していない部分領域を有する自動車のフロントガラスのための中間層シートは、連続的な押出方法により製造される。図1は、そのようなシートを示し、その際(A)は着色した部分領域と、そして(B)は着色していない部分領域と呼ばれる。通常は、このシートの上側部分は、約5−90cm、有利には10−25cmの幅の着色した部分領域を有し、その際このシートの残りは他の色で着色されているか又は着色されていない。
【0005】
連続的なシート押出に代えて、DE 10 2007 021103 A1は、射出成形技術又は射出型押し(Spritzpraegetechnik)技術を用いて直接的にシートフィルムを製造する方法が記載されている。このシートは、その外側の寸法においてフロントガラスの幾何学に直接的に又は場合により前もって定義した間隔でもって適合されることができ、従って、更なる後処理なしに直接的に2個のガラス板の間に積層されることができる。
【0006】
WO 2008/24805A1及びFR 2750075は、異なった様相の射出成形方法を記載し、ここでは、複合ガラス積層体の製造のために熱可塑性ポリマー材料を2個のガラス板の間に直接的に射出する。
【0007】
色帯域を有するフロントガラスの製造では、突然の色移行は所望されず、連続的な色移行が重要視される。これは記載された射出成形方法では実施可能でない。
【0008】
更に、この方法を用いて、完成したガラス積層体のみが製造でき、しかしながら後に更に加工される個々のシートは製造できない。
【0009】
他の適用のためにも、射出成形を用いて連続的な特性変更を有する成形部品を製造することが有利であろう。従って、機械的な特性の適した選択により、硬質/軟質移行体が、例えば緩衝要素のために、破断部を生じる機械的な特性の突然の変更を生じることなしに産生されることができる。
【0010】
更に、連続的に変更される密度分布を有する浮体が製造できる。部品又は成形体の製造のためには、複合部、(溶接継ぎ目、リベット接合部の隠蔽のために連続的な色移行が利用されることができる。これらの色移行は、現在では不連続的にのみ存在する。テールライトの製造の領域において、照明技術的な作用を生じるべく、レンズは連続的な色移行を有することができる。同じことは、消費物品産業のために当てはまり、例えば、カーラジオ、ステレオ装置その他の光を導通するカバーに当てはまる。更に、この移行は、背景照射の連続的に変更される透過(Transmission)のためのTVカバーのために利用されることができる(Ambi-Light)。更なる利点が、自動車産業(フロントガラス、ウィンカー、テールライト)のために使用される光導波体及びプラスチックの光を導くロッドの使用のために予期され、というのも、これまでに実現化されていない、光を導く部品においてこのような色移行が製造されることができるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】US 5,989,003
【特許文献2】US 3,061,879
【特許文献3】US 3,947,177
【特許文献4】WO 82/1160
【特許文献5】DE 10 2007 021103 A1
【特許文献6】WO 2008/24805A1
【特許文献7】FR 2750075
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、従って、成形部品のために連続的な特性移行を認識可能な段階無しに可能にする、成形部品のための射出成形方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主題は、従って、熱可塑性ポリマー材料の射出成形による物理的及び/又は化学的特性の少なくとも1の連続的な移行を有する成形部品を製造するための方法において、成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行を、それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する熱可塑性ポリマー材料の少なくとも2の溶融物流のそれぞれの割合を逆方向に変更することにより生じさせる、製造方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、着色した部分領域と着色していない部分領域を有する自動車のフロントガラスのための中間層シートを示す図である。
【図2】図2は、共押出により製造されたシートの側面における可能な厚さプロフィルを示す図である。
【図3】図3は、フェードアウト領域において射出された材料の着色程度を連続的に高め、この一方で、着色層厚を一定に維持することにより実現される色経過の俯瞰図を示す図である。
【図4】図4は、本発明による方法に適した装置を示す図である。
【図5】図5は、本発明により製造された成形体の断面図を示す図である。
【図6】図6は、本発明による射出過程の可能な時間的な経過を示す図である。
【図7】図7は、くさび形の断面を有するシートの可能性のある断面を示す図である。
【0015】
射出成形のための以下の説明は、射出型押しについても同様に当てはまる。更に、連続的な色移行の製造のためのこの説明は、例えばそれぞれ異なるポリマー、可塑剤、着色剤、添加剤及び/又は充填剤及び補強剤を含有する少なくとも2の溶融物流の使用により生じる成形体のそれぞれの物理的及び/又は化学的特性の連続的な変更のために同様に当てはまる。
【0016】
当該溶融物流の10質量%未満の割合を占める全ての増量剤が添加剤と呼ばれる。ここでは有機又は無機の着色顔料もあてはまる。
【0017】
当該溶融物流の10質量%より多い割合を占める全ての増量剤が充填剤及び補強剤と呼ばれる。これは例えば次のようなものであることができる:
ガラス繊維、ガラス球、タルク、導電性材料(カーボンブラック、低温溶融性金属合金、金属繊維)。
【0018】
連続的な特性移行とは、本発明の範囲内において、この成形部品の長さの少なくとも0.5%、有利には1%、特に5%、特に有利には10%、20%、又は50%において生じる特性移行を指す。極端な場合においては、この特性移行はこの成形部品の全体の長さにわたり生じる。
【0019】
本発明の方法の可能な一実施態様においては、慣用の射出成形方法の1変形、2成分−射出成形法にならい、これは略して2C法と呼ばれる。
【0020】
2C法では、射出成形の様々な種類が存在し、その際、2個の射出ユニットを有するが1個のみの閉鎖ユニットを有する射出成形機械が必要とされる点で共通している。この射出ユニットは、調和して動作しなくてはならないが、しかしながら、常に相互に独立して制御可能でなくてはならない。この成分は、特殊ノズルを通じて射出されるか、又は、型中へと様々な部位で導入されることができる。
【0021】
フロントガラスのための中間層シートの押出では、この色帯域は現在では、共押出、即ち、透明な1層上への又は2つの透明な層の間への着色層の上方からの押出又は中への押出により、実現される。特別に重要であるのは、この際、着色領域と透明な領域との間での移行部の光学的な印象である。光学的に応答する色帯域を産生するためには、透明な領域と着色した領域との間での移行はシャープに区切られておらず、流動的に(連続的に)、可視可能な段階的変化無しに経過する。従って、このことをフェードアウト(Fade-Out)領域ともいう。
【0022】
技術水準によるシートの共押出では、着色した溶融物を分配する装入具(Einsatz)が、0から必要な一定の目標着色層厚への着色層の連続的な層厚の経過が装入具により設定される長さにわたり生じるように幾何学的に構成されていることによりこれは実現される。図2は、このようなシートの側面における可能な厚さプロフィルを示す。この際、この着色層の着色程度は一定であり、このフェードアウト(図3中の相当する上からの視点)は、着色層の変動可能な層厚により実現される。共押出型中の異なって成形された色−分配装入具によりこの色の経過は変更されることができる。
【0023】
この方法の適用は、射出成形方法又は射出型押し方法においてこれまでは可能でなく、というのは、使用される原料の最適な流動性及び温度調節された型キャビティを考慮した場合にも、厚さ0で終わる層は技術水準の方法を用いて実現されることができないからである。技術水準による2C射出成形では、多かれ少なかれシャープな、即ち、成分の相互に不連続的な区切りを得る。透明な領域と着色帯域の光学的にシャープな分離はしかしながら、フロントガラスのためのシートでは所望されない。
【0024】
本発明による方法は従って、他の様式を予定する。色移行は、フェードアウト領域において射出された材料の着色程度を連続的に高め、この一方で、着色層厚を一定に維持することにより実現される。図3は、そのような色経過の俯瞰図を示し、その際(6)はフェードアウト領域と、(7)は有色から無色への不連続的な色移行と呼ばれる。(7)と(6)の間の領域は、一定の色深度(Farbtief)により特徴付けられ、そしてしばしばダークプラトー(Darkplateau)と呼ばれる。図5a及びbは、側面図としての本発明により製造されるシートの可能な厚さプロフィルを示す。
【0025】
本発明による方法において、成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行は、それぞれ異なる化学的及び/又は物理的特性を有する少なくとも2の溶融物流の混合により生じさせることができる。少なくとも2の溶融物流の混合は、射出成形型中でも、しかしながら、射出成形型前の、静的又は動的な混合機中での溶融物流の一緒の導通及び混合によっても、行われることができる。
【0026】
成形体中での1又は複数の特性移行、特に色移行は、(例えば着色した)溶融物流の割合を高め、そして他の(例えば無色の)溶融物流の割合をこれとは逆方向に減少させることにより達成されることができる。有利にはこの割合の変更は連続的に行われる。
【0027】
更なる方法の一変形において、成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行は、成形体中でそれぞれ異なる化学的及び/又は物理的特性を有する少なくとも2の溶融物流の層の厚さを逆方向に変更させることにより生じさせることができる。
【0028】
ここでまず、第1の溶融物流により1つの層が射出成形型において生じる。次いで第1の溶融物流の割合を減少させ、対抗して、第2の溶融物流の割合を高める。ここでも、層厚の変更が有利には連続的に行われる。これにより、移行領域において多層系が形成され、これは巨視的に、この両方の層又は溶融物流の特性混合又は色混合を有する。図5a及びbは、本発明により製造された成形体の断面図を示し、その際xは移行領域を示す。
【0029】
本発明による方法において使用される溶融物流はそれぞれ、異なる着色剤、添加剤及び/又は充填剤及び補強剤を除いて同じ組成を有することができる。最も単純な場合には、この溶融物流はそれぞれ、異なる着色剤、充填剤及び補強剤、又は添加剤を除いて同じ組成を有し、かつ、この溶融物流の少なくとも1つは無色である。
【0030】
本発明の方法を用いて、1つ又は複数の特性移行又は色移行を有する成形体が製造されることができる。有利には、本発明により製造された成形体は、1つのみの連続的な特性移行又は色移行を有する。複合ガラスのためのシートの製造のためには、これらは、とりわけ有色から無色への連続的な色移行、即ち、透明な領域を有する。このためには、少なくとも1の溶融物流が無色であり、この他の流が相応して着色していることが必要である。
【0031】
この特性移行又は色移行は完全であることができ、即ち、それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する少なくとも2の溶融物流の割合は、逆方向に、特に連続的に、熱可塑性ポリマー材料についてそれぞれ0%又は100%から、相応して、熱可塑性ポリマー材料について100%又は0%に変更される。
【0032】
特性移行又は色移行を完全には実施しないことも可能であり、即ち、それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する溶融物流の割合は、最も強力な特性差異又は色差異の領域においても、それぞれ相補的に、例えば10対90、20対80、30対70、40対60又は50対50%である。
【0033】
複合ガラスのためのシートの本発明による製造の場合には、これは例えば、着色材料を有する溶融物流を容積的に可能な限り少なく維持するために利用されることができ、即ち、強力に着色されたマスターバッチを無色の溶融物流と共に着色溶融物流として使用することができる。これにより、色帯域の正確な色付与が、射出過程の制御により達成され、着色溶融物流の混合によってではない。
【0034】
特別な一方法変形においては、この溶融物流は異なる着色剤又は添加剤を除いて同じ組成を有し、特にこの溶融物流の少なくとも1は無色である。この場合には、一定の色深度の領域においてはいわゆるダークプラトーに一定にのみ着色された溶融物が射出されるものである。有利な場合には、全体のシート厚さを着色のために利用する。
【0035】
本発明による方法においては、2C射出成形と同様に、少なくとも2の射出ユニットが利用される。図4は、本発明による方法に適した装置を図により示す。この第1の可塑化ユニット(1)においては、透明な溶融物が提供され、第2の可塑化ユニット(2)においては、着色した溶融物が提供される。この着色度はこの際、このシートが引き続き深く着色された領域においていわゆるダークプラトーにおいて、ちょうど目標着色度又は目標光透過度を有するように調整される。
【0036】
色帯域領域のための射出過程はこの際、フィルムスプルー(3)を介してフロントガラスの上側縁に設けるべきシート側にこの色帯域の経過とは垂直に行われる。これにより、この流動フロントはキャビティ中でシート上側縁に対して並行に経過するように保証されることができる。この両方の可塑化ユニットは、この際、静的な混合要素(4)を介してキャビティ(5)に接続している。
【0037】
本発明による射出過程の可能な時間的な経過は、図6において連続的な色移行のために図により示されている。射出過程の開始時t0には、まず透明な溶融物(8)のみが射出される。定義された時間点t1から、更に着色溶融物(9)が射出され、この溶融物は例えば静的混合機を介して透明な溶融物と局所的に均質に混合される。時間点t1から着色溶融物を射出することが開始され、その際着色溶融物(9)の量は連続的に高められ、そしてこれとは逆方向で、透明な溶融物(8)の量は、例えば同じ絶対的な量だけ減少される。この際、量の変更は、前もって定義された色経過を制御するために、プログラム制御されて行われることができる。
【0038】
キャビティ中で溶融物フロントが、フェードアウト(6)の長さに相当する分だけ更に移動する場合には、この透明な溶融物(8)は完全に遮断され、着色した溶融物(9)のみが更に射出される(t2)。キャビティ中での溶融フロントの進んだ道程が定義された時間に相当するので、この両方の射出ユニットの制御は通常は時間制御されて行われる。
【0039】
キャビティが充填される直前に、移行しないで又はほぼ移行しないで、即ち、不連続的に、完全に透明な溶融物(8)に戻されることができ、これにより次の射出過程は再度透明な溶融物(8)で開始することができる。
【0040】
本発明による方法は、成形体が、物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行の終了後に、物理的及び/又は化学的特性の十分に不連続的な移行を示すように実施されることができる。
【0041】
色移行の場合には、従って、連続的な色移行に、不連続的な又は少なくとも十分に不連続的な色移行が続くことができる(参照、図3、領域7)。
【0042】
不連続的な特性移行とは、成形部品の長さに関して、連続的な移行のための上記した区画に比較してより短い区画において出現する移行を意味する。従って、フィルムシートの製造では、上側縁でのフェードアウトは所望されず、シート縁は、むしろ通常は、ダークプラトーでもって終了する。着色から透明への変化は従って、可能な限り短い時間で生じなくてはならない。図6中に示される射出過程を例とすると、このためには着色材料(9)の射出が定義された時間点t3で停止され、この間に同時に透明な溶融物(8)が100%まで射出される。次いで、フィルムシートの上側縁で短い、不連続的な色移行(図3中、7)が生じ、これはしかしながら、通常はフロントガラス上に存在する黒色のスクリーン印刷縁により覆い隠されることができる。
【0043】
特別な一方法変形においては、異なる化学的及び/又は物理的特性、例えば異なる色を有する溶融物流は、静的又は動的混合機中で一緒に導通され、混合される。これにより、均質な混合物が、脈理無しに型中に射出される。
【0044】
可能な限り段階無しであってかつ連続的な特性移行又は色移行を達成するために、それぞれ異なる化学的及び/又は物理的特性を有する溶融物流を可能な限り良好に相互に混合しなくてはならない。これは、例えば射出成形型自体中で又は射出成形型への射出カナル中で行われることができる。本発明による方法の特別な一実施態様において、それぞれ異なる化学的及び/又は物理的特性を有する溶融物流は1又は複数の静的又は動的な混合機中で一緒に導通し、混合される。そしてこのように得られる均質な混合物が型中に射出される。
【0045】
ここでは、溶融物流を局所的に均質に混合する静的な混合要素(図4中、4)の設計が特に重要である。混合機は従って、十分な混合作用で最短の滞留時間分布を有するように見積もられる。図6の時間点t4では、従って、キャビティは完全に充填されており、かつシートは冷却され、引き続き脱型されることができる。
【0046】
本発明による方法はとりわけ、緩衝要素、浮体の製造のために、ヘッドライト、ウィンカー又はテールライトの製造のために自動車領域において、例えばカーラジオ、ステレオ装置又はTVカバー(TV-Abdeckung)のための、消費物品産業のための光を導通するカバーの製造のために、使用されることができる。
【0047】
本発明の更なる主題は、複合ガラスの製造のための本発明による方法を用いて製造されたシートである。このシートは有利には透明の領域から着色の領域への色移行を有する。特性移行又は色移行に代えて又はこれらに加えて、シートはくさび形の厚さプロフィル又は断面を有することができる。
【0048】
本発明により製造されたシートは、くさび形の断面を有することができ、これは0.1〜1mrad、有利には0.3〜0.7mrad、特に0.4〜0.6mradの角度に相当する。図7は、このようなシートの可能性のある断面である。
【0049】
くさび形シートは、「ヘッドアップディスプレイ(Head-Up Displays)」における投射のために使用され、そして、例えば、EP 0 893 726 B1中に記載されている。2個のPVB−シートにより連結されたガラスからなる複合ガラスに対する投射では、通常は、邪魔となる二重画像を生じる。このネガティブな効果は、シートが数分のくさび形に構成され、かつ次いでこの両方の像が相互に重なって存在することにより妨げられる。
【0050】
本発明による射出成形技術又は射出型押し技術を用いて、ほぼ全ての任意の、シート厚の経過を作成することができる。この製造されたフィルムは、その外側寸法においてこのフロントガラスの幾何学に正確に又は場合により定義された間隔でもって適合されることができる。
【0051】
本発明による方法においては、熱可塑性ポリマー溶融物はシート、半製品及び/又は完成部品の製造のために使用される。例示的には、この溶融物流がそれぞれ、同じか又は相違して、ポリオレフィン並びにその特別な種類及びブレンド、ポリスチレン及びスチレン−コポリマー、ポリメチルメタクリラート、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタート、フッ素ポリマー及び塩素ポリマー、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタラート及びポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン及び誘導体、ポリケトンからなる群から選択される1種以上のポリマーを含有する。このポリマーからなる溶融物流はそれぞれ同じか又は異なっていることができ、かつ/又は、着色剤又は添加剤並びに充填剤及び補強剤又は可塑剤と混合されていることができる。
【0052】
本発明による方法においては、特に、複合ガラス製造のためのシートの製造の際に、溶融物流がそれぞれ同じか又は異なって、かつ/又は着色剤、添加剤又は可塑剤と混合して、可塑剤含有ポリビニルアセタール、可塑剤含有ポリビニルアルコール、可塑剤含有ビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマー、可塑剤含有部分アセタール化したビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマーを含有する。
【0053】
ビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−ターポリマーとして、特にKuraray Co. (日本)のEXEVAL又はEVALを使用することができる。ポリビニルアルコール及びビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマーのための可塑剤として、例えば水又はグリセリンが使用できる。
【0054】
ポリビニルアセタール又は部分アセタール化したビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマーは、鹸化していないアセタート基の他に、ポリマー鎖(骨格)に結合したヒドロキシル基を有し、これは全体的に又は部分的に、1以上のアルデヒドでアセタール化される。本発明により使用されるポリビニルアセタールの製造は、当業者に公知である。
【0055】
部分アセタール化したビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマーのポリビニルアセタールの製造のためには有利には、1〜10個の炭素原子を有する1種以上のアルデヒド、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド又はオクタナールが使用される。特に有利には、ブチルアルデヒドであり、これは公知のポリビニルブチラール(PVB)を生じる。適したポリビニルブチラールは、ASTM D 1396による残留ビニルアルコール含有量16〜25質量%、特に16〜20質量%を有し、そして例えばWO 03/051974 A1又はEP 1 412 178 B1中に記載されている。本発明により使用される材料は、ポリビニルアセタールへの適した可塑剤の添加により製造される。又は、内部可塑化したポリビニルアセタール、即ち、適した、共役的に結合した側鎖を有するポリビニルアセタールの使用も可能である。
【0056】
ジアルデヒド又はアルデヒド−カルボン酸で架橋したポリビニルブチラールを使用することも可能である。この種の適したポリマーは、例えばDE 10 143 109 A1又はWO 02/40578 A1 中に記載されている。
【0057】
通常は、本発明により使用される溶融物流又は熱可塑性成形材料は、1種以上の可塑剤10〜40質量%を含有する。
【0058】
ポリビニルアセタールのための可塑剤としては、複合ガラス積層体の製造のために公知である「標準的可塑剤」、例えばジエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノアート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチラート(3GH)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘキサノアート(3G6)、トリエチレングリコール−ジ−n−ヘプタノアート(3G7)、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノアート、トリエチレングリコールオクタノアート、テトラエチレングリコール−ジ−2−エチルヘキサノアート(3G8)、ジヘキシルアジパート(DAH)、6より多い炭素原子を有するアルキル残基を有するジアルキルアジパート及び7より多い炭素原子を有するカルボン酸残基を有するオリゴグリコール酸エステル、特にジオクチルアジパート(DOA)その他が使用されることができる。
【0059】
単独で又は標準的可塑剤と混合して、次の群から選択される可塑剤も使用できる:ジ−(2−ブトキシエチル)−アジパート(DBEA)、ジ−(2−ブトキシエチル)−セバカート(DBES)、ジ−(2−ブトキシエチル)−アゼラート、ジ−(2−ブトキシエチル)−グルタラート、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アジパート(DBEEA)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−セバカート(DBEES)、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−アゼラート、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−グルタラート、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アジパート、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−セバカート、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−アゼラート、ジ−(2−ヘキソキシエチル)−グルタラート、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アジパート、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−セバカート、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−アゼラート、ジ−(2−ヘキソキシエトキシエチル)−グルタラート、ジ−(2−ブトキシエチル)−フタラート、ジ−(2−ブトキシエトキシエチル)−フタラート及び/又はシクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル(DINCH)。
【0060】
本発明により製造されるシートは、更なる当業者に公知の助剤を含有でき、例えば残量の水、UV吸収剤、酸化防止剤、付着調節剤(例えば、カリウム塩及び/又はマグネシウム塩)、蛍光増白剤、安定剤、着色剤、加工助剤及び/又は界面活性物質を含有することができる。この種の系は、例えば、EP 0 185 863 A1、WO 03/097347 A1又はWO 01/43963 A1 に記載されている。
【0061】
複合安全ガラスへの本発明によるシートの加工は、通常どおり、複合ガラス製造の際に減圧バッグ方法又は予備複合化/オートクレーブ方法を通じて行われる。ここでは、2個のガラス板の間にシートを配置し、封入された空気を真空をかけることにより又は外側圧力により十分に除去する。このようにして得られる予備複合体は引き続きオートクレーブ中で高められた圧力及び高められた温度下で、透明な複合ガラスへとプレス処理されることができる。
【0062】
又は、一工程プロセスも実施可能であり、この場合には一緒に配置されたガラス/シート積層体は真空の作用下でプレス処理され、かつ、高められた温度(約100−150℃)で、透明な気泡のない複合ガラスへと加工される。
【0063】
一様な厚さプロフィルを有する中間層シートは、フロントガラスの製造者のところで、色帯域を通常長方形でないフロントガラスの上側縁に対して平行に経過させるように、片側に延伸される。延伸プロセスにより、このシートの厚さプロフィルは同様に変更され、これは特にくさび形の断面を有するシートの際にくさびプロフィルに対して不利な影響を有することができる。
【0064】
くさび形の厚さプロフィル又は断面を有する本発明により製造されるシートでは、シートの記載された延伸過程が省略され、というのはこのシートは既に必要な形状を有するからである。この種のシートは特に、ヘッド−アップ−ディスプレイ−適用に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリマー材料の射出成形による物理的及び/又は化学的特性の少なくとも1の連続的な移行を有する成形部品を製造するための方法において、成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行を、それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する熱可塑性ポリマー材料の少なくとも2の溶融物流のそれぞれの割合を逆方向に変更することにより生じさせることを特徴とする、製造方法。
【請求項2】
成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行を、少なくとも2の溶融物流の混合により生じさせることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2の溶融物流の混合を射出成形型中で行うことを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項4】
少なくとも2の溶融物流を射出成形型の前で静的な又は動的な混合機中で一緒に導通し、混合することを特徴とする、請求項2記載の方法。
【請求項5】
成形体の物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行を、成形体中での少なくとも2の溶融物流の層の厚さを逆方向に変更させることにより生じさせることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
それぞれ異なる物理的及び/又は化学的特性を有する少なくとも2の溶融物流の割合を、逆方向に、熱可塑ポリマー材料に関してそれぞれ0%又は100%から、相応して熱可塑性ポリマー材料に関して100%又は0%に変更することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
成形体が、物理的及び/又は化学的特性の連続的な移行の終了後に、物理的及び/又は化学的特性のほぼ不連続的な移行を示すことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溶融物流がそれぞれ、異なるポリマー、可塑剤、着色剤、添加剤及び/又は充填剤及び補強剤を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
溶融物流がそれぞれ、異なる着色剤、添加剤又は充填剤及び補強剤を除いて同じ組成を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
溶融物流がそれぞれ、異なる着色剤、添加剤又は充填剤及び補強剤を除いて同じ組成を有し、その際この溶融物流の少なくとも1は無色であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
溶融物流がそれぞれ、それぞれ同じか又は相違して、ポリオレフィン並びにその特別な種類及びブレンド、ポリスチレン及びスチレン−コポリマー、ポリメチルメタクリラート、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアセタール、フッ素ポリマー及び塩素ポリマー、ポリアミド、ポリカルボナート、ポリエチレンテレフタラート及びポリブチレンテレフタラート、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン及び誘導体、ポリケトンからなる群から選択される1種以上のポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
溶融物流がそれぞれ同じか又は相違して、かつ/又は異なる着色剤、添加剤又は可塑剤と混合して、可塑剤含有ポリビニルアセタール、可塑剤含有ポリビニルアルコール、可塑剤含有ビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマー、可塑剤含有部分アセタール化したビニルアルコール/ビニルアセタート/エチレン−コポリマーを含有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により製造される、複合ガラスの製造のためのシート。
【請求項14】
透明な領域から着色した領域への連続的な色移行を示すことを特徴とする、請求項13記載のシート。
【請求項15】
くさび形状の厚みプロフィルを示すことを特徴とする、請求項13又は14記載のシート。
【請求項16】
請求項1から12までのいずれか1項記載の方法により製造される、三次元部品及び成形体。
【請求項17】
透明な領域から着色した領域への連続的な色移行を示すことを特徴とする、請求項16記載の三次元部品及び成形体。
【請求項18】
硬質な領域から軟質な領域への連続的な移行を示すことを特徴とする、請求項16又は17記載の三次元部品及び成形体。

【図1】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−105399(P2010−105399A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251605(P2009−251605)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(507052393)クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Brueningstrasse 50, D−65926 Frankfurt , Germany
【Fターム(参考)】