説明

連続的不均質触媒を用いる部分的な脱水素法

【課題】本発明は、生成気体の一部を反応帯域に戻す、気相中及び分子酸素の存在における連続的不均質触媒を用いる炭化水素の部分脱水素法及びこのような方法を実施するための反応器に関する。
【解決手段】反応帯域に少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する反応気体を連続的に供給し、反応気体を反応帯域中で少なくとも1個の触媒固定床上に導入し、そこで接触脱水素により分子水素及び部分的な少なくとも1種の脱水素された炭化水素を生成させ、反応気体に反応帯域に入れる前及び/又は後で少なくとも1種の分子酸素を含有する気体を添加し、分子酸素が反応帯域中で反応気体に含有される分子水素を部分的に酸化して水蒸気にし、かつ反応帯域から分子水素、水蒸気、少なくとも1種の脱水素された炭化水素及び少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する生成気体を取り出す、気相中で少なくとも1種の脱水素される炭化水素を連続的不均質触媒を用いて部分的に脱水素する方法において、反応帯域から取り出した反応気体を同一組成の二つの部分量に分け、この二つの部分量の一つを循環気体として反応帯域に戻すことを特徴とする、連続的不均質触媒を用いる部分的な脱水素法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相中で少なくとも1種の脱水素される炭化水素を連続的不均質触媒を用いて部分的に脱水素する方法に関し、その際、反応帯域に少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する反応気体を連続的に供給し、反応気体を反応帯域中で少なくとも1個の触媒固定床上に導入し、そこで接触脱水素により分子水素及び部分的な少なくとも1種の脱水素された炭化水素を生成させ、反応気体に反応帯域に装入する前及び/又は後で少なくとも1種の分子酸素を含有する気体を添加し、分子酸素が反応帯域中で反応気体に含有される分子水素を部分的に酸化して水蒸気にし、かつ反応帯域から分子水素、水蒸気、少なくとも1種の脱水素された炭化水素及び少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する生成気体を取り出す。
【0002】
更に本発明は、本発明による方法を実施するための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本出願で使用される概念"脱水素された炭化水素"には、分子中に1個以上のC,C−二重結合を有する非環式及び環状脂肪族炭化水素が包含される。このような脂肪族炭化水素の例は、プロペン、イソ−ブテン、1−ブテン、2−ブテン及びブタジエンである。即ち、脱水素される炭化水素には、特に1個不飽和の線状(n−アルケン)又は分枝状脂肪族炭化水素(例えばイソ−アルケン)並びにシクロアルケンが属す。更に、脱水素された炭化水素には、分子中に1個以上の炭素−炭素−二重結合を含有するアルカポリエン(例えばジエン及びトリエン)も含まれる。しかし、アルキル芳香族、例えばエチルベンゼン又はイソプロピルベンゼンから出発してアルキル置換の脱水素により得られる炭化水素化合物も含まれる。これは例えばスチレン又はα−メチルスチレンのような化合物である。
【0004】
通常、脱水素された炭化水素は例えば官能化された、ラジカル重合性化合物(例えばプロペンからのアクリル酸又はイソブテンからのメタクリル酸)及びその重合生成物を合成するための貴重な出発化合物である。しかしメチル−t−ブチル−エーテル(例えばオクタン価を高めるための燃料添加物として好適であるイソブテンの二次生成物)のような化合物の製造用にも好適である。しかし脱水素された炭化水素はそれ自体重合用に使用することもできる。
【0005】
脱水素される炭化水素を気相中で連続的に不均質触媒を用いて部分的に脱水素することにより脱水素された炭化水素を製造することは、一般に公知である(例えばDE−A10028582、DE−A10047642、DE−A19937107及びこれら文書に引用された文献、参照)。
【0006】
その際、脱水素される炭化水素としては、特に非環式及び環状アルカンが挙げられるが、オレフィン(そのC,C−二重結合数を高めるべきである)も挙げられる(例えばn−ブテンのブタジエンへの不均質触媒を用いる部分脱水素が挙げられる)。
【0007】
即ち、概念"脱水素される炭化水素"は本特許出願では特にC〜C16−アルカン、例えばエタン、プロパン、n−ブタン、イソ−ブタン、n−ペンタン、イソ−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン及びn−ヘキサデカンを含む。
【0008】
しかし特に、本明細書の全ての記載で脱水素される炭化水素として特にC〜C−アルカンが該当し、脱水素される炭化水素として極めて特にはC〜C−炭化水素が該当する。
【0009】
即ち、脱水素される炭化水素は本明細書では特にエタン、プロパン、n−ブタン及びイソ−ブタンであるが、1−ブテン及び2−ブテンでもある。
【0010】
脱水素される炭化水素の不均質触媒を用いる部分脱水素には比較的高い反応温度が必要である。その際達成される変換率は通常熱力学的平衡により制限される。典型的な反応温度は300〜700℃である。その際、脱水素された炭化水素1分子当たり通常少なくとも水素1分子が生成される。
【0011】
脱水素される炭化水素の不均質触媒を用いる部分脱水素の特徴は更に、吸熱反応であるということである。従って、所望の変換率を得るために必要な脱水素熱を反応気体に、前以て及び/又は接触脱水素反応の経過中に供給せねばならない。
【0012】
脱水素される炭化水素の不均質触媒を用い部分脱水素の多数の公知方法では、脱水素熱を反応器の外で生成し、外から反応気体に供給する。しかしこれは費用のかかる反応器−及び方法コンセプトを必要とし、特に高い変換率では反応器中の温度勾配を急傾斜にし、副産物生成増加の欠点を伴う。
【0013】
代わりに、分子酸素の添加によって脱水素で生じたか又は付加的に供給された水素を発熱性に燃焼させて水蒸気にすることによって、脱水素熱を直接反応気体自体中で生成することもできる。このために反応気体に脱水素触媒を含有する反応帯域中に入れる前及び/又は後で酸素含有気体及び場合により水素を添加する。脱水素触媒自体(これは大抵の脱水素触媒に該当する)及び/又は付加的に装入された酸化触媒が、通常所望の水素酸化を容易にする(DE−A10028582参照)。そのように水素燃焼により遊離した反応熱により有利な場合には間接的な反応器加熱を完全に省略することができ、それによって比較的簡単な方法コンセプト並びに高い変換率で制限される反応器中の温度勾配が可能になる。
【0014】
しかし、反応気体中の水素燃焼による直接熱生成法の欠点は、比較的高価である外部の分子水素の添加が不可欠であるか又は脱水素された炭化水素の生成の選択性が十分満足できるものでないということである。それは、添加した分子酸素が、不均質触媒を用いる部分的脱水素中に生成した水素の唯一の入手可能性で、常にこの分子水素だけでなく多くの場合に脱水素される及び/又は既に脱水素された炭化水素の部分量を燃焼させるので、目標生成物の選択性が不所望にも減少するからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】DE−A10028582号
【特許文献2】DE−A10047642号
【特許文献3】DE−A19937107号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の課題は、前記欠点をもはや全く有さないかつ/又は僅かな程度にしか有さない、気相中で少なくとも1種の脱水素される炭化水素を連続的不均質触媒を用いて脱水素する最初に定義した方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
従って本発明は、気相中で少なくとも1種の脱水素される炭化水素を連続的不均質触媒を用いて部分的に脱水素する方法に関し、その際、反応帯域に少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する反応気体を連続的に供給し、反応気体を反応帯域中で少なくとも1個の触媒固定床上に導入し、そこで接触脱水素により分子水素及び部分的な少なくとも1種の脱水素された炭化水素を生成し、反応気体に反応帯域に装入する前及び/又は後で少なくとも1種の分子酸素を含有する気体を添加し、分子酸素が反応帯域中で反応気体に含有される分子水素を部分的に酸化して水蒸気にし、かつ反応帯域から分子水素、水蒸気、少なくとも1種の脱水素された炭化水素及び少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する生成気体を取り出すが、これは、反応帯域から取り出した生成気体を同一組成の二つの部分量に分け、この二つの部分量の一つを循環気体として反応帯域に戻すことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】ジェットポンプの概略図である。
【図2】ジェットポンプ−循環反応器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明による方法は特に、プロパンからプロペン、ブタンからブテン及び/又はブタジエン並びにブテンからブタジエンへの不均質触媒を用いる部分的脱水素に好適である。
【0020】
これは、炭化水素の触媒を用いる酸化脱水素とは、特に触媒を用いる酸化脱水素に際して水素を全く生成しないことによって異なる。むしろ脱水素される炭化水素から取り出した水素を水(HO)として直接取り出す。このために通常その他の反応条件及びその他の触媒が必要である。
【0021】
原則として本発明による方法用に、気相中で脱水素される炭化水素を不均質触媒を用いて分子水素生成下で部分的に脱水素するために公知技術で推奨される全ての脱水素触媒を使用することができる。
【0022】
これらは大まかに二つの群に分けられる。即ち、酸化特性であるようなもの(例えば酸化クロム及び/又は酸化アルミニウム)及び通常酸化担体上に析出した通常比較的貴重な金属(例えば白金)から成るようなものである。実質的にブレーンステズ酸性を有さない、DE−A10047642によるルイス酸脱水素触媒が本発明により有利である。
【0023】
従って、DE−A10060099(実施例)、WO99/46039、US−A4788371、EP−A705136、WO99/29420、US−A5220091、US−A5430220、US−A5877369、EP−A117146、DE−A19937106、DE−A19937105、DE−A10047642並びにDE−A19937107で推奨されている全ての脱水素触媒が特に好適である。
【0024】
特に本発明による方法の本明細書に記載全ての方法用に、DE−A19937107の実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4による触媒を使用することができる。
【0025】
その際、酸化ジルコニウム10〜99.9質量%、酸化アルミニウム、二酸化珪素及び/又は二酸化チタン0〜60質量%及び少なくとも1種の、元素の周期系の第1又は第2主族の元素、第3副族の元素、第8副族の元素、ランタン及び/又は錫0.1〜10質量%を含有する(その際、質量%の合計は100質量%であるという条件である)脱水素触媒が該当する。
【0026】
固体状態で存在する選択的に作用する触媒を用いる本発明による方法の実施は、脱水素(C−Hの分解)がクラッキング(C−Cの分解)に対して運動力学的に劣っていることにより行われる。通常酸素の排除下で温度300〜700℃(例えば600℃)で著しい脱水素反応を発揮する[脱水素される炭化水素としてプロパンの場合には、プロピレン収量は例えば1000h-1の触媒のプロパン−荷重で1回の通過で少なくとも30モル%(使用したプロパンに対して)である]という性質を有する選択的に作用する触媒により、副生成物、例えばメタン、エチレン及びエタンがごく僅かな量で生成されるにすぎない。
【0027】
本発明による方法で必要な少なくとも1個の触媒固定床は、種々の形状に成形された脱水素触媒を含有することができる。本発明による方法に好適な形状は、例えば細片、タブレット、モノリス、球又は押出物(紐、車輪、星形、リング)である。その際、押出物の場合の長さは有利には2〜15mm、多くは2〜10mm、更には6〜10mmであり、押出物の横断面の直径は有利には1〜5mm、多くは1〜3mmである。壁厚は、リングの場合には有利には0.3〜2.5mm、長さは2〜15mm、多くは5〜15mmであり、その横断面の直径は3〜10mmである。好適な成形法は、例えばDE−A10047642並びにDE−A19937107に公開されている。これは、酸化担体材料は濃鉱酸(例えば濃硝酸)と一緒に比較的良く練った状態になり、押出機又は押出プレスを用いて相応する成形体に変えることができる。
【0028】
次いで成形体を乾燥させ、焼成し、引き続き一定の順序で塩溶液を注ぐ。最後に再び乾燥させ、焼成する。
【0029】
更に、本発明による有利なプロパン−脱水素の場合を詳説する。しかしその際実施される態様は、その他の脱水素可能な炭化水素にも同様に該当する。
【0030】
本発明による方法に好適な反応帯域は、基本的には固体床触媒を用いる気相中の炭化水素の不均質触媒を用いる部分的脱水素用に公知技術から公知の全ての種類の反応器中で実施することができる。代表的な反応温度は、200〜800℃、例えば400〜650℃である。操作圧は、例えば0.5〜10バールである。反応気体の触媒の代表的な荷重は300〜16000h-1である。
【0031】
好適な反応器の種類の詳細な説明は、例えば"Catalytica(R)Studies Division,Oxidative Dehydrogenation and Alternative Dehydrogenation Processes,Study Number 4192 OD,1993,430 Ferguson Drive,Mountain View,California,94043−5272U.S.A."を含む。
【0032】
好適な反応器の形式の一つは、固定床管形反応器又は管束状反応器である。これらでは、脱水素触媒(及び場合により、例えば明細書US−A4788371、US−A4886928、US−A5430209、US−A55530171、US−A5527979、US−A5563314及びEP−A832056に公開されているような、特異的な水素酸化触媒)が固定床として反応管又は反応管の束中に存在する。反応管は通常、反応管を取り巻く空間で気体、例えばメタンのような炭化水素を燃焼させることによって間接的に加熱される。この間接的な加熱方法を固定床ばら体の最初の約20〜30%だけ使用し、残りの長さのばら体を燃焼範囲で遊離した放射熱により必要な反応温度に加熱することが有利である。反応気体の間接的な加熱は本発明によれば有利に反応気体中の分子酸素との燃焼による直接加熱と連関している。
【0033】
本発明による直接熱導入と間接的な熱導入との連関により比較的簡単な形で実質的に等温の反応実施が可能になる。
【0034】
通常反応管内径は約10〜15cmである。代表的な脱水素管束状反応器は約300〜1000個の反応管を有する。反応管内部の温度は通常300〜700℃の範囲、有利には400〜700℃の範囲で変動する。操作圧力は通常0.5〜8バールの範囲であり、しばしば1〜2バール又は3〜8バールである。通常、生成気体は反応管、従って反応帯域を入口温度とは異なる(それより高いか又は低い)温度で出てゆく(US−A4902849、US−A4996387及びUS−A5389342も参照)。脱水素される炭化水素、例えばプロパンの典型的触媒荷重は、500〜2000h-1(=Nl/触媒l・h)である。
【0035】
もちろん本発明による方法を移動床反応器中で実施することもできる(渦動床と異なり本明細書では移動床は固定床ともみなされる)。例えば脱水素触媒移動床を放射流反応器中に格納することができる。この中で触媒はゆっくり上から下へ移動し、一方反応気体は放射状に流動する。その際、前後に接続された多数の移動床反応器が作動するのが有利である。その際、例えば各反応器の前で反応気体に分子酸素を含有する気体を添加することができ、その燃焼により各反応器中で反応温度に加熱される。
【0036】
前後に接続した反応器から出た生成気体のどれを本発明で二つの部分量に分けるか応じて及びどの反応器中に部分量の一つを戻すかに応じて、本発明により適正な反応帯域は前後に接続した反応器の全量を含んでもよいし、部分量だけを(例えば各反応器のみで)含んでもよい。例えば、4個の反応器を前後に接続し、4番目の反応器から出る生成気体だけを本発明により二つの部分量に分け、この二つの部分量の一つを前に接続した反応器の1番目中に戻す場合には、本発明による反応帯域は4個の反応器の全てを包含する。これに対して、前後に接続した1番目の反応器から出た生成気体のみを本発明により二つの部分量に分け、二つの部分量の一つを1番目の反応器に戻す場合には、本発明による反応帯域は1番目の反応器だけを包含する。
【0037】
移動床−反応器用に本発明により使用される脱水素触媒は、有利には球形を有する。操作圧力は典型的には2〜5バールである。反応温度は典型的には550〜660℃である。触媒装入はこの場合に、本発明による方法用に好適であると記載された反応器ではない本明細書中の全ての場合でも、例えばEP−A832056で推奨されているように、脱水素−及びH−酸化触媒から成る混合物を装入することができる。
【0038】
本発明による方法のもう一つの態様によれば、本発明による不均質触媒を用いる脱水素は棚段反応器(Hordenreaktor)中で実施する。これは1個以上の空間的に連続した触媒床を含有する。触媒床の数は1〜20、有利には2〜8、特に4〜6個であってよい。触媒床を有利には放射状又は軸方向に反応気体は通り抜け流れる。
【0039】
最も簡単には、触媒固定床は直立炉反応器中で軸性又は中心に連結設置された円筒状格子の環状スリット中に配置されている。直立炉反応器は棚段(Horde)に相当する。本発明による方法を単一の直立炉反応器中で実施することができる。
【0040】
本発明による方法で反応気体に反応帯域中へ入れる前及び/又はその後で分子酸素を含有する気体を添加しない場合には、反応気体を棚段反応器中で一つの触媒床から次ぎの触媒床への途中で、例えば熱い気体を用いて加熱した熱交換体フレーム上に誘導するか又は熱可燃ガスを用いて加熱したパイプ中を通すことによって、中間加熱するのが有利であろう。
【0041】
本発明による方法で、前記した中間加熱は少なくとも部分的には直接方法で実施する。このために反応気体を第1触媒床を通す前に既にかつ/又は次の触媒床の間で限定的範囲で分子酸素を含有する気体を添加する。
【0042】
少なくとも1個、場合によっては全ての触媒床で、限定的範囲で反応気体に前以て添加しかつ/又は脱水素の経過中に生成された分子水素が燃焼される。その際遊離する反応熱により、本発明による不均質触媒を用いる炭化水素脱水素の実質的に自熱操作方法が可能となる。
【0043】
本発明による態様の一つで、酸素含有気体の中間供給を場合により棚段反応器の各棚段の前で行う。本発明による方法のもう一つの態様では、酸素含有気体の装入を第1棚段の他に各棚段の前で行う。本発明の方法のもう一つの態様では、各酸素供給部の後で、H−酸化の目的に好適な特異的な酸化触媒から成るばら体が存在し、脱水素触媒から成るばら体が続く。所望により場合により付加的に各棚段の前に外部の分子水素を供給することができる。
【0044】
しかし本発明で重要なことは、本発明による方法では外からの分子水素(従って反応帯域に供給される循環気体の成分でもないし、反応帯域中で自体生成されるものでもない、分子水素を意味する)の供給が必ずしも必要でないということである。
【0045】
棚段反応器中の脱水素温度は通常400〜800℃、圧力は通常0.2〜10バール、有利には0.5〜4バール及び特に1〜2バールである。全気体荷重(GHSV)は通常500〜2000h-1であり、高荷重操作法では16000h-1まで、通常は4000〜16000h-1である。
【0046】
本発明による方法で脱水素される炭化水素は純物質である必要はない。むしろ使用される脱水素される粗炭化水素はなおその他の脱水素可能な気体を含有することができる。プロパンの場合にはこれはメタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ブテン、プロペン、アセチレン、HS又はペンタンであってよい。
【0047】
本発明のよる方法で反応気体に反応帯域に入る前及び/又はその後で添加される分子酸素を含有する気体は、純粋な分子酸素であってもよいし、不活性気体、例えばCO、N又は希ガスとの混合物であってもよい。分子酸素を含有する気体として通常空気を使用するのが有利である。
【0048】
相応する方法で本発明による方法で反応帯域に場合により外から添加される分子水素を純粋な形でか又は不活性気体で希釈した形で添加することができる。
【0049】
本発明による不均質触媒を使用する少なくとも1種の脱水素される炭化水素の部分脱水素は、容量増加下に進行するので、反応成分の分圧を低下させることによって変換率を高めることができる。これは簡単に、例えば減圧で脱水素することによって及び/又は不活性気体の混入によって達成することができ、そのため前記不活性気体は本発明による方法で極めて望ましい。
【0050】
既に記載したように、本発明による方法に好適であるような不活性気体としては、例えば窒素、水蒸気、二酸化炭素及び希ガス、例えばHe、Ne又はArが挙げられる。有利な不活性希釈剤は、本発明による方法の反応条件下で5モル%より僅かしか、特に有利には3モル%より僅かしか及び更に良好には1モル%より僅かしか化学的に変化しないようなものである。前記希釈剤は全て本発明による方法でそれ自体又は種々の混合物の形で一緒に使用することができる。しかし希釈気体として、前記周辺条件下で分子酸素と脱水素された及び/又は脱水素される炭化水素より迅速に発熱性に反応するような気体を使用することもできる。
【0051】
しかし原則として本発明による方法は不活性の希釈作用をする気体を一緒に使用しないで実施することもできる。即ち、本発明による方法は、反応帯域に供給される反応気体が専ら少なくとも1種の脱水素される炭化水素から成るようなものである。この場合に本発明により必要な分子酸素を含有する気体は、反応帯域の反応路に沿って供給される。しかし、本発明によれば反応帯域中への反応気体の導入の前に前もって既にこれに添加することもできる。従ってこの場合には反応気体は、少なくとも1種の脱水素される炭化水素及び分子酸素のみか又は分子酸素及び1種以上の不活性気体から成っていてよい。もちろん本発明の方法で分子酸素を含有する気体は反応気体を反応帯域に入れる前に前もって反応気体に添加してもよいし、反応帯域中の反応路に沿って反応気体に添加してもよい。
【0052】
本発明によれば、反応気体に分子酸素含有の気体の全量を反応帯域中への導入前に添加することが有利である。その際、本発明による方法で極めて一般的であるように、反応気体に反応帯域中への導入前でも反応路に沿ってでも、外部の分子水素を添加しないのが有利である。
【0053】
通常、反応気体に反応帯域中への導入前に添加される分子酸素の量は、脱水素される炭化水素(例えばプロパン)の全量に対して、0.001〜0.5モル/モル、有利には0.005〜0.2モル/モル、特に有利には0.05〜0.2モル/モルである。より高いプロパン変換率のためにはより高い割合を使用するのが有利である。反応気体に添加される分子酸素の量を、反応路に沿って分子水素を燃焼させることによって不均質触媒を用いる少なくとも1種の炭化水素の脱水素に必要な熱量が十分に生成されるように、決めることが本発明により有利である。特別な態様では、分子水素と分子酸素の燃焼により生じる熱が炭化水素の脱水素用に必要な熱より大きくともよいし、小さくともよい。
【0054】
本発明によれば、反応気体に必要な不活性気体の全量(反応帯域中で化学反応により生じる不活性気体を除いて)を同じく反応帯域中へ入れる前に添加することが有利である。
【0055】
本発明による方法で不活性希釈気体として水蒸気を一緒に使用するのが有利である。水蒸気はその希釈作用の他にその他の利点として通常本発明による方法用に使用される触媒のコークス化を減少させる。それは水蒸気がこのようにして生成されたコークスを通常炭素気化の原則により消散させるからである。
【0056】
同じく本発明により水蒸気の中間装入を行わないで、反応気体に反応帯域中への導入前に供給される水蒸気量を1回で添加するのが有利である。従って、水蒸気対少なくとも1種の脱水素される炭化水素の比は、反応気体中で反応帯域中への導入前に、通常0〜10モル/モル、しばしば0.1〜10モル/モル、有利には0.1〜5モル/モルである。
【0057】
本発明による方法で必要な分子酸素は通常空気の成分として添加されるので、反応気体は反応帯域中への導入前に通常分子窒素も不活性希釈気体として含有する。
【0058】
従って、通常本発明による方法で反応帯域に供給される反応気体は、水蒸気及び窒素を不活性希釈気体として含有する。
【0059】
本発明による方法の特徴は、反応帯域から取り出される分子水素、水蒸気、少なくとも1種の脱水素される炭化水素及び少なくとも1種の脱水素された炭化水素を含有する生成気体を同一組成の二つの部分量に分け、この二つの部分量の一つを反応気体として反応帯域に戻すことである。この回収は中間供給の形で行ってもよいし、反応帯域中へ反応気体が入る場所で行ってもよい。本発明によれば専ら反応帯域中へ反応気体が入る場所で行うのが有利である。反応気体自体は本発明による方法で反応帯域に通常1箇所でだけかつ付加的な中間装入なしに供給する。
【0060】
反応帯域に供給された反応気体及び反応気体の反応帯域中へ入る場所で戻された循環気体から成る合計を本明細書中で装入気体と称する。
【0061】
本発明による方法の利点は、反応帯域中へ戻された生成気体量がなお不均質触媒を使用する部分脱水素の経過中に生成された分子水素を含有し、これによって本発明による方法で外部水素の添加を完全に省略することができ、それにも拘わらず水素燃焼の利点が得られることに起因する。特に反応帯域中に戻される循環気体が装入気体の成分である場合には、装入気体は、最初から燃焼目的用に、高価な外部からの起源によらない分子水素を含有する。
【0062】
循環気体に含有される分子水素の燃焼により、脱水素平衡から水素除去が行われ、これによりその他は同じ条件下で熱動力学的に可能な脱水素変換率を高めることができる。更に本発明による循環気体回収の方法では、脱水素された炭化水素の選択性も同時に高めることができる。これは特に、脱水素される炭化水素がプロパンである場合に当てはまる。この選択性上昇の原因は、循環気体中の反応帯域中へ戻される、既に1回脱水素された炭化水素が目的とされる比較的特異的な触媒を用いる脱水素並びに水素燃焼が意外にも十分に不活性に進行することにあるのであろう。
【0063】
本発明によれば、反応帯域から取り出した生成気体の少なくとも10%又は20%を反応帯域に供給するのが有利である。しかし本発明によれば、反応帯域から取り出した生成気体の循環気体として反応帯域に供給される部分量が90%又は80%より多くないことが有利である。即ち、反応帯域から取り出した生成気体の循環気体として反応帯域に供給される部分量は、本発明による方法では例えば取り出した生成物量の例えば20〜80%又は30〜70%又は40〜60%又は50%であってよい。
【0064】
本発明による方法で有利には反応気体及び循環気体を反応帯域に各々1箇所でのみ供給し、供給気体が反応帯域に全部供給される量の分子酸素並びに分子水素を含有する場合には、装入気体中の分子酸素対分子水素のモル比の適切な選択により、本発明による不均質触媒を用いる少なくとも1種の脱水素される炭化水素の部分的脱水素の全経過を、反応帯域を通る装入気体混合物の1回の通過に関して、吸熱、自熱(反応帯域の全反応エンタルピーが実質的にゼロである)又は発熱性にすることができる。自熱から僅かに発熱性の操作法が本発明により有利である。この場合に装入気体中に存在する分子酸素対装入気体中に存在する分子水素の前記モル比が1:1又はそれより小さい及び特に有利には1:2及びそれより小さいのが有利であると見なされる。前記比を1:2より大きく選択し、反応帯域から取り出した生成気体を90%より多く循環気体として戻すと、本発明による不均質触媒を用いる部分的脱水素の熱動力学的制御を完全にやめることができ、反応気体の1回の通過に関して、80〜90モル%の範囲の変換率を達成することができる。この場合に通常全反応経過は発熱性である。
【0065】
所望により装入気体を反応帯域に前以て既に加熱して供給することができる。
【0066】
特別な処置なしに本発明による方法を、反応帯域を通る反応気体の1回の通過で脱水素される炭化水素(例えばプロパン又はブタン)の≧5モル%〜≦70モル%の変換率が達成されるようにすることができる。
【0067】
変換率の選択は、特に反応帯域から取り出した生成気体の循環気体として反応帯域中へ戻さない量の次の使用により決まる。この生成物搬出物は、例えば自体公知の方法で、その中に含有される炭化水素とは異なる成分を、例えばDE−A10028582に記載されているように、有機溶剤中で含有される炭化水素の選択的吸着によって及び/又は精留により分離し、脱水素される炭化水素及び脱水素された炭化水素から成る残留混合物をスプリッターで(例えば脱水素される炭化水素としてプロパンの場合)分離し、脱水素される炭化水素を反応気体の成分として脱水素に戻し、一方分離した脱水素された炭化水素を次の目的反応に戻すことによって、後処理することができる。この場合用に、本発明による方法を有利にはより高い炭化水素変換率の範囲(例えば35〜60モル%)で実施する。
【0068】
しかし本発明による方法は、例えばUS−A3161670、EP−A117146、DE−A3313573、DE−A10028582並びにDE−A10131297又はDE−A10148575、DE−A10148577、DE−A10206954、DE−A10159615、DE−A10118634、DE−A10130958及びDE−A10160726で推奨されているように、本発明による方法の反応帯域中から取り出した生成気体中に含有される少なくとも1種の炭化水素(例えばプロパン又はイソ−ブテン)の、部分酸化生成物及び/又は部分アンモキシデーション生成物を製造するための方法又はアルキル化生成物、ディールス・アルダー付加物、オキシクロル化生成物及び複分解生成物を製造するための方法と連結する場合も多い。この場合に本発明による脱水素法で変換率は≧5モル%〜≦30モル%又は≦25モル%、しばしば約20モル%で十分である。
【0069】
このために本発明による方法で反応帯域から取り出した、反応帯域中へ戻さない生成気体の部分量(生成気体混合物A)から、その中に含まれる少なくとも1種の脱水素される炭化水素(例えばプロパン、n−ブタン又はイソ−ブタン)及び少なくとも1種の脱水素された炭化水素(例えばプロペン、n−ブテン又はイソ−ブテン)と異なる成分を場合により分離帯域中で部分量又は全量を分離して、生成気体混合物A’を得て、生成気体混合物A又は生成気体混合物A’を、前記後続反応、例えば不均質触媒を用いる酸化帯域及び/又はアンモキシデーション帯域に装入するために使用し、そこで含有される少なくとも1種の脱水素された炭化水素に、例えば部分酸化及び/又はアンモキシデーション反応を分子酸素を用いて行い、目的生成物として少なくとも1種の脱水素された炭化水素の少なくとも1種の部分的な酸化生成物及び/又はアンモキシデーション生成物(例えばアクリル酸、メタクリル酸アクロレイン、アクリルニトリル等)を含有する生成物混合物Bを生成する。
【0070】
次いで後処理帯域C中で生成気体混合物Bから目的生成物を分離し、残りの生成気体混合物中B中に含有される未反応の少なくとも1種の脱水素される炭化水素から少なくとも部分量を第2循環気体の成分として本発明による脱水素法の反応帯域中へ反応気体用の源として戻す。
【0071】
この第2循環気体は通常脱水素される炭化水素の他に多くの場合になお不活性及び/又は不活性でない希釈気体、例えばオキシゲネート、メタン、エタン、エチレン、高分子炭化水素、水蒸気、N、CO、CO及び場合により分子酸素を含有する。
【0072】
このように本発明による方法を少なくとも1種の脱水素化された炭化水素の不均質触媒を用いる部分酸化及び/又はアンモキシデーションと連結する場合には、酸化法及び/又はアンモキシデーション法を酸化及び/又はアンモキシデーション化学量論に関して過剰の分子酸素を使用して実施するのが有利である。有利には、後処理帯域C中でこの過剰の分子酸素が第2循環気体中に主として残留するように操作する。その場合にはこの分子酸素を含有する第2循環気体は、本発明による方法用反応気体の成分として本発明による方法で必要な分子酸素の源(有利には唯一の源)であってよい。前記のことは脱水素される炭化水素がプロパンであり、脱水素された炭化水素プロペンの部分酸化生成物がアクロレイン及び/又はアクリル酸である場合に特に当てはまる。
【0073】
本発明による方法の反応帯域中に戻される分子酸素をなお含有する第2循環気体がなおCO、オキシゲネート、例えばアクロレイン、アクリル酸、ホルムアルデヒド、酢酸及び/又は酸化エチレンを含有する場合には、これらを前以て及び/又はこの反応帯域中で分子酸素で同じく不均質触媒を用いて更に酸化して、例えばCO及びHOにすることができる。その際遊離する反応熱は同じく反応気体の加熱目的に使用することができる。
【0074】
本発明によれば有利には本発明による方法の反応帯域は、1個だけの触媒ばら体を含み、その際触媒として、DE−A19937107の例1又は例2又は例3又は例4又はDE−A10060099の態様による様なものを使用する。
【0075】
脱水素される炭化水素がプロパンでありかつ脱水素された炭化水素がプロペンである場合には、装入気体混合物は下記から調製することができる:
a)(脱水素)反応帯域から取り出した生成気体(第1循環気体)50〜70%。
この生成気体は通常下記の組成を有する:
メタン 0〜1容量% HO 0〜60容量%
エタン 0〜1容量% C4+−炭素 0〜1容量%
エテン 0〜1容量% CO 0〜2容量%
1〜10容量% O 0〜2容量%
プロペン 1〜20容量% プロパン 10〜40容量%
CO 0〜1容量% 主として窒素 全量100容量%
b)直接脱水素反応帯域に戻されない部分のアクロレイン及び/又はアクリル酸への不均質触媒を用いる部分酸化から脱水素反応帯域から取り出した生成気体を含有するプロペンから成る、第2循環気体:この第2循環気体は通常下記の組成を有する:
メタン 0〜1容量% CO 0〜1容量%
O 0〜5容量% CO 0〜3容量%
エテン 0〜1容量% O 0〜10容量%
エタン 1〜1容量% プロパン 10〜40容量%
水素 0〜1容量% C4+−炭素 0〜1容量%
プロペン 0〜1容量% 主として窒素 全量100容量%
c)新しいプロパン及び新しい水蒸気。
【0076】
更に気体を反応帯域中へ供給することは本発明によれば必要ない。
【0077】
その際、容量比は有利には下記である:
第1循環気体:第2循環気体:新しいプロパン:新しい水蒸気=10〜30:10〜30:1:0.1〜5。
【0078】
前記容量比が20:20:1:1であるのが有利である。その際、不均質触媒を用いる脱水素を有利には主として自熱性に温度450〜650℃及び圧力1〜3バールで実施する。脱水素触媒の装入気体の荷重は有利には、2000〜20000Nl/触媒l・hである。
【0079】
有利な触媒形状は、長さ2mm〜10mm及び横断面直径1mm〜4mmの紐状物である。
【0080】
有利な触媒はDE−A10028582に記載されているように再生することができる。著しい脱活性化の場合には、元来の性能を実質的に再び取り戻すために、再生法を数回連続して行うことができる。再生法には純粋な又は不活性気体により希釈された分子水素を用いる再生工程が含まれる。この再生工程に必要な水素量を制限するために、再生水素を循環させるか又は特に簡単にはより長い時間脱活性化された触媒上に留まるようにするのが使用技術的に有利である。反応器としては脱水素用に簡単な円筒形反応器を使用することができる。部分酸化は公知技術文書(特にDE−A10311297及びDE−A10028582)に記載されているようにして行うことができる。その際生成気体混合物Aから部分酸素用に使用する前に有利にはプロパン及びプロペンとは異なる全ての成分を分離する。
【0081】
通常本発明による方法では反応帯域中への循環気体回収を反応帯域の外に存在する圧縮機を用いて行う。
【0082】
特に有利方法ではこの循環気体導入をジェットポンプ−循環反応器中で行う。
【0083】
このような反応器は、触媒装入及び少なくとも1個のジェットポンプを有する(図1はジェットポンプの概略図を表す)。このジェットポンプは、噴射ノズル(1)、混合管(2)、ディフューザー(3)及び吸入カバー(4)を有する。括弧中の数字は図1の数を示す。
【0084】
噴射ノズルにより搬送方向に噴射流を混合管中へ放圧する。それによって吸入カバー中に減圧が生じ、それによって吸引カバーの周囲の気体を吸い込み、噴射流と同時に混合する際に混合管を通ってディフューザーへ搬送され、放出される。本発明による方法では噴射流は有利には反応帯域に供給される反応気体によって生成される。ディフューザーの後で搬送方向は逆戻りしており、反応気体は触媒装入部に供給される。触媒装入部から取り出した生成気体の部分量は、吸入カバーを介して部分的に吸い込まれ、混合管中で反応気体と混合され、ディフューザーを介して装入気体混合物として取り出される。生成気体の残りの量は反応器から取り出す。この工程で使用したジェットポンプの概念には突出ジェットノズルも含まれる。ジェットポンプ−循環反応器の形状の一例を図2に示す。図2中、数字は下記のものを表す:1=触媒床;2=例えばプロパン;3=例えば空気;4=例えば水蒸気;5=生成気体;6=ジェットポンプ。
【0085】
その際、触媒装入部の一方の側に吸入カバーがあり、もう一方の側にディフューザーがあるようなジェットポンプ−循環反応器が該当する。反応器内部に存在するジェットポンプには、吸入カバーが密閉可能に出来ているのが有利である。これは特に触媒装入の再生目的のために有利である。その際、吸入カバーが閉じている間に噴射流が再生ガスによって生成される。しかし開いていてもよい。もちろんジェットポンプ−循環反応器の場合に少なくとも1個のジェットポンプが触媒装入物を含有する反応器空間の外に存在してよい。
【0086】
本発明による方法のなお言及すべきもう一つの利点は、反応帯域中への循環気体回収なしの操作方法に比して触媒装入物の耐用時間が長いことである。
【実施例】
【0087】
1.脱水素反応器の製造
粉砕ZrO・SiO混合酸化物1000gにエタノール600ml中のSnCl・2HO11.993g及びHPtCl・6HO7.886gの溶液を注ぎかけた。
【0088】
混合酸化物はZrO/SiO−重量比95:5を有した。混合酸化物の製造会社はFirma Norton(USA)であった。
【0089】
混合酸化物は下記の特徴を有した:Type AXZ 311070306、Lot−No.2000160042、篩フラクション:1.6〜2mm、BET表面積:86m/g、間隙率:0.28ml/g(水銀−ポロシメーター−測定)。
【0090】
上澄みエタノールを回転蒸発器で回転下で水流ポンプ真空(20mbar)で水浴温度40℃で抽出した。引き続き各々定常空気下で先ず100℃で15時間乾燥させ、次いで560℃で3時間焼成した。次いで乾燥させた固体にHO2500ml中のCsNO7.71g、KNO13.559g及びLa(NO・6HO98.33gの溶液を注いだ。上澄み水を回転蒸発器で回転下で水流ポンプ真空(20mbar)で水温度85℃で抽出した。引き続き各々定常空気下で先ず100℃で15時間乾燥させ、次いで560℃で3時間焼成した。
【0091】
こうして得た触媒前駆物質は、(ZrO95・(SiO(質量比)上Pt0.3Sn0.6Cs0.50.5La3.0の組成を有した。
【0092】
得られた触媒前駆物質20mlを垂直に立てた管状反応器に装入した(反応器の長さ:800mm;壁厚:2mm;内径:20mm:反応器材料:内部にアロン生成された(即ち酸化アルミニウムで被覆)鋼管;加熱:長手方向中心650mmの長さで、電気(Fa.HTM Reetzのオーブン、LOBA1100−28−650−2)による;触媒ばら体長さ:75mm;触媒ばら体の位置:管状反応器の長手方向中央;反応器残容量の充填上及び下へ直径4〜5mmの凍石球(不活性物質)、固体床上に下へ搭載)。
【0093】
引き続き、反応管に外壁温度制御下で500℃の加熱帯域に沿って(同じ不活性気体流を流通させた管に関して)、水素9.3Nl/時を30分間装入した。引き続き水素流に換えて一定壁温度で先ず30分間窒素80容量%及び空気20容量%から成る23.6Nl/時の流を、次いで30分間純粋な空気から成る同じ流を装入した。次いで壁温度を維持しながらNの同じ流を15分間噴霧し、引き続きもう一度30分間水素9.3Nl/時で還元した。これによって触媒前駆物質の活性化が完了した。
【0094】
2.比較例1
例1に記載したようにして製造した脱水素反応器に定常温度制御(内部気体流に関して壁温度500℃)で粗プロパン20Nl/時及び水蒸気20g/時から成る混合物を反応気体として装入した。その際、粗プロパンはFa.Brooksの質量流量調整器を用いて添加し、一方水はFa.KontronのHPLC Pump420を用いて先ず液状で蒸発器中へ添加し、そこで蒸発させ、次いで粗プロパンと混合した。反応気体の温度は150℃であった。
【0095】
反応器出口にある圧調整器(Fa.REKO)を用いて反応器の出口圧力を1.5バール絶対に調整した。
【0096】
圧調整器の後方で標準圧に放圧した生成気体を冷却し、その際含有される水蒸気を凝縮した。凝縮されなかった残留気体をガスクロマトグラフィーにより分析した[HP6890 mit Chem−Station、検出器:FID、WLD、分離カラム:Al/KCl(Chrompack)、Carboxen1010(Supelco)]。相応する方法で反応気体も分析した。
【0097】
下記表1は、操作時間に関連させた達成結果を示す。その際、"容量%"は"乾燥"換算気体の容量%である。即ち、含有される水蒸気の量は全ての場合に無視した。
【0098】
【表1】

【0099】
この値は反応気体の1回の通過に関するプロパン変換率20.8モル%及びプロペン生成の選択率99.1モル%に相応する。
【0100】
比較例2
比較例1の周辺条件は保持したが、反応気体に付加的に空気7.5Nl/時を添加し、引き続き実験を更に行った。触媒床のプロパン荷重は比較例1に相応した。下記表2は、操作時間(新しい反応条件に変更してからの時間)に関連させた達成結果を示す。ここでも"容量%"は"乾燥換算"気体の容量%である。
【0101】
【表2】

【0102】
表1との比較から、空気−酸素の共存によりCO−生成の上昇並びに分解生成物(メタン、エタン及びエテン)の増加が生じることが示される。両方とも、プロペン生成の選択性は比較的僅かである。後者は反応気体の1回の通過に関してプロパン変換率24.6モル%で91.4モル%と判明した。
【0103】
実施例
比較例2の周辺条件を維持したが、150℃に冷却した生成気体422l/時を反応器入口に戻し(Fa.KNF Neubergerの膜圧縮機を用いて、P≒1.5バール)、そこで比較例2による反応気体と混合して触媒ばら体に供給する装入気体にした。循環気体量の調整は、膜圧縮機と連結させた絞り測定器(Fa.Rosemount、絞り直径:1.3mm)を用いて行った。水の凝縮を回避するために、膜圧縮機、絞り測定器及び循環気体導管を加熱バンドを用いて150℃に加熱した。比較例2からのプロパン荷重は維持した。反応帯域中へ循環して戻さなかった部分の生成気体を下記のように分析した。下記表3は、操作時間(新しい反応条件に変更してからの時間)に関連させた得られた結果を示す。ここでも"容量%"は"乾燥換算"気体の容量%である。
【0104】
【表3】

【0105】
表3の表2との比較から、本発明による循環気体の方法は、比較例2で空気添加によるCO−生成の増加及び分解生成物(メタン、エタン及びエテン)の生成を、酸素排除下で実施した比較例1の値にほぼ相応する水準に戻すことが示される。これは比較例2に対してプロパン生成の選択性の増加を示す。更に水素含量の数値は表2と比較して、再循環された水素が空気酸素により十分選択的に酸化されたことを示す。装入気体の1回の通過に関して、プロパン変換率20.3モル%でのプロペン生成の選択性は98.0モル%であった。
【符号の説明】
【0106】
図1
1 噴射ノズル
2 混合管
3 ディフューザー
4 吸入カバー
図2
1 触媒床
2 例えばプロパン
3 例えば空気
4 例えば水蒸気
5 生成気体
6 ジェットポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応帯域に少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する反応気体を連続的に供給し、反応気体を反応帯域中で少なくとも1個の触媒固定床上に導入し、そこで接触脱水素により分子水素及び部分的な少なくとも1種の脱水素された炭化水素を生成させ、反応気体に反応帯域に入れる前及び/又は後で少なくとも1種の分子酸素を含有する気体を添加し、分子酸素が反応帯域中で反応気体に含有される分子水素を部分的に酸化して水蒸気にし、かつ反応帯域から分子水素、水蒸気、少なくとも1種の脱水素された炭化水素及び少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する生成気体を取り出す、気相中で少なくとも1種の脱水素される炭化水素を連続的不均質触媒を用いて部分的に脱水素する方法において、反応帯域から取り出した反応気体を同一組成の二つの部分量に分け、この二つの部分量の一つを循環気体として反応帯域に戻すことを特徴とする、連続的不均質触媒を用いる部分的な脱水素法。
【請求項2】
少なくとも1個の触媒床が、酸化ジルコニウム10〜99.9質量%、酸化アルミニウム、二酸化珪素及び/又は二酸化チタン0〜60質量%及び少なくとも1種の、元素の周期系の第1又は第2主族の元素、第3副族の元素、第8副族の元素、ランタン及び/又は錫0.1〜10質量%(質量%の合計は100質量%であるという条件である)を含有する、脱水素触媒から生成されることを特徴とする、前記請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒固定床が触媒紐状物及び/又は触媒管状物を包含することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
脱水素される炭化水素がプロパン及び/又はブタンであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
反応気体に専ら反応帯域中へ入れる前に少なくとも1種の分子酸素を含有する気体を添加することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の分子酸素を含有する気体として空気を添加することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応帯域に循環気体を除いてその他の分子酸素を含有する気体を添加しないことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応帯域に供給される反応気体が水蒸気を含有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
反応帯域から取り出した生成気体の循環気体として反応帯域に供給される部分量が、取り出した反応気体量の20〜80%であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
循環気体として反応帯域に戻されない生成気体の部分量が、場合によりその中に含有される少なくとも1種の脱水素された炭化水素とは異なる成分の部分分離後に、脱水素された炭化水素の部分酸化及び/又はアンモキシデーションの目的用に使用されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
反応気体が、脱水素された炭化水素の部分酸化及び/又はアンモキシデーションから生成される、少なくとも1種の脱水素される炭化水素を含有する第2循環気体を添加含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載。
【請求項12】
脱水素された炭化水素の部分酸化及び/又はアンモキシデーションから反応帯域に供給される第2循環気体が、反応帯域に添加される唯一の分子酸素を含有する気体であることを特徴とする請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ジェットポンプ−循環反応器中で実施することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
脱水素される炭化水素の触媒を用いる脱水素に好適である触媒装入部少なくとも1個及びジェットポンプ少なくとも1個を含有する、反応器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−98981(P2011−98981A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24977(P2011−24977)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【分割の表示】特願2003−574594(P2003−574594)の分割
【原出願日】平成15年3月4日(2003.3.4)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】