説明

連続脂質相中のポリアミノ酸の分散液

本発明は、少なくとも1種の活性成分の持続放出を特徴とし、連続脂質相中の分散形態で、両親媒性ポリマーの水相中に少なくとも1種の活性成分を含む、注射可能な医薬組成物に関する。本組成物は、医薬的に許容可能な脂質連続相と、少なくとも1種の両親媒性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーと共有結合していない少なくとも1種の活性成分を含む水性分散相と、少なくとも1種の医薬的に許容可能な界面活性剤とを含む、油中水型エマルジョンの形態を取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1種又は複数の活性成分、特にタンパク質及びペプチド活性成分の持続放出のための水性コロイド懸濁液又は水性分散液に基づく新規医薬製剤に関する。本発明は、さらにこれら医薬製剤の適用、特に治療上の適用に関する。これら活性医薬製剤は、ヒト及び獣医学の両方の治療薬に適用される。
【背景技術】
【0002】
医薬活性成分、特に治療用タンパク質の持続放出の分野では、多くの場合、治療用タンパク質又は治療用ペプチドの患者の血漿中濃度が、健常対象で観察される値にできる限り確実にする必要がある。
【0003】
この目的には、血漿中でタンパク質の寿命が短いことが障害となり、この短寿命により治療用タンパク質を繰返し注射することが必要になる。その結果、治療用タンパク質の血漿中濃度は、高い濃度ピークと非常に低い最低濃度によって特徴づけられる「鋸歯」プロファイルを有する。健常対象の基礎濃度よりはるかに高い濃度ピークは、インターロイキンIL2等の治療用タンパク質の高い毒性のため、非常に重大な有害作用をもたらしうる。さらに、最低濃度は治療効果に必要な濃度より低いので、患者は不十分な治療保護を受け、重大な長期の副作用に苦しむ。
【0004】
また、患者血漿中の治療用タンパク質濃度を患者の治療にとって理想的な値に確実に近づけるためには、対象の医薬製剤は、経時的な血漿中濃度の変化を制限するよう、治療用タンパク質の持続放出を可能にしなければならない。
【0005】
さらに、この活性製剤は、当業者が既に熟知している以下の規定:
1- 治療用タンパク質の血漿中濃度が治療レベルで維持されるような、活性未変性の治療用タンパク質、例えばヒトタンパク質又は合成タンパク質の持続放出;
2- 容易に注射できる十分に低い注射液粘度;
3- 毒性も免疫原性をも示さず、優れた局所忍容性を有する生体適合性及び生分解性の形態
を好ましくは満たすべきである。
【0006】
これらの目的を達成するための試みにおいて、先行技術で提案された最良アプローチの1つは、治療用タンパク質を装填したナノ粒子の低粘度懸濁液から成る、治療用タンパク質の持続放出のための形態を開発することであった。これらの懸濁液は天然の治療用タンパク質の投与を容易にした。
【0007】
そこで、Flamel Technologiesは、治療用タンパク質を、疎水性基と親水性基とを含むコポリアミノ酸のナノ粒子と結合させる方法を提案した。
【0008】
米国特許第5,904,936号明細書(特許文献1)は、一方は天然の疎水性アミノ酸で、他方はイオン化できるアミノ酸である少なくとも2つの型のアミノ酸を含む両親媒性ポリアミノ酸コポリマーの、平均径が0.01〜0.5μmのミクロン未満の粒子(NPV)、及び平均径が0.5〜20μmのミクロン粒子(MPV)を記載している。インスリン等のタンパク質は、水溶液中のこれらの粒子上に自発的に吸着される。このポリアミノ酸コポリマーは、例えばポリ(L-ロイシン-ブロック-L-グルタミン酸ナトリウム)のブロックコポリマーである。前記特許は、モノカチオン塩(硫酸アンモニウム)又はポリカチオン塩(Fe2+、Fe3+、Zn2+、Ca2+、Al2+、Al3+又はCu2+)、酸(HCl)又はカチオン性ポリマー(ポリリジン)をポリ-Leu/Gluのコロイド懸濁液に添加することよる、NPVのMPVへの凝集について記載している。
【0009】
国際公開第2005/033181号(特許文献2)は、アスパラギン酸残基又はグルタミン酸残基を含み、その末端が8〜30個の炭素原子を含む疎水性基を持っている直鎖の両親媒性アニオン性ホモポリアミノ酸を開示している。特に、疎水性に修飾されたテレキリック(telechelic)ホモポリアミノ酸は、例えばPheOC18/C18末端を有するポリ[GluONa]又はPheOC18/α-トコフェロール末端を有するポリ[GluONa]である。水中では、これらの疎水性に修飾されたテレキリックホモポリアミノ酸は、pH 7.4の水性懸濁液中で、少なくとも1種の活性タンパク質(インスリン)と容易に結合できるナノ粒子のコロイド懸濁液を自発的に形成する。
【0010】
特許文献1及び特許文献2の懸濁液によってベクトル化された活性タンパク質(例えばインスリン)のin vivo放出時間は有利に増やすことができた。
【0011】
放出時間の増加は、国際公開第05/051416号(特許文献3)に記載されている医薬形態によって部分的に達成された。前記特許出願では、ポリ(L-グルタミン酸ナトリウム)のナノ粒子(0.001〜0.5μm)の疎水性に修飾されたコロイド懸濁液は、皮下注射後、内在性アルブミンと接触すると、患者内でin situでゲルが形成するような濃度で注射される。次いで、タンパク質はゆっくり、典型的に1週間の期間にわたって放出される。
【0012】
後者の特許出願に記載されている1週間の期間を超えてタンパク質の放出時間を延長する必要がある場合、いくつかの可能性が存在しうる。
【0013】
第1の解決法は、in vivo注射後にタンパク質の放出を遅くするようにポリマー濃度を増やすことにある。それにもかかわらず、この方法は、この系の注射を不可能にする該溶液の粘度の激しい上昇によって損なわれる。
【0014】
第2の解決法は、皮下媒体中でのタンパク質の拡散を減らすように、水と混和しない注射可能な脂質相内にタンパク質を分散させることにある。しかしながら、この方法は、脂質相との接触によるタンパク質の変性の可能性によって損なわれる。
【0015】
さらに、米国特許第6,235,282号明細書(特許文献4)は、ワクチン製剤中の免疫原性アジュバントとしての注射可能な油中水型エマルジョンについて記載している。このエマルジョンの水相には、免疫学的観点からの活性物質、つまりワクチン抗原が含まれる。このことが水相内での活性物質の安定性の困難さ及び水油界面での活性物質の変性の危険をもたらす。前記特許は、活性成分の持続放出に関するものではない。
【0016】
米国特許出願公開第2004/0071716号明細書(特許文献5)は、ワクチン製剤に有用なアジュバントに関する。このアジュバントは油中水型エマルジョンを含む。乳化剤はポリマー乳化剤、さらに正確には、一般式A-COO-B-OOC-A(式中、Bは水溶性ポリアルキレングリコールの2価残基であり、Aは脂溶性錯体モノカルボン酸の残基である)のシーケンスコポリマーである。実施例によれば、水相内にウイルス抗原が存在し、必然的にウイルス抗原の安定性及び変性の危険の同じ問題が伴う。前記特許出願は、活性成分の持続放出に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第5,904,936号明細書
【特許文献2】国際公開第2005/033181号
【特許文献3】国際公開第05/051416号
【特許文献4】米国特許第6,235,282号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0071716号明細書
【特許文献6】国際公開第2007/034320号
【特許文献7】国際公開第2007/116143号
【特許文献8】国際公開第00/30618号
【特許文献9】仏国特許出願公開第2840614号明細書
【特許文献10】仏国特許出願公開第2855521号明細書
【特許文献11】仏国特許出願公開第2860516号明細書
【特許文献12】仏国特許出願公開第2892725号明細書
【特許文献13】仏国特許発明第2801226号明細書
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Kurodaら(2002)、「Hierarchical self-assembly of hydrophobically modified pullulan in water: gelation by networks of nanoparticles」、Langmuir、18、3780〜3786頁
【非特許文献2】Fuller, W.D.、Verlander, M.S.及びGoodman, M.、「Biopolymers」:「A procedure for the facile synthesis of amino acid N-carboxy anhydrides」、1976、15、1869
【非特許文献3】H.R. Kricheldorf、「Alpha-amino acid N-carboxy anhydride and related heterocycles」、Springer Verlag(1987)
【非特許文献4】Tomidaら、Polymer、1997、38、4733〜36頁
【非特許文献5】Griffin(1949)、「Classification of Surface-Active Agents by 'HLB'」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1: 311
【非特許文献6】Griffin(1954)、「Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5: 259
【非特許文献7】Davies (1957)、「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity、426〜438頁
【非特許文献8】Puisieux F., Seiller M. (1983)、「Galenica 5: Les Systemes Disperses - Agents de Surface et Emulsions (Disperse Systems - Surface-active Agents and Emulsions)」、vol. 1. Paris: Technique et Documentation - Lavoisier
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
タンパク質の安定性を低下させず、治療形態の粘度を注射可能性の観点から許容可能な制限を超えて上昇させることなく、ポリマーと結合した治療用タンパク質の放出時間を増やすために低粘度脂質形態を提案したことは本発明者らに帰属する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、何よりも第1に、少なくとも1種の活性成分の持続放出のための医薬組成物に関する。この組成物は、少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含む水相中に少なくとも1種の活性成分を含む。水相は連続脂質相中の分散液の形態である。さらに正確には、この組成物は、
- 医薬的に許容可能な連続脂質相と、
- 少なくとも1種の両親媒性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーと共有結合していない少なくとも1種の活性成分を含む水性分散相と、
- 少なくとも1種の医薬的に許容可能な界面活性剤と
を含む油中水型エマルジョンの形態である。
【0021】
本発明の一変形形態では、両親媒性ポリマーは少なくとも1個の疎水性基を持っている。
【0022】
本発明の一変形形態では、両親媒性ポリマーは、少なくとも1個の疎水性基を持っていてよい、両親媒性ポリアミノ酸である。したがって、本発明の一変形形態では、医薬組成物は、以下の成分:
- 医薬的に許容可能な連続脂質相と、
- 少なくとも1個の疎水性基を持っている少なくとも1種の両親媒性ポリアミノ酸、及び前記両親媒性ポリアミノ酸と共有結合していない少なくとも1種の活性成分を含む水性分散相と、
- 少なくとも1種の医薬的に許容可能な界面活性剤と
を含む油中水型エマルジョンの形態である。
【0023】
本発明の別の変形形態では、両親媒性ポリマーは、少なくとも1個の疎水性基を持っている多糖である。
【0024】
このような医薬組成物は、慣例の経路、特に以下の経路: 経口、鼻、眼、皮膚、膣、直腸又は非経口の少なくとも1つの経路を介して投与されうる。非経口経路のうち、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮内注射、静脈内注射、動脈内注射、脊髄内注射、関節内注射及び胸膜内注射が挙げられる。
【0025】
別の特徴によれば、本発明は、油中水型エマルジョン(その水性分散相が、これらの両親媒性ポリマーの少なくとも1つを含む)の形態の医薬組成物の調製における、後述する種々の両親媒性ポリマー、特に多糖及びポリアミノ酸の使用に関する。本発明の一変形形態は、該医薬組成物の調製において、少なくとも1個の疎水性基を持っている1つ又は複数の両親媒性ポリアミノ酸を使用することにある。
【0026】
定義
「水性媒体中の物理的ゲル」は、水相中に可溶化又は分散した分子、マクロ分子又は粒子間の非共有結合による物理的相互作用によって誘導される半固体状態を意味するものと理解される。粘弾性の測定によって物理的ゲルを定義することもできる。この文脈では、物理的ゲルは、ヤング係数G'と損失係数G"の交点の逆数として定義される特徴的な緩和時間が、0.1秒以上、特に好ましくは10秒以上であるような周波数範囲にわたって、ヤング係数G'が損失係数G"より大きい系である。
【0027】
本発明の目的のため及び本開示全体を通じて、用語「ポリアミノ酸」は、10個を超えるアミノ酸残基を含む天然アミノ酸と合成アミノ酸の両者を包含する。一般に本明細書では、「the」ポリアミノ酸は、医薬組成物で使用する異なるポリアミノ酸の混合物を指す場合があると理解されるものとする。
【0028】
本発明の目的では、「持っている」という表現は、対象とする基、グラフト又は基(radical)がペンダント基であることを意味する。換言すれば、前記基は、両親媒性ポリマーの主鎖に対して側鎖である。グルタメート及び/又はアスパルテート残基の連鎖から成るポリアミノ酸の場合、前記基は、それを持っているアスパラギン酸残基のδ位又はグルタミン酸残基のε-位のカルボニル基の置換基である。他のアミノ酸残基では、ペンダント基は、前記アミノ酸残基の特異的側鎖の置換基である。
【0029】
両親媒性多糖
本発明の一変形形態では、両親媒性ポリマーは、Kurodaら(2002)による論文「Hierarchical self-assembly of hydrophobically modified pullulan in water: gelation by networks of nanoparticles」、Langmuir、18、3780〜3786頁(非特許文献1)に記載されている疎水性に修飾されたプルラン(コレステリルプルラン、ヘキサデシルプルラン)のような修飾された多糖であってよい。
【0030】
本発明の別の変形形態では、使用する両親媒性多糖は、ヒアルロナン、アルギネート、キトサン、ガラクツロナン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、セルロース及び/又はそれらの官能化誘導体から選択される。このような多糖は、国際公開第2007/034320号(特許文献6)で公開された国際特許出願に記載されている。特に、これらはヒアルロナン、アルギネート、キトサン、デキストラン及び/又は少なくとも1個のイミダゾリル基と少なくとも1個の疎水性基で官能化されたそれらの誘導体である。この型の多糖及びそれらの合成様式の説明は、国際公開第2007/116143号(特許文献7)で公開された国際特許出願で、特にデキストラン誘導体について見つけられうる。
【0031】
両親媒性ポリアミノ酸
本発明の別の変形形態では、使用する両親媒性ポリマーは、両親媒性ポリアミノ酸である。1つの好ましい変形形態では、両親媒性ポリマーは、少なくとも1個の疎水性基を持っている両親媒性ポリアミノ酸である。
【0032】
本発明の一変形形態では、使用するポリアミノ酸は反復グルタミン酸若しくはアスパラギン酸残基を含むホモポリマー又はこれら2つの型の残基の混合物を含むコポリマーである。これらの残基がグルタメート又はアスパルテート残基の場合、これらの残基は塩形態でありうる。このようにして形成された塩は、医薬的に許容可能でなければならない。一般的に医薬的に許容可能な対イオンの種々の例は、この説明の残部に示される。グルタミン酸又はアスパラギン酸残基及びそれらの塩は、D又はL配置を有しうる。ポリアミノ酸が、D配置を有する残基とL配置を有する残基を同時に含むことも考えられる。反復残基は、グルタメート又はグルタミン酸残基の場合それらのα又はγ位を介して、またアスパラギン酸又はアスパルテート残基の場合それらのα又はβ位を介して相互に結合している。
【0033】
本発明の一変形形態では、主要ポリアミノ酸鎖は、本質的に、α型の(すなわちそれらのα位を介する)結合によって相互に結合しているL配置を有するアミノ酸残基を含む。
【0034】
本発明の別の変形形態では、両親媒性ポリアミノ酸は、アスパラギン酸(アスパラギン酸残基)及び/又はグルタミン酸(グルタミン酸残基)由来のモノマーで形成され、これらの残基の少なくとも一部は、少なくとも1個の疎水性基[GH]を含むグラフトを持っている。これらのポリアミノ酸は、特に国際公開第00/30618号(特許文献8)に記載されている型のポリアミノ酸である。
【0035】
本発明の一変形形態では、少なくとも1個の疎水性基[GH]を含むグラフトに加えて、両親媒性ポリアミノ酸はヒスチジン残基由来の置換基を持つことができる。この場合、前記ヒスチジン残基は、アミド結合によってグルタミン酸又はアスパラギン酸残基に結合していてよい。
【0036】
ここで、疎水性基[GH]を持っている種々の型の両親媒性ポリアミノ酸について述べる。簡単にするため、以下の一般式ではブロックの形態で書く。しかしながら、これらの式に対応する両親媒性ポリアミノ酸は、シーケンス、ブロック若しくはランダムポリマー、特にコポリマーでよい。例えば後述する両親媒性ポリアミノ酸の適切な混合物を選択するか又は1つの同じ両親媒性ポリアミノ酸内の種々の型のグラフトを組み合わせることによって、異なる変形を組み合わせることが考えられる。
【0037】
有利には、ポリアミノ酸の主鎖は、以下:
- α-L-グルタメート又はα-L-グルタミン酸ホモポリマー;
- α-L-アスパルテート又はα-L-アスパラギン酸ホモポリマー;及び
- α-L-アスパルテート/α-L-グルタメート又はα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマー
から選択される。
【0038】
両親媒性ポリアミノ酸の主鎖上のアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸単位の分布は、結果として生じるポリアミノ酸がランダム又はブロック型又はマルチブロック型のどれかであるような分布である。同様に、両親媒性ポリアミノ酸の主鎖上の疎水性基の分布は、結果として生じるポリアミノ酸がランダム又はブロック型又はマルチブロック型のどれかであるような分布である。したがって、この説明の残部に示される一般式(I)、(II)、(III)、(IV)及び(V)は、シーケンス(又はブロック)コポリマーを表すのみならず、ランダムコポリマー又はマルチブロックコポリマーをも表すと解釈しなければならない。
【0039】
別の定義により、本発明の組成物で使用する両親媒性ポリアミノ酸は、2000〜100,000g/モル、好ましくは5000〜40,000g/モルの分子量を有する。
【0040】
第1の変形形態では、医薬組成物で使用する両親媒性ポリアミノ酸は、下記一般式(I)を有する、又はその医薬的に許容可能な塩である。
【0041】
【化1】

【0042】
(式中:
- R1は、水素原子、直鎖C2〜C10アシル基、分岐C3〜C10アシル基、ピログルタメート基又は基-R4-[GH1]であり;
- R2は、基-NHR5、又はその酸基(複数可)が任意にアミン-NHR5若しくはアルコール-OR6で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- R4は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- R5は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- R6は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基、ベンジル基又は基-R4-[GH1]であり;
- A及びBは、互いに独立して、基-CH2-(アスパラギン酸残基)又は-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり;
- [GH1]は疎水性基であり;
- 疎水性基[GH1]のモルグラフト率n/(n+m)は、両親媒性ポリアミノ酸がpH 7及び25℃の水中溶液中にあるとき、両親媒性ポリアミノ酸がポリアミノ酸のミクロン未満の粒子のコロイド懸濁液を形成するのに十分低く、n/(n+m)は、好ましくは1〜25モル%であり;
- 重合度(n+m)は、10〜1000、好ましくは50〜300で変化する。)
【0043】
式(I)のポリアミノ酸の調製及び合成についてのさらなる詳細のため、仏国特許出願公開第2840614号明細書(特許文献9)及び仏国特許出願公開第2855521号明細書(特許文献10)で公開された特許出願を有用に参照することができる。
【0044】
第2の可能性によれば、両親媒性ポリアミノ酸は、下記一般式(II)、(III)及び(IV)の1つを有する、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である。
【0045】
【化2】

【0046】
(式中:
- Raは、直鎖C2〜C6アルキレン基であり;
- Rbは、C2〜C6アルキレン基、C2〜C6ジアルコキシ基又はC2〜C6ジアミン基であり;
- R7は、互いに独立して、直接結合、1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基、又は基-C(O)-CH2-CH2-であり;
- R8は、基-NHR9又はその酸基がそれぞれアミン-NHR9若しくはアルコール-OR10で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- R9は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- R10は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基、ベンジル基又は基-R11-[GH3]であり;
- R11は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- A及びBは、互いに独立して、基-CH2-(アスパラギン酸残基)又は-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり;
- [GH2]及び[GH3]は、互いに独立して疎水性基であり;
- 重合度(m1+m2)及びm3は、10〜1000、好ましくは50〜300で変化する。)
【0047】
式(II)、(III)及び(IV)のポリアミノ酸の調製及び合成についてのさらなる詳細のため、仏国特許出願公開第2860516号明細書(特許文献11)を有用に参照することができる。
【0048】
第3の可能性によれば、両親媒性ポリアミノ酸は、下記一般式(V)を有する、又はその医薬的に許容可能な塩である。
【0049】
【化3】

【0050】
(式中:
- Rcは、基-NHR15又はその酸基がそれぞれアミン-NHR15若しくはアルコール-OR16で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- Rdは、水素原子、直鎖C2〜C10アシル基、分岐C3〜C10アシル基又はピログルタメート基であり;
- R12は、互いに独立して、好ましくは以下の基:-O-、-NH-、C1〜C5-N-アルキル、アミノ酸残基、C2〜C6ジオール、C3〜C6トリオール、C2〜C6ジアミン、C3〜C6トリアミン、C2〜C6アミノアルコール又はC2〜C6ヒドロキシ酸から選択される2価、3価又は4価の連結基であり;
- R13は、互いに独立して、基-OH又はアミン部分を介して結合しているエタノールアミン基であり;
- R14は、アルキルエステル基、基-CH2OH(ヒスチジノール)、水素原子(ヒスタミン)、基-C(O)NH2(ヒスチジンアミド)、基-C(O)NHCH3又は基-C(O)N(CH3)2であり;
- R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- [GH4]は、互いに独立して、それぞれ下記基:
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐C8〜C30アルキル基、
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル基、及び
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいC8〜C30(多)環式基
から選択される疎水性基であり;
- p、q及びrは、正の整数であり;
- 疎水性基[GH4]のモルグラフト率(p)/(p+q+r)は、各コポリマー鎖が平均少なくとも3個の疎水性グラフトを有することを条件に、1〜50モル%で変化し;
- ヒスチジン残基由来の基のモルグラフト率(q)/(p+q+r)は1〜99モル%で変化し;
- (r)/(p+q+r)は0〜98モル%で変化し;
- (p+q+r)は10〜1000、好ましくは50〜300で変化する。)
【0051】
通常、疎水性基[GH4]中で見られうるヘテロ原子は、酸素、窒素又はイオウ原子である。
【0052】
グルタメート単位を官能化するために使用できるヒスチジン残基の誘導体は相互に同一又は異なり、例えば、ヒスチジンエステル(例えばメチルエステル及びエチルエステル)、ヒスチジノール及びヒスタミンでよい。これらの誘導体は、例えばヒスチジンアミド、ヒスチジンアミドのN-モノメチル誘導体及びヒスチジンアミドのN,N'-ジメチル誘導体でもよい。
【0053】
本発明の一変形形態では、疎水性基[GH4]をポリグルタメート鎖(例えばポリグルタメート主鎖又は骨格)に連結するための少なくとも1つのスペーサーR12を含む疎水性グラフト中に少なくとも1個の疎水性基[GH4]が含まれる。このスペーサーは、例えば少なくとも1つの直接共有結合及び/又は少なくとも1つのアミド結合及び/又は少なくとも1つのエステル結合を含むことができる。例えば、スペーサーは、特に、ポリグルタメート、アミノアルコール誘導体、ポリアミン(例えばジアミン)誘導体、ポリオール(例えばジオール)誘導体及びヒドロキシ酸誘導体の構成モノマー単位由来の種々のアミノ酸残基を含む群に属する型のものでよい。
【0054】
疎水性グラフトを疎水性基[GH4]と形成するスペーサーR12は、2価、3価又は4価(又は5価以上でさえ)でよい。2価のスペーサーR12の場合、疎水性グラフトは単一の基[GH4]を含むが、3価のスペーサーR12は疎水性グラフトに二分の特性を与える。すなわち該疎水性グラフトは2つの疎水性基[GH4]を含む。とりわけ言及しうる3価のスペーサーR12の例は、アミノ酸残基、例えばグルタミン酸、又はポリオール残基、例えばグリセロールである。したがって、疎水性基[GH4]を含む疎水性グラフトの2つの有利な非限定例は、ジアルキルグリセロール及びジアルキルグルタメートである。
【0055】
式(V)のポリアミノ酸の調製及び合成についてのさらなる詳細のため、仏国特許出願公開第2892725号明細書(特許文献12)を有用に参照することができる。
【0056】
本発明の一変形形態では、一般式(I)、(II)、(III)又は(IV)の両親媒性ポリアミノ酸の疎水性基[GH1]、[GH2]及び[GH3]は、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、オレイルオキシ、トコフェリルオキシ及びコレステリルオキシ基を含む群から選択される。さらに、一般式(V)の両親媒性ポリアミノ酸の疎水性基[GH4]は、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、トコフェリル及びコレステリル基を含む群から選択される。好ましくは、本発明のこの変形形態では、R4(式I)、R7(式II及びIV)及びR11(式III及びIV)は直接結合であり、R12(式V)は基-O-である。
【0057】
任意に前記変形と組み合わせてもよい、本発明の別の変形形態では、両親媒性ポリアミノ酸(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の疎水性基[GH1]、[GH2]、[GH3]及び[GH4]は、互いに独立してそれぞれ下記一般式(VI)の一価基でもよい。
【0058】
【化4】

【0059】
(式中:
- R17は、互いに独立して、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル又はベンジル基であり;
- R18は、互いに独立して、6〜30個の炭素原子を含む疎水性基であり;
- t1は、0〜6で変化する。)
【0060】
本発明の一変形形態では、疎水性基R18の全部又は一部は、互いに独立して下記基:
- 6〜30個の炭素原子を含み、少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでよい直鎖若しくは分岐アルコキシ基、
- 6〜30個の炭素原子を含み、1個又は複数の縮合炭素環を有し、少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基、及び
- 7〜30個の炭素原子を有するアルコキシアリール基又は7〜30個の炭素原子を含み、少なくとも1つの不飽和単位及び/若しくは少なくとも1つのヘテロ原子を含んでよいアリールオキシアルキル基
から選択される。)
【0061】
通常、見られるヘテロ原子は酸素、窒素又はイオウ原子である。実際には、限定を意味することなく、一般式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の両親媒性ポリアミノ酸において、式(VI)の疎水性基の基R18は、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、オレイルオキシ、トコフェリルオキシ及びコレステリルオキシ基を含む群から選択される。
【0062】
本発明の一変形形態では、疎水性基[GH1]、[GH2]、[GH3]及び[GH4]のモルグラフト率は1モル%〜25モル%である。好ましくは、モルグラフト率は5モル%〜20モル%である。疎水性基のモルグラフト率は、両親媒性ポリアミノ酸の主鎖中のアミノ酸残基の総数(重合度)に対する、少なくとも1個の疎水性基を持っている、主鎖中のアミノ酸残基の数の比率として定義される。
【0063】
本発明の一変形形態では、両親媒性ポリアミノ酸は、グルタメート及び/又はアスパルテート残基に結合しているポリアルキレングリコール型の少なくとも1個のグラフトをも持っている。有利には、このグラフトは、下記一般式(VII)を有する。
【0064】
【化5】

【0065】
(式中:
- R19は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- Xは、酸素、窒素及びイオウを含む群から選択されるへテロ原子であり;
- R20及びR21は、互いに独立して、水素原子又は直鎖C1〜C4アルキル基であり;
- t2は、10〜1000、好ましくは50〜300で変化する。)
【0066】
実際には、ポリアルキレングリコールは、例えばポリエチレングリコールである。ポリアルキレングリコールのモルグラフト百分率が1〜30モル%で変化することが望ましい。
【0067】
実際には、本発明に従って使用する両親媒性ポリマー、特に一般式(I)、(II)、(III)、(IV)又は(V)の両親媒性ポリアミノ酸の医薬的に許容可能な塩は、カルボン酸基が水溶液中でイオン化形態である塩である。塩化は、通常、金属又は有機カチオン、例えば、
- 下記金属カチオン:ナトリウム、カリウム、カルシウム又はマグネシウムイオン;
- 下記有機カチオン:アミンに基づくカチオン、オリゴアミンに基づくカチオン及びポリアミン、特にポリエチレンイミンに基づくカチオン
によって達成される。アミノ酸に基づくカチオンのうち、1つの好ましい変形形態は、リジン又はアルギニン、例えばポリリジン又はオリゴリジンに基づくカチオンを選択することにある。
【0068】
上述した両親媒性ポリアミノ酸は、調整可能なグラフト率によって、pH 7.4で(例えばリン酸緩衝液で)水に分散してコロイド懸濁液を与えるので有益である。
【0069】
さらに、例を後述するタンパク質、ペプチド又は小分子等の活性成分は自発的にこれらのポリアミノ酸と結合することができる。この結合は、種々の非共有結合的な物理化学的相互作用に起因しうる。これら相互作用は例えば水素結合、イオン結合、疎水性相互作用、ファンデルワールス力であり、又はこれら非共有結合のいくつかが同時に起こりうる。厳密に言えば、活性成分とポリアミノ酸との間に結合がなく、ポリアミノ酸の物理的ゲル内に活性成分が単に立体的に捕捉されているだけの場合もありうる。
【0070】
本発明の製剤で使用できる両親媒性ポリアミノ酸は、例えば当業者に既知の方法によって得られる。あらかじめ「スペーサー」で官能化した疎水性基[GH]を通常のカップリング反応で直接ポリマー上にグラフトすることによって、ランダムポリアミノ酸を得ることができる。対応するアミノ酸のN-カルボキシ無水物(NCA)の逐次重合によって、ブロック又はマルチブロックポリアミノ酸を得ることができる。
【0071】
例えば、ホモポリグルタメート若しくはホモポリアスパルテートポリアミノ酸又はブロック、マルチブロック若しくはランダムグルタメート/アスパルテートコポリマーは、常法で調製される。
【0072】
α型のポリアミノ酸を得るため、最も一般的な技術はFuller, W.D.、Verlander, M.S.及びGoodman, M.による表題「Biopolymers」:「A procedure for the facile synthesis of amino acid N-carboxy anhydrides」、1976、15、1869の論文(非特許文献2)、並びにH.R. Kricheldorfによる表題「Alpha-amino acid N-carboxy anhydride and related heterocycles」、Springer Verlag(1987)の書籍(非特許文献3)に記載されている、アミノ酸N-カルボキシ無水物(NCA)の重合に基づく。NCA誘導体は、好ましくはNCA-O-Me、NCA-O-Et又はNCA-O-Bz誘導体(Me=メチル、Et=エチル及びBz=ベンジル)である。得られたポリマーを、次に、適切な条件下で加水分解してその酸形態のポリマーを得る。これらの方法は、出願人に対する仏国特許発明第2801226号明細書(特許文献13)で与えられている説明に基づく。本発明に従って使用できるいくつかのポリマー、例えば可変分子量のポリ(α-L-アスパラギン酸)、ポリ(α-L-グルタミン酸)、ポリ(α-D-グルタミン酸)及びポリ(γ-L-グルタミン酸)型のポリマーが市販されている。α-β型のポリアスパラギン酸は、アスパラギン酸の縮合(ポリスクシンイミドを与えるため)後の塩基性加水分解によって得られる〔Tomidaら、Polymer、1997、38、4733〜36頁参照(非特許文献4)〕。
【0073】
疎水性グラフト[GH]とポリマーの酸基とのカップリングは、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)又はジメチルスルホキシド(DMSO)等の適切な溶媒中、カップリング剤としてカルボジイミドの存在下、また任意に4-ジメチルアミノピリジン等の触媒の存在下でポリアミノ酸を反応させることによって容易に達成される。カルボジイミドは、例えばジシクロヘキシルカルボジイミド又はジイソプロピルカルボジイミドである。グラフト率は、構成成分及び反応物の化学量論又は反応時間によって化学的に制御される。「スペーサー」で官能化された疎水性基[GH]は、通常のペプチドカップリング又は酸触媒下での直接縮合によって得られる。これらの技術は当業者に周知である。
【0074】
ブロック又はマルチブロックコポリマーは、あらかじめ疎水性グラフトで合成したNCA誘導体を用いて合成される。例えば、疎水性NCA誘導体をNCA-O-ベンジルと共重合させ、次に加水分解によってベンジル基を選択的に除去する。
【0075】
連続脂質相
本発明の目的のため、脂質相又は油相は、20℃〜40℃の温度で液体である疎水性有機化合物、又は該化合物の混合物を含む。好ましくは、脂質相は、代謝可能油から選択される少なくとも1種の油を含む。さらに、選択した油又は油の混合物の25℃における動的粘度は400mPa.s以下である。医薬組成物の注射可能性は、脂質相の動的粘度が低減するにつれて向上すると仮定することができる。したがって、25℃における動的粘度が150mPa.s以下の脂質相を使用することが好ましく;好ましさが増す順で、動的粘度が80mPa.s、40mPa.s又は30mPa.s以下だとさらに良い。
【0076】
有用な代謝可能油のうち、動物、植物又は合成起源の中鎖脂肪酸のトリグリセリド、動物又は植物起源の脂肪酸、それらのエステル及びそれらの塩、並びにそれらの混合物から選択される油が挙げられる。例えば、中鎖脂肪酸のトリグリセリドの油として、グリセロールトリカプリレート/カプレート(例えばMiglyol(登録商標)812、Sasol(登録商標))を使用する。別の例として、脂質相は、オリーブ油、甘扁桃油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、トウモロコシ油、ヤシ油、綿実油、ヒマシ油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含むことができる。
【0077】
界面活性剤
界面活性剤又は界面活性剤の混合物は、6未満のHLBを有するように選択される。
【0078】
親水性-親脂性バランス(HLB)は分子の親水性又は親脂性の程度の経験測度である。HLBを測定する種々の方法は、特にGriffin(1949):「Classification of Surface-Active Agents by 'HLB'」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 1: 311(非特許文献5)、Griffin(1954):「Calculation of HLB Values of Non-Ionic Surfactants」、Journal of the Society of Cosmetic Chemists 5: 259(非特許文献6)、又はDavies (1957):「A quantitative kinetic theory of emulsion type, I. Physical chemistry of the emulsifying agent」、Gas/Liquid and Liquid/Liquid Interface. Proceedings of the International Congress of Surface Activity、426〜438頁(非特許文献7)によって記載されている。
【0079】
例えば、界面活性剤は、ポリグリセリルエステル、リシノール酸エステル、オレイン酸ソルビタン、レシチン、C6〜C12脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸のモノ-及びジグリセリド、ポリリシノール酸エステル並びにそれらの混合物を含む群から選択される。
【0080】
好ましくは、界面活性剤は、ポリグリセリルエステル、特にオレイン酸、ステアリン酸、リシノール酸、リノール酸及びリノレン酸等の天然脂肪酸のポリグリセリルエステルを含む。リシノール酸ポリグリセリル、さらにポリリシノール酸ポリグリセリル(PGPR)が好ましい界面活性剤である。
【0081】
医薬組成物の調製
第1ステップにおいて、水相1g当たり5〜100mgの濃度の少なくとも1種の両親媒性ポリマーと、少なくとも1種の活性成分とを含む水相を調製する。例えば、活性成分としてインターフェロンα-2bの場合、水相1g当たり1mgの濃度で準備することができる。両親媒性ポリマーと活性成分を結合させるのに十分な時間、例えば24時間、25℃で水相を撹拌する。次に、HLBが6未満の界面活性剤又は界面活性剤の混合物を、25℃における粘度が400mPa.s以下の代謝可能油又は代謝可能油の混合物に可溶化することによって脂質相を調製する。好ましくは、油又は油の混合物の25℃における粘度は100mPa.s未満である。
【0082】
水相と脂質相を適度に撹拌しながら約1時間接触させて、確実に水相と脂質相の質量比が50/50以下、好ましくは30/70以下になるようにする。ローター-ステーターホモジナイザー又は高圧ホモジナイザーを利用して水相を脂質相に分散させる。
【0083】
好ましくは、医薬組成物は、25℃でエマルジョンの逆転を引き起こすのに必要な脂質相の量に基づいて、少なくとも10質量%過剰の脂質相を含む。エマルジョンの逆転点を測定する方法の例は、特に以下の参考文献:Puisieux F., Seiller M. (1983)、「Galenica 5: Les Systemes Disperses - Agents de Surface et Emulsions (Disperse Systems - Surface-active Agents and Emulsions)」、vol. 1. Paris: Technique et Documentation - Lavoisier(非特許文献8)に記載されている伝導度測定法である。所定温度において分散水相、連続脂質相及び界面活性剤があれば、エマルジョンが逆転する、すなわち油中水型のエマルジョンから水中油型のエマルジョンに変わる、分散水相と連続脂質相との間の質量比が存在する。この比をエマルジョンの逆転点と呼ぶ。
【0084】
それ未満だと油中水型エマルジョンが逆転する脂質相の量に基づいて過剰な脂質相が、貯蔵条件下でこの逆転を阻止することを可能にする。この過剰は、油中水型エマルジョンの粘度を制限することもできる。
【0085】
したがって、25℃でエマルジョンの逆転を引き起こすのに必要な脂質相の量に基づいて、少なくとも15質量%過剰の脂質相を使用することが特に好ましく、好ましさが増す順で、脂質相が少なくとも20質量%又はさらに30質量%過剰だとさらに良い。
【0086】
同じ関係で、医薬組成物において水性分散相対連続脂質相の質量比は50:50以下、好ましくは40:60以下、特に好ましくは30:70以下である。実際に、連続脂質相の比率が高いほど、油中水型エマルジョンの粘度は連続脂質相の粘度に大きく依存する。
【0087】
好ましくは、医薬組成物は、25℃における動的粘度が200mPa.s以下である。好ましさが増す順で、医薬組成物の25℃における動的粘度が150mPa.s以下又は100mPa.s以下だとさらに良い。
【0088】
水相は、少なくとも1種の両親媒性ポリマーと少なくとも1種の活性成分とを含む。連続脂質相に分散する前の水相の25℃における動的粘度は20mPa.s以上でよい。水相は、連続脂質相に分散した物理的ゲルの形態を取ってもよい。
【0089】
非経口経路で医薬組成物を注射することができる。注射可能性試験については実施例で述べる。
【0090】
活性成分
一般に、活性成分は、タンパク質、糖タンパク質、1つ又は複数のポリアルキレングリコール鎖に結合しているタンパク質(例えばPEG化タンパク質、すなわち1つ又は複数のポリエチレングリコール鎖に結合しているタンパク質)、ペプチド、多糖、リポ糖、ステロイド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド及びそれらの混合物から選択される。
【0091】
本発明の1つの好ましい変形形態では、少なくとも1種の活性成分は親水性である。
【0092】
さらに正確には、活性成分APは、エリトロポイエチン、オシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、造血刺激因子、因子VIII及びIX、ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリン(luliberin)又はゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアンタゴニスト、LHRHアゴニスト、ヒト、ブタ又はウシ成長ホルモン(GH)、成長ホルモン放出因子、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン(IL)、例えばIL-2、IL-11、IL-12及びそれらの混合物、α-、β-又はγ-インターフェロン(IFN)及びそれらの混合物、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、血管内皮成長因子(VEGF)、組換えB型肝炎表面抗原(rHBsAg)、レニン、サイトカイン、ブラディキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン並びに酵素、サイトカイン及び抗体の合成類似体、医薬的に活性な改変体及び断片、並びにそれらの混合物を含む群から選択されうる。
【0093】
一変形形態では、活性成分は、アントラサイクリン、タキソイド若しくはカンプトセシンファミリーに属する型又はロイプロリド若しくはシクロスポリン等のペプチドファミリーに属する型の小さい疎水性、親水性又は両親媒性有機分子、及びそれらの混合物である。本発明の目的では、小分子は、特に小さい非タンパク質分子、例えばアミノ酸を欠いている小分子である。
【0094】
別の変形形態では、活性成分は、以下のファミリーの活性物質:アルコール中毒治療薬、アルツハイマー病治療薬、麻酔薬、先端巨大症治療薬、鎮痛薬、抗喘息薬、アレルギー治療薬、抗癌薬、抗炎症薬、抗凝固薬及び抗血栓薬、抗痙攣薬、抗癲癇薬、抗糖尿病薬、制吐薬、抗緑内障薬、抗ヒスタミン薬、抗感染薬、抗生物質、抗真菌薬、抗ウイルス薬、抗パーキンソン病薬、抗コリン作用薬、鎮咳薬、炭酸脱水酵素インヒビター、心血管治療薬、脂質低下薬、抗不整脈薬、血管拡張薬、抗狭心症薬、抗高血圧薬、血管保護薬、コリンエステラーゼインヒビター、中枢神経系障害治療薬、中枢神経系刺激薬、避妊薬、妊娠促進薬、分娩誘発薬及びインヒビター、嚢胞性線維症治療薬、ドーパミン受容体アゴニスト、子宮内膜症治療薬、勃起機能障害治療薬、受胎能力治療薬、胃腸障害治療薬、免疫調節薬及び免疫抑制薬、記憶障害治療薬、抗偏頭痛薬、筋肉緩和薬、ヌクレオシド類似体、骨粗しょう症治療薬、副交感神経様作用薬、プロスタグランジン、神経治療薬、鎮静薬、催眠薬及びトランキライザー、神経弛緩薬、抗不安薬、覚醒薬、抗うつ病薬、皮膚科障害治療薬、ステロイド及びホルモン、アンフェタミン、拒食症治療薬、非鎮痛性痛み止め、抗癲癇薬、バルビツル酸塩、ベンゾジアゼピン、催眠薬、緩下薬、向精神薬及びこれら製品のいずれかの連合の少なくとも1つから選択されうる。
【0095】
本発明はさらに、本質的に、本開示で記載するように組成物を経口、鼻、眼、皮膚、膣、直腸又は非経口経路によって投与することにある治療処置の方法に関する。非経口経路のうち、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮内注射、静脈内注射、動脈内注射、脊髄内注射、関節内注射及び胸膜内注射が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】実施例3の両親媒性ポリアミノ酸の溶液(▲)及び油中の両親媒性ポリアミノ酸の懸濁液(■)の粘度を示す。
【図2】実施例3の25G針(■)及び27G針(▲)による両親媒性ポリアミノ酸の懸濁液に関する注射可能性の測定を示す。
【図3】実施例4の両親媒性ポリアミノ酸がない懸濁液(▲)及び両親媒性ポリアミノ酸がある懸濁液(■)からのメチレンブルーのin vitro放出を示す。
【図4】時間の関数としての懸濁液の10秒-1での粘度の変化を示す(実施例6)。
【図5】時間の関数としての水性液滴の直径(d50%)の変化を示す(実施例6)。
【発明を実施するための形態】
【0097】
(実施例)
(実施例1:懸濁液の調製)
両親媒性ポリアミノ酸を以下のように調製する。特許文献13に記載されているように、NCAGluOMeの重合後の加水分解によって、ポリオキシエチレン標準物質に対して約10,000に等分子量を有するα-L-ポリグルタメートポリマーを得る。40℃で2時間加熱することによって、このα-L-ポリグルタメートポリマー5.5gを92mlのジメチルホルムアミド(DMF)に可溶化する。ポリマーが可溶化したら、温度を25℃に下げて、6mlのDMFに予め可溶化した天然起源のD-α-トコフェロール(98.5%、ADM Franceから得た)1.49g、6mlのDMFに予め可溶化した0.09gの4-ジメチルアミノピリジン、及び6mlのDMFに予め可溶化した0.57gのジイソプロピルカルボジイミドを連続して加える。25℃で8時間撹拌した後、この反応中間物質を、15%の塩化ナトリウムと塩酸(pH 2)を含む800mlの水中に注ぐ。次に、沈殿したポリマーをろ過で回収し、0.1Nの塩酸で洗浄してから水で洗浄する。引き続きポリマーを75mlのDMFに再可溶化してから、上記のように、塩と酸を含有する水にpH 2で再沈殿させる。水で2回洗浄後、ポリマーをジイソプロピルエーテルで数回洗浄する。これを次に真空オーブン内で40℃にて乾燥させてほぼ85%程度の収率を得る。
【0098】
プロトンNMRで推定されるグラフト率は約5.2%であり、HPLC分析は、0.3%未満の残存トコフェロール含量を明らかにする。溶離液としてNMPを用いてGPCで測定した重量平均分子量Mwは、17,500g/モル(ポリメチルメタクリレート等価物中)である。
【0099】
上で合成した両親媒性ポリアミノ酸を22mg/g含有する水溶液15ml、及び5%(質量で)のポリリシノール酸ポリグリセリル(GrindstedTM PGPR 90、Danisco)を含むグリセロールトリカプリレート/カプレート(Miglyol 812、Sasol)の溶液35mlを別々に調製する。引き続きこれら2つの相を接触させてから、Ultra-Turrax T8ローター-ステーターホモジナイザー(Ika-Werke)を用いて1分間S8N-5Gプローブで20,000分-1の速度にて、又は高圧ホモジナイザー(Emulsiflex C3、Avestin)を用いて1000バールの3回通過後、乳化させて、水相対脂質相の質量比が30/70である、グリセロールトリカプリレート/カプレートの連続相中の両親媒性ポリアミノ酸の水性液滴の懸濁液を得る。
【0100】
(実施例2:ポリアミノ酸の存在によって改善された活性成分の安定性)
実施例1で述べたプロトコルに従い、タンパク質、すなわちインターフェロンα-2b(IFNα2b)を1mg/gの濃度で水相に組み入れて懸濁液を調製する。
【0101】
サンドイッチELISA(IM3193キット、Beckman Coulter)で懸濁液中のIFNα2bを定量する。IFNa2bと両親媒性ポリアミノ酸とを含む懸濁液を37℃で1週間維持した後、抽出後のELISAは、5℃で1週間維持した同一のエマルジョンと比べてIFNa2bの85%の回収率を与える。同一貯蔵条件下であるが、両親媒性ポリアミノ酸の非存在下では、回収率はわずか6%である。
【0102】
(実施例3:粘度/注射可能性の変化)
50mg/mlの濃度の両親媒性ポリアミノ酸の水相(この濃度では物理的ゲルである)を、実施例1で述べた手順に従って脂質相に分散させてヒドロゲルの懸濁液を得る。この懸濁液と最初のゲルの比較によって粘度値を測定した。この測定は、設置されたコーン及びプレート形状(2cm又は4cm及び角度1°)の応力制御式レオメーター(Gemini、Bohlin)を用いて25℃でのせん断勾配(10〜1000秒-1)の関数として粘度の変化を特徴づけることによって行われる。この比較は、低いせん断勾配(10秒-1)では、懸濁液は、ほぼ0.1Pa.s程度の粘度によって特徴づけられ、最初のゲルの粘度より約250倍低いことを示している(図1参照)。
【0103】
この懸濁液の注射可能特性を注射可能性試験ITで評価した。この試験は、注射器の出口で所定流速を得るために注射器のピストンに加えなければならない力を測定することにある。注射可能製剤は、この注射可能性試験ITによる評価後、3.5ml/分の流速のために25N未満の力によって特徴づけられる製剤を意味するものと理解される。
【0104】
実施例3で述べた懸濁液を、25G又は27Gの針を装着した1mlの注射器(Injekt-F、Braun)中に導入する。この注射器を牽引器(DY34、Adamel Lhomargy)内に置く。注射可能性試験を行う。
【0105】
図2に示した結果のように、最初のヒドロゲルの場合でない、この試験によれば、連続脂質相中の両親媒性ポリアミノ酸の懸濁液は、25G及び27Gの針で注射可能であることが分かる。
【0106】
(実施例4:持続放出挙動)
この目的は、時間の関数として、本発明の懸濁液によって生理的媒体中に放出される活性成分の比率をin vitroで決定すること、及びその比率を両親媒性ポリアミノ酸の非存在下で観察される比率と比較することである。
【0107】
実施例1で述べたプロトコルに従い、水溶性染料メチレンブルー(Sigma)を水相に0.01%(質量で)の濃度で組み入れて第1懸濁液を調製する。
【0108】
この染料は、これらのin vitro実験用の活性成分をシミュレートする。両親媒性ポリアミノ酸の非存在下で、この場合もやはり0.01%(質量で)にてメチレンブルーを組み入れて第2懸濁液を調製する。これら2つの懸濁液のそれぞれ50μlを、生理的媒体をシミュレートする0.1Mのリン酸緩衝溶液(PBS:Phosphate Buffer Saline、Sigma)4ml中に注入する。各調合液を37℃の温度で撹拌する。60μlの連続相を異なる時点で取り出してから60μlの0.1MのPBSと交換する。異なるアリコート中のメチレンブルーの濃度をUV-可視分光計で550nmにて測定する(Lambda 35 UV/Vis Spectrometer、Perkin-Elmer Instruments)。こうして、連続相に放出される染料の比率を時間の関数として決定することができる。これらの条件下で観察される挙動は、染料の放出が遅延することを示す。すなわち、両親媒性ポリアミノ酸を含まない懸濁液の場合には14日でメチレンブルーの約70%が放出されるが、水性液滴中に両親媒性ポリアミノ酸が存在すると、放出される染料の比率が同一条件下で14日後にほぼわずか20%程度であることから、放出速度を下げることができる。
【0109】
これらの結果を図3に示す。
【0110】
(実施例5)
さらなる実験は、実施例1のプロトコルに従い、治療用タンパク質、すなわちヒト成長ホルモン(hGH:human Growth Hormone、Prospec)を5mg/gの濃度で水相に組み入れた後、脂質相に分散させて懸濁液を調製することにあった。生成物の50μlを0.1Mのリン酸緩衝液(PBS:Phosphate Buffer Saline、Sigma)4mlに注入する。60μlの連続相を異なる時点で取り出してから60μlの0.1MのPBSと交換する。調合液全体を37℃の温度で撹拌する。
【0111】
外側の水相中のhGHの濃度を液体クロマトグラフィー(HPLC、C18カラム)で測定する。
【0112】
得られた結果は、37℃で5日後、外側の水相に放出されたタンパク質の比率が2%未満であることを示した。
【0113】
(実施例6:物理的安定性)
20mg/mlの濃度の両親媒性ポリアミノ酸の水相を、実施例1で述べた手順に従って脂質相に分散させる。結果として生じた懸濁液を5℃で維持し、水性液滴の粘度と大きさを測定することによって、時間の関数として特徴づける。
【0114】
設置されたコーン及びプレート形状(2cm又は4cm及び角度1°)の応力制御式レオメーター(Gemini、Bohlin)を用いて25℃で10秒-1のせん断勾配について粘度値を決定することによって、粘度を測定する。
【0115】
分散媒体としてヘプタン(SDS)を用いて、粒度分析計(Mastersizer 200、Malvern)によるレーザー回折によって大きさを測定する。
【0116】
結果(図4及び5)は、5℃で3カ月を超えた後に水性液滴の粘度又は大きさに有意な変化がないことから、これらの懸濁液の安定性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の両親媒性ポリマーを含む水相中に少なくとも1種の活性成分を含み、前記水相が連続脂質相中の分散液の形態である、少なくとも1種の活性成分の持続放出のための医薬組成物であって、
- 医薬的に許容可能な連続脂質相と、
- 少なくとも1種の両親媒性ポリマー及び前記両親媒性ポリマーと共有結合していない少なくとも1種の活性成分を含む水性分散相と、
- 少なくとも1種の医薬的に許容可能な界面活性剤と
を含む油中水型エマルジョンの形態である、医薬組成物。
【請求項2】
前記両親媒性ポリマーが、少なくとも1個の疎水性基を持っている両親媒性ポリマーである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記両親媒性ポリマーが、両親媒性ポリアミノ酸である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記両親媒性ポリアミノ酸が、少なくとも1個の疎水性基を持っている、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記両親媒性ポリマーが、少なくとも1個の疎水性基を持っている多糖である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項6】
以下の経路:経口、鼻、眼、皮膚、膣、直腸又は非経口から選択される経路によって投与できることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の活性成分が、タンパク質、糖タンパク質、1つ又は複数のポリアルキレングリコール鎖に結合しているタンパク質、ペプチド、多糖、リポ糖、ステロイド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド及びそれらの混合物から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
少なくとも1種の活性成分が親水性である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
少なくとも1種の活性成分が、エリトロポイエチン、オシトシン、バソプレッシン、副腎皮質刺激ホルモン、表皮成長因子、血小板由来成長因子(PDGF)、造血刺激因子、因子VIII、因子IX、ヘモグロビン、シトクロム、アルブミン、プロラクチン、ルリベリン又はゴナドトロピン放出ホルモン(LHRH)、LHRHアンタゴニスト、LHRHアゴニスト、ヒト成長ホルモン(GH)、ブタGH、ウシGH、ソマトリベリン、インスリン、ソマトスタチン、グルカゴン、インターロイキン(IL-2、IL-11、IL-12)、α-、β-又はγ-インターフェロン、ガストリン、テトラガストリン、ペンタガストリン、ウロガストロン、セクレチン、カルシトニン、エンケファリン、エンドモルフィン、アンギオテンシン、甲状腺刺激ホルモン放出因子(TRH)、腫瘍壊死因子(TNF)、神経成長因子(NGF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、ヘパリナーゼ、骨形成タンパク質(BMP)、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、血管内皮成長因子(VEGF)、レニン、サイトカイン、ブラディキニン、バシトラシン、ポリミキシン、コリスチン、チロシジン、グラミシジン、シクロスポリン並びに酵素、サイトカイン及び抗体の合成類似体、医薬的に活性な改変体及び断片、並びにそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記両親媒性ポリアミノ酸が、ポリマー、シーケンス若しくはランダムコポリマー或いは該ポリマー及び/又はコポリマーの混合物である、請求項3又は4に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記両親媒性ポリアミノ酸の主鎖が、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸由来のモノマーを含み、前記モノマーの少なくとも一部が、少なくとも1個のペンダント疎水性基を持っている、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記両親媒性ポリアミノ酸の主鎖が、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸由来のモノマーを含み、前記モノマーの少なくとも一部が、ヒスチジン残基由来のペンダント基を持っている、請求項10又は11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ヒスチジン残基由来の少なくとも1個のペンダント基が、アミド結合によってグルタミン酸残基に結合している、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒスチジン残基由来のペンダント基が、互いに同一又は異なり、ヒスチジン、ヒスチジンエステル、ヒスチジノール、ヒスタミン、ヒスチジンアミド、N-メチルヒスチジンアミド及びN,N'-ジメチルヒスチジンアミドから選択される、請求項12又は13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)が、下記一般式(I)を有する、又はその医薬的に許容可能な塩である、請求項10又は11に記載の医薬組成物
【化1】

(式中:
- R1は、水素原子、直鎖C2〜C10アシル基、分岐C3〜C10アシル基、ピログルタメート基又は基-R4-[GH1]であり;
- R2は、基-NHR5、又はその酸基(複数可)が任意にアミン-NHR5若しくはアルコール-OR6で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- R4は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- R5は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- R6は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基、ベンジル基又は基-R4-[GH1]であり;
- A及びBは、互いに独立して、基-CH2-(アスパラギン酸残基)又は-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり;
- [GH1]は疎水性基であり;
- 疎水性基[GH1]のモルグラフト率n/(n+m)は、前記両親媒性ポリアミノ酸がpH 7及び25℃の水中溶液中にあるとき、該両親媒性ポリアミノ酸がポリアミノ酸のミクロン未満の粒子のコロイド懸濁液を形成するのに十分低く、n/(n+m)は、1〜25モル%であり;
- 重合度(n+m)は、10〜1000で変化する)。
【請求項16】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)が、下記一般式(II)、(III)及び(IV)の1つを有する、又はそれらの医薬的に許容可能な塩である、請求項10又は11に記載の医薬組成物
【化2】

(式中:
- Raは、直鎖C2〜C6アルキレン基であり;
- Rbは、C2〜C6アルキレン基、C2〜C6ジアルコキシ基又はC2〜C6ジアミン基であり;
- R7は、互いに独立して、直接結合、1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基、又は基-C(O)-CH2-CH2-であり;
- R8は、基-NHR9、又はその酸基(複数可)がそれぞれアミン-NHR9若しくはアルコール-OR10で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- R9は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- R10は、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基、ベンジル基又は基-R11-[GH3]であり;
- R11は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- A及びBは、互いに独立して、基-CH2-(アスパラギン酸残基)又は-CH2-CH2-(グルタミン酸残基)であり;
- [GH2]及び[GH3]は、互いに独立して、疎水性基であり;
- 重合度(m1+m2)及びm3は、10〜1000で変化する)。
【請求項17】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)が、下記一般式(V)を有する、又はその医薬的に許容可能な塩である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の医薬組成物
【化3】

(式中:
- Rcは、基-NHR15、又はその酸基(複数可)がそれぞれアミン-NHR15若しくはアルコール-OR16で修飾されていてもよい、窒素を介して結合している末端アミノ酸残基であり;
- Rdは、水素原子、直鎖C2〜C10アシル基、分岐C3〜C10アシル基又はピログルタメート基であり;
- R12は、互いに独立して、以下の基:-O-、-NH-、C1〜C5-N-アルキル、アミノ酸残基、C2〜C6ジオール、C3〜C6トリオール、C2〜C6ジアミン、C3〜C6トリアミン、C2〜C6アミノアルコール又はC2〜C6ヒドロキシ酸から選択される2価、3価又は4価の連結基であり;
- R13は、互いに独立して、基-OH又はアミン部分を介して結合しているエタノールアミン基であり;
- R14は、アルキルエステル基、基-CH2OH(ヒスチジノール)、水素原子(ヒスタミン)、基-C(O)NH2(ヒスチジンアミド)、基-C(O)NHCH3又は基-C(O)N(CH3)2であり;
- R15及びR16は、互いに独立して、水素原子、直鎖C1〜C10アルキル基、分岐C3〜C10アルキル基又はベンジル基であり;
- [GH4]は、互いに独立して、それぞれ下記基:
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐C8〜C30アルキル基、
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいC8〜C30アルキルアリール又はアリールアルキル基、及び
・少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいC8〜C30(多)環式基
から選択される疎水性基であり;
- p、q及びrは、正の整数であり;
- 疎水性基[GH4]のモルグラフト率(p)/(p+q+r)は、各コポリマー鎖が平均少なくとも3個の疎水性グラフトを有することを条件に、1〜50モル%で変化し;
- ヒスチジン残基由来の基のモルグラフト率(q)/(p+q+r)は1〜99モル%で変化し;
- (r)/(p+q+r)は0〜98モル%で変化し;
- (p+q+r)は10〜1000で変化する)。
【請求項18】
前記疎水性基[GH1]、[GH2]及び[GH3]が、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、オレイルオキシ、トコフェリルオキシ及びコレステリルオキシ基を含む群から選択され、前記疎水性基[GH4]が、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、オレイル、トコフェリル及びコレステリル基を含む群から選択され、R4、R7及びR11が直接結合であり、R12が基-O-である、請求項15、16又は17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
疎水性基[GH1]、[GH2]、[GH3]及び[GH4]が、互いに独立して、それぞれ下記一般式(VI)の一価基である、請求項15、16又は17に記載の医薬組成物
【化4】

(式中:
- R17は、互いに独立して、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル又はベンジル基であり;
- R18は、互いに独立して、6〜30個の炭素原子を含む疎水性基であり;
- t1は、0〜6で変化する)。
【請求項20】
前記疎水性基R18が、互いに独立して、下記基:
- 6〜30個の炭素原子を含み、少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよい直鎖又は分岐アルコキシ基、
- 6〜30個の炭素原子を含み、1個又は複数の縮合炭素環を有し、少なくとも1個の不飽和単位及び/又は少なくとも1個のヘテロ原子を含んでいてもよいアルコキシ基、及び
- 7〜30個の炭素原子を有するアルコキシアリール基又は7〜30個の炭素原子を含み、少なくとも1つの不飽和単位及び/若しくは少なくとも1つのヘテロ原子を含んでよいアリールオキシアルキル基
から選択される、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記疎水性基R18が、オクチルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、オレイルオキシ、トコフェリルオキシ及びコレステリルオキシ基を含む群から選択される、請求項19又は20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記両親媒性ポリアミノ酸の主鎖が、グルタミン酸及び/又はアスパラギン酸由来のモノマーを含み、前記ポリアミノ酸が、ポリアルキレングリコール型の少なくとも1個のグラフトを持っている、請求項10〜21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記ポリアルキレングリコール型のグラフトが、下記一般式(VII)を有する、請求項22に記載の医薬組成物
【化5】

(式中:
- R19は、互いに独立して、直接結合又は1〜4個のアミノ酸残基を含むスペーサー基であり;
- Xは、酸素、窒素及びイオウを含む群から選択されるヘテロ原子であり;
- R20及びR21は、互いに独立して、水素原子又は直鎖C1〜C4アルキル基であり;
- t2は、10〜1000で変化する)。
【請求項24】
前記ポリアルキレングリコールがポリエチレングリコールである、請求項22又は23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記両親媒性ポリアミノ酸が、1〜30モル%で変化するポリアルキレングリコールのモルグラフト率を有する、請求項22、23又は24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)の主鎖が、α-L-グルタメート又はα-L-グルタミン酸ホモポリマーである、請求項10〜17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)の主鎖が、α-L-アスパルテート又はα-L-アスパラギン酸ホモポリマーである、請求項10〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)の主鎖が、α-L-アスパルテート/α-L-グルタメート又はα-L-アスパラギン酸/α-L-グルタミン酸コポリマーである、請求項10〜16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
疎水性基のモルグラフト率が、1モル%〜25モル%である、請求項15又は17に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記両親媒性ポリアミノ酸(PAA)の分子量が、2000〜100,000g/モルである、請求項10〜29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記界面活性剤又は界面活性剤の混合物が、6未満のHLBを有する、請求項1〜30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
前記界面活性剤が、ポリグリセリルエステル、リシノール酸エステル、オレイン酸ソルビタン、レシチン、C6〜C12脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸のモノ-及びジグリセリド、ポリリシノール酸エステル、ポリリシノール酸ポリグリセリル並びにそれらの混合物を含む群から選択される、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
前記脂質相が、代謝可能油から選択される少なくとも1種の油を含み、前記油又は油の混合物の25℃における動的粘度が400mPa.s以下である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記脂質相が、動物、植物又は合成起源の中鎖脂肪酸のトリグリセリド、動物又は植物起源の脂肪酸、それらのエステル及びそれらの塩、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記脂質相が、オリーブ油、甘扁桃油、ヒマワリ油、大豆油、落花生油、トウモロコシ油、ヤシ油、綿実油、ヒマシ油及びそれらの混合物から選択される少なくとも1種の油を含む、請求項33又は34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
伝導度測定法によって測定される、25℃でエマルジョンの逆転を引き起こすのに必要な脂質相の量に基づいて、少なくとも10質量%過剰の脂質相を含む、請求項1〜35のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
水性分散相対連続脂質相の質量比が、50:50以下である、請求項1〜36のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
25℃における動的粘度が200mPa.s以下であり、前記水相が物理的ゲルの形態であるか又は前記水相の25℃における動的粘度が20mPa.s以上である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
水相1g当たり5〜100mgの両親媒性ポリアミノ酸を含む、請求項1〜38のいずれか一項に記載の医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2010−513407(P2010−513407A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542071(P2009−542071)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/EP2007/064352
【国際公開番号】WO2008/074871
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505437321)フラメル・テクノロジーズ (14)
【Fターム(参考)】