説明

連続蒸煮装置

【課題】 醸造産業における重労働であった横型連続蒸煮装置の洗浄を簡便かつ容易に洗浄する方法が望まれていた。また、洗浄装置をコンパクトにし、自動化することも望まれていた。
【解決手段】 缶体中に無端状通気性コンベアを有し、該コンベア上に堆積される醸造原料穀物を連続的に蒸煮する装置において、該通気性コンベアを洗浄するための装置を前記缶体内に設置する。円筒形ブラシを有する洗浄機を無端状通気性コンベアの下部に設置し、動力により必要時のみブラシとコンベアが接触するようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酒類、味噌、醤油などを製造する際に使用する醸造原料を連続蒸煮する装置の自動洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酒類、味噌、醤油などを製造する際に使用する醸造原料を連続蒸煮する装置としては伝統的な甑を使用する方法があるが大量生産には適しておらず、一般的には竪型連続蒸煮装置や横型連続蒸煮装置が用いられている。
【0003】
横型連続蒸煮装置は浸漬された醸造原料を通気性上のベルトコンベアに供給して一定の高さの層に調整した後、連続的に蒸気が供給されている蒸煮缶を通過させて蒸米を製造する装置である。例えば特開平7−308182(特許文献1)にはこのような横型連続蒸煮装置が開示されている。
【0004】
その際、蒸気は米の層を下側から通過するため、通気性コンベアと接触している部分の醸造原料は層の上部にある醸造原料よりも長時間蒸気に接触することになり、期待値以上に水分を含んでしまう傾向にある。
【0005】
特に原料が米であると澱粉質が糊状になって通気性コンベアに付着することになるため、作業終了後には通気性コンベアの入念な洗浄が必要となる。
【0006】
しかしながら、通気性コンベアは蒸煮缶内にあり、蒸煮缶は効率よく醸造原料を蒸煮するために密閉性が高くなるよう設計されているため、洗浄時には蒸煮缶の一部を解体して通気性コンベアを露出させた上で、人手によりブラシなどで入念に洗浄する必要があった。
【0007】
このような手間を省くために、特開平3−47066号公報(特許文献2)では蒸煮缶に車輪をつけ、移動可能にすることにより作業終了後に容易に洗浄できるようにしたとしている。
【特許文献1】特開平7−308182号公報
【特許文献2】特開平3−47066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年では醸造産業における就業者は高齢化し、作業人数も減少する傾向にある。そのような中で作業終了後に蒸煮缶を移動させるのは重労働であり、しかも移動のために過剰なスペースが必要となる。
【0009】
また、特許文献2では「缶本体内に設けた自動洗滌装置によつて、作業終了後に蒸きょう作業部分をその都度外部に移動させることなく、装置外部からの制御操作によつて、各部分を自動的に洗滌することも出来る。」との記載があるが、具体的な例示は全くない。
【0010】
このように、醸造業界においては省スペースかつ自動で確実な洗浄が行える連続蒸米機が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の洗浄装置付連続蒸煮装置を提供する。
項1. 缶体中に無端状通気性コンベアを有し、該コンベア上に堆積される醸造原料穀物を連続的に蒸煮する装置において、該通気性コンベアを洗浄するための装置を前記缶体内に設置してなる洗浄機付連続蒸煮装置。
項2. 洗浄機が無端状通気性コンベアの下部に設置され、該コンベアの進行方向軸と交差するように設置され、かつ該コンベアの表面と水平に設置された項1記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
項3. 洗浄機が円筒形ブラシからなる項1から2に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
項4. 該円筒形ブラシが動力装置によって上下することにより、蒸煮時は該コンベアと接触せず、洗浄時にのみ接触するようにした項1から3に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
項5. 該動力装置がエアシリンダーである項1から4に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、酒類、味噌、醤油などを製造する際に使用する醸造原料を連続蒸煮する装置を作業終了後に簡便かつ確実に洗浄することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明では洗浄装置をコンパクトなユニットとし、洗浄ブラシが駆動装置により上下することで蒸煮時は非接触、洗浄時は通気性コンベアに接触することで自動化・省スペース化を実現した。
【0014】
以下、図面によりこの発明の実施例を説明する。図1は洗浄ユニットを側面から見た縦断面図である。また、図2は洗浄ユニットを設けた横型連続蒸煮装置を正面から見た縦断面図である。
【0015】
本発明の洗浄ユニットは蒸煮缶内で通気性コンベアの一部を囲う形となり、該ユニット内に設けられた可動ブラシ、洗浄用シャワーにより通気性コンベアを洗浄する。
【0016】
蒸煮時には図1の3に示すように洗浄用ブラシは4の通気性コンベアとは接触していないが、洗浄時には駆動装置によりブラシが2の位置に移動し、通気性コンベアと接触する。
【0017】
その際、ブラシの形態は特に限定されず、回転軸に一様にブラシが植毛されていても良いし、らせん状に植毛されていても良い。また、ブラシの素材も特に限定されるものではなく、通気性コンベアの素材よりも硬度の低いものであれば何でも良い。
【0018】
ブラシの駆動装置は完全自動化の観点からエアシリンダや油圧シリンダを用いることが望ましいが、レバーにより手作業で上下させても良い。
【0019】
さらに、洗浄時には図1の5、6で示すように洗浄用ノズルから洗浄液が噴射されることで洗浄効率を高めることが出来る。洗浄ノズルは通気性コンベアの表・裏面にそれぞれ1個ずつ設けるのが望ましいが、表面(すなわち図1における5のノズル)だけでも良いし、ブラシの前後に1セットずつあるいはそれ以上設けても良い。
【0020】
洗浄ユニットの下部には7のカーテンを設置することにより蒸煮時の蒸気漏れを防ぐ、あるいは洗浄時に通気性コンベアに付着していた醸造原料が飛散することを防ぐことが出来る。
【0021】
また、図2の9、9’に示すようにブラシを上下させるシリンダは蒸煮缶の側面に一対設置することにより通気性コンベアとブラシを確実に接触させることが出来る。
【0022】
ブラシの駆動部分は8のようにブラシ回転軸と連結しても良いが、別途設置した駆動装置を伸縮可能なベルトなどでブラシ回転軸と接続することによって回転させることも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】洗浄ユニットを側面から見た縦断面図である。
【図2】洗浄ユニットを設けた横型連続蒸煮装置を正面から見た縦断面図である。
【図3】洗浄ユニットを設けた横型連続蒸煮装置を側面から見た概略図である。
【符号の説明】
【0024】
1 洗浄ユニット
2 ブラシ(洗浄時)
3 ブラシ(蒸煮時)
4 通気性コンベア
5 コンベア表面用シャワー
6 コンベア裏面用シャワー
7 カーテン
8 洗浄ブラシ回転用モーター
9 洗浄ブラシ上下駆動用シリンダ
10 洗浄ブラシ
11 蒸煮缶
12 醸造原料穀類
13 排気ダクト
14 排気ファン
15 ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶体中に無端状通気性コンベアを有し、該コンベア上に堆積される醸造原料穀物を連続的に蒸煮する装置において、該通気性コンベアを洗浄するための装置を前記缶体内に設置してなる洗浄機付連続蒸煮装置。
【請求項2】
洗浄機が無端状通気性コンベアの下部に設置され、該コンベアの進行方向軸と交差するように設置され、かつ該コンベアの表面と水平に設置された請求項1記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
【請求項3】
洗浄機が円筒形ブラシからなる請求項1から2に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
【請求項4】
該円筒形ブラシが動力装置によって上下することにより、蒸煮時は該コンベアと接触せず、洗浄時にのみ接触するようにした請求項1から3に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。
【請求項5】
該動力装置がエアシリンダーである請求項1から4に記載の洗浄機付連続蒸煮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−125112(P2009−125112A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300154(P2007−300154)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000165251)月桂冠株式会社 (88)
【Fターム(参考)】