説明

連続遠心分離機

【課題】
試料を連続的に流して液体試料中の粒子をロータ内で遠心分離する連続遠心分離機において、フェイスシール部のシール不良によって起こる試料の損失や、冷却水とのコンタミネーションの影響を最小限にとどめる。
【解決手段】
制御装置部200から遠心分離部100に、上部駆動部104と下部回転支持部105に設けられるフェイスシールを冷却するための冷却水を循環させる冷却水ライン170を有する連続遠心分離機において、冷却水ライン170に冷却水の流量を検出する流量センサを複数設け、複数の流量センサ(171、172)の出力を比較することによって、冷却水又は試料の漏れを検出するようにした。出力の比較値が一致しない場合は、冷却水又は試料の漏れであるので、エラーメッセージを操作パネル205に表示すると共に、必要ならば連続遠心分離機、冷却水の循環、又は、試料の送出を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を連続的に流して液体試料中の粒子をロータ内で遠心分離する連続遠心分離機に関し、特に、フェイスシール部のシール不良によって起こる試料の損失や、冷却水とのコンタミネーションを検出することができる連続遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
連続遠心分離機は、通常の重力場では沈降しない、もしくは沈降しにくい粒子を分離するためのものであり、ウィルスや菌体などもその分離対象に含まれる。ウィルスや菌体は、正常な人間にとっては害となるものが多いが、薬品やワクチンなどの製造にとっては欠かせない原料であり、これらの製造過程においては、これらの原料を分離精製する設備として連続遠心分離機が使用される。
【0003】
連続遠心分離機は、高速回転する回転軸に当接するシール部材を有する。この部材をフェイスシールと称し、フェイスシールはスプリングにより定圧で回転軸先端に接触するように保持される。フェイルシールは、高速回転する回転軸との摩擦により発熱するので、これを冷却するために冷却水を循環する。
【0004】
特許文献1の発明によれば、フェイスシール冷却水ラインにオイルが混入することを避けるためにフェイスシールホルダを保持するOリングを異なる2種類の材質のものを使用し、Oリングの膨潤によるシール不良によって試料が冷却水ラインに漏れること(試料の損失)が無いようにする連続遠心分離機が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−247610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
連続遠心分離機において、試料が冷却水ラインに漏れることによる試料の損失を避ける方策が必要であり、特許文献1に開示される方法は有効な手段の一つである。しかしながら、万が一試料が漏れた場合の積極的な検出は行なっておらず、ユーザから試料又は冷却水の漏れをモニタできる装置の実現が要望されていた。フェイスシールは、冷却水で冷却されるものの寿命品であって、およそ40から50時間の使用で交換するものである。寿命を超えてフェイスシールを使用し続けた場合、回転軸先端とフェイスシールの当接面がシール不良になり試料が漏れることがある。また、フェイスシール自身の不良、又は、人為的な取り付けミスなどによっても同様に試料が冷却水ラインに漏れてしまうこともある。さらに、シール不良によって試料とシール冷却水が混ざる、コンタミネーションが発生する可能性がある。
【0007】
本願発明は上記背景においてなされたもので、その目的は、フェイスシールのシール不良によって起こる試料の損失や、冷却水とのコンタミネーションの影響を最小限にとどめることができる連続遠心分離機を提供することにある。
【0008】
本願発明の別の目的は、冷却水又は試料の漏れを早期に検出し、作業者にアラームを表示するとともに、適切な対処が可能な連続遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、試料を分離するための円筒状のロータと、ロータの軸方向上下に連結され内部に貫通穴を有する2本の回転軸と、回転軸の貫通穴と連通する貫通穴を有しスプリングにより定圧で回転軸に当接されるフェイスシールと、フェイスシールおよび回転軸の連通した貫通穴からロータに試料を連続的に供給および排出する試料循環手段と、フェイスシールを冷却するための冷却水を循環させる冷却水ラインを備えた連続遠心分離機において、冷却水ラインに、冷却水の流量を検出する流量センサを複数設け、複数の流量センサの出力を比較することによって、冷却水又は試料の漏れを検出するように構成した。流量センサは、フェイスシールの配置される部分(フェイスシール部)への冷却水の供給流量と、フェイスシール部からの排出流量を検出すると、フェイスシールと回転軸が当接するフェイスシール部での冷却水又は試料の漏れを検出できる。
【0010】
本発明の他の特徴によれば、フェイスシールはロータの上下にそれぞれ設けられ、冷却水ラインは、上部のフェイスシール部に流入し、上部のフェイスシールを冷却した後に下部のフェイスシール部に流入し、流量センサは、上部のフェイスシール部への流入側と、下部のフェイスシール部からの流出側の冷却水ラインにそれぞれ設ける構造とした。また、これに加えて、上部と下部のフェイスシールの間にも流量センサを設けるとさらに好ましい。
【0011】
本発明のさらに他の特徴によれば、複数の流量センサの出力を比較して出力に差がある場合、表示装置などにアラームを表示したり、警告音を発するようにして作業者に注意を喚起するようにした。さらに、複数の流量センサの出力に差がある場合、試料の漏れか冷却水の漏れかを判定し、その結果を表示するようにした。この際、試料循環手段による試料の供給、及び/又は、冷却水の循環を、自動的に停止させる機能を設けた。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、冷却水ラインに、冷却水の流量を検出する流量センサを複数設け、複数の流量センサの出力を比較するので、冷却水又は試料の漏れを検出することができる。
【0013】
請求項2の発明によれば、フェイスシール部への冷却水の供給流量と、フェイスシール部からの排出流量を検出するので、フェイスシール部において、冷却水又は試料の漏れが発生しているか否かを検出することができる。
【0014】
請求項3の発明によれば、流量センサは、上部のフェイスシール部への流入側と、下部のフェイスシール部からの流出側の冷却水ラインにそれぞれ設けられるので、上部と下部のフェイスシール部での冷却水又は試料の漏れを検出することができる。
【0015】
請求項4の発明によれば、流量センサは、上部のフェイスシール部への流入側と、上部と下部のフェイスシール部の間と、下部のフェイスシール部からの流出側の冷却水ラインにそれぞれ設けられるので、冷却水又は試料の漏れを検出するだけでなく、それが上部と下部のいずれのフェイスシール部で発生したかも検出できる。
【0016】
請求項5の発明によれば、複数の流量センサの出力を比較して出力に差がある場合、アラームを発するので、作業者は冷却水又は試料の漏れを早期に認識することができる。
【0017】
請求項6の発明によれば、連続遠心分離機が試料の漏れか冷却水の漏れかを判定し、その結果を表示するので、作業者は漏れの詳細内容を早期に認識することができる。
【0018】
請求項7の発明によれば、複数の流量センサの出力を比較して出力に差がある場合、試料循環手段による試料の供給、及び/又は、冷却水の循環を停止させることができるので、コンタミネーションの拡大を防止することができる。
【0019】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を、図1〜4を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態による連続遠心分離機の全体を示す斜視図であり、図2は遠心分離部100の断面図であり、図3は下部回転支持部105の断面図であり、図4は冷却水ラインを示す図である。
【0021】
図1において、本実施形態に係る連続遠心分離機1は、遠心分離部100と制御装置部200とで構成され、遠心分離部100と制御装置部200の間が配線・配管群50で接続される。
【0022】
遠心分離部100は、遠心室となる円筒状のチャンバ101と、チャンバ101を支持するベース102と、チャンバ101の内部に出し入れ自由に収容されて高速回転するロータ103と、チャンバ101の上部に配置されてロータ103を吊り下げた状態でこれを回転駆動する上部駆動部104と、チャンバ101の下部に取り付けられ下部軸受部等で構成される下部回転支持部105と、前記上部駆動部104を上下および前後方向に移動させるためのリフト106を有する。ロータ103の軸方向上下には、内部に貫通穴を有する2本の回転軸たるアッパーシャフト141とロアシャフト151が設けられる。
【0023】
制御装置部200は、後述する制御部や、冷却するための冷却水を循環させる冷却水循環手段、冷却水を冷却する手段等を有する。制御装置部200の上部には、作業者が作業の指示入力をしたり、作業者に様々な情報を表示するための操作パネル205が設けられる。操作パネル205は、各種ボタンや調整ダイヤルと、LED表示器の組み合わせであっても良いし、タッチパネル式の液晶ディスプレイであっても良い。
【0024】
図2は遠心分離部100の構成の詳細を示す断面図であり、連続遠心分離機1は、液体試料が貯蔵された試料タンク110と、試料タンク110に保有された液体試料を遠心機本体へ注入するための試料供給ポンプ111と、連続遠心分離によって上部駆動部104を経由して排出された上澄み液を回収するための試料回収タンク112を有する試料循環手段を有する。さらに、連続遠心分離機1は、チャンバ101と、チャンバ101を保持するベース102と、上部駆動部104と、下部回転支持部105を有する。ベース102は、図示せぬ床にボルト107によって固定される。ベース102の上部中心付近には、回転支持穴が形成され、下部回転支持部105がベース102に取り付けられるようになっている。
【0025】
試料タンク110に入れられた液体試料は、試料供給ポンプ111によって下部回転支持部105からロアシャフト151を経由してロータ103の内部に導入され、高速回転するロータ103によって遠心分離され、遠心分離によって半径方向の内側に貯まった上澄み液がアッパーシャフト141を経由して上部駆動部104内を通過し、試料回収タンク112へと回収される。試料供給ポンプ111は、図示しない信号線により後述する制御部に接続され、制御部によりその供給が制御される。
【0026】
ロータ103は、円筒型のロータボディ131と、ロータボディ131の上下にねじ込み式で取り付けられる上下のロータカバー132a、132bを有する。ここで、上下のロータカバー132a、132bの軸中心には試料通過穴がそれぞれ形成される。ロータカバー132aは上部駆動部104のアッパーシャフト141が取り付けられる構造であり、ロータカバー132bは下部回転支持部105のロアシャフト151が取り付けられる構造である。上部駆動部104に含まれるモータの駆動によってアッパーシャフト141が高速回転され、アッパーシャフト141に取り付けられるロータ103と、ロータ103に取り付けられるロアシャフト151が共に高速回転する。
【0027】
アッパーシャフト141とロアシャフト151の軸中心には、試料通過穴がそれぞれ貫通し、これらの試料通過穴は、ロータカバー132a、132bに形成された試料通過穴に連通する。アッパーシャフト141とロアシャフト151のロータとは反対の端部は、それぞれ上部フェイスシール142と下部フェイスシール152(図3)と接触する。
【0028】
次に、図3を用いて下部回転支持部105の冷却構造を説明する。上部フェイスシール142の冷却構造については、下部フェイスシール152の冷却構造と上下が逆になるだけで、基本的に同じ構造なので説明を省略する。
【0029】
液体試料ライン160は、図3において下部から上部に、点線矢印160a、160bで示す方向に試料を流す。冷却水ライン170は、左下から実線矢印170aの方向に流入し、液体試料ライン160と略平行して上部に流れ、冷却水室155に流入する。冷却水室155の中央、下部には、下部フェイスシール152が設けられる。下部フェイスシール152は、スプリング154のバネ圧によって常に一定の圧力で上方向に保持されるシールホルダ153によって保持される。つまり、下部フェイスシール152はロアシャフト151の先端に常に一定の圧力で当接される。ここでロアシャフト151の先端は半球面上の形状であって、下部フェイスシール152はロアシャフト151に対応する形状である。図3から理解できるように、下部フェイスシール152の上部と、ロアシャフト151の先端部は冷却水室155の内部に位置する。
【0030】
連続遠心分離機1の運転中は、ロータ103が高速で回転し、ロータ103に取り付けられたロアシャフト151も同様に高速回転する。一方ロアシャフト151に当接する下部フェイスシール152は非回転の状態なので、ロアシャフト151と下部フェイスシール152の当接面は高温になる。
【0031】
ロアシャフト151と下部フェイスシール152の当接面は分離サンプルである試料が通過する試料ライン160であって、一般的に分離するサンプルは例えば4℃程度に冷却されている場合が殆どであり、必要以上に分離サンプルが高温になることを避けなければならない。さらに、ロアシャフト151と下部フェイスシール152の寿命を長く持たせることも重要な課題である。これらの課題をクリアするために連続遠心分離機1は2つのフェイスシールを冷却水によって冷却する冷却水ライン170を持ち、下部回転支持部105においてはロアシャフト151と下部フェイスシール152の当接部を冷却水室155で囲むことにより強力に冷却するようにしている。矢印170bの方向に流れて冷却水室155を出た冷却水は、冷却ライン170から矢印170cの方向に流出する。
【0032】
図3に示すように、ロアシャフト151と下部フェイスシール152はスプリング154のバネ圧によって当接されてシールされる構造であるが、以下にあげるような不具合によってシール不良が生じ、サンプルたる試料が冷却水ライン170に漏れる、または冷却水が試料ライン160に漏れる場合がある。
考えられるシール不良の要因
・フェイスシールの寿命(通常40〜50時間で交換)
・ロアシャフトの寿命(通常500時間で交換)
・フェイスシールの取り付け不良
・部品の不良
・試料ライン160または冷却水ライン170の詰まり
【0033】
上記のような要因によってシール不良が発生すると、試料が冷却水ライン170に漏れることによる試料の損失、試料ライン160と冷却水ライン170の混合(コンタミネーション)が起こってしまう。そこで本実施形態では、図4に示すように、冷却水ライン170の供給側と排出側にそれぞれ流量センサ171と172を設け、このような不具合が発生した場合であっても、いち早く漏れを検出し、リスクを最小限にとどめるようにした。
【0034】
図4において、冷却水の循環ラインについて説明する。制御装置部200側に設けられたガラス製の三角フラスコである冷却水容器173に入れられた冷却水は、冷却水循環ポンプ174によって送出され、熱交換器175を通過することによって冷却される。この冷却によって、冷却水は一定温度に保たれる。次に冷却水は、制御装置部200側から遠心分離部100側に供給されるが、冷却水の流量センサ171は、上部駆動部104の入力部に設けられる。流量センサ171を通過したあと、冷却水はすぐに上部駆動部104に流入し、上部フェイスシール142を冷却した後、下部回転支持部105に送られる。そして、下部回転支持部105の下部フェイスシール152を冷却した後、冷却水は遠心分離部100側から制御装置部200側の冷却水容器173に戻ってくるが、この下部回転支持部105の排出位置に流量センサ172を設ける。つまり、冷却水を循環させることによって、フェイスシール142および152を連続的に冷却する構造としている。
【0035】
冷却水ライン170は閉ループのラインであるので、正常時には、流量センサ171が検出する遠心分離部100への供給流量と、流量センサ172が検出する遠心分離部100からの排出流量は同じである。供給側と排出側の流量が異なる場合は試料の漏れまたは冷却水の漏れが発生していると考えられ、2つの流量センサによって以下のような不具合検出が可能である。
(a)供給流量<排出流量・・・試料が冷却水ライン170に漏れている。
(b)供給流量>排出流量・・・冷却水が試料ライン160に漏れている。
(c)供給流量と排出流量が流れていない・・・冷却水ライン170が詰まっている。
【0036】
流量センサ171、172の検出信号は、図示しない信号ケーブルによって制御装置部200内の制御部201に伝えられる。制御部201は2つの流量センサ171、172の信号から上記のような冷却水ライン170の流量の異常が無いかを判断し、異常があると判断した場合は、通信ケーブル202を介して操作パネル205にそのアラーム情報を表示するとともに、例えば、ロータ103の回転を停止させる。
【0037】
また、制御部201は、操作パネル205にアラーム情報の表示とロータ103の回転を停止する制御に加え、試料供給ポンプ111および冷却水循環ポンプ174を制御する機能を備える。つまり、上記(a)の「試料が冷却水ライン170に漏れている」と判断した場合は、試料の損失を最小限にとどめるために速やかに試料供給ポンプ111の運転を停止させる。また、上記(b)の「冷却水が試料ライン160に漏れている」と判断した場合は、試料と冷却水のコンタミネーションを最小限にとどめるために速やかに冷却水循環ポンプ174の運転を停止させる。
【0038】
次に、図5、6を用いて本発明の第2の実施形態を説明する。図5(1)は、3つの流量センサ181、182、183を、冷却ライン170に配置する例を示すブロック図であり、図5(2)は、2つの流量センサ182、183を、冷却ライン170に配置する例を示すブロック図である。図6は、図5(1)又は(2)に示した流量センサを用いて、試料又は冷却水の漏れを検出する制御の流れを示すフローチャートである。
【0039】
図5(1)は、3つの流量センサ181、182、183を、冷却ライン170に配置する実施形態を示すブロック図である。この形態では、図4で示した実施形態と同じように、上部駆動部104の直前に流量センサ181を、下部回転支持部105の直後の冷却ラインに流量センサ183を設け、さらに3つ目の流量センサ182を上部駆動部104と下部回転支持部105の間に設ける。この構成では、流量センサ181と182から上部駆動部104への供給流量及び排出流量が求めることができ、流量センサ182と183から下部回転支持部105への供給流量及び排出流量を求めることができる。
【0040】
図5(2)は、(1)の例に比べて上部駆動部104の直前の流量センサ181を、省略したものである。通常、制御装置部200からの冷却ラインへの冷却水の送出は精度が高く、例えば400ml/分で送出される。従って、制御装置部200から上部駆動部104に至る冷却ラインに水漏れがない限り、上部駆動部104には同量の冷却水が送出されるから、図5(1)の流量センサ181を省いて、その検出値として送出値を用い、流量センサ182の出力とともに上部駆動部104への供給流量及び排出流量を求めることができる。下部回転支持部105への供給流量及び排出流量は、流量センサ182と183の出力値から求めることができる。このようにして、2つの流量センサ182と183で上部駆動部104と下部回転支持部105における漏れの検出を行うことができる。
【0041】
図6は、図5(1)又は(2)に示した流量センサを用いて、試料又は冷却水の漏れを検出する検出制御の手順を示すフローチャートである。図6で示す制御は、例えば、マイクロプロセッサを有する制御部201においてプログラムを実行することによりソフトウェア的に実行できる。
【0042】
最初にステップ601で、連続遠心分離機1の運転終了が指示されたかどうかをチェックし、終了ならば冷却水の検出制御を終了し、終了でなければステップ602に移る。ステップ602において、制御部201は複数の流量センサ181〜183からの信号を取得する。取得する間隔、即ちサンプリング間隔は、例えば10msである。流量センサ181〜183は、流量に応じた電気信号(電圧値)を出力し、図示しないA/D変換器により電圧値がデジタル値に変換されて制御部201に入力される。制御部201は、10ms毎に変換されたデジタル値を図示しないメモリに格納し、それぞれ直近10回分の平均値を取ることにより検出値を算出する。尚、サンプリングの仕方や算出の方法は、公知のさまざまな手法を用いることができる。
【0043】
次に、ステップ603において、制御部201は、複数の流量センサ181〜183の出力値が一致しているかどうかを判断する。その判断は、例えば、入力センサの平均値に対して、出力センサの平均値が10回連続して許容範囲外のときに、一致していないとする。図5(2)の構成においては、省略した流量センサ181の出力値が、設定した冷却水の送出値であると仮定して判断する。ステップ603で、複数の流量センサの出力値が一致していれば冷却水の漏れが生じていないのでステップ601に戻り、一致していなければステップ604に進む。
【0044】
次に、ステップ604において、漏れの生じている位置と方向を検出する。この検出は、複数の流量センサ181〜183の出力を比較することにより算出できる。次に、ステップ605において、上部駆動部104における漏れの発生かどうかを判断し、上部駆動部104における漏れの場合、ステップ606で試料が漏れているのか、冷却水が漏れているのかを判断する。試料の漏れの場合、即ち、上部駆動部104において試料が冷却水に漏れている場合は、「試料分離はOK、上清が冷却水ラインに流れ出る」という状況であるので、ステップ608において、その旨のエラーメッセージ(A)を操作パネル205に表示し、ステップ613において、エラーメッセージに対する作業者からの操作指示を取得し、終了であれば冷却ラインを停止すると共に連続遠心分離機1の運転を停止する。上部駆動部104の漏れの場合は、遠心分離によって必要とされる試料自体には影響がないため、場合によっては、そのまま遠心分離を続行することが可能である。次に、ステップ614において作業者による指示が終了でなければ、ステップ601に戻り遠心分離を続行する。
【0045】
ステップ606で冷却水が漏れている場合、即ち、上部駆動部104において冷却水が試料に漏れている場合は、「試料分離はOK。冷却水が上清と共に廃棄される」という状況であるので、ステップ609において、その旨のエラーメッセージ(B)を操作パネル205に表示する。この場合、そのままにしておくと、冷却水が無くなってしまうことにもなりかねない。また、冷却水の殆どが試料(上清)ラインに漏れてしまうと下部回転支持部105に冷却水がまわらなくなる恐れがある。さらに、冷却水の混合により試料回収タンク112がオーバーフローする可能性もある。
【0046】
次に、ステップ613において、エラーメッセージに対する作業者からの操作指示を取得し、終了であれば冷却ラインを停止すると共に連続遠心分離機1の運転を停止する。尚、エラーメッセージには、エラーの内容と共に、漏れが生じている方向と共に、漏れの量を数値で示すようにしても良い。漏れの量が数値で示されれば、作業者はすぐに運転を停止しなければならない状況か否か、判断がし易くなる。次に、ステップ614において作業者による指示が運転終了でなければ、ステップ601に戻り遠心分離を続行する。
【0047】
再びステップ605において、下部回転支持部105における漏れと判断された場合はステップ607に進み、試料が漏れているのか、冷却水が漏れているのかを判断する。試料の漏れの場合、即ち、下部回転支持部105において試料が冷却水に漏れている場合は、「ロータ内に残っている試料の分離はOK、試料が冷却水ラインに流れる(試料の損失)」という状況であるので、ステップ610において、その旨のエラーメッセージ(C)を操作パネル205に表示し、ステップ611で液体試料ラインの送出を自動的に停止する。ここで、液体試料ラインの送出を停止するのは、分離前の試料の損出につながるためである。次に、ステップ613において、作業者によるエラーメッセージに対する確認を取得し、運転終了であれば冷却ラインを停止すると共に連続遠心分離機1の運転を停止する。
【0048】
ステップ607で冷却水が漏れている場合、即ち、下部回転支持部105において冷却水がサンプルに漏れている場合は、「ロータ内に冷却水が混入。」という状況であるので、ステップ612において、その旨のエラーメッセージ(D)を操作パネル205に表示し、冷却ラインを停止すると共に連続遠心分離機1の運転を即座に停止する。尚、通常、冷却水には純水を使用しているが、構造上若干オイルが混じるときがあるので、そのような場合には、エラーメッセージの表示と共に液体試料ラインの送出を自動的に停止するようにしても良い。
【0049】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、複数の流量センサを用いて冷却水又は試料の漏れを精度良く検出できるので、連続遠心分離機のフェイスシール部のシール不良によって起こる試料の損失や、冷却水とのコンタミネーションを最小限にとどめることが可能となる。また、冷却水又は試料の漏れを作業者に早期にアラームを発することができるので、適切な対処が可能となる。
【0050】
以上、本発明を示す実施形態に基づき説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、流量センサを用いた流量の検出の方法も、サンプリング間隔や比較の方法などは公知の種々の方法を用いて実行することができる。また、エラーメッセージの表示仕方や内容、表示のタイミングについては適宜設定するようにしても良い。エラーメッセージの表示後に、試料の損失や冷却水とのコンタミネーションの度合いに応じて、装置を自動停止させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態による連続遠心分離機の全体を示す斜視図である。
【図2】図1の遠心分離部100の断面図である。
【図3】図1の下部回転支持部105の断面図である。
【図4】本発明の実施形態による連続遠心分離機の冷却水の循環ラインを示す図である。
【図5】(1)は、3つの流量センサ181、182、183を、冷却ライン170に配置する例を示すブロック図であり、(2)は、2つの流量センサ182、183を、冷却ライン170に配置する例を示すブロック図である。
【図6】図5(1)又は(2)に示した流量センサを用いて、試料又は冷却水の漏れを検出する制御の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0052】
1 連続遠心分離機 50 配管群 100 遠心分離部
101 チャンバ 102 ベース 103 ロータ
104 上部駆動部 105 下部回転支持部 106 リフト
107 ボルト 110 試料タンク 111 試料供給ポンプ
112 試料回収タンク 131 ロータボディ 132 ロータカバー
141 アッパーシャフト 142 上部フェイスシール 151 ロアシャフト
152 下部フェイスシール 153 シールホルダ 154 スプリング
160 試料ライン 170 冷却水ライン
171、172、181、182、183 流量センサ 173 冷却水容器
174 冷却水循環ポンプ 200 制御装置部 201 制御部
202 通信ケーブル 205 操作パネル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を分離するための円筒状のロータと、該ロータの軸方向上下に連結され内部に貫通穴を有する2本の回転軸と、
該回転軸の貫通穴と連通する貫通穴を有しスプリングにより定圧で回転軸に当接されるフェイスシールと、
該フェイスシールおよび前記回転軸の連通した貫通穴から前記ロータに試料を連続的に供給および排出する試料循環手段と、
前記フェイスシールを冷却するための冷却水を循環させる冷却水ラインを備えた連続遠心分離機において、
前記冷却水ラインに、冷却水の流量を検出する流量センサを複数設け、
前記複数の流量センサの出力を比較することによって、前記冷却水又は前記試料の漏れを検出することを特徴とする連続遠心分離機。
【請求項2】
前記流量センサは、フェイスシール部への冷却水の供給流量と、前記フェイスシール部からの排出流量を検出することを特徴とする請求項1に記載の連続遠心分離機。
【請求項3】
前記フェイスシールは前記ロータの上下にそれぞれ設けられ、
前記冷却水ラインは、上部のフェイスシール部に流入し、上部のフェイスシールを冷却した後に下部のフェイスシール部に流入し、
前記流量センサは、前記上部のフェイスシール部への流入側と、前記下部のフェイスシール部からの流出側の冷却水ラインにそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の連続遠心分離機。
【請求項4】
前記フェイスシールは前記ロータの上下にそれぞれ設けられ、
前記冷却水ラインは、上部のフェイスシール部に流入し、上部のフェイスシールを冷却した後に下部のフェイスシール部に流入し、
前記流量センサは、前記上部のフェイスシール部への流入側と、前記上部と下部のフェイスシール部の間と、前記下部のフェイスシール部からの流出側の冷却水ラインにそれぞれ設けられることを特徴とする請求項2に記載の連続遠心分離機。
【請求項5】
前記複数の流量センサの出力を比較して該出力に差がある場合、アラームを発することを特徴とする請求項3又は4に記載の連続遠心分離機。
【請求項6】
前記複数の流量センサの出力に差がある場合、前記試料の漏れか前記冷却水の漏れかを判定し、その結果を表示することを特徴とする請求項5に記載の連続遠心分離機。
【請求項7】
前記複数の流量センサの出力を比較して該出力に差がある場合、前記試料循環手段による試料の供給、及び/又は、前記冷却水の循環を停止させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの一項に記載の連続遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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