説明

連続鋳造による鋳片の製造方法および製造装置

【課題】低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片の冷却時における表面割れの防止と曲がり防止とを図りながら、熱間圧延時に表面割れを発生し難い鋳片を製造する。
【解決手段】連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片6の矯正完了位置であるサポートロール9−1の設置位置から連続鋳造機11の機端位置であるサポートロール9−3の設置位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対の間の少なくとも1区間において、4本以上の冷却用ノズル15−1〜15−4により構成される冷却用ノズル列12から、連続鋳造鋳片6の表面全周に冷却水を噴射して、連続鋳造鋳片6を周方向へ均一に冷却し、冷却された連続鋳造鋳片6を所定の長さに切断して鋳片13を製造する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造による鋳片の製造方法および製造装置に関し、具体的には、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片に対して適用可能であって、連続鋳造鋳片の冷却時における表面の割れ防止と曲がり防止とを図りながら、この連続鋳造鋳片を切断することにより得られるとともに熱間圧延時に表面割れを発生し難い鋳片を製造する方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、湾曲型連続鋳造機1により連続鋳造を行って鋳片2を製造する状況を模式的に示す説明図である。
同図に示すように、鋳片2は、図示しない取鍋からタンディッシュ3に注入された溶鋼4を水冷鋳型5に注入し、鋳型5内で凝固シェルを形成することにより内部に未凝固部を有する連続鋳造鋳片6とし、2次冷却スプレー帯7でさらに連続鋳造鋳片6を冷却し、複数組の上下一対のサポートロール9からなる矯正帯8により連続鋳造鋳片6の湾曲形状を矯正しながらこれらサポートロール9により案内してサポートロール9の下流側へ引き抜き、切断機10により連続鋳造鋳片6を所定の長さに切断することによって、製造される。このようにして製造された鋳片2は、加熱炉に装入されて所定の温度に加熱された後に、圧延機で鋼片へと熱間圧延される。
【0003】
しかし、冷却時の連続鋳造鋳片6や熱間圧延時の鋳片2には表面割れが発生することがある。表面割れの発生状況は鋼種の影響も受けるため、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種などの幅広い鋼種からなる鋳片の表面割れを大幅に低減できる製造方法が望まれている。
【0004】
鋳片を再加熱して熱間圧延した後に発生する表面割れを防止するための対策の一例として、3次冷却と称される手段が広く知られている。3次冷却は、連続鋳造により製造された連続鋳造鋳片6を切断して所定の長さを有する鋳片2とした後に、鋳片2を連続鋳造機1外において冷却することによって、鋳片2の表面温度をAr変態点より高い温度からAr変態点以下の温度まで低下させ、鋳片2の表面組織を変態・改善することによって、熱間圧延後の鋼片やこの鋼片を素材とする製品における表面割れの発生を防止する冷却方法である。
【0005】
特許文献1には、連続鋳造されたブルームを所定の長さに切断した後、連続鋳造機外に設置されたブルームクーラーを用いて、ブルームをAr変態点直上の温度域から3次冷却するに際し、ブルームの上面、側面および下面それぞれの水量密度比率を変更して冷却することによって、連続鋳造ブルームの冷却時に発生する割れを防止する発明が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、連続鋳造により製造され所定の長さに切断された鋳片を3次冷却する際に、その表面温度がAr変態点より50〜150℃高い温度まで冷却した段階で、内部が赤熱状態を維持しながら表面組織がベイナイト組織となるように、急速冷却し、その後炉内加熱して熱間成形することによって、窒素添加鋼や鉛添加鋼に対しても十分に鋳片の表面疵を低減する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−1719号公報
【特許文献2】特開平6−88125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2により開示された発明では、いずれも、切断後の鋳片を3次冷却するため、3次却時に鋳片に曲がりが発生するおそれがある。この理由を説明する。
3次冷却は、切断した鋳片をAr変態点直上の温度域から冷却して、熱間圧延前に行う再加熱時の再変態を含めた組織微細化(γ粒微細化)を狙うものであり、通常、スプレー水噴射や水槽浸漬法により行われる。しかしながら、連続鋳造鋳片を所定の長さに切断した後に切断された鋳片を冷却することから、必然的に冷却時の鋳片は何ら拘束(サポート)されていないこととなる。一方、鋳片を均一に冷却することはかなり難しい。このため、鋳片に対する冷却が不均一な場合には、拘束されずに冷却された鋳片が長手方向へ曲がってしまう。
【0009】
冷却時の鋳片が曲がると、その後の搬送に支障をきたす。例えば、ロールやチェーンコンベアーなどで搬送する時に下向きに曲がると、鋳片がロールやガイドに突き当たる。また、鋳片に曲がりが存在すると、加熱炉内でも鋳片がガイドに突き当たる。
【0010】
特許文献1、2により開示された発明では、冷却時の鋳片の曲がりの発生を防ぐ必要があることから、鋳片を強く冷却することができず、鋳片の表面割れの防止効果をある程度は得られるものの、鋳片の表面割れを十分に防止することができない。このように、3次冷却は、鋳片の表面割れの進展防止には確かに効果が認められるものの、表面割れの防止のための表層組織制御を実現できる程度に強冷却化すると鋳片に曲がりが誘発されるため、強冷却を行うことが難しい。このため、3次冷却では、鋳片の表面割れの進展防止、すなわち表面割れの程度の緩和を図ることはできても、表面割れの発生そのものを防止することはできないのが現状であった。
【0011】
また、特に、3次冷却は、鋳片に曲がりの発生が懸念されるために強冷却できないことから、一般的に、鋳片に対する冷却ゾーンを、鋳片の搬送ロールの間隔よりも広く設定して行われる。このため、搬送ロールにより支持されている鋳片の部位は、冷却スプレーによる冷却が十分に行われず、鋳片の表面が復熱する。そして、この部位が搬送ロールを通過すると、復熱した鋳片の表面は再び冷却スプレーにより冷却されることになる。このように、3次冷却では、鋳片には冷却および復熱が繰り返される。焼入れ性の高い鋼種からなる鋳片には、このような熱履歴により熱応力割れが発生し易くなる。このため、焼入れ性の高い鋼種からなる鋳片には、従来の3次冷却を適用することが困難であり、割れが発生し易い焼入れ性の高い鋼種を含む幅広い鋼種からなる鋳片の、熱間圧延時の表面割れを安定的に防止することは難しかった。
【0012】
このため、3次冷却以外の手段によって、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる鋳片の、冷却時における鋳片の表面割れの防止と鋳片の曲がり防止とを図りながら、鋳片を安定して製造できる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特許文献1、2により開示された発明のように、連続鋳造後に所定の長さに切断された鋳片を拘束することなく3次冷却したのでは、鋳片の曲がりの発生を解消することができないとともに、鋳片を強冷却して表面割れの発生を防止できない。
【0014】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、図4に示す通常の連続鋳造機1に既設の複数組の上下一対のサポートロール9を用いて連続鋳造鋳片6を拘束しながら、連続鋳造機1内の連続鋳造鋳片6に対して3次冷却を行い、その後に冷却された連続鋳造鋳片6を切断して鋳片2を製造すること、具体的には、連続鋳造機1において矯正帯8から連続鋳造機1の機端(最下流の上下一対のサポートロール9の設置位置)までの区間において複数組の上下一対のサポートロール9により連続鋳造鋳片6が拘束される区間において連続鋳造鋳片6をスプレーにより均一に強冷却することによって連続鋳造鋳片6の曲がりの発生、および表面割れをいずれも防止し、その後に切断機10により所定の長さに切断して鋳片2を製造するという製造工程を採用すれば、連続鋳造鋳片6を拘束しながら強冷却できるので、鋳片2に対して行われる3次冷却により発生していた鋳片2の曲がりを解消でき、従来の技術では困難とされていた焼入れ性の高い鋼種からなる鋳片の熱間圧延時の表面割れの発生を防止しながら、曲がりが生じない鋳片を製造できることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。
【0015】
本発明は、連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片の矯正完了位置から連続鋳造機の機端位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対の間の少なくとも1区間において、4本以上の冷却用ノズルにより構成される冷却用ノズル列から、前記連続鋳造鋳片の表面、望ましくは表面全周に冷却水を噴射して、連続鋳造鋳片を周方向へ望ましくは均一に冷却し、冷却された該連続鋳造鋳片を所定の長さに切断して鋳片を製造することを特徴とする連続鋳造による鋳片の製造方法である。
【0016】
別の観点からは、本発明は、連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片の矯正完了位置から連続鋳造機の機端位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対により区画される少なくとも1区間に配置されて、連続鋳造鋳片の表面、望ましくは表面全周に冷却水を噴射して連続鋳造鋳片を周方向へ望ましくは均一に冷却するための、4本以上の冷却用ノズルにより構成される冷却用ノズル列と、この冷却用ノズル列よりも鋳造方向の下流に配置されて、冷却用ノズル列により冷却された連続鋳造鋳片を所定の長さに切断して鋳片を製造する切断機とを備えることを特徴とする連続鋳造による鋳片の製造装置である。
【0017】
これらの本発明では、冷却用ノズル列が鋳造方向へ3列以上配置されること、および/または、4本以上の冷却用ノズルが鋳造方向へ100〜200mmのノズル間隔で配置されることが好ましい。
【0018】
これらの本発明では、連続鋳造鋳片が、横断面形状が矩形であるブルーム、または横断面形状が円形である丸ビレットであることが好ましい。
これらの本発明では、連続鋳造鋳片に対する冷却水の全周合計流量が200〜1000L/minであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片の冷却時における表面割れの防止と曲がり防止とを図りながら、熱間圧延時に表面割れを発生し難い鋳片を製造することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る鋳片の製造装置の構成を概念的に示す説明図である。
【図2】図2は、本発明に係る製造装置の冷却ノズル列により連続鋳造鋳片を冷却する状況を概念的に示す説明図である。
【図3】図3は、本発明に係る製造装置の冷却ノズル列を構成する冷却ノズルの配置の一例を概念的に示す斜視図である。
【図4】図4は、湾曲型連続鋳造機により連続鋳造を行って鋳片を製造する状況を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る製造装置および製造方法を、添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る鋳片13の製造装置11の構成を概念的に示す説明図である。同図に示すように、本発明に係る製造装置11は、冷却ノズル列12と切断機10とを備えるので、これらの構成要素を順次説明する。なお、以降の説明では、図4と同一の部分には同一の図中符号を付することにより、重複する説明を適宜省略する。
【0022】
[冷却ノズル列12]
図1に示すように、製造装置11により鋳片13が製造される。鋳片13は、図示しない取鍋からタンディッシュ3に注入された溶鋼4を水冷鋳型5に注入し、水冷鋳型5内で凝固シェルを形成することにより内部に未凝固部を有する連続鋳造鋳片6とし、2次冷却スプレー帯7でさらに連続鋳造鋳片6を冷却し、3組の上下一対のサポートロール(9−1、9−1)、(9−2、9−2)、(9−3、9−3)からなる矯正帯8により連続鋳造鋳片6の湾曲形状を矯正しながら、これらサポートロール(9−1、9−1)、(9−2、9−2)、(9−3、9−3)により案内して下流側へ引き抜き、切断機10により連続鋳造鋳片6を所定の長さに切断することによって、製造される。このようにして製造された鋳片13は、図示しない加熱炉に装入されて所定の温度に加熱された後に、同じく図示しない圧延機により鋼片へと熱間圧延される。
【0023】
冷却ノズル列12は、連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片6の矯正完了位置である、上下一対のサポートロール(9−1、9−1)の設置位置から連続鋳造機1の機端位置である、上下一対のサポートロール(9−3、9−3)の設置位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対により区画される区間(9−1〜9−2、9−2〜9−3)のうちの少なくとも1区間(9−1〜9−2)に配置される。以降の説明では、冷却ノズル列12が一の区間(9−1〜9−2)に配置される場合を例にとるが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の一の区間(9−2、9−3)にも配置されていてもよい。
【0024】
冷却ノズル列12は、湾曲形状から真直な形状に矯正された連続鋳造鋳片6に対して、切断機10によるトーチ切断を行う前に3次冷却を行うために、配置される。製造装置11では、冷却ノズル列12による冷却を開始される前後の連続鋳造鋳片6の上面および下面を、上下一対のサポートロール(9−1、9−1、9−2、9−2)により押さえることによって連続鋳造鋳片6を拘束し、3次冷却時における連続鋳造鋳片6の曲がりの発生を防止する。
【0025】
なお、上述したように、連続鋳造鋳片6を切断機10により切断した後の鋳片2に対して行われる従来の3次冷却では、鋳片2には冷却および復熱が繰り返されるため、焼入れ性の高い鋼種からなる鋳片2には、この熱履歴により熱応力割れが発生し易くなり、従来の3次冷却を適用することが事実上困難であった。
【0026】
しかし、冷却ノズル列12による連続鋳造鋳片6の冷却は、3次冷却ゾーン14の前後において連続鋳片鋳片6の上面および下面を上下一対のサポートロール(9−1、9−1、9−2、9−2)により押さえることによって連続鋳造鋳片6を拘束するとともに、3次冷却ゾーン14内にはサポートロールが一切配置されない。
【0027】
このため、製造装置11は、連続鋳造鋳片6の矯正完了後から連続鋳造機1の機端位置である、上下一対のサポートロール(9−3、9−3)の設置位置までの区間に存在する連続鋳造鋳片6をサポートロールで拘束支持しながら、連続鋳造鋳片6の外面(連続鋳造鋳片6の横断面が矩形である場合には4面全て、横断面が円形である場合には全面)に冷却水を噴射することができ、冷却ノズル列12による冷却時の連続鋳造鋳片6の曲がりを防止することができるとともに、冷却ノズル列12による冷却中の連続鋳造鋳片6は上述した復熱を含む熱履歴を受けない。
【0028】
このため、製造装置11は、焼入れ性の高い鋼種からなる連続鋳造鋳片6であっても、熱応力割れの発生を安定的に抑制することが可能になる。
3次冷却ゾーン14内にサポートロールが配置されないようにするためには、冷却ノズル列12の鋳込み方向へのノズル間隔を短く調整して、3次冷却ゾーン14における隣接するサポートロール(9−1、9−1)および(9−2、9−2)のピッチが広くならないようにすることが好ましい。
【0029】
また、冷却ノズル列12による連続鋳造鋳片6の冷却は、連続鋳造鋳片の矯正完了位置から〜連続鋳造機の機端の範囲において行われるため、連続鋳造鋳片6を切断した後に連続鋳造機1外で行われる従来の3次冷却よりも、連続鋳造ラインのより上流側で行われることになる。このため、冷却ノズル列12による3次冷却の開始温度は、従来の3次冷却の開始温度よりも高くなり、鋳片の冷却に対して有利であるAr変態点以上からの冷却をより容易に実現することができる。さらに、3次冷却が連続鋳造鋳片6の切断の前に完了することから、連続鋳造鋳片6の切断後に鋳片を別途冷却するための工程(従来の3次冷却を実施するための工程)を設ける必要がなくなる。このため、連続鋳造工程全体のタクトタイム、および連続鋳造機11の長さをいずれも短縮できる。
【0030】
図2は、本発明に係る製造装置11の冷却ノズル列12により連続鋳造鋳片6を冷却する状況を概念的に示す説明図であって、冷却中の連続鋳造鋳片6の進行方向に垂直な断面を示す。
【0031】
図2に示すように、冷却中の連続鋳造鋳片6に発生する曲がりを抑制するために、冷却ノズル列による3次冷却は、連続鋳造鋳片6の表面の全周をできるだけ均一に外部から冷却することが望ましい。連続鋳造鋳片6として、横断面形状が矩形であるブルーム、または横断面形状が円形である丸ビレットが多用されることから、冷却ノズル列12は、4本以上の冷却用ノズル15−1、15−2、15−3、15−4から構成されることが望ましい。連続鋳造鋳片6の全周を冷却することにより組織の均一化を図ることができ、加熱時の熱応力むらを解消することができる。
【0032】
なお、図2に示すように、冷却用ノズル15−1、15−2は、連続鋳造鋳片6の幅方向に1個設けているが、連続鋳造鋳片6の幅方向の長さに応じて、この幅方向への冷却用ノズルの設置数を複数としてもよいことはいうまでもない。すなわち、本発明は、アスペクト比(長辺幅/短辺厚み)が1.6までの連続鋳造鋳片6に対して適用可能である。
【0033】
4本以上の冷却用ノズル15−1、15−2、15−3、15−4から構成される冷却ノズル列12を鋳造方向に複数列配置することによって、3次冷却ゾーン14における隣接する2つのサポートロール対(9−1、9−1)および(9−2、9−2)により区画される一区間において、連続鋳造鋳片6に曲がりのようなマクロな変形が生じない程度まで、特に焼き入れ性の高い鋼種からなる連続鋳造鋳片6の場合には2つのサポートロール対(9−1、9−1)および(9−2、9−2)を通過して復熱したとしても熱応力割れを発生させるほどの強い熱歪みが蓄積されない程度まで、連続鋳造鋳片6を十分に強冷却することが可能になる。
【0034】
図3は、本発明に係る製造装置11の冷却ノズル列12を構成する冷却ノズル15−1〜15−4の配置の一例を概念的に示す斜視図である。なお、図3では、冷却ノズル15−3は連続鋳造鋳片6の陰に隠れている。
【0035】
図3に例示するように、冷却ノズル列12は、3次冷却の冷却水量を同一とした場合、連続鋳造鋳片6の外面(連続鋳造鋳片6の横断面が矩形である場合には4面全て、横断面が円形である場合には全面)に冷却水を噴射するノズル15−1〜15−4を、鋳造方向へ3列以上有するが望ましい。ノズル15−1〜15−4を鋳造方向へ3列以上と配置することにより、ノズル15−1〜15−4を鋳造方向へ1列または2列配置する場合よりも、冷却条件に広い幅を持たせることができ、幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片6への適用が可能になり、連続鋳造鋳片6の表面割れの発生をより安定的に抑制できるからである。
【0036】
例えば、ノズル15−1〜15−4を鋳造方向へ1列または2列配置し、連続鋳造鋳片6を強冷却するために大流量のノズル15−1〜15−4を使用すると、弱冷却する場合の低流量(200L/minを下回る冷却水量)では流量制御できなくなる恐れがある。
【0037】
また、実施例(表2、3)を参照しながら後述するように、ノズル15−1〜15−4を鋳造方向へ複数列設置する際における、鋳造方向へのノズル間隔を100mm以上200mm以下とすることにより、連続鋳造鋳片6の熱応力割れの発生をさらに安定的に抑制できるために、望ましい。ノズル間隔が200mmを超えると、各列のノズル15−1〜15−4による冷却の間に連続鋳造鋳片6が復熱し、焼き入れ性の高い鋼種からなる連続鋳造鋳片6は、2つのサポートロール対(9−1、9−1)および(9−2、9−2)との接触による冷却と、2つのサポートロール対(9−1、9−1)および(9−2、9−2)間での復熱との繰り返しによって、熱応力割れを発生するおそれがあるからである。特に、設備的な取り合いが許容される場合には、ノズル15−1〜15−4を鋳造方向へ3列以上、50mm以上100mm未満のノズル間隔で配置することが望ましい。
【0038】
冷却ノズル列12は、連続鋳造鋳片6の表面全周に、全周合計冷却水流量を200〜1000L/min以上として冷却水を噴射して連続鋳造鋳片6を周方向へ均一に冷却することが望ましい。
【0039】
製造装置11における冷却ノズル列12は、以上のように構成される。
[切断機10]
切断機10は、冷却用ノズル列12よりも鋳造方向の下流側であって連続鋳造機11外に配置され、冷却用ノズル列12により冷却された連続鋳造鋳片6を所定の長さに切断して鋳片2を製造する。
【0040】
切断機10は、この種の切断機として慣用されるものでよく、このような切断機10は当業者にとっては周知であるので、切断機10に関するこれ以上の説明は省略する。
本発明に係る連続鋳造機11は以上のように構成される。次に、本発明に係る製造方法を説明する。
【0041】
図1に示すように、製造装置11により鋳片2が製造されている。鋳片2は、図示しない取鍋からタンディッシュ3に注入された溶鋼4を水冷鋳型5に注入し、鋳型5内で凝固シェルを形成することにより内部に未凝固部を有する連続鋳造鋳片6とし、2次冷却スプレー帯7でさらに連続鋳造鋳片6を冷却し、連続鋳造鋳片6を、複数組の上下一対のサポートロール8aからなる矯正帯8で矯正しながらこれらサポートロール9により案内してサポートロール9の下流側へ引き抜く。
【0042】
連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片6の矯正完了位置である、上下一対のサポートロール(9−1、9−1)の設置位置から連続鋳造機1の機端位置である、上下一対のサポートロール(9−3、9−3)の設置位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対により区画される区間(9−1〜9−2、9−2〜9−3)のうちの少なくとも1区間(9−1〜9−2)において、4本以上の冷却用ノズル15−1〜15−4により構成される冷却用ノズル列12から、連続鋳造鋳片6の表面全周に、全周合計冷却水流量を200〜1000L/min以上として冷却水を噴射して連続鋳造鋳片を周方向へ均一に冷却する。
【0043】
これにより、所定の長さに切断される前に連続鋳造鋳片6の曲がりおよび表面割れをいずれも防止しながら、連続鋳造機11の機端までの任意のサポートロール間で鋳造方向に全周に渡って均一に冷却することが可能になり、これにより、従来の3次冷却では実現できないとされていた焼入れ性の高い鋼種からなる鋳片に対しても、4本以上の冷却用ノズル15−1〜15−4により構成される冷却用ノズル列12により3次冷却を実施して、熱間圧延時の表面割れの発生を防止できる。
【0044】
そして、冷却された連続鋳造鋳片6を切断機10により所定の長さに切断して鋳片2を製造する。このようにして製造された鋳片2は、加熱炉に装入されて所定の温度に加熱された後に、圧延機で鋼片へと熱間圧延される。
【0045】
本発明は、連続鋳造鋳片の冷却時に、フェライト・パーライト変態、ベイナイト変態する全ての鋼種に対して適用される。
このようにして、製造装置11によれば、低炭素鋼から焼入れ性の高い鋼種までの幅広い鋼種からなる連続鋳造鋳片6の冷却時における表面割れの防止と曲がり防止とを図りながら、熱間圧延時に表面割れを発生し難い鋳片13を製造することが可能になる。
【実施例】
【0046】
実施例として、図1に示す製造装置11を用いて表1に示す鋼種A〜Dからなる連続鋳造鋳片6に対して、冷却試験を行った。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示した鋼種A〜Dを有する連続鋳造鋳片6(寸法300mm×400mm)を、矯正完了後であるサポートロール9−1の設置位置から、連続鋳造機11の機端であるサポートロール9−3の設置位置までのピンチロール間に、表3に示すノズル間隔およびノズル配列を有する冷却ノズル列12を配置し、この冷却ノズル列12により連続鋳造鋳片6を冷却し、その後に切断機10により、冷却ノズル列12によって冷却された連続鋳造鋳片6を所定の長さに切断し、鋳片13とした。なお、冷却ノズル列12からの冷却水流量は400L/min以上(全周の合計)とした。
【0049】
冷却ノズル列12による連続鋳造鋳片6の3次冷却を行わずに切断されて得られた鋳片2について、従来の3次冷却を施すことなく熱間圧延(加熱:1250℃、圧延回数:(分塊圧延7パス、連続圧延:3パス)、圧下比:4.7)し、得られた熱間圧延材の割れ発生個数(割れ個数)を測定した。測定結果を鋼種A〜D毎に表2にまとめて示す。
【0050】
【表2】

【0051】
表2に示すように、鋼種Cは最も表面割れの発生率が低いものであり、以下、鋼種D、B、Aの順に割れ発生率が高くなり、特に鋼種B、Aは、焼入れ性の高いものである。
表3には、冷却ノズル列12による3次冷却を経た後に切断されて得られた鋳片13について、上記の熱間圧延を行って得られた熱間圧延材の割れ発生個数の測定結果を示す。
【0052】
【表3】

【0053】
ここで、割れ個数は、熱間圧延材の全長に渡って磁粉探傷装置により確認できる10mm以上の大きさの表面割れの個数をカウントし、1m当たりの割れ個数で示した。評価は割れ発生個数が3個/m以下のものを「○」とし、3個/m超8個/m以下のものを「△」とし、8個/m超のものを「×」とした。
【0054】
表2、3を対比することにより理解されるように、表1に示す鋼種A〜Dにおいて、本発明による表面割れの防止効果が確認された。
また、本発明により製造された鋳片13には曲がりが発生せず、従来、切断後の鋳片の3次冷却(水槽浸漬法)によって発生していた鋳片の曲がりも解消された。
【符号の説明】
【0055】
1 湾曲型連続鋳造機
2 鋳片
3 タンディッシュ
4 溶鋼
5 水冷鋳型
6 連続鋳造鋳片
7 2次冷却スプレー帯
8 矯正帯
9、9−1、9−2、9−3 サポートロール
10 切断機
11 本発明に係る製造装置
12 冷却ノズル列
13 鋳片
14 3次冷却ゾーン
15−1、15−2、15−3、15−4 冷却用ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片の矯正完了位置から連続鋳造機の機端位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対の間の少なくとも1区間において、4本以上の冷却用ノズルにより構成される冷却用ノズル列から、前記連続鋳造鋳片の表面に冷却水を噴射して、連続鋳造鋳片を周方向へ冷却し、冷却された該連続鋳造鋳片を所定の長さに切断して鋳片を製造することを特徴とする連続鋳造による鋳片の製造方法。
【請求項2】
前記冷却用ノズル列は、前記鋳造方向へ3列以上配置される請求項1に記載された連続鋳造による鋳片の製造方法。
【請求項3】
前記4本以上の冷却用ノズルは、鋳造方向へ100〜200mmのノズル間隔で配置される請求項1または請求項2に記載された連続鋳造による鋳片の製造方法。
【請求項4】
前記連続鋳造鋳片は、横断面形状が矩形であるブルーム、または横断面形状が円形である丸ビレットである請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された連続鋳造による鋳片の製造方法。
【請求項5】
前記連続鋳造鋳片に対する前記冷却水の全周合計流量は、200〜1000L/minである請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された連続鋳造による鋳片の製造方法。
【請求項6】
連続鋳造における完全凝固後の連続鋳造鋳片の矯正完了位置から連続鋳造機の機端位置までの領域であって、かつ鋳造方向へ隣り合う2組のサポートロール対により区画される少なくとも1区間に配置されて、前記連続鋳造鋳片の表面に冷却水を噴射して連続鋳造鋳片を周方向へ冷却するための、4本以上の冷却用ノズルにより構成される冷却用ノズル列と、
該冷却用ノズル列よりも前記鋳造方向の下流に配置されて、前記冷却用ノズル列により冷却された連続鋳造鋳片を所定の長さに切断して鋳片を製造する切断機と
を備えることを特徴とする連続鋳造による鋳片の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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