説明

連続鋳造機の制御装置および制御方法

【課題】バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御すること。
【解決手段】外乱補償器83が、湯面レベル計によって測定された湯面レベルと周波数モデル831a〜831eの出力との偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって複数の特定周波数fにおける湯面レベルの変動成分を抽出し、抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数fをバルジング周波数と判断し、特定周波数fの外乱を補償するように開度指令値に外乱補償値を加算する。これにより、FFTなどの周波数解析演算手法を用いることなくバルジング周波数近傍の帯域の周波数解析を行うことができるので、バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機のモールド内の溶鋼の湯面レベルを制御する連続鋳造機の制御装置および制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機では、モールド内の溶融金属(以下、溶鋼と表記)の湯面レベルが一定になるように制御することが、安定操業上のみならず、鋳片の品質管理上、極めて重要である。このため、連続鋳造機では、溶鋼の湯面レベルに基づいてスライディングノズルの開度を制御することによって、モールドから引き抜かれる溶鋼とモールドに注入される溶鋼とのマスバランスを釣り合わせるようにしている。このような制御によれば、モールドから引き抜かれる溶鋼の流量やモールドに注入される溶鋼の流量が何らかの要因によって変動したとしても、溶鋼の湯面レベルの変動を抑制できる。
【0003】
このような連続鋳造機では、ガイドロールやピンチロールなどの鋳片支持ロール間で鋳片が厚み方向に膨らむバルジングが発生することがある。バルジングが発生した場合、モールドから引き抜かれる溶鋼の流量が周期的に変化するために、溶鋼の湯面レベルが周期的に変動するようになる。このような湯面レベルの周期的な変動(以下、バルジング性湯面レベル変動と表記)は、通常の比例積分(PI)制御や比例積分微分(PID)制御によって十分に抑制することが困難である。このような背景から、バルジング性湯面レベル変動を外乱として、外乱補償器によりバルジング性湯面レベル変動を補償する技術が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0004】
具体的には、特許文献1には、湯面レベル信号を高速フーリエ変換することによってバルジング性湯面レベル変動の周波数(以下、バルジング周波数と略記)を算出し、算出されたバルジング周波数に基づいて外乱補償器の設定周波数を決定する技術が記載されている。特許文献2には、ピンチロールの間隔と速度との比からバルジング周波数を算出し、算出されたバルジング周波数に基づいて外乱補償器の設定周波数を決定する技術が記載されている。特許文献3には、バルジングの発生箇所におけるピンチロールの間隔と速度との比からバルジング周波数を算出し、算出されたバルジング周波数に基づいて外乱補償器の設定周波数を決定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−253170号公報
【特許文献2】特開2009−160647号公報
【特許文献3】特開2007−260693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、湯面レベル信号を高速フーリエ変換することによってバルジング周波数を算出することから、ある程度以上の精度でバルジング周波数を算出するためには10周期分程度の湯面レベル信号のサンプリングが必要になり、制御の遅れが発生する。具体的には、一般にバルジング周波数は0.1Hz程度であるので、10周期分の湯面レベル信号をサンプリングするためには100秒程度の時間が必要になる。バルジング周波数は主に鋳造速度によって変化する。このため、鋳造速度を変更してから100秒経過した後に鋳造速度変更後のバルジング周波数を算出し、算出結果を制御に反映させたのでは、バルジング性湯面変動をリアルタイムに抑制することが困難になる。この結果、特許文献1記載の技術によれば、鋳造速度を変更してからしばらくの間は溶鋼の湯面レベルの制御精度が悪化する。
【0007】
また、特許文献2記載の技術は、ピンチロールの間隔と速度との比からバルジング周波数を算出している。このため、特許文献2記載の技術によれば、バルジングの発生箇所が変化しない場合はバルジング周波数を正確に算出できるが、バルジングの発生箇所が変化する場合にはバルジング周波数を正確に算出できなくなる。一方、特許文献3記載の技術は、バルジングの発生箇所におけるピンチロールの間隔と速度との比からバルジング周波数を算出しているが、算出されたバルジング周波数と実際のバルジング周波数とが一致しないことがあった。
【0008】
このような背景から、バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御可能な技術の提供が期待されていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御可能な連続鋳造機の制御装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続鋳造機の制御装置は、連続鋳造機のモールド内の溶鋼の湯面レベルを測定する湯面レベル計と、前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと該湯面レベルの目標値とに基づいて、該湯面レベルが目標値になるように前記モールドに溶鋼を注入するスライディングノズルの開度を制御する制御部と、前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルに基づいて、湯面レベルに対する外乱を補償するように前記制御部が出力する開度指令値に外乱補償値を加算する外乱補償器と、を備え、前記外乱補償器は、互いに異なる特定周波数における湯面レベルの変動を2次振動系の伝達関数で表現した複数の周波数モデルを備え、前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと各周波数モデルの出力との偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって複数の特定周波数における湯面レベルの変動成分を抽出し、抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数をバルジング周波数と判断し、該特定周波数の外乱を補償するように前記開度指令値に外乱補償値を加算することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る連続鋳造機の制御装置は、上記発明において、前記外乱補償器が、湯面レベル信号の位相を進める位相進み処理部を備えることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続鋳造機の制御方法は、連続鋳造機のモールド内の溶鋼の湯面レベルを測定する湯面レベル計と、前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと該湯面レベルの目標値とに基づいて、該湯面レベルが目標値になるように前記モールドに溶鋼を注入するスライディングノズルの開度を制御する制御部と、を備える連続鋳造機の制御方法であって、互いに異なる特定周波数における湯面レベルの変動を2次振動系の伝達関数で表現した複数の周波数モデルの出力と前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルとの偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって複数の特定周波数における湯面レベルの変動成分を抽出するステップと、抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数をバルジング周波数と判断し、該特定周波数の外乱を補償するように前記制御部が出力する開度指令値に外乱補償値を加算するステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る連続鋳造機の制御装置および制御方法によれば、バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態である連続鋳造機の構成を示す模式図である。
【図2】図2は、図1に示す制御装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、図2に示す外乱補償器の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図4は、図3に示す周波数推定部の内部構成を示すブロック図である。
【図5】図5は、バルジング周波数の推定結果の一例を示す図である。
【図6】図6は、バルジング性湯面レベル変動の一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明および従来技術の湯面レベル制御を行った際の湯面レベル変動を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態である連続鋳造機の制御装置の構成およびその動作について説明する。
【0016】
〔連続鋳造機の構成〕
始めに、図1を参照して、本発明の一実施形態である連続鋳造機の構成について説明する。図1は、本発明の一実施形態である連続鋳造機の構成を示す模式図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の一実施形態である連続鋳造機では、モールド1の上方にタンディッシュ2が配置され、タンディッシュ2の底部にスライディングノズル3および浸漬ノズル4が配置されている。タンディッシュ2に滞留した溶鋼5は、スライディングノズル3および浸漬ノズル4を介してモールド1に注入される。スライディングノズル3は固定板と摺動板とを備えている。
【0018】
タンディッシュ2からモールド1に注入される溶鋼の流量は、油圧サーボ系などのアクチュエータ6が摺動板の位置を制御することによってスライディングノズル3の開度を増減することにより制御される。モールド1内の溶鋼5の湯面の上方には、渦流センサなどの湯面レベル計7が配置されている。湯面レベル計7は、モールド1内の溶鋼5の湯面レベル(高さ位置)を計測し、計測された湯面レベルを示す信号(湯面レベル信号)を制御装置8に入力する。
【0019】
図示しない取鍋からタンディッシュ2に注入された溶鋼5は、スライディングノズル3の開度に応じて浸漬ノズル4を介してモールド1に注入される。モールド1に注入された溶鋼5は、モールド1によって冷却されることによってモールド1との接触面で凝固して凝固シェルを形成する。内部に液相部を有する鋳片は、ガイドロールおよびピンチロール9に支持されながらモールド1の下方に引き抜かれる。
【0020】
制御装置8は、湯面レベル計7から入力される湯面レベル信号と予め設定されている湯面レベルの目標値との偏差信号にPI制御を施すことによって、湯面レベルが目標値になるようにスライディングノズル3の開度指令値を算出する。そして、制御装置8は、算出された開度指令値をアクチュエータ6に出力することによってスライディングノズル3の開度を操作することにより、タンディッシュ2からモールド1に注入される溶鋼5の流量を制御する。
【0021】
これにより、モールド1内の溶鋼5の湯面レベルに関するフィードバックループが構成されるので、モールド1に流入する溶鋼5の流量又はモールド1から流出する溶鋼5の流量が何らかの要因によって変動したとしても、モールド1内の溶鋼5の湯面レベルを目標値に制御することができる。
【0022】
〔制御装置の構成〕
次に、図2を参照して、制御装置8の構成について説明する。図2は、図1に示す制御装置8の内部構成を示すブロック図である。
【0023】
図2に示すように、制御装置8は、減算器81と、PI(比例積分)制御部82と、外乱補償器83と、加算器84と、を備えている。減算器81は、溶鋼5の湯面レベルの目標値と湯面レベル計7から入力された湯面レベル信号との偏差信号をPI制御部82に入力するものである。PI制御部82は、溶鋼5の湯面レベルが目標値になるように減算器81から入力された偏差信号にPI制御を施すことによってスライディングノズル3の開度指令値を算出するものである。PI制御部82は、本発明に係る制御部として機能する。外乱補償器83は、バルジング性湯面レベル変動を補償するための外乱補償値を出力するものである。
【0024】
加算器84は、PI制御部82から出力されたスライディングノズル3の開度指令値に外乱補償器83から出力された外乱補償値を加算してアクチュエータ6に出力するものである。これにより、バルジング性湯面レベル変動が発生した場合であっても、外乱補償器83がバルジング性湯面レベル変動を抑制する外乱補償値を出力するので、モールド1内の溶鋼5の湯面レベルを目標値に制御できる。なお、本実施形態では、PI制御方法によって溶鋼5の湯面レベルを目標値に制御したが、偏差に基づいて操作量を算出する方法であれば、比例積分微分制御方法などのPI制御方法以外の制御方法によって溶鋼5の湯面レベルを目標値に制御してもよい。
【0025】
〔外乱補償器の構成〕
次に、図3を参照して、外乱補償器83の構成について説明する。図3は、図2に示す外乱補償器83の内部構成を示すブロック図である。
【0026】
図3に示すように、外乱補償器83は、複数(本例では5つ)の周波数推定部831a〜831eと、出力選択部832と、位相進み処理部833と、ゲイン乗算部834と、を備えている。複数の周波数推定部831a〜831eはそれぞれ、予め設定された互いに異なる周波数(以下、特定周波数と表記)f(i=1〜5)における湯面レベルの変動成分を出力するものである。出力選択部832は、複数の周波数推定部831a〜831eから出力された湯面レベルの変動成分のうち、最も振幅が大きい湯面レベルの変動成分をバルジング性湯面変動による変動成分として選択出力するものである。換言すれば、出力選択部832は、複数の周波数推定部831a〜831eから出力された湯面レベルの変動成分のうち、最も振幅が大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数fをバルジング周波数と判断し、その特定周波数fの変動成分を補償するように外乱補償器83を制御する。
【0027】
なお、バルジング周波数の変化は1波長分の湯面レベル信号から確認できるので、最も振幅が大きい変動成分は、特定周波数fの中の最小周波数から変動成分の最大周期を算出し、現在から最大周期までの期間内における変動成分の振幅の最大値を求めることによって特定できる。位相進み処理部833は、フィードバック制御系の時間遅れを補償するために、出力選択部832から出力された湯面レベル信号の位相特性を所定の範囲進ませるものである。ゲイン乗算部834は、位相進み処理部833から出力された湯面レベル信号に適切な可調整ゲインを掛け合わせたものを外乱補償値として出力するものである。
【0028】
〔周波数推定部の構成〕
次に、図4を参照して、周波数推定部831(831a〜831e)の構成について説明する。図4は、図3に示す周波数推定部831(831a〜831e)の内部構成を示すブロック図である。
【0029】
図4に示すように、周波数推定部831は、周波数モデル835と、減算器836と、PD(比例微分)演算器837と、を備えている。周波数モデル835は、特定周波数f(i=1〜5)における湯面レベルの変動成分を2次振動系の伝達関数で表現したフィルタによって構成され、2次振動系の伝達関数は以下に示す数式(1)によって表される。数式(1)中のパラメータsはラプラス演算子を表し、パラメータωは2πfであり、パラメータζは減衰係数を表している。
【0030】
【数1】

【0031】
減算器836は、湯面レベル計7から出力された湯面レベル信号と周波数モデル835から出力される湯面レベル信号との偏差信号をPD演算器837に入力するものである。PD演算器837は、減算器836から入力された偏差信号に基づいて周波数モデル835から出力される湯面レベル信号が湯面レベル計7から出力される湯面レベル信号に一致するようにPD演算処理を実行し、PD演算信号を周波数モデル835に入力する。
【0032】
以上のように、周波数推定部831は、湯面レベル計7から出力された湯面レベル信号と周波数モデル835から出力される湯面レベル信号との偏差信号が周波数モデル835の入力に帰還される構成になっている。このような周波数推定部831の構成によれば、湯面レベル7から出力される湯面レベル信号に対して周波数モデル835が励振されることによって、複数の周波数推定部831a〜831e毎に湯面レベル7から出力される湯面レベル信号に含まれる特定周波数f(i=1〜5)における湯面レベルの変動成分を特定周波数推定波形として抽出することができる。
【0033】
なお、特定周波数f(i=1〜5)はバルジング周波数の帯域内の値に設定されている。また、本実施形態では、周波数推定部831の数は5つであるとしたが、バルジング周波数の帯域幅に応じて周波数推定部831の数を5つから増減させてもよい。また、特定周波数fの中心値は、鋳造速度とロールピッチとから算出されるバルジング周波数を初期値として、次回の処理以後の中心値は前回の処理で最大振幅を示した周波数とするとよい。また、特定周波数fの中心値からの周波数の刻み幅は±0.1〜0.2Hz程度とするとよい。
【0034】
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である連続鋳造機の制御装置8では、外乱補償器83が、湯面レベル計7によって測定された湯面レベルと各周波数モデル831の出力との偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって、湯面レベル計7によって測定された湯面レベルに含まれる複数の特定周波数fにおける湯面レベルの変動成分を抽出し、抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数fをバルジング周波数と判断し、特定周波数fの外乱を補償するように開度指令値に外乱補償値を加算する。このような構成によれば、FFTなどの周波数解析演算手法を用いることなくバルジング周波数近傍の帯域の周波数解析を行うことができるので、バルジング周波数をリアルタイムで精度高く算出し、算出結果に基づいてモールド内の溶鋼の湯面レベルを精度高く制御することができる。
【0035】
〔実施例1〕
図5は、特定周波数fを0.09Hz,0.10Hz,0.11Hz,0.12Hz,0.13Hzとしたときの入力信号(湯面レベル信号)に対する周波数推定部831の出力信号を示す図である。図5(b)〜(f)に示すように、本実施例では、領域R1の時間帯では特定周波数を0.12Hzとした周波数推定部831の出力信号の振幅が最大となり、領域R2の時間帯では特定周波数を0.11Hzとした周波数推定部の出力信号の振幅が最大となり、領域R3の時間帯では特定周波数を0.10Hzとした周波数推定部の出力信号の振幅が最大となっている。以上のことから、本発明によれば時系列で変化するバルジング周波数をリアルタイムで推定可能であることが確認された。なお、図5(b)〜(f)に示す各信号は、ノイズが除去された信号であるので、振幅の最大値は信号の微分値の正負の変化点における信号の絶対値を算出することによって評価できる。
【0036】
〔実施例2〕
次に、従来技術および本発明の湯面レベル制御を用いてバルジング性湯面レベル変動を制御した場合の湯面レベルの変動について説明する。なお、本実施例では、図6に示すバルジング周波数0.1Hzおよび振幅±15mmのバルジング性湯面変動を湯面レベル制御に対する外乱として加えた。また、従来技術の湯面レベル制御では、外乱補償器の設定周波数を0.13Hzに固定した。図7(a),(b)はそれぞれ、本発明および従来技術の湯面レベル制御を用いてバルジング性湯面レベル変動を制御した場合の湯面レベルの変動を示す図である。図7(b)に示すように、従来技術の湯面レベル制御では、外乱補償器の設定周波数とバルジング周波数との間にずれがあるために、バルジング性湯面レベル変動を十分に抑制することができず、湯面レベルが±6mm程度の振幅で変動した。これに対して、図7(a)に示すように、本発明の湯面レベル制御では、リアルタイムでバルジング周波数を検出し、検出されたバルジング周波数に基づいて外乱補償器の設定周波数を変更しているので、湯面レベルの変動を±3mm程度の振幅の範囲内に抑えることができた。
【0037】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1 モールド
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 溶鋼
6 アクチュエータ
7 湯面レベル計
8 制御装置
9 ピンチロール
81 減算器
82 PI(比例積分)制御部
83 外乱補償器
84 加算器
831,831a〜831e 周波数推定部
832 出力選択部
833 位相進み処理部
834 ゲイン乗算部
835 周波数モデル
836 減算器
837 PD(比例微分)演算器



【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機のモールド内の溶鋼の湯面レベルを測定する湯面レベル計と、
前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと該湯面レベルの目標値とに基づいて、該湯面レベルが目標値になるように前記モールドに溶鋼を注入するスライディングノズルの開度を制御する制御部と、
前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルに基づいて、湯面レベルに対する外乱を補償するように前記制御部が出力する開度指令値に外乱補償値を加算する外乱補償器と、
を備え、
前記外乱補償器は、
互いに異なる特定周波数における湯面レベルの変動を2次振動系の伝達関数で表現した複数の周波数モデルを備え、
前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと各周波数モデルの出力との偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって複数の特定周波数における湯面レベルの変動成分を抽出し、抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数をバルジング周波数と判断し、該特定周波数の外乱を補償するように前記開度指令値に外乱補償値を加算すること
を特徴とする連続鋳造機の制御装置。
【請求項2】
前記外乱補償器は、湯面レベル信号の位相を進める位相進み処理部を備えることを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機の制御装置。
【請求項3】
連続鋳造機のモールド内の溶鋼の湯面レベルを測定する湯面レベル計と、前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルと該湯面レベルの目標値とに基づいて、該湯面レベルが目標値になるように前記モールドに溶鋼を注入するスライディングノズルの開度を制御する制御部と、を備える連続鋳造機の制御方法であって、
互いに異なる特定周波数における湯面レベルの変動を2次振動系の伝達関数で表現した複数の周波数モデルの出力と前記湯面レベル計によって測定された湯面レベルとの偏差を各周波数モデルの入力に帰還することによって複数の特定周波数における湯面レベルの変動成分を抽出するステップと、
抽出された湯面レベルの変動成分のうち、振幅が最も大きい湯面レベルの変動成分に対応する特定周波数をバルジング周波数と判断し、該特定周波数の外乱を補償するように前記制御部が出力する開度指令値に外乱補償値を加算するステップと、
を含むことを特徴とする連続鋳造機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103269(P2013−103269A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−250676(P2011−250676)
【出願日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】