説明

連続鋳造設備から取り出されたスラブの温度を保持する搬送装置

本発明は、連続鋳造設備から取り出されたスラブ(3)の温度を保持するとともに、さらなる処理のために、ローラテーブル(1)によって搬送可能に構成された搬送装置を対象としている。連続鋳造設備と熱間圧延機との間の熱バランスを最適化するために、スラブ(3)を受けて、ローラテーブル(1)上に載置可能であり、かつローラテーブル(1)によって搬送可能に構成される支持部(2)と、この支持部(2)上に載置可能に構成され、この支持部(2)を実質的に密閉するように構成された断熱ボックス(4)とを設けることが提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造設備から取り出されたスラブの温度を保持するとともに、さらなる処理のために、ローラテーブルによって搬送可能に構成される搬送装置を対象としている。
【背景技術】
【0002】
製鋼所および連続鋳造設備においてコスト高騰の最も大きな因子の1つは、熱を生成することにエネルギーの大部分を使用することと関連している。
【0003】
連続鋳造設備では、融解に用いられた大量のエネルギーは、鋼を凝固させることによって失われることになる。このようなプロセスに続いて、熱間圧延プロセスに必要な入力温度に達するように、同じようにエネルギーを大量に消費して再加熱することが必要となっている。
【0004】
そこで特許文献1のように、コイルを搬送するための加熱可能な加温フードを設けることが知られている。これらの加熱可能な加温フードは、横断方向の搬送車に対して構造ユニットを形成するように取付けられている。
【0005】
さらには、特許文献2のように、スラブ用の可動コンベヤを設けることが知られている。この可動コンベヤにおいては、スラブを載置するためのローラに、内部に配置された可動底部と、この底部に載置されることが可能である断熱フードとが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許発明第4333717C1号明細書
【特許文献2】欧州特許第648552B1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、連続鋳造設備と熱間圧延機との間におけるプロセスのエネルギーバランスについて、平均的な熱量温度を可能な限り高くするように最適化することによって、可能な限りスラブの温度を保持することにある。このことを実施する上では、再加熱用のコストを最小限に抑えるために、スラブを圧延機内に挿入するまで可能な限り多量の熱が保持される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、上述した目的は、連続鋳造設備から取り出されたスラブの温度を保持するとともに、さらなる処理のためにローラテーブルによって搬送可能に構成された搬送装置によって、達成されることとなる。この搬送装置は、スラブを受け、ローラテーブル上に載置可能に構成され、かつこのローラテーブルによって搬送可能に構成される支持部と、この支持部上に載置可能であり、この支持部を実質的に密閉するように構成された断熱ボックスとを設けることを特徴としている。
【0009】
ストランドは、例えば、連続鋳造設備からスラブの形状で連続的に取り出され、次いで、個々のスラブまたは個々のスラブセグメントに分断されることとなる。搬送は、一般的に、ストランドガイドのローラガイドに最も隣接したローラテーブルによって行われている。これは、例えば、インライン圧延が下流で行われる場合において、さらなる搬送にも当てはまることになる。本発明の搬送装置は、このような搬送において、一時的な温度損失を防ぐために有効である。
【0010】
本発明によれば、通常運転において各ストランドにつき2つの断熱ボックスのみを必要とする場合、または、各ストランドにつき3つの断熱ボックスを用いるときに、例えば、1つの断熱ボックスに対して他の断熱ボックスを通過させることを可能にする少なくとも1つの「パーキング位置(parking position)」が設けられる場合、のいずれかであるとよい。
【0011】
代替的に、もし一時的に貯留する期間(buffer period)が数時間を超えないのであれば、断熱ボックスを当座の貯留部(intermediate storage)として直接用いると、極めて有利である。
【0012】
加熱装置を付加的に有する断熱ボックスを設けることも考えられる。この加熱装置は、バーナであってもよいし、または電気抵抗ヒータであってもよい。
【0013】
他の可能性として、温度の保存および均質化を確実にすることを想定して、誘導加熱が考えられてもよいし、またはローラハ−ス炉への直接挿入が考えられてもよい。
【0014】
この場合も、断熱ボックスによって、すなわち、連続鋳造設備の直後に、スラブを断熱ボックスに装填し、誘導加熱/ローラハ−ス炉の組合せの直前に、スラブを断熱ボックスから排出させることによって、スラブの搬送を行うことができる。
【0015】
さらに、一括搬送、すなわち、積層されたスラブの搬送も、断熱ボックスによって可能となる。一括搬送の利点は、常に、圧延機の炉に複数の製品を同時に装填することができる点にある。この場合、炉は、複数の製品に対して一回開くのみでよく、各製品ごとに個別に開く必要がないので、明らかに熱の損失が少なくなる。
【0016】
以下、図面を参照して、本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】開状態にある本発明による装置を示す図である。
【図2】閉状態にある本発明による装置を示す図である。
【図3】本発明による装置の装填の種々の段階を例示する図である。
【図4】本発明による装置の装填の種々の段階を例示する図である。
【図5】本発明による装置の装填の種々の段階を例示する図である。
【図6】本発明による装置の装填の種々の段階を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
連続鋳造設備から取り出されたスラブの温度を保持する本発明による搬送装置は、スラブ3を受ける断熱された支持部2であって、ローラテーブル1によって搬送されることが可能である支持部2と、この支持部を挿入可能とした断熱ボックス(断熱フード)4とを備えている。この目的のために、断熱ボックスは、片側が閉じているトンネル形状、すなわち、長手方向、すなわち、ローラテーブルの方向において開口し、かつもう一方の片側が閉じた形状を有している。従って、断熱ボックスの開口に対応する寸法を有する終端壁を一端に有する支持部2が断熱ボックス内に挿入されると、この挿入された側から断熱ボックスを閉じることになる。
【0019】
図示される実施形態では、支持部を断熱ボックス内に押し込むこと、すなわち、挿入することを可能とするため、昇降装置が断熱ボックスに対して設けられている。この昇降装置は、ローラテーブルの横にローラテーブルと平行に配置された昇降シリンダ5を備えている。これらの昇降シリンダ5によって、断熱ボックスは、ローラテーブルの高さに対して、いくらか上方に持ち上げられることが可能であり、これによって、支持部は、断熱ボックスの下方に配置されるまで、ローラテーブルによってさらに運ばれることができる。
【0020】
次いで、1つまたは複数のスラブが配置される支持部と、断熱ボックスとを備えるこの搬送装置においては、その全体が、次の作業ステーションまで、ローラテーブルによってさらに搬送可能となっている。
【0021】
図面には、加熱装置および/または冷却装置を備えることができる断熱ボックスの構造は、示されていない。
【0022】
図3〜図6は、支持部への装填ステーションの例を示している。具体的に、スラブ3は、鋳造装置からローラテーブル1に向かって前方に送られることになる。スラブが鋳造装置から搬送され、次いで、同一のローラテーブルによってさらに搬送されると、装填のための横断方向変位を行う必要がある。この目的のために、平行なローラテーブルが設けられている。図3および図4から分かるように、この横断方向変位によって、支持部が受け入れ準備をし、この受け入れ準備をした支持部上に、スラブがその支持部を横切って前方に押し出されることが可能になる。スラブが図5に示されるように支持部上に載置されると、この支持部は、持ち上げられた断熱ボックスの方向にローラテーブルによって移動され、断熱ボックス内に挿入されることが可能になる(図6)。
【0023】
この横方向変位中、支持部は、昇降動作可能なローラテーブル上に配置されるようになっている。これによって、複数のスラブを互いに重ねて運搬することが可能である。このことは、図4に示されている。ここでは、第2のスラブが上側に載置されている。図において、支持部および2つのスラブを備えるローラテーブルは、再び持ち上げられ、次いで、断熱ボックス内への挿入が行われることになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造設備から取り出されたスラブ(3)の温度を保持するとともに、さらなる処理のために、ローラテーブル(1)によって搬送可能に構成された搬送装置において、
前記スラブ(3)を受けて、前記ローラテーブル(1)上に載置可能であり、かつ前記ローラテーブル(1)によって搬送可能に構成される支持部(2)と、
前記支持部(2)上に載置可能であり、かつ前記支持部(2)を実質的に密閉するように構成された断熱ボックス(4)とを備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記断熱ボックス(4)は、加熱/冷却装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記断熱ボックス(4)は、前記支持部(2)上に水平方向に押し出されることが可能となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記断熱ボックス(4)は、前記支持部(2)上に垂直方向に載置されることが可能となっていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記支持部(2)が、水平方向に前記断熱ボックス(4)からその外に押し出された状態となるか、または前記断熱ボックス(4)内に押し込まれた状態になることができるように、前記断熱ボックス(4)が、前記支持部(2)に対して垂直方向に持ち上げ可能に構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記支持部(2)が、長手方向と直交して延設される後壁を有し、前記断熱ボックス(4)が、前記支持部の長手方向と平行に延設される2つの長手方向壁および前端壁を有し、前記後壁、前記長手方向壁、および前記前端壁は、前記支持部および前記断熱ボックスによって形成された内部空間を完全に密閉するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
請求項1〜6に記載の温度を保持する前記搬送装置を取扱うためのローラテーブル装置において、
前記スラブを前記ローラテーブルに対して横断する方向に移動可能にする横断方向の変位が、前記連続鋳造設備に隣接する通常のローラテーブルと関連付けて行われ、前記横断方向の変位によって前記スラブが前記支持部上に押し出されることが可能となっており、
さらに前記支持部および前記断熱ボックスを一緒にした状態で搬送するために受け装置が設けられて、前記受け装置が、前記断熱ボックスを前記ローラテーブルの平面の上方に持ち上げて、前記支持部が前記断熱ボックス内に押し込まれた次に前記断熱ボックス(4)を前記支持部上に下ろすことを可能とするように構成されていることを特徴とするローラテーブル装置。
【請求項8】
前記横断方向の変位が行われる前記ローラテーブルの領域が、昇降動作可能に構成されていることを特徴とする請求項7に記載のローラテーブル装置。
【請求項9】
前記断熱ボックス(4)用の前記受け装置が、前記ローラテーブル(1)の両側部に配置された昇降シリンダ(5)を備えていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のローラテーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−501357(P2010−501357A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525915(P2009−525915)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【国際出願番号】PCT/DE2007/001462
【国際公開番号】WO2008/025325
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(500031054)エスエムエス・ジーマーク・アクチエンゲゼルシャフト (31)
【氏名又は名称原語表記】SMS Siemag AG
【住所又は居所原語表記】Eduard−Schloemann−Strasse 4, D−40237 Duesseldof, Germany
【Fターム(参考)】