説明

連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置及び異常診断方法、並びに連続鋳造方法

【課題】連続鋳造機に設置された電磁場発生装置の電磁コイルの絶縁診断を短周期で実施可能とする、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置及び連続鋳造方法を提供する。
【解決手段】連続鋳造機1の操業中に、鋳片7が電磁コイル15による電磁場印加領域であるモールド4から抜けたことを検出することで、電磁コイル15による電磁場の印加が不要となる鋳込間の開始タイミングを検出する。そして、そのタイミングで電磁コイル15と電磁場発生用電源17との接続を切断し、直流電圧発生器21から電磁コイル15に一定の直流電圧(試験電圧)を印加して、電磁コイル15の絶縁試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用鋳型の背面や連続鋳造機の二次冷却帯に配置され、鋳片の未凝固部である溶鋼に電磁場を印加するための電磁場発生装置を備える連続鋳造設備において、電磁場発生装置の異常を診断する異常診断装置及び異常診断方法、並びに連続鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造においては、鋳型内に注入された溶鋼に含まれている非金属介在物やガス気泡を積極的に鋳型内の溶鋼表面に浮上させて除去し、これらの少ない清浄性に優れた鋳片を得るために、鋳型内の溶鋼に移動磁場を働かせて攪拌する交流型の電磁場発生装置や、鋳型内の溶鋼に静磁場を働かせて溶鋼流速を減速する直流型の電磁場発生装置が広く用いられている。また、移動磁場を働かせることによってデンドライト凝固組織が溶断されて凝固組織が微細化され、それに伴って鋳片の中心偏析が改善することから、二次冷却帯に移動磁場発生用の交流型の電磁場発生装置を設置することも行われている。なお、交流型の電磁場発生装置は、その機能から電磁攪拌装置とも呼ばれている。
【0003】
電磁場発生装置は、移動磁場発生用の交流型であれ、また静磁場発生用の直流型であれ、鉄心(「ヨーク」ともいう)と、この鉄心を巻回するコイルとで形成される電磁コイルを備える。コイルは、大電流を流す必要があることから、その内部を冷却水が流れる水冷銅管によって形成されており、当該コイルには、一般的に、電力供給用のブスバー及び給水用配管との接続用のコイル口出し部が設けられている。
【0004】
このコイル口出し部及びその周辺の亀裂・損傷を防止するために、コイル口出し部の少なくとも一部を可撓性導体で構成した電磁コイル等も提案されているが、電磁コイルの損傷はコイル口出し部に限るものではないため、設備異常を完全に無くすことはできていなかった。
そこで、電磁場発生装置の異常を診断する方法として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、電磁場発生装置の電磁コイルから所定の強度の電磁場を印加して溶鋼を連続鋳造しているときに電磁コイルへ供給される電力を測定し、測定された供給電力の時系列変化を監視するものである。ここでは、コイル劣化に伴う電磁コイルの抵抗の低下によって生ずる供給電力の変化から、電磁コイルの異常を診断している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−39775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断方法にあっては、コイル抵抗の異常は検出できるが、コイル抵抗に異常がなく絶縁抵抗にのみ異常があった場合には、異常を検出できない。これはコイル抵抗と絶縁抵抗がその異常状態によって相関するからである。
絶縁抵抗は電路と大地との絶縁性(電流が漏れない性能)のことであり、銅管の抵抗を意味しない。絶縁低下のみ異常が発生する場合としては、電磁コイルの内部の亀裂等の要因ではなく、コイル銅管そのものが劣化したり、吸湿して絶縁が低下したりした場合が想定され、この場合はコイル抵抗自体には変化はない。
【0007】
電磁コイルの絶縁抵抗は、絶縁抵抗計を用いることで測定可能である。しかしながら、絶縁測定は試験電圧を印加した際の電流から絶縁抵抗に換算するものであるため、電磁場発生電圧と干渉しないタイミングで測定する必要があり、連続して鋳造する連続鋳造機では、電磁コイルを交換するピッチ(約2ヶ月)に依存されていた。つまり、絶縁抵抗の管理は電磁コイルを交換するピッチで行うしかなかった。
【0008】
そのため、操業中に絶縁抵抗が急激に低下すると、突発的に電磁コイルの交換が発生したり、完全に絶縁が0となるまで印加し続けた結果、コイルそのものが焼損し、コイルの巻替に至ったりするという問題があった。
そこで、本発明は、連続鋳造機に設置された電磁場発生装置の電磁コイルの絶縁診断を短周期で実施可能とする、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置、異常診断方法及び連続鋳造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置は、連続鋳造機で鋳造する鋳片内部の溶鋼に電磁場を印加するための電磁コイルを備える電磁場発生装置の異常を診断する、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置であって、前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加する異常診断用電源と、鋳片が前記電磁コイルによる電磁場印加領域から抜けたことを検出する鋳片抽出検出手段と、前記鋳片抽出検出手段で鋳片が前記電磁場印加領域から抜けたことを検出したとき、前記電磁コイルと当該電磁コイルに電磁場発生用の電流を供給する電磁場発生用電源との接続を切断し、前記電磁コイルと前記異常診断用電源との接続に切り替える接続切替手段と、前記接続切替手段で前記電磁コイルと前記異常診断用電源とを接続し、前記電磁コイルに前記直流電圧を印加した状態で、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断する異常診断手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
このように、連続鋳造機では鋳造を一旦中断する鋳込間が存在することを利用し、鋳片が電磁コイルによる電磁場印加領域から抜けたことを検出したとき、その時点から所定時間(5分〜15分)が鋳込間となると判断して絶縁試験を開始する。すなわち、電磁場発生装置による電磁場発生が不要な期間に絶縁試験を行うことができ、電磁場発生装置が発生する電磁場と干渉することなく適切に絶縁試験を行うことができる。
【0011】
また、1日数回必ず発生する鋳込間に絶縁試験を行うので、数回/1日の短スパンで絶縁試験を行うことができる。その結果、電磁コイルの絶縁低下を適切に予測し、絶縁回復処置を行うことができる。さらに、鋳込間となるタイミングを検知して自動で絶縁試験を開始することができるので、絶縁試験を行うための人手を要することがなく効率的である。
さらに、上記において、前記鋳片抽出検出手段は、前記電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、鋳片の後端部が当該ピンチロールを通過したことを検出し、これをもって鋳片が前記電磁場印加領域から抜けたことを検出することを特徴としている。
【0012】
このように、ピンチロールが回転している状態から停止したとき、鋳片の後端部が当該ピンチロールを通過し、後続の鋳片が移送されていないと判断することができることを利用し、電磁コイルによる電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、鋳片の後端部が当該電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールを通過したことを検出する。したがって、比較的簡易な手法で、適切に絶縁試験の開始タイミングを検出することができる。
【0013】
また、上記において、溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出する溶鋼装入検出手段と、前記溶鋼装入検出手段で溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出したとき、前記電磁コイルと前記異常診断用電源との接続を切断し、前記電磁コイルと前記電磁場発生用電源との接続を復帰する接続復帰手段と、を備えることを特徴としている。
【0014】
このように、溶鋼が電磁コイルによる電磁場印加領域に装入されたことを検出したとき、鋳込間が終了した判断して絶縁試験を終了し、電磁場発生装置による電磁場発生を自動的に再開する。したがって、通常操業において鋳造する鋳片内部の溶鋼に適切に電磁場を印加することができる。
さらにまた、上記において、前記溶鋼装入検出手段は、前記電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、ダミーバーの先端部が当該ピンチロールに到達したことを検出し、これをもって溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出することを特徴としている。
【0015】
このように、ピンチロールが停止している状態から回転を始めたとき、鋳片が移相されていない状態から、ダミーバーの先端部が当該ピンチロールを通過したと判断することができることを利用し、電磁コイルによる電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、中断していた鋳造が再開されたことを検出する。したがって、比較的簡易な手法で、適切に絶縁試験の終了タイミングを検出することができる。
また、上記において、前記電磁コイルは、連続鋳造機の鋳型に配置されていることを特徴としている。
これにより、通常操業時には鋳型内の鋳片内部の溶鋼に電磁場を印加し、鋳片が鋳型から抜けたことを検出したとき、その時点から所定時間が鋳込間となると判断して絶縁試験を行うことができる。
【0016】
さらに、上記において、前記異常診断手段は、前記異常診断用電源からの直流電圧印加時に前記電磁コイルに流れる微小電流を検出する微小電流検出手段と、前記異常診断用電源の直流電圧値と前記微小電流検出手段で検出した微小電流値とに基づいて、前記電磁コイルの絶縁抵抗値を測定する絶縁抵抗測定手段と、を備え、前記絶縁抵抗測定手段で測定した絶縁抵抗値の変化を監視することで、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断することを特徴としている。
このように、直流電圧印加時に電磁コイルに流れる微小電流を検出し、直流電圧値との演算により絶縁抵抗値を求めるので、一般の電気機器と比較して許容最低絶縁抵抗値が著しく低い電磁波発生装置の電磁コイルの絶縁試験を適切に行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断方法は、連続鋳造機で鋳造する鋳片内部の溶鋼に電磁場を印加するための電磁コイルを備える電磁場発生装置の異常を診断する、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断方法であって、前記連続鋳造機の操業中で前記電磁場発生装置による電磁場の印加が不要となる電磁場非印加期間に、前記電磁コイルと当該電磁コイルに電磁場発生用の電流を供給する電磁場発生用電源との接続を切断し、異常診断用電源から前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加して、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断することを特徴としている。
【0018】
このように、電磁場発生装置による電磁場発生が不要な期間に絶縁試験を行うので、電磁場発生装置が発生する電磁場と干渉することなく精度良く絶縁試験を行うことができる。また、1日数回必ず発生する鋳込間に絶縁試験を行うことができるので、数回/1日の短スパンで絶縁試験を行うことができ、電磁コイルの管理を十分に行うことができる。
【0019】
さらにまた、本発明に係る連続鋳造方法は、鋳型内の鋳片内部の溶鋼に電磁場発生装置の電磁コイルから電磁場を印加しながら連続鋳造する連続鋳造方法であって、先行鋳片が前記鋳型から抽出された時点で前記電磁場発生装置による電磁場印加を停止し、前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加して当該電磁コイルの絶縁抵抗値の異常診断を行い、その後、後行鋳片の溶鋼が前記鋳型に装入されたら、前記電磁場発生装置による電磁場印加を再開して前記後行鋳片の溶鋼を鋳造することを特徴としている。
【0020】
このように、先行鋳片を鋳造してから後行鋳片を鋳造するまでの鋳込間に、自動的に電磁コイルの絶縁試験を行うことができる。したがって、鋳型の交換時に電磁コイルの絶縁試験を行う場合と比較して、絶縁試験を行うスパンを大幅に短縮することができ、電磁コイルの管理を十分に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、連続鋳造機による通常操業(鋳造)が一旦中断するタイミング(鋳込間)で、電磁場発生装置を構成する電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を自動で診断するので、電磁コイルから印加する電磁場と干渉することなく、精度良く絶縁試験を行うことができる。また、数回/1日程度の短スパンで電磁コイルの異常診断を行うことができるので、電磁コイルの絶縁低下を適切に予測して適切な絶縁回復処置を施すことが出来ると共に、過剰なメンテナンスを抑止することができ、適正な管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における電磁場発生装置の異常診断装置が設置された連続鋳造設備の側面図である。
【図2】絶縁試験可能期間を示す図である。
【図3】ライントラッキングを説明する図である。
【図4】電磁場発生装置及びその異常診断装置の構成を示すブロック図である。
【図5】絶縁抵抗測定例を説明する図である。
【図6】本実施形態の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態における電磁場発生装置の異常診断装置が設置された連続鋳造設備の側面図である。
図中、符号1は連続鋳造機である。連続鋳造機1は、溶鋼2が満たされたタンディッシュ3を備える。タンディッシュ3はモールド(鋳型)4の上部に配置されており、モールド4とほぼ同じ高さで鋳造床5が水平に延びている。タンディッシュ3からモールド4内へ注入された溶鋼2は、モールド4の側面より冷却されることで、表面から凝固してシェルを形成しつつ、ピンチロール6によって下方に引き抜かれ鋳片7となる。連続的に抽出された鋳片7は、トーチカー8によって所定長に切断される。
【0024】
鋳造床5上はダミーバーカー9が走行可能となっており、当該鋳造床5上にはダミーバー巻上装置10が設置されている。ダミーバー11はチェーンリンク構造となっており、鋳造の始めにモールド4に装入される。そして、鋳造が開始されたあと、ダミーバー11がガイドロールセグメントの最終位置に到達すると、ダミーバー11はダミーバー巻上装置10によって吊り上げられ、ダミーバーカー9に載せられるようになっている。
【0025】
また、モールド4には、モールド4内の溶鋼2(鋳片内部の溶鋼)に電磁場を印加するための電磁コイル15が設置されている。この電磁コイル15は後述する電磁場発生装置を構成するものであり、水冷銅管によって形成されている。
電磁場発生装置としては、モールド内の溶鋼や鋳片の未凝固相を攪拌するための移動磁場を印加する交流型の電磁場発生装置や、溶鋼の流れを制動するための静磁場を印加する直流型の電磁場発生装置がある。本実施形態においては何れも適用可能であるが、ここでは直流型の電磁場発生装置を適用した場合について説明する。
【0026】
異常診断装置20は、電磁コイル15の絶縁抵抗を測定し、絶縁抵抗が低下する異常が発生していないかを診断する。電磁コイル15の絶縁抵抗の低下は、コイル銅管そのものが劣化したり、吸湿して絶縁が低下したりすることで発生し得る。この異常診断装置20は、連続鋳造機1の操業中で電磁場発生装置による電磁場印加が不要となる期間に、自動で電磁コイル15の絶縁抵抗を測定し、異常を診断する(以下、これを絶縁試験と称す)。
【0027】
連続鋳造設備1では、鋼種が変更となる場合、タンディッシュ3の交換等により鋳造を一旦中断する。このように鋳造を一旦中断するタイミングは、1日数回、1回あたり5分〜15分程度必ず発生する。この期間を鋳込間と呼ぶ。鋳込間は、鋳造を行っていない期間であるため、電磁場発生装置による電磁場発生の必要がない。したがって、この鋳込間を利用すれば、電磁場発生装置の電磁コイル15の絶縁抵抗を測定し、異常診断を行うことができる。
【0028】
図2は、異常診断装置20で絶縁試験を行う絶縁試験期間を示す図である。鋳造を一旦中断した場合、先行鋳片7aを鋳造した後、所定期間の鋳込間を設けて後行鋳片7bが鋳造されることになる。また、連続鋳造機1では、鋳造開始時に、先ずダミーバー11を装入し、その後溶鋼2を注入して鋳片7を生成する。そのため、ライン上では、この図2に示すように、先行鋳片7aが搬送された後、所定間隔をおいてダミーバー11が搬送され、ダミーバー11と間隔をあけずに後行鋳片7bが搬送されることになる。
【0029】
電磁場発生装置による電磁場の印加は、鋳造を行っている期間(モールド4内に溶鋼2が満たされている期間)のみ行えばよい。すなわち、それ以外の期間(モールド4内に溶鋼2が満たされていない期間、及びモールド4内にダミーバー11が装入されている期間)は電磁場非印加期間(絶縁試験可能期間)となる。
【0030】
本実施形態では、図2に示す電磁場非印加期間(絶縁試験可能期間)のうち、電磁コイル15による電磁場印加領域であるモールド4内から先行鋳片7aが抜けてからモールド4内にダミーバー11が装入されるまでの期間を、絶縁試験期間とする。絶縁試験期間となるタイミングは、モールド4の直下流側に配置された第1のピンチロール6の回転速度に基づいて、ライントラッキングすることで検出する。第1のピンチロール6の回転速度は、当該第1のピンチロール6に設置された回転検出器(PLG)12が出力する速度パルスによって検出可能である。
【0031】
モールド4内から先行鋳片7aが抜けきって、図3(a)に示すように先行鋳片7aの後端部が第1のピンチロール6を通過すると、第1のピンチロール6の回転は停止する。したがって、第1のピンチロール6の回転が停止したとき、先行鋳片7aがモールド4を抜けたと判断し、このタイミングを絶縁試験開始タイミングとする。
また、モールド4内に後行鋳片7bの溶鋼2を装入するために、モールド4内にダミーバー11を装入した場合、図3(b)に示すようにダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6に到達すると、第1のピンチロール6は停止した状態から回転を始める。したがって、第1のピンチロール6が回転を始めたとき、ダミーバー11がモールド4に装入されたと判断し、このタイミングを絶縁試験終了タイミングとする。
【0032】
以下、異常診断装置20の構成について具体的に説明する。
図4は、電磁場発生装置及びその異常診断装置20の構成を示すブロック図である。
この図4において、符号16は電磁場発生装置であり、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17とを備える。電磁場発生用電源装置17は、連続鋳造機1から離れた電気室等に設置されており、鋳造条件に応じた所定の直流電流を、電磁場発生用の電流として電磁コイル15に供給するものである。
【0033】
異常診断装置20は、直流電圧発生器21と、接続切替スイッチ22と、ライン制御装置23と、電流センサ24と、信号処理装置25とを備える。
直流電圧発生器21は、信号処理装置25が出力する試験開始信号が入力されてから、信号処理装置25が出力する試験終了信号が入力されるまでの絶縁試験期間中、電磁コイル15に印加する絶縁抵抗試験用の試験電圧として、一定値(例えば、500V)の直流電圧を発生する。
また、接続切替スイッチ22は、信号処理装置25が出力する接続切替信号に応じて、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17との接続と、電磁コイル15と直流電圧発生器21との接続とを切り替える。
【0034】
ライン制御装置23は、回転検出器(PLG)12で検出した第1のピンチロール6の回転速度を入力し、鋳片7のトラッキングを行う。そして、そのトラッキングにより絶縁試験開始タイミング及び絶縁試験終了タイミングを検出し、これらのタイミングを表すライントラッキング信号を信号処理装置25に出力する。
電流センサ24は、直流電圧発生器21から電磁コイル15に直流電圧を印加しているときに、電磁コイル15に流れる微小電流を検出する。この電流センサ24の測定範囲は0〜100mAに設定されている。
【0035】
信号処理装置25は、ライン制御装置23からのライントラッキング信号を入力し、絶縁試験開始タイミングで、直流電圧発生器21に試験開始信号を出力すると共に、接続切替スイッチ22に、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17との接続から電磁コイル15と直流電圧発生器21との接続に切り替えるための接続切替信号を出力する。同様に、信号処理装置25は、絶縁試験終了タイミングでは、直流電圧発生器21に試験終了信号を出力すると共に、接続切替スイッチ22に、電磁コイル15と直流電圧発生器21との接続から接続電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17との接続に切り替えるための接続切替信号を出力する。
【0036】
また、信号処理装置25は、絶縁試験開始タイミングで、試験開始信号及び接続切替信号を出力した後、電磁コイル15と直流電圧発生器21とが確実に接続されたと判断できる所定時間が経過したら、電流センサ24で検出した電流を取得し、電磁コイル15の絶縁抵抗を測定する。
【0037】
絶縁抵抗は、電流センサ24の測定電流と直流電圧発生器21の印加電圧とに基づいて、印加電圧[V]/測定電流[A]の演算を行うことで測定する。また、絶縁抵抗の測定時間は1分程度とする。すなわち、図5(a)に示すように、試験電圧DC500Vを1分間、電磁コイル15に印加し、そのとき図5(b)に示すように電磁コイル15に流れる微小電流を電流センサ24で測定し、絶縁抵抗を求める。本実施形態では、電流センサ24の測定範囲を0〜100mA(0.1A)としているため、試験電圧がDC500Vの場合、絶縁抵抗の測定範囲は0.005MΩ(5kΩ)〜∞となる。
【0038】
そして、信号処理装置25は、測定した絶縁抵抗値が電磁コイル15の焼損注意域の介入閾値Ra(例えば、0.02MΩ)以下であるか否かを判定する。このとき、絶縁抵抗値が焼損注意域の介入閾値Raを上回っている場合には、絶縁低下が発生していない正常状態であると判断して鋳造を継続する。一方、絶縁抵抗値が焼損注意域の介入閾値Ra以下である場合には、絶縁低下が発生しており、このまま使用すると焼損のおそれがあると判断して、所定の絶縁回復処置を行う。
【0039】
一般的な電機機器である電動機の最低許容絶縁抵抗は、(印加される電圧×1/1000)MΩで表され、400V用の電動機の場合では0.4MΩである。一方、電磁場発生装置16の電磁コイル15はコイル銅管が水冷されているため、常に銅管の内部は純水で満たされており、許容最低絶縁抵抗は0.02MΩ程度である。そこで、ここでは、焼損注意域の介入閾値Raを、電磁コイル15の許容最低絶縁抵抗値である0.02MΩに設定する。
【0040】
なお、ここでは測定した絶縁抵抗値が焼損注意域の介入閾値Ra以下であるか否かを判定しているが、過去の一定期間の絶縁抵抗測定データに基づいて次回の絶縁試験時における絶縁抵抗値を予測し、予測した絶縁抵抗値が焼損注意域の介入閾値Ra以下であるか否かを判定するようにしてもよい。
上記において、直流電圧発生器21が異常診断用電源に対応し、接続切替スイッチ22が接続切替手段および接続復帰手段に対応し、ライン制御装置23が鋳片抽出検出手段および溶鋼装入検出手段に対応し、電流センサ24が微小電流検出手段に対応し、信号処理装置25が異常診断手段および絶縁抵抗測定手段に対応している。
【0041】
次に、本実施形態における連続鋳造方法について説明する。
連続鋳造機1のモールド4には、電磁場発生装置16の電磁コイル15が設けられており、通常操業においては、電磁コイル15によってモールド4内に注入された溶鋼2に電磁場を印加しながら当該溶鋼2を鋳造する。すなわち、通常操業時は、異常診断装置20の接続切替スイッチ22が、図4の実線で示す状態となって、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17とが接続されている。
【0042】
このように通常操業を行っている状態から、例えば鋼種変更のためにタンディッシュ3を交換する場合には、鋳造が一旦中断され、5分〜15分程度の鋳込間を設けた後で鋳造が再開される。この鋳込間は、連続鋳造設備や操業する鋼種構成により異なるが、1日数回は必ず発生する。
このとき、鋳造の中断に際し、モールド4内から溶鋼2が凝固して形成された鋳片7が抜けきり、当該鋳片7の後端部がモールド4の直下流側に設けられた第1のピンチロール6を通過すると、第1のピンチロール6の回転が停止する。すると、ライン制御装置23は、回転検出器(PLG)12の速度パルスからこれを検出し、鋳片7の後端部が第1のピンチロール6を通過したことを表すライントラッキング信号を信号処理装置25に出力する。
【0043】
信号処理装置25は、このライントラッキング信号を取得すると、接続切替スイッチ22に対して、接続切替スイッチ22を図4の破線で示す状態に切り替えるための接続切替信号を出力する。これにより、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17との接続は切断され、電磁コイル15と直流電圧発生器21とが接続される。また、同時に信号処理装置25は、直流電圧発生器21に対して試験開始信号を出力する。これにより、直流電圧発生器21から電磁コイル15に対して、試験電圧として1分間、500Vの直流電圧が印加される。
【0044】
次に信号処理装置25は、直流電圧印加時に電流センサ24で検出した微小電流を取得し、直流電圧値と電流センサ24で検出した微小電流値とに基づいて、演算により電磁コイル15の絶縁抵抗値を求める。
そして、1分間の測定時間が経過した後、測定された絶縁抵抗値が、電磁コイル15の焼損注意域の介入閾値Ra(例えば、0.02MΩ)以下であるか否かを判定する。このとき、測定された絶縁抵抗値が閾値Raを上回っている場合には、電磁コイル15に絶縁低下は発生しておらず、そのまま使用可能であると判断する。
【0045】
その後、鋳造を再開するべくダミーバー11をモールド4に装入し、当該ダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6に到達すると、第1のピンチロール6が停止した状態から回転し始める。すると、ライン制御装置23は、回転検出器(PLG)12の速度パルスからこれを検出し、ダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6を通過したことを表すライントラッキング信号を信号処理装置25に出力する。
【0046】
信号処理装置25は、このライントラッキング信号を取得すると、接続切替スイッチ22に対して、接続切替スイッチ22を図4の実線で示す状態に切り替えるための接続切替信号を出力する。これにより、電磁コイル15と直流電圧発生器21との接続は切断され、電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17とが接続される。これにより、電磁場発生用電源装置17から電磁コイル15に対して直流電流が供給可能な状態となる。
【0047】
このように、鋳込間を利用して電磁コイル15の絶縁抵抗測定を実施する。これにより、例えばモールド4を交換するタイミングでしか電磁コイル15の絶縁抵抗測定が行えなかった場合には2ヶ月に1回の測定であったの対し、1日数回の測定が可能となる。そのため、電磁コイル15を短スパンで管理することができる。
したがって、電磁コイル15の絶縁抵抗値が、電磁コイル15の焼損注意域に介入した時点で絶縁回復処置を行うことができ、電磁コイル15が焼損に至るのを防止することができる。
【0048】
また、ライントラッキングにより自動で鋳込間となるタイミングを検知し、このタイミングで電磁コイル15と電磁場発生用電源装置17との接続と、電磁コイル15と直流電圧発生器21との接続とを自動で切り替えるので、5分〜15分という短い鋳込間でも電磁コイル15の絶縁試験が可能となる。
【0049】
ライントラッキングにより自動で鋳込間となるタイミングを検知しても、この鋳込間にハンディー式絶縁抵抗計を使って人手によって絶縁抵抗測定を行おうとすると、感電防止のためのコイル電源装置の遮断等、絶縁抵抗測定開始から終了までを15分で実施することは非常に困難である。また、1日に数回しかない鋳込間に併せて測定者を配置することは非効率である。本実施形態では、電磁場の発生が不要となるタイミングで、人手を介さず自動で絶縁抵抗測定を開始するので、連続鋳造における僅かな鋳込間隔で効率良く絶縁試験が可能となる。
【0050】
また、絶縁試験開始タイミングを鋳片7がモールド4から抜けきるタイミングとし、鋳片7の後端部が第1のピンチロール6を通過したことをもって鋳片7がモールド4から抜けきったことを検出する。このように、ライントラッキングにより適切に鋳込間となるタイミングを検出することができる。同様に、絶縁試験終了タイミングを後行鋳片の溶鋼2がモールド4に装入されるタイミングとし、ダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6に到達したことをもって後行鋳片の溶鋼2がモールド4に装入されたことを検出する。このように、ライントラッキングにより適切に鋳込間が終了するタイミングを検出することができる。
【0051】
このとき、第1のピンチロール6の回転速度に基づいて、鋳片7の後端部が第1のピンチロール6を通過したことやダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6に到達したことを検出するので、比較的簡易な手法で適切に絶縁試験開始タイミング及び絶縁試験終了タイミングを検出することができる。また、一般にピンチロールに設置されている回転検出器(PLG)を用いるので、新たにライントラッキング用のセンサ等を設ける必要がない。
【0052】
さらに、絶縁抵抗測定に際し、測定範囲を0〜100mAに設定した微小電流センサを用いて、試験電圧DC500V印加時の微小電流を測定する。そのため、0.005MΩ(5kΩ)という非常に低い絶縁抵抗値の測定が可能となり、電磁コイル15での最低許容絶縁抵抗0.02MΩを適切に監視することができる。
【0053】
電磁場発生装置の電磁コイルの絶縁抵抗測定には、従来から市販のデジタル式絶縁抵抗計ではなく、アナログ式絶縁抵抗計を用いていた。市販のデジタル絶縁抵抗計は、ある一定の絶縁抵抗値以上あるかどうか、すなわち健全性の判定の目的に製作されており、絶縁抵抗が低い領域を測定するニーズが少ない。そのため、市販のデジタル絶縁抵抗計の測定範囲は0.1MΩ〜100MΩ程度の範囲に設定されており、電磁コイルの絶縁抵抗を監視するには不適切である。ところが、アナログ式絶縁抵抗計は、デジタル式絶縁抵抗計に比べて絶縁抵抗の測定精度が悪いため、電磁コイルの絶縁抵抗を適切に監視するのは困難である。
【0054】
これに対して、本実施形態では、電磁コイル測定用の絶縁抵抗計として、直流電圧発生器21を用いて試験電圧を印加し、微小電流(0〜100mA)を測定可能な電流センサ24を用いて直流電圧印加時の微小電流を測定する構成を採用する。これにより、電磁コイル15の絶縁抵抗値が最低許容絶縁抵抗0.02MΩを上回っているか否かを、精度良く監視することができる。
【0055】
さらに、絶縁試験により得られた絶縁抵抗測定データを長期管理することで、操業中に絶縁抵抗が低下するのを適切に予兆することができるので、計画的な電磁場発生装置16の交換作業が可能となる。その結果、突発的に電磁コイル15の交換が発生したり、完全に絶縁が0となってコイルそのものが焼損したりするという問題を回避することができると共に、過剰なメンテナンスを抑止することができる。
【0056】
図6は、本実施形態の効果を示す図である。
この図6に示すように、モールド4を交換するタイミングで電磁コイル15の絶縁試験を行う従来の方法では、絶縁試験を行うピッチがα(1回/2ヶ月ピッチ)である。そのため、この従来の方法では、ピッチαで取得される絶縁抵抗測定データをもとに、電磁コイルの絶縁低下を予測することになる。
【0057】
絶縁抵抗測定データa1を取得した時点で次回の絶縁抵抗測定データa2を予測したとき、予測した絶縁抵抗値が焼損注意域の介入閾値Ra(0.02MΩ)を上回っている場合には、そのまま電磁コイルの使用を継続しても問題ないと判断されてしまう。しかしながら、絶縁抵抗測定データa1を取得した後、何らかの理由により絶縁抵抗が急激に低下することも考えられ、この場合、次回の絶縁試験を行うタイミングとなる前に絶縁抵抗値が焼損警告域に突入してしまう。すると、絶縁回復処置が間に合わず、最悪の場合コイルそのものが焼損し、コイルの巻替に至ってしまうおそれがある。
【0058】
これに対し、本実施形態では、通常操業中における鋳込間となるタイミングで電磁コイル15の絶縁試験を行うことができるため、当該絶縁試験を行うピッチはβ(数回/1日ピッチ)となり、従来のα(1回/2ヶ月ピッチ)に比べて大幅に短縮される。
そのため、仮に絶縁抵抗測定データb1を取得した後、何らかの理由により絶縁抵抗が急激に低下し始めたとしても、短スパンで絶縁試験を行っているため、絶縁抵抗測定データb2が焼損注意域の介入閾値Ra(0.02MΩ)以下となったときに絶縁回復処置を施すことができる。このように、電磁コイルが焼損に至る前に絶縁回復処置を施すことができるため、電磁コイルの再使用が可能となる。
【0059】
さらに、電磁コイルの絶縁低下を適切に予測し、計画的に電磁場発生装置の交換作業を行うことができるので、突発的に交換作業が必要となるのを回避することができ、連続鋳造機の稼働率の低下を最小限にすることができる。
以上のように、電磁コイル15の絶縁試験を行った後は、後行鋳片の溶鋼2がモールド4に装入されたタイミングで電磁コイル15からモールド4内の溶鋼2に電磁場を印加し、当該電磁場を印加しながら後行鋳片の鋳造を行う。ここで、電磁コイル15から電磁場を印加するタイミングは、例えば、絶縁試験終了タイミングを基準として決定する。
【0060】
ダミーバー11は、その寸法が既知である。そのため、ダミーバー11の搬送速度が分かれば、ダミーバー11の先端部が第1のピンチロール6に到達したタイミングをもとに、後行鋳片の先端部が第1のピンチロール6に到達するタイミング、即ち後行鋳片の溶鋼2がモールド4内に装入されるタイミングを求めることができる。
このように、後行鋳片の溶鋼2がモールド4に装入されるタイミングで電磁コイル15から電磁場を印加するようにすることで、不必要な電磁場印加を回避することができる。
【0061】
なお、上記本実施形態においては、電磁場発生装置16の電磁コイル15をモールド4に配置する場合について説明したが、モールド4の下流側の二次冷却帯に電磁コイルを配置したものにも本発明を適用することができる。この場合、鋳片7が電磁コイル15による電磁場印加領域を抜けたタイミングを絶縁試験開始タイミングとし、ダミーバー11が上記電磁場印加領域に装入されたタイミングを絶縁試験終了タイミングとする。そして、これら絶縁試験開始タイミング及び絶縁試験終了タイミングは、上記電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて検出する。
【符号の説明】
【0062】
1…連続鋳造機、2…溶鋼、3…タンディッシュ、4…モールド、5…鋳造床、6…ピンチロール、7…鋳片、7a…先行鋳片、7b…後行鋳片、8…トーチカー、9…ダミーバーカー、10…ダミーバー巻上装置、11…ダミーバー、12…回転検出器(PLG)、15…電磁コイル、16…電磁場発生装置、17…電磁場発生用電源装置、20…異常診断装置、21…直流電圧発生器(異常診断用電源)、22…接続切替スイッチ、23…ライン制御装置、24…電流センサ、25…信号処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造機で鋳造する鋳片内部の溶鋼に電磁場を印加するための電磁コイルを備える電磁場発生装置の異常を診断する、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置であって、
前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加する異常診断用電源と、
鋳片が前記電磁コイルによる電磁場印加領域から抜けたことを検出する鋳片抽出検出手段と、
前記鋳片抽出検出手段で鋳片が前記電磁場印加領域から抜けたことを検出したとき、前記電磁コイルと当該電磁コイルに電磁場発生用の電流を供給する電磁場発生用電源との接続を切断し、前記電磁コイルと前記異常診断用電源との接続に切り替える接続切替手段と、
前記接続切替手段で前記電磁コイルと前記異常診断用電源とを接続し、前記電磁コイルに前記直流電圧を印加した状態で、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断する異常診断手段と、を備えることを特徴とする連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項2】
前記鋳片抽出検出手段は、
前記電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、鋳片の後端部が当該ピンチロールを通過したことを検出し、これをもって鋳片が前記電磁場印加領域から抜けたことを検出することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項3】
溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出する溶鋼装入検出手段と、
前記溶鋼装入検出手段で溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出したとき、前記電磁コイルと前記異常診断用電源との接続を切断し、前記電磁コイルと前記電磁場発生用電源との接続を復帰する接続復帰手段と、を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項4】
前記溶鋼装入検出手段は、
前記電磁場印加領域の直下流側に設けられたピンチロールの回転速度に基づいて、ダミーバーの先端部が当該ピンチロールに到達したことを検出し、これをもって溶鋼が前記電磁場印加領域に装入されたことを検出することを特徴とする請求項3に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項5】
前記電磁コイルは、連続鋳造機の鋳型に配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項6】
前記異常診断手段は、
前記異常診断用電源からの直流電圧印加時に前記電磁コイルに流れる微小電流を検出する微小電流検出手段と、
前記異常診断用電源の直流電圧値と前記微小電流検出手段で検出した微小電流値とに基づいて、前記電磁コイルの絶縁抵抗値を測定する絶縁抵抗測定手段と、を備え、
前記絶縁抵抗測定手段で測定した絶縁抵抗値の変化を監視することで、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断装置。
【請求項7】
連続鋳造機で鋳造する鋳片内部の溶鋼に電磁場を印加するための電磁コイルを備える電磁場発生装置の異常を診断する、連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断方法であって、
前記連続鋳造機の操業中で前記電磁場発生装置による電磁場の印加が不要となる電磁場非印加期間に、前記電磁コイルと当該電磁コイルに電磁場発生用の電流を供給する電磁場発生用電源との接続を切断し、異常診断用電源から前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加して、前記電磁コイルの絶縁抵抗値の異常を診断することを特徴とする連続鋳造設備における電磁場発生装置の異常診断方法。
【請求項8】
鋳型内の鋳片内部の溶鋼に電磁場発生装置の電磁コイルから電磁場を印加しながら連続鋳造する連続鋳造方法であって、
先行鋳片が前記鋳型から抽出された時点で前記電磁場発生装置による電磁場印加を停止し、前記電磁コイルに一定の直流電圧を印加して当該電磁コイルの絶縁抵抗値の異常診断を行い、その後、後行鋳片の溶鋼が前記鋳型に装入されたら、前記電磁場発生装置による電磁場印加を再開して前記後行鋳片の溶鋼を鋳造することを特徴とする連続鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−94809(P2013−94809A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239067(P2011−239067)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】