説明

進行乳癌の処置のための投与量500mgでのフルベストラント

本発明は、内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性の処置で使用するための投与量500mgでのフルベストラントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性の処置で使用するための投与量500mgでのフルベストラントに関する。
【背景技術】
【0002】
乳癌は女性におけるもっとも一般的な悪性腫瘍の一つであり、全世界の女性の癌の18%を構成し(Mcpherson et al 2000)、癌死亡のもっとも一般的な原因である。発生率は母集団により異なり、全症例の約半分が北米および西欧で生じている。多くの乳癌はホルモン依存性であり、ホルモン操作が疾患の経過に影響を及ぼす可能性があることが、長い間認められてきた(Beatson 1896)。ホルモン操作に対する反応を決定するもっとも重要な因子は、標的組織におけるエストロゲン受容体(ER)の存在である(Fisher et al 2001)。
【0003】
抗エストロゲン薬(AO)のタモキシフェンは、閉経前および閉経後の両方の女性においてもっとも幅広く用いられてきた乳癌の内分泌療法である。しかしながら、有効性が立証されてはいるが、処置中にデノボまたは後天性の耐性が生じる可能性がある。タモキシフェンはERに対するその部分アゴニスト活性に起因して腫瘍成長を促進する可能性があるため、患者によっては治療期間中に疾患が進行する(Wiebe et al 1993)。
【0004】
タモキシフェンのアゴニスト活性を有さない純粋なAOの探索により、ICI 182780(フルベストラントまたはFASLODEXTMとしても知られる)の発見および臨床開発がもたらされた。フルベストラントは、公知のアゴニスト的性質を有さないERアンタゴニストであり、ERの細胞レベルを用量依存的に下方制御する(Howell et al 2000、Robertson et al 2001、Wakeling et al 1991)。フルベストラントは良好な忍容性を示し、内分泌療法後に乳癌が進行した女性における有効性が立証されている(Howell et al 2002、Osborne et al 2002、Chia et al 2008)。
【0005】
初期乳癌と診断された女性は、内分泌療法が適切である場合、一般にタモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤で処置される。しかしながら、癌が再発または進行する場合、代替療法が必要である。フルベストラント(FASLODEXTM)は、現在、代替的内分泌療法として250mgの用量で承認されている。本発明は、フルベストラントの用量を500mgに増加させることが、250mgの用量に比べ患者にとって有利であるという発見に基づいている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】BMJ 2000;321:624−8
【非特許文献2】Lancet 1896;2:104−7
【非特許文献3】J Clin Oncol.2001;19(4):931−42
【非特許文献4】Crit Rev Oncol Hematol 1993:14:173−88
【非特許文献5】Cancer 2000;89:817−25
【非特許文献6】Cancer Res 2001;6:6739−46
【非特許文献7】Cancer Research 1991;51:3867−73
【非特許文献8】J Clin Oncol,2002;20:3396−3403
【非特許文献9】J Clin Oncol,2002;20:3386−3395
【非特許文献10】J Clin Oncol 2008;26:1664−70
【発明の概要】
【0007】
本発明の特徴の一つは、内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性の処置で使用するための投与量500mgでのフルベストラントを提供する。フルベストラントは、月1回投与することが好ましい。好ましくは、500mgの追加的用量を、処置の最初の1カ月の間に投与する。追加的用量は、約14日目に投与することが好ましい。女性は、好ましくはエストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性であり;より好ましくはエストロゲン受容体陽性である。好ましくは、内分泌療法での進行または再発は、タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤での治療を含んでいた。アロマターゼ阻害剤は、好ましくは、アナストロゾール、レトロゾールまたはエキセメスタン;より好ましくは、アナストロゾールまたはレトロゾールから選択される。投与量500mgでのフルベストラントの使用は、投与量250mgでのフルベストラントと比較して、無増悪期間(time to progression)を増大させることが好ましい;詳細には、好ましくは、該用量を月1回投与し、500mgの追加的用量を最初の月に投与する。タモキシフェン、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンはすべて、乳癌女性への投与が規制当局により承認されている市販薬である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、250mgのフルベストラントを500mgと比較する、無増悪期間のKaplan−Meierプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の他の特徴は、内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性の処置薬の調製に、フルベストラントを500mgの投与量で使用すること提供する。この特徴は、本明細書中に記載する好ましい特徴のいずれかと組み合わせることができる。
【0010】
本発明の他の特徴は、内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性を、投与量500mgのフルベストラントで処置することを提供する。この特徴は、本明細書中に記載する好ましい特徴のいずれかと組み合わせることができる。
【0011】
本発明を、以下の非限定的実施例により例証する。ここにおいて、図1は、250mgのフルベストラントを500mgと比較する、無増悪期間のKaplan−Meierプロットを示す。x軸は月単位での時間を示し、y軸は進行がみられない患者の割合を示す。チェックマークは観察の打ち切りを示す。
略語のリストおよび用語の定義
【0012】
【表1】

【0013】
【表2】

【0014】
【表3】

【実施例】
【0015】
実施例1
以前の内分泌療法の後に進行または再発している閉経後エストロゲン受容体陽性進行乳癌女性におけるフルベストラント(FASLODEXTM)500mgの有効性および忍容性をフルベストラント(FASLODEXTM)250mgと比較する、無作為化二重盲検並行群間多施設第III相試験
本試験では、フルベストラントの用量と有効性の関係を評価した。現在承認されているフルベストラントの用量および投与スケジュール(28日ごとに250mg)を、より高用量レジメン(28日ごとに500mgおよび最初の1カ月のみ14日目に追加的な500mg)と比較した。本試験をCONFIRMともよぶ。
試験施設
17カ国(ベルギー、ブラジル、チリ、コロンビア、チェコ共和国、ハンガリー、インド、イタリア、マルタ、メキシコ、ポーランド、ロシア、スロバキア、スペイン、米国、ウクライナおよびベネズエラ)の128施設。米国、メキシコ、イタリア、ブラジル、スペイン、チリ、コロンビアおよびベネズエラは、試験中の健康に関する生活の質(HRQoL)の評価にも参加した。
目的
本試験の一次目的は、無増悪期間(TTP)に関し、フルベストラント500mgでの処置の有効性をフルベストラント250mgでの処置と比較することであった。本試験の二次目的は、以下のとおりであった:
・フルベストラント500mgで処置した患者の客観的奏効率(ORR)をフルベストラント250mgで処置した患者の客観的奏効率と比較する。
・フルベストラント500mgで処置した患者の臨床利益率(CBR)をフルベストラント250mgで処置した患者の臨床利益率と比較する。
・フルベストラント500mgで処置した患者の奏効期間(DoR)をフルベストラント250mgで処置した患者の奏効期間と比較する。
・フルベストラント500mgで処置した患者の臨床利益期間(DoCB)をフルベストラント250mgで処置した患者の臨床利益期間と比較する。
・フルベストラント500mgで処置した患者の全生存期間(OS)をフルベストラント250mgで処置した患者の全生存期間と比較する。
・フルベストラント500mgでの処置の忍容性をフルベストラント250mgでの処置と比較して評価する。
・患者の亜群において、フルベストラント500mgで処置した患者の健康に関する生活の質(HRQoL)をフルベストラント250mgと比較して評価する。
試験デザイン
これは、アジュバント内分泌療法の期間中に再発したか、進行疾患のための最初の内分泌療法の期間中に進行した、閉経後エストロゲン受容体陽性(ER+ve)進行乳癌女性において、フルベストラントの2つの用量レベルを比較するための、無作為化二重盲検並行群間多施設第III相試験であった。
標的患者母集団および被験者数
以前の内分泌療法で再発または進行したER+ve乳癌が組織学的/細胞学的に確認されている合計720人の閉経後女性を採用する予定であった;実際は合計736人を無作為化した。
【0016】
被験者数の算出は、一次変数、TTP、および推定される指数関数的進行時間(assumed exponential progression time)に基づいていた。被験者数は、必要な事象の数により決めた。検出力80%、両側有意水準5%でフルベストラント500mgをフルベストラント250mgと比較して≦0.8(または≧1.25)のハザード比を検出するためには、試験において約632の事象が生じる(すなわち、約632人の患者で進行または死亡がみられる)ことが必要であった。
治験薬および対照薬:投与量、投与方法およびバッチ数
フルベストラント500mgを、2回の5mLの筋肉内(im)注射として、各臀部に1回ずつ、第0、14、28日目およびその後28(±3)日ごとに投与した。
【0017】
フルベストラント250mgを、2回の5mLのim注射(フルベストラント注射1回およびプラセボ注射1回)として、各臀部に1回ずつ、第0、14(プラセボ注射のみを2回)、28日目およびその後28(±3)日ごとに投与した。
処置期間
処置は、処置中止基準のいずれかが最初に満たされない限り、疾患進行がみられるまで継続した。
査定基準−有効性および薬物動態(主要変数)
有効性
一次アウトカム変数TTP;二次変数は、ORR、CBR、DoR、DoCBおよびOSであった。
患者報告アウトカム
HRQoLに関する一次患者報告アウトカムは、癌治療の機能的評価−乳癌(FACT−B)のアンケートから導かれる治験アウトカム指標(TOI)であった。
査定基準−安全性(主要変数)
安全性に関するアウトカム変数は、あらかじめ指定した対象となる有害事象(AE)を含むAEの頻度および重症度であった。
統計手法
一次エンドポイントTTPに関しては、一次解析は未調整ログランク検定であり、二次解析は、処置および他のあらかじめ定義した共変数について調整したCox比例ハザードモデルであった。
【0018】
OSについては、未調整ログランク検定を実施した。ORRおよびCBRについては、処置因子のみを用いたロジスティック回帰モデルを適合させた。DoRおよびDoCBは、それぞれORおよびCBを示した患者で分析した。HRQoLエンドポイントについては、処置および他の共変数を用いた縦断モデルを用いた。
【0019】
TTP、ORR、CBR、DoR、DoCB、OS、FACT−B評点およびTOI評点の仮定は、
:フルベストラント500mgはフルベストラント250mgと違わない、対
:フルベストラント500mgはフルベストラント250mgとは異なる
であった。
【0020】
有効性およびHRQoLエンドポイントについては、要約および解析を、無作為化処置に従って、すなわち、最大の解析対象集団を用いて実施した。安全性エンドポイントについては、要約および解析を、実際に受けた処置に従って、すなわち、安全性解析対象集団を用いて実施した。一次エンドポイントも、治験実施計画書に適合した対象集団(PPS)で解析した。
患者母集団
合計720人の患者を採用する予定であった;実際は736人を無作為化した。略図S1は、2処置群のそれぞれに無作為化された患者の数および各解析集団における数を示している。これに加えて、HRQoLを、最大の解析対象集団の患者のうち145人で解析した(フルベストラント500mg群で72人の患者およびフルベストラント250mg群で73人の患者)。患者母集団は、採用される意向がある集団と一致していた。フルベストラント500mg群では、データカットオフ(DCO)時に41人の患者が試験処置継続中であったのに比べ、フルベストラント250mg群では31人の患者であった。
1.1 試験母集団の選択
試験に参加する前に、適格基準を満たしていること確認するために患者を評価した。治験責任医師は、登録を考慮したが無作為化しなかった患者の記録を残さなければならなかった(患者スクリーニング日誌(patient screening log))。この情報は、患者母集団が偏り無く選択されたことを確証するのに必要である。患者スクリーニング日誌は、各施設の治験責任医師の試験ファイルに入れておかなければならなかった。
1.1.1 組み入れ基準
試験に組み入れるために、患者は以下の基準をすべて満たさなければならなかった:
1. 書面によるインフォームドコンセントを提供する
2. 乳癌が組織学的/細胞学的に確認されている
3. 現地の検査パラメーターにしたがって、原発性または転移性腫瘍組織のER+ve状態が実証されている
4.内分泌療法を必要としている:
−アジュバント内分泌療法(タモキシフェンもしくはトレミフェンか、またはアナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンなどのAI)の期間中または終了後12カ月以内に再発している。あるいは、
−内分泌療法(タモキシフェンもしくはトレミフェンか、またはアナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンなどのAI)で進行している。ただし、この内分泌療法は、アジュバント内分泌療法の終了後少なくとも12カ月経ってから開始された。あるいは、
−デノボ進行乳癌を有する患者に最初の処置として施される内分泌療法(タモキシフェンもしくはトレミフェンか、またはアナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンなどのAI)で進行している。[進行乳癌:治療目的の処置の効果が出にくい転移性疾患または局所進行疾患。]
5.以下の基準の一つを満たしている:
−患者は、RECIST基準に従った測定可能疾患を有する。これは、少なくとも1つの寸法(記録される最長径)において従来の技術で≧20mmまたはスパイラルCTスキャンで≧10mmと正確に測定することができる、少なくとも1つの病変と定義される。
【0021】
−患者は、RECISTにより定義される測定可能疾患がない場合、溶解性または混合型(溶解性および造骨性)骨病変を有する。
6.閉経後女性は、以下の基準のいずれか1つを満たす女性と定義される:
−年齢≧60才。
【0022】
−無傷子宮で無月経≧12カ月であり、年齢≧45才である。
−両側卵巣摘出術を受けたことがある。
−卵胞刺激ホルモン(FSH)およびエストラジオールのレベルが閉経後の範囲(現地の検査施設からの範囲を活用する)にある。
【0023】
−以前に黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)類似体で処置されたことがある患者に関しては、最後のデポ剤が無作為化に先立ち4カ月より前に投与されていなければならず、月経が再開していてはならず、FSHおよびエストラジオールのレベルが同様に閉経後の範囲(現地の検査施設からの範囲を活用する)になければならない。
7.WHOによる一般状態が0、1または2である。
組み入れ基準の論理的根拠
1.この基準は試験の倫理的行為の一部として設定しており、GCPに従っている。
2.この基準は、乳癌を客観的に確認するために設定した。
3.この基準は、作用機序に基づきフルベストラントに反応を示すと予想される患者母集団を選択するために設定した。
4.この基準は、本試験における乳癌のホルモン療法歴を明白にするために設定した。
5.この基準は、修正RECISTに従った有効性評価の実施を可能にするために設定した。
6.この基準は、閉経前乳癌患者でのフルベストラントの効果が十分に評価されていなかったので設定した。
7.この基準は、有効性評価を適切に実施し、患者の安全性を確実にするために、設定した。
1.1.2 除外基準
以下のいずれも、本試験から除外する基準とみなした:
1.広範な肝病変(extensive hepatic involvement)、またはあらゆる程度の脳もしくは軟髄膜の病変(過去または現在)、または症候性肺リンパ管症(symptomatic pulmonary lymphangitic spread)と定義される、生命を脅かす転移性内臓疾患が存在する。孤立性肺実質転移を有する患者は、疾患に起因する呼吸機能不全が起きていないという条件で、適格とした。
2.進行疾患のための化学療法レジメンが1を超える。[以前に進行疾患のための1つの化学療法レジメンで処置された患者は、最後の処置がAOまたはAIであるならば許容した。]
3.進行疾患のための内分泌療法レジメンが1を超える。[卵巣摘出、卵巣切除、またはLHRH類似体療法は、本試験の状況では内分泌療法とみなされず、これらにより患者が本試験に不適格となることはなかった。]
4.スクリーニング検査評価に先立ち最近4週間以内の広範な放射線療法(骨髄の30%以上または骨盤もしくは脊椎の全体)または過去4週間以内の細胞毒性処置、あるいは、過去3カ月以内のストロンチウム−90(または他の放射性医薬品)。
5.無作為化に先立つ4週間以内に未承認薬または実験的薬剤で処置されている。
6.現在、または先立つ3年以内の以前の悪性腫瘍(乳癌、または適切に処置された皮膚の基底細胞癌もしくは扁平上皮癌、または子宮頸部上皮内癌を除く)。
7.以下の検査値のいずれかを有する:
−血小板<100×10/L
−総ビリルビン>1.5×基準範囲上限値(ULRR)
−ALTまたはASTが、明らかな肝転移がない場合は>2.5×ULRR、または、肝転移の存在下では>5×ULRR。
8.以下の病歴がある:
−出血性素因(すなわち、播種性血管内凝固、凝固因子欠乏)、または
−長期抗凝固療法(抗血小板療法および低容量ワルファリンを除く)(CSPの3.7節参照[本報告書の補遺12.1.1])。
9.フルベストラントの活性もしくは不活性賦形剤および/またはヒマシ油に対する過敏症歴がある。
10.患者の治験への参加を望ましくないものにする、またはCSPの遵守を危うくするかもしれない、あらゆる深刻な随伴状態、例えば、管理されていない心臓病または管理されていない糖尿病を有する。
除外基準の論理的根拠
患者の安全性あるいは閉経後ホルモン受容体陽性進行または再発乳癌におけるフルベストラントの有効性評価に影響を及ぼすと考えられたので、併発症、併用薬および患者の状態に関する除外基準を設定した。
1.1.3 制約
本治験では以下の制約を患者に適用した:
1.供血者であった患者は、本試験中および無作為化処置の最後の投与後12週間は血液を提供してはならなかった。
2.疾患進行が確認された患者は、無作為化処置での採用を中止していなければならない。
3.CSPの3.7節に挙げられている併用療法。
制約の論理的根拠
1.この制約は、本試験の追加的血液サンプリング要件の後に供血による貧血が確実に起こらないようにするために組み入れた。
2.この制約は、試験処置に由来する臨床利益を受けていないか受けるのを止めた患者を保護するために組み入れており、現行の臨床業務(clinical practice)と一致している。
3.この制約は、CSPの3.7節に挙げられている併用療法が患者の安全性または試験薬の有効性評価に影響を及ぼすと考えられたため、組み入れた。
1.1.4 患者の処置または評価の中止
試験処置または評価での患者の採用は、治験責任医師の判断でいつでも中止することができた。また、患者は、他の処置に不利益を被ることなく、いつでも本試験での参加を自由に中止することができた。本試験での患者の採用を中止する具体的な理由、および患者が中止したか間違って登録された場合に従うべき手順は、CSPの3.3.5節に挙げられている。中止した患者に関しては、本試験の投薬を止めた後に評価したかどうか、ならびに中止理由(1以上)および有害事象(AE)の有無について質問したかどうかを、書き留めておいた。可能な場合、治験責任医師がそれらを見て評価した。AEは、最後の注射の後56日間にわたり追跡調査した。
略図S1 解析対象集団
【0024】
【化1】

【0025】
安全性解析対象集団から除外された患者は、逸脱者(deviator)としても分類された。したがって、これらのn値は互いに排反しない。
人口統計学的特性およびベースライン特性の概要
試験に無作為化した患者の合計96.1%は白人であった。患者の平均年齢は60.9才で、患者の平均体重は約70kgであった。腫瘍の特性は、2処置群間で均衡がとれていた。ほとんどの患者(507人[68.9%])は一次診断においてER+veおよびPgR+veであり、ほとんどすべての患者(721人[98%])はベースラインにおいて転移性疾患を有していた。本試験では、患者の42.5%にAI療法での再発または進行がみられ、57.5%にAOでの再発または進行がみられた。ほとんどの患者で、以前のアジュバント内分泌癌療法の期間中(344人の患者[46.7%])か、デノボ進行疾患の最初の処置として行われた内分泌療法の期間中(255人の患者[34.6%])のいずれかに、再発または進行がみられた。患者の約3分の2で、最後の内分泌療法に対し奏効がみられた。[アジュバント内分泌療法で≧2年後に再発がみられた患者、および/または進行疾患のファーストライン療法から臨床利益を受けた患者(CR、PRまたはSD≧24週)と定義される。]
有効性の結果の概要
有効性データの概要を表S1に示す。
【0026】
【表4】

【0027】
TTP≡無増悪生存期間。データカットオフ時に、患者の84%が、進行していたか、進行することなく死亡していた。
無作為化から進行までを測定した。
無作為化から。
TTP:無増悪期間;ORR:客観的奏効率;CBR:臨床利益率;DoR:奏効期間;DoCB:臨床利益期間;OS:全生存期間;EDoR:予想奏効期間;EDoCB:予想臨床利益期間。
【0028】
フルベストラント500mgは、フルベストラント250mgと比較して有意に長いTTP(ハザード比=0.80[95%CI 0.68〜0.94];p=0.006)に関連づけられ、これは、進行リスクの20%低下に相当していた。亜群解析は、以前にアロマターゼ阻害剤(AI)または抗エストロゲン薬(AO)のいずれかで処置された患者を含む、あらかじめ定義した6つのベースライン共変量のすべてで、一致した処置効果を示した。
【0029】
フルベストラント500mgおよびフルベストラント250mgのORRは同様であったが(それぞれ13.8%および14.6%、オッズ比=0.94[95%CI 0.57〜1.55];p=0.795)、フルベストラント250mgを投与された患者に比べ、フルベストラント500mgを投与された患者には、CBRが増大する傾向があった(45.6%対39.6%、オッズ比=1.28[95%CI 0.95〜1.71];p=0.100)。
【0030】
予想DoR(EDoR)には2群間に統計的有意差はなかった;しかしながら、フルベストラント250mgを投与されるように無作為化された患者と比較して、フルベストラント500mgを投与されるように無作為化された患者における予想DoCB(EDoCB)には統計的に有意な改善がみられた(9.83カ月対7.24カ月、EDoCBの比率=1.357[95%CI 1.067〜1.726];p=0.013)。
【0031】
フルベストラント250mgと比較して、フルベストラント500mgで処置した患者には生存期間が改善する傾向があった(ハザード比=0.84[95%CI 0.69〜1.03];p=0.091);これは死亡リスクの16%低下に相当する。
【0032】
測定された場合、患者の亜群において、処置中のHRQoLは、フルベストラント500mgおよびフルベストラント250mgの両方に関し良好であった(平均TOI評点は92点中約60点)。フルベストラント500mgで処置した患者はフルベストラント250mgで処置した患者と同様の処置中のHRQoLを有しており、TOIおよびFACT−Bの両方の評点により測定した処置中のHRQoLにおける変化の点で2処置群間に統計的有意差はなかったが、TOIにはフルベストラント500mgに有利な数的優位がみられた。
有効性の結果
一次変数:無増悪期間
本試験の一次目的は、フルベストラント500mgで処置した患者とフルベストラント250mgで処置した患者のTTPを比較することであった。一次解析対象集団は、最大の解析対象集団であった。PPSにおけるTTPの解析も、二次解析として実施した。表S2は、最大の解析対象集団におけるフルベストラント500mgおよびフルベストラント250mg群の患者に関するTTPデータを示している;図1は、これらのデータのKaplan−Meierプロットを示している。
【0033】
DCO時に、618人/736人(84.0%)の患者が、進行していたか、進行することなく死亡していた(フルベストラント500mg群で297人[82.0%]およびフルベストラント250mg群で321人[85.8%])。未調整ログランク検定は、フルベストラント500mg群の患者のTTPが、フルベストラント250mg群の患者より有意に長かったことを示している(ハザード比=0.80[95%CI 0.68〜0.94];p=0.006)。TTP中央値は、フルベストラント500mg群で6.5カ月、フルベストラント250mg群で5.5カ月であった。最大の解析対象集団におけるTTPのKaplan−Meierプロットは、約3カ月目から2処置群間が分離することを示しており、フルベストラント500mg群が有利である。
【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
無増悪期間とは、無作為化と、進行のもっとも初期または何らかの原因による死亡との間の期間である。
ハザード比<1は、フルベストラント500mgがフルベストラント250mgより疾患進行までの期間が長いことを示す。
【0037】
ハザード比>1は、フルベストラント500mgがフルベストラント250mgより疾患進行までの期間が短いことを示す。
データ源:表11.2.1.1、11.2.1.2および11.2.1.5。
【0038】
TTPの一次解析は、処置および6つの特定の共変量について調整したCox比例ハザード回帰分析により裏付けられる(ハザード比=0.78[95%CI 0.67〜0.92];p=0.003)。
安全性の結果の概要
フルベストラント500mgは忍容性が高く、その安全性プロフィールはフルベストラント250mgの公知の安全性プロフィールと一致していた。あらかじめ指定した対象となるAEのうちもっとも多く報告されたのは、胃腸障害および関節疾患であった(各処置群でそれぞれ患者の約20%および19%)。AE、重篤なAE、および中止につながるAEの発生率およびタイプに、処置群間の差はなかった。あらゆるAEに関し、用量依存性の証拠はみられなかった。血液学的検査、臨床化学的検査、バイタルサインまたは身体所見に、臨床的に重要な変化はなかった。
結論
本試験は、内分泌療法で進行または再発した閉経後ER+ve進行乳癌女性の処置において、フルベストラント500mgが、TTPの点で、フルベストラント250mgを超える臨床的に重要な利益をもたらすことを立証するものである。さらなる解析により、本試験で得たTTPデータがロバスト(robust)であることが立証された。結果は、フルベストラント500mgがフルベストラント250mgと比較して疾患進行リスクを20%低下させることを示している。フルベストラント500mg群における進行リスクは、250mg群と比較して、3つの観察された因子により低下すると思われる:
・病勢進行の最良の客観的効果がみられた患者の割合の低下(フルベストラント500mg群で38.7%対フルベストラント250mg群で44.7%)
・臨床利益を得た患者の割合の上昇(それぞれ45.6%対39.6%)
・臨床利益を受けた患者における臨床利益期間の増大(中央値はそれぞれ16.6カ月対13.9カ月)。
【0039】
フルベストラント500mg群では生存期間が改善する傾向もみられた(中央値は250mg群の22.8カ月と比較して25.1カ月)。これは、全生存期間に関し観察された処置の比較により、TTPに関し観察された優位が裏付けられることを示しており、進行の点で処置によりもたらされる利益が、進行を超えた範囲で維持される(maintained past progression)ことを示唆している。
【0040】
測定された場合、患者の亜群において、処置中のHRQoLは、患者が試験処置を受けている間安定であり続けた;フルベストラント500mg用量の250mgと比較しての有害作用はみられなかった。
【0041】
フルベストラントを登録するための治験の試験20/21では、フルベストラント250mgがアナストロゾールに劣らないことが示されている(Robertson et al 2003)。CONFIRM試験における患者の人口統計学的特性は、試験20/21の複合解析における患者の特性と概して同様であり、フルベストラント250mgに関する有効性の結果は試験間で一致していた(CONFIRMおよび試験20/21の複合解析においてTTP中央値は5.5カ月)。これらの試験からのデータにより、フルベストラント500mgが、すでに有効とされている250mg用量を超える著しい利益をもたらすことが、さらに再確認される。
【0042】
フルベストラント500mgの方を有利とするTTPに関する処置効果は、解析したすべての亜群全体で一致していた。多くの市場において、フルベストラント250mgに関する規制当局による現在の承認が、AO療法で進行した患者に限定されていることを考えると、アロマターゼ阻害剤(AI)および抗エストロゲン(AO)亜群においてTTP処置効果が一致していることはとりわけ興味深い。乳癌で非ステロイド系AIを使用することが最初に規制当局により承認されて以来、臨床業務における変化は、アジュバントセッティングおよびアドバンストセッティング(the adjuvant and the advanced setting)の両方においてこれらの薬剤であらかじめ処置されている患者の割合が大幅に増加していることを意味してきた(National Comprehensive Cancer Network[NCCN],Inc.2009と、より詳しい情報についてはその中の参考文献を参照のこと)。AI療法で進行する患者に利用可能な内分泌処置の選択肢はほとんどなく、したがって、そのような療法がうまくいかなかった後に無増悪期間を効果的に延長する薬剤を確認することは重要である。非ステロイド系AIで進行した患者においてステロイド構造を有する同クラスの薬剤(ステロイド系AI)を使用することはNCCNのようなガイドラインにより裏付けられているが、この処置順序が規制当局により承認されているこのタイプの薬剤は今のところない。フルベストラント500mgはAIとは異なる作用機序を有し、AOまたはAI療法のいずれかの期間中に進行した患者での第III相のセッティングにおいて一致した利益を示す最初の薬剤である。
【0043】
フルベストラント500mgの安全性プロフィールは、フルベストラント250mgの公知の安全性プロフィールと一致しており、あらゆるAEに関し用量依存性の証拠はみられない。試験処置が原因として関係している可能性があると治験責任医師が考えた2つのSAEでは、患者の病歴および併用薬における他の因子により混乱が生じていた。あらかじめ指定したAEの発生率は、2処置群間で均衡がとれていた。注射部位反応の発生率は処置群間で同様であったが、二重盲検の計画であったため注射手順の完全評価を査定することは不可能であった。しかしながら、フルベストラントの用量を2倍にすることに伴うAE発生率の上昇はないと観察されることが、再確認される。
【0044】
全般的に、フルベストラント500mgは、フルベストラント250mgと比較して、安全性、忍容性またはHRQoLに対し有害作用を生じることなく、改善された有効性をもたらす。
全般的結論
CONFIRM試験により、現在承認されている用量のフルベストラント250mgと比較した場合のフルベストラント500mgの有効性の明らかな改善が立証された。フルベストラント500mgを投与された患者では、TTPの統計的に有意な延長がみられ、進行リスクが20%低下した。フルベストラント500mgが、フルベストラント250mgを超える優れた有効性、同様の安全性、忍容性およびHRQoLを示すことを考慮して、われわれは、内分泌療法で再発または進行した患者においてフルベストラント500mgは優れた利益−リスクプロフィールを示すと結論した。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
内分泌療法で進行または再発した閉経後進行乳癌女性の処置で使用するための投与量500mgでのフルベストラント。
【請求項2】
フルベストラントを月1回投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
500mgの追加的用量を処置の最初の1カ月の間に投与する、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
追加的用量を約14日目に投与する、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
女性がエストロゲン受容体陽性またはプロゲステロン受容体陽性である、請求項1〜4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
女性がエストロゲン受容体陽性である、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
内分泌療法での進行または再発が、タモキシフェンまたはアロマターゼ阻害剤での治療を含んでいた、請求項1〜6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
アロマターゼ阻害剤が、アナストロゾール、レトロゾールまたはエキセメスタンから選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
投与量250mgでのフルベストラントと比較して無増悪期間を増大させる、請求項1〜8のいずれかに記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−500324(P2013−500324A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522250(P2012−522250)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/051228
【国際公開番号】WO2011/012885
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】