説明

遅延制御装置、制御方法、及び通信システム

【課題】画像を高速かつ低遅延に切り換える。
【解決手段】遅延制御装置24は、画像データを送信する複数のカメラ31のそれぞれを、回線を介してコントロールする複数のCCU33が、複数のカメラ31を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得する。そして、遅延制御装置24は、複数のCCU33ごとの同期タイミングに基づいて、複数のCCU33間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定し、その基準同期タイミングで複数のCCU33がカメラ31それぞれからのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数のCCU33に送信する。本発明は、例えば、複数のスタジオと複数のサブを備えた放送システムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延制御装置、制御方法、及び通信システムに関し、特に、画像を高速に切り換えるようにした遅延制御装置、制御方法、及び通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットやLAN(Local Area Network)など様々なネットワークを介して、画像データ(特に動画像データ)を転送するアプリケーションやサービスが広く利用されている。ネットワークを介して画像データを送受信する場合には、送信側で符号化(圧縮)処理によりデータ量を減少させた上でネットワークに送出し、受信側で符号化された受信データを復号(伸長)処理して再生するのが一般的である。
【0003】
例えば、画像圧縮処理の最も知られた手法として、MPEG(Moving Pictures Experts Group)と呼ばれる圧縮技術がある。MPEG圧縮技術を用いる場合には、MPEG圧縮技術により生成されたMPEGストリームがIP(Internet Protocol)に従ったIPパケットに格納され、ネットワーク経由で配信される。そして、MPEGストリームは、PC(Personal Computer)やPDA(Personal Digital Assistants)、携帯電話などの通信端末を用いて受信され、各端末の画面上に表示される。
【0004】
このような状況の中、画像データの配信を主目的とする例えばビデオオンデマンドやライブ映像の配信、あるいはビデオ会議、テレビ電話などのアプリケーションにおいては、ネットワークのジッタによって送信側のデータが全て受信側へ到達しない環境や、異なる能力を持つ端末に画像データが受信される環境があり、それらの環境を想定する必要がある。
【0005】
例えば、1つの送信源から送信される画像データは、携帯電話などの解像度の低いディスプレイと処理能力の低いCPUを有する受信端末によって受信され、表示される可能性がある。また、それと同時に、デスクトップPCのように高解像度のモニタと高性能のプロセッサを有する受信端末によって受信され、表示される可能性もある。
【0006】
このように、ネットワーク接続環境によって、パケット受信状況が異なることを想定する場合には、例えば送受信するデータの符号化を階層的に実行する、階層符号化と呼ばれる技術が利用される。階層符号化された画像データにおいては、例えば高解像度のディスプレイを有する受信端末向けの符号化データ、及び低解像度のディスプレイを有する受信端末向けの符号化データが選別して保持され、受信側で画像サイズや画質を適宜変更することができる。
【0007】
階層符号化が可能な圧縮・伸張方式としては、例えばMPEG4とJPEG2000によるビデオストリームが挙げられる。MPEG4では、FGS(Fine Granularity Scalability)技術が標準規格として取り込まれプロファイル化される予定であり、この階層符号化技術によりスケーラブルに低いビットレートから高いビットレートまで配信することが可能と言われている。また、ウェーブレット(Wavelet)変換を基盤とするJPEG2000では、ウェーブレット変換の特徴を生かして空間解像度をベースにパケットを生成し、または画質をベースに階層的にパケットを生成することが可能である。また、JPEG2000では、静止画だけではなく動画を扱えるMotion JPEG2000(Part3)規格により、階層化したデータをファイルフォーマットで保存することが可能である。
【0008】
さらに、階層符号化を適用したデータ通信の具体案として提案されているものとして、離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)を基盤とするものがある。これは通信対象の例えば画像データをDCT処理し、DCT処理により高域と低域とを区別して階層化を実現し、高域と低域との階層で区分したパケットを生成してデータ通信を実行する方法である。
【0009】
このような階層符号化された画像データを配信する場合には、多くの場合リアルタイム性が要求されるが、現状ではリアルタイム性よりも大画面・高画質の表示が優先される傾向がある。
【0010】
画像データの配信においてリアルタイム性を確保するためには、IPベースの通信プロトコルとして、通常はUDP(User Datagram Protocol)が用いられる。さらに、UDPの上のレイヤにおいてはRTP(Real-time Transport Protocol)が用いられる。RTPパケットに格納されるデータフォーマットは、アプリケーションごと、即ち符号化方式ごとに定義された個々のフォーマットに従う。
【0011】
また、通信ネットワークとしては、無線または有線によるLAN、光ファイバー通信、xDSL、電力線通信、またはCo−axといった通信方式が用いられる。これらの通信方式は年々高速化しているが、それを送信する画像コンテンツも高画質化している。
【0012】
例えば、現在主流になっているMPEG方式またはJPEG2000方式における代表的なシステムのコード遅延(符号化遅延+復号遅延)は2ピクチャ以上であり、これでは画像データ配信における十分なリアルタイム性が確保されているとは言い難い。
【0013】
そこで、近日、1ピクチャをN個のライン(Nは1以上)の集合に分割し、分割した集合(ラインブロックという。)ごとに画像を符号化することで遅延時間を短くする画像圧縮方式(以下、ラインベース・コーデックという。)が提案され始めている。ラインベース・コーデックの利点としては、低遅延のほか、画像圧縮の1単位で取り扱う情報が少ないことにより、高速処理やハードウェア規模の低減が可能といった利点がある。
【0014】
ラインベース・コーデックを対象とする提案事例としては、次の例が挙げられる。下記特許文献1には、ラインベース・コーデックに基づく通信データについて、ラインブロックごとに適切に欠落データの補完処理を行う通信装置が記載されている。下記特許文献2には、ラインベース・コーデックを用いる場合の遅延の低減と処理の効率化を図った情報処理装置が記載されている。下記特許文献3には、ラインベース・ウェーブレット変換された画像データの低周波数成分を伝送することにより画質の劣化を抑える送信装置が記載されている。ラインベース・コーデックの利用により、高画質・低遅延伝送が行えるようになったため、今後、ライブ中継を行うカメラシステムへの適用が期待されている。ライブ中継を行うカメラシステムを対象とする提案事例としては、特許文献4に開示されているように、本願出願人は、デジタル変調器を用いて伝送効率を上げるシステムを提案している。
【0015】
そこで、特許文献5に開示されているように、本願出願人は、ラインベース・コーデックを用いた通信において安定して同期を獲得する技術を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2007−311948号公報
【特許文献2】特開2008−28541号公報
【特許文献3】特開2008−42222号公報
【特許文献4】特許第3617087号
【特許文献5】特開2009−278545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、従来のライブ中継を行うカメラシステムを高画質でかつ、Ethernet(登録商標)やNGN(Next Generation Network)、無線といった汎用回線に対応させるとなると、遅延量の増大により、ライブ中継の核技術である画像の切り換え処理を高速に行うことは困難である。例えば、複数のカメラの位相合わせは放送システムの場合、高い精度が必要であり、高画質と高い精度の同期を実現するのは困難である。
【0018】
さらに、ライブ中継を行うカメラシステムの複雑さへの対応である。現状、カメラにCCU(Camera Control Unit)一台を必要とし、複雑なシステム構成のカメラシステムにおいて、フレーム同期タイミングの異なるライブ中継制御局の増設は、接続やシステム同期の観点から困難である。ライブ中継を行うカメラシステムで必須なカメラへのGenLockに必要な精度の高い同期タイミングを、高画質・低遅延の要件を満たしながら対応していくことは困難である。
【0019】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、画像を高速かつ低遅延で切り換えることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の側面の遅延制御装置は、データを送信する複数の送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置が、前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する同期情報送信手段とを備える。
【0021】
本発明の第1の側面の制御方法は、データを送信する複数の送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置が、前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得し、取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定し、決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信するステップを含む。
【0022】
本発明の第2の側面の通信システムは、データを送信する複数の送信装置と、複数の前記送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置と、前記送信装置と前記制御装置との間で伝送されるデータの遅延を制御する遅延制御装置とを備えて構成される通信システムであって、前記制御装置が前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得する取得手段と、前記取得手段により取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定する決定手段と、前記決定手段により決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する同期情報送信手段とを有する。
【0023】
本発明の第2の側面の通信システムの制御方法は、データを送信する複数の送信装置と、複数の前記送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置と、前記送信装置と前記制御装置との間で伝送されるデータの遅延を制御する遅延制御装置とを備えて構成される通信システムの制御方法であって、前記制御装置が前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得し、取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定し、決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信するステップを含む。
【0024】
本発明の第1および第2の側面においては、データを送信する複数の送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置が、複数の送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングが取得され、それらの同期タイミングに基づいて、複数の制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングが決定され、その基準同期タイミングで複数の制御装置が送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報が、複数の制御装置に送信される。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1および第2の側面によれば、画像を高速かつ低遅延に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】画像データを符号化する符号化装置の構成例を示す図である。
【図2】分析フィルタリングを4回繰り返すことにより分割された係数データの構成を示す図である。
【図3】ラインブロックを説明する図である。
【図4】本発明を適用した通信システムの第1の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図5】CCUとカメラとの間の画像データの送受信について説明する図である。
【図6】CCUの構成を示すブロック図である。
【図7】カメラにおける画像データの送信処理の流れを示したフローチャートである。
【図8】CCUにおける画像データの受信処理の流れを示したフローチャートである。
【図9】IPパケットのフレームフォーマットについて説明する図である。
【図10】CCU間の同期のずれについて説明する図である。
【図11】遅延制御装置24の動作概要を説明する図である。
【図12】遅延制御装置24の構成例を示すブロック図である。
【図13】本発明を適用した通信システムの第2の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【図14】同期獲得後のシステムタイミングを示す図である。
【図15】通信システムにおける総遅延量について説明する図である。
【図16】遅延制御処理の流れを示したフローチャートである。
【図17】映像制御レイヤ同期の同期方法について説明する図である。
【図18】第1の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する図である。
【図19】本発明を適用した撮像表示装置の構成例を示すブロック図である。
【図20】第2の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する図である。
【図21】第3の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する図である。
【図22】本発明を適用したコンピュータの一実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0028】
[符号化処理の説明]
まず、画像データの符号化処理について説明する。
【0029】
図1は、画像データを符号化する符号化装置の構成例を示す図である。
【0030】
図1に示される符号化装置10は、入力された画像データを符号化して符号化データを生成し、出力する。図1に示されるように符号化装置10は、ウェーブレット変換部11、途中計算用バッファ部12、係数並び替え用バッファ部13、係数並び替え部14、量子化部15、およびエントロピ符号化部16を有する。
【0031】
符号化装置10に入力された画像データは、ウェーブレット変換部11を介して途中計算用バッファ部12に一時的に溜め込まれる。
【0032】
ウェーブレット変換部11は、途中計算用バッファ部12に溜め込まれた画像データに対してウェーブレット変換を施す。このウェーブレット変換の詳細については後述する。ウェーブレット変換部11は、ウェーブレット変換により得られた係数データを係数並び替え用バッファ部13に供給する。
【0033】
係数並び替え部14は、係数並び替え用バッファ部13に書き込まれた係数データを所定の順序(例えば、ウェーブレット逆変換処理順)で読み出し、量子化部15に供給する。
【0034】
量子化部15は、供給された係数データを、所定の方法で量子化し、得られた係数データ(量子化係数データ)をエントロピ符号化部16に供給する。
【0035】
エントロピ符号化部16は、供給された係数データを、例えばハフマン符号化や算術符号化といった所定のエントロピ符号化方式で符号化する。エントロピ符号化部16は、生成した符号化データを符号化装置10の外部に出力する。
【0036】
[サブバンド]
次に、ウェーブレット変換について説明する。ウェーブレット変換は、画像データを空間周波数の高い成分(高域成分)と低い成分(低域成分)とに分割する分析フィルタリングを、生成した低域成分に対して再帰的に繰り返すことにより、画像データを、階層的に構成される周波数成分毎の係数データに変換する処理である。なお、以下において、分割レベルは、高域成分の階層ほど下位とし、低域成分の階層ほど上位とする。
【0037】
1つの階層(分割レベル)において、分析フィルタリングは、水平方向と垂直方向の両方について行われる。これにより、1つの階層の係数データ(画像データ)は、1階層分の分析フィルタリングにより4種類の成分に分割される。4種類の成分とは、すなわち、水平方向および垂直方向の両方について高域な成分(HH)、水平方向に高域で垂直方向に低域な成分(HL)、水平方向に低域で垂直方向に高域な成分(LH)、および、水平方向および垂直方向の両方について低域な成分(LL)である。各成分の集合を、それぞれサブバンドと称する。
【0038】
ある階層において分析フィルタリングが行われて4つのサブバンドが生成された状態において、次の(1つ上位の)階層の分析フィルタリングは、その生成された4つのサブバンドのうち、水平方向および垂直方向の両方について低域な成分(LL)に対して行われる。
【0039】
このように分析フィルタリングが再帰的に繰り返されることにより、空間周波数の低い帯域の係数データは、より小さな領域(低域成分)に追い込まれる。したがって、このようにウェーブレット変換された係数データを符号化するようにすることにより、効率的な符号化が可能となる。
【0040】
図2は、分析フィルタリングを4回繰り返すことにより、分割レベル4までの13個のサブバンド(1LH,1HL,1HH,2LH,2HL,2HH,3LH,3HL,3HH,4LL,4LH,4HL,4HH)に分割された係数データの構成を示している。
【0041】
[ラインブロック]
次に、ラインブロックについて説明する。図3は、ラインブロックを説明する図である。ウェーブレット変換における分析フィルタリングは、処理対象となる2ラインの画像データまたは係数データから、1階層上の4つのサブバンドの係数データを1ラインずつ生成する。
【0042】
したがって、例えば、分割レベル数が4の場合、図3の斜線部分で示されるように、最上位階層である分割レベル4の各サブバンドの係数データを1ラインずつ得るためには、サブバンド3LLの係数データが2ライン必要である。
【0043】
サブバンド3LLを2ライン得る、すなわち、分割レベル3の各サブバンドの係数データを2ラインずつ得るためには、サブバンド2LLの係数データが4ライン必要である。
【0044】
サブバンド2LLを4ライン得る、すなわち、分割レベル2の各サブバンドの係数データを4ラインずつ得るためには、サブバンド1LLの係数データが8ライン必要である。
【0045】
サブバンド1LLを8ライン得る、すなわち、分割レベル1の各サブバンドの係数データを8ラインずつ得るためには、ベースバンドの係数データが16ライン必要である。
【0046】
つまり、分割レベル4の各サブバンドの係数データを1ラインずつ得るためには、16ラインのベースバンドの画像データが必要になる。
【0047】
この最低域成分のサブバンド(図3の例の場合4LL)の1ライン分の係数データを生成するために必要なライン数の画像データを、ラインブロック(またはプレシンクト)と称する。
【0048】
例えば、分割レベル数がMの場合、最低域成分のサブバンドの1ライン分の係数データを生成するためには、ベースバンドの画像データが2のM乗ライン必要になる。これがラインブロックのライン数である。
【0049】
なお、ラインブロックは、その1ラインブロックの画像データをウェーブレット変換して得られる各サブバンドの係数データの集合のことも示す。
【0050】
また、ラインとは、フレーム画像(ピクチャ)の1列分の水平方向の画素列や、サブバンドの1列分の水平方向の係数列のことを示す。この1ライン分の係数データを係数ラインとも称する。また、1ライン分の画像データを画像ラインとも称する。以下において、より詳細に区別して説明する必要がある場合、適宜表現を変える。
【0051】
また、1係数ライン(1ライン分の係数データ)が符号化された1ライン分の符号化データを符号ラインとも称する。
【0052】
このようなラインベース・ウェーブレット変換処理によれば、JPEG2000のタイル分割と同様、1枚のピクチャをより細かい粒度に分解して処理を行うことが可能となり、画像データの送受信時の低遅延化を図ることができる。さらに、ラインベース・ウェーブレット変換の場合、JPEG2000のタイル分割とは異なり、1つのベースバンド信号に対する分割ではなく、ウェーブレット係数での分割であるため、さらに、タイル境界でのブロックノイズ的な画質劣化が発生しないという特徴も有する。
【0053】
ここまで、ラインベース・コーデックの一例としての、ラインベース・ウェーブレット変換について説明を行った。なお、以下に説明する本発明の各実施形態は、ラインベース・ウェーブレット変換に限らず、例えばJPEG2000やMPEG4のような既存の階層符号化など、任意のラインベース・コーデックに適用可能である。
【0054】
[第1の実施の形態]
図4は、本発明を適用した通信システムの第1の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0055】
図4において、通信システム20は、回線交換装置21、3つのスタジオ22a乃至22c、3つのサブ23a乃至23c、および遅延制御装置24を備えて構成される。例えば、通信システム20では、Ethernet(登録商標)やNGN、無線といった汎用回線により各装置が接続されている。
【0056】
回線交換装置21は、通信システム20を構成する複数の装置の通信を中継する装置であり、例えば、Ethernet(登録商標)ではハブ(HUB)である。なお、ハブ(HUB)とはスター型ネットワークで使われる集線装置の総称と定義し、SNMP(Simple Network Management Protocol)エージェント機能の有無はどちらでもよいものとする。即ち、回線交換装置21には、通信システム20を構成するスタジオ22a乃至22c、サブ23a乃至23c、および遅延制御装置24が接続されており、回線交換装置21を介して互いの通信が行われる。
【0057】
スタジオ22a乃至22cは、画像データを生成させるために撮像を行う場所であり、それぞれ複数台のカメラと、1台の回線交換装置を備えている。
【0058】
スタジオ22aは、カメラ31a−1乃至31a−3および回線交換装置32aを備えており、カメラ31a−1乃至31a−3が回線交換装置32aに接続され、回線交換装置32aが回線交換装置21に接続された構成となっている。スタジオ22aと同様に、スタジオ22bは、カメラ31b−1乃至31b−3および回線交換装置32bを備えて構成され、スタジオ22cは、カメラ31c−1乃至31c−3および回線交換装置32cを備えて構成される。
【0059】
サブ23a乃至23cは、スタジオ22a乃至22cを選択し、スタジオ22a乃至22cがそれぞれ備えるカメラ31a−1乃至31c−3の制御を行って、画像データを中継する場所である。なお、本実施の形態では、サブ23a乃至23cどうしでは、それぞれが有する機器の関係により、同期していない環境とする。
【0060】
サブ23aは、CCU(Camera Control Unit:カメラコントロールユニット)33a、表示部34aおよび操作部35aを備えており、表示部34aおよび操作部35aがCCU33aに接続され、CCU33aが回線交換装置21に接続された構成となっている。表示部34aは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)などから構成され、カメラ31a−1乃至31c−3により撮像されている画像などを表示する。操作部35aは、複数のスイッチやレバーなどから構成され、例えばユーザにより、スタジオ22a乃至22cまたはカメラ31a−1乃至31c−3を選択し、画像を切り換える操作が行われる。
【0061】
サブ23aと同様に、サブ23bは、CCU33b、表示部34b、および操作部35bを備えて構成され、サブ23cは、CCU33c、表示部34c、および操作部35cを備えて構成される。
【0062】
遅延制御装置24は、サブ23a乃至23cの間で調停を行い、マスタータイミングを決定する装置である。なお、遅延制御装置24の構成については、図12を参照して後述する。
【0063】
このように構成されている通信システム20において、例えば、スタジオ22aのカメラ31a−1と、サブ23aのCCU33aとの同期を獲得する場合、ピクチャの先頭を認識した後に所定の復号開始時点から当該ピクチャ内のライン(またはラインブロック)ごとの復号が開始される。即ち、ライン(またはラインブロック)での復号開始時点は、送信側(カメラ31a−1側)の送信処理がいつ開始されるかに依存する。このとき、送信装置と受信装置とが1対1で構成されている場合には問題は生じない。しかしながら、受信装置(CCU33a)に対して送信装置が複数存在した場合には、受信側で複数の画像データの管理または統合をする際に、画像データ間での同期が一致しない状況が発生することがある。このような画像データ間での同期が一致しない状況を解決するための方法を、本願出願人は、上述した特許文献5(特開2009−278545)において提案している。
【0064】
本願発明では、このような提案に加えて、複数のサブどうしが、それぞれのサブ内に存在する機器の関係で、同期していない環境であっても、全てのセット(カメラとCCUの組み合わせ)で、画像データ間での同期を一致させることができる方法を提案する。
【0065】
まず、通信システム20における各カメラと各CCUとの間で行われる通信処理について、2台のカメラ31a−1および31a−2と、1台のCCU33aとを例に説明する。
【0066】
カメラ31a−1および31a−2は、それぞれ被写体を撮影し、一連の画像データを生成してCCU33aへ送信する送信装置である。図4において、カメラ31a−1および31a−2の一例としてビデオカメラを示しているが、カメラ31a−1および31a−2はビデオカメラに限られない。例えばカメラ31a−1および31a−2は、動画撮影機能を有するデジタルスチルカメラ、PC、携帯電話またはゲーム機器などであってもよい。
【0067】
CCU33aは、通信システム20において、画像データの送受信タイミングを決定するマスタとしての役割を果たす装置である。図4において、CCU33aの一例として業務用の映像処理装置を示しているが、CCU33aは業務用の映像処理装置に限られない。例えば、CCU33aは、パーソナルコンピュータ、ビデオレコーダなどの家庭用の映像処理装置、通信装置または任意の情報処理装置などであってよい。
【0068】
なお、図4において、CCU33aとカメラ31a−1および31a−2との間は、回線交換装置21を介した有線通信により接続されているが、例えばIEEE802.11a、b、g、n、sなどの標準仕様に基づく無線通信によって接続されてもよい。
【0069】
次に、図5乃至8を参照して、CCU33aとカメラ31a−1との間の画像データの送受信について説明する。なお、CCU33aとカメラ31a−2との間の画像データの送受信についても、以下の説明と同様に行われる。
【0070】
図5は、カメラ31a−1の構成を示すブロック図である。図5に示すように、カメラ31a−1は、画像アプリ管理部41、圧縮部42、送信メモリ部43、及び通信部44を備えて構成される。
【0071】
画像アプリ管理部41は、カメラ31a−1が備える画像入力装置(CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等)により撮像された画像データの伝送要求をアプリケーションから受け付け、経路制御やQoSによる無線回線に関する制御を行うと共に、CCU33aとの間で画像データの送信タイミングの調整を行う。より具体的には、画像アプリ管理部41は、後述するCCU33aの同期制御部57(図6)から送信される送信開始指示信号を受け取り、指定された送信開始時刻に画像データを圧縮部42へ出力する。また、画像アプリ管理部102における処理として、画像入力装置の制御を含んでもよい。
【0072】
圧縮部42、送信メモリ部43、及び通信部44は、送信開始時刻において画像アプリ管理部41から供給される画像データに対し、本実施形態に関連して説明した符号化単位での一連の画像データの送信処理を実行する。
【0073】
図6は、CCU33aの構成を示すブロック図である。図6を参照すると、CCU33aは、画像アプリ管理部51、圧縮部52、送信メモリ部53、通信部54、受信メモリ部55、復号部56、及び同期制御部57を備えて構成される。
【0074】
画像アプリ管理部51は、撮影した画像データの伝送要求をアプリケーションから受け付け、経路制御やQoSによる無線回線に関する制御、またはアプリケーションとの間の画像データの入出力管理を行う。
【0075】
圧縮部52は、前述のラインベース・コーデックに従い、画像アプリ管理部51から供給された画像データを1フィールド内のNライン(Nは1以上)の符号化単位で符号化してデータ量を削減した後、送信メモリ部53に出力する。
【0076】
送信メモリ部53は、圧縮部52から受け取ったデータを一時的に蓄積する。また送信メモリ部53は、ネットワーク環境に応じてルーティング情報を管理し、他の端末へのデータ転送を制御するルーティング機能を有してもよい。なお、受信メモリ部55と送信メモリ部53と統合し、送信データおよび受信データの蓄積を行うようにしてもよい。
【0077】
通信部54は、カメラ31a−1の通信部44から送信されてくる、上述の符号化単位での一連の画像データの受信処理や、送信メモリ部53に蓄積されている送信データの送信処理などを実行する。
【0078】
例えば、通信部54は、送信メモリ部53に蓄積されているデータを読み出して送信パケット(例えば、IPプロトコルに基づく通信を行う場合には、IPパケット)を生成して送信する。また、例えば、通信部54は、通信パケットが受信された場合、受信パケットを解析し、画像アプリ管理部51に受け渡すべき画像データ及び制御データを分離して受信メモリ部55へ出力する。例えば、IPプロトコルに基づく通信を行う場合には、通信部54は、受信パケットに含まれる宛先IPアドレス及び宛先ポート番号を参照し、画像データ等を受信メモリ部55へ出力することができる。なお、通信部54は、他の端末へのデータ転送を制御するルーティング機能を有していてもよい。
【0079】
受信メモリ部55は、通信部54から出力されるデータを一時的に蓄積し、及び復号を開始すべき時点を判断して復号の対象となるデータを復号部56へ出力する。例えば、受信メモリ部55は、同期制御部57から取得した復号開始時刻を画像データの復号開始時点として決定する。
【0080】
復号部56は、受信メモリ部55から出力されるデータを1フィールド内のNライン(Nは1以上)の単位で復号した後、画像アプリ管理部51へ出力する。
【0081】
同期制御部57は、通信システム20内の装置間の画像データの送受信タイミングを制御するタイミングコントローラの役割を果たす。同期制御部57は、画像アプリ管理部51と同様、典型的にはアプリケーション層の処理として実装される。
【0082】
同期制御部57による画像データの送受信タイミングの調整は、画像アプリ管理部51からの指示、またはカメラ31a−1からの同期要求信号の受信などをきっかけとして開始される。そして、同期制御部57は、カメラ31a−1に向けて画像データの送信開始時刻を指定する送信開始指示信号を送信し、及び受信メモリ部55に対する復号開始時刻の指定を行う。
【0083】
このとき、カメラ31a−1へ送信される画像データの送信開始時刻は、受信メモリ部55に対して指定される復号開始時刻から、復号化単位ごとのデータ量の変動や通信経路のジッタなどの通信環境の変動により生じる遅延、ハードウェア遅延、またはメモリ遅延等を吸収するための時間を差し引いた時刻とする。
【0084】
なお、図5及び図6では、説明の分かり易さのために、送信開始指示信号は画像アプリ管理部41と同期制御部57の間で直接やり取りされるように示しているが、送信開始指示信号は、実際には通信部44及び54を介して送受信される。
【0085】
次に、カメラ31a−1による画像データの送信処理、及びCCU33aによる受信処理の流れについて、図7及び図8を用いて説明する。
【0086】
図7は、カメラ31a−1における画像データの送信処理の流れを示したフローチャートである。
【0087】
図7を参照すると、まずCCU33aから送信された送信開始指示信号が、画像アプリ管理部41によって受信される(ステップS11)。画像アプリ管理部41は、送信開始指示信号に含まれる送信開始時刻を取得する。
【0088】
そして、画像アプリ管理部41は、送信開始時刻の到来まで待機し(ステップS12)、送信開始時刻が到来すると画像データを圧縮部42へ出力する。圧縮部42は、出力された画像データを1フィールド内のNライン(Nは1以上)の符号化単位で符号化し、送信メモリ部43へ出力する(ステップS13)。その後、通信経路及び送信処理の進行状況に応じて、画像データは送信メモリ部43に蓄積される(ステップS14)。
【0089】
その後、送信タイミングが到来すると、画像データは送信メモリ部43から通信部44へ出力され、画像データを含む通信データの生成が開始される(ステップS15)。そして、通信データはCCU33aへ向けて送信される(ステップS16)。
【0090】
図8は、CCU33aにおける画像データの受信処理の流れを示したフローチャートである。
【0091】
図8を参照すると、まず同期制御部57から受信メモリ部55に対して、復号開始時刻の指定が行われる(ステップS21)。ここでの復号開始時刻の指定は、例えば記憶部の所定のアドレスへの復号開始時刻の書き込み、または受信メモリ部55に対する信号の出力などにより行うことができる。また、このとき同期制御部57からカメラ31a−1への送信開始指示信号の送信も行われる。
【0092】
その後、受信メモリ部55において、復号開始時刻までの時間を観測するためのタイマー起動が要求される(ステップS22)。
【0093】
さらに、通信部54を介してカメラ31a−1から受信された画像データが、順次、受信メモリ部55に受け渡される(ステップS23)。ここで受け渡された画像データは、復号開始時刻まで蓄積される。
【0094】
そして、ステップS21おいて指定された復号開始時刻に到達すると(ステップS24)、その時点で送受信対象の画像データの受信が終了しているかどうかが判定される(ステップS25)。ここで、送受信対象の画像データを検出できない場合には、処理はステップS21に戻り、当該画像データの送受信タイミングの再調整が行われる。
【0095】
一方、ステップS25において、送受信対象の画像データが検出された場合には、当該画像データに対して復号化単位の復号処理が行われる(ステップS26)。
【0096】
そして、復号化単位での復号処理は、ピクチャ内の全てのラインの処理が終了するまで繰り返され(ステップS27)、全てのラインの処理が終了した時点で受信処理は終了する。
【0097】
ここまで、図5乃至8を用いて、本発明の第1の実施形態の一部であるスタジオ22aとサブ23aとの同期を獲得する動作概要について説明を行った。本実施形態では、CCU33aは、画像データの送信開始時刻を指定する信号をカメラ31a−1および31a−2へ送信する同期制御部57を備える。
【0098】
かかる構成によれば、受信装置に対して送信装置が複数存在する場合において、受信側で複数の画像データの管理または統合をする際に、CCU33aがタイミングコントローラの役割を果たし、画像データ間での同期を合わせることができる。
【0099】
また、同期制御部57は、通信環境の変動を吸収するための時間間隔を前述の送信開始時刻との間に有する復号開始時刻を受信メモリ部55内の復号開始指示部に対して指定する。そして、受信メモリ部55内の復号開始指示部は、指定された復号開始時刻に基づいて復号開始時点を決定し、画像データの復号化単位での復号開始の指示を行う。そうすることにより、送信装置間で同期を合わせて送信された画像データについて、通信環境の変動などの影響を吸収しながら、安定して同期された状態で復号を行うことができる。
【0100】
例えば、CCU33aが、カメラ31a−1および31a−2間の同期を合わせるためには、CCU33aとカメラ31a−1および31a−2との間で送受信される通信データに、同期制御部57により挿入されるフレーム同期タイムスタンプが利用される。
【0101】
図9を参照して、CCU33aとカメラ31a−2との間で送受信する可能性のある通信データの一例としての、IPパケットのフレームフォーマットについて説明する。
【0102】
図9では、1つのIPパケットの内部構成がA乃至Dの4段階に分けて示されている。図9のAを参照すると、IPパケットは、IPヘッダ及びIPデータから構成される。IPヘッダには、例えば宛先IPアドレスなどのIPプロトコルに基づく通信経路の制御に関する制御情報などが含まれる。
【0103】
IPデータは、さらにUDPヘッダ及びUDPデータから構成される(図9のB)。UDPは、リアルタイム性が重視される動画または音声データの配信時などに一般的に使用される、OSI参照モデルのトランスポート層のプロトコルである。UDPヘッダには、例えばアプリケーション識別情報である宛先ポート番号などが含まれる。
【0104】
UDPデータは、さらにRTPヘッダ及びRTPデータから構成される(図9のC)。RTPヘッダには、例えばシーケンス番号などのデータストリームのリアルタイム性を保証するための制御情報が含まれる。また、この制御情報には、複数のカメラ間の同期を合わせるために、同期制御部57により生成されるフレーム同期タイムスタンプが含まれる。
【0105】
本実施形態において、RTPデータは、画像データのヘッダ(以下、画像ヘッダという。)及びラインベース・コーデックに基づいて圧縮された画像本体である符号化データから構成される(図9のD)。画像ヘッダには、例えばピクチャ番号やラインブロック番号(1ライン単位で符号化を行う場合にはライン番号)、サブバンド番号などを含むことができる。なお、画像ヘッダは、ピクチャごとに付与されるピクチャヘッダと、ラインブロックごとに付与されるラインブロックヘッダにさらに分けて構成されてもよい。
【0106】
このように、同期制御部57により生成されるフレーム同期タイムスタンプがIPパケットに含まれるようにすることで、1台のCCUが、複数台のカメラの同期を合わせることができる。
【0107】
ところで、複数台のCCUおよび複数台のカメラを有して構成される通信システム、即ち、図4に示したようなCCU33a乃至33cおよびカメラ31a−1乃至31c−3を有して構成される通信システム20において、CCU33a乃至33cが同期していなければ、CCU33a乃至33cそれぞれが備える同期制御部57において異なるタイミングで処理が行われる。このように、CCU間の同期のずれている場合、サブの切り換えの際に異なるタイミングで処理が行われるために、画像に乱れが発生することがある。
【0108】
例えば、図10を参照して、CCU間の同期のずれについて説明する。
【0109】
図10は、CCU33aとCCU33bとの同期のずれをスタジオ22aのカメラ31a−1および31a−2を基準にして示したものである。
【0110】
図10に示すように、CCU33aとCCU33bとの同期がずれているときに、映像データがサブ23aからサブ23bへ切り換えた時、画像が同期されていないため、サブ23aを基準にしてカメラ31a−1および31a−2を動作させ、サブ23bへ切り替わった後に、サブ23bを基準にしてカメラ31a−1および31a−2を、再同期をかける必要がでてくる。このため、サブ23aとサブ23bの切り換えを頻繁に行う映像システムにおいては映像が頻繁に乱れてしまい、ライブ中継での使用には適していない。
【0111】
そこで、図4に示すように、通信システム20に遅延制御装置24を導入し、遅延制御装置24により、サブ23aとサブ23bの間で調停を行い、マスタータイミングを決定する処理が行われる。なお、遅延制御装置24は、回線交換装置21に接続される装置として構成する他、例えば、サブ23a乃至23cに実装してもよい。
【0112】
図11を参照して、遅延制御装置24の動作概要を説明する。図11には、3つのサブ23a乃至23cにおいてマスタータイミングを決定する処理の例が示されている。
【0113】
遅延制御装置24は、3つの異なるフレーム同期タイミングをもつ環境において、1つのサブのフレーム同期タイミングをマスタータイミングとするために、他の2つのサブの映像データを遅延させるためのバッファを用意し、この2つのサブの遅延量を極力遅延しない1つのサブを検索する。この時、各サブからの各スタジオへのネットワーク接続による遅延量は無視できるレベルとする。つまり、図4の通信システム20ように、一度、サブ23a乃至23cは回線交換装置21につながり、そこからスタジオ22a乃至22cへ接続されているものとする。サブ23a乃至23cからスタジオ22a乃至22cまでの距離が一定であるため、サブ23a乃至23cが持つCCU33a乃至33cのフレーム同期タイミングのみでマスタータイミングを決定することができる。
【0114】
例えば、遅延制御装置24は、まずサブ23aとサブ23bとを比較し、より他方の遅延バッファ量を少なくできるサブを検出する。図11の例では、サブ23bの方が、サブ23aよりも他方のサブの遅延量を少なくすることができる。
【0115】
次に、遅延制御装置24は、サブ23bとサブ23cとの比較を行う。サブ23cにとって、サブ23bとの遅延時間はCase AまたはCase Bとなる。そこで、遅延制御装置24は、Case AとCase Bの時間間隔を比較し、Case Aの方が時間間隔が短いと判断して、サブ23bをマスターと判断する。図11の例では、同期タイミングAがマスタータイミングとして決定されたため、サブ23aは、同期タイミングAからサブ23aのフレーム同期タイミングまでは遅延できるようバッファを用意し、サブ23cは、同期タイミングAからサブ23cのフレーム同期タイミングまでは遅延できるようバッファを用意する。
【0116】
このように、サブ23bのフレーム同期タイミングがマスタータイミングになったため、サブ23aとサブ23cはサブ23bからの差分のみバッファ(例えば、図6のCCU33aの受信メモリ部55をバッファとして利用する)に遅延させる。
【0117】
次に、図12は、遅延制御装置24の構成例を示すブロック図である。
【0118】
図12に示すように、遅延制御装置24は、スイッチ部61、物理層Rx62、物理層コントロール部63、受信データ解析部64、システム同期タイミング調整部65、撮像タイミング管理テーブル66、撮像タイミング調整管理部67、同期制御情報送信部68、送信データ生成部69、および物理層Tx70を備えて構成される。
【0119】
スイッチ部61は、データの送信と受信とを切り換える機能を備え、回線交換装置21(図4)との回線に接続されている。
【0120】
物理層Rx62は、回線からパケットを受信する物理層受信部であり、Ethernet(登録商標)やNGNのようなデジタルネットワーク回線、または無線回線からパケットを受信する。例えば、物理層Rx62は、物理層コントロール部63の要求に基づいて動作を開始し、受信パケットを受信データ解析部64に供給する。
【0121】
物理層コントロール部63は、受信パケットを検出し、受信動作を開始する物理層コントロール部である。また、例えば、物理層コントロール部63は、送信データ生成部69からの制御に基づいて物理層を制御する。
【0122】
受信データ解析部64は、受信パケットの種別を解析して、例えば、サブ23a乃至23cのフレーム同期タイミングを記載したパケットを受信したことを判断する。
【0123】
システム同期タイミング調整部65は、受信データ解析部64で判別されたパケットを元に、撮像タイミング管理テーブル66とやりとりを行いながら、同期タイミングを調整する処理を行う。即ち、システム同期タイミング調整部65が、図11を参照して説明したようにマスタータイミングを決定する。
【0124】
撮像タイミング管理テーブル66は、システム同期タイミング調整部65から、サブ23a乃至23cのフレーム同期タイミングや、サブ23a乃至23cからスタジオ22a乃至22cのカメラ31a−1乃至31c−3までの遅延量を管理(記憶)し、システム同期タイミング調整部65がマスタータイミングを決定する際に、それらが参照される。
【0125】
撮像タイミング調整管理部67は、システム同期タイミング調整部65によって決定されたマスタータイミングで映像データを受信できるようにようために、スタジオ22a乃至22cのカメラ31a−1乃至31c−3に対するフレーム同期情報の送信を管理する。
【0126】
同期制御情報送信部68は、撮像タイミング調整管理部67から受信した開始タイミングを元に、同期情報の送信を制御する。
【0127】
送信データ生成部69は、パケット毎に、物理層Tx70の回線に適応するパケットを生成する。
【0128】
物理層Tx70は、回線へパケットを送信する物理層送信部であり、Ethernet(登録商標)やNGNのようなデジタル回線、無線回線からパケットを送信する。例えば、物理層Tx70は、物理層コントロール部63の要求に基づいて動作を開始し、送信データ生成部69から供給された通信パケットをスイッチ部61に出力する。
【0129】
なお、本実施の形態では、図11に示したCase AとCase Bとの時間間隔が、図5で説明した遅延制御装置24において判断される構成となっているが、このような構成に限られるものではない。遅延制御装置24においてCase AおよびCase Bを求めて、例えば、サブ23aの表示部34aに遅延情報としてCase AおよびCase Bを表示させ、その遅延情報をユーザが見て、ユーザが操作部35aを操作することにより選択するようにすることができる。
【0130】
また、遅延制御装置24が、マスタータイミングに合わせるために、サブ23a乃至23cに対してデータを遅延させるためのバッファを備え(例えば、物理層Rx62と物理層Tx70との間にバッファを設け)、所定のタイミング遅延させたデータを通信システム20のネットワークに送信するように構成することができる。また、このような構成の他、CCU33a乃至33cが遅延バッファを備え、遅延制御装置24からの遅延量指示情報を受信することで、遅延量を制御するような構成としてもよい。
【0131】
なお、本実施の形態に共通し、ラインベース・コーデックとして前述のラインベース・ウェーブレット変換を用いる場合には、ラインブロック単位ではなくラインブロックのサブバンド単位で通信パケットを生成することができる。その場合には、受信メモリ部において、例えば画像ヘッダから取得されるラインブロック番号及びサブバンド番号に対応する記憶領域を確保し、周波数成分に分解された画像データをラインブロックのサブバンド単位で蓄積してもよい。
【0132】
このとき、例えばラインブロック単位で復号を行う際に、伝送エラーなどによってサブバンド(またはその一部)の欠落が生じた場合には、ラインブロック内の当該サブバンド以降にダミーデータを挿入し、次のラインブロックからは通常の復号を行ってもよい。
【0133】
[第2の実施の形態]
図13は、本発明を適用した通信システムの第2の実施の形態の構成例を示すブロック図である。
【0134】
上述した第1の実施の形態においては、サブ23a乃至23cからスタジオ22a乃至22cへのネットワーク接続による遅延量の差が無視できるレベルであるという前提で説明を行っていた。ところが、実際には、それぞれの接続経路が大きく異なる場合には、遅延量の差を考慮して同期を合わせる処理を行う必要がある。そこで、第2の実施の形態においては、スタジオ22a乃至22cおよびサブ23a乃至23cの間の接続経路が異なるような構成について説明する。
【0135】
図13に示すように、通信システム20’は、図4の通信システム20に比較して、回線接続構成(Ethernet(登録商標)の場合、ネットワークトポロジ)が変更されている。即ち、通信システム20’では、サブ23bのCCU33bおよびサブ23cのCCU33cが、回線交換装置21−1に直接的に接続されているのに対し、サブ23aのCCU33aは、回線交換装置21−2乃至21−4を経由して回線交換装置21−1に接続されている。
【0136】
このような通信システム20’の構成例について、サブ23aとサブ23bとのフレーム同期タイミングのずれが、図4を参照して説明したのと同様のケースである場合を想定し、第1の実施の形態との差を中心に説明する。
【0137】
図14は、サブ23bが、マスタータイミングとなった場合において、スタジオ22aのカメラ31a−1および31a−2の同期獲得後のシステムタイミングを示す図である。即ち、図14では、サブ23bのフレーム同期タイミング(=マスタータイミング)を基準としてカメラ31a−1および31a−2のフレーム同期タイミングが生成されている。
【0138】
まず、図14において、通信システム20’の全体での総遅延量を考える。マスタータイミングからカメラ31a−1までの遅延量を6(カメラ31a−1からサブ23bまでのジッタを含む遅延量)とする。この場合、カメラ31a−1のフレーム同期タイミングは、CCU33bのフレーム同期タイミングよりも遅延時間6に相当する時間間隔だけ位相を早めており、カメラ31a−1では、CCU33bのフレーム同期タイミングでパケットを扱えるように、CCU33bへのパケット到達時間が調整されている。
【0139】
一方、マスタータイミングからカメラ31a−2までの遅延量を5(カメラ31a−2からCCU33bのジッタを含む遅延量)とする。また、サブ23aのCCU33aは、サブ23bのCCU33bから遅延量3だけ遅らせたフレーム同期タイミングであるため、通信システム20’における総遅延量は14(遅延量6+遅延量5+遅延量3)となる。なお、本明細書において、遅延量の単位は限定されない。ここでは、遅延量は、比をベースに記載したが、遅延量は、時間でもクロック単位でもよいものとする。
【0140】
このように、サブ23bがマスタータイミングとなった場合に対し、マスタータイミングがサブ23aのCCU33aに設定された時の通信システム20’における総遅延量について、図15を参照して説明する。
【0141】
図15に示すように、マスタータイミングをサブ23aのCCU33aに設定すると、サブ23aとサブ23bとの間の遅延量は、サブ23bがマスタータイミングとなった場合(図14)よりも遅延量4(遅延量7−遅延量3)増加する。
【0142】
しかし、図13の通信システム20’における回線接続構成(Ethernet(登録商標)の場合、ネットワークトポロジ)は、図4の通信システム20とは異なり、マスタータイミングからカメラ31a−1までの遅延量2(カメラ31a−1からサブ23aまでのジッタを含む遅延量)であり、カメラ31a−2までの遅延量1(カメラからサブ23aまでのジッタを含む遅延量)である。図4の通信システム20と図13の通信システム20’とでの遅延量の違いは、カメラ31a−1とカメラ31a−2のフレーム同期タイミングは周期的に発生するタイミングであるため、回線交換装置21−1からサブ23aまでの間に複数の回線交換装置を挿入することで、サブ23bの視点での遅延量とサブ23aの視点での遅延量との違いにより発生する。よって、システム総遅延量は10(遅延量7+遅延量2+遅延量1)となり、サブ23bがマスタータイミングとなった場合(図14)よりも総遅延量は少なくなる。
【0143】
このように、マスタータイミングを決定する上で、フレーム同期タイミングを持つ機器(CCU)からカメラまでの遅延量も含め、マスタータイミングとなる機器(CCU)を決定することにより、システム総遅延量を削減することができ、より低遅延なシステム設定を行うことができる。
【0144】
なお、本実施の形態は、図13に示す構成に限られるものではない。図13の通信システム20’は、各カメラからサブへの距離が異なる環境について、説明を行うためのものであり、この環境は、より分かりやすく説明を行う上での一手段にすぎない。例えば、各スタジオ内のカメラとの接続回線の遅延量の違い、または、各サブ内にある機器による遅延量の違い、各スタジオ間回線の遅延量の違いも加味してマスタータイミングが決定されるものとする。また、遅延量の内部要素についても、本発明を適用することができる。また、ネットワークジッタを含まなくてもよいものとする。
【0145】
以上のように、第1の実施の形態では、各カメラとCCUとの間の遅延を算出する前に、各CCU間のフレーム同期タイミングの調停を行い、マスタータイミングを元に、各カメラへフレーム同期タイミングを通知する方法を提示した。また、第2の実施の形態では、マスタータイミングを検索する際、各CCU間のフレーム同期タイミングの調停だけではなく、各カメラ−CCU間の遅延量も調停パラメータに加えてシステム遅延量合計を算出させ、システムとして遅延量の少ないマスタータイミングを選択する方法を提示した。
【0146】
次に、各カメラとCCUとの間の遅延量を遅延制御装置24(図12)に通知し、遅延制御装置24において、これらの遅延量の調停を行うことで、CCUのフレーム同期タイミングとは異なる、システムとしての基準遅延時間を検出させる第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態では、上記基準遅延時間をもとに、カメラに外部入力する同期タイミングを調整し、システム全体の最適な基準遅延時間を決定する。
【0147】
[第3の実施の形態]
図16のフローチャートを参照して、本発明を適用した通信システムの第3の実施の形態において実行される遅延制御処理を説明する。なお、この処理は、図4の通信システム20と同様の構成において実行される。
【0148】
例えば、通信システム20の起動時に処理が開始され、ステップS41において、遅延制御装置24は、カメラ31a−1乃至31c−3とCCU33a乃至33cとの間で、遅延時間を計測するためペアとなる組み合わせを設定する。即ち、遅延制御装置24は、ペアとなる組み合わせのカメラ31およびCCU33を決定し、そのCCU33に対して、ペアが設定されたカメラ31との間の遅延時間を計測するように通知する。このとき、例えば、遅延制御装置24は、CCU33a乃至33cの同期タイミング以外の任意のタイミングである仮マスタータイミングを設定して処理を行わせる。そして、遅延制御装置24からの通知を受けたCCU33は、設定されたカメラ31との間で遅延量およびネットワークジッタ量を測定し、遅延時間を算出する。
【0149】
CCU33が遅延時間を遅延制御装置24に通知すると、ステップS42において、遅延制御装置24は、CCU33から通知された遅延時間を取得し、処理はステップS43に進む。
【0150】
ステップS43において、遅延制御装置24は、遅延時間を計測していないカメラ31およびCCU33のペアがあるか否かを判定し、遅延時間を計測していないカメラ31およびCCU33のペアがあると判定した場合、処理はステップS41に戻る。即ち、ステップS41乃至S43の処理を繰り返すことで、通信システム20を構成する全てのカメラ31およびCCU33のペアの間の遅延時間が求められる。
【0151】
一方、ステップS43において、遅延制御装置24が、遅延時間を計測していないカメラ31およびCCU33のペアがないと判定した場合、処理はステップS44に進む。ステップS44において、遅延制御装置24は、ステップS41乃至S43の処理で取得した全てのカメラ31およびCCU33のペアの間の遅延時間に基づいて、基準となる遅延時間である基準遅延時間Tbを算出する。
【0152】
ステップS45において、遅延制御装置24は、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより小さいか否かを判定する。
【0153】
ステップS45において、遅延制御装置24が、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより小さいと判定した場合、処理はステップS46に進む。ステップS46において、遅延制御装置24は、基準遅延時間Tbから遅延時間Ts(カメラ31とCCU33との間の遅延時間であって、基準遅延時間Tb未満の遅延時間)を減算した時間だけ、仮に設定した仮マスタータイミングを遅らせるようにCCU33に通知する。ステップS46の処理後、処理はステップS41に戻り、以下、同様の処理が繰り返される。
【0154】
具体的には、遅延制御装置24は、(CCU33の同期タイミングに依存しない)遅延管理時刻(基準遅延時間Tb=遅延管理時刻−カメラの撮像時刻)を算出しているため、
この遅延管理時刻を基準として、カメラの撮像時刻を(基準遅延時間Tb−遅延時間Ts)時間だけ遅らせるよう通知する。その理由は、カメラ31とCCU33との間が遅延時間Tsであるにもかかわらず、遅延管理時刻で映像データを取り扱えるようにするためである。ステップS46では、遅延制御装置24は、各カメラ31に対し、同期タイミングを早めるコマンドまたは同期タイミングを遅くするコマンドを送信し、遅延管理時刻を基準に映像データを取り扱えるよう制御する。
【0155】
一方、ステップS45において、遅延制御装置24が、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより小さくない(基準遅延時間Tb以上である)と判定した場合、処理はステップS47に進む。
【0156】
ステップS47において、遅延制御装置24は、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより大きいか否かを判定する。
【0157】
ステップS47において、遅延制御装置24が、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより大きくないと判定した場合、処理はステップS48に進む。即ち、この場合、ステップS45での判定も含めると、カメラ31とCCU33との間の遅延時間と基準遅延時間Tbとは同一の時間である。
【0158】
ステップS48において、遅延制御装置24は、CCU33へ基準遅延時間Tbで同期を獲得するように通知する。これにより、その通知を受けたCCU33は、基準遅延時間Tbで動作を行うように設定し、即ち、新規に映像バッファ量を設定することなく動作を継続し、遅延制御処理は終了される。このとき、現状のタイミング、即ち、仮に設定した仮マスタータイミングがマスタータイミングとして決定され、そのマスタータイミングで処理が行われる。
【0159】
一方、ステップS47において、遅延制御装置24が、カメラ31とCCU33との間の遅延時間が、基準遅延時間Tbより大きいと判定した場合、処理はステップS49に進む。
【0160】
ステップS49において、遅延制御装置24は、カメラ31とCCU33との間の遅延時間Tl(カメラ31とCCU33との間の遅延時間であって、基準遅延時間Tbより大の遅延時間)が、フレーム単位での遅延が必要となる時間であるか否かを判定する。例えば、遅延制御装置24は、遅延時間Tlが1フレーム時間以上であれば、フレーム単位での遅延が必要となる時間であると判定し、遅延時間Tlが1フレーム時間未満であれば、フレーム単位での遅延が必要となる時間でないと判定する。
【0161】
ステップS49において、遅延制御装置24が、遅延時間Tlがフレーム単位での遅延が必要となる時間であると判定した場合、処理はステップS50に進む。
【0162】
ステップS50において、遅延制御装置24は、フレーム単位での遅延時間を算出する。例えば、遅延制御装置24は、(基準遅延時間Tb+フレーム数n×1フレーム時間Tfr)−遅延時間Tlを、フレーム単位での遅延時間として算出する。ここで、フレーム数nは、遅延させるフレームの個数である。
【0163】
ステップS51において、遅延制御装置24は、ステップS50で算出したフレーム単位での遅延時間に基づいて、その遅延時間だけ画像データを蓄積するために必要なバッファ量を算出する。ステップS52において、遅延制御装置24は、ステップS51で算出したバッファ量をCCU33に通知して、設定させる。これにより、CCU33に到達する画像の遅延が基準遅延時間Tbに対してちょうどnフレーム遅延となる。ここで、遅延させるフレーム数nは、基準遅延時間Tb+フレーム数n×1フレーム時間Tfr>遅延時間Tlを満たすように決定される。
【0164】
なお、バッファ量を算出して設定する処理はCCU33側で行われてもよい。即ち、遅延制御装置24が、ステップS50で算出したフレーム単位での遅延時間をCCU33に通知し、CCU33が、バッファ量を算出して設定するようにしてもよい。
【0165】
ステップS53において、遅延制御装置24は、遅延させたフレーム数nをCCU33の後段の機器に通知するように、CCU33に対して通知する。この通知に応じて、CCU33が、後段の機器にフレーム数nを通知して、遅延制御処理は終了される。
【0166】
一方、ステップS49において、遅延制御装置24が、遅延時間Tlがフレーム単位での遅延が必要となる時間でないと判定した場合、処理はステップS54に進む。
【0167】
ステップS54において、遅延制御装置24は、遅延時間(1フレーム時間未満の遅延時間)を算出する。例えば、遅延制御装置24は、(基準遅延時間Tb+1フレーム時間Tfr)−遅延時間Tlを、遅延時間として算出する。
【0168】
その後、ステップS55において、遅延制御装置24は、ステップS54で算出した遅延時間に基づいて、その遅延時間だけ画像データを蓄積するために必要なバッファ量を算出し、ステップS52において、そのバッファ量をCCU33に通知して、設定させる。なお、バッファ量を算出して設定する処理はCCU33側で行われてもよい。また、遅延時間に応じたバッファ量は、できるだけ少なくなるように設定される。ステップS56の処理後、遅延制御処理は終了される。
【0169】
以上のように、第3の実施の形態においては、CCUのフレーム同期タイミングとは異なるシステムとしての基準遅延時間を検出することで、カメラに外部入力する同期タイミングを調整し、システム全体の最適な基準遅延時間を決定することができる。
【0170】
例えば、第1および第2の実施の形態では、CCU33がマスターとしてタイミング管理がしているため、システムタイミング管理が比較的容易に行えるのに対し、第3の実施の形態では、あるCCU33が持つフレーム同期タイミングに依存するのではなく、ピア・ツー・ピアの遅延量を測定するため、より柔軟性の高い測定が行える。従って、第3の実施の形態は、複数の(フレーム同期タイミングが異なる) CCU33のうち、1つのCCU33だけ突出して遅延している環境や、フレーム同期間隔以上の遅延量が発生する場合の処理において好適である。
【0171】
また、第3の実施の形態において、基準となる遅延時間をTbとすると、各カメラ31と各CCU33の接続環境が異なるため、基準遅延時間Tbより遅延が少ない場合(遅延時間Ts)や、基準遅延時間Tbより遅延が大きい場合(遅延時間Tl)がある。そこで、カメラ31とCCU33との間の遅延が、基準遅延時間Tbより少ない場合(遅延時間Ts)には、基準遅延時間Tbから遅延時間Tsを減算した時間分だけ撮像タイミングを遅らせるよう、遅延制御装置24が対象となるカメラに指示を行う。これにより、CCU33へ到達する映像遅延が、カメラ31とCCU33との間の基準遅延時間Tbに同等になるように調整される。
【0172】
なお、遅延制御装置24は、CCU33が把握しているネットワークジッタ分の映像バッファ量も加味して基準遅延時間を決定することが望まれるため、ネットワークジッタを把握するまで測定回数を増やしてもよい。
【0173】
また、第3の実施の形態において、基準遅延時間Tbより遅延が大きい場合(遅延時間Tl)には、2つのケースをシステムとして選択することができる。一方は、遅延量を最小限にシステムを構築させるため、CCU33の映像バッファ量を(基準遅延時間Tb+1フレーム時間Tfr)−遅延時間Tlの時間分の遅延に調整する手法である。本手法は、システム全体の遅延量をできるだけ削減したい用途において効果的である。
【0174】
もう一方は、遅延量をフレーム単位で遅延させるため、遅延管理部は(基準遅延時間Tb+フレーム数n×1フレーム時間Tfr)−遅延時間Tlの時間分の映像バッファを設定するようにCCU33へ指示を行う。CCU33は、到達する映像遅延が基準遅延Tbに対してちょうどnフレーム遅延するように調整する。ここで1フレーム時間Tfrは1フレーム時間で、基準遅延時間Tb+フレーム数n×1フレーム時間Tfr>遅延時間Tlを満たすようにフレーム数nは決定される。本手法は、従来のシステムでは、図4において、例えば、サブ23aとサブ23bを切り換えた場合、nフレーム遅延による画の繰り返しが発生するが、本機能により、切り換えによる画の乱れを回避するだけでも効果がある。
【0175】
さらに、各サブ23の後段に接続された放送機器に対し、入力する映像データがnフレーム遅延している事を表示する機能を持つことにより、後段の機器で画の繰り返しを除去することも可能になる。
【0176】
また、調停のために遅延制御装置24を利用したが、遅延制御装置24を回線交換装置21に接続する構成の他、遅延制御装置24がCCU33に内蔵されていてもよい。
【0177】
さらに、例えば、ステップS45において、基準遅延時間Tbは、各カメラ31とある各CCU33間の遅延最大量に設定してもよい。また、カメラの撮像時刻の調整については、システム全体で絶対的時間軸(たとえば時計)がある場合、同期タイミングを時刻で指定してもよい。なお、本実施の形態では映像バッファ量のみを設定しているが、バッファとPLL位相調整の両方を用いて遅延調整してもよいものとする。
【0178】
なお、本実施の形態においては、画像データを送信するカメラと、カメラを制御するCCUとから構成される通信システムについて説明したが、本発明は、このような構成に限られるものではなく、データを送信する送信装置と、送信装置を制御する制御装置とから構成される通信システムに適用することができ、その通信システムにおいて遅延を制御する遅延制御装置に適用することができる。
【0179】
以上説明したように、本発明に係る遅延制御装置、制御方法、及び通信システムによれば、従来のライブ中継を行うカメラシステムでは、カメラとCCUは光ファイバケーブル、トライアックスケーブルあるいはマルチケーブルと呼ばれる複合ケーブルで接続されていたが、Ethernet(登録商標)やNGN、無線といった汎用回線に対応させることで、専用回線や衛星回線と比較し、非常に安価であるため、ライブ中継システムの構築が低コストでできる。
【0180】
また、フレーム同期タイミングの異なるライブ中継制御局への対応ができることにより、システムの増設が楽になり、適材適所のシステム構成を構築することができる。例えば従来同一の放送局施設内のスタジオを切り換えて中継するような構成であったが、異なる施設のスタジオや、距離が離れた施設とのライブ中継においても従来同様のタイミング・オペレーションで中継切替え等を行うことができる。
【0181】
さらに、非同期網を通してカメラをGenLockできるため、複数の中継制御局と複数台のカメラで同時中継を行うような場合でも、ラインベース・コーデックを用い、ラインベース・コーデックに適した同期獲得方法を実装することで、低遅延で高画質なカメラの画像を伝送できる。これにより、ライブ中継の核技術であるリアルタイム画像を高速にスイッチャ処理できるレベルの低遅延を保つことができる。
【0182】
ところで、第1乃至第3の実施の形態では、図9を参照して説明したように、IPパケットに含まれるフレーム同期タイムスタンプを使用して、CCU33a乃至33cおよびカメラ31a−1乃至31c−3の間で同期を獲得する処理が行われているが、ライブ中継の核技術であるリアルタイム画像を高速にスイッチャ処理できるレベルの低遅延を保ちつつ、高い精度の同期を実現することが求められている。
【0183】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、2種類の同期獲得を行うことでシステム同期を実現している。第4の実施の形態では、例えば、Ethernet(登録商標)やNGNのような回線制御レイヤで行う同期(以下、回線制御レイヤ同期)を獲得し、さらに、回線制御レイヤによって緩やかに同期したパケットを元に、映像フレームまたは映像ピクチャレベルで同期させる映像制御レイヤの同期(以下、映像制御レイヤ同期)を獲得することができるパケットフォーマットに関する。
【0184】
まず、図17を参照して、映像制御レイヤ同期の同期方法について説明を行う。なお、映像制御レイヤ同期は、第1乃至第3の実施の形態において説明した遅延時間を算出する前に行われる。
【0185】
図17に示されているデータ伝送システム100は、送信装置111から受信装置112にデータストリームが伝送され、送信装置111が、上述のカメラ31の送信手段に対応し、受信装置112が、上述のCCU33の受信手段に対応する。
【0186】
データ伝送システム10は、動画像データや音声データ等のデータストリームを伝送し、リアルタイムに再生出力するためのシステムであり、データストリームを送信する送信装置111と、受信する受信装置112と、これらの装置間でデータストリームが伝送される伝送路113(例えば、上述の回線交換装置21を含む回線など)によって構成される。
【0187】
送信装置111は、生成されたデータストリームを一時的に蓄積する送信用メモリ111aと、送信用メモリ111aからの出力データをパケット化して伝送路113に出力する出力手段111bと、受信装置112に対して伝送する時間情報を生成する時間情報生成手段111cと、出力手段111bからの出力データに時間情報を付加する時間情報付加手段111dによって構成される。
【0188】
受信装置112は、伝送路113を介して受信したデータストリームを一時的に蓄積する受信用メモリ112aと、受信用メモリ112aからの出力データを復号処理する復号処理手段112bと、受信されたデータストリームに付加されている時間情報を分離する時間情報分離手段112cと、受信用メモリ112aからのデータストリームの読み出しタイミングを制御する読み出し制御手段112dによって構成される。なお、送信装置111および受信装置112には、送信装置111から伝送される時間情報の基準となる時刻を発生する基準時計111eおよび112eがそれぞれ設けられてもよい。また、これらの基準時計111eおよび112eは、外部に設けられた基準時刻生成手段114より受信した基準時刻情報に基づいて、時刻を発生してもよい。
【0189】
伝送路113は、Ethernet(登録商標)回線(LANを含む)、あるいは、NGN、無線LAN等の通信ネットワーク等として実現される。
【0190】
送信装置111には、図示しない符号化手段によって、所定の符号化方式で符号化されたデータストリームが供給される。このデータストリームは、ハードディスク等の記憶媒体を介して供給されてもよい。供給されたデータストリームは、送信用メモリ111aに一時的に蓄積され、出力手段111bに供給されて伝送路113に出力される。
【0191】
受信装置112では、受信されたデータストリームが受信用メモリ112aに一時的に蓄積され、復号処理手段112bに供給されて復号処理がなされ、図示しないモニタやスピーカ等の出力手段によって、このデータストリームによるコンテンツが出力される。
【0192】
このようなデータストリームの伝送においては、符号化手段によって生成されたデータストリームが、受信装置112の復号処理手段112bに供給されるまでの伝送遅延時間がある程度一定となるように調整することで、符号化手段の入力データと復号処理手段112bによる出力データとの間で同期が図られる。
【0193】
以上のようにデータ伝送システム100は構成されており、パケット化されたデータが送受信され、そのパケットに含まれているタイムスタンプを利用して、上述したような回線制御レイヤ同期および映像制御レイヤ同期が行われる。
【0194】
ここで、図18を参照して、本実施の形態において、回線制御レイヤ同期と映像制御レイヤ同期を実現するために使用されるパケットの第1の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する。
【0195】
図18に示すように、IPパケットは、IPヘッダ及びIPデータから構成される。IPヘッダには、例えば宛先IPアドレスなどのIPプロトコルに基づく通信経路の制御に関する制御情報などが含まれる。IPデータは、さらにUDPヘッダ及びUDPデータから構成される。UDPは、リアルタイム性が重視される動画または音声データの配信時などに一般的に使用される、OSI参照モデルのトランスポート層のプロトコルである。UDPヘッダには、例えばアプリケーション識別情報である宛先ポート番号などが含まれる。
【0196】
UDPデータは、さらにRTPヘッダ及びRTPデータから構成される。RTPヘッダには、例えばシーケンス番号などのデータストリームのリアルタイム性を保証するための制御情報が含まれる。そして、RTPヘッダには、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプが含まれる。
【0197】
RTPデータは、画像ヘッダ及びラインベース・コーデックに基づいて圧縮された画像本体である符号化データから構成される。画像ヘッダには、例えばピクチャ番号やラインブロック番号(1ライン単位で符号化を行う場合にはライン番号)、サブバンド番号などを含むことができる。そして、画像ヘッダには、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプが含まれる。
【0198】
このように、IPパケットは、RTPヘッダに回線制御レイヤ同期用タイムスタンプが含まれ、画像ヘッダに映像制御レイヤ同期用タイムスタンプが含まれるように構成されている。ここで、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプと映像制御レイヤ同期用タイムスタンプとは同期していなくてもよい。
【0199】
次に、図19を参照して、このようなIPパケットを生成して送信するとともに、送信されてきたIPパケットに含まれているデータを出力する装置について説明する。ここで、図17では、送信装置111および受信装置112は、異なる装置として構成されているが、図19では、送信機能および受信機能を備えた撮像表示装置を例に説明を行う。
【0200】
図19は、本発明を適用した撮像表示装置の構成例を示すブロック図である。
【0201】
図19の撮像表示装置120は、撮像した画像および音声を含む信号をパケット化して非同期伝送路に出力(図4のスタジオ22としての機能)するとともに、非同期伝送路を通して伝送されてきたパケット化されている信号を元に戻して出力(図4のサブ23としての機能)することができる。なお、撮像表示装置120において生成されるパケットの構造については、図19を参照して説明する。
【0202】
撮像表示装置120は、カメラ部121、画像エンコード部122a、音声エンコード部122b、画像パケット生成部123a、音声パケット生成部123b、タイムスタンプ生成部124aおよび124b、画像同期タイミング調整部125、バッファ126、タイムスタンプ生成部127、RTPパケット生成部128、非同期伝送経路I/F(インタフェース)129、RTPパケットデコード部130、タイムスタンプデコード部131、バッファ132、タイムスタンプデコード部133aおよび133b、画像デパケット部134a、音声デパケット部134b、画像デコード部135a、音声デコード部135b、出力部136、クロック生成部137、同期信号発生器138、回線同期タイミング調整部139、並びに、タイムスタンプ生成部140を備えて構成されている。
【0203】
撮像表示装置120は、カメラ部121が取得した画像および音声を含む信号を非同期伝送路に出力(図4のスタジオ22としての機能)するとともに、非同期伝送路を通して伝送されてきた信号を元に戻し、出力部136に出力(図4のサブ23としての機能)することができる。
【0204】
カメラ部121は、CCDやCMOSセンサなどの撮像手段、およびマイクなどの音声入力手段などを備えて構成され、画像および音声を取得する。カメラ部121が取得した画像に応じた画像信号は画像エンコード部122aに入力され、カメラ部121が取得した音声に応じた音声信号は音声エンコード部122bに入力される。
【0205】
画像エンコード部122aは、画像信号をエンコードして圧縮し、その符号化データを画像パケット生成部123aに供給する。音声エンコード部122bは、音声信号をエンコードして圧縮し、その符号化データを音声パケット生成部123bに供給する。
【0206】
画像パケット生成部123aは、画像信号の符号化データを1パケットのサイズにし、画像ヘッダを付加して、符号化データをパケット化する。画像パケット生成部123aは、パケット化した画像信号の符号化データをタイムスタンプ生成部124aに供給する。同様に、音声パケット生成部123bは、パケット化した音声信号の符号化データをタイムスタンプ生成部124bに供給する。
【0207】
タイムスタンプ生成部124aは、メディアに同期したタイムスタンプ、即ち、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプ(図18)を、パケット化した画像信号の符号化データに付加する。同様に、タイムスタンプ生成部124bは、メディアに同期したタイムスタンプを、パケット化した音声信号の符号化データに付加する。
【0208】
画像同期タイミング調整部125は、タイムスタンプ生成部124aが付加する映像制御レイヤ同期用タイムスタンプのタイミングを調整する。また、画像同期タイミング調整部125は、タイムスタンプデコード部133aに対しても映像制御レイヤ同期用タイムスタンプのタイミングを調整する。
【0209】
タイムスタンプ生成部124aにおいてタイムスタンプが付加された符号化データと、タイムスタンプ生成部124bにおいてタイムスタンプが付加された符号化データとは、バッファ132に供給され、バッファ132で多重化される。
【0210】
タイムスタンプ生成部127は、バッファ132で多重化されたデータに対し、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプ(図18)を付加し、RTPパケット生成部128に供給する。なお、タイムスタンプ生成部127には、後述するようにタイムスタンプ生成部140においてリファレンス同期信号を参照して生成された回線制御レイヤ同期用タイムスタンプが供給され、タイムスタンプ生成部127は、その回線制御レイヤ同期用タイムスタンプを付加する。
【0211】
RTPパケット生成部128は、符号化データおよび画像ヘッダを含むRTPデータに対してRTPヘッダを付加し、非同期伝送経路I/Fに供給する。
【0212】
非同期伝送経路I/F129は、タイムスタンプとIPヘッダを付加し、非同期伝送路129に対して出力する。例えば、撮像表示装置120を、図4のカメラ31として見たときには、非同期伝送経路I/F129は、非同期伝送路を介してCCU33にパケットを伝送する。一方、撮像表示装置120を、図4のCCU33として見たときには、非同期伝送経路I/F129は、非同期伝送路を介してカメラ31から伝送されてくるパケットを受信する。
【0213】
RTPパケットデコード部130には、非同期伝送経路I/F129が受信したパケット(画像データパケットや音声データパケット、コマンドデータパケットなど)が供給される。RTPパケットデコード部130は、パケットをデコードしてタイムスタンプデコード部131に供給する。
【0214】
タイムスタンプデコード部131は、IPヘッダ、UDPヘッダおよびRTPヘッダの確認を行う。そして、画像データおよび音声データが含まれるRTPヘッダがバッファ132に供給され、RTPヘッダの後に付加された回線制御レイヤ同期用タイムスタンプ(図18)はクロック生成部137に供給される。
【0215】
バッファ132において、De−MUX回路により、画像信号の符号化データのパケットと、音声信号の符号化データのパケットとに分離される。
【0216】
タイムスタンプデコード部133aには、画像信号の符号化データのパケットが供給され、メディアに同期したタイムスタンプ、即ち、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプ(図18)が抽出される。映像制御レイヤ同期用タイムスタンプは、出力部136でクロックや同期信号を発生させる為に使用される。
【0217】
画像デパケット部134aには、タイムスタンプデコード部133aから供給される画像信号の符号化データのパケットをデパケットし、画像信号の符号化データを画像デコード部135aに供給する。画像デコード部135aは、画像信号の符号化データをデコードして画像信号を出力部136に出力する。
【0218】
また、タイムスタンプデコード部133b、音声デパケット部134b、および音声デコード部135bは、タイムスタンプデコード部133a、画像デパケット部134a、画像デコード部135aと同様に、音声信号の符号化データのパケットに含まれる音声信号を出力部136に出力する。
【0219】
これにより、出力部136からは、非同期伝送路を介して伝送されてきた画像および音声が出力される。
【0220】
また、クロック生成部137は、所定の周波数のクロックを生成して同期信号発生器138に供給し、同期信号発生器138は、そのクロックから同期信号を発生して、回線同期タイミング調整部139に供給する。
【0221】
回線同期タイミング調整部139には、同期信号発生器138から同期信号が供給されるとともに、タイムスタンプデコード部131からの回線制御レイヤ同期用タイムスタンプがクロック生成部137および同期信号発生器138を介して供給される。そして、回線同期タイミング調整部139は、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプに基づいて、同期信号を調整し、タイムスタンプ生成部140がタイムスタンプを生成する際に参照するリファレンス同期信号を出力する。
【0222】
タイムスタンプ生成部140は、回線同期タイミング調整部139からのリファレンス同期信号を参照し、タイムスタンプ生成部127に供給する回線制御レイヤ同期用タイムスタンプを生成する。
【0223】
以上のように構成されている撮像表示装置120では、パケットに含まれる回線制御レイヤ同期用タイムスタンプに基づいて、緩やかに同期したパケットを元に、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプに基づいて、映像フレームまたは映像ピクチャレベルで同期させる映像制御レイヤの同期(以下、映像制御レイヤ同期)を獲得することができる。これにより、ライブ中継の核技術であるリアルタイム画像を高速にスイッチャ処理できるレベルの低遅延を保ちつつ、高い精度の同期を実現することができる。
【0224】
なお、非同期伝送路の帯域が信号に比べて十分に広帯域な場合には、画像エンコード部122aおよび音声エンコード部122bは必要なく、非圧縮のままIPパケット化してもよい。その場合には、15の画像デコード部135aおよび音声デコード部135bも必要ない。
【0225】
次に、図20を参照して、パケットの第2の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する。
【0226】
図20に示されているIPパケットは、符号化時間同期用タイムスタンプが符号化データに含まれている点で、図18に示したIPパケットと異なっており、それ以外の点で共通している。また、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプと映像制御レイヤ同期用タイムスタンプとは同期していなくてもよく、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプと符号化時間同期用タイムスタンプとは同期している。
【0227】
図20に示すように、IPパケットに、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプおよび映像制御レイヤ同期用タイムスタンプに加えて、符号化時間同期用タイムスタンプを付加することにより、例えば、図19の画像デコード部135aおよび音声デコード部135bにおいて符号化データをデコードするタイミングを、より精密に設定することができ、より低遅延を実現することができる。
【0228】
なお、第2の構成例としてのIPパケットを利用する場合には、図19の撮像表示装置120において、画像エンコード部122aと画像パケット生成部123aとの間、および、音声エンコード部122bと音声パケット生成部123bとの間に、符号化時間同期用タイムスタンプを生成するタイムスタンプ生成部を設ける必要がある。さらに、画像デパケット部134aと画像デコード部135aとの間、および、音声デパケット部134bと音声デコード部135bとの間に、符号化時間同期用タイムスタンプをデコードするデコード部を設ける必要がある。
【0229】
次に、図21を参照して、パケットの第3の構成例としてのIPパケットのフレームフォーマットについて説明する。
【0230】
図21に示されているIPパケットは、FEC(Forward Error Correction)同期用タイムスタンプがRTPヘッダに含まれており、FECヘッダが画像ヘッダの先頭に付加されている点で、図20に示したIPパケットと異なっており、それ以外の点で共通している。また、回線制御レイヤ同期用タイムスタンプと映像制御レイヤ同期用タイムスタンプとは同期していなくてもよく、FEC同期用タイムスタンプ、映像制御レイヤ同期用タイムスタンプ、および符号化時間同期用タイムスタンプは同期している。
【0231】
図21に示すように、IPパケットに、FECヘッダおよびFEC同期用タイムスタンプを付加することにより、FECによってジッタが削除されたパケットを、FEC同期用タイムスタンプに基づいて消失訂正することができ、さらなる低遅延を実現することができる。
【0232】
なお、第3の構成例としてのIPパケットを利用する場合には、図19の撮像表示装置120において、バッファ132の後段に、FECによってジッタが削除されたパケットを、FEC同期用タイムスタンプに基づいて消失訂正する処理を行う処理部を設ける必要がある。また、FECヘッダおよびFEC同期用タイムスタンプを生成する生成部も設ける必要がある。また、第3の構成例としてのIPパケットは、標準化されたRTPパケットに対応している。
【0233】
なお、第2および第3の構成例としてのIPパケットにおいても、回線制御レイヤ同期および映像制御レイヤ同期を行うものとする。
【0234】
以上のように、第4の実施の形態では、ライブ中継の核技術であるリアルタイム画像を高速にスイッチャ処理できるレベルの低遅延を保ちつつ、高い精度の同期を実現することができる。即ち、上述したようなラインベース・コーデックは、ピクチャベースコーデックと比較して、演算に費やせる時間が極端に短くなる。
【0235】
このように演算に費やせる時間が極端に短くなることによる問題を解決するために、送信バッファの待機時間と受信バッファの待機時間との合計時間を一定に維持して、送信バッファの待機時間と受信バッファの待機時間との比率を変更する処理を行う。例えば、難しい画像データの符号化を行う場合には、送信に費やすバッファの待機時間を増加させる一方、受信バッファの待機時間を減少させるように待機時間を変更する処理を行う。このように送信バッファの待機時間が長くなることで、難しい画像によって発生した一時的な大量のデータをステム遅延的に吸収することができる。
【0236】
例えば、従来の技術では、ピクチャ遅延のため、回線遅延分の受信パケットのジッタを吸収するバッファが設けられているが、回線遅延と受信バッファの待機時間が切り分けることができなかった。この切り分けができないことにより、無駄にバッファが必要となり低遅延システムに影響を与えていた。
【0237】
これに対し、本実施の形態では、回線遅延と受信バッファの待機時間とを切り分けることができ、送信バッファの待機時間に応じて合計時間を一定に維持するように、受信バッファの待機時間を決定することができるので、より低遅延な同期を実現することができる。さらに、本実施の形態では、送信バッファの待機時間と受信バッファの待機時間との比率を、非常に短い時間間隔で変更することができるようにすることで、低遅延でも高画質なデータを伝送することができる。
【0238】
上述した一連の処理は、ハードウエアにより実行することもできるし、ソフトウエアにより実行することもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行する場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、プログラム記録媒体からインストールされる。
【0239】
図22は、上述した一連の処理をプログラムにより実行するコンピュータのハードウエアの構成例を示すブロック図である。
【0240】
コンピュータにおいて、CPU(Central Processing Unit)201,ROM(Read Only Memory)202,RAM(Random Access Memory)203は、バス204により相互に接続されている。
【0241】
バス204には、さらに、入出力インタフェース205が接続されている。入出力インタフェース205には、キーボード、マウス、マイクロホンなどよりなる入力部206、ディスプレイ、スピーカなどよりなる出力部207、ハードディスクや不揮発性のメモリなどよりなる記憶部208、ネットワークインタフェースなどよりなる通信部209、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブルメディア111を駆動するドライブ210が接続されている。
【0242】
以上のように構成されるコンピュータでは、CPU201が、例えば、記憶部208に記憶されているプログラムを、入出力インタフェース205及びバス204を介して、RAM203にロードして実行することにより、上述した一連の処理が行われる。
【0243】
コンピュータ(CPU201)が実行するプログラムは、例えば、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disc)等)、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリなどよりなるパッケージメディアであるリムーバブルメディア211に記録して、あるいは、ローカルエリアネットワーク、インターネット、デジタル衛星放送といった、有線または無線の伝送媒体を介して提供される。
【0244】
そして、プログラムは、リムーバブルメディア211をドライブ210に装着することにより、入出力インタフェース205を介して、記憶部208にインストールすることができる。また、プログラムは、有線または無線の伝送媒体を介して、通信部209で受信し、記憶部208にインストールすることができる。その他、プログラムは、ROM202や記憶部208に、あらかじめインストールしておくことができる。
【0245】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであっても良いし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであっても良い。
【0246】
また、本明細書において、システムとは、複数の装置により構成される装置全体を表すものである。
【0247】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0248】
20 通信システム, 21 回線交換装置, 22a乃至22c スタジオ, 23a乃至23c サブ, 24 遅延制御装置, 61 スイッチ部, 62 物理層Rx, 63 物理層コントロール部, 64 受信データ解析部, 65 システム同期タイミング調整部, 66 撮像タイミング管理テーブル, 67 撮像タイミング調整管理部, 68 同期制御情報送信部, 69 送信データ生成部, 70 物理層Tx

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信する複数の送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置が、前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する同期情報送信手段と
を備える遅延制御装置。
【請求項2】
前記決定手段は、前記制御装置の同期タイミングに対して遅延量が最小となる前記制御装置の同期タイミングを、前記基準同期タイミングとして決定する
請求項1に記載の遅延制御装置。
【請求項3】
前記決定手段は、任意の前記制御装置の同期タイミングを基準同期タイミングと仮定した場合に、各送信装置と各制御装置との間で伝送されるデータの遅延量の合計であるシステム総遅延量を、全ての前記制御装置に対して求め、前記システム総遅延量が最小となる前記制御装置の同期タイミングを、前記基準同期タイミングとして決定する
請求項1に記載の遅延制御装置。
【請求項4】
前記決定手段は、全ての前記送信装置と全ての前記制御装置との組み合わせにおいて、仮設定した仮基準同期タイミングでの各送信装置と各制御装置との間で伝送されるデータの遅延量が全ての前記遅延量から算出される所定の基準遅延量よりも小さい場合、前記仮基準同期タイミングを遅らせることを繰り返して、前記遅延量が前記基準遅延量以上となる前記仮基準同期タイミングを前記基準同期タイミングとして決定する
請求項1に記載の遅延制御装置。
【請求項5】
全ての前記送信装置と全ての前記制御装置との組み合わせにおいて、仮設定した仮基準同期タイミングでの各送信装置と各制御装置との間で伝送されるデータの遅延量が前記基準遅延量より大であり、かつ、前記遅延量が前記送信装置での処理における所定の単位量以上である場合には、前記単位量単位での遅延量で遅延するデータの蓄積を前記制御装置に行わせる
請求項4に記載の遅延制御装置。
【請求項6】
全ての前記送信装置と全ての前記制御装置との組み合わせにおいて、仮設定した仮基準同期タイミングでの各送信装置と各制御装置との間で伝送されるデータの遅延量が前記基準遅延量より大であり、かつ、前記遅延量が前記送信装置での処理における所定の単位量未満である場合には、前記遅延量で遅延するデータの蓄積を前記制御装置に行わせる
請求項5に記載の遅延制御装置。
【請求項7】
前記送信装置は、画像データを送信する装置であり、1ピクチャをN個のライン(Nは1以上)の集合に分割し、分割した集合ごとに画像を符号化して送信し、
前記制御装置は、複数の前記送信装置から送信される前記画像データの切り換えを制御する
請求項1に記載の遅延制御装置。
【請求項8】
データを送信する複数の送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置が、前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得し、
取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定し、
決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する
ステップを含む遅延制御装置の制御方法。
【請求項9】
データを送信する複数の送信装置と、
複数の前記送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置と、
前記送信装置と前記制御装置との間で伝送されるデータの遅延を制御する遅延制御装置と
を備えて構成される通信システムであって、
前記制御装置が前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定する決定手段と、
前記決定手段により決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する同期情報送信手段と
を有する通信システム。
【請求項10】
データを送信する複数の送信装置と、
複数の前記送信装置を、回線を介してコントロールする複数の制御装置と、
前記送信装置と前記制御装置との間で伝送されるデータの遅延を制御する遅延制御装置と
を備えて構成される通信システムの制御方法であって、
前記制御装置が前記送信装置を同期して制御するタイミングを示す同期タイミングを取得し、
取得された前記同期タイミングに基づいて、複数の前記制御装置間での同期の基準となる基準同期タイミングを決定し、
決定された前記基準同期タイミングで複数の前記制御装置が前記送信装置からのデータを受信する際に用いる同期情報を、複数の前記制御装置に送信する
ステップを含む通信システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−223359(P2011−223359A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90961(P2010−90961)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】