説明

遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機

【課題】 かしめピン等が破断されたことを早期かつ確実に発見可能にして、店側の損失を抑える。
【解決手段】 所定のプリント基板が収容された基板ケース1にかしめピン6を係合させて当該基板ケース1を開封不能又は遊技機100から取り外し不能に封止する基板ケース1のかしめ構造において、電力を受けて発光する第一の発光部721と、基板ケース1内に設けられ、第一の発光部721に電力を送る送電部71と、を備え、第一の発光部721と送電部71は、かしめピン6を介して電力を送受可能に構成され、封止解除に伴う、かしめピン6の切断又は基板ケース1からの脱抜によって第一の発光部721が消灯する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定のプリント基板が収容されている遊技機用基板ケースのかしめ構造、この基板ケースを搭載した遊技機に関し、特に、不正開封された際に、痕跡確認を可能にした遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スロットマシンやパチンコ機等の遊技機には、ゲーム性に関与する複数の基板が配設されている。
これらの基板には、遊技の結果を左右するとともに、遊技機全体を制御する主要な基板である主基板が含まれている。
主基板は、プリント基板上にCPU,ROM,RAM等の種々の電子部品が配置されたコンピュータとして構成されている。
【0003】
このような遊技の結果を左右する主基板は、不正改造の対象となり易い。例えば、主基板に実装されている電子部品を不正に交換するなどして、出玉を増やすといった不正行為が行われることがある。
このような不正行為を防止するため、通常、主基板を透明な二つのケースの間に挟んで収容するとともに、さらに、このケースを開封不能に封止している。
基板ケースを封止する構造は、かしめ構造と称され、一般的には、ケース同士を専用のかしめピン等で係止することで、開封不能としてある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−192792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、不正行為を行おうとする者は、何らかの工具を使って、かしめピンや構造物を破断し、基板ケースを開封して、不正行為を行っていた。
開封された基板ケースは、そのままにしておくと、不正が発覚しやすい状態になることから、中には、かしめピンなどを再生可能に破断し、不正部品の取り付けなどを行った後、破断したかしめピンをきれいに接着して、痕跡が残らないようにする者もいた。
このような行為が行われると、店側としては、不正行為の発見が遅れてしまい、損失が膨大となることから、経営上問題となっていた。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、かしめピン等が破断されたことを早期かつ確実に発見可能にして、店側の損失を抑えることが可能な遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、本発明の遊技機用基板ケースのかしめ構造は、基板ケースを閉状態でかしめるかしめピンと、基板ケースに収納された基板に実装された第一の電磁コイルとを備え、かしめピンが、第一の電磁コイルの周囲に発生した電界により誘導起電力を発生する第二の電磁コイルと、誘導起電力を受けて発光する第一の発光部とを有した構成としてある。
【0008】
また、本発明の遊技機は、上述の遊技機用基板ケースを備えた構成としてある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機によれば、かしめピン等が破断されたことを早期かつ確実に発見可能にして、店側の損失を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の遊技機(スロットマシン)の構成を示す外観斜視図である。
【図2】主基板が収納された基板ケースの構成を示す外観斜視図である。
【図3】かしめピンにより本体ケースと蓋ケースがかしめられた様子を示す上面図である。
【図4】かしめピンが本体ケースの溝部に嵌合された状態を示す縦方向断面図である。
【図5】かしめピンの胴部が切断された状態を示す上面斜視図である。
【図6】かしめピンの構成を示す外観斜視図である。
【図7】破断検出回路の構成を示す回路図である。
【図8】破断検出回路の他の構成を示す回路図である。
【図9】主基板と副基板が収納された基板ケースの構成を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機の好ましい実施形態について、各図を参照して説明する。
遊技機には、パチンコ機、スロットマシン、アレンジボール、雀球など様々な機類があるが、本実施形態では、メダルを遊技媒体とするスロットマシンに本発明の遊技機用基板ケースを適用した場合について説明する。
【0012】
[スロットマシン]
図1に示すように、スロットマシン100は、複数のリール110a,110b,110cを回転させることによって遊技媒体であるメダルを獲得することができる回胴式遊技機を構成している。
スロットマシン100は、必要な機械、装置等を収納する正面側が開口した筐体100bと、筐体100bの正面側を開閉可能に覆う前扉100aとで構成されている。
前扉100aは、筐体100bにヒンジ等を介して開閉可能に取り付けられる扉体で、この前扉100aに各リール110の回転を始動させるスタートレバーや、回転している各リール110を停止させる3つの停止ボタンなどの複数の操作手段が設けられて、スロットマシン100の正面部を構成している。
【0013】
筐体100bの中央には、リール110a,110b,110cと、各リール110を回転可能に支持する図示しないモータ及び回転位置を検出するセンサ等が設けられている。
また、筐体100bの下部には、メダルの貯留・払出しを行うメダル払出装置120が設けられる。
筐体100bの上部には、所定のプリント基板が収容された基板ケース1が設けられている。
【0014】
基板ケース1は、本発明の遊技機用基板ケースの一例であり、上記の各操作手段からの信号に基づき、各リール110、メダル払出装置120などの各装置を制御することで、スロットマシン遊技の進行制御を行う、いわゆる主基板2が収容されている。
【0015】
このような構成からなるスロットマシン100は、主基板2により、以下のように制御されてスロットマシン遊技が進行する。
まず、遊技者によりメダルが投入され、スタートレバーが操作されると、主基板2は、各リール110を回転させる制御を行うとともに、ボーナスや小役等を抽せんする内部抽せんを行い、各停止ボタンが押下操作されたタイミングに基づき、抽せん結果に応じた図柄の組合せで停止するよう、回転している各リール110の停止制御を行う。
【0016】
また、主基板2は、各リール110に停止表示される図柄の組合せを判定し、所定の図柄の組合せのときには、メダル払出装置120に対して所定数のメダルを払い出させる制御を行う。
このようなスロットマシン遊技の進行を制御する主基板2は、CPU(中央演算処理装置)、ROM及びRAMなどの記憶手段、I/OインターフェイスなどのIC部品、抵抗、コンデンサ、トランジスタなどの様々な電子部品が実装された部品実装面2aと、これらの部品のリード部を半田接合する半田面2bとからなるプリント基板で構成されている。
【0017】
ところで、主基板2は、例えば、ROMに記憶されているプログラムの内容を書替えたり、実装されている電子部品を異なる電子部品に取り替えたりすることで、スロットマシン100における遊技特性(例えば、出玉率)を容易に変更できるため、不正改造がなされる可能性の高い基板とされている。
【0018】
そこで、本実施形態の基板ケース1は、図2〜図5に示すように、主基板2を蓋ケース3と本体ケース4の間に挟んで収容するとともに、所定のかしめピン6を蓋ケース3と本体ケース4に係合させて開封不能に封止している。
そして、かしめピン6により基板ケース1が封止しているときはかしめピン6の発光部721(後述)が発光し、かしめピン6が切断又は破壊されると、その発光部721が消灯して、不正に開封されたことを容易に視認できるようにしてある。
以下、本実施形態の基板ケース1の構成について、図2〜図8を参照しつつ説明する。
【0019】
[基板ケース]
基板ケース1は、図2に示すように、矩形状のケース構造を有し、主基板2の部品実装面側を覆う蓋ケース3と、半田面側を覆う本体ケース4を備えている。
主基板2は、蓋ケース3又は本体ケース4のいずれかに、所定のネジにより螺着されて収容されるようになっている。
蓋ケース3と本体ケース4は、部品実装面と半田面を外部から視認可能、かつ、容易に破壊できないように、無色透明な工業用樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成されている。
【0020】
また、基板ケース1は、蓋ケース3と本体ケース4とを開閉可能に支持するヒンジ(図示せず)を備えている。このヒンジは、ケース閉状態において、蓋ケース3と本体ケース4とを軸止し、ヒンジ側からケースを開放することができないように構成してある。
【0021】
この基板ケース1は、本体ケース4側が筐体100b奥に面するとともに、蓋ケース3側が筐体100bの正面側開口を向くように、すなわち、部品実装面が正面から見えるよう、筐体100bに配置されている。
また、基板ケース1が取り付けられる筐体100b奥には、基板ケースホルダ5が設置されており、この基板ケースホルダ5に基板ケース1が嵌め込まれ、さらにかしめピン6で取り外し不能にかしめられている。
【0022】
この基板ケース1は、基板ケースホルダ5から取り外し不能に封止するかしめ構造を備えている。
具体的には、かしめ構造(第一のかしめ構造)は、図2〜図5に示すように、蓋ケース3の外縁の一部に形成された蓋かしめ部30と、基板ケースホルダ5に形成されたホルダかしめ部50と、これら蓋かしめ部30とホルダかしめ部50の両方に係合するかしめピン6とを有して構成されている。
【0023】
蓋かしめ部30は、図3及び図4に示すように、基板ケースホルダ5に向かって垂下する縦部材31を有している。この縦部材31には、かしめピン6が挿通可能に開口された開口部311が穿設されており、この開口部311の周辺には、かしめピン6のハネ部61が係止するハネ部当接部312と、かしめピン6の胴部62が係止する胴部係止部313が形成されている。
【0024】
ハネ部当接部312は、かしめピン6を開口部311に挿通しきった状態において、ハネ部61の端部612から見て挿通方向とは逆の方向に位置する縦部材31の一部分である。このハネ部当接部312を有することで、開口部311に挿通後のかしめピン6を挿通方向とは逆の方向へ抜こうとしても、ハネ部61の端部612がそのハネ部当接部312に当接するので、このかしめピン6を脱抜不能とすることができる。
【0025】
胴部係止部313は、開口部311の周縁のうち、開口部311に挿通後のかしめピン6の胴部62の下方に位置する部分であって、蓋ケース3を開こうとしたときに、その胴部62に当接する部分である。これにより、かしめピン6は、蓋ケース3を基板ケースホルダ5から取り外し不能に封止することができる。
なお、基板ケース1が基板ケースホルダ5に取り付けられるとともに蓋ケース3と本体ケース4が封止されたケース閉状態においては、胴部係止部313がかしめピン6の胴部62にほぼ接触していることが望ましい。これにより、ケース閉状態における蓋ケース3と本体ケース4との間で隙間が開くのをなくすことができる。
【0026】
蓋かしめ部30の上面には、窓部314が穿設されている。窓部314は、かしめピン6が開口部311に挿通された状態にあるときに、かしめピン6の胴部62の上方に位置するように形成されている。
この窓部314があることで、ここにニッパなどの工具を挿入し、かしめピン6の胴部62を切断することができる(図5参照)。
【0027】
ホルダかしめ部50は、かしめピン6の挿通方向に沿って溝状に凹設された溝部51を有している。溝部51は、少なくともかしめピン6の頭部63が納まる程度の幅で形成されている。この溝部51の入口511は、基板ケースホルダ5の縁に位置し、ここから主基板2に向かって溝部51が形成され、溝部出口512は、その主基板2に向かって開口している。
そして、基板ケース1をケース閉状態にすると、溝部出口512の先に、蓋かしめ部30の開口部311が位置するようになる。これにより、溝部出口512と開口部311がそれぞれ連通し、かしめピン6を挿通することができるようになっている。
【0028】
この溝部51には、かしめピン6が、頭部63を溝部入口511の方に向け、ハネ部61を溝部出口512の方に向けて収められている。そして、かしめピン6は、その収められた溝部51の中で、溝部入口511へ向かう方向と溝部出口512へ向かう方向の双方向に移動可能となっている。ただし、かしめピン6のハネ部61が開口部311に挿通された後は、このかしめピン6は、胴部62を切断しない限り、溝部入口511へ向かう方向に移動させることはできない。
なお、溝部入口511から溝部出口512までの長さは、図3、図4に示すように、かしめピン6の頭部63からハネ部61までの長さよりも長くすることができる。ただし、長くすることに限るものではなく、例えば、それとほぼ同じ長さとすることもでき、あるいは、短くすることもできる。
【0029】
溝部51の側面513には、かしめピン6の移動方向に沿って細溝部514が形成されている。細溝部514は、かしめピン6の頭部63の側面632に形成された耳部633が嵌合する部分であって、かしめピン6を主基板2の基板面方向に移動させるためのガイドの役割をしている。
また、この細溝部514にかしめピン6の耳部633を嵌合させることで、かしめピン6の頭部63は、主基板2の基板面に対して垂直方向(あるいは、細溝部514が形成されていない方向)に移動できなくなる。これにより、ハネ部61が開口部311に挿通されたかしめピン6は、胴部62が開口部311に挿入した状態で留まり、頭部63の耳部633が細溝部514に嵌合した状態にあるので、このかしめピン6を基板ケースホルダ5又は本体かしめ部40(後述)から取り外すことができないようになっている。
【0030】
溝部51の底面515のうち溝部入口511の近傍には、底部係止部516が形成されている。底部係止部516は、上向きの鉤状に形成されており、かしめピン6の頭部63の底面634に形成された凹部635に係合する。
この底部係止部516は、溝部入口511の近傍に形成されていることから、開口部311に挿通する前のかしめピン6を係止することができる。これにより、かしめピン6が不用意に主基板2の方へ移動して開状態の蓋ケース3を閉じようとするのを邪魔したり、コイルAに近づいて発光部721が不用意に発光するのを防止できる。
【0031】
ここまで、基板ケース1を基板ケースホルダ5から取り外し不能に封止するかしめ構造について説明したが、同様に、基板ケース1は、蓋ケース3と本体ケース4とを開封不能に封止するかしめ構造を備えている。
具体的には、かしめ構造(第二のかしめ構造)は、図2〜図5に示すように、蓋ケース3の外縁の一部に形成された蓋かしめ部30と、本体ケース4の外縁の一部に形成された本体かしめ部40と、これら蓋かしめ部30と本体かしめ部40の両方に係合するかしめピン6とを有して構成されている。
【0032】
蓋かしめ部30は、上述した第一のかしめ構造における蓋かしめ部30と同様の構造を有している。
本体かしめ部40は、上述した第一のかしめ構造におけるホルダかしめ部50と同様の構造を有している。
これにより、蓋かしめ部30と本体かしめ部40の両方にかしめピン6を係合させることで、それら蓋かしめ部30と本体かしめ部40とを開封不能に封止することができる。
なお、本体かしめ部40においては、底部係止部516を省略できる。
【0033】
[かしめピン]
かしめピン6は、ピン材の一例であり、基板ケースホルダ5の溝部51に嵌め込まれるとともに、閉状態の蓋ケース3の開口部311に挿通して、基板ケース1が基板ケースホルダ5から取り外し不能に封止する閂(かんぬき)として機能する。
また、かしめピン6は、本体ケース4の溝部41に嵌め込まれるとともに、閉状態の蓋ケース3の開口部311に挿通して、それら本体ケース4と蓋ケース3とを開封不能に封止する閂として機能する。
【0034】
かしめピン6は、図6に示すように、ハネ部61と、胴部62と、頭部63とで構成されている。
ハネ部61は、かしめピン6を開口部311に挿通するときに真っ先に挿入される部分であって、胴部62の先端から斜め後ろ方向に延設した延設部611を有しており、Λ(ラムダ)の文字のような形状をなしている。つまり、このハネ部61は、ちょうど矢印のアローヘッド(矢尻)に相当し、胴部62がシャフトに相当して、矢印「↑」の形状のように形成されている。
【0035】
延設部611は、胴部62との接合部分を起点として延設された平板バネであって、弾性体で形成されている。このため、二本の延設部611の各端部612同士の長さよりも短い幅の開口部311に挿入されると、延設部611は、開口部311の周縁から荷重を受けて胴部62の方へ撓んで弾性変形する。そして、延設部611の端部612が開口部311を通過すると、荷重がなくなり、延設部611は、もとの形状に戻る。この復元した延設部611の端部612は、ハネ部当接部312に近接している。このため、かしめピン6を溝部入口511の方へ引き抜こうとしても、延設部611の端部612がハネ部当接部312に当接するので、かしめピン6は脱抜不能となる。
なお、本実施形態において、延設部611は、二本としてあるが、二本に限るものではなく、一本又は三本以上であってもよい。
【0036】
胴部62は、ハネ部61と頭部63とをつなぐ部分であって、円筒形状又は円柱形状に形成されている。
この胴部62は、外周にコイルB(第二の電磁コイル)が巻きつけられており、コイル軸部として機能する。
この胴部62は、コイルBが巻かれた範囲内で、磁性材料により形成された部分を有する磁性部62−1と、工具により切断可能な切断部62−2とを有している。
【0037】
磁性部62−1は、同軸の二重構造とすることができ、例えば、円筒形状の樹脂管の中に鉄心を挿入した構造とすることができる。
鉄心は、ケイ素鋼などの磁性材料で形成されている。これにより、鉄損などを減らして効率的にコイルBに誘導電流Iを流したり、コイルBに発生する誘導起電力Vを大きくしたりすることができる。
なお、本実施形態において磁性部62−1は、樹脂管と鉄心の二重構造とするが、この構造に限るものではなく、例えば磁性部62−1の全体を磁性材料で形成することもできる。
【0038】
切断部62−2は、ニッパなどの剪断工具等により剪断可能な程度の硬度を有した部分であり、例えば、プラスチックなどの合成樹脂等で形成できる。この切断部62−2は、切断を容易にするために、切欠部分を設けたり、中空の円筒形状にしたり、肉薄にしたり、あるいは空芯コイルにしたりすることができる。
なお、磁性部62−1のみならず切断部62−2も、磁性体により形成できる。例えば、磁性材料を混ぜ合わせたプラスチックなどにより形成することができる。この切断部62−2も、剪断工具等により剪断可能となっている。
【0039】
頭部63は、胴部62の端部に接合しており、ほぼ直方体に形成された筐体631の内部に、破断検出回路7の検出回路72が実装された回路基板636などを内包している。この破断検出回路7については、後記の「破断検出回路」で詳述する。
筐体631は、容易に破壊できない工業用樹脂(例えば、ポリカーボネート)で形成することができ、側面632には、細溝部514に嵌合される耳部633が形成され、底面634には、底部係止部516に係止する凹部635(図4)が形成されている。
また、筐体631の上面には、発光部721の発光が目視できるように、透明又は半透明の板部材637が嵌合されている。
【0040】
[破断検出回路]
破断検出回路7aは、電磁誘導回路を含んでおり、主基板2の縁部の所定の箇所に配置された送電回路71と、かしめピン6に実装された検出回路72とを有している。
送電回路(送電部)71は、図7に示すように、発振回路711と一次側コイルAが直列に接続された回路である。
発振回路711は、時間的に変化する電流IをコイルAに流す。これにともない、コイルAの周囲には、時間的に変化する磁場(磁束)が発生する。
【0041】
コイルA(第一の電磁コイル)は、図3に示すように、主基板2の縁部において、コイルAの内側で発生する磁場(磁束)の向きが主基板2の縁部から外方へ向かう方向となるように配置されている。一方、その磁場を受けるかしめピン6は、基板ケースホルダ5の溝部51又は本体ケース4の溝部41に嵌合された状態において、コイルBが巻かれた胴部62の長手方向にコイルAが位置するように配置されている。つまり、コイルAの内側で発生する磁場(磁束)の向きとかしめピン6の胴部62の長手方向(あるいは、溝部51に嵌合されたかしめピン6が開口部311へ挿通する方向)が、ほぼ同一線上となるように、コイルAとかしめピン6がそれぞれ配置されている。これにより、コイルAは、かしめピン6のコイルBに非接触で電力を供給することができる。
【0042】
検出回路72は、図7に示すように、コイルBと、発光部721と、抵抗722とを直列に接続した回路である。
コイルB(第二の電磁コイル)は、例えば、軟銅線やエナメル銅線などを用いることができ、かしめピン6の胴部62の外周に巻きつけられている。このコイルBは、送電回路71のコイルAの周囲に発生した磁場(磁束)の変化を受け、相互誘導により誘導起電力Vを発生させ、誘導電流Iを流す。
【0043】
このコイルBは、胴部62の外周に複数層で巻き付けることができる。これにより、誘導起電力Vを多く発生させる(誘導電流Iを多く流す)ことができる。
また、コイルBは、切断時に修復を困難にするために、複数層で巻きつけることができる。
【0044】
発光部(第一の発光部)721は、例えば、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)などを用いることができ、コイルBからの誘導起電力Vが所定値(LEDでは順方向降下電圧V)を越えると発光する。
抵抗722は、発光部721が定格電流の範囲内で発光するように、電流Iを抑制する。
なお、コイルBは、かしめピン6の胴部62に巻きつけられているが、発光部721と抵抗722は、回路基板636に実装されて、かしめピン6の頭部63の筐体631の内部に収納することができる。
【0045】
この破断検出回路7aは、次のような動作をする。
送電回路71では、発振回路711から出力された電流Iにより、コイルAの周囲に、時間的に変化する磁場が発生する。
コイルAとコイルBが十分離れているとき、例えば、かしめピン6が溝部51に嵌合されていないとき、あるいは、かしめピン6が溝部51に嵌合されているが開口311に挿通されていないとき(かしめピン6の頭部63の凹部635が溝部51の底部係止部516に係合しているときなど)には、コイルAの周囲に発生した磁場がコイルBに影響を与えず、あるいは、相互誘導により誘導起電力Vが発生しても、この誘導起電力Vがわずかであるために、発光部721は、発光しない。この場合は、かしめピン6による基板ケース1の封止がなされていないと判断できる。
【0046】
コイルAとコイルBが近づいたとき、例えば、溝部51に嵌合されたかしめピン6が開口311に挿通されたときには、コイルAの周囲に発生した磁場がコイルBに影響を与え、相互誘導により誘導起電力Vが発生して、発光部721を発光させる。この場合は、かしめピン6により、基板ケース1が封止されたと判断できる。
【0047】
その後、工具などによりかしめピン6の胴部62が切断されたとき、コイルBも同時に切断される。すると、このコイルBの切断により検出回路72が寸断され、電流Iが流れなくなり、発光部721は消灯する。この発光部721が消灯していることを視認することで、かしめピン6が切断されたものと判断できる。
なお、切断されたコイルBは、復元が困難である。このため、不正行為を行う者がコイルBを切断すると、検出回路72は寸断された状態で放置され、発光部721は点灯不能となる。これにより、遊技ホールの店員が気付くまでは、少なくともその発光部721の消灯状態が維持されるので、これが不正行為の証拠となり、主基板2に対する不正行為を確実に発見できる。
【0048】
なお、図8に示すように、破断検出回路7bには、自己診断回路73を接続することができる。
自己診断回路73は、主基板2に備える回路であって、送電回路71が正常かどうかを診断する回路である。
この自己診断回路73は、検出回路72と同じ構成を有している。すなわち、自己診断回路73は、コイルC(第三の電磁コイル)と発光部(第二の発光部)731と抵抗732とを直列に接続した回路構成を有している。
【0049】
コイルCは、送電回路71のコイルAの近傍に配置される。特に、コイルCは、図3に示すように、コイルAが巻きつけられた鉄心に、コイルAと同じように巻き付けることができる。これにより、コイルAの周囲に時間的に変化する磁場が発生すると、コイルCにて相互誘導により誘導起電力Vが発生し、誘導電流Iを流して、発光部731を点灯させることができる。よって、主基板2に実装された送電回路71が起動しているにもかかわらず、自己診断回路73の発光部731が消灯しているときは、送電回路71に何らかの異常が発生しているものと判断できる。このように、自己診断回路73を設けることで、送電回路71が正常に動作しているか否かを判断できる。
【0050】
また、かしめピン6により基板ケース1が封止状態にある場合において、そのかしめピン6の発光部721が発光していないものの、自己診断回路73の発光部731が発光しているときは、送電回路71は正常であって、かしめピン6が確実に切断されているものと判断できる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態の遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機によれば、かしめピン等が破断されたことを早期かつ確実に発見可能にして、店側の損失を抑えることが可能とすることができる。
【0052】
以上、本発明の遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機の好ましい実施形態について説明したが、本発明に係る遊技機用基板ケースのかしめ構造及び遊技機は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、コイルAの数をかしめピン6の数と同じとし、これらを一対一で対応させていたが、一対一に限るものではなく、例えば、図2に示すように、複数のかしめピン6に対して送電する一対多数用コイルA1を備えることもできる。これにより、コイルAとかしめピン6を一対一とした場合に比べて、部品点数を削減できる。
【0053】
また、送電回路71及び自己診断回路73は、図9に示すように、主基板2とは別の基板(副基板8)に設けて主基板ケース1内に収めることもできる。このような構成によれば、遊技に係る基板、すなわち主基板2を変更することなく、本発明の効果を発揮することができる。
【0054】
さらに、未封印時は、コイルAとコイルBによる相互誘導による誘導起電力により、かしめピン6の発光部721が発光しないようにコイルAまたはコイルBをシールドする構造で、封印時は、かしめピン6がシールドを突き破り、コイルAとコイルBによる相互誘導による誘導起電力により、かしめピン6の発光部721が発光する距離に配置されている構造にしてもよい。
しかも、かしめの破損の確認は、電源ON時のみだけでなく、電源OFF時にも確認する場合は、バックアップ電源によりこの回路を動作させてもよい。
【0055】
また、上述した実施形態においては、送電部71から発光部621への電力供給を電磁誘導を用いて行っているが、電磁誘導に限るものではなく、例えば、ケーブル接続によって供給することもできる。
さらに、上述した実施形態においては、第一の発光部621をかしめピン6に設けたが、かしめピン6に設けることに限るものではなく、主基板2に設けることもできる。この場合、送電部71の配線の一部又は検出回路72の配線の一部をかしめピン6に配線するようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、遊技機に取り付けられる遊技機用基板ケースに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 基板ケース
2 主基板
6 かしめピン
62 胴部(コイル軸部)
62−1 磁性部
62−2 切断部
7 破断検出回路
71 送電回路(送電部)
721 発光部(第一の発光部)
731 発光部(第二の発光部)
100 スロットマシン(遊技機)
A 電磁コイル(第一の電磁コイル)
B 電磁コイル(第二の電磁コイル)
C 電磁コイル(第三の電磁コイル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のプリント基板が収容された基板ケースにかしめピンを係合させて当該基板ケースを開封不能又は遊技機から取り外し不能に封止する基板ケースのかしめ構造において、
電力を受けて発光する第一の発光部と、
基板ケース内に設けられ、前記第一の発光部に電力を送る送電部と、を備え、
前記第一の発光部と前記送電部は、前記かしめピンを介して電力を送受可能に構成され、
封止解除に伴う、前記かしめピンの切断又は前記基板ケースからの脱抜によって前記第一の発光部が消灯する
ことを特徴とする遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項2】
前記送電部は、第一の電磁コイルを備え、
前記かしめピンが、前記第一の発光部と、前記第一の電磁コイルの周囲に発生した電界により誘導起電力を発生する第二の電磁コイルと、
前記第一の発光部は、前記誘導起電力を受けて発光する
ことを特徴とする請求項1記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項3】
前記かしめピンを介さずに、前記送信部からの電力を受けて発光する第二の発光部を備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項4】
前記送電部は、第一の電磁コイルと、前記第一の電磁コイルの周囲に発生した電界により誘導起電力を発生する第三の電磁コイルとを備え、
第二の発光部は、前記第三の電磁コイルから誘導起電力を受けて発光する
ことを特徴とする請求項3記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項5】
前記送電部を、前記プリント基板と異なる別基板に設け、
前記プリント基板と前記別基板が、前記基板ケースに収容された
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項6】
前記第一の電磁コイルの周囲に発生した電界により誘導起電力を発生する第三の電磁コイルと、
この第三の電磁コイルから誘導起電力を受けて発光する第二の発光部とを有し、
前記第三の電磁コイルと前記第二の発光部が、前記基板に実装された
ことを特徴とする請求項1記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項7】
前記かしめピンが、前記第二の電磁コイルの巻かれたコイル軸部を有し、
このコイル軸部が、磁性材料により形成された部分を有する磁性部と、工具により切断可能な切断部とを有する
ことを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造。
【請求項8】
所定のかしめピンを基板ケースに係合させて当該基板ケースを開封不能又は遊技機から取り外し不能に封止する基板ケースのかしめ構造を備える遊技機において、前記基板ケースのかしめ構造が請求項1〜7のいずれかに記載の遊技機用基板ケースのかしめ構造であることを特徴とする遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−92410(P2011−92410A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249200(P2009−249200)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】