説明

遊技機用施錠装置

【課題】不正操作に対して極めて高い防犯性能を有するとともに正規の解錠操作が容易で、かつ製作コストの低廉な遊技機用施錠装置を提供する。
【解決手段】遊技機の外枠及び該外枠に開閉可能に枢支される本体枠の一方に設けられるストライカ2と、該外枠及び該本体枠の他方に設けられ該ストライカ2と係脱可能なフック3と、該ストライカ2と係合した該フック3を常時係止するとともに解放動作可能なポール4と、該ポール4と係合するとともに鍵を用いた操作により該ポールを解放駆動する錠付カム機構6(シリンダ錠61、揺動カム62、スライダ63)と、を備える遊技機用施錠装置1であって、前記フック3を係止している前記ポール4の解放方向に位置して解放動作を禁止するとともに、前記錠付カム機構6と係合して駆動されかつ該ポール4よりも先行動作して該ポール4の解放動作を許容するストッパ部材5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ台などの遊技機の施錠装置に関し、より詳細には防犯性能を高めた施錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技店に設置されるパチンコ台などの遊技機は、遊技機の外枠と、外枠に開閉可能に枢支された本体枠及びガラス枠と、を主要部材として構成されるのが一般的である。遊技面を備えた本体枠には電子制御装置や表示装置などが多数搭載されており、遊技者が勝手に触れられないように、外枠と本体枠との間及び、本体枠とガラス枠との間は常時施錠されている。一方、遊技中の不具合への対応や閉店後の調整の際には、錠を解いて本体枠やガラス枠を開閉する必要が生じる。したがって、遊技機用施錠装置には、不特定者の不正な解錠操作を確実に防止するとともに、係員が容易に解錠できる構造が必要とされてきた。
【0003】
従来の遊技機用施錠装置では、施錠する一方の枠にストライカと呼ばれる被係止部材が設けられ、他方の枠にフックと呼ばれて被係止部材を係脱する係止部材が設けられ、さらに係止部材を駆動するスライダ部材及びシリンダ錠が設けられるのが、一般的な構造とされていた。そして、係員は鍵を用いてシリンダ錠を操作することにより解錠を行うようになっていた。また、シリンダ錠の操作方向を反転させることにより、スライダ部材の作動方向が切り替わって、本体枠またはガラス枠が選択されて解錠されるように構成されていた。しかしながら、この構造では、枠の隙間から針金等を用いて不正操作されるおそれがあるため、防犯性能を高めた施錠装置が各種開発されてきた。例えば、ストライカ及びフックに相当する施錠手段を複数組設けて複数箇所で施錠し、スライダ部材により共通に解錠操作できるようにした構造が普及している。また、特許文献1に開示される遊技機の解錠ロック装置では、スライダ部材に相当するロッドに規制ピンを設け、さらに規制ピンをロックするロック手段を設けて、セキュリティー対策としている。すなわち、ロック手段を解除しない限りロッドが動かない構造とされて従来の錠と二重化され、仮に不正操作によってロッドに外力が加えられても解錠できないようになっている。
【特許文献1】特開平11−235451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ストライカ及びフックを複数組設けても、共通に解錠操作を行うスライダ部材が不正操作されると解錠されてしまうという懸念は解消されていない。特許文献1の解錠ロック装置では、ロック手段をロックピンと付勢手段とで構成し、その解除手段としてソレノイドを用いて電気的な施錠を行い、従来の錠による機械的な施錠と併用している。しかしながら、この態様では、遊技機に電源が供給されていないときに解錠を行うことができず、取り扱い上著しく不便であった。また、このように電気的施錠手段と機械的施錠手段とを併用することは、正規の解錠操作を煩雑化するとともにコストの上昇を招いていた。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたものであり、不正操作に対して極めて高い防犯性能を有するとともに正規の解錠操作が容易で、かつ製作コストの低廉な遊技機用施錠装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遊技機用施錠装置は、遊技機の外枠及び該外枠に開閉可能に枢支される本体枠の一方に設けられるストライカと、該外枠及び該本体枠の他方に設けられ該ストライカと係脱可能なフックと、該ストライカと係合した該フックを常時係止するとともに解放動作可能なポールと、該ポールと係合するとともに鍵を用いた操作により該ポールを解放駆動する錠付カム機構と、を備える遊技機用施錠装置であって、前記フックを係止している前記ポールの解放方向に位置して解放動作を禁止するとともに、前記錠付カム機構と係合して駆動されかつ該ポールよりも先行動作して該ポールの解放動作を許容するストッパ部材を備えることを特徴とする。
【0007】
ストライカとフックの組み合わせは、従来の構造を適用することができる。例えば、ピン状のストライカと、ストライカが嵌入係合するU字状の係合溝を有し係合により揺動するフックと、を用いることができる。フックの外周には係止溝を設け、この係止溝にポールが常時係合するように構成することができる。そして、錠付カム機構からの操作により、ポールを係止溝から解放するように構成することができる。本発明ではさらに、ポールが係止溝から解放される方向にストッパ部材を設ける。ストッパ部材は、ポールの解放方向に常時位置して解放動作を禁止するとともに、錠付カム機構からの操作により変位してポールの解放方向を開く。錠付カム機構は、操作によりまずストッパ部材を駆動し、続けてポールを駆動するように構成することができる。例えば、直動操作または回動操作される錠付カム機構において、変位が小さい段階でストッパ部材に係合して駆動し、変位が増加した時点でポールに係合して駆動する構造とすることができる。
【0008】
上述の本発明の遊技機用施錠装置では、外枠に向けて本体枠が閉じられると、ストライカがフックに嵌入係合し、この係合状態を保持するようにポールがフックを係止し、さらに、ストッパ部材がポールの解放方向に位置して解放動作を禁止する。つまり、ストライカとフックとの係合状態は、ポールとストッパ部材とにより二重に施錠されていることになる。この施錠状態を解錠するためには、まずストッパ部材を駆動してポールの解放方向を開き、次にポールを駆動してフックを解放するという、2つの部材を順番に所定方向に駆動する二重化された操作が必要となる。したがって、鍵を持たない不特定者が、遊技台の隙間から針金を用いたりして不正に解錠操作することは難しく、極めて高い防犯性能が具備される。
【0009】
一方、係員が鍵を用いた操作により錠付カム機構を駆動すれば、錠付カム機構はまずストッパ部材を先行動作させることによりポールの解放動作を許容し、続いてポールを解放駆動し、フックを解放することができる。この一連の解錠操作は、例えば、鍵を差し込んで回動するという単純な操作により行うことができる。つまり、正規の解錠操作は従来と同程度に容易としつつ、不正操作に対する防犯性能を高めることができる。
【0010】
さらに、ストッパ部材を備える構成は、数個の機構部品を追加することで実現できるので、電気的な施錠手段を併用する構成と比較してコストは低廉である。
【0011】
前記フックと前記ポールとの間に配置され、かつ該フックに設けられた係止溝に向けて該ポールを付勢する付勢手段を備える、ことが好ましい。付勢手段を設けることにより、ポールはフックを確実に係止することができ、また付勢手段に抗しての不正操作をより困難にすることができる。
【0012】
前記錠付カム機構は、鍵を用いた操作を行うカム本体と、該カム本体に係合して操作力を伝達する連結部材とを有し、該連結部材に前記ポール及び前記ストッパ部材の少なくとも一方が係合されている、ことでもよい。
【0013】
ポール及びストッパ部材は、ともにカム本体に係合して直接駆動されるように構成することもできるが、少なくとも一方は間に連結部材を介装するようにしてもよい。適宜連結部材を用いることにより、ポール及びストッパ部材へ伝わる操作力の大きさや方向、駆動タイミングなどを調整することができ、適切な駆動機構とすることができる。また、連結部材は、次に述べるように、別に設けた施錠手段を共通に駆動することもできる。
【0014】
前記ストライカ及び前記フックとは別体でかつ前記本体枠を前記外枠に施錠するとともに前記連結部材に係合して操作される第二施錠手段を備える、ようにしてもよい。
【0015】
例えば、連結部材を本体枠または外枠に沿って上下に延設しかつ上下動可能とし、連結部材の上下のいずれか一端でポールまたはストッパ部材の一方を操作し、他端で第二施錠手段を操作し、ポールまたはストッパ部材の他方は本体カムで直接操作する、ように構成することができる。この態様によれば、ストライカとフックとの係合状態がポールとストッパ部材とにより二重に施錠され、さらに第二施錠手段が併用されるため、施錠の信頼性は一層向上される。また、仮に連結部材が不正操作されても、ポールまたはストッパ部材の他方は操作されないので、本体枠は解錠されない。
【0016】
前記ストライカは前記外枠に設けられ、前記フックと前記ポールと前記錠付カム機構とは前記本体枠に設けられ、前記外枠または前記本体枠に枢支されかつ該本体枠に対して開閉可能なガラス枠を施錠するとともに前記連結部材に係合して操作されるガラス枠施錠手段を備え、前記カム本体の操作方向を切り替えることにより該連結部材の動作方向が反転して、前記本体枠または前記ガラス枠のいずれか一方が選択的に解除操作される、ようにしてもよい。
【0017】
カム本体の操作方向及び連結部材の動作方向を切り替え可能な構造とすることにより、ガラス枠施錠手段の解錠をも選択的に行えるようにすることができる。
【0018】
第二施錠手段及びガラス枠施錠手段を備えて、カム本体及び連結部材で共通に解錠操作可能とした構成は、遊技機に好ましい態様である。なお、第二施錠手段及びガラス枠施錠手段の方式や構造に制約はなく、本発明のストライカ、フック、ポール、ストッパ部材を応用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
上述の本発明の遊技機用施錠装置では、ストライカと係合したフックを常時係止するポールの解放方向に位置するストッパ部材を設けたので、解錠操作が二重化され、不正操作に対して極めて高い防犯性能を有するとともに、鍵を用いた正規の解錠操作は従来と同程度に容易である。また、ストッパ部材は数個の機構部品を追加することで実現できるので、電気的な施錠手段を併用する構成と比較してコストは低廉である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を、図1〜図6を参考にして説明する。まず、図1を参考にして、遊技機の一般的な構造を説明する。図示されるように、遊技機9は、立設された略矩形枠状の外枠91と、遊技面や遊技ハンドルなどを備えた本体枠92と、常時本体枠92を覆うガラス枠93と、を主にして構成されている。本体枠92及びガラス枠93は、外枠91の左端前面に設けられた枢支部94により、開閉可能に枢支されている。すなわち、本体枠92は、図中左側の一辺部を軸心として回動することにより、外枠91に対して開閉するようになっている。また、ガラス枠93は、図中奥側の一辺部を軸心として回動することにより、本体枠92に対して開閉するようになっている。ここで、本体枠92とガラス枠93とは独立して開閉するため、別々に施錠することが必要である。そして、施錠装置の多くの部材は本体枠92の右側面95に配設され、一部は外枠91及びガラス枠93の対向する部位に配設されている。
【0021】
次に、本発明の実施例の遊技機用施錠装置について、図2を参考にして説明する。図2は、実施例の遊技機用施錠装置1を遊技機から取り外して遊技機左側からみた斜視図であり、図中右側が遊技機の正面となる。また、施錠装置1の上側の部分は省略されている。実施例の施錠装置1は、本体枠92を外枠91に上下2箇所で施錠しさらにガラス枠93を本体枠92に上下2箇所で施錠するものであり、それぞれの下側箇所の施錠状態が図示されている。実施例の施錠装置1では、外枠91に設けられたストライカ2と、本体枠92に固設されるベース8上に配設されたフック3、ポール4、ストッパ部材5、錠付カム機構6、により本体枠92の施錠装置が構成されている。さらに、ガラス枠93に設けられたガラス枠用ストライカと、ベース上8上に配設されたガラス枠用フック7及び兼用の錠付カム機構6と、によりガラス枠93の施錠装置が構成されている。
【0022】
ストライカ2はピン状の部材であり、図2には省略された外枠91の右側面内側に、取付金具21を用いて水平内向きに立設されている。
【0023】
ベース8は、本体枠92の右側面に上下に長く延設されている。ベース8には、以降に説明するように、施錠装置1を構成する部材が取り付けられている。フック3は、ベース8のストライカ2に対向する位置に枢支されて揺動する略板状の部材である。フック3は、図2に示されるように、中央下部に枢支される枢支部31をもち、図中上左側にストライカ2が嵌入する略U字状の係合溝32が設けられている。係合溝32の上側の開口は拡げられており、図の状態からフック3が反時計回りに揺動したときにストライカ2がスムーズに左方に離脱できるようになっている。また離れているストライカ2が左方からフック3に接近し、続いてスムーズに嵌入できるようになっている。フック3の上右端には突部39が形成され、突部39の左側にポール4が係脱するV字状の係止溝33が設けられている。さらに、フック3の右下から右方に向けてばね取付アーム34が延設され、その先端付近に取付凹部35が形成されている。
【0024】
ポール4は、フック3の上方に設けられて、フック3に係脱する部材である。ポール4は、図中左側にベース8に枢支される枢支部41をもち、図中右方向に延設されている。ポール4の中央下側には下方に向けて鋭角状に突出した係止突起42が設けられ、係止突起42はフック3の係止溝33に係脱するようになっている。さらに、ポール4の右端44付近に取付凹部43が形成されている。ポール4の取付凹部43と、フック3の取付凹部35との間には、両者を引き合うように付勢するコイル状のポール付勢ばね45が橋架されている。ポール付勢ばね45の作用により、係止突起42は係止溝33に向けて常時圧接され、ポール4は常時確実にフック3を係止するようになっている。
【0025】
ストッパ部材5は、ポール4の右端44上方に設けられて、ポール4の解放方向に位置する部材である。ストッパ部材5は、その略中央にベース8に枢支される枢支部51をもち、図中紙面表裏方向に揺動するようになっている。枢支部51の近傍にはストッパ部材5を図中反時計回りに付勢するストッパ付勢ばね57が設けられている。ストッパ付勢ばね57の作用により、ストッパ部材の図中右下のストップ端52は常時ポール4の右端44の上方に位置するようになっている。つまり、ポール4の右端44が上昇する解放方向にストップ端52が位置して、常時解放動作を禁止している。ストッパ部材5の図中左上の被駆動端53には後述する錠付カム機構6の揺動カム62が係合されている。揺動カム62は、ストッパ付勢ばね57に抗してストッパ部材5を時計回りに駆動できるようになっており、このときストップ端52は紙面裏面方向に移動してポール4の右端44の解放方向を開くようになっている。
【0026】
錠付カム機構6は、シリンダ錠61及び揺動カム62からなるカム本体と、揺動カム62に係合して駆動されるスライダ63と、を有している。シリンダ錠61は、図中右側の遊技機正面から鍵を差し込んで、左右に回転揺動操作するものである。以下、図3を参考にしてさらに詳述する。図3(1)は実施例の施錠装置1を遊技機の裏面側からみた背面図、(2)は施錠装置1を遊技機の左側面側からみた左側面図である。図示されるように、揺動カム62は、上下対称に折れ曲がり、中央621がシリンダ錠61に固定されて一体に揺動するようになっている。揺動カム62の折れ曲がった内下側には上昇駆動部622が設けられ、内上側には下降駆動部623が設けられている。ここで、揺動カム62が図3(1)で反時計回りに駆動されると(正面の鍵は時計回り)、上昇駆動部622が上昇しながらストッパ部材5の被駆動端53を押圧し、ストッパ部材5を時計回りに駆動するようになっている。
【0027】
スライダ63は、本発明の連結部材に相当するものであり、ベース8に沿って上下に長く延設され、上下動することにより操作力を伝達するようになっている。スライダ63は2個の長穴631を有し、各長穴631は、ベース8に設けられた保持ピン81により上下動可能に保持されている。スライダ63には、揺動カム62の上昇駆動部622と下降駆動部623との間に位置する従動部632が設けられている。つまり、揺動カム62が反時計回りに駆動されると、上昇駆動部622がスライダ63の従動部632に下側から当接して押し上げるので、スライダ63は上昇する。逆に、揺動カム62が時計回りに駆動されると、下降駆動部623がスライダ63の従動部632に上側から当接して押し下げるので、スライダ63は下降する。また、スライダ63にはポール4の下側に回り込んで立設されるポール駆動爪633が設けられている。そして、スライダ63が上昇すると、ポール駆動爪633がポール4を上方に駆動し、ポール4は枢支部41を中心にして上方に揺動し、係止突起42が係止溝33から抜け出るようになっている。
【0028】
また、ガラス枠93用の施錠装置として、ガラス枠93側には板状のガラス枠用ストライカが設けられ、ベース上8上にはガラス枠用フック71が設けられている。図2及び図3に示されるように、ガラス枠用フック71の中央はベース8により枢支される枢支部711であり、ガラス枠93に向かう一端には係止爪712が形成され、他端には被駆動部713が形成されている。また、ガラス枠用フック71の中央右寄り下部には付勢ばね714が設けられ、常時は係止爪712を下方に付勢している。一方、スライダ63の上部寄りには、ガラス枠用フック71を駆動するためのガラス枠用駆動爪634が設けられている。そして、ガラス枠用駆動爪634が下降して被駆動部713を下方に押圧すると、ガラス枠用フック7は枢支部711を中心に揺動して係止爪72が上昇し、解錠されるようになっている。
【0029】
さらに、実施例の施錠装置1は、上側に本発明の第二施錠手段に相当する構成を備えている。図6は、図2及び図3に示された実施例の施錠装置1の上側の第二施錠手段を説明する左側面図である。図6は、第二施錠手段の施錠状態を示しており、この図を参考にして詳述する。本体枠92用の第二施錠手段は、フック受け72が第二フック73に係止されて施錠されるように構成されている。フック受け72は紙面表裏方向に延び紙面手前側にカエシ721を有する板状の部材であり、図略の外枠91に取付金具722を用いて固定されている。第二フック73は左右に長い略板状の部材であり、その中央右寄りはベース8により枢支される枢支部731となっている。第二フック73の外枠91に向かう図中左端上側には傾斜部732が形成され、傾斜部732の右側に係止爪733が形成されている。また、第二フック73の図中右端734には外枠施錠ロッド74の上端741が連結され、外枠施錠ロッド74の下端742はスライダ63の長穴636に保持されている。さらに、第二フック73の中央上部735は付勢ばね736により上方に付勢されて、傾斜部732及び係止爪733が上方に付勢され、外枠施錠ロッド74が下方に付勢されている。
【0030】
また、ガラス枠93用の第二施錠手段は、ガラス枠用フック受け75がガラス枠用第二フック76に係止されて施錠されるように構成されている。ガラス枠用フック受け75は紙面表裏方向に延びる板状の部材であり、図略のガラス枠93に固定されている。ガラス枠用第二フック76は左右に長い略板状の部材であり、その中央左寄りはベース8により枢支される枢支部761となっている。ガラス枠用第二フック76のガラス枠93に向かう図中右端下側には傾斜部762が形成され、傾斜部762の左側に係止爪763が形成されている。ガラス枠用第二フック76の図中左端764にはガラス枠施錠ロッド77の上端771が連結され、ガラス枠施錠ロッド77の下端772はスライダ63の長穴635に保持されている。さらに、ガラス枠用第二フック76の中央下部765は付勢ばね766により下方に付勢されて、傾斜部762及び係止爪763が下方に付勢され、ガラス枠施錠ロッド77が上方に付勢されている。
【0031】
次に、実施例の施錠装置1の解錠操作方法及び作用について、図3〜図6を参考にして説明する。前出の図3は施錠状態、図4は解錠操作の途中でストッパ部材が駆動された状態、図5は解錠操作が終了してポールが駆動された瞬間の状態、をそれぞれ示し、各(1)は背面図、各(2)は左側面図である。図3の施錠状態において、ポール4の係止突起42は、係止溝33に向けて圧接され、確実にフック3を係止している。さらに、ストッパ部材5は、そのストップ端52をポール4の解放方向に配置することにより、解放動作を禁止している。また、ガラス枠用フック71もガラス枠用ストライカと係合して施錠状態が保たれている。
【0032】
ここで、係員が遊技機正面からシリンダ錠61に鍵を差し込んで図中反時計回りに回転揺動操作を行う(正面の鍵は時計回り)と、図4(1)に白抜き矢印Mで示されるように、揺動カム62が反時計回りに揺動する。揺動カム62が揺動を始めると、まず上昇駆動部622がストッパ部材5の被駆動端53を図中右方に押圧し、ストッパ部材5を時計回りに駆動する。すると、ストッパ部材5は枢支部51を中心に揺動して、ストッパ端52は図中左方に駆動され、ポール4の上方が開かれ解放動作が許容されるようになる。さらに、揺動カム62の揺動が進むと、上昇駆動部622はスライダ63押し上げ、解錠操作終了の瞬間には図5(2)に白抜き矢印Nで示されるように、長穴631が保持ピン81に当接するまでスライダ63が上昇する。すると、スライダ63のポール駆動爪633がポール4を上方に駆動し、ポール4は反時計回りに回転揺動して係止突起42が係止溝33から抜け出て、フック3が解放される。その直後、ポール4とフック3との間で橋架されたポール付勢ばね45の付勢力により、フック3は反時計回りに回転揺動する。このとき、フック3の突部39はポール4の図中下側壁を摺動して反時計回りに移動し、係合溝32は図中一点鎖線で示されるように左上方に開く姿勢となって、ストライカ2が左方に離脱できる解錠状態となる。
【0033】
また、スライダ63の上昇により、外枠施錠ロッド74は上方に押し上げられる。すると、上側の第二フック73は、図6に白抜き矢印Pで示されるように反時計回りに揺動して、フック受け72が左方に離脱できる解錠状態となる。つまり、シリンダ錠61からの操作によりスライダ63を上昇させると、上下2箇所が同時に解錠されて、本体枠92を開けることができる。
【0034】
解錠状態において、係員が鍵を反転操作すると、揺動部材62及びスライダ63は図3に示される元の状態に戻る。一方、フック3及びポール4は、揺動によりポール付勢ばね45が変位して作用しなくなるため、図5に示された姿勢が維持される。またストッパ部材5も、揺動したポール4に邪魔されて復帰しない。ここで、本体枠92を閉じると、ストライカ2がフック3に嵌入係合してフック3を図中時計回りに駆動し、ポール付勢ばね45は伸張されて付勢作用が復帰する。したがって、ポール4が付勢されて時計回りに駆動され、係合突起42は係合溝33を係止する。また、ポール4が元の位置に戻ることにより、ストッパ部材5も元の姿勢に復帰して、図3の施錠状態に戻る。
【0035】
また上側では、本体枠92を閉じる際に、フック受け72が図6の左方から第二フック73の傾斜部732に当接し、付勢ばね736に抗して傾斜部732を押し下げながら嵌入し、係止爪733に係止されて施錠される。
【0036】
なお、図3の施錠状態において、係員がシリンダ錠61を図中時計回りに回転揺動操作を行う(正面の鍵は反時計回り)と、揺動カム62は時計回りに揺動して、下降駆動部623がスライダ63を押し下げ、スライダ63は下降する。すると、スライダ63のガラス枠用駆動爪634がガラス枠用フック71の被駆動部713を下方に駆動し、係止爪712は上昇する。同時に、スライダ63の下降により、ガラス枠施錠ロッド77が下降する。すると、上側のガラス枠用第二フック76は、図6に白抜き矢印Qで示されるように反時計回りに揺動する。これにより、上下2箇所が同時に解錠されて、ガラス枠93を開けることができる。この解錠操作では、揺動カム62及びスライダ63の動作方向が逆であるため、ストッパ部材5及びポール4は駆動されず、本体枠92の施錠状態は維持される。
【0037】
以上説明したように、本実施例の施錠装置1では、ストッパ付勢手段57に抗してストッパ部材5を駆動した状態とし、加えてポール付勢ばね45に抗してポール4を駆動しなければ解錠することができない。したがって、鍵を持たない不特定者が、不正に解錠操作することは困難であり、極めて高い防犯性能が具備される。また、本実施例は、ストッパ部材5及びストッパ付勢ばね57と周辺部品を従来の構成に追加することで実施することができ、わずかな投資コストで済む。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の施錠装置は遊技機用だけに限定されず、ストライカ、フック及びポールを備えた一般的な施錠装置、例えば住居用ドアや門扉、シャッターなどの施錠装置に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】遊技機の一般的な構造を説明する図である。
【図2】本発明の実施例の遊技機用施錠装置を遊技機から取り外してみた斜視図である。
【図3】図2の実施例の背面図及び左側面図であり、施錠状態を示している。
【図4】図2の実施例において、解錠操作の途中でストッパ部材が駆動された状態を示す背面図及び左側面図である。
【図5】図2の実施例において、解錠操作が終了してポールが駆動された瞬間の状態を示す背面図及び左側面図である。
【図6】図2及び図3に示された実施例の施錠装置の上側の第二施錠手段を説明する左側面図である。
【符号の説明】
【0040】
1:遊技機用施錠装置
2:ストライカ
3:フック
31:枢支部 32:係合溝 33:係止溝
4:ポール
41:枢支部 42:係止突起 45:ポール付勢ばね
5:ストッパ部材
51:枢支部 52:ストップ端 53:被駆動端
57:ストッパ付勢ばね
6:錠付カム機構
61:シリンダ錠
62:揺動カム 622:上昇駆動部 623:下降駆動部
63:スライダ(連結部材) 632:従動部 633:ポール駆動爪
71:ガラス枠用フック
72:フック受け 73:第二フック 74:外枠施錠ロッド
75:ガラス枠用フック受け 76:ガラス枠用第二フック
77:ガラス枠施錠ロッド
8:ベース
9:遊技機
91:外枠 92:本体枠 93:ガラス枠 94:枢支部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機の外枠及び該外枠に開閉可能に枢支される本体枠の一方に設けられるストライカと、該外枠及び該本体枠の他方に設けられ該ストライカと係脱可能なフックと、該ストライカと係合した該フックを常時係止するとともに解放動作可能なポールと、該ポールと係合するとともに鍵を用いた操作により該ポールを解放駆動する錠付カム機構と、を備える遊技機用施錠装置であって、
前記フックを係止している前記ポールの解放方向に位置して解放動作を禁止するとともに、前記錠付カム機構と係合して駆動されかつ該ポールよりも先行動作して該ポールの解放動作を許容するストッパ部材を備えることを特徴とする遊技機用施錠装置。
【請求項2】
前記フックと前記ポールとの間に配置され、かつ該フックに設けられた係止溝に向けて該ポールを付勢する付勢手段を備える請求項1に記載の遊技機用施錠装置。
【請求項3】
前記錠付カム機構は、鍵を用いた操作を行うカム本体と、該カム本体に係合して操作力を伝達する連結部材とを有し、該連結部材に前記ポール及び前記ストッパ部材の少なくとも一方が係合されている、請求項1または2に記載の遊技機用施錠装置。
【請求項4】
前記ストライカ及び前記フックとは別体でかつ前記本体枠を前記外枠に施錠するとともに前記連結部材に係合して操作される第二施錠手段を備える請求項2または3に記載の遊技機用施錠装置。
【請求項5】
前記ストライカは前記外枠に設けられ、前記フックと前記ポールと前記錠付カム機構とは前記本体枠に設けられ、前記外枠または前記本体枠に枢支されかつ該本体枠に対して開閉可能なガラス枠を施錠するとともに前記連結部材に係合して操作されるガラス枠施錠手段を備え、前記カム本体の操作方向を切り替えることにより該連結部材の動作方向が反転して、前記本体枠または前記ガラス枠のいずれか一方が選択的に解除操作される、請求項4に記載の遊技機用施錠装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−160223(P2009−160223A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−654(P2008−654)
【出願日】平成20年1月7日(2008.1.7)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【出願人】(598023126)エィ・ケィ・ケィ・エム株式会社 (23)
【Fターム(参考)】