遊技機
【課題】ソレノイドを駆動源として前後方向へ開閉動作する一枚の扉部材を備えた可変入賞装置において、ソレノイドの通電によってプランジャが引っ込んだ時に扉部材が開放するように構成した場合に、構成を複雑化することなく扉部材をバウンドさせずに全開位置で静止させる。
【解決手段】下部軸支部を軸穴によって軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、通電時には扉部材を閉止位置に保持する一方で、非通電時には開放させるソレノイドと、ソレノイドのプランジャの出没によって回動することにより扉部材を開閉動作させるレバーと、を備え、軸穴は、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えている。
【解決手段】下部軸支部を軸穴によって軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、通電時には扉部材を閉止位置に保持する一方で、非通電時には開放させるソレノイドと、ソレノイドのプランジャの出没によって回動することにより扉部材を開閉動作させるレバーと、を備え、軸穴は、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遊技機に関し、特に特定の条件を満たしたときに動作する可変入賞装置を備えたパチンコ遊技機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変入賞装置(電チュー)と称される可動盤面部品を装備したパチンコ遊技機が従来から知られている。電チューは、ソレノイドを駆動源として回動される一対の羽根(開閉片)から成り、所定の始動入賞口に遊技球が入賞したときにソレノイドを作動させて一対の羽根を一回、或いは2回程度開閉動作させて、遊技盤面を流下する遊技球を捕捉して可変入賞装置の入賞口(下始動口)内に導くように構成されている。
また、アタッカー(大入賞装置)と称される可変入賞装置は、一枚扉をソレノイドによって前後方向へ回動させることによって入賞口を開閉する構造であり、特許文献1、2には、アタッカーの扉の開閉構造が開示されている。
ところで、本出願人は、電チューに代えて新規構造の可変入賞装置を開発するべく、従来の一対の羽根に代えて、アタッカーにおける一枚扉の開閉構造を適用することを試みている。
【0003】
図13は一枚扉式の開閉片を備えた可変入賞装置の構成を示す説明図である。
この可変入賞装置100は、図示しない遊技盤に形成された取付穴に装着されるベース部材101と、ベース部材101の前面に開口形成された入賞口102を開閉するために下部の軸支部110aを回動自在に軸支された扉部材110と、入賞口102の後方においてベース部材によって支持されたソレノイド120と、ソレノイド120からの駆動力を扉部材110に伝達する駆動伝達部材130と、を概略備えている。
扉部材110は、その下部後方に被作用片111を突設した構成を備えている。
ソレノイド120は、ベース部材101によって固定されたソレノイド本体121と、先端にフランジ部122aを備え、ソレノイド本体から前後に出没自在に支持されたプランジャ122と、プランジャを突出方向へ付勢するコイルバネ123と、を備えている。 駆動伝達部材130は、上部にベース部材101によって前後方向へ回動自在に軸支された軸支部131aを備え、且つ下部に二股分岐部131b、131cを備えたレバー131と、レバー131の上部から前方上部へ突設されてプランジャのフランジ部122aの前面と後面を挟み込むように二股に分岐された作用部材132aと、を備えている。
【0004】
ソレノイド本体121への非通電時には、破線で示すようにコイルバネ123の付勢によってプランジャ122は最大限に突出するため、駆動伝達部材のレバー131は鎖線で示した後方位置にあり、二股分岐部の前部131bによって被作用片111を後方へ引き込むことによって扉部材110を破線のように閉止させる。扉部材110は、これを閉止させる方向への外力が加わらない場合には自重によって開放するようにその重量バランスが構成されており、レバー131が鎖線で示した後方位置にある時には扉部材を閉止位置に保持する役割を果たしている。
ソレノイド本体121への通電時には、実線で示すようにプランジャ122はコイルバネ123に抗して後方へ迅速に引っ込むため、レバー131は実線で示した前方位置に迅速に移動する。上述のように扉部材は自重によって開放するように構成されているため、二股分岐部の前部131bによって被作用片111を閉止位置に保持する力が失われたことにより、開放方向へ回動し始め、最後には実線のように全開状態となる。被作用片111は、レバー前部131bの開放開始時にレバー前部と接しながら同時に開放方向へ移動する訳ではなく、先行して前方への移動を開始したレバー前部に遅れて開放方向へ移動を開始する。扉部材100の全開放角度は、被作用片111がレバーの前部131bと接することにより所定位置に規定される。
【0005】
次に、図14(a)(b)及び(c)は、扉部材の下部軸支部を可変入賞装置100の軸穴によって支持する従来構成を示している。扉部材の下部から両側方に突出した一対の下部軸支部(ピン)110aは、ベース部材101の前端縁に設けた凹所100a−1と、ベース部材101の前面に組み付けられる前飾り145に設けた位置決め突起145aとから構成される軸穴102内に回転自在、且つ径方向移動不能な状態で緊密に支持されている。即ち、軸穴102は、凹所100a−1と、凹所内に嵌合される位置決め突起145aとの間に形成される空間であり、円筒状の下部軸支部110aは軸穴102内で回転自在に軸支されているが、扉部材の開閉時のガタツキ、軸穴内へのゴミの侵入を防止するために前後方向へは移動しないように緊密に軸支されている。具体的には、下部軸支部の直径を3mmとすれば、軸穴102との間の前後方向クリアランスは、左右夫々0.05mm(合計長0.1mm)である。
【0006】
ところで、従来は扉部材110が全開位置で停止する開放角度を、被作用片111をレバーの前部131bと接触させることによって規定していたため、プランジャの引っ込み位置によって扉部材の全開時の開放角度が決定されることとなり、開放角度が過大となり易く、過大となった場合には扉部材の裏面に当たって入賞口に入賞すべき遊技球が入賞できなくなるという事態が多発するという問題があった。また、扉部材の開放角度が部品毎の精度誤差、部品間の組み付け誤差等に起因してバラツキを起こすという問題もあった。
このような不具合に対処するため、従来は扉部材110の軸支部110aと、駆動伝達部材130の軸支部131aを夫々支持するベース部材の内壁に図15に示した如きストッパ140を突設することにより、図15(b)に示した駆動伝達部材130の開放時にレバー131の前部131bをストッパ140で係止して駆動伝達部材が開放する際の限界位置を規定するようにしていた。
【0007】
この場合、図15(a)に示した後方位置にあったプランジャ122がソレノイドへの通電により迅速に引っ込むことにより、駆動伝達部材のレバー131は扉部材に先行して(b)に示した前方位置へ迅速に移動する。扉部材はレバーが前方へ先行して移動することにより、被作用片111がレバーの前部131bによる係止を解除された後で、レバーよりも遅れて自重により開放を開始する。
扉部材が図15(a)に示した閉止状態から(b)に示した全開状態に移行する際に、扉部材の被作用片111が、ストッパ140によって前方への回動を規制されたレバーの前部131bと接することによって扉部材の全開位置が規定されるが、ストッパ140によって前方への移動を阻止されたレバー前部131bに被作用片111が衝突した際に被作用片は直ちに停止することができず扉開放時の加速によって生じた勢いが緩和されるまでレバー前部との間でバウンドを繰り返す(図14(a)(b)(c)を参照)。このため、被作用片と一体の扉部材も全開位置で直ちに静止することができずに、矢印で示したようにバウンドを繰り返した後に全開位置で静止していた。このように、ソレノイドの通電に伴うプランジャの引っ込みタイミングと、扉部材の開放動作(全開位置での静止タイミング)との間にズレが生じると、扉部材が入賞口を開放したタイミングに合わせて流下してきた遊技球が入球できなくなるため、装置に対する信頼性が低下して遊技者に不満感、不公平感を抱かせる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−307103公報
【特許文献2】特開2009−11660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように一枚の扉部材の下部をベース部材によって前後方向へ回動自在に軸支することによって入賞口を開閉すると共に、後方に配置したソレノイドから前後方向へ出没するプランジャと、プランジャによって回動させられる駆動伝達部材とによって扉部材を開閉駆動するようにした可変入賞装置にあっては、扉部材が全開した時の開放角度を規制する手段として、駆動伝達部材の下部と接してその開放角度を規制するためのストッパをベース部材に設けていた。しかし、このストッパは駆動伝達部材を開放位置にて係止してしまうため、扉部材側の被作用片が駆動伝達部材の下部との間でバウンドを起こし易くなり、扉部材が全開位置で静止するまでに時間がかかるという問題があった。この場合、バウンドがなくなって全開位置で静止するまでに時間を要するために遊技球の入賞値が設計値からズレを起こすという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ソレノイドを駆動源として前後方向へ開閉動作する一枚の扉部材を備えた可変入賞装置において、ソレノイドの通電によってプランジャが引っ込んだ時に扉部材が開放するように構成した場合に、構成を複雑化することなく扉部材をバウンドさせずに全開位置で静止させるようにした遊技機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る遊技機は、下部軸支部を軸穴によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、非通電時には前記扉部材を閉止位置に保持する一方で、通電時には該扉部材を開放させる駆動源と、該駆動源によって出没する出没部材の出没動作によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材と、を備え、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、遊技盤面に設けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有すると共に、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する第1のユニットと、該第1のユニットに隣接されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した第2のユニットと、を備え、前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、前記第2のユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される第2のベース部材を備え、前記駆動機構は、前記第2のベース部材により支持された駆動源本体、該駆動源本体により出没自在に支持された出没部材、及び該出没部材を突出方向へ付勢する弾性部材を備えた駆動源と、該第2のベース部材によって揺動自在に軸支され、上部に前記出没部材と係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、前記駆動源の非作動時には前記出没部材が突出して前記被係合部を突出方向へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を退避方向に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記駆動源の作動時には前記出没部材が退避して前記被係合部を退避方向へ移動させることによって前記レバーが前記被作用片を回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、遊技盤面に組み付けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有する前部ユニットと、該前部ユニットの後部に配置されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した後部ユニットと、前記後部ユニット、又は/及び、前記前部ユニットに設けられて扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する軸穴と、を備え、前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から後方へ突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、前記後部ユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される後部ベース部材を備え、前記駆動機構は、前記後部ベース部材により支持されたソレノイド本体、該ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて前後動するプランジャ、及び該プランジャを前方へ付勢する弾性部材を備えたソレノイドと、該後部ベース部材によって前後方向へ揺動自在に軸支され、上部に前記プランジャと係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、前記ソレノイドの非励磁時には前記プランジャが前方へ突出して前記被係合部を前方へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を後方に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記ソレノイドの励磁時には前記プランジャが後方へ退避して前記被係合部を後方へ引くことによって前記レバーが前記被作用片を前方に回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、前記後部ベース部材、或いは前記ソレノイド本体には、前記プランジャの後方への退避限界位置を規定するストッパを備えており、前記ストッパは、前記プランジャが後方へ退避することによって後方へ回動する前記駆動伝達部材の上部適所と接触するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ソレノイドを駆動源として前後方向へ開閉動作する一枚の扉部材を備え、ソレノイドへの通電によってプランジャが引っ込んだ時に扉部材が開放するように構成した可変入賞装置において、下部支軸部が軸穴内で前後方向へ進退できるように、下部軸支部の径と軸穴との寸法関係を変更するだけの簡単な改変により、扉部材のバウンドを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の全体正面図である。
【図2】図1のパチンコ遊技機の遊技盤部分の拡大図である。
【図3】本発明の可変入賞装置を遊技盤に組み付けた状態を示す正面側斜視図である。
【図4】可変入賞装置の分解斜視図である。
【図5】可変入賞装置の一部の分解斜視図である。
【図6】(a)及び(b)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成、動作を示す斜視図である。
【図7】(a)乃至(d)はソレノイド、駆動機構による扉部材の開閉操作を示す側面図である。
【図8】(a)(b)及び(c)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成及び動作を示す斜視図、扉閉止時の要部側面図、及び扉開放時の要部側面図である。
【図9】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る扉部材のバウンド防止のための対策を説明する図である。
【図10】(a)及び(b)は扉部材の下部軸支部が軸穴内に支持されている状態を示す前部斜視図である。
【図11】(a)及び(b)は後部ベース部材による扉部材の軸支構造を示す正面側斜視図、及び前飾りの背面部の構成を示す斜視図である。
【図12】扉閉止時に下部軸支部が軸穴の後端部に接している場合のバウンド防止の原理を説明するための図である。
【図13】一枚扉式の開閉片を備えた従来の可変入賞装置の構成を示す説明図である。
【図14】(a)(b)及び(c)は従来例における扉部材の下部軸支部の支持構造と、バウンド発生の原理を示す説明図である。
【図15】(a)及び(b)は従来例におけるソレノイド、駆動伝達機構、扉部材の閉止状態と開放状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の全体正面図であり、図2は図1のパチンコ遊技機の遊技盤部分の拡大図である。
遊技盤1の前面側には、ガラス板を支持したガラス枠2が開閉可能に取り付けられている。また遊技盤1の下部には遊技球を貯留する受け皿部3と、受け皿部内の遊技球を発射する発射レバー4が設けられている。また、受け皿部3の上面には遊技機用ボタンスイッチや、遊技球の購入ボタン、購入取り消しボタン(何れも図示せず)が設けられている。
遊技盤1の裏面には、液晶画面、主制御基板とサブ制御基板等、遊技の進行、演出に関わる裏部品を組み付けた合成樹脂製の機構板(何れも図示せず)が開閉自在に装着されている。遊技盤1における遊技領域1aの周囲には、発射レバー4を操作することにより発射装置から発射された遊技球を遊技領域1aの上部に案内したり、アウト口10に案内する外レールR1、及び内レールR2が設けられている。
【0017】
遊技盤1のほぼ中央部には、中央が開口したセンター部材5が配置される。センター部材5の内部には図柄表示装置6が配置されている。図柄表示装置6は、例えば、液晶表示装置等の液晶表示パネルによって構成され、通常動作状態の時は、図示しない特別図柄画像が表示される。また、いわゆる特別遊技状態の時は、特別遊技状態であることを示す演出画像等が表示される。本例では、図柄表示装置6の前方に仮面を象った2枚の開閉片7が横方向へ開閉自在に配置されている。
センター部材5の中央下方には、図柄表示装置6の特別図柄を可変表示させるための可変入賞装置11が設けられている。図柄表示装置6の左側には、普通図柄表示装置16に表示される普通図柄を作動させるためのゲート12が設けられている。また、可変入賞装置11の右側には、特別遊技状態の一つである大当たり状態のときに開成状態になる開閉扉13aを有する大入賞装置(可変入賞装置)13が設けられている。
可変入賞装置11は、図柄表示装置6を可変表示させる手段であり、入賞口(下始動口)21と、入賞口を開閉する一枚の扉部材30とを備えている。
また遊技盤1には普通入賞口14やアウト口10等が設けられていると共に、風車15や図示しない多数の遊技釘が突設されている。遊技釘は、遊技球の落下速度を遅くすると共に、落下方向を複雑に変化させて遊技進行上の興趣を高めている。
【0018】
普通図柄表示装置16に表示される普通図柄は、1個または複数個の図柄を変動表示可能であり、普通図柄始動口としてのゲート12が遊技球を検出することを条件に、その図柄が乱数制御等により所定時間可変して停止するようになっている。
また図柄表示装置6に表示される特別図柄は、停止図柄が予め定められた図柄の組合せ、例えば同一図柄の組合せとなった場合に大当たり状態となるように構成されている。また特別図柄は可変入賞装置11の扉部材の開成動作により遊技球が誘導される下始動口21において遊技球を検出することを条件に乱数制御等により表示がスクロールする等、所定の変動パターンで所定時間変動(可変)して図柄で停止するようになっている。その際、有効ライン上に2個の停止図柄が同一となった場合に、リーチ状態が発生し、このリーチ状態において、有効ライン上の最後の停止図柄が既に停止している2個の図柄と同一となった場合に大当たり状態が発生する。なお、特別図柄としては、数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター図柄等が使用可能である。
【0019】
次に、図3は本発明の可変入賞装置を遊技盤に組み付けた状態を示す正面側斜視図であり、図4は可変入賞装置の分解斜視図であり、図5は可変入賞装置の一部の分解斜視図であり、図6(a)及び(b)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成、動作を示す斜視図であり、図7(a)乃至(d)はソレノイド、駆動機構による扉部材の開閉操作を示す側面図であり、図8(a)(b)及び(c)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成及び動作を示す斜視図、扉閉止時の要部側面図、及び扉開放時の要部側面図である。
可変入賞装置11は、遊技盤1に形成した取付穴内に貫通した状態で組み込まれる。
可変入賞装置11は、前面に入賞口(下始動口)21を有し、且つ遊技盤前部に配置される前部ユニット(第1のユニット)20と、前部ユニット20の後部に配置(隣接配置)されて扉部材30を駆動する駆動機構60を搭載した後部ユニット(第2のユニット)50と、入賞口21の下部に設けた軸穴55により下部軸支部32を軸支されて前後方向へ開閉動作することにより入賞口21を開閉する扉部材30と、を備えている。
【0020】
前部ユニット(第1のユニット)20は、前面に入賞口21を有した下部中空部22と、下部中空部22の上壁である隔壁23を介して上方に配置され後面が開口したプランジャ嵌合用の上部中空部25とを備え、且つ扉部材30の下部軸支部32を回動自在に軸支した前部ベース部材(第1のベース部材)40を備える。前部ベース部材40の下部中空部22の前面側に前飾り42を組み付けることにより入賞口21が形成される。前部ベース部材40の後方には入賞口21に入球した遊技球を検知する入球検知センサ43が配置されている。更に、前部ベース部材40の前面には装飾部材45が適宜組み付けられる。
扉部材30は、普通図柄表示装置16の普通図柄が所定態様で停止したときに所定時間、開成動作するように構成されている。
なお、下始動口としての入賞口21の上方には上始動口26が配置されており、下始動口21と上始動口26とを一つのユニット中に配置したワンユニット形式の可変入賞装置を構成している。
【0021】
上始動口26は、遊技球が入賞したときに図示しない第1特別図柄表示器の第1特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。また入賞口21は、遊技球が入賞したときに図示しない第2特別図柄表示器の第2特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、上始動口26の内部には、遊技球の入球を検出する第1始動口スイッチが設けられ、入賞口21の内部には、遊技球の入球を検出する第2始動口スイッチ(入球検知センサ43)が設けられている。
扉部材30は、閉止時に入賞口21への遊技球の入球を阻止するに足る形状を有した扉本体31と、扉本体下部の両側部に設けた下部軸支部32と、扉本体31の下部から後方へ突出したアーム33aの先端に配置された被作用片33と、を備えている。
後部ユニット(第2のユニット)50は、駆動機構60を支持した状態で遊技盤の背面側に配置される後部ベース部材(第2のベース部材)51を備えている。後部ベース部材51は前方に位置する第1の後部ベース部材51Aと、後方に配置された第2の後部ベース部材51Bと、から構成されている。
なお、図示した実施形態では、第1のユニットを前部ユニット20とし、第2のユニットを後部ユニット50としたが、両ユニットは前後位置関係で隣接する必要はなく、例えば上下位置関係、その他の位置関係で隣接していてもよい。
【0022】
駆動機構60は、第2の後部ベース部材51Bにより支持されたソレノイド本体(駆動源本体)62、ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて上部中空部内で前後動するプランジャ(出没部材)63、及びプランジャ63を前方へ付勢する弾性部材64を備えたソレノイド(駆動源)61と、第1の後部ベース部材51Aに設けた軸支部53によって揺動軸支部66が前後方向へ揺動(回動)自在に軸支され、揺動軸支部66よりも上部にプランジャに設けたフランジ部(係合片)63aと係合する被係合部67を、揺動軸支部66よりも下部に扉部材の被作用片33と係合するレバー68を備えた駆動伝達部材65と、を備えている。第1の後部ベース部材51Aの後面に第2の後部ベース部材51Bを組み付けたときに、軸支部53内に支持された揺動軸支部66は第2の後部ベース部材51B側の対応する部位に設けた部材との間に挟まれて回動自在に支持される。
駆動伝達部材65は、例えば弾性を有した樹脂材料から構成する。
プランジャ63は、ソレノイド本体62の前面に設けた挿通孔62aによって前方へ出没自在に支持され、且つ弾性部材64によって前方へ付勢されている。プランジャ先端のフランジ部63aは駆動伝達部材65の被係合部67間に挟まれた状態で組み付けられることにより、プランジャが出没する時の直線移動力を駆動伝達部材65の回動力に変換する。ソレノイド本体62に通電していないときには、プランジャは弾性部材によって突出した状態とされる。
【0023】
ソレノイド61の非励磁時(非通電時)にはプランジャ63が前方へ突出して駆動伝達部材の被係合部67を前方へ押圧することによってレバー68の前部68aが扉部材の被作用片33を後方に(退避方向=閉止方向)回動させて開放状態にあった扉部材を閉止方向へ回動させる。本例では、プランジャが図7(a)に示した最大突出状態にあるときに扉部材30が閉止状態となるように設定されている。
一方、ソレノイド61の励磁時(通電時)にはプランジャ63が吸引されて後方(退避方向)へ退避して被係合部67を後方(開放方向)へ引くことによってレバー前部68aによる被作用片33の係止状態を解消して閉止状態にあった扉部材を開放方向へ回動させる。なお、扉部材は常に自重によって開放方向へ付勢されており、閉止位置にある時にはレバー前部68aによって同位置に保持されているに過ぎない。従って、レバーが開放方向へ移動してレバー前部68aによる保持がなくなると扉部材は自重によって開放方向へ回動し、図7(b)の中間状態を経て図7(c)、図8(c)に示した全開位置まで回動する。ソレノイド本体への通電によりプランジャが引っ込むことによりレバー68が開放方向(前方)へいち早く回動すると(図7(c)の位置)、支えを失った扉部材は開放方向へ自重によって回動を開始する。扉部材の全開位置は、先行して全開放位置に達したレバー前部68aにより規定されており、被作用片33がレバー前部と当接した位置が全開位置となる。
【0024】
図15の従来例に示したようにベース部材側にストッパを設けてレバー前部の開放角度を規制するように構成した場合には、ストッパによって開放方向への移動を規制されたレバー前部と被作用片との間でバウンドが発生した。つまり、プランジャの退避動作によってレバー68が開放方向へ先行して移動すると、扉部材30が自重によって遅れて開放するが、一旦全開位置に達してから跳ね返りを起こしてバウンドを繰り返すために、全開状態で静止するまでに時間を要するという問題があった。
これに対して本発明では、後部ベース部材、或いはソレノイド本体に、駆動伝達部材65が扉部材を開放させる方向へ回動する範囲を規制するストッパ70を設けた。ストッパ70は、プランジャの後方への退避限界位置を本来の位置よりも前方に変位させた位置としているため、駆動伝達部材65のレバー前部68aが最大限前方に回動した位置を図7(c)中に示した位置に止めることができる。つまり、ストッパ70を設けた場合のレバー前部68aの最前位置は、ストッパ70が存在しない場合のレバー前部68aの最前位置よりも後方に退避した位置に留まる。このため、レバー前部68aと接することにより開放角度が規定される被作用片33の位置も後方寄りとなり、扉部材30の開放角度が過大となることを防止できる。
【0025】
更に、本発明では、図15に示した従来例のように、駆動伝達部材の下部であるレバー前部68aと直接接触してその開放位置を規定する下部ストッパを設けることなく、駆動伝達部材の上部に設けた当接部材69を上方に設けたストッパ(上部ストッパ)70と接触させることにより、レバー前部の開放位置を規定している。つまり、本実施形態では、図15に示した下部ストッパのように開放位置にあるレバー前部を直接係止する部材が存在しないこととなる。
従来の下部ストッパはレバー前部が全開位置を越えてさらに開放方向へ移動することを厳格に阻止する構造であるため、全開位置にあるレバー前部は若干であってもそれ以上は開放方向に変位、変形することができず、そのために衝突する被作用片33を緩衝することができなかった。一方、下部ストッパを設けない本実施形態では、開放位置にあるレバー前部68aが弾性変形可能な状態を維持されており、しかも部品間の精度誤差、組み付け誤差によって若干の範囲で図7(c)に示した全開位置よりも更に開放方向(反時計回り方向)へ変位することができるため、扉部材の開放時にレバー前部に衝突してくる被作用片33の勢いを減殺、緩衝させてバウンドの発生を防止することができる。
【0026】
このように本発明の実施形態では、第2の後部ベース部材51Bにストッパ70を設け、駆動伝達部材65の対応する上部適所に設けた当接部材69をストッパ70の前面と当接可能な構成にしている。このため、扉部材30を開放するために駆動伝達部材のレバー68が前方へ回動する際に当接部材69がストッパ70の前面と当接することにより、図7(c)中に示した全開位置以上に扉部材を開放させる方向へ回動することができなくなる。このため、ソレノイド本体の励磁によって吸引されて後方へ退避する過程にあるプランジャ63は、当接部材69がストッパ70の前面と当接した時点で後方への移動を停止させられる。このようにストッパ70によって駆動伝達部材の開放時の回動範囲を規制することにより、扉部材の全開時の開放角度を、ストッパ70が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0027】
即ち、ストッパ70が存在しない場合には、全開時にレバー前部68aの内側面が図7(c)中に示した位置よりも更に開放側へ移動するために扉部材30の全開位置が図示の位置よりも更に拡大する。このため、扉部材の内側面が水平に近い姿勢となり、該内側面にて弾んだ遊技球が入賞口内に入賞できない事態が増大する。
一方、ストッパ70を設けた場合には、全開時であってもレバー前部68aの内側面の位置は図7(c)(d)中に示した後方位置に止まるため、扉部材30の全開位置が実線で示した位置に止まる。
更に、レバー前部68aの開放方向への変位を直接規制する下部ストッパが存在しないため、レバー前部自体の弾性緩衝作用を発揮できると共に、部品精度バラツキや組付けのバラツキによって、レバー前部が図示の全開位置を越えて若干開放方向へ変位可能となる。このようにレバー前部の位置が全開位置よりも若干開放方向へ変位できるように構成したため(クッション機能を持たせたため)、扉部材の被作用片33がレバー前部と衝突した時にその勢いを緩衝することができ、バウンドを発生させることなく全開位置に達した時点で扉部材を直ちに静止させることが可能となる。
【0028】
なお、ストッパ70の前方への突出量、或いは/及び、当接部材69の後方への突出量を適切に調整することによって、プランジャの後方への退避限界位置と、レバー前部68aの最前位置を適宜調整することができる。
なお、ストッパ70を、駆動伝達部材の当接部材69と対応するソレノイド本体62の側部に設けても良い。
なお、ストッパ70と当接部材69との接触位置P1(図7(c))を、扉部材開放時における被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2(図7(c))に対して十分に上方に配置した点が本発明の一つの特徴である。即ち、接触位置P1が、揺動軸支部66を間に挟んで接触位置P2よりも十分に離間した上方位置にあることにより、接触位置P2における被作用片33とレバー前部68aとの衝突により発生するエネルギーを、駆動伝達部材のレバー68、揺動軸支部66を経てストッパ70に伝搬させて吸収緩和(バウンド防止)することができる。
【0029】
換言すればレバーの開放方向限界位置を定めるストッパ70を上部に設けることにより、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2と、ストッパ70と当接部材69との接触位置P1との間の距離が十分に長くなるために、被作用片33とレバー前部との衝突による衝撃が接触位置P1に達するまでに駆動伝達部材等の介在部品によって十分に吸収緩和される。
また、上記実施形態では、ソレノイド(駆動源)のプランジャ(出没部材)を前後方向へ出没させることにより、駆動伝達部材、及び扉部材を開閉動作させる構成としたがこれは一例に過ぎず、プランジャをソレノイド本体から斜め方向(斜め上下方向、斜め横方向等々)に出没させることによって、これらの部材を開閉動作させるように構成してもよい。つまり、出没部材の出没方向は実施形態に限定されるものではない。
【0030】
次に、図9(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る扉部材のバウンド防止のための対策を説明する図であり、図10(a)及び(b)は扉部材の下部軸支部が軸穴内に支持されている状態を示す前部斜視図であり、図11(a)及び(b)は後部ベース部材による扉部材の軸支構造を示す正面側斜視図、及び前飾りの背面部の構成を示す斜視図である。なお、図7中の該当箇所を併せて参照しながら説明する。
なお、前記実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
扉部材30の下部側面から夫々突設された2つの下部軸支部32は、前部ユニット20と後部ユニット50とに跨って設けた2つの軸穴55によって夫々回動自在に軸支されている。各軸穴55は後部ベース部材51の開口部54の対向する2つの内側壁の前端縁に夫々設けた2つの凹所56と、各凹所56内に前方から嵌合して軸穴55を形成する嵌合突起42aと、から構成される。嵌合突起42aは、図11(b)に示すように本例では前飾り42の後部に突設されている。
【0031】
前部ユニット20の対向する2つの内側壁に夫々設けた凹所27は、各凹所56と整合する位置関係にあり、前部ユニットと後部ユニットを組み付けた際に各凹所56が各凹所27と整合(連通)した状態となり、この状態で前飾り側の突起42aを凹所27、56内に嵌合させて凹所56の前部開口を閉止することにより、前後方向(横方向)が閉ざされた軸穴55が形成される。
軸穴55は、円筒状の下部軸支部32を収容して回動自在に支持できるようにその上下幅が設定されていると共に、所定の範囲内で下部軸支部32が軸穴内で後方、又は/及び、前方へ移動できるように下部軸支部32の直径よりも前後方向(横方向)寸法が長く設定されている。
厳密に言えば、軸穴55内で下部軸支部32を回動自在に軸支する限りは、下部軸支部と、その前後方向にある軸穴内壁との間に僅かなクリアランスがある。具体的には、例えば下部軸支部の直径を3mmとした場合に、前後方向クリアランスは0.1(0.05×2)mm程度である。しかし、この程度の僅かなクリアランスでは、扉部材の全開時のバウンドを解消する程度に下部軸支部を前後方向へ進退させることはできない。
【0032】
本発明では、扉部材が全開位置に達した時に発生するバウンドを解消できる程度に、下部軸支部が前後方向(横方向)へ進退するように軸穴55の前後方向長を大きく設定した点が特徴的である。具体的には、下部軸支部と軸穴の内壁との間の前後方向クリアランスを、下部軸支部の直径の1/10〜1/4の範囲に設定するのが好ましい。
更に具体的には下部軸支部の直径が3mmであるとすれば、下部軸支部と軸穴との間の前後方向ギャップは、0.3〜0.75mmの範囲とする。但し、クリアランスが大きすぎる場合にはそこにゴミが詰まり易くなり、扉部材の開閉性能を低下させる原因となるため、例えば0.3mm程度に設定するのが好ましい。
【0033】
このように下部軸支部32が軸穴55内で前後方向へ進退可能に構成されていることによって、閉止位置にあった扉部材が開放して被作用片33がレバー前部68aの内側面に接した後は、下部軸支部はレバー前部68aの内側面によって支持された被作用片33を回動中心とし、且つアーム33aの長さを半径として円弧状の経路に沿って前後方向へ揺動することが可能となる。
即ち、閉止位置にあった扉部材が全開位置に達したときに被作用片33がレバー前部68aと接触してバウンドを起こす代わりに、下部軸支部32が被作用片33を中心とした半径で軸穴55内を前後動することによりバウンドを起こす原因となるエネルギーを吸収緩和する。より正確には、図9(b)(c)に示すように、扉部材は、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2を回動中心とし、且つ接触位置P2と下部支持軸32の中心点までの距離rを半径として、前後方向へ若干変位する。
【0034】
なお、軸穴55(凹所56)の形状は、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2を揺動中心とし、且つ接触位置P2と下部支持軸32の中心点までの距離rを半径とした円弧状であることが理想であるが、下部軸支部32の直径が3mm程度であり、且つ軸穴内における可動範囲Lが0.3mm程度と短いため、前後方向に直線状に延びる軸穴形状としても下部軸支部の動作上支障はない。しかも、金型により前部ベース部材51Aを成形する際に、凹所56が直線状である方がアンダーカット処理の問題が生じないため便利である。即ち、凹所56が接触位置P2を中心とした湾曲形状である場合には、凹所56を有した部材を金型により射出成形する際の型抜き方向が前後方向であると、凹所がアンダーカットとなり、型抜きが難しくなるからである。
【0035】
図9に示した例では、扉部材の閉止時に軸穴55内における下部軸支部32の位置が軸穴の前部(嵌合突起42aの後端面)に接しているものとして説明したが、この場合には扉部材の全開時に被作用片33とレバー前部68aとの衝突による応力を、下部軸支部が軸穴内で後方へ移動して軸穴の後部に当たってから前方へ復帰するように往復動作することにより、緩和することができる。
つまり、扉部材の閉止時に軸穴55の前端部に下部軸支部が位置している場合には、扉部材の開放時の勢いによって下部軸支部は軸穴の前端部から一旦後方へ向けて移動してから、直ちに前方へ復帰する。即ち、扉部材が開放方向へ自重によって回動する場合には、下部軸支部は図9(b)に示すように時計回り方向へ回動するが、この時に発生する扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を下部軸支部が後方→前方へ往復移動することによって吸収緩和する。
本発明者が高速度カメラを用いて扉部材の開閉動作を観察したところ、下部軸支部が軸穴内で往復動作することによって、扉部材のバウンドが解消されていることが確認されている。
【0036】
なお、扉部材が閉止している時における下部軸支部32の軸穴55内における前後方向停止位置は一定しておらず、軸穴の前端部と接する前端位置の他に、軸穴の後端部と接する後端位置、或いは軸穴の前後方向中間位置もあり得る。
扉部材の閉止時に下部軸支部が軸穴の中間位置にある場合には、下部軸支部は一旦後方へ移動してから前方へ移動することにより、扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を解消することができる。
また、扉部材の閉止時に下部軸支部が軸穴の後端位置にある場合(図12の状態)には、扉部材の開放時の勢いによって下部軸支部は軸穴の後端部から一旦前方へ向けて移動してから直ちに後方へ復帰する。即ち、扉部材が開放方向へ自重によって回動する場合には、下部軸支部は時計回り方向へ回動するが、この時に発生する扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を下部軸支部が前方→後方へ往復移動することによって吸収緩和することができる。この場合は、被作用片がレバー前部と衝突することによって扉部材を閉止方向へバウンドさせようとする力が発生するが、この力は下部軸支部が軸穴内を前方へ移動してから後方へ復帰する力に変換されることによって解消される。
【0037】
このように本実施形態における扉部材の軸支構造にあっては、下部軸支部32を軸穴55によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材30と、通電時には扉部材を閉止位置に保持する一方で、非通電時には該扉部材を開放させるソレノイド61と、ソレノイドのプランジャの出没によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材65(レバー68)と、を備え、軸穴は、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方(横方向=衝撃緩和方向)へ移動することを許容する構成を備えている。このため、被作用片がレバー前部と衝突することによって発生する扉部材を閉止方向へバウンドさせようとする力を効果的に解消し、バウンドをなくすることができる。
【0038】
従来のように下部軸支部と軸穴内壁とのクリアランスが僅少であるために下部軸支部の逃げ場がない場合には、扉部材の開放時に下部軸支部は回転する以外の挙動はできなかった。その結果、扉部材がバウンドを発生させていた。これに対して本発明にあっては、下部軸支部が軸穴内を前後方向へ進退できる(逃げ場がある)ので、扉の開放時に回転するだけでなく前後方向へ移動することができ、バウンドを発生させる原因となる力を分散、解消することができる。
なお、本発明の扉部材の開閉機構の構造は、図示説明した可変入賞装置11のみならず、大入賞装置(可変入賞装置)13の開閉扉13a、その他の入賞装置の扉にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…遊技盤、1a…遊技領域、3…皿部、4…発射レバー、5…センター部材、7…開閉片、10…アウト口、11…可変入賞装置、12…ゲート、13a…開閉扉、14…普通入賞口、15…風車、16…普通図柄表示装置、20…前部ユニット、21…入賞口、22…下部中空部、23…隔壁、24…凹所、24F…前端縁、24a…内前壁、24b…凹所底面、25…上部中空部、30…扉部材、31…扉本体、32…下部軸支部、33…被作用片、40…前部ベース部材、42…前飾り、42a…嵌合突起、43…入球検知センサ、45…装飾部材、50…後部ユニット、51…後部ベース部材、51A…後部ベース部材、51B…後部ベース部材、53…軸支部、55…軸穴、60…駆動機構、61…ソレノイド(駆動源)、62…ソレノイド本体(駆動源本体)、62a…挿通孔、63…プランジャ(出没部材)、63a…フランジ部、64…弾性部材、65…駆動伝達部材、66…揺動軸支部、67…被係合部、68…レバー、68a…前部、68a`…内面、68b…後部、70…ストッパ
【技術分野】
【0001】
本発明は遊技機に関し、特に特定の条件を満たしたときに動作する可変入賞装置を備えたパチンコ遊技機の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変入賞装置(電チュー)と称される可動盤面部品を装備したパチンコ遊技機が従来から知られている。電チューは、ソレノイドを駆動源として回動される一対の羽根(開閉片)から成り、所定の始動入賞口に遊技球が入賞したときにソレノイドを作動させて一対の羽根を一回、或いは2回程度開閉動作させて、遊技盤面を流下する遊技球を捕捉して可変入賞装置の入賞口(下始動口)内に導くように構成されている。
また、アタッカー(大入賞装置)と称される可変入賞装置は、一枚扉をソレノイドによって前後方向へ回動させることによって入賞口を開閉する構造であり、特許文献1、2には、アタッカーの扉の開閉構造が開示されている。
ところで、本出願人は、電チューに代えて新規構造の可変入賞装置を開発するべく、従来の一対の羽根に代えて、アタッカーにおける一枚扉の開閉構造を適用することを試みている。
【0003】
図13は一枚扉式の開閉片を備えた可変入賞装置の構成を示す説明図である。
この可変入賞装置100は、図示しない遊技盤に形成された取付穴に装着されるベース部材101と、ベース部材101の前面に開口形成された入賞口102を開閉するために下部の軸支部110aを回動自在に軸支された扉部材110と、入賞口102の後方においてベース部材によって支持されたソレノイド120と、ソレノイド120からの駆動力を扉部材110に伝達する駆動伝達部材130と、を概略備えている。
扉部材110は、その下部後方に被作用片111を突設した構成を備えている。
ソレノイド120は、ベース部材101によって固定されたソレノイド本体121と、先端にフランジ部122aを備え、ソレノイド本体から前後に出没自在に支持されたプランジャ122と、プランジャを突出方向へ付勢するコイルバネ123と、を備えている。 駆動伝達部材130は、上部にベース部材101によって前後方向へ回動自在に軸支された軸支部131aを備え、且つ下部に二股分岐部131b、131cを備えたレバー131と、レバー131の上部から前方上部へ突設されてプランジャのフランジ部122aの前面と後面を挟み込むように二股に分岐された作用部材132aと、を備えている。
【0004】
ソレノイド本体121への非通電時には、破線で示すようにコイルバネ123の付勢によってプランジャ122は最大限に突出するため、駆動伝達部材のレバー131は鎖線で示した後方位置にあり、二股分岐部の前部131bによって被作用片111を後方へ引き込むことによって扉部材110を破線のように閉止させる。扉部材110は、これを閉止させる方向への外力が加わらない場合には自重によって開放するようにその重量バランスが構成されており、レバー131が鎖線で示した後方位置にある時には扉部材を閉止位置に保持する役割を果たしている。
ソレノイド本体121への通電時には、実線で示すようにプランジャ122はコイルバネ123に抗して後方へ迅速に引っ込むため、レバー131は実線で示した前方位置に迅速に移動する。上述のように扉部材は自重によって開放するように構成されているため、二股分岐部の前部131bによって被作用片111を閉止位置に保持する力が失われたことにより、開放方向へ回動し始め、最後には実線のように全開状態となる。被作用片111は、レバー前部131bの開放開始時にレバー前部と接しながら同時に開放方向へ移動する訳ではなく、先行して前方への移動を開始したレバー前部に遅れて開放方向へ移動を開始する。扉部材100の全開放角度は、被作用片111がレバーの前部131bと接することにより所定位置に規定される。
【0005】
次に、図14(a)(b)及び(c)は、扉部材の下部軸支部を可変入賞装置100の軸穴によって支持する従来構成を示している。扉部材の下部から両側方に突出した一対の下部軸支部(ピン)110aは、ベース部材101の前端縁に設けた凹所100a−1と、ベース部材101の前面に組み付けられる前飾り145に設けた位置決め突起145aとから構成される軸穴102内に回転自在、且つ径方向移動不能な状態で緊密に支持されている。即ち、軸穴102は、凹所100a−1と、凹所内に嵌合される位置決め突起145aとの間に形成される空間であり、円筒状の下部軸支部110aは軸穴102内で回転自在に軸支されているが、扉部材の開閉時のガタツキ、軸穴内へのゴミの侵入を防止するために前後方向へは移動しないように緊密に軸支されている。具体的には、下部軸支部の直径を3mmとすれば、軸穴102との間の前後方向クリアランスは、左右夫々0.05mm(合計長0.1mm)である。
【0006】
ところで、従来は扉部材110が全開位置で停止する開放角度を、被作用片111をレバーの前部131bと接触させることによって規定していたため、プランジャの引っ込み位置によって扉部材の全開時の開放角度が決定されることとなり、開放角度が過大となり易く、過大となった場合には扉部材の裏面に当たって入賞口に入賞すべき遊技球が入賞できなくなるという事態が多発するという問題があった。また、扉部材の開放角度が部品毎の精度誤差、部品間の組み付け誤差等に起因してバラツキを起こすという問題もあった。
このような不具合に対処するため、従来は扉部材110の軸支部110aと、駆動伝達部材130の軸支部131aを夫々支持するベース部材の内壁に図15に示した如きストッパ140を突設することにより、図15(b)に示した駆動伝達部材130の開放時にレバー131の前部131bをストッパ140で係止して駆動伝達部材が開放する際の限界位置を規定するようにしていた。
【0007】
この場合、図15(a)に示した後方位置にあったプランジャ122がソレノイドへの通電により迅速に引っ込むことにより、駆動伝達部材のレバー131は扉部材に先行して(b)に示した前方位置へ迅速に移動する。扉部材はレバーが前方へ先行して移動することにより、被作用片111がレバーの前部131bによる係止を解除された後で、レバーよりも遅れて自重により開放を開始する。
扉部材が図15(a)に示した閉止状態から(b)に示した全開状態に移行する際に、扉部材の被作用片111が、ストッパ140によって前方への回動を規制されたレバーの前部131bと接することによって扉部材の全開位置が規定されるが、ストッパ140によって前方への移動を阻止されたレバー前部131bに被作用片111が衝突した際に被作用片は直ちに停止することができず扉開放時の加速によって生じた勢いが緩和されるまでレバー前部との間でバウンドを繰り返す(図14(a)(b)(c)を参照)。このため、被作用片と一体の扉部材も全開位置で直ちに静止することができずに、矢印で示したようにバウンドを繰り返した後に全開位置で静止していた。このように、ソレノイドの通電に伴うプランジャの引っ込みタイミングと、扉部材の開放動作(全開位置での静止タイミング)との間にズレが生じると、扉部材が入賞口を開放したタイミングに合わせて流下してきた遊技球が入球できなくなるため、装置に対する信頼性が低下して遊技者に不満感、不公平感を抱かせる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−307103公報
【特許文献2】特開2009−11660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上のように一枚の扉部材の下部をベース部材によって前後方向へ回動自在に軸支することによって入賞口を開閉すると共に、後方に配置したソレノイドから前後方向へ出没するプランジャと、プランジャによって回動させられる駆動伝達部材とによって扉部材を開閉駆動するようにした可変入賞装置にあっては、扉部材が全開した時の開放角度を規制する手段として、駆動伝達部材の下部と接してその開放角度を規制するためのストッパをベース部材に設けていた。しかし、このストッパは駆動伝達部材を開放位置にて係止してしまうため、扉部材側の被作用片が駆動伝達部材の下部との間でバウンドを起こし易くなり、扉部材が全開位置で静止するまでに時間がかかるという問題があった。この場合、バウンドがなくなって全開位置で静止するまでに時間を要するために遊技球の入賞値が設計値からズレを起こすという問題があった。
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、ソレノイドを駆動源として前後方向へ開閉動作する一枚の扉部材を備えた可変入賞装置において、ソレノイドの通電によってプランジャが引っ込んだ時に扉部材が開放するように構成した場合に、構成を複雑化することなく扉部材をバウンドさせずに全開位置で静止させるようにした遊技機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1の発明に係る遊技機は、下部軸支部を軸穴によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、非通電時には前記扉部材を閉止位置に保持する一方で、通電時には該扉部材を開放させる駆動源と、該駆動源によって出没する出没部材の出没動作によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材と、を備え、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、遊技盤面に設けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有すると共に、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する第1のユニットと、該第1のユニットに隣接されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した第2のユニットと、を備え、前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、前記第2のユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される第2のベース部材を備え、前記駆動機構は、前記第2のベース部材により支持された駆動源本体、該駆動源本体により出没自在に支持された出没部材、及び該出没部材を突出方向へ付勢する弾性部材を備えた駆動源と、該第2のベース部材によって揺動自在に軸支され、上部に前記出没部材と係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、前記駆動源の非作動時には前記出没部材が突出して前記被係合部を突出方向へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を退避方向に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記駆動源の作動時には前記出没部材が退避して前記被係合部を退避方向へ移動させることによって前記レバーが前記被作用片を回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、遊技盤面に組み付けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有する前部ユニットと、該前部ユニットの後部に配置されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した後部ユニットと、前記後部ユニット、又は/及び、前記前部ユニットに設けられて扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する軸穴と、を備え、前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から後方へ突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、前記後部ユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される後部ベース部材を備え、前記駆動機構は、前記後部ベース部材により支持されたソレノイド本体、該ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて前後動するプランジャ、及び該プランジャを前方へ付勢する弾性部材を備えたソレノイドと、該後部ベース部材によって前後方向へ揺動自在に軸支され、上部に前記プランジャと係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、前記ソレノイドの非励磁時には前記プランジャが前方へ突出して前記被係合部を前方へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を後方に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記ソレノイドの励磁時には前記プランジャが後方へ退避して前記被係合部を後方へ引くことによって前記レバーが前記被作用片を前方に回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、前記後部ベース部材、或いは前記ソレノイド本体には、前記プランジャの後方への退避限界位置を規定するストッパを備えており、前記ストッパは、前記プランジャが後方へ退避することによって後方へ回動する前記駆動伝達部材の上部適所と接触するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ソレノイドを駆動源として前後方向へ開閉動作する一枚の扉部材を備え、ソレノイドへの通電によってプランジャが引っ込んだ時に扉部材が開放するように構成した可変入賞装置において、下部支軸部が軸穴内で前後方向へ進退できるように、下部軸支部の径と軸穴との寸法関係を変更するだけの簡単な改変により、扉部材のバウンドを効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の全体正面図である。
【図2】図1のパチンコ遊技機の遊技盤部分の拡大図である。
【図3】本発明の可変入賞装置を遊技盤に組み付けた状態を示す正面側斜視図である。
【図4】可変入賞装置の分解斜視図である。
【図5】可変入賞装置の一部の分解斜視図である。
【図6】(a)及び(b)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成、動作を示す斜視図である。
【図7】(a)乃至(d)はソレノイド、駆動機構による扉部材の開閉操作を示す側面図である。
【図8】(a)(b)及び(c)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成及び動作を示す斜視図、扉閉止時の要部側面図、及び扉開放時の要部側面図である。
【図9】(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る扉部材のバウンド防止のための対策を説明する図である。
【図10】(a)及び(b)は扉部材の下部軸支部が軸穴内に支持されている状態を示す前部斜視図である。
【図11】(a)及び(b)は後部ベース部材による扉部材の軸支構造を示す正面側斜視図、及び前飾りの背面部の構成を示す斜視図である。
【図12】扉閉止時に下部軸支部が軸穴の後端部に接している場合のバウンド防止の原理を説明するための図である。
【図13】一枚扉式の開閉片を備えた従来の可変入賞装置の構成を示す説明図である。
【図14】(a)(b)及び(c)は従来例における扉部材の下部軸支部の支持構造と、バウンド発生の原理を示す説明図である。
【図15】(a)及び(b)は従来例におけるソレノイド、駆動伝達機構、扉部材の閉止状態と開放状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示した実施の形態により詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る遊技機の一例としてのパチンコ遊技機の全体正面図であり、図2は図1のパチンコ遊技機の遊技盤部分の拡大図である。
遊技盤1の前面側には、ガラス板を支持したガラス枠2が開閉可能に取り付けられている。また遊技盤1の下部には遊技球を貯留する受け皿部3と、受け皿部内の遊技球を発射する発射レバー4が設けられている。また、受け皿部3の上面には遊技機用ボタンスイッチや、遊技球の購入ボタン、購入取り消しボタン(何れも図示せず)が設けられている。
遊技盤1の裏面には、液晶画面、主制御基板とサブ制御基板等、遊技の進行、演出に関わる裏部品を組み付けた合成樹脂製の機構板(何れも図示せず)が開閉自在に装着されている。遊技盤1における遊技領域1aの周囲には、発射レバー4を操作することにより発射装置から発射された遊技球を遊技領域1aの上部に案内したり、アウト口10に案内する外レールR1、及び内レールR2が設けられている。
【0017】
遊技盤1のほぼ中央部には、中央が開口したセンター部材5が配置される。センター部材5の内部には図柄表示装置6が配置されている。図柄表示装置6は、例えば、液晶表示装置等の液晶表示パネルによって構成され、通常動作状態の時は、図示しない特別図柄画像が表示される。また、いわゆる特別遊技状態の時は、特別遊技状態であることを示す演出画像等が表示される。本例では、図柄表示装置6の前方に仮面を象った2枚の開閉片7が横方向へ開閉自在に配置されている。
センター部材5の中央下方には、図柄表示装置6の特別図柄を可変表示させるための可変入賞装置11が設けられている。図柄表示装置6の左側には、普通図柄表示装置16に表示される普通図柄を作動させるためのゲート12が設けられている。また、可変入賞装置11の右側には、特別遊技状態の一つである大当たり状態のときに開成状態になる開閉扉13aを有する大入賞装置(可変入賞装置)13が設けられている。
可変入賞装置11は、図柄表示装置6を可変表示させる手段であり、入賞口(下始動口)21と、入賞口を開閉する一枚の扉部材30とを備えている。
また遊技盤1には普通入賞口14やアウト口10等が設けられていると共に、風車15や図示しない多数の遊技釘が突設されている。遊技釘は、遊技球の落下速度を遅くすると共に、落下方向を複雑に変化させて遊技進行上の興趣を高めている。
【0018】
普通図柄表示装置16に表示される普通図柄は、1個または複数個の図柄を変動表示可能であり、普通図柄始動口としてのゲート12が遊技球を検出することを条件に、その図柄が乱数制御等により所定時間可変して停止するようになっている。
また図柄表示装置6に表示される特別図柄は、停止図柄が予め定められた図柄の組合せ、例えば同一図柄の組合せとなった場合に大当たり状態となるように構成されている。また特別図柄は可変入賞装置11の扉部材の開成動作により遊技球が誘導される下始動口21において遊技球を検出することを条件に乱数制御等により表示がスクロールする等、所定の変動パターンで所定時間変動(可変)して図柄で停止するようになっている。その際、有効ライン上に2個の停止図柄が同一となった場合に、リーチ状態が発生し、このリーチ状態において、有効ライン上の最後の停止図柄が既に停止している2個の図柄と同一となった場合に大当たり状態が発生する。なお、特別図柄としては、数字図柄、アルファベット図柄、キャラクター図柄等が使用可能である。
【0019】
次に、図3は本発明の可変入賞装置を遊技盤に組み付けた状態を示す正面側斜視図であり、図4は可変入賞装置の分解斜視図であり、図5は可変入賞装置の一部の分解斜視図であり、図6(a)及び(b)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成、動作を示す斜視図であり、図7(a)乃至(d)はソレノイド、駆動機構による扉部材の開閉操作を示す側面図であり、図8(a)(b)及び(c)はソレノイド、駆動機構、及び扉部材の構成及び動作を示す斜視図、扉閉止時の要部側面図、及び扉開放時の要部側面図である。
可変入賞装置11は、遊技盤1に形成した取付穴内に貫通した状態で組み込まれる。
可変入賞装置11は、前面に入賞口(下始動口)21を有し、且つ遊技盤前部に配置される前部ユニット(第1のユニット)20と、前部ユニット20の後部に配置(隣接配置)されて扉部材30を駆動する駆動機構60を搭載した後部ユニット(第2のユニット)50と、入賞口21の下部に設けた軸穴55により下部軸支部32を軸支されて前後方向へ開閉動作することにより入賞口21を開閉する扉部材30と、を備えている。
【0020】
前部ユニット(第1のユニット)20は、前面に入賞口21を有した下部中空部22と、下部中空部22の上壁である隔壁23を介して上方に配置され後面が開口したプランジャ嵌合用の上部中空部25とを備え、且つ扉部材30の下部軸支部32を回動自在に軸支した前部ベース部材(第1のベース部材)40を備える。前部ベース部材40の下部中空部22の前面側に前飾り42を組み付けることにより入賞口21が形成される。前部ベース部材40の後方には入賞口21に入球した遊技球を検知する入球検知センサ43が配置されている。更に、前部ベース部材40の前面には装飾部材45が適宜組み付けられる。
扉部材30は、普通図柄表示装置16の普通図柄が所定態様で停止したときに所定時間、開成動作するように構成されている。
なお、下始動口としての入賞口21の上方には上始動口26が配置されており、下始動口21と上始動口26とを一つのユニット中に配置したワンユニット形式の可変入賞装置を構成している。
【0021】
上始動口26は、遊技球が入賞したときに図示しない第1特別図柄表示器の第1特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。また入賞口21は、遊技球が入賞したときに図示しない第2特別図柄表示器の第2特別図柄を変動表示させる権利を発生させる。このため、上始動口26の内部には、遊技球の入球を検出する第1始動口スイッチが設けられ、入賞口21の内部には、遊技球の入球を検出する第2始動口スイッチ(入球検知センサ43)が設けられている。
扉部材30は、閉止時に入賞口21への遊技球の入球を阻止するに足る形状を有した扉本体31と、扉本体下部の両側部に設けた下部軸支部32と、扉本体31の下部から後方へ突出したアーム33aの先端に配置された被作用片33と、を備えている。
後部ユニット(第2のユニット)50は、駆動機構60を支持した状態で遊技盤の背面側に配置される後部ベース部材(第2のベース部材)51を備えている。後部ベース部材51は前方に位置する第1の後部ベース部材51Aと、後方に配置された第2の後部ベース部材51Bと、から構成されている。
なお、図示した実施形態では、第1のユニットを前部ユニット20とし、第2のユニットを後部ユニット50としたが、両ユニットは前後位置関係で隣接する必要はなく、例えば上下位置関係、その他の位置関係で隣接していてもよい。
【0022】
駆動機構60は、第2の後部ベース部材51Bにより支持されたソレノイド本体(駆動源本体)62、ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて上部中空部内で前後動するプランジャ(出没部材)63、及びプランジャ63を前方へ付勢する弾性部材64を備えたソレノイド(駆動源)61と、第1の後部ベース部材51Aに設けた軸支部53によって揺動軸支部66が前後方向へ揺動(回動)自在に軸支され、揺動軸支部66よりも上部にプランジャに設けたフランジ部(係合片)63aと係合する被係合部67を、揺動軸支部66よりも下部に扉部材の被作用片33と係合するレバー68を備えた駆動伝達部材65と、を備えている。第1の後部ベース部材51Aの後面に第2の後部ベース部材51Bを組み付けたときに、軸支部53内に支持された揺動軸支部66は第2の後部ベース部材51B側の対応する部位に設けた部材との間に挟まれて回動自在に支持される。
駆動伝達部材65は、例えば弾性を有した樹脂材料から構成する。
プランジャ63は、ソレノイド本体62の前面に設けた挿通孔62aによって前方へ出没自在に支持され、且つ弾性部材64によって前方へ付勢されている。プランジャ先端のフランジ部63aは駆動伝達部材65の被係合部67間に挟まれた状態で組み付けられることにより、プランジャが出没する時の直線移動力を駆動伝達部材65の回動力に変換する。ソレノイド本体62に通電していないときには、プランジャは弾性部材によって突出した状態とされる。
【0023】
ソレノイド61の非励磁時(非通電時)にはプランジャ63が前方へ突出して駆動伝達部材の被係合部67を前方へ押圧することによってレバー68の前部68aが扉部材の被作用片33を後方に(退避方向=閉止方向)回動させて開放状態にあった扉部材を閉止方向へ回動させる。本例では、プランジャが図7(a)に示した最大突出状態にあるときに扉部材30が閉止状態となるように設定されている。
一方、ソレノイド61の励磁時(通電時)にはプランジャ63が吸引されて後方(退避方向)へ退避して被係合部67を後方(開放方向)へ引くことによってレバー前部68aによる被作用片33の係止状態を解消して閉止状態にあった扉部材を開放方向へ回動させる。なお、扉部材は常に自重によって開放方向へ付勢されており、閉止位置にある時にはレバー前部68aによって同位置に保持されているに過ぎない。従って、レバーが開放方向へ移動してレバー前部68aによる保持がなくなると扉部材は自重によって開放方向へ回動し、図7(b)の中間状態を経て図7(c)、図8(c)に示した全開位置まで回動する。ソレノイド本体への通電によりプランジャが引っ込むことによりレバー68が開放方向(前方)へいち早く回動すると(図7(c)の位置)、支えを失った扉部材は開放方向へ自重によって回動を開始する。扉部材の全開位置は、先行して全開放位置に達したレバー前部68aにより規定されており、被作用片33がレバー前部と当接した位置が全開位置となる。
【0024】
図15の従来例に示したようにベース部材側にストッパを設けてレバー前部の開放角度を規制するように構成した場合には、ストッパによって開放方向への移動を規制されたレバー前部と被作用片との間でバウンドが発生した。つまり、プランジャの退避動作によってレバー68が開放方向へ先行して移動すると、扉部材30が自重によって遅れて開放するが、一旦全開位置に達してから跳ね返りを起こしてバウンドを繰り返すために、全開状態で静止するまでに時間を要するという問題があった。
これに対して本発明では、後部ベース部材、或いはソレノイド本体に、駆動伝達部材65が扉部材を開放させる方向へ回動する範囲を規制するストッパ70を設けた。ストッパ70は、プランジャの後方への退避限界位置を本来の位置よりも前方に変位させた位置としているため、駆動伝達部材65のレバー前部68aが最大限前方に回動した位置を図7(c)中に示した位置に止めることができる。つまり、ストッパ70を設けた場合のレバー前部68aの最前位置は、ストッパ70が存在しない場合のレバー前部68aの最前位置よりも後方に退避した位置に留まる。このため、レバー前部68aと接することにより開放角度が規定される被作用片33の位置も後方寄りとなり、扉部材30の開放角度が過大となることを防止できる。
【0025】
更に、本発明では、図15に示した従来例のように、駆動伝達部材の下部であるレバー前部68aと直接接触してその開放位置を規定する下部ストッパを設けることなく、駆動伝達部材の上部に設けた当接部材69を上方に設けたストッパ(上部ストッパ)70と接触させることにより、レバー前部の開放位置を規定している。つまり、本実施形態では、図15に示した下部ストッパのように開放位置にあるレバー前部を直接係止する部材が存在しないこととなる。
従来の下部ストッパはレバー前部が全開位置を越えてさらに開放方向へ移動することを厳格に阻止する構造であるため、全開位置にあるレバー前部は若干であってもそれ以上は開放方向に変位、変形することができず、そのために衝突する被作用片33を緩衝することができなかった。一方、下部ストッパを設けない本実施形態では、開放位置にあるレバー前部68aが弾性変形可能な状態を維持されており、しかも部品間の精度誤差、組み付け誤差によって若干の範囲で図7(c)に示した全開位置よりも更に開放方向(反時計回り方向)へ変位することができるため、扉部材の開放時にレバー前部に衝突してくる被作用片33の勢いを減殺、緩衝させてバウンドの発生を防止することができる。
【0026】
このように本発明の実施形態では、第2の後部ベース部材51Bにストッパ70を設け、駆動伝達部材65の対応する上部適所に設けた当接部材69をストッパ70の前面と当接可能な構成にしている。このため、扉部材30を開放するために駆動伝達部材のレバー68が前方へ回動する際に当接部材69がストッパ70の前面と当接することにより、図7(c)中に示した全開位置以上に扉部材を開放させる方向へ回動することができなくなる。このため、ソレノイド本体の励磁によって吸引されて後方へ退避する過程にあるプランジャ63は、当接部材69がストッパ70の前面と当接した時点で後方への移動を停止させられる。このようにストッパ70によって駆動伝達部材の開放時の回動範囲を規制することにより、扉部材の全開時の開放角度を、ストッパ70が存在しない場合よりも小さくすることができる。
【0027】
即ち、ストッパ70が存在しない場合には、全開時にレバー前部68aの内側面が図7(c)中に示した位置よりも更に開放側へ移動するために扉部材30の全開位置が図示の位置よりも更に拡大する。このため、扉部材の内側面が水平に近い姿勢となり、該内側面にて弾んだ遊技球が入賞口内に入賞できない事態が増大する。
一方、ストッパ70を設けた場合には、全開時であってもレバー前部68aの内側面の位置は図7(c)(d)中に示した後方位置に止まるため、扉部材30の全開位置が実線で示した位置に止まる。
更に、レバー前部68aの開放方向への変位を直接規制する下部ストッパが存在しないため、レバー前部自体の弾性緩衝作用を発揮できると共に、部品精度バラツキや組付けのバラツキによって、レバー前部が図示の全開位置を越えて若干開放方向へ変位可能となる。このようにレバー前部の位置が全開位置よりも若干開放方向へ変位できるように構成したため(クッション機能を持たせたため)、扉部材の被作用片33がレバー前部と衝突した時にその勢いを緩衝することができ、バウンドを発生させることなく全開位置に達した時点で扉部材を直ちに静止させることが可能となる。
【0028】
なお、ストッパ70の前方への突出量、或いは/及び、当接部材69の後方への突出量を適切に調整することによって、プランジャの後方への退避限界位置と、レバー前部68aの最前位置を適宜調整することができる。
なお、ストッパ70を、駆動伝達部材の当接部材69と対応するソレノイド本体62の側部に設けても良い。
なお、ストッパ70と当接部材69との接触位置P1(図7(c))を、扉部材開放時における被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2(図7(c))に対して十分に上方に配置した点が本発明の一つの特徴である。即ち、接触位置P1が、揺動軸支部66を間に挟んで接触位置P2よりも十分に離間した上方位置にあることにより、接触位置P2における被作用片33とレバー前部68aとの衝突により発生するエネルギーを、駆動伝達部材のレバー68、揺動軸支部66を経てストッパ70に伝搬させて吸収緩和(バウンド防止)することができる。
【0029】
換言すればレバーの開放方向限界位置を定めるストッパ70を上部に設けることにより、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2と、ストッパ70と当接部材69との接触位置P1との間の距離が十分に長くなるために、被作用片33とレバー前部との衝突による衝撃が接触位置P1に達するまでに駆動伝達部材等の介在部品によって十分に吸収緩和される。
また、上記実施形態では、ソレノイド(駆動源)のプランジャ(出没部材)を前後方向へ出没させることにより、駆動伝達部材、及び扉部材を開閉動作させる構成としたがこれは一例に過ぎず、プランジャをソレノイド本体から斜め方向(斜め上下方向、斜め横方向等々)に出没させることによって、これらの部材を開閉動作させるように構成してもよい。つまり、出没部材の出没方向は実施形態に限定されるものではない。
【0030】
次に、図9(a)(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係る扉部材のバウンド防止のための対策を説明する図であり、図10(a)及び(b)は扉部材の下部軸支部が軸穴内に支持されている状態を示す前部斜視図であり、図11(a)及び(b)は後部ベース部材による扉部材の軸支構造を示す正面側斜視図、及び前飾りの背面部の構成を示す斜視図である。なお、図7中の該当箇所を併せて参照しながら説明する。
なお、前記実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
扉部材30の下部側面から夫々突設された2つの下部軸支部32は、前部ユニット20と後部ユニット50とに跨って設けた2つの軸穴55によって夫々回動自在に軸支されている。各軸穴55は後部ベース部材51の開口部54の対向する2つの内側壁の前端縁に夫々設けた2つの凹所56と、各凹所56内に前方から嵌合して軸穴55を形成する嵌合突起42aと、から構成される。嵌合突起42aは、図11(b)に示すように本例では前飾り42の後部に突設されている。
【0031】
前部ユニット20の対向する2つの内側壁に夫々設けた凹所27は、各凹所56と整合する位置関係にあり、前部ユニットと後部ユニットを組み付けた際に各凹所56が各凹所27と整合(連通)した状態となり、この状態で前飾り側の突起42aを凹所27、56内に嵌合させて凹所56の前部開口を閉止することにより、前後方向(横方向)が閉ざされた軸穴55が形成される。
軸穴55は、円筒状の下部軸支部32を収容して回動自在に支持できるようにその上下幅が設定されていると共に、所定の範囲内で下部軸支部32が軸穴内で後方、又は/及び、前方へ移動できるように下部軸支部32の直径よりも前後方向(横方向)寸法が長く設定されている。
厳密に言えば、軸穴55内で下部軸支部32を回動自在に軸支する限りは、下部軸支部と、その前後方向にある軸穴内壁との間に僅かなクリアランスがある。具体的には、例えば下部軸支部の直径を3mmとした場合に、前後方向クリアランスは0.1(0.05×2)mm程度である。しかし、この程度の僅かなクリアランスでは、扉部材の全開時のバウンドを解消する程度に下部軸支部を前後方向へ進退させることはできない。
【0032】
本発明では、扉部材が全開位置に達した時に発生するバウンドを解消できる程度に、下部軸支部が前後方向(横方向)へ進退するように軸穴55の前後方向長を大きく設定した点が特徴的である。具体的には、下部軸支部と軸穴の内壁との間の前後方向クリアランスを、下部軸支部の直径の1/10〜1/4の範囲に設定するのが好ましい。
更に具体的には下部軸支部の直径が3mmであるとすれば、下部軸支部と軸穴との間の前後方向ギャップは、0.3〜0.75mmの範囲とする。但し、クリアランスが大きすぎる場合にはそこにゴミが詰まり易くなり、扉部材の開閉性能を低下させる原因となるため、例えば0.3mm程度に設定するのが好ましい。
【0033】
このように下部軸支部32が軸穴55内で前後方向へ進退可能に構成されていることによって、閉止位置にあった扉部材が開放して被作用片33がレバー前部68aの内側面に接した後は、下部軸支部はレバー前部68aの内側面によって支持された被作用片33を回動中心とし、且つアーム33aの長さを半径として円弧状の経路に沿って前後方向へ揺動することが可能となる。
即ち、閉止位置にあった扉部材が全開位置に達したときに被作用片33がレバー前部68aと接触してバウンドを起こす代わりに、下部軸支部32が被作用片33を中心とした半径で軸穴55内を前後動することによりバウンドを起こす原因となるエネルギーを吸収緩和する。より正確には、図9(b)(c)に示すように、扉部材は、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2を回動中心とし、且つ接触位置P2と下部支持軸32の中心点までの距離rを半径として、前後方向へ若干変位する。
【0034】
なお、軸穴55(凹所56)の形状は、被作用片33とレバー前部68aとの接触位置P2を揺動中心とし、且つ接触位置P2と下部支持軸32の中心点までの距離rを半径とした円弧状であることが理想であるが、下部軸支部32の直径が3mm程度であり、且つ軸穴内における可動範囲Lが0.3mm程度と短いため、前後方向に直線状に延びる軸穴形状としても下部軸支部の動作上支障はない。しかも、金型により前部ベース部材51Aを成形する際に、凹所56が直線状である方がアンダーカット処理の問題が生じないため便利である。即ち、凹所56が接触位置P2を中心とした湾曲形状である場合には、凹所56を有した部材を金型により射出成形する際の型抜き方向が前後方向であると、凹所がアンダーカットとなり、型抜きが難しくなるからである。
【0035】
図9に示した例では、扉部材の閉止時に軸穴55内における下部軸支部32の位置が軸穴の前部(嵌合突起42aの後端面)に接しているものとして説明したが、この場合には扉部材の全開時に被作用片33とレバー前部68aとの衝突による応力を、下部軸支部が軸穴内で後方へ移動して軸穴の後部に当たってから前方へ復帰するように往復動作することにより、緩和することができる。
つまり、扉部材の閉止時に軸穴55の前端部に下部軸支部が位置している場合には、扉部材の開放時の勢いによって下部軸支部は軸穴の前端部から一旦後方へ向けて移動してから、直ちに前方へ復帰する。即ち、扉部材が開放方向へ自重によって回動する場合には、下部軸支部は図9(b)に示すように時計回り方向へ回動するが、この時に発生する扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を下部軸支部が後方→前方へ往復移動することによって吸収緩和する。
本発明者が高速度カメラを用いて扉部材の開閉動作を観察したところ、下部軸支部が軸穴内で往復動作することによって、扉部材のバウンドが解消されていることが確認されている。
【0036】
なお、扉部材が閉止している時における下部軸支部32の軸穴55内における前後方向停止位置は一定しておらず、軸穴の前端部と接する前端位置の他に、軸穴の後端部と接する後端位置、或いは軸穴の前後方向中間位置もあり得る。
扉部材の閉止時に下部軸支部が軸穴の中間位置にある場合には、下部軸支部は一旦後方へ移動してから前方へ移動することにより、扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を解消することができる。
また、扉部材の閉止時に下部軸支部が軸穴の後端位置にある場合(図12の状態)には、扉部材の開放時の勢いによって下部軸支部は軸穴の後端部から一旦前方へ向けて移動してから直ちに後方へ復帰する。即ち、扉部材が開放方向へ自重によって回動する場合には、下部軸支部は時計回り方向へ回動するが、この時に発生する扉部材にバウンドをもたらす原因となる過大な加速を下部軸支部が前方→後方へ往復移動することによって吸収緩和することができる。この場合は、被作用片がレバー前部と衝突することによって扉部材を閉止方向へバウンドさせようとする力が発生するが、この力は下部軸支部が軸穴内を前方へ移動してから後方へ復帰する力に変換されることによって解消される。
【0037】
このように本実施形態における扉部材の軸支構造にあっては、下部軸支部32を軸穴55によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材30と、通電時には扉部材を閉止位置に保持する一方で、非通電時には該扉部材を開放させるソレノイド61と、ソレノイドのプランジャの出没によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材65(レバー68)と、を備え、軸穴は、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方(横方向=衝撃緩和方向)へ移動することを許容する構成を備えている。このため、被作用片がレバー前部と衝突することによって発生する扉部材を閉止方向へバウンドさせようとする力を効果的に解消し、バウンドをなくすることができる。
【0038】
従来のように下部軸支部と軸穴内壁とのクリアランスが僅少であるために下部軸支部の逃げ場がない場合には、扉部材の開放時に下部軸支部は回転する以外の挙動はできなかった。その結果、扉部材がバウンドを発生させていた。これに対して本発明にあっては、下部軸支部が軸穴内を前後方向へ進退できる(逃げ場がある)ので、扉の開放時に回転するだけでなく前後方向へ移動することができ、バウンドを発生させる原因となる力を分散、解消することができる。
なお、本発明の扉部材の開閉機構の構造は、図示説明した可変入賞装置11のみならず、大入賞装置(可変入賞装置)13の開閉扉13a、その他の入賞装置の扉にも適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…遊技盤、1a…遊技領域、3…皿部、4…発射レバー、5…センター部材、7…開閉片、10…アウト口、11…可変入賞装置、12…ゲート、13a…開閉扉、14…普通入賞口、15…風車、16…普通図柄表示装置、20…前部ユニット、21…入賞口、22…下部中空部、23…隔壁、24…凹所、24F…前端縁、24a…内前壁、24b…凹所底面、25…上部中空部、30…扉部材、31…扉本体、32…下部軸支部、33…被作用片、40…前部ベース部材、42…前飾り、42a…嵌合突起、43…入球検知センサ、45…装飾部材、50…後部ユニット、51…後部ベース部材、51A…後部ベース部材、51B…後部ベース部材、53…軸支部、55…軸穴、60…駆動機構、61…ソレノイド(駆動源)、62…ソレノイド本体(駆動源本体)、62a…挿通孔、63…プランジャ(出没部材)、63a…フランジ部、64…弾性部材、65…駆動伝達部材、66…揺動軸支部、67…被係合部、68…レバー、68a…前部、68a`…内面、68b…後部、70…ストッパ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部軸支部を軸穴によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、非通電時には前記扉部材を閉止位置に保持する一方で、通電時には該扉部材を開放させる駆動源と、該駆動源によって出没する出没部材の出没動作によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材と、を備え、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技盤面に設けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、
前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有すると共に、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する第1のユニットと、該第1のユニットに隣接されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した第2のユニットと、を備え、
前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、
前記第2のユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される第2のベース部材を備え、
前記駆動機構は、前記第2のベース部材により支持された駆動源本体、該駆動源本体により出没自在に支持された出没部材、及び該出没部材を突出方向へ付勢する弾性部材を備えた駆動源と、該第2のベース部材によって揺動自在に軸支され、上部に前記出没部材と係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、
前記駆動源の非作動時には前記出没部材が突出して前記被係合部を突出方向へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を退避方向に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記駆動源の作動時には前記出没部材が退避して前記被係合部を退避方向へ移動させることによって前記レバーが前記被作用片を回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項3】
遊技盤面に組み付けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、
前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有する前部ユニットと、該前部ユニットの後部に配置されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した後部ユニットと、前記後部ユニット、又は/及び、前記前部ユニットに設けられて扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する軸穴と、を備え、
前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から後方へ突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、
前記後部ユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される後部ベース部材を備え、
前記駆動機構は、前記後部ベース部材により支持されたソレノイド本体、該ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて前後動するプランジャ、及び該プランジャを前方へ付勢する弾性部材を備えたソレノイドと、該後部ベース部材によって前後方向へ揺動自在に軸支され、上部に前記プランジャと係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、
前記ソレノイドの非励磁時には前記プランジャが前方へ突出して前記被係合部を前方へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を後方に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記ソレノイドの励磁時には前記プランジャが後方へ退避して前記被係合部を後方へ引くことによって前記レバーが前記被作用片を前方に回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項4】
前記後部ベース部材、或いは前記ソレノイド本体には、前記プランジャの後方への退避限界位置を規定するストッパを備えており、
前記ストッパは、前記プランジャが後方へ退避することによって後方へ回動する前記駆動伝達部材の上部適所と接触するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の遊技機。
【請求項1】
下部軸支部を軸穴によって回動自在に軸支されることによって自重によって開放動作する扉部材と、非通電時には前記扉部材を閉止位置に保持する一方で、通電時には該扉部材を開放させる駆動源と、該駆動源によって出没する出没部材の出没動作によって回動することにより扉部材を開閉動作させる駆動伝達部材と、を備え、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
遊技盤面に設けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、
前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有すると共に、扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する第1のユニットと、該第1のユニットに隣接されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した第2のユニットと、を備え、
前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、
前記第2のユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される第2のベース部材を備え、
前記駆動機構は、前記第2のベース部材により支持された駆動源本体、該駆動源本体により出没自在に支持された出没部材、及び該出没部材を突出方向へ付勢する弾性部材を備えた駆動源と、該第2のベース部材によって揺動自在に軸支され、上部に前記出没部材と係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、
前記駆動源の非作動時には前記出没部材が突出して前記被係合部を突出方向へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を退避方向に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記駆動源の作動時には前記出没部材が退避して前記被係合部を退避方向へ移動させることによって前記レバーが前記被作用片を回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を横方向へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項3】
遊技盤面に組み付けられる可変入賞装置を備えた遊技機であって、
前記可変入賞装置は、前記遊技盤面を流下する遊技球を受け入れる入賞口を前面に有する前部ユニットと、該前部ユニットの後部に配置されて前記扉部材を駆動する駆動機構を搭載した後部ユニットと、前記後部ユニット、又は/及び、前記前部ユニットに設けられて扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支する軸穴と、を備え、
前記扉部材は、閉止時に前記入賞口への遊技球の入球を阻止する扉本体と、該扉本体下部に設けた前記下部軸支部と、該扉本体の下部から後方へ突出した被作用片と、を備え、且つ該下部軸支部を中心として自重により開放方向へ付勢されており、
前記後部ユニットは、前記駆動機構を支持した状態で前記遊技盤に配置される後部ベース部材を備え、
前記駆動機構は、前記後部ベース部材により支持されたソレノイド本体、該ソレノイド本体により前方へ向けて出没自在に支持されて前後動するプランジャ、及び該プランジャを前方へ付勢する弾性部材を備えたソレノイドと、該後部ベース部材によって前後方向へ揺動自在に軸支され、上部に前記プランジャと係合する被係合部を、下部に前記扉部材の被作用片と係合するレバーを備えた駆動伝達部材と、を備え、
前記ソレノイドの非励磁時には前記プランジャが前方へ突出して前記被係合部を前方へ押圧することによって前記レバーが前記被作用片を後方に回動させて前記扉部材を閉止方向へ回動させ、前記ソレノイドの励磁時には前記プランジャが後方へ退避して前記被係合部を後方へ引くことによって前記レバーが前記被作用片を前方に回動させて前記扉部材を開放方向へ回動させ、
前記軸穴は、前記扉部材の下部軸支部を回動自在に軸支すると共に、閉止位置にあった該扉部材が開放方向へ回動する際に該下部軸支部が該軸穴内を後方、又は/及び、前方へ移動することを許容する構成を備えていることを特徴とする遊技機。
【請求項4】
前記後部ベース部材、或いは前記ソレノイド本体には、前記プランジャの後方への退避限界位置を規定するストッパを備えており、
前記ストッパは、前記プランジャが後方へ退避することによって後方へ回動する前記駆動伝達部材の上部適所と接触するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−22425(P2013−22425A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163231(P2011−163231)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】
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